平成 23 年 11 月 26 日新潟県立中央病院第 4 回肝臓病教室於 市民プラザ 肝臓のはたらき 肝心 肝腎 肝硬変の症状と治療について 肝臓は 体にとっての として働いてます 内科医師津端俊介 肝臓の主な血液検査 肝臓の としての機能は 主にに血液検査で評価しています 肝硬変とは 肝臓の細胞が壊れてしまい 機能低下が起こった状態 GOT (AST) GPT (ALT) アルブミンビリルビン血小板アンモニアプロトロンビン AFP PIVKAⅡ 肝細胞の傷害の程度 肝臓で作られるたんぱく質肝臓の機能を反映 代謝 解毒に必要な物質肝臓の機能を反映黄疸の原因 肝の線維化が進むと低下する 肝臓で代謝される有毒物質肝臓が弱まると蓄積し意識障害の原因に 出血を止めるために必要な成分肝臓で作られる肝臓の機能を反映 腫瘍マーカー腫瘍があるときに上昇腫瘍ができそうな時に上昇例外もある しばらくは症状がでることはないが ( 代償期 ) 細胞の破壊が進むにつれて症状がでてくるようになる ( 非代償期 ) 肝硬変の重症度 チャイルド ピュー分類 (Child-Pugh score) 肝臓の残された機能 肝硬変に伴う症状を点数化 1 点 2 点 3 点 血清ビリルビン 1-2 2-3 3 以上 血清アルブミン 3.5 以上 2.8 3.5 2.8 未満 腹水 なし 軽度 中等度 脳症 なし 1-2 3-4 プロトロンビン時間 % 80 以上 50-80 50 以下 各項目の得点を足した得点から A-B-C に分類される A; 5-6 点 B; 7-9 点 C; 10-15 点 非代償期 肝硬変とは 肝臓は沈黙の臓器 肝臓は 相当な底力 ( 予備能 ) を持っています 多少の病気では自覚症状が発現しません 肝硬変になったからといって すぐに症状がでるわけではありません 肝硬変といっても 全然元気に日常を過ごしている方はたくさんいらっしゃいます 逆に言うと 症状が出るときは相当病状が悪化したときなのです 肝臓は沈黙の臓器 といわれています! 1
肝硬変の症状消化管出血 肝臓食道 ( 肝硬変 ) 消化管出血 肝細胞がん 肝臓への血流 胃 1 肝臓が肝硬変になる 2 肝臓へ流れる血流がよどむ 3 よどんだ血液が逃げるための新しい血管ができる 4 新しい血管は 食道や胃の壁を伝うように走行する = 食道胃静脈瘤 5 急あつらえの血管のため 静脈瘤は破れやすい定期的に内視鏡検査を受けましょう!! ( バリウム検査だけではわからないことがあります ) の症状 毒 の体内への蓄積栄養状態の悪化 の症状 毒 の体内への蓄積栄養状態の悪化 むくみ 筋力低下 意識障害 ( 脳症 ) 疲れやすいこむらがえり出血しやすい腹水 栄養状態の評価おさらい チャイルド ピュー分類 (Child-Pugh score) 1 点 2 点 3 点 血清ビリルビン 1-2 2-3 3 以上 血清アルブミン 3.5 以上 2.8 3.5 2.8 未満 腹水なし軽度中等度 栄養状態を反映している 脳症なし 1-2 3-4 プロトロンビン時間 % 80 以上 50-80 50 以下 アルブミンのはたらき アルブミン 肝臓で作られる 人が生きていくために必要なたんぱく質 脂肪酸やアミノ酸などの運搬 各組織へのアミノ酸供給 むくみや腹水などの抑制など ある種のアミノ酸 ( 分岐鎖アミノ酸 = BCAA) を原料として産生される 2
アルブミンと BCAA について アミノ酸 アミノ酸は たんぱく質のもととなる物質 分岐鎖アミノ酸 (BCAA) 芳香族アミノ酸 (AAA) に分類される 分岐鎖アミノ酸 (BCAA) 主に筋肉などで分解される 肝臓では分解されない 運動時のエネルギー 筋肉の合成に使われる アルブミンのもとになる アンモニアを解毒する作用もある 芳香族アミノ酸 (AAA) おもに肝臓で分類される 神経伝達物質 ( ノルアドレナリンなど ) のもとになる 肝硬変 本来肝臓で代謝されるべき AAA が代謝されない 相対的に AAA が増えて BCAA が減る BCAA が不足してアルブミンが作れなくなる 症状 BCAA は普段通り筋肉で代謝される 過剰になった AAA が脳を刺激する 脳症の一因 BCAA の補充が有効! (%) 100 累積イベント非発現率 80 60 大規模臨床試験より BCAA 顆粒製剤内服群 (314 名 ) 食事治療群 (308 名 ) BCAA 顆粒を服用している群が服用していない群に較べて腹水等の症状の発現を 2/3 に抑えています 40 0 200 400 600 800 1000 投与開始後日数 イベント ( 重篤な肝硬変合併症 ): 肝硬変の病態悪化 ( 腹水 浮腫 肝性脳症 黄疸 ) 食道胃静脈瘤破裂 肝癌発生および死亡 Y.Muto et al:clinical Gastroenterology & Hepatology, 3(7), 705, 2005 むくみ 筋力低下 意識障害 ( 脳症 ) 疲れやすいこむらがえり出血しやすい腹水 BCAA の内服により これらの症状が抑えられる可能性があります! BCAA の補充は効果的! BCAA 顆粒剤 用経腸栄養剤 これらの薬は飲みにくいものが多いのですが 頑張って続けてみましょう アルブミン値 3.5 以上が目標です! 毒をため込む要因 便秘 消化管出血 高たんぱく食 アルコール 肝硬変の治療毒をため込まないために 有害物質 ( アンモニア ) の体内への蓄積 肝臓が処理 ( 代謝 ) すべき物質の蓄積 下剤 ( ラクツロースなど ) の使用 定期的な内視鏡検査 食事上の注意 脳症の一因 肝臓の負担増! 3
肝細胞がんの早期発見血液検査や自覚症状 血液検査肝細胞がんは ある程度進行しないと腫瘍マーカー (AFP PIVKAⅡ) が上昇しないことがあります また GOT や GPT が正常であっても がんができてしまうことがあります 自覚症状肝細胞がんは ある程度進行しないと症状が出ません 血液検査や自覚症状では早期発見は困難!! 定期的な画像検査がとても重要なのです! 肝細胞がんの早期発見がんを早期発見するために CT 超音波 ( エコー ) MRI それぞれの検査に長所と短所があります 複数の機械を用いて 3 カ月 -6 か月ごとの定期的な検査を行うことが大切です 開業医の先生にかかりながらであっても 当院で定期的な画像検査を受けていただくことが可能です 手術 経皮的局所療法 エコーを見ながら局所麻酔下に腫瘍に針をさす ラジオ波焼灼療法針先から熱を発生させて腫瘍を焼く エタノール注入療法針先から毒 ( エタノール ) を注入して腫瘍をつぶす 開腹 ( ときに開胸 ) した上で癌を切除する 治療効果は最も高い 身体的が負担は大きい 治療効果は比較的高い 身体的負担は比較的少ない ( 発熱 疼痛 だるさ ) エコーで見えないと治療できない 周囲に別臓器があると危険を伴うことがある 経皮的肝動脈化学塞栓療法 局所麻酔下に 足の付け根から細いチューブ ( カテーテル ) を挿入 レントゲンを見ながら血管内でカテーテルを操作し 腫瘍のすぐ近くにまで進める 腫瘍に抗がん剤を注入し さらにゼラチン物質で血管を詰める ( 毒攻め + 兵糧攻め ) 身体的負担は比較的少ない ( 発熱 疼痛 だるさ ) ときに根治性が低く 再発リスクが高いことがある 放射線療法 ( 定位照射療法 ) 薬物療法 放射線の照射装置をコンピューターで制御し 複数の角度から一点集中的に高線量の放射線を腫瘍に照射する 治療効果は比較的高い 身体的負担は比較的少ない 長期予後がまだ不明確 抗がん剤 分子標的薬など 4
まとめ 肝臓をいたわるためには 適切な治療はもちろん 適度な運動や適切な食事が大切です ただし 肝硬変だから と生活に制約をつける必要はありません 定期的な検査 治療のもとで 無理のない健やかで充実した日々をお過ごしください 肝臓の病態や がんの状態により 治療方針を決めていきます ( 必ず従わなければならないものではありません ) ご静聴ありがとうございました 当院では ホームページを通じて過去の肝臓病教室での資料を提供しています 第 3 回肝臓病教室 ( 平成 23 年 7 月 ) より 新潟肝臓病教室で検索! 5