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数理解析研究所講究録第 2016 巻 2017 年 142-147 142 単純パラエルミート対称空間の等長変換群について 東京理科大学大学院理学研究科 Dl 下川拓哉 Takuya Shimokawa Graduate School of Science Mathematics Tokyo University of Science 1 初めに 本稿の内容は杉本恭司氏 ( 東京理科大学大学院理学研究科 ) との共同研究 [Sh Su] に基づいている 本研究の 目的は パラエルミート対称空間 (GlH $\sigma$i g) のある類に対して その等長変換群 Isom(GlH g) を完全に決定 することである 本稿では その決定方法と一例を紹介する ここでパラエルミート対称空間とは S Kaneyuki M Kozai[Ka Kozl により導入された一葉双曲面の高次元 化である より正確には エルミート対称空間が不変複素構造と それと両立する不変エルミート計量とを同時 に持つアフィン対称空間であるのに対し パラエルミート対称空間とは G 不変パラ複素構造 I と それと両立 する G 不変パラエルミート計量 g とを同時に持つアフィン対称空間 (GlH $\sigma$ ) である 前者の計量がケーラー 計量になるのと同様に 後者の計量もパラケーラー計量になる その一方で 前者がリーマン計量であるのに対 し 後者はニュートラル計量であることには注意が必要となる (cf 注意 1 余談 1) ところで パラエルミート対称空間に対してその等長変換群 Isom(GlH g) を決定することにはどのような意 味があるだろうか 例えば F C Klein によれば幾何学とは集合に対する変換群の作用によって不変な性質を研 究する学問であり ユークリッド幾何学はユークリッド空間鰹における合同変換により変わらない性質を取り 扱う分野である ここでの合同変換とはユークリッド計量に関する等長変換のことで そのため ユークリッド 計量に関する等長変換群を決定することはユークリッド幾何学を決定することを意味している 擬リーマン幾 何学においては対象となる空間 ( 集合 ) がその都度変わってしまうが それは大した問題ではないだろう つま り擬リーマン幾何学における問題は 擬リーマン多様体 (M g) を固定しようとも M 上には他の計量 \tilde{g} が自由に 許容され得り g とは無関係な幾何学が同一の M 上に展開されてしまうことである 本研究に視点を戻せば 今 回の目的はアフィン対称空間 (GlH $\sigma$ ) のある類に対して GlH 上の G 不変パラ複素構造 I と両立する の G 不変パラエルミート計量 g が織り成す幾何学を決定することと言える この目的を達成するにあたり I と両立する 任意の G 不変パラエルミート計量が 0 でない実数倍の差を除いてキリング形式から誘導される ことを加えて示している (cf 定理 1) これにより 今回においては計量を変えることにより生じる幾何学の差異 は存在しない つまり本研究 パラエルミート対称空間 (GlH $\sigma$ I g) に対してその等長変換群 Isom(GlH g) を 決定すること は G/H 上の G 不変パラ複素構造 I と両立する 任意の G 不変パラエルミート計量 \tilde{g} が織り 成す幾何学を決定することを意味しているのである 特定 2 パラエルミート対称空間 パラエルミート対称空間とは PLibermann により確立されたパラ複素構造とパラエルミート計量とを K Nomizu により紹介されたアフィン対称空間上に導入した概念である 初めにその定義を復習しておこう : 定義 1(S Kaneyuki M Kozai [Ka Koz] p86 87) (GlH a) をアフィン対称空間 1 を G/H の G 不変 (1 1) テ ンソル場 g を G/H の G 不変擬リーマン計量とする このとき (GlH $\sigma$i g) がパラエルミート対称空間である :\Leftrightarrow (1) I^{2}=\mathrm{i}\mathrm{d}_{X(G/H)} (2) \dim T_{p}^{+}(G/H)=\dim T_{p}^{-}(G/H) (3) [IX ly]-i[ix Y]-I[X IY]+[X \mathrm{y}]=0 (4) g(ix Y)+g(X I\mathrm{Y})=0 \forall p\in G/H \forall X Y\in \mathrm{x}(g/h) ここで T_{p}^{\pm}(G/H) は接空間 Tp(GlH) における Ip の \pm 1 固有空間 X(G/H) は G/H のベクトル場全体である

143 注意 1 (1) g はパラケーラー計量になる すなわち $\omega$ : X(G/H)\times X(G/H)\rightarrow C^{\infty}(G/H) (X \mathrm{y})\mapsto g(x I\mathrm{Y}) は G/H のシンプレクティック形式である (cf [Ka Koz] p86) (2) g } よニュートラル計量 ( 符号数が (qq) と表せる擬リーマン計量 ) である ここで 具体的なパラエルミート対称空間の例を挙げる この例は 最も基本的なパラエルミート対称空間の例であろう なお パラ複素構造 I が G のリー代数 \mathfrak{g} の元 Z により導入されていること パラエルミート計量 g が \mathrm{g} のキリング形式 Bg (X Y)=4\mathrm{T}\mathrm{r}(XY) for X \mathrm{y}\in \mathfrak{g} により定められていることに留意したい : 例 1( 一葉双曲面 ) G:=SL(2 \mathbb{r}) とおく いまより パラエルミート対称空間 (GlH $\sigma$i g) を構成する (1 回帰的自己同型写像 ) G の回帰的自己同型写像を次で定義しよう : $\sigma$:=\mathrm{a}\mathrm{d}\mathrm{i}_{11} ここで Ad b(a):=bab^{-1} for a\in G b:2\times 2 行列 I_{1\downarrow}:=\left(\begin{array}{ll}-1 & 0\\0 & 1\end{array}\right) このとき 固定点集合 G^{ $\sigma$} は次の通りである : G`=S(GL(1\mathbb{R})\times GL(1 \mathbb{r}))=\{\left(\begin{array}{ll}x & 0\\0 & 1/x\end{array}\right) x\in \mathbb{r}\backslash \{0\}\} よって H:=S(GL(1\mathbb{R})\times GL(1\mathrm{R})) と定めると (GlH $\sigma$ ) は 1つのアフィン対称空間になる ( 一葉双曲面 cf 図 1) (2 パラ複素構造 ) いま 原点 0 における接空間 T_{o}(G/H) は そこで T_{o}(G/H)=\{\left(\begin{array}{ll}0 & y-z\\y+z & 0\end{array}\right) yz\in \mathbb{r}\} Z=\displaystyle \frac{1}{2}\left(\begin{array}{ll}\mathrm{l} & 0\\0 & -1\end{array}\right) とおくと ad Z は T_{o}(G/H) の回帰的自己同型写像であり 従って 0 におけるパラ複素構造 I が次で定まる: I_{o}:=\mathrm{a}\mathrm{d}Z 図 1 一葉双曲面 このとき T_{0}(G/H) 上で I_{o}\circ Adh =\mathrm{a}\mathrm{d}h\circ I_{o} for all h\in H なので I_{o} は G/H 上のパラ複素構造 I へと拡張さ れる (3 パラエルミート計量 ) 原点 0 におけるパラエルミート計量 g を以下のように定めよう : g_{0}(x Y):=4\mathrm{T}\mathrm{r}(XY) for X \mathrm{y}\in T_{o}(G/H) 実際 g_{0}(i_{0}x \mathrm{y})=-g_{0}(x I_{0}Y) for all X Y\in T_{o}(G/H) より q はちと両立していることがわかる さらに g_{0}( \mathrm{a}\mathrm{d}h(x)ad h(y)) =g_{0}(x Y) for all X Y\in T_{o}(G/H) h\in H を満足するため g_{0} は (GlH I ) 上のパラエルミー ト計量に拡張される 以上により パラエルミート対称空間 (GlH $\sigma$i g) が構成された 次に パラエルミート対称空間における基本的な性質を紹介しよう それは概効果的半単純パラエルミート対 称空間があるリー代数の元により特徴づけられるということである : 命題 1 G を連結半単純リー群 (GlH $\sigma$ Ig) を概効果的パラエルミート対称空間 \mathfrak{g} を G のリー代数 そして \mathfrak{h} \mathfrak{m} をそれぞれの微分写像 $\sigma$ による 1-1 固有空間とする 加えて $\theta$ を $\sigma$_{*} と可換な \mathrm{g} のカルタン対合 \mathfrak{k}

144 \mathfrak{p} をそれぞれ $\theta$ による 1-1 固有空間とおく 1 (cf S Kaneyuki M Kozai [Ka Koz] p89 92) 以下の条件を満たす Z\in 3(\mathfrak{h})\cap \mathfrak{p} が一意的に存在する : C_{G}(Z)_{0}\subset H\subset C_{G}(Z) \mathfrak{h}=\mathrm{c}_{\mathfrak{g}}(z)=\mathrm{g}_{0} \mathfrak{m}=\mathrm{g}_{-1}\oplus \mathfrak{g}_{1} I_{o}=\mathrm{a}\mathrm{d}_{\mathfrak{m}}Z ($\tau$_{*}=\exp\sqrt{-1} $\pi$ ad Z ここで \mathfrak{z}(\mathfrak{h}) は \mathfrak{y} の中心 C_{G}(Z) は Z の G における中心化群 C_{G}(Z)_{0} はその単位連結成分 \mathfrak{g}_{ $\lambda$} は \mathrm{a}\mathrm{d}z の $\lambda$ 固有空間 2 (cf [Ka Koz] p92) C_{G}(Z)_{0}\subset\overline{H} なる C_{G}(Z) の任意の部分群 \overline{h} に対し \overline{i}_{h^{-}} を $\lambda$_{1}\mathrm{a}\mathrm{d}_{\mathfrak{m}}z の G 不変拡張 \overline{g}_{h^{-}} を $\lambda$2b \mathfrak{g} \mathfrak{m}\times \mathfrak{m} の G 不変拡張 ただし $\lambda$_{1}=\pm 1 $\lambda$_{2}\in \mathbb{r}\backslash \{0\} B_{\mathfrak{g}} は \mathfrak{g} のキリング形式とする このとき (GlH $\sigma$\overline{i}_{h^{-}}\overline{g}_{h^{-}}) はパラエルミート対称空間になる 3 (cf S S Koh [KOh] p306) 特に \mathfrak{g} がある複素単純リー代数の実形であるとき \mathfrak{z}(\mathfrak{y})=\mathbb{r}z いま 概効果的半単純パラエルミート対称空間 (GlH $\sigma$i g) が与えられると 命題 1 1 1 2により特別な元 Z が存在し H I などが特徴づけられ 空間 (GlH $\sigma$ ) にはキリング形式 Bg により誘導される計量 \overline{g} が必ず許容さ れる これは I と両立する g とは無関係なパラエルミート計量である 従って g に関する等長変換群のみを決 定したとしても I と両立する別のパラエルミート計量 例えば \overline{g} に対してはその結果は流用できず 普遍性に 乏しい結果と言える そこで 空間 (GlH $\sigma$ ) に対して G 不変パラ複素構造 I を与えたとき I と両立する \mathrm{r} 任意 の G 不変パラエルミート計量に対して等長変換群の構造を共通とする十分条件を考えたい このとき 命題 1 3 を用いることで次の結果を得る : 定理 1 (GlH $\sigma$i g) をパラエルミート対称空間 \mathrm{g} を G のリー代数とし それはある複素単純リー代数の実形 と仮定する また \mathfrak{m} を $\sigma$ の微分写像 $\sigma$ による -1 固有空間とおく このとき 1 と両立する任意の G 不変パラ エルミート計量は 0 ではない実数倍を除いて \mathrm{g} のキリング形式 Bg から誘導される よって特に \exists $\lambda$\in \mathbb{r}\backslash \{0\}\mathrm{s}\mathrm{t} g は $\lambda$ B_{\mathrm{g}} _{\mathfrak{n} $\tau$\times \mathfrak{m}} の G 不変拡張 注意 2 定理 1により G のリー代数 \mathfrak{g} がある複素単純リー代数の実形となっているパラエルミート対称空間 (GlH $\sigma$ I g) の等長変換群を考察するとき その計量としては $\lambda$ B_{\mathrm{g}} _{\mathfrak{m}\times \mathfrak{m}} の G 不変拡張として誘導される計量 \overline{g} だけを考えればよい 同時に g( 従って \overline{g}) をパラエルミート計量とする G/H 上のパラ複素構造は 命題 1 によ り \pm I のみである 余談 1 9 はある複素単純リー代数の実形 という仮定は比較的重い条件と言える これは リーマン計量で ( もローレンツ計量でも ) ない擬リーマン計量 であるニュートラル計量 (cf 注意 1-(2)) を制御することが一般に難しいことに起因する 例えば存在非存在に目を向けると リーマン計量は多様体がパラコンパクトという位相的性質を伴えば必ず存在するのに対して リーマン計量ではない擬リーマン計量 は たとえコンパクトや向きづけ可能 単連結といった仮定を課しても存在する ( あるいはしない ) とは限らない リーマン計量でもローレンツ計量でもない擬リーマン計量 の場合 このような問題はより複雑になる *1 1 なお N Steenrod はコンパクト連結多様体について少なくとも 4 次元まではさほどの努力なく判別できるだろうと著書で綴っている ( その一方で 複素射影平面 CP^{2} がニュートラル計量を許容するか否かを興味ある問題とし その場では明言しなかった ([St] p207 208))

いま 145 3 等長変換群の決定 (GlH $\sigma$i g) をパラエルミート対称空間 \mathfrak{g} を G のリー代数 そしてそれはある複素単純リー代数の実形と仮定する 加えて \mathfrak{y} \mathfrak{m} をそれぞれの微分写像 $\sigma$ による 1-1 固有空間 Z を命題 1により定まる元とする 今回は パラエルミート対称空間が随伴表現の双曲軌道として実現されている場合を考えよう すなわち H=C_{G}(Z) を仮定する また G の中心は自明とする *2 定理 2 \mathrm{a}\mathrm{u}\mathrm{t}(\mathfrak{g}z)^{\neq}:=\{ $\phi$\in \mathrm{a}\mathrm{u}\mathrm{t}(\mathrm{g}) $\phi$(z)=\pm Z\} \mathrm{j}\mathrm{n}\mathrm{t}(\mathfrak{g}z)^{+}=\mathrm{a}\mathrm{u}\mathrm{t}(\mathfrak{g}z)^{+}\cap \mathrm{i}\mathrm{n}\mathrm{t}(\mathrm{g}) とおくとき Isom(GlH g) /\mathrm{i}\mathrm{s}\mathrm{o}\mathrm{m}(g/h g)_{0}\cong(\mathrm{a}\mathrm{u}\mathrm{t}(\mathfrak{g}z)^{+}\mathrm{u}\mathrm{a}\mathrm{u}\mathrm{t}(\mathrm{g}z)^{-})/\mathrm{i}\mathrm{n}\mathrm{t}(\mathfrak{g}z)^{+} 注意 3 $\tau$ を G の G/H への作用とする つまり $\tau$_{a}(bh):=abh for a b\in G すると Isom(GlH g)0=$\tau$_{g}= \{$\tau$_{a} a\in G\} が成り立つ 従って Isom(GlH g) を単に決定するよりIsom(GlH g) /\mathrm{i}\mathrm{s}\mathrm{o}\mathrm{m}(g/h g)_{0} を決定する方が有用な結果である (cf 例 2) なお Isom(GlH g) /\mathrm{i}\mathrm{s}\mathrm{o}\mathrm{m}(g/h g)_{0} は有限群である 定理 2により 等長変換群はリー代数の自己同型群に帰着される 従って 残る問題は Z の計算方法であるが Z の性質を追及することにより 勝手に 与えたワイル領域の中のある元 2に Z を移すことが可能となる 定理 3 $\xi$ を \mathrm{g} の 1 つのカルタン対合 \mathfrak{k} \mathrm{p} をそれぞれ $\xi$ による 1-1 固有空間 \mathfrak{a} を \mathrm{p} 内の 1 つの極大可換部分 空間 $\Delta$ を (\mathfrak{g} a) に関する制限ルート系 $\Pi$ を $\Delta$ の基本系 $\gamma$ を最大ルート とそれぞれおく このとき 以下が成 り立つ : 1 $\gamma$(\tilde{z})=1\hslash^{1} つ Isom (G/H g)/\mathrm{i}\mathrm{s}\mathrm{o}\mathrm{m}(g/h g)0\cong(\mathrm{a}\mathrm{u}\mathrm{t}(\mathfrak{g}\tilde{z})^{+}\mathrm{u}\mathrm{a}\mathrm{u}\mathrm{t}(\mathfrak{g}\tilde{z})^{-})/\mathrm{i}\mathrm{n}\mathrm{t}(\mathfrak{g}\tilde{z})^{+} を満たす \tilde{z}\in W:=\{A\in \mathfrak{a} \forall $\alpha$\in $\Pi$ $\alpha$(a)\geq 0\} が存在する 2 $\gamma$(a)=1 なる任意の A\in W に対して H_{A}:=C_{G}(A) $\sigma$_{a}:=\mathrm{a}_{\exp^{\sqrt{-1}} $\pi$ A} とおく ここで A_{a} は a\in G による G の内部自己同型写像を表す 加えて B_{\mathfrak{g}} _{[A\mathfrak{g}]\times[A\mathfrak{g}]} \mathrm{a}\mathrm{d}_{[a\mathrm{g}]}a の G 不変拡張を それぞれ g_{a} 為と定める このとき (GlHA $\sigma$_{a}i_{a} g_{a} ) はパラエルミート対称空間で Isom (G/H_{A} g_{a})/\mathrm{i}\mathrm{s}\mathrm{o}\mathrm{m}(g/h_{a} g_{a})_{0}\cong(\mathrm{a}\mathrm{u}\mathrm{t}(\mathrm{g}a)^{+}\mathrm{u}\mathrm{a}\mathrm{u}\mathrm{t}(\mathrm{g}a)^{-})/\mathrm{i}\mathrm{n}\mathrm{t}(\mathfrak{g}a)^{+} 注意 4 本定理のカルタン対合 $\xi$ は $\sigma$ との可換性を求めた $\theta$ でなく 勝手な カルタン対合でよい そのため ( 記号は同一だが ) \mathfrak{k} や \mathrm{p} は命題 1のそれらとは別物である また カルタン対合だけでなく極大可換部分空間 a も 勝手に 選んでよい この両者の任意性が重要になる 本研究の目的を達成するためには 定理 3により各複素単純リー代数の実形 \mathfrak{g} に対して $\gamma$(a)=1 なる任意の A\in W を求め (\mathrm{a}\mathrm{u}\mathrm{t}(\mathfrak{g}a)^{+}\mathrm{u}\mathrm{a}\mathrm{u}\mathrm{t}(\mathrm{g}a)^{-})/\mathrm{i}\mathrm{n}\mathrm{t}(\mathfrak{g}a)^{+} の各代表元とそれらの代数的関係を調べれば十分であることがわかる ここで実際にこの定理 3を用いた等長変換群の計算例を挙げよう 例 2 (GlH $\sigma$ Ig) G/H=SL(n\mathbb{R})/S(GL(k\mathbb{R})\times GL(n-k\mathrm{R})) を例 1と同様にして得られるパラエ ) レミート 対称空間とする ただし n\geq 2 1\leq k\leq n-1 は単純である G のリー代数 \mathfrak{g}=\mathfrak{s}\mathrm{i}(n\mathbb{r}) に対して その複素化 9\mathrm{c}=\mathfrak{s}\mathrm{I}(n \mathbb{c}) *2 この仮定は本質的ではない 実際今の状況下では G の中心 Z(G) が自明であるか否かに関係なく G/H\cong(G/Z(G))/(H/Z(G)) となっ ている

146 さて \mathfrak{g} の勝手なカルタン対合 $\xi$ として $\xi$(x):=-tx for X\in \mathrm{g} を選ぼう すると 1-1 固有空間はそれぞれ \mathfrak{k}=\mathfrak{s}\mathrm{o}(n):=\{x\in \mathfrak{g} {}^{\mathrm{t}}x=-x\} \mathrm{p}=\{x\in \mathfrak{g} ^{t}x=x\} となる そこで \mathfrak{p} 内の勝手な極大可換部分空間 \mathfrak{a} として次 を選ぶ : \displaystyle \mathfrak{a}:=\{\left(\begin{array}{lll}x_{1} & 0 & 0\\0 & x_{2} & 0\\\vdots & & \\0 & 0 & x_{n}\end{array}\right) \displaystyle \sum_{i=1}^{n}x_{i}=0\} すると (\mathfrak{g} \mathfrak{a}) に関する ) レート系 $\Delta$ は $\Delta$:=\{\pm(e_{i^{-e}j)} 1\leq i<j\leq n} 基本系 $\Pi$ は $\Pi$=\{$\alpha$_{i}:=e_{i}-e_{i+1} 1\leq j\leq n-1\} 最大ルート $\gamma$ は $\gamma$=$\alpha$_{1}+$\alpha$_{2}+\cdots+$\alpha$_{n-1} として得られる : $\alpha$_{1} $\alpha$_{2} $\alpha$_{n-1} このとき G/H に対する定理 3 内の 2 は 条件 $\gamma$(\tilde{z})=1 および \tilde{z}\in W:=\{A\in \mathfrak{a} \forall $\alpha$\in $\Pi$ $\alpha$(a)\geq 0\} により Zl Z2 る双対基である : Z_{n-1} の n-1 個のいずれかである ここで Zl Z2 Z_{i}=\displaystyle \frac{1}{n}\left((n & -i)e_{i}o & O-iE_{n-i}\right)(1\displaystyle \leq i\leq n-1) いま 各乙に対して \mathrm{a}\mathrm{d}z_{i} による \mathrm{g} の固有空間分解は次のようになる : Z_{n-1} は $\Pi$=\{$\alpha$_{1} $\alpha$_{2} $\alpha$_{n-1}\} の $\alpha$ i(zi) = $\delta$ りな El は l 次単位行列 行列 \mathfrak{g}_{-1}=\{\left(\begin{array}{ll}o & O\\X_{n-ii} & O\end{array}\right) X_{n-ii}:(n-i)\times i \} 行 \mathrm{g}_{1}=\{\left(\begin{array}{ll}o & X_{in-i}\\O & O\end{array}\right) X_{in-i}:i\times(n-i) \mathrm{f}^{1}\mathrm{j}\} X_{i}:i\times i \mathfrak{h}=\mathrm{g}_{0}=\{\left(\begin{array}{ll}x_{i} & O\\O & X_{n-i}\end{array}\right) \mathrm{t}\mathrm{r}(x_{i}+x_{n-i})=0x_{n-i}:(n-i)\mathrm{x}(n-i) \cong \mathfrak{s}1(i\mathbb{r})\oplus \mathfrak{s}\mathrm{i}(n-i \mathbb{r})\oplus \mathbb{r} 行列 従って 求める2は姦だけである 簡単のため n が偶数のときのみを考えることにすると M Takeuchi [Ta]^{*3} により \mathrm{a}\mathrm{u}\mathrm{t}(\mathrm{g})/\mathrm{i}\mathrm{n}\mathrm{t}(\mathfrak{g})= {[idg] [ $\xi$] [Ad I_{1n-1}] [ $\xi$\circ Ad I_{1n-1}] } \cong \mathbb{z}_{q}\oplus \mathbb{z}_{2} \} である ここで I_{1n-\downarrow=}\left(\begin{array}{ll}-\mathrm{l} & 0\\0 & E_{n-1}\end{array}\right) このとき $\xi$(z_{k})=-z_{k} Ad I_{1n-1}(Z_{k})=Z_{k} Int (\mathrm{g}z_{k})^{-}=\mathrm{a}\mathrm{u}\mathrm{t}(\mathfrak{g} Z)^{-}\cap \mathrm{i}\mathrm{n}\mathrm{t}(\mathrm{g})=\emptyset となることが示されるため (\mathrm{a}\mathrm{u}\mathrm{t}(\mathfrak{g}z_{k})^{+}\mathrm{u}\mathrm{a}\mathrm{u}\mathrm{t}(\mathfrak{g}z_{k})^{-})/\mathrm{i}\mathrm{n}\mathrm{t}(\mathfrak{g}z_{k})^{+}=\{[\mathrm{i}(\mathrm{h}] [ $\xi$] [ \mathrm{a}\mathrm{d} I_{1n-1} ] [ $\xi$\circ \mathrm{a}\mathrm{d} I_{1n-1} ] \}\cong \mathbb{z}_{q}\oplus \mathbb{z}_{ $\Omega$} となる 定理 23の同型関係を紐解くと 実は次のような具体的な記述も可能である : Isom(GlH g) /\mathrm{i}\mathrm{s}\mathrm{o}\mathrm{m}(g/h g)_{0}=\{[\mathrm{i}\mathrm{d}_{c/h}] [ $\Phi$] \circ $\Phi$]\}\cong \mathbb{z}_{2}\oplus \mathbb{z}_{2} ただし --(ah):={}^{t}a^{-1}h $\Phi$(aH):=I_{1n-1}aI_{1}{}_{n-1}H for a\in G *3 正確には田 ] では n\geq 3 である しかし 簡単な確認により n=2 でも成立することがわかる

147 余談 2 アフィン対称空間には標準アフィン接続というものが考えられる 定理 3 における条件の場合 それは gf_{\sim}^{\rightarrow} よるレビチビタ接続と一致する 標準アフィン接続 ( レビチビタ接続 ) に関するアフィン変換群は 実は 等長変換群 Isom(GlH g) と完全に一致し : 今回の等長変換群の決定は標準アフィン接続 ( レビチビタ接続 ) に 関するアフィン変換群の決定とも言える またこの等長変換群とアフィン変換群との同一性から 実は G/H の 相似変換は必ず等長変換となる すなわち 相似 と 等長 は同一の概念となる 謝辞本研究に際し 終始ご指導ご鞭燵を賜りました坊向伸隆先生に深謝申し上げます また本研究集会において 様々なご支援頂きました佐藤隆夫先生 発表の場を設けて下さった世話人の藤田亮介先生に御礼申し上げますと共に 本講演をお聞き下さった方々に感謝致します 参考文献 [Ka Koz] S Kaneyuki and M Kozai Paracomplex structures and affine symmetric spaces Tokyo J Math 8 (1985) no 1 81 98 [Koh] S S Koh On affine symmetric spaces Amer Math Soc 119 (1965) 291 309 [Sh Su] T Shimokawa and K Sugimoto On the groups of isometries of simple para Hermitian symmetric spaces preprint [St] N Steenrod Topology of fibre bundles Princeton Univ Press Princeton 1951 [Ta] M Takeuchi On the fundamental group and the group of isometries of a symmetric space J Fac Sci Univ Tokyo Sect I 10 (1964) 88 123