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1 薄膜 BOX-SOI (SOTB) を用いた 2M ビット SRAM の超低電圧 0.37V 動作を実証 大規模集積化に成功 超低電圧 超低電力 LSI 実現に目処 独立行政法人新エネルギー 産業技術総合開発機構 ( 理事長古川一夫 / 以下 NEDOと略記 ) 超低電圧デバイス技術研究組合( 理事長 : 豊木則行 / 以下 LEAP と略記 ) と国立大学法人東京大学は このたび マイコン等に使われる論理集積回路の大幅な省エネ化を可能とする SOTB (Silicon on Thin Buried Oxide) トランジスタの大規模集積化に成功しました 論理集積回路の省エネ化には CMOS トランジスタの動作電圧低減が有効とされていますが 従来のバルク CMOS では動作特性ばらつきのためにこれが困難でした このため ばらつきの小さいトランジスタ構造への切り替えが世界的な潮流となっています 今回 LEAP 独自の SOTB と呼ぶ低ばらつきトランジスタを用いて ばらつきの影響を受けやすく超低電圧動作が最も困難な SRAM で 動作電圧が 0.37V まで低減出来ることを実証しました さらに SOTB のもう一つの特徴である基板バイアス制御により リーク電流を大幅に抑制し 環境温度が変化しても動作特性が一定に維持できることも実証しました これらの技術により 超低電圧動作で超低電力の LSI 実現に目処がつきました 本技術を適用した超低電力 LSI は 機器組み込み用や自動車用など様々な用途に使われるマイコン 超低電力動作を活かしたユビキタスセンサネットワークなどへの応用が期待されます 今後も実用化を目指して 研究開発を進めてまいります 本研究は 平成 22 年度経済産業省産業技術研究開発委託費 低炭素社会を実現する超低電圧デバイスプロジェクト の委託研究として行ったものである 平成 23 年度からは NEDO 低炭素社会を実現する超低電圧デバイスプロジェクト に係わる業務委託として実施している また 研究開発遂行にあたっては 産業技術総合研究所とルネサスエレクトロニクス株式会社にご協力頂いた なお 今回の技術の詳細は 京都府で 6 月 11 日 ( 火 ) から開催される半導体デバイス プロセス関係の国際会議 2013 Symposium on VLSI Technology にて発表します 1

2 金属原子移動型スイッチを用いた再構成可能 LSI の超小型化に道筋 ダイオードを搭載することで金属移動型スイッチ回路の省面積化に成功 独立行政法人新エネルギー 産業技術総合開発機構 ( 理事長古川一夫 / 以下 NEDOと略記 ) と超低電圧デバイス技術研究組合 ( 理事長 : 豊木則行 / 以下 LEAP と略記 ) は このたび 超低電力再構成可能 LSI への適用を目指した金属原子移動型スイッチについて 酸化タンタルからなる BEOL ダイオードを3 端子原子スイッチの選択素子として用いることで 原子移動型スイッチの超小型化に道筋を得ました 金属原子移動型スイッチは 固体電解質中での金属イオンによる架橋と その消滅を利用したスイッチです 集積回路 (LSI) の銅配線間に組み込むことで LSI の再構成 ( 論理の組み換え ) と機能の変更を可能にするスイッチとして使えます また スイッチの抵抗と容量が小さいために動作時の電力が削減でき さらに スイッチ構成を記憶するための電力が不要な不揮発スイッチなので 待機時の電力を大幅に低減可能です このように 金属原子移動型スイッチは 再構成可能 LSI の超小型化と低消費電力化に貢献するスイッチです しかしながら 金属原子移動型スイッチを用いた再構成回路は スイッチ自身は超小型であるにも関わらず スイッチをプログラミングするための選択トランジスタが必要であったため 大規模な再構成回路を構成した場合には スイッチのサイズではなくトランジスタのサイズがチップ面積の縮小を妨げている問題がありました 今回 選択トランジスタに替えて 多層銅配線内に形成した酸化タンタルからなるダイオードを用いて 原子移動型スイッチのプログラミングが可能であることを実証しました これにより 本来超小型である金属原子移動型スイッチの利点を十分活かすことができるようになり 最小で 12F 2 のフットプリントとなるスイッチセルの超小型化に道筋を得ました 本技術は 再構成可能 LSI を超小型 低消費電力するための技術であり IT 機器の低電力化に貢献する技術であります 今後も実用化を目指して 研究開発を進めてまいります 2

3 CPU に混載するキャッシュメモリ向けに 微細化による高密度化を実現できるスピン注入型 MRAM を開発 動作マージンが大きくなり 微細化しても安定したメモリ動作が可能に 独立行政法人新エネルギー 産業技術総合開発機構 ( 理事長古川一夫 / 以下 NEDOと略記 ) と超低電圧デバイス技術研究組合 ( 理事長 : 豊木則行 / 以下 LEAP と略記 ) は CPU に混載するキャシュメモリ向けに 微細化しても安定したメモリ動作が可能な 新構造のスピン注入型 MRAM(Spin Transfer Torque Magnetic Random Access Memory STT-MRAM) を開発しました 高速読み書き 無限回書き換え 不揮発性による低消費電力化などが可能な STT-MRAM は CPU とデータを直接やり取りするキャッシュメモリの候補として 活発に研究開発が行われています CPU の高性能化を実現するには メモリ部を微細化して混載できるキャッシュ容量を増やすことが必要ですが 微細なメモリでの十分な動作マージンの確保が課題でした 今回 STT-MRAM のデータ保持を担う MTJ(Magnetic Tunnel Junction) に新しい構造を提案し STT-MRAM の動作に大きなマージンを持たせることが可能になりました この結果 設計通りの低電圧メモリ動作が可能になり 直径 35nm の微細なメモリ素子を試作 評価した結果 安定したメモリ動作を確認しました このメモリ素子寸法は 国際半導体技術ロードマップ (ITRS) で 2021 年から 2023 年頃に量産が期待されている MRAM に相当しています LSI に混載できるキャッシュメモリ容量の増大が今後も継続して必要であり 今回の技術開発で今後 10 年程度先まで STT-MRAM での高集積化が可能であることを実証できました 3

4 CPU に混載するメモリ向けに 高密度化を実現できる 4 値 / セルのスピン注入型 MRAM を開発 積層した二つのメモリ素子の一括加工で大容量化と製造容易性を両立 独立行政法人新エネルギー 産業技術総合開発機構 ( 理事長古川一夫 / 以下 NEDOと略記 ) と超低電圧デバイス技術研究組合 ( 理事長 : 豊木則行 / 以下 LEAP と略記 ) は システム LSI に混載するメモリ向けに 製造プロセス工数増を抑制しながら大容量化を実現できる 4 値 / セルのスピン注入型 MRAM(Spin Transfer Torque Magnetic Random Access Memory STT-MRAM) を開発しました 高速読み書き 無限回書き換え 不揮発性による低消費電力化などが可能な STT-MRAM は システム LSI に混載するメモリの候補として活発に研究開発が行われています システム LSI の高性能化を実現するには STT-MRAM を高密度化し 混載できるメモリ容量を増やすことが必要です メモリ素子の高密度化には メモリ素子の微細化の他に メモリの多値化による等価的な高密度化が有効ですが 2 値の STT-MRAM を縦積みにして多値化を実現することによる製造プロセス工数の増加 動作電圧の上昇 二つの STT-MRAM 間の相互干渉が課題でした 今回 4 値 / セルの多値メモリの上記課題解決を目指して 二つのメモリ素子を単純に積層し それを一括エッチングで加工するプロセスを開発し 多値化による製造プロセス工数の増加を抑制しました 更に 材料 構造の見直しを行い 直径 50nm の微細なメモリ素子を試作 評価の結果 0.5V 以下の低電圧下で 4 値動作を確認しました このメモリ素子面積は 2 値換算 (4 値の素子は実際の 1/2 の面積として ) では 国際半導体技術ロードマップ (ITRS) で 2021 年から 2023 年頃に量産が期待されているメモリ素子寸法に相当しています LSI に混載できるキャッシュメモリ容量は 今後も増大すると予想されています 今回 微細化による高密度化のアプローチとは異なり 多値化による高密度化を狙った開発を行い 製造コスト増を抑制しながら スピン注入型 MRAM の大容量化が可能であることを示すことができました 4

5 データセンター向け SSD への適用を目指した 相変化デバイスの低消費電力動作に成功 GeTe/Sb 2 Te 3 超格子膜の電荷注入機構を発見し 低消費電力動作を実証 独立行政法人新エネルギー 産業技術総合開発機構 ( 理事長古川一夫 / 以下 NEDOと略記 ) 超低電力デバイス技術研究組合( 理事長 : 豊木則行 / 以下 LEAP と略記 ) は 国立大学法人筑波大学との共同研究により データセンター向け固体ストレージ SSD (Solid State Drive) への適用を目指した 低消費電力で動作する相変化デバイスの動作実証に成功しました SSD の不揮発メモリには 現在 フラッシュメモリが用いられています フラッシュメモリは多値記憶 (2 ビット記憶 ) により大容量化を達成していますが 高い内部電圧が必要なことと 低いデータ転送速度を補うために消費電力が増大する等の課題があります 今後 データセンターに用いられる SSD には これまでにない高速処理能力が求められます 特に アクセスが集中するストレージ階層に相変化デバイスを使用し これまでにない高速 低電力 高信頼などの特性を新たに SSD に付加することが重要です 今回 抵抗変化でデータを保持する相変化デバイスにおいて GeTe/Sb 2 Te 3 超格子膜の電子注入による動作の機構を見出しました さらに ばらつきの少ない GeTe/Sb 2 Te 3 超格子結晶膜を得ることで 従来の相変化デバイスと比較して 1/2 以下の電圧と 1/3 以下の電流での動作が可能となりました 開発した相変化デバイスを適用することで これまでにない高速 低電力 高信頼などの特性を SSD に付加できます さらに高性能化に伴ってチップ点数の削減による低コスト化などのシステムメリットをもたらすと同時に データセンターの低電力化に貢献することが期待されます 今後 実用化を目指した集積化実証の研究開発を進めていきます 本研究は 平成 22 年度経済産業省産業技術研究開発委託費 低炭素社会を実現する超低電圧デバイスプロジェクト に関する委託研究で 平成 23 年度からは NEDO 低炭素社会を実現する超低電圧デバイスプロジェクト に係る委託業務として実施しています デバイス試作に関しては 独立行政法人産業技術総合研究所スーパークリーンルーム (SCR) を使用し SCR 運営室にご協力頂きました なお 今回の技術の詳細は 京都府で 6 月 11 日 ( 火 ) から開催される半導体デバイス プロセス関係の国際会議 2013 Symposium on VLSI Technology にて発表します 本内容は LEAP 相変化グループと筑波大学計算科学研究センターの洗平昌晃研究員 白石賢二教授らの研究グループの共同研究によるものです LEAP は SCR を利用してデバイス試作し その物性評価や電気測定により 低消費電力で動作する相変化デバイスを実証しました 筑波大学は 最先端の計算科学手法 第一原理計算 を用いて GeTe/Sb 2 Te 3 超格子膜の電荷注入機構を明らかにしました 以上 5