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表 2 直留軽油の活性評価試験用反応条件 反応条件 運転温度 ( ) 340~360 水素分圧 (MPa) 4~6 水素 / 油比 (Nm 3 /kl) 200~800 液空間速度 (h -1 ) 0.7~1.5 3.2 原料軽油 原料には 以下の性状の軽油を用いた. 表 3 原料直留軽油の一般性状 A B C D 密度 [g/cm 3 ] 0.86 0.86 0.86 0.85 硫黄分 [wt%] 1.36 1.33 1.74 1.06 窒素分 [ppm] 150 260 120 90 蒸留性状 50% [ ] 316 309 316 313 90% [ ] 371 355 356 346 FBP [ ] 389 372 372 364 3.3 開発触媒の活性レベルを把握するため 深度脱硫触媒 CoMoP/Al2O3(500ppm 対応触 媒 ) をとし 比較に用いた 3.4 触媒の開発 3.4.1 固体酸付与による触媒活性の向上 (H11 年度 ) 当研究室の触媒開発のコンセプトに基づき 固体酸の効果について検討した 固体酸には 難脱硫性硫黄化合物の改質 ( 分解 異性化 等 ) に効果があるとされるプロトン型 Y ゼオライト (HY) を用いた HY-Al2O3 担体に Co Mo P を担持した触媒を調製し 直留軽油 A を用いて脱硫反応を実施した 図 1 にアルミナ担体中への HY 添加量と脱硫活性の関係を示す HY の添加により 脱硫活性が向上することが確認された 130 120 比活性 /% 110 90 80 70 0 10 20 30 40 HY 添加量 /% 図 1 HY の添加効果

3.4.2 新規触媒調製方法による触媒開発 (H13 年度 ) 現在一般的に受け入れられている脱硫活性点構造は Topsøe らにより提案されている Co-Mo-S 相である Co-Mo-S 相には単層型 (TypeⅠ) と多層型 (TypeⅡ) の 2 種類があり 多層型が単層型より活性が高いことが提唱されている そこで 触媒表面上に多層型 Co-Mo-S 相を創製するために 新規触媒調製方法を開発した 具体的には 1の固体酸を付与したアルミナ担体 (HY-Al2O3) に コバルト化合物 モリブデン化合物 有機酸 ( キレート剤 :Co-Mo-S 相の数の増大が目的 ) リン酸(MoS2 の多層化が目的 ) を含む溶液を含浸させ 乾燥させて触媒とした 開発した触媒 ( 開発触媒 α) の性能を把握するために 反応温度の影響について検討した 図 2 に 原料として直留軽油 C を用い 液空間速度 1.5h -1 水素分圧 5MPa 水素/ 油比 250Nm 3 /kl の条件で 反応温度を変化させたときの生成油硫黄濃度を示す 反応温度の上昇に伴って生成油の硫黄分は低下する傾向を示し 50ppm 以下を達成できる触媒であることが判明した 250 生成油硫黄分 /ppm 200 150 50 開発触媒 α 0 330 335 340 345 350 温度 / 図 2 開発触媒 α(50ppm 対応触媒 ) の脱硫活性 3.4.3 触媒の高性能化 (H15 年度 ) 3.4.2 項で開発した触媒 ( 開発触媒 α:50ppm 対応触媒 ) の活性金属担持量 P2O5 添加量 有機酸添加量の最適化を行い 更なる高性能化に成功した 開発した触媒 ( 開発触媒 β:10ppm 対応触媒 ) の初期活性評価結果を実施した 図 3 に 原料として直留軽油 C を用い 液空間速度 1.5h -1 水素分圧 5MPa 水素/ 油比 250Nm 3 /kl の条件で 反応温度を変化させたときの生成油硫黄濃度を示す 反応温度の上昇に伴って生成油の硫黄分は低下する傾向を示し 10ppm 以下を達成できる触媒であることが判明した 図 4 に平成 11 年度に研究を開始以来 開発した触媒の初期活性相対比較値を示す 各段階を踏んで脱硫活性が順調に向上したことが分かる

生成油硫黄分 /ppm 200 180 160 140 120 80 60 40 20 開発触媒 β 0 330 335 340 345 350 温度 / 開発触媒 α 比活性 % 対 300 250 200 150 50 0 H11 年度 H13 年度 H15 年度 CoMoP/Al 2 O 3 CoMoP/HY-Al 2 O 3 開発触媒 α 開発触媒 β (500ppm 対応 ) (50ppm 対応 ) (10ppm 対応 ) 図 3 開発触媒 β(10ppm 対応 ) の脱硫活性 図 4 開発触媒の相対比較値 3.5 開発触媒のキャラクタリゼーション 3.5.1 開発触媒の表面状態 (TEM による観察 ) 並びに開発触媒の予備硫化後の電子顕微鏡写真を図 5 に示す MoS2 結晶の積層数はが 1,2 層であるのに対し 開発触媒は多段積層化が進んでいることが確認された CoMoP/Al2O3 10nm 開発触媒 α 10nm 開発触媒 β 10nm 図 5 触媒表面の TEM 写真像 3.5.2 開発触媒の表面状態 (XAFS 測定 ) 島根大学と共同で 開発触媒 αの XAFS 測定を実施した ( 測定およびデータ解析は島根大学に依頼した ) XAFS 測定の結果を表 4 に示す 開発触媒 αの Mo-Mo 結合の Debye-Waller 因子 1),2) が小さいことから MoS2 構造はに比べ結晶性が高くなっていることが推測された これは TEM による観察で MoS2 層構造が多層化している結果と一致する

表 4 50ppm 対応触媒の XAFS 測定結果 結合 配位数 Debye-Waller 因子 開発 Mo-S 5.7 0.0065 触媒 α Mo-Mo 3.4 0.0069 基準 Mo-S 5.5 0.007 触媒 Mo-Mo 3.1 0.0071 3.5.3 積層数と脱硫活性の関係図 6 に活性金属担持量を統一した場合の MoS2 積層数と脱硫活性の関係を示す 積層数の増加に従い 脱硫活性が向上することが分かった 触媒のキャラクタリゼーション及び触媒活性評価結果から MoS2 結晶の積層数が触媒高活性化の重要な因子であることが確認された 比活性 160 150 140 130 120 110 90 80 70 60 0 1 2 3 4 MoS 2 平均積層数 図 6 MoS2 積層数と触媒活性の関係 3.5.4 Co カルボニルを用いた潜在最大活性評価触媒は4 種類を調製した 触媒の担体には ゼオライトの影響を省くため ゼオライトを含まないアルミナのみの担体を用いた 触媒 Aは開発触媒 αと同様の方法で調製した Co Mo P 有機酸を含む水溶液を担体に含浸させ 乾燥して触媒とした 触媒 B は有機酸を添加せずに触媒 A と同一方法で調製した 触媒 C は触媒 A と同一の方法で調製後 500 で焼成処理した 触媒 D は既存の触媒調製方法を用いて有機酸を添加せず Co Mo P を担体に担持後 500 で焼成して触媒とした それぞれの触媒について Co カルボニルを用いた CVD 法による潜在最大活性評価結果を表に示す 脱硫活性はチオフェンの脱硫反応で評価した ( 触媒 D の活性を基準 = とした ) 触媒 B C D については Co カルボニルの添加により 脱硫活性が向上した したがって これらの触媒では MoS2 結晶のエッジサイトが Co によって被覆されていないと推測される 一方 触媒 A では Co カルボニル添加後も活性に変化が見られず MoS2 エッジサイトの全体に活性点 (Co-Mo-S 相 ) が形成されたと推測した (MoS2 エッジサイトの占有割合 %) 有機酸添加触媒は硫化過程で効果的に MoS2 エッジサイトに Co-Mo-S 相が形成したものと思われる

表 5 Co カルボニルによる潜在最大活性評価 触媒名 触媒調製条件 チオフェンの脱硫 Co カルホ ニル添加 有機酸 P 乾燥 焼成 脱硫活性 脱硫活性 A 乾燥のみ 128 129 B 乾燥のみ 108 114 C 焼成 109 117 D 焼成 113 3.5.5 活性点形成のメカニズム活性点形成のメカニズムを調べるために予備硫化中の触媒表面を観察した Mo の状態を調べるために硫化温度を変えた場合の XPS 測定を実施した Mo3d 光電子スペクトルにおいて 硫化処理により 229eV 付近に Mo 4+ (MoS2) に起因するピークが出現した 各硫化温度での Mo 4+ の存在割合を表 6 に示す 200 でほぼ 90% 硫化されていることが分かる 175 の硫化処理時のデータについては Mo 6+ Mo 5+ Mo 4+ の存在割合が算出できなかったが 175 の S/Mo 値を調べた結果 ( 表 7) 400 と同一の値 (MoS2 の量論比以上 ) となっていることから Mo の硫化は 200 以下ですでに起こっていると推測された 表 6 XPS による測定結果 (Mo3ds/2 の光電子スペクトルの波形分離結果 ) Mo 3d5/2 結合エネルギー 232.50eV 231.90eV 228.72eV 半値幅 1.80eV 2.10eV 2.40eV 硫化温度 硫化時間 Mo 6+ Mo 5+ Mo 4+ h % % % 1 同定できない部分があり算出不可 175 1 同上 200 1 0 11 89 225 1 0 12 88 400 1 0 6 94 表 7 XPS による測定結果 ( 各元素の半定量値および S/Mo 値の算出結果 ) 硫化温度 未硫化 175 200 225 400 硫化時間 h 0 1 1 1 1 1 Mo O S S/Mo Mo O S S/Mo 2500 63200 - - 2 61200 3400 1.6 2800 65900 4800 1.7 3000 72 5000 1.7 2700 60400 4500 1.7 2300 56 4600 2.0 開発触媒 α 1900 63200 - - 1600 62300 3700 1.5 1600 60200 3700 2.3 1500 61900 3400 2.3 2200 62600 4 1.9 1700 57200 3700 2.2

次に 予備硫化中の Co の状態を調べるために 硫化温度を変えた場合の Co 化合物の状態を IR で調べた 結果を図 7 に示す 200 までは有機酸 Co に帰属する吸収が見られるが 250 で半減し 300 でほぼ消失する これより 有機酸 Co は 200 以上で分解が始まると推測される 以上 XPS と IR の結果から 予備硫化時 Mo 化合物が先に硫化され その後 Co 化合物が分解することが分かった Co と Mo の硫化される時間の差が MoS 2 のエッジサイトへの Co-Mo-S 相形成に効果的に寄与しているものと推測される ( 図 8) 有機酸 Co に帰属する吸収 硫化前の状態 有機酸 Co Mo 塩 硫化前 硫化の進行 有機酸 Co HY-Al 2 O 3 MoS 2 2000 1800 1600 1400 1200 150 200 250 300 350 0 200 250 300 CoMoS 相 HY-Al 2 O 3 HY-Al 2 O 3 波数 /cm -1 図 7 硫化中の触媒の IR スペクトル図 8 活性点形成のメカニズム ( イメージ図 ) 3.6 超深度脱硫の反応性を把握する基礎研究九州大学と共同で 開発触媒 β および(CoMoP/Al 2 O 3 ) を用いてそれぞれ脱硫処理した軽油中の硫黄化合物 窒素化合物の定性分析を実施した 分析には GC-AEDを用いた 図 9 10に硫黄化合物 窒素化合物の分析結果を示す 図 11 に示すとおり 開発触媒はに比較して 効果的に難脱硫性硫黄化合物が除去されていることが分かった また 超深度脱硫領域で4,6-DMDBT 以外 1,4,6-triMD BT 2,4,6-triMDBT 4-Metyl-6-EtylDBTが残存していることが確認された 4,6-DM DBT 以外でもアルキル基が硫黄原子の近傍に存在する場合 同様に脱硫されにくいことが確認された

原料油 S1.33% 320 1118ppm 340 202ppm 350 41ppm 320 1479ppm 340 417ppm 350 190ppm H13 年度開発触媒既存触媒 15 4,6-DMDBT 20 25 4-MDBT 4-methyl-6-etylDBT 1,4,6-TMDBT 2,4,6-TMDBT 図 9 GC-AED による硫黄化合物分析 carbazole 320 140ppm 340 88ppm 350 51ppm Alkyl carbazole C4~ carbazole 開発触媒 β Carbazole Alkyl carbazole C4~ carbazole 320 52ppm 340 19ppm 350 5ppm 保持時間 /min 図 10 GC-AED による窒素化合物分析 3.7 触媒寿命試験 3.7.1 開発触媒 α(50ppm 対応触媒 ) 開発触媒 αの 50ppm 領域での寿命試験を 実施した 運転条件は 一定の生成油硫黄分 (50ppm) が得られるように温度を設定して実施した 図 11 に原料として直留軽油 B を用い 液空間速度 1.3h -1 水素分圧 4.9MPa 水素/ 油比 200Nm 3 /kl で実施した寿命試験の結果を示す 比較のため の寿命試験も同時に実施した 図から明らかなように 脱硫活性の劣化はほとんどなく 初期の高活性が維持されることが確認された 相対活性で比較すると 230 日経過後の脱硫活性は 初期活性の 86% である また 最小二乗法により求めた劣化勾配は 0.0147 /day であった この劣化速度から推定した 2 年間使用した場合の触媒の要求温度上昇は約 10 であり 2 年以上の触媒寿命を十分有していることが推定された

3.7.2 開発触媒 β(10ppm 対応触媒 ) 開発触媒 βを用いて 実装置相当条件下での触媒劣化挙動 寿命などを検討する目的で ベンチプラントによる触媒寿命試験 ( 約 3ヶ月 ) を実施した 図 12 に原料として直留軽油 D を用い 液空間速度 1.3h -1 水素分圧 4.9MPa 水素/ 油比 200Nm 3 /kl で実施した寿命試験の結果を示す 運転は一定の生成油硫黄分 10ppm が得られるように活性劣化分を温度で補う運転モード ( 定脱硫運転 ) で実施した 運転期間中 経時に伴う劣化勾配は小さく 脱硫活性が安定していることが確認された 50ppm 運転温度 / 380 375 370 365 360 355 350 345 340 335 330 (CoMoP/Al (CoMo/Al 2 O 3 ) ) 開発触媒 α(50ppm 対応触媒 ) 0 50 150 200 通油日数 /day 図 11 開発触媒 α の寿命試験 (50ppm 運転 ) 10ppm 軽油生産のための要求温度 ( ) 380 370 360 350 340 330 320 0 20 40 60 80 運転日数 ( 日 ) 図 12 開発触媒 β の寿命試験 (10ppm 運転 )

3.8 開発触媒の実用化 150ppm 対応触媒 ( 開発触媒 α) 2003 年 7 月 コスモ石油 ( 株 ) 坂出製油所の軽油脱硫装置に採用された 現在 想定した活性が発揮され 順調に製品軽油 (50ppm 以下 ) を生産中である 210ppm 対応触媒 ( 開発触媒 β) ベンチプラントでの寿命試験で触媒の活性安定性が確認されたため コスモ石油 ( 株 ) 千葉製油所軽油脱硫装置での実用化 (2004 年 5 月充填 ) が決定した また 同触媒を四日市および堺製油所にも充填する方向で検討中である 図 13 10ppm 対応触媒 図 14 コスモ石油 ( 株 ) 千葉製油所軽油脱硫装置 4. まとめ研究成果を以下に列挙する 1 固体酸の添加効果固体酸 (HY) 含有アルミナを担体とした触媒を調製し 活性評価を行った結果 HY の添加により脱硫活性が向上することが明らかになった 2 触媒の活性点構造 MoS2 結晶の積層化の効果を調べた結果 積層数が多いほど高い脱硫活性を示しており 層構造が活性に関与していることを見出した 開発触媒について Co カルボニルを用いた潜在最大活性評価を行った結果 MoS2 エッジサイトの全体に活性点 (Co-Mo-S 相 ) が存在していると推定された 3 高活性触媒の開発固体酸の付与 MoS2 層構造の多層化 並びに Co-Mo-S 相 ( 活性点 ) の数を増大させた結果 最終目標である生成油硫黄分 10ppm を達成可能な高活性触媒の開発に成功した 参考文献 1) Teo, B. K., EXAFS: Basic Principles and Data Analysis, p.101, Springer-Verlag, Berlin, 1986. 2) Startsev, A. N. and Kochubei, D. I., Kinet. Catal., 35, 543 (1994).