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第43回生化学若い研究者の会夏の学校資料

のと期待されます 本研究成果は 2011 年 4 月 5 日 ( 英国時間 ) に英国オンライン科学雑誌 Nature Communications で公開されます また 本研究成果は JST 戦略的創造研究推進事業チーム型研究 (CREST) の研究領域 アレルギー疾患 自己免疫疾患などの発症機構

前立腺癌は男性特有の癌で 米国においては癌死亡者数の第 2 位 ( 約 20%) を占めてい ます 日本でも前立腺癌の罹患率 死亡者数は急激に上昇しており 現在は重篤な男性悪性腫瘍疾患の1つとなって図 1 います 図 1 初期段階の前立腺癌は男性ホルモン ( アンドロゲン ) に反応し増殖します そ

図 B 細胞受容体を介した NF-κB 活性化モデル

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核内受容体遺伝子の分子生物学

報道関係者各位 平成 26 年 1 月 20 日 国立大学法人筑波大学 動脈硬化の進行を促進するたんぱく質を発見 研究成果のポイント 1. 日本人の死因の第 2 位と第 4 位である心疾患 脳血管疾患のほとんどの原因は動脈硬化である 2. 酸化されたコレステロールを取り込んだマクロファージが大量に血

生活習慣病の増加が懸念される日本において 疾病の一次予防はますます重要性を増し 生理機能調節作用を有する食品への期待や関心が高まっている 日常の食生活を通して 健康の維持および生活習慣病予防に努めることは 医療費抑制の観点からも重要である 種々の食品機能成分の効果について数多くの先行研究がおこなわれ

Peroxisome Proliferator-Activated Receptor a (PPARa)アゴニストの薬理作用メカニズムの解明

脂肪滴周囲蛋白Perilipin 1の機能解析 [全文の要約]

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別紙 < 研究の背景と経緯 > 自閉症は 全人口の約 2% が罹患する非常に頻度の高い神経発達障害です 近年 クロマチンリモデ リング因子 ( 5) である CHD8 が自閉症の原因遺伝子として同定され 大変注目を集めています ( 図 1) 本研究グループは これまでに CHD8 遺伝子変異を持つ

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ヒト脂肪組織由来幹細胞における外因性脂肪酸結合タンパク (FABP)4 FABP 5 の影響 糖尿病 肥満の病態解明と脂肪幹細胞再生治療への可能性 ポイント 脂肪幹細胞の脂肪分化誘導に伴い FABP4( 脂肪細胞型 ) FABP5( 表皮型 ) が発現亢進し 分泌されることを確認しました トランスク

の活性化が背景となるヒト悪性腫瘍の治療薬開発につながる 図4 研究である 研究内容 私たちは図3に示すようなyeast two hybrid 法を用いて AKT分子に結合する細胞内分子のスクリーニングを行った この結果 これまで機能の分からなかったプロトオンコジン TCL1がAKTと結合し多量体を形

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日本内科学会雑誌第97巻第7号

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平成14年度研究報告

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るが AML 細胞における Notch シグナルの正確な役割はまだわかっていない mtor シグナル伝達系も白血病細胞の増殖に関与しており Palomero らのグループが Notch と mtor のクロストークについて報告している その報告によると 活性型 Notch が HES1 の発現を誘導

今後の展開現在でも 自己免疫疾患の発症機構については不明な点が多くあります 今回の発見により 今後自己免疫疾患の発症機構の理解が大きく前進すると共に 今まで見過ごされてきたイントロン残存の重要性が 生体反応の様々な局面で明らかにされることが期待されます 図 1 Jmjd6 欠損型の胸腺をヌードマウス

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の基軸となるのは 4 種の eif2αキナーゼ (HRI, PKR, または ) の活性化, eif2αのリン酸化及び転写因子 の発現誘導である ( 図 1). によってアミノ酸代謝やタンパク質の折りたたみ, レドックス代謝等に関わるストレス関連遺伝子の転写が促進され, それらの働きによって細胞はス

2015 年度 SFC 研究所プロジェクト補助 和食に特徴的な植物性 動物性蛋白質の健康予防効果 研究成果報告書 平成 28 年 2 月 29 日 研究代表者 : 渡辺光博 ( 政策 メディア研究科教授 ) 1

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報道発表資料 2006 年 4 月 13 日 独立行政法人理化学研究所 抗ウイルス免疫発動機構の解明 - 免疫 アレルギー制御のための新たな標的分子を発見 - ポイント 異物センサー TLR のシグナル伝達機構を解析 インターフェロン産生に必須な分子 IKK アルファ を発見 免疫 アレルギーの有効

32 小野啓, 他 は変化を認めなかった (LacZ: 5.1 ± 0.1% vs. LKB1: 5.1 ± 0.1)( 図 6). また, 糖新生の律速酵素である PEPCK, G6Pase, PGC1 α の mrna 量が LKB1 群で有意に減少しており ( それぞれ 0.5 倍,0.8 倍

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脳組織傷害時におけるミクログリア形態変化および機能 Title変化に関する培養脳組織切片を用いた研究 ( Abstract_ 要旨 ) Author(s) 岡村, 敏行 Citation Kyoto University ( 京都大学 ) Issue Date URL http

生物時計の安定性の秘密を解明

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報道発表資料 2004 年 9 月 6 日 独立行政法人理化学研究所 記憶形成における神経回路の形態変化の観察に成功 - クラゲの蛍光蛋白で神経細胞のつなぎ目を色づけ - 独立行政法人理化学研究所 ( 野依良治理事長 ) マサチューセッツ工科大学 (Charles M. Vest 総長 ) は記憶形

く 細胞傷害活性の無い CD4 + ヘルパー T 細胞が必須と判明した 吉田らは 1988 年 C57BL/6 マウスが腹腔内に移植した BALB/c マウス由来の Meth A 腫瘍細胞 (CTL 耐性細胞株 ) を拒絶すること 1991 年 同種異系移植によって誘導されるマクロファージ (AIM

の感染が阻止されるという いわゆる 二度なし現象 の原理であり 予防接種 ( ワクチン ) を行う根拠でもあります 特定の抗原を認識する記憶 B 細胞は体内を循環していますがその数は非常に少なく その中で抗原に遭遇した僅かな記憶 B 細胞が著しく増殖し 効率良く形質細胞に分化することが 大量の抗体産

犬の糖尿病は治療に一生涯のインスリン投与を必要とする ヒトでは 1 型に分類されている糖尿病である しかし ヒトでは肥満が原因となり 相対的にインスリン作用が不足する 2 型糖尿病が主体であり 犬とヒトとでは糖尿病発症メカニズムが大きく異なっていると考えられている そこで 本研究ではインスリン抵抗性

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第90回日本感染症学会学術講演会抄録(I)

統合失調症モデルマウスを用いた解析で新たな統合失調症病態シグナルを同定-統合失調症における新たな予防法・治療法開発への手がかり-

解禁日時 :2019 年 2 月 4 日 ( 月 ) 午後 7 時 ( 日本時間 ) プレス通知資料 ( 研究成果 ) 報道関係各位 2019 年 2 月 1 日 国立大学法人東京医科歯科大学 国立研究開発法人日本医療研究開発機構 IL13Rα2 が血管新生を介して悪性黒色腫 ( メラノーマ ) を

研究成果報告書

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日本内科学会雑誌第102巻第4号

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研究の背景と経緯 植物は 葉緑素で吸収した太陽光エネルギーを使って水から電子を奪い それを光合成に 用いている この反応の副産物として酸素が発生する しかし 光合成が地球上に誕生した 初期の段階では 水よりも電子を奪いやすい硫化水素 H2S がその電子源だったと考えられ ている 図1 現在も硫化水素

RNA Poly IC D-IPS-1 概要 自然免疫による病原体成分の認識は炎症反応の誘導や 獲得免疫の成立に重要な役割を果たす生体防御機構です 今回 私達はウイルス RNA を模倣する合成二本鎖 RNA アナログの Poly I:C を用いて 自然免疫応答メカニズムの解析を行いました その結果

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別紙 自閉症の発症メカニズムを解明 - 治療への応用を期待 < 研究の背景と経緯 > 近年 自閉症や注意欠陥 多動性障害 学習障害等の精神疾患である 発達障害 が大きな社会問題となっています 自閉症は他人の気持ちが理解できない等といった社会的相互作用 ( コミュニケーション ) の障害や 決まった手

論文の内容の要旨

糖鎖の新しい機能を発見:補体系をコントロールして健康な脳神経を維持する

第124回日本医学会シンポジウム

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平成15年度研究報告

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( 続紙 1 ) 京都大学 博士 ( 薬学 ) 氏名 大西正俊 論文題目 出血性脳障害におけるミクログリアおよびMAPキナーゼ経路の役割に関する研究 ( 論文内容の要旨 ) 脳内出血は 高血圧などの原因により脳血管が破綻し 脳実質へ出血した病態をいう 漏出する血液中の種々の因子の中でも 血液凝固に関

学位論文の要約

平成 30 年 8 月 17 日 報道機関各位 東京工業大学広報 社会連携本部長 佐藤勲 オイル生産性が飛躍的に向上したスーパー藻類を作出 - バイオ燃料生産における最大の壁を打破 - 要点 藻類のオイル生産性向上を阻害していた課題を解決 オイル生産と細胞増殖を両立しながらオイル生産性を飛躍的に向上

遺伝子の近傍に別の遺伝子の発現制御領域 ( エンハンサーなど ) が移動してくることによって その遺伝子の発現様式を変化させるものです ( 図 2) 融合タンパク質は比較的容易に検出できるので 前者のような二つの遺伝子組み換えの例はこれまで数多く発見されてきたのに対して 後者の場合は 広範囲のゲノム

研究背景 糖尿病は 現在世界で4 億 2 千万人以上にものぼる患者がいますが その約 90% は 代表的な生活習慣病のひとつでもある 2 型糖尿病です 2 型糖尿病の治療薬の中でも 世界で最もよく処方されている経口投与薬メトホルミン ( 図 1) は 筋肉や脂肪組織への糖 ( グルコース ) の取り

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( 図 ) IP3 と IRBIT( アービット ) が IP3 受容体に競合して結合する様子

細胞外情報を集積 統合し 適切な転写応答へと変換する 細胞内 ロジックボード 分子の発見 1. 発表者 : 畠山昌則 ( 東京大学大学院医学系研究科病因 病理学専攻微生物学分野教授 ) 2. 発表のポイント : 多細胞生物の個体発生および維持に必須の役割を担う多彩な形態形成シグナルを細胞内で集積 統

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創薬に繋がる V-ATPase の構造 機能の解明 Towards structure-based design of novel inhibitors for V-ATPase 京都大学医学研究科 / 理化学研究所 SSBC 村田武士 < 要旨 > V-ATPase は 真核生物の空胞系膜に存在す

統合失調症発症に強い影響を及ぼす遺伝子変異を,神経発達関連遺伝子のNDE1内に同定した

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インスリンが十分に働かない ってどういうこと 糖尿病になると インスリンが十分に働かなくなり 血糖をうまく細胞に取り込めなくなります それには 2つの仕組みがあります ( 図2 インスリンが十分に働かない ) ①インスリン分泌不足 ②インスリン抵抗性 インスリン 鍵 が不足していて 糖が細胞の イン

上原記念生命科学財団研究報告集, 28 (2014)

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胞運命が背側に運命変換することを見いだしました ( 図 1-1) この成果は IP3-Ca 2+ シグナルが腹側のシグナルとして働くことを示すもので 研究チームの粂昭苑研究員によって米国の科学雑誌 サイエンス に発表されました (Kume et al., 1997) この結果によって 初期胚には背腹

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研究成果報告書

化を明らかにすることにより 自閉症発症のリスクに関わるメカニズムを明らかにすることが期待されます 本研究成果は 本年 京都において開催される Neuro2013 において 6 月 22 日に発表されます (P ) お問い合わせ先 東北大学大学院医学系研究科 発生発達神経科学分野教授大隅典


2. 看護に必要な栄養と代謝について説明できる 栄養素としての糖質 脂質 蛋白質 核酸 ビタミンなどの性質と役割 およびこれらの栄養素に関連する生命活動について具体例を挙げて説明できる 生体内では常に物質が交代していることを説明できる 代謝とは エネルギーを生み出し 生体成分を作り出す反応であること

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核内受容体コファクターによる脂肪形成の制御 亀井康富 研究のねらい 核内受容体はステロイドや脂溶性ビタミンをリガンドとする転写因子である 核内受容体は複数のコファクターと蛋白質 蛋白質相互作用し 機能している 本研究者は さきがけ研究 21において 環境の変化に応答してコファクター蛋白質の発現量が変動し 生体外部あるいは内部の環境に適応するシステム を仮説モデルとして提言した そして 1) コファクター PGC1βを筋肉等で過剰発現するトランスジェニックマウス ( PGC1βマウス ) の表現型を解析する 2)PGC1β 以外にも刺激誘導性のコファクターが存在し機能しているかどうかを検討する ことを研究の進め方の骨子とした 研究成果 1)PGC1βについて PGC1βマウス は餌をよく食べるがやせていた ( やせの大食い であった) また PGC1βマウス のエネルギー消費量 ( 酸素消費量 ) は増大していた 筋肉はエネルギー消費に重要な組織である PGC1βマウス の筋肉における遺伝子発現変化をマイクロアレイ法により網羅的に解析した その結果 コファクター PGC1βの発現量増加により 核内オーファン受容体 ERR を介して エネルギー消費に関わる一群の遺伝子が活性化され 代謝の変動が起こっていることが明らかになった ( 図 1 図 2) 7) 2)FOXO1 についてコファクター FOXO1 がエネルギー欠乏状態のマウスの骨格筋 ( 絶食 ストレプトゾトシンによる糖尿病 ) で顕著に発現増加することを見出した 3) 骨格筋における FOXO1 の役割を理解するため 骨格筋で特異的に FOXO1 を生理的な範囲で過剰発現するトランスジェニックマウス ( FOXO1 マウス ) を作成した FOXO1 マウス は野生型のコントロールマウスに比べ体重が少なく 骨格筋の量が減少しており また筋肉が白色化していた ( 図 3 4) FOXO1 は骨格筋の量と赤筋繊維の遺伝子発現を負に制御し 廃用性筋萎縮 / アトロフィーをひき起こすことが示唆された 4) 53

図 1 PGC1βマウスの筋肉および肝臓における遺伝子発現 PGC1βマウスの筋肉および肝臓でのエネルギー代謝に関する遺伝子発現をノーザンブロット法で調べた トランスジーンの発現している筋肉では脂肪酸 β 酸化 TCA 回路 電子伝達系などの一群の遺伝子発現が増大していた トランスジーンの発現していない肝臓では変動は見られない 54

図 2 図 2 PGC1β マウスの筋肉における脂肪酸 β 酸化活性 PGC1β マウスの筋肉では 脂肪酸の β 酸化活性が約 1.5 倍に上昇していた トランスジーンの発現していない肝臓では変動は見られなかった 図 3 筋肉 ( 脚部 ) を解剖した写真 FOXO1 マウスの筋肉は大きさが小さく 色が薄くなっていた 図 5 PGC1β 図 4 筋肉の断面の ATPase 組織染色 濃い色に染まっている部分が赤筋である 左右の顕微鏡写真の倍率は同じである FOXO1 マウスは筋繊維が細くなっており また赤筋の割合が減少している PGC1α FOXO1 ERR (?) エネルギー消費活性化 ( 肥満抑制 ) 廃用性筋萎縮 赤筋減少 図 5 PGC1β は骨格筋で核内受容体 ERR を活性化し エネルギー消費に関わる遺伝子群を活性化する その結果 肥満の発症が抑えられた また FOXO1 の発現増加により筋肉の廃用性筋萎縮 赤筋減少が生じる PGC1α は赤筋形成を促進することが報告されている FOXO1 は核内受容体の活性を負に制御するコファクターであることから PGC1α+ 核内受容体 ( 現時点では特定されていない ) による赤筋形成を抑制すると想定している 55

今後の展開 さきがけ21の研究を通じて 当初の仮説モデルを主に骨格筋で例証することができた 骨格筋はエネルギー消費 運動 糖代謝等に重要な役割を果たす器官である 本研究で得られた成果を手がかりに さらに詳しい機序の解析を行ない 生活習慣病 ( 肥満 糖尿病 ) や筋機能の低下に対する薬剤の開発に結びつくように今後研究を発展させたい 研究成果リスト (1) 原著論文 1. Takahashi, N., Kawada, T., Yamamoto, T. Gotoh, T., Taimatsu, A., Yokohama, K., Kamei Y., and Fushiki, T.: Overexpression and ribozyme-mediated targeting of transcriptional coactivators, CBP and p300, revealed their indispensable roles in adipocyte differentiation through the regulation of PPAR-gamma. J. Biol. Chem. 277, 16906-16912, 2002 2. Ikeda, S., Miyazaki, H., Nakatani, T., Kai, Y., Kamei, Y., Miura, S., Tsumoyama-Kasaoka, N. and Ezaki, O.: Up-regulation of SREBP-1c and lipogenic genes in skeletal muscles after exercise training. Biochem. Biophys. Res. Commun. 296, 395-400, 2002 3. Kamei Y., Mizukami, J., Miura, S., Suzuki, M., Takahashi, N., Kawada, T. Taniguchi, T. and Ezaki, O: A forkhead transcription factor FKHR up-regulates lipoprotein lipase expression in skeletal muscle. FEBS Lett. 536, 232-236, 2003 4. Kamei, Y., Miura, S., Suzuki, M., Kai, Y., Mizukami, J., Taniguchi, T., Mochida, K., Hata, T., Matsuda, J. Aburatani, H., Nishino, I. and Ezaki, O.: Skeletal muscle FOXO1 (FKHR)-transgenic mice have less skeletal muscle mass, down-regulated type I (slow twitch / red muscle) fiber genes. J. Biol. Chem. 279, 41114-41123, 2004 5. Hirabayashi, M., Ijiri, D., Kamei, Y., Tajima, A., and Kanai, Y.: Transformation of skeletal muscle from fast to slow-twitch during acquisition of cold tolerance in the chick. Endocrinol.146, 399-405, 2005 6. Takahashi, M., Kamei, Y. and Ezaki, O:Mest/Peg1 imprinted gene enlarges adipocytes and is a marker of adipocyte size. Am. J. Physiol. 288, E117-124, 2005 7. Kamei, Y., Suzuki, M., Miyazaki, H., Tsuboyama-Kasaoka, N., Wu, J., Ishimi, Y., and Ezaki, O.: Ovariectomy in mice decreases lipid metabolism-related gene expression in adipose tissue and skeletal muscle with increased body fat. J. Nutr. Sci. Vitaminol. (in press) 8. Kamei, Y., Htay Lwin, Saito, K., Yokoyama, T., Yoshiike, N., Ezaki, O. and Tanaka, H.: The 2.3 genotype of ESRRA23, a 23-bp sequence in the 5 flanking region of the ERR1 gene, is associated with a higher body mass index than the 2.2 genotype. Obesity Research (in press) 56

(2) 特許出願研究期間累積件数 :2 件亀井康富 : 糖尿病改善薬をスクリーニングする方法 ( 特願 2002-375432, 2002/12/25) 亀井康富 : 骨格筋の組成および量を改善する薬剤をスクリーニングする方法 ( 特願 2004-73806, 2004/3/16) (3) その他の成果 [ 招待講演等 ] 9. 亀井康富 : 核内ホルモン受容体のコファクター 広島大学大学院生物圏科学研究科セミナー (2002 年 9 月 20 日 ) 10. 亀井康富 : 脂肪細胞形成における核内受容体コファクターの役割 日大阪大学蛋白質研究所セミナー (2002 年 11 月 28 日 ) 11. 亀井康富 : 遺伝子の発現制御と生活習慣病 生化学若手研究者の会 ( 第 43 回夏の学校 ;2003 年 8 月 9 日 ) 12. Yasutomi Kamei, Shinji Miura & Osamu Ezaki: FOXO1 in Skeletal muscle. The 6 th Insulin action symposium(2004 年 9 月 25 日 ) 13. 亀井康富 : 生活習慣病に関わる遺伝子発現調節 京都大学大学院農学研究科セミナー (2004 年 9 月 24 日 ) 14. 亀井康富 : PGC1(PPARγコファクター 1) 関連分子の機能 東京大学先端科学技術研究センターセミナー (2002 年 12 月 20 日 ) 15. 亀井康富 三浦進司 江崎治 : 骨格筋における FOXO1 の発現増加は 筋量 ( 赤筋 ) の現象をひき起こす 第 27 回日本分子生物学会年会ワークショップ (2004 年 12 月 10 日 ) 16. 亀井康富 : 生活習慣病発症 予防における骨格筋での核内受容体コファクターの機能 東京大学医科学研究所セミナー (2005 年 2 月 22 日 ) 17. 亀井康富 : 生活習慣病の発症および予防における骨格筋の核内受容体コファクターの役割 国立精神 神経センター神経研究所セミナー (2005 年 3 月 11 日 ) [ 総説 ] 18. 江崎治 亀井康富 : 老化と運動器日本医師会雑誌 ( 日本医師会 )132, 977-979, 2004 19. 亀井康富 垣塚彰 : 肥満のモデル動物現代医療 ( 現代医療社 )36, 1181-1886, 2004 20. 江崎治 三浦進司 亀井康富 : 運動による筋肉の赤筋化 運動不足による白筋化機序 カレントテラピー ( ライフメディコム東京 )( 印刷中 ) 21. 亀井康富 : 遺伝子組み換え動物 遺伝子工学の基礎 ( 昭晃堂 )( 印刷中 ) 57