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D. 酸塩基 (2) 1. 多塩基酸の ph 2. 塩の濃度と ph 3. 緩衝溶液と ph 4. 溶解度積と ph 5. 酸塩基指示薬

D. 酸塩基 (2) 1. 多塩基酸の ph 1. 多塩基酸の ph (1) 硫酸 H 2 SO 4 ( 濃度 C) 硫酸 H 2 SO 4 は2 段階で電離する K (C) (C) K a1 [H+ ][HSO 4 ] [H 2 SO 4 ] 10 5 第 1 段階でほぼ完全に電離して 硫酸水素イオンが生じる C - x C + x x さらに電離して硫酸イオン ( 濃度 x) が生じると考えると K a2 [H+ ][SO 4 2 ] [HSO 4 ] (C + x)x C x x 2 +(C + K a2 )x - K a2 C 0 2

D. 酸塩基 (2) 1. 多塩基酸の ph x 2 +(C + K a2 )x - K a2 C 0 を解くと x (C + K a2 )+ (C + K a2 ) 2 + 4K a2 C 2 [H + ] C + x C K a2 + (C + K a2 2 ) 2 + 4K a2 C ( 例 1) 硫酸 H 2 SO 4 の pk a2 は 1.96 (K a2 = 0.011) 濃度 5.0 10-2 mol/l の硫酸水溶液の ph は? C K [H + ] + (C + K a2 a2 2 ph log [H + ] 1.2 ) 2 + 4K a2 C 5.8 10 2 (mol/l) 第 2 段階も完全に電離すると仮定すると [H + ] = 1.0 10-1 (mol/l) ph = 1.0 3

D. 酸塩基 (2) 1. 多塩基酸の ph (2) 炭酸 H 2 CO 3 炭酸 H 2 CO 3 は2 段階で電離する K [H 2CO 3 ] [CO 2 ] 3.7 10 3 K a1 * [H+ ][HCO 3 ] [CO 2 ] + [H 2 CO 3 ] 4.4 10-7 K a1 [H+ ][HCO 3 ] [H 2 CO 3 ] K K a2 [H+ ][CO 3 2 ] [HCO 3 ] 1.3 10-4 5.6 10-11 酢酸の K a より大きい (K a = 1.75 10-5 ) 酢酸の K a より小さい 4

D. 酸塩基 (2) 1. 多塩基酸の ph K a1 * K a2 より,2 段目の反応は 1 段目の反応に比べ, ほとんど進まない したがって [H + ] は 1 段目の反応で決まる C - x x x 炭酸の濃度が C の時 x だけ H + が生成すると K a1 * [H+ ][HCO 3 ] [CO 2 ] + [H 2 CO 3 ] x 2 C x x2 C x は小さいので,C - x C [H + ] x CK a1 * x ph log [H + ] 1 2 (log C + log K a1*) CK a1 * 1 2 (pk a1* log C) 5

2. 塩の濃度と ph D. 酸塩基 (2) 2. 塩の濃度と ph 水溶液はどの程度の ph を示すか? 正塩 酸性塩 強酸と強塩基の塩 (NaCl,Na 2 SO 4 など ) 弱酸と強塩基の塩 (CH 3 COONa,Na 2 CO 3 など ) 強酸と弱塩基の塩 ( NH 4 Cl など ) 強酸と強塩基の塩 (NaHSO 4 など ) 弱酸と強塩基の塩 (NaHCO 3 など ) 中性塩基性酸性酸性塩基性 6

D. 酸塩基 (2) 2. 塩の濃度と ph (1) 弱酸 (1 価 ) と強塩基 (1 価 ) の正塩 ( 例 : 酢酸ナトリウム ) 塩が完全に電離すると A は弱酸 HA と平衡状態にあるので [H 2 O] は希薄溶液では一定とみなせるので K h [HA][OH ] [A ] K[H 2 O] 一方 弱酸 HA の酸解離定数を K a とすると K = [HA][OH ] [A ][H 2 O] K h : 加水分解定数 (h: hydrolysis) K h [HA][OH ] [A ] K a [A ][H + ] [HA] [H+ ] [H + ] K w K a 7

D. 酸塩基 (2) 2. 塩の濃度と ph 塩の濃度が C s の時 平衡状態において OH が x だけ生成すると 平衡前平衡状態 C s C s - x 0 0 x x K h [HA][OH ] [A ] x 2 C s x x 2 C s x C s K h K h K w K a より [OH ] x C s K w K a [H + ] K w [OH ] K a K w C s ph log [H + ] 1 2 (log C s log K a log K w ) 7 + 1 2 (logc s + pk a ) 8

D. 酸塩基 (2) 2. 塩の濃度と ph ( 例 2) 酢酸 CH 3 COOH の pk a は 4.76 濃度 1.0 10-3 mol/l の酢酸ナトリウム水溶液の ph は? C s - x K h [CH 3COOH][OH ] [CH 3 COO ] x x2 C s x x 2 C s x K a [CH 3COO ][H + ] [CH 3 COOH] [OH ] x C s K h C sk w K a K h K w K a [H + ] K w [OH ] K a K w C s ph 1 2 (log C s log K w + pk a ) 1 2 ( 3 14 + 4.76) 7.88 9

D. 酸塩基 (2) 2. 塩の濃度と ph (2) 強酸 (1 価 ) と弱塩基 (1 価 ) の正塩 ( 例 : 塩化アンモニウム ) 塩が完全に電離すると BH + は弱塩基 B と平衡状態にあるので K ' K a [B][H+ ] [BH + ] C s - x x x K a は塩基 Bの共役酸の酸解離定数である 塩の濃度がC s の時 x だけH + が生成すると, K a [B][H+ ] [BH + ] x 2 C s x x 2 C s x C s K a [H + ] x C s K a ph log [H + ] 1 2 (log K a + logc s ) 1 2 (pk a logc s ) 10

D. 酸塩基 (2) 2. 塩の濃度と ph ( 例 3) アンモニア NH 3 の共役酸 NH 4+ の pk a は 9.25 濃度 1.0 10-3 mol/l の塩化アンモニウム水溶液の ph は? C s - x x x K a [NH 3][H + ] [NH 4+ ] x 2 C s x x2 C s x C s K a [H + ] x C s K a 1.0 10 3 10 9.25 10 6.13 ph log [H + ] 6.13 11

D. 酸塩基 (2) 2. 塩の濃度と ph (3) 弱酸 (2 価 ) と強塩基 (1 価 ) の正塩 ( 例 : 炭酸ナトリウム ) 塩 M 2 CO 3 が完全に電離すると 炭酸イオン CO 32 は炭酸水素イオン HCO 3 と平衡状態にあるので C s - x x 炭酸水素イオン HCO 3 は炭酸 H 2 CO 3 と平衡状態にあるが 濃度が低く 逆反応も速い (OH - が存在する ) ので無視してよい ( 無視 ) 炭酸塩濃度が C s の時 平衡状態において x だけ OH が生成すると x K h [HCO 3 ][OH ] [CO 3 2 ] x 2 C s x x2 C s x C s K h 12

D. 酸塩基 (2) 2. 塩の濃度と ph 一方 炭酸 H 2 CO 3 の酸解離定数を K a1,k a2 とすると K a1 [H+ ][HCO 3 ] [H 2 CO 3 ] K K a2 [H + ][CO 3 2 ] [HCO 3 ] K h [HCO 3 ][OH ] [CO 3 2 ] [H+ ] [H + ] K w K a2 [OH ] x C s K h C s K w K a2 [H + ] K w [OH ] K a2 K w C s ph log [H + ] 1 2 (log C s log K a2 log K w ) 7 + 1 2 (log C s + pk a2 ) 13

D. 酸塩基 (2) 2. 塩の濃度と ph ( 例 4) 炭酸 H 2 CO 3 の pk a2 は 10.3 炭酸ナトリウム Na 2 CO 3 飽和水溶液 ( 約 2 mol/l) の ph は? C s - x K h [HCO 3 ][OH ] [CO 3 2 ] K x x x2 C s x x2 C s ( 無視 ) K a2 [H+ ][CO 3 2 ] [HCO 3 ] x C s K h K h K w K a2 [OH ] x C sk w K a2 [H + ] K w [OH ] K a2 K w C s ph 7 + 1 2 (logc s + pk a2 ) 7 + 1 2 (log 2 + 10.3) 12.3 14

D. 酸塩基 (2) 2. 塩の濃度と ph (4) 強酸 (2 価 ) と強塩基 (1 価 ) の酸性塩 ( 例 : 硫酸水素ナトリウム ) 硫酸水素塩 MHSO 4 が完全に電離すると 硫酸水素イオン SO 42 は硫酸イオン HSO 4 と平衡状態にあるので C s - x x x 硫酸水素イオン HSO 4 は硫酸 H 2 SO 4 と平衡状態にあるが 硫酸はほぼ完全に電離するので無視してよい K K a1 [H+ ][HSO 4 ] 10 [H 2 SO 4 ] 5 15

D. 酸塩基 (2) 2. 塩の濃度と ph 塩の濃度が C s の時 x だけ H + が生成したとすると K a2 [H+ ][SO 4 2 ] [HSO 4 ] K a2 10 1.96 なので C s x C s という近似は使えない x 2 + K a2 x - K a2 C s = 0 x K a2 + ph log[h + ] log x x 2 C s x K 2 + 4K a2 a2c s 2 より求める ( 例 5) 硫酸 H 2 SO 4 の pk a2 は 1.96 濃度 1.0 10-2 mol/l の硫酸水素ナトリウム水溶液の ph は? [H + ] K a2 + K 2 + 4K a2 a2c s 2 ph log [H + ] 2.2 6.2 10 3 16

D. 酸塩基 (2) 2. 塩の濃度と ph (5) 弱酸 (2 価 ) と強塩基 (1 価 ) の酸性塩 ( 例 : 炭酸水素ナトリウム ) 炭酸水素塩 MHCO 3 が完全に電離すると 炭酸水素イオン HCO 3 は炭酸 H 2 CO 3 および炭酸イオン CO 32 と平衡状態にあるので K - - 1 2 一方 炭酸の酸解離定数を K a1,k a2 とすると K K a1 [H+ ][HCO 3 ] [H 2 CO 3 ] K a2 [H+ ][CO 3 2 ] [HCO 3 ] 4.4 10-7 5.6 10-11 17

D. 酸塩基 (2) 2. 塩の濃度とpH 一方 物質量の関係 ( 金属イオン数 炭素数 ) から [M + ] [H 2 CO 3 ] [HCO 3 ] [CO 32 ] 3 電荷の関係から [M + ] [H + ] [HCO 3 ] 2[CO 32 ] [OH ] 4 塩 MHCO 3 の濃度を C s ( 水の電離を無視できる濃度とする ) とすると, C s [M + ] [HCO 3 ] [OH ] [H + ] 4より [M + ] [HCO 3 ] 2[CO 32 ] 3より [H 2 CO 3 ] [CO 32 ] [H + ][HCO 3 ] K a2 [HCO 3 ] K a1 [H + ] [H + ] 2 K a1 K a2 [H + ] K a1 K a2 5.0 10-9 ph 8.3 つまり 炭酸水素塩の飽和溶液の ph は濃度によらず一定である 18

D. 酸塩基 (2) 3. 緩衝溶液と ph 3. 緩衝溶液と ph 緩衝溶液 弱酸とその塩 弱塩基とその塩 の混合溶液 少量の酸や塩基の添加 ph はあまり変化しない 緩衝作用 ( 例 ) 酢酸と酢酸ナトリウムの混合溶液 CH 3 COOH, CH 3 COONa アンモニア水と塩化アンモニウムの混合溶液 NH 3,NH 4 Cl 19

D. 酸塩基 (2) 3. 緩衝溶液と ph ( 例 ) 酢酸と酢酸ナトリウムの混合溶液 酢酸濃度 : C A K a 酢酸ナトリウム濃度 : C s ごく一部が電離 ほぼ完全に電離 [CH 3 COOH] C A ( 酢酸の濃度にほぼ等しい ) [CH 3 COO ] C s ( 酢酸ナトリウムの濃度にほぼ等しい ) K a [CH 3COO ][H + ] [CH 3 COOH] [H + ] [CH 3COOH] [CH 3 COO K ] a C A K a C s 少量の酸 (H + ) を加えても [H + ] はほとんど増加しない (CH 3 COO と反応して CH 3 COOH になるため ) 20

D. 酸塩基 (2) 3. 緩衝溶液と ph ph log[h + ] pk a + log C s C A 弱酸とその塩からなる緩衝溶液では, 弱酸と塩の濃度比が 1 のとき,pH は 弱酸の pk a に等しい 酢酸の pk a は 4.76 C s C A = 1.0 の時,pH = pk a = 4.76 C s C = 1.1 の時,log C s A C A C s C = 0.9 の時,log C s A C A = 0.041,pH = 4.80 = 0.046,pH = 4.71 酸の濃度変化に比べ ph の変化は小さい 21

D. 酸塩基 (2) 3. 緩衝溶液と ph ( 例 ) アンモニア水と塩化アンモニウムの混合溶液 アンモニア濃度 : C B K b [NH 3 ] C B 塩化アンモニウム濃度 : C s ごく一部が電離ほぼ完全に電離 ( アンモニアの濃度にほぼ等しい ) [NH 4+ ] C s ( 塩化アンモニウムの濃度にほぼ等しい ) K b [NH 4 + ][OH ] [NH 3 ] [OH ] [NH 3] [NH 4+ ] K b C B K b C s 少量の塩基 (OH ) を加えても [OH ] はほとんど増加しない (NH 4+ と反応して NH 3 になるため ) 22

poh log[oh ] pk b + log C s C B D. 酸塩基 (2) 3. 緩衝溶液と ph ph 14 poh 14 pk b log C s C B 共役酸 NH 4+ の pk a を用いると K a pk a + pk b 14 より ph 14 poh 14 (14 pk a + log C s C ) B pk a log C s C B 弱塩基とその塩からなる緩衝溶液では, 弱塩基と塩の濃度比が 1 のとき,pH は 共役酸の pk a に等しい 23

D. 酸塩基 (2) 4. 溶解度積と ph 4. 溶解度積と ph 難溶性塩 K [Ag+ ][Cl ] [AgCl( 固 )] [AgCl 固 ] は一定とみなしてよいので K 溶解度積 K sp [Ag + ][Cl ] (Solubility Product Constants) 1.8 10 10 (mol/l) 2 [Ag + ] [Cl ] 1.8 10 10 1.3 10 5 (mol/l) AgCl は 水に 1.3 10 5 mol/l しか溶けない 24

D. 酸塩基 (2) 4. 溶解度積と ph 易溶 213 g/100 ml-h 2 O 約 5 mol/l 水道水の残留塩素濃度 :0.1 ~ 1 ppm 硝酸銀水溶液を加えると白濁する [Ag + ][Cl ] = K sp 1.8 10 10 (mol/l) 2 [Cl ] が低くても [Ag + ] が増加すれば 難溶性の AgCl が沈殿する 硝酸銀水溶液は ハロゲンの検出に用いられる 25

D. 酸塩基 (2) 4. 溶解度積と ph 難溶性塩 塩 溶解度積 K sp (mol/l) 2 AgCl 1.8 10-10 AgBr 5.2 10-13 AgI 2.1 10-14 CuS 6.5 10-30 CdS 2.1 10-20 ZnS 2.1 10-18 CaCO 3 6.7 10-5 BaCO 3 8.3 10-9 26

D. 酸塩基 (2) 4. 溶解度積と ph 弱酸の塩の溶解度は ph の影響を受けやすい 硫化水素 H 2 S は 2 段階で電離する K K a1 [H+ ][HS ] [H 2 S] K a2 [H+ ][S 2 ] [HS ] 9.5 10-8 1.3 10-14 K a1 K a2 [H+ ][HS ] [H 2 S] [H + ][S 2 ] [HS ] [H+ ] 2 [S 2 ] [H 2 S] より [S 2 ] K a1k a2 [H 2 S] [H + ] 2 硫化水素 H 2 Sの飽和溶液の濃度は約 0.10 mol/l なので, [S 2 ] K a1k a2 [H 2 S] [H + ] 2 1.2 10 22 [H + ] 2 (mol/l) 27

D. 酸塩基 (2) 4. 溶解度積と ph したがって,[H + ] が高ければ [S 2 ] は減少し, [H + ] が低ければ [S 2 ] は増加する 酸性条件下では [H + ] が高く [S 2 ] が減少する K sp の値の比較的大きな化合物は沈殿しない CuS, Ag 2 S, HgS, PbS, CdS, SnS, etc. は, ph によらず酸性でも沈殿する ( 例 ) CuS : K sp = 6.5 10 30 (mol/l) 2 中性 塩基性条件下では [H + ] が低く [S 2 ] が増加する K sp の値の比較的小さな化合物も沈殿する FeS, ZnS, NiS, MnS, etc. も沈殿する ( 例 ) ZnS : K sp = 2.1 10 18 (mol/l) 2 28

D. 酸塩基 (2) 5. 酸塩基指示薬 5. 酸塩基指示薬 酸塩基指示薬も酸 塩基 反応するから色が変わる 29

酸塩基指示薬30 D. 酸塩基 (2) 5. 酸塩基指示薬 アゾ系 ラクトン系 スルトン系 トリフェニルメタン系 アントラセン誘導体系 Lactone ( 環状エステル ) Sultone ( 環状スルホン酸エステル )

D. 酸塩基 (2) 5. 酸塩基指示薬 ジアゾ系 メチルイエロー変色域 :2.9~4.0 ( 赤 )( 黄 ) メチルオレンジ変色域 :3.1~4.4 ( 赤 )( 黄橙 ) メチルレッド変色域 :4.2~6.2 ( 赤 ) ( 黄 ) コンゴーレッド変色域 :3.0~5.0 ( 紫 ) ( 赤 ) 31

D. 酸塩基 (2) 5. 酸塩基指示薬 メチルオレンジ 化学図鑑 ( 数研出版 ) より引用 32

D. 酸塩基 (2) 5. 酸塩基指示薬 ラクトン系 フェノールフタレイン チモールフタレイン スルトン系 フェノールレッド チモールブルー ブロモチモールブルー (BTB) 33

フェノールフタレイン D. 酸塩基 (2) 5. 酸塩基指示薬 34

D. 酸塩基 (2) 5. 酸塩基指示薬 ブロモチモールブルー (BTB) HO Br OH HO Br OH HO Br O O S O O Br H + Br H + SO 3 SO 3 Br ( 黄 ) H + H + O Br O Br SO 3 化学図鑑 ( 数研出版 ) より引用 ( 青 ) 35

トリフェニルメタン系 H N クリスタルバイオレット -H + H N D. 酸塩基 (2) 5. 酸塩基指示薬 ph 0.8 ph 2.6 -H + H N Cl N +H + N Cl N +H + ( 黄 ) ( 青 ) N N +OH - Cl -OH - OH N N N N ( 紫 ) ( 無色 ) 36

アントラセン誘導体系 ph 6.8 ニュートラルレッド D. 酸塩基 (2) 5. 酸塩基指示薬 ph 8.0 ( 赤 ) ( 橙 ) ( 黄 ) 37