経済原論 Ⅱ(4/211) マンキュー第 3 章 1 第 2 部長期分析マクロ経済の ( 新 ) 古典派モデル 諸価格が完全に伸縮的であると想定 すべての生産要素は完全に雇用 ( 使用 ) される ( すべての生産要素が用いられるように価格がきちんと変化する ) 第 3 章国民所得 : どこから来てどこに行くのか 3-1. 財 サービスの総生産を決めるのは何か ( 生産関数 ) GD は 生産要素の投入量によって決まる 生産要素と生産量の関係を生産関数と呼ぶ 生産要素経済学では 最終的な生産要素として 1. 土地 ( 自然 ) 2. 労働 ( 人的資本 ) 3. 資本 ( 生産された生産設備 物的資本 ) を考えるが 時間と共に変化し得る生産要素として 労働 L 資本 K を考える ある一時点を考えると 資本も労働も一定である L L K K 生産関数 F( 生産量 は 労働と資本の投入量によって決定される 通常 生産関数は規模に関して収穫不変であると想定する 規模に関して収穫不変 : すべての生産要素を z (> 0) 倍すると生産量もz 倍になる 即ち, 任意の z > 0 について z F( z z 財 サービスの供給伸縮的な価格メカニズムによりすべての生産要素の投入が保証されているとすると F( L, K ) 即ち 長期的な生産量は 生産要素の総量と技術水準 ( 生産関数の形状 ) によって決定される
経済原論 Ⅱ(4/213) マンキュー第 3 章 2 3-2. 国民所得は生産要素にどのように分配されるか ( 新古典派分配理論 ) 要素価格 : 生産要素の対価労働の対価 賃金 W 資本の対価 資本のレンタル料 R 等々 競争的企業の意思決定 利潤最大化問題 π WL RK F( L, K) WL RK を最大化するように要素投入量を決める 企業の要素需要労働の限界生産力 (: 労働を一単位増加させた時の生産量の増分 F( L F( F( L F( L( F( L 1) F( lim L L 0 L 限界生産力逓減の法則 : L( K, は L が増加するに従って低下する d ( dl < 0 F ( ( W ) L を最大化する L が労働需要量である ( π F( WL { F( ( W ) L} に注意 ) 利潤最大化の条件 : L ( W 労働の限界生産力 実質賃金 労働の限界生産力から労働需要へ実質賃金 W が与えられると L ( K, W から労働の需要量が求まる W d s 労働市場の均衡条件 : L L L よって L ( K, W 資本の限界生産力と資本需要資本の限界生産力 資本の実質レンタル料 L ( K, K ( K, R L 国民所得の分配経済学上の利潤 ( 実質 ) 収入 - 労働報酬 - 資本報酬 ( L ( K K) 書き換えると ( L ( K K) 経済学上の利潤もし生産関数が規模に関して収穫不変であれば オイラーの定理より次の式が成り立つ df( df( F ( K L ( K K) ( L dk dl 即ち 生産されたものはすべて資本と労働に分配されてしまう : 経済学上の ( 均衡 ) 利潤 0 * 会計上の利潤 ( 実質 ) 収入 - 労働費用 経済学上の利潤 ( K K) L
経済原論 Ⅱ(4/213) マンキュー第 3 章 3 コブ ダグラス生産関数 1 規模に関して収穫不変 ( 一次同次 ) 2 限界生産力逓減 3 労働分配分 ( 総生産に占める労働所得の割合 ) と資本分配分 ( 総生産に占める資本所得の割合 ) は ( 長期的に ) 一定 ( 事実とほぼ一致?) これらの事実と整合的な最も簡単な生産関数 : コブ ダグラス生産関数 F( AK L 0 < 1 < α A > 0 1 AK L A zk) ( z Az z K L zak L z ( ( z > 0 である定数 ) 2 F F α α K ( K) K αak 1 L 1 α 2 1α α (1 α) AK L < 0 K K K K F F L ) L L L L ( α α AK L 1 L L < α α α α ( 1α AK (1 ) 0 R W 3 新古典派分配理論では K L 実質資本所得 実質レンタル価格 資本量 K K αak L α 1 1α K α α α 実質労働所得 実質賃金率 労働量 L L ( 1α) AK L L (1 α) RK R K K ゆえに 資本分配分 ( 総生産に占める資本所得の割合 ) K K K α α WL W L L 労働分配分 ( 総生産に占める労働所得の割合 ) L L L (1 α) 1α * α 1 3 と言われている!!
経済原論 Ⅱ(4/214) マンキュー第 3 章 4 * 問題 労働 ( 者数 ) が一定の下で資本 ( の量 ) が増えると 実質賃金率 資本の実質レンタル料 ( 率 ) はど うなるか?( 上昇するか低下するか ) < 直感的な推論 > 工場に機械を導入 労働の生産性は? 機械の量が増える 機械の希少性は? ( 機械 1 台当たりの労働者数が減る 資本の生産性は?) <グラフを用いた推論 > R W K ( L ( K, K L L <コブダグラス生産関数を用いた推論 > K しかし L は一定 L L L 1α 一定 L であるということは L は K しかし の増え方は K の増え方より大きくない K K K α 一定 K であるということは K は
経済原論 Ⅱ(4/241) マンキュー第 3 章 5 3-3. 財 サービスの需要を決めるのは何か第 3 章では閉鎖経済 ( 外国と貿易や資本取引を行わない経済 ) を想定 GD の需要の構成要素は 消費 (C) 投資(I) と政府購入 (G) になる C I G 消費 : 消費関数 C C( T ) : 消費 (C) は 可処分所得 ( T ) のみに依存すると考える 限界消費性向 (C): 可処分所得が 1 単位増加した時の消費の増分 C dc C C'( T ) 0 < C < 1 と考えられる ( T ) d( T ) 投資 : 投資関数実物投資 マクロ経済学での投資 I だけの財を消費せずに生産設備の増加のために使った ( つまり投資した ) 場合 1 年後に ( 1 x) I だけの財を手に入れることが出来るとする x 財で計った収益率 債券購入 or 銀行預金 名目利子率 (i ): 債券の実際の利回り 預金の実際の利子率 1 0 円を銀行に預けると 1 年後に 1 円になるとすると 名目利子率 i 0 0 貨幣の実際の価値 ( 購買力 ): m は 物価水準を p とすると m p その変化率は m p p i となり これだけの財を追加的に手に入れることが出来る m p p 財の増加率 財で計った収益率 実質利子率 ( r ) である r i p p 実質利子率 名目利子率 -インフレ率 比較 x > r であれば ( 実物 ) 投資した方が得 x < r であれば ( 実物 ) 投資した方が損 実質利子率が上昇すると投資をした方が 損になる ケースが増える 投資 Iは実質利子率の減少関数となる I I(r) di dr I' ( r) < 0 政府購入政府購入 (G) と一括税 (T) は ( 政府の ) 政策によって決定されると考えられる G>T: 財政赤字 G<T: 財政黒字 GT: 均衡財政 * これらはフローの概念である * 政府負債 政府借金の残高はストックの概念である G G T T である 但し 変数の上の ( バー ) は外生変数であることを示している
経済原論 Ⅱ(4/242) マンキュー第 3 章 6 数学注 : 変化率に関する近似式 (1) 変数が他の変数の掛け算である場合 変化率は他の変数の変化率の足し算になる を成長率に直すと となる 直感的な証明 : 縦の長さが 横の長さが の長方形の面積 は である 縦が と横が だけ長くなると 新たな長方形の面積 ' は ) )( ( ' となり 面積の増加分 ' は となる よって と について 4% 2% というような微小な変化を前提にすれば ) ( ) ( は無視できるほど小さくなるので (0.08%) 上の式が近似的に成り立つと考えて問題ない 同様の近似式は 変数が 3 個以上の変数の掛け算である場合でも成り立つ (2) 変数が他の変数の割り算である場合 変化率は 分子の変化率 - 分母の変化率 になる かつ よって の変化率 の変化率 - の変化率 となる ある変数が 3 個以上の変数の割り算や掛け算であっても同じ近似式を使うことができる (3) 応用 : フィッシャー方程式 を貨幣量 を物価水準 m を の実質的な価値つまり購買力とする この時 m が成り立つので 貨幣の実質価値 m の成長率は m m となる 貨幣の実質的な価値の変化率 ( m m ) が実質利子率 ( r ) 預金や債券での運用によって生み出される名目貨幣量の変化率 ( ) が名目利子率 ( i ) 物価の変化率 ( ) がインフレ率 (π ) である よって 上の式から π i r となる しかし π を事前に正確に知ることはできないので π に代えて期待インフレ率 e π を用いるのが適切である その結果 フィッシャー方程式 e i r π が導出される
経済原論 Ⅱ(4/243) マンキュー第 3 章 7 3-4. 財 サービスの需要と供給を均衡させるものは何か 財 サービス市場の均衡 : 経済全体の生産物の需要と供給財の需要 : d C I G C( T ) I( r) G 財の供給 : s F( K, d s 需給均衡条件 : 即ち C( T ) I( r) G 財 サービス市場を均衡させるように利子率が決定される or 均衡利子率において財 サービスの需要と供給は等しい or 財 サービスの需要と供給が等しくなるように利子率が変化する 金融市場の均衡 : 貸付資金の需要と供給民間貯蓄 ( S ) 可処分所得 - 消費 ( T ) C 公的貯蓄 ( S ) 税金 - 政府購入 T G G 総貯蓄 ( S ) S S G C G 貸付資金市場への資金の供給 総貯蓄 S 貸付資金市場での資金の需要 投資 I 貸付資金市場での需要と供給の均衡 : S I or C G I or C I G. S C( T ) G I( r) : 貸付市場を均衡させるように利子率が決定される or 均衡利子率において貯畜と投資は等しく 資金の供給は需要に等しい or 貯蓄と投資が等しくなるように利子率が変化する r [ 貯蓄 投資と利子率 ] S I (r) S & I
経済原論 Ⅱ(4/244) マンキュー第 3 章 8 貯蓄の変化 : 財政政策の影響 * 政府購入の増加 ( G ) ( とT は一定それゆえに と C( T ) も一定なので ) S が G だけ減少 投資が G だけ減少 ( 均衡利子率が上昇 ) 政府購入が民間の設備投資を押しのける (Crowding Out: クラウディングアウト ) * 租税の減少 ( T だけ減少 ) ( とG は一定なので ) S が C T だけ減少 投資が C T だけ減少 ( 均衡利子率が上昇 ) I も C T だけ減少やはり民間の設備投資を押しのける (Crowding Out: クラウディングアウト ) r [ 貯蓄の減少 ] S I (r) S & I 投資需要の変化投資需要関数 I(r) の上方へのシフト ( とT とG は一定なので ) S は全く変化しない 投資量も全く変化しない ( 均衡利子率が上昇するのみ ) 但し 貯蓄が利子率の関数である場合は 結論はもちろん異なる 例 ) 貯蓄が利子率の増加関数であれば 投資量は増加する ( 利子率の上昇 貯蓄の増加 消費の減少 のうち投資に回せる割合が上昇 ) 3-5. 結論ここでの分析 : すべての市場の相互作用を含んでいる 一般均衡モデル一般均衡分析 : 価格メカニズムを強調要素市場は要素価格によって均衡 財市場は利子率によって均衡