日本科学教育学会研究会研究報告 Vol. 31 No. 6(2017) 季節による太陽の日周運動の変化の認識に関する研究 Questionnaire about student s recognition of solar diurnal motion changings by the season

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ホームページ掲載資料 平成 30 年度 全国学力 学習状況調査結果 ( 上尾市立小 中学校概要 ) 平成 30 年 4 月 17 日実施 上尾市教育委員会

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川上達夫

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Taro-① 平成30年度全国学力・学習状況調査の結果の概要について

プラネタリウム学習投影番組一覧表 A : 小学校理科学習 A - 1 太陽の動きと星空の観察 3 年方角や時刻を調べながら太陽の 1 日の動きを観察します A - 2 夏の星座と月の様子 4 年 A - 3 月の動きと季節の星座 4 年 A - 4 冬の星座とその動き 4 年 A - 5 月の満ち欠

平成 28 年度山梨県学力把握調査 結果分析資料の見方 調査結果概況 正答数分布グラフ 分布の形状から児童生徒の解答状況が分かります 各学校の集計支援ツールでは, 形状だけでなく, 県のデータとの比較もできます 設問別正答率 無解答率グラフ 設問ごとの, 正答率や無解答率が分かります 正答率の低い設

解禁日時新聞平成 30 年 8 月 1 日朝刊テレビ ラジオ インターネット平成 30 年 7 月 31 日午後 5 時以降 報道資料 年月日 平成 30 年 7 月 31 日 ( 火 ) 担当課 学校教育課 担当者 義務教育係 垣内 宏志 富倉 勇 TEL 直通 内線 5

調査の概要 1 目的義務教育の機会均等とその水準の維持向上の観点から 全国的な児童生徒の学力や学習状況を把握 分析し 教育施策の成果と課題を検証し その改善を図るとともに そのような取組を通じて 教育に関する継続的な検証改善サイクルを確立する また 学校における児童生徒への教育指導の充実や学習状況の

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調査の概要 1 目的義務教育の機会均等とその水準の維持向上の観点から 全国的な児童生徒の学力や学習状況を把握 分析し 教育施策の成果と課題を検証し その改善を図るとともに そのような取組を通じて 教育に関する継続的な検証改善サイクルを確立する また 学校における児童生徒への教育指導の充実や学習状況の

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今年度は 創立 125 周年 です 平成 29 年度 12 月号杉並区立杉並第三小学校 杉並区高円寺南 TEL FAX 杉三小の子

日本科学教育学会研究会研究報告 Vol. 30 No. 3(2015) 木村 諒 KIMURA Ryo 筑波大学 University of Tsukuba 大槻 麻衣 OTSUKI Mai 筑波大学 University of Tsukuba 学習者同期型アバタを用いた天文学習支援システム A S

Ⅱ. 金星ライブ望遠鏡 望遠鏡に CCD デジタルアイピースを取り付け 昼の金星を撮像し 室内のモニタにワイヤレスでリアルタイムで配信する 金星の満ち欠け 視直径の変化を継続的に観察する 望遠鏡を含めた機器はその都度設置 回収が可能である 設置から配信まで 1 人で行った場合でも所要時間が 30 分

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図 1 光に関連した学習のつながりを示す系統図 8

平成23年度全国学力・学習状況調査問題を活用した結果の分析   資料

平成 25 年度学力定着状況確認問題の結果について 概要版 山口県教育庁義務教育課 平成 2 6 年 1 月 1 実施概要 (1) 目 的 児童生徒の客観的な学力状況の経年的な把握と分析を通して 課題解決に向けた 指導の工夫改善等の取組の充実を図る全県的な検証改善サイクルを確立し 県内す べての児童

2、協同的探究学習について

啓林館 / 未来へひろがる数学 1 1 章 正の数 負の数 1 正の数 負の数 1 正負の数 2 正の数 負の数の計算 2 加法と減法 (1) 4 乗法と除法 (1) 2 章 文字の式 1 文字を使った式 8 文字使用のきまり 2 文字式の計算 10 文字式の計算 (1) 3 章 方程式 1 方程式

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1 かげのできかたをしらべよう 授業展開例第 1 次かげのできかたをしらべよう( かげと太陽 7 時間のうち 1 時間 ) 時児童の学習活動留意点 1 日陰を探そう 影と太陽の位置関係に気付か 影はどんなところにできているか調べる せるようにする 自分の影とほかの影を比べる 肉眼で太陽を見ないように

瑞浪市調査結果概略(平成19年度全国学力・学習状況調査)

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調査の概要 1 目的義務教育の機会均等とその水準の維持向上の観点から 的な児童生徒の学力や学習状況を把握 分析し 教育施策の成果と課題を検証し その改善を図るとともに 学校における児童生徒への教育指導の充実や学習状況の改善等に役立てる さらに そのような取組を通じて 教育に関する継続的な検証改善サイ


千葉市科学館プラネタリウム活用てびき A-1 太陽の動きと星座の観察 ( 第 3 学年 ) この番組は 第 3 学年の内容に合わせて 方位 時刻を調べながら太陽の 1 日の動き を観察 について学習します プラネタリウムの特長を生かし 実際には観察しにくい 太陽の動きや季節の星座について学習する意欲

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平成 30 年度全国学力 学習状況調査 北見市の結果等の概要 Ⅰ 調査の概要 1 調査の目的義務教育の機会均等とその水準の維持向上の観点から 全国的な児童生徒の学力や学習状況を把握 分析するとともに教育施策の成果と課題を検証し その改善を図り 学校における児童生徒への教育指導の充実や学習状況の改善等

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平成 26 年度 高知県学力定着状況調査結果の概要 速報版 平成 27 年 2 月 高知県教育委員会

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2 調査結果 (1) 教科に関する調査結果 全体の平均正答率では, 小 5, 中 2の全ての教科で 全国的期待値 ( 参考値 ) ( 以下 全国値 という ) との5ポイント以上の有意差は見られなかった 基礎 基本 については,5ポイント以上の有意差は見られなかったものの, 小 5 中 2ともに,

課題研究の進め方 これは,10 年経験者研修講座の各教科の課題研究の研修で使っている資料をまとめたものです 課題研究の進め方 と 課題研究報告書の書き方 について, 教科を限定せずに一般的に紹介してありますので, 校内研修などにご活用ください

平成 3 年度花乃井中のあゆみ 調査結果から 成果と課題 学力調査では すべての項目において平均値を上回っているが 平均値では若干下回っている教科もある 平均正答率を平均と比べると 国語 A は - ポイント 国語 B は -2.2 ポイント 数学 A は +6.9 ポイント 数学 B は +6.

画像, 映像などの気象情報や天気と1 日の気温の変化の仕方に興味 関心をもち, 自ら気象情報を収集して天気を予想したり天気の観測をしたりしようとしている 気象情報を活用して, 天気の変化を予想することができる 1 日の気温の変化の仕方を適切に測り, 記録することができる 天気の変化は気象情報を用いて

(6) 調査結果の取扱いに関する配慮事項調査結果については 調査の目的を達成するため 自らの教育及び教育施策の改善 各児童生徒の全般的な学習状況の改善等につなげることが重要であることに留意し 適切に取り扱うものとする 調査結果の公表に関しては 教育委員会や学校が 保護者や地域住民に対して説明責任を果

3 学校教育におけるJSLカリキュラム(中学校編)(理科)3.単元シート・指導案例・ワークシート 12 地球と宇宙

平成 25 年度の全国学力 学習状況調査の下野市の全体の結果 ( 国語, 算数 数学 ) は, 小学校, 中学校ともに, すべての領域で, 全国平均正答率を上回る結果となった 小学校の全国学力調査全体結果について 小学校は国語 AB, 算数 AB ともに, 数ポイント全国平均正答率を上回っていた 小

小学校における県平均正答率との比較 市と県の平均正答率の差を比べると 国語 A B 算数 A B 理科のすべての教科 領域 区分で 5ポイント以上の差のものはなくなった 国語 A 市 :68.2% 県 :70.1% 差 :-1.9ポイント 国語 B 市 :49.6% 県 :53.6% 算数 A 市

領域別正答率 Zzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzz んんんんんんんんんんんんん 小学校 中学校ともに 国語 A B 算数( 数学 )A B のほとんどの領域において 奈良県 全国を上回っています 小学校国語 書く B において 奈良県 全国を大きく上回っています しかし 質問紙調査では 自分

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5 単元の評価規準と学習活動における具体の評価規準 単元の評価規準 学習活動における具体の評価規準 ア関心 意欲 態度イ読む能力ウ知識 理解 本文の読解を通じて 科学 について改めて問い直し 新たな視点で考えようとすることができる 学習指導要領 国語総合 3- (6)- ウ -( オ ) 1 科学

学習指導要領の領域等の平均正答率をみると 各教科のすべての領域でほぼ同じ値か わずかに低い値を示しています 国語では A 問題のすべての領域で 全国の平均正答率をわずかながら低い値を示しています このことから 基礎知識をしっかりと定着させるための日常的な学習活動が必要です 家庭学習が形式的になってい

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第 2 章 知 徳 体 のバランスのとれた基礎 基本の徹底 基礎 基本 の定着 教育基本法 学校教育法の改正により, 教育の目標 義務教育の目標が定められるとともに, 学力の重要な三つの要素が規定された 本県では, 基礎 基本 定着状況調査や高等学校学力調査を実施することにより, 児童生徒の学力や学

(2) -2,4,1 3 y=-x-2 をかいた ( 人 ) 4 (1) y=2x-9,y=2x,y=3x+3 (2) y=x+11 (3) 指導観校内の研究テーマが 考える力を引き出す授業のあり方 ということで, 数学科では考える力とは何かを分析し,11 項目に整理した 1 帰納的に考える力 2

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第 6 学年理科学習指導案 日時 : 平成 30 年 11 月 21 日 ( 水 )5 校時対象 : 墨田区立第三吾嬬小学校 6 年 1 組指導者 :O.T. 1 単元名月と太陽 ( 教育出版 ) 2 単元の目標 月と太陽の関係を推論しながら調べ 見いだした問題を計画的に追究する活動を通して 月の位

刊行に寄せて 青森県教育委員会では 小 中 高等学校 1 2 年間を見通した 縦の連携 を基軸とした学校教育を推進し 児童生徒の学力向上について取り組むべき方策を検討することを目的に 学力向上庁内戦略会議 を設置し 算数 数学 理科 英語の 3 教科について 児童生徒の学力向上に関する専門的な事項に

2 教科に関する調査の結果 (1) 平均正答率 % 小学校 中学校 4 年生 5 年生 6 年生 1 年生 2 年生 3 年生 国語算数 数学英語 狭山市 埼玉県 狭山市 61.4

目 次 1 学力調査の概要 1 2 内容別調査結果の概要 (1) 内容別正答率 2 (2) 分類 区分別正答率 小学校国語 A( 知識 ) 国語 B( 活用 ) 3 小学校算数 A( 知識 ) 算数 B( 活用 ) 5 中学校国語 A( 知識 ) 国語 B( 活用 ) 7 中学校数学 A( 知識 )

(2) 国語科 国語 A 国語 A においては 平均正答率が平均を上回っている 国語 A の正答数の分布では 平均に比べ 中位層が薄く 上位層 下位層が厚い傾向が見られる 漢字を読む 漢字を書く 設問において 平均正答率が平均を下回っている 国語 B 国語 B においては 平均正答率が平均を上回って

2 教科に関する調査の結果 ( 各教科での % ) (1) 小学校 国語 4 年生 5 年生 6 年生 狭山市埼玉県狭山市埼玉県狭山市埼玉県 平領均域正等答別率 話すこと 聞くこと 書くこと

平成21年度全国学力・学習状況調査の結果分析(非公表資料)

(1) 体育・保健体育の授業を改善するために

1-1 小学校国語 A( 調査時間 20 分 ) 基礎的 基本的な言語活動や言語事項に関する知識 技能が身に付いているかどうかをみる問題 で 12 設問で構成されている 本町の結果は 全国の平均正答率 栃木県の平均正答率とほぼ同じであった この調査では 学習指導要領の領域等として 話すこと 聞くこと

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3 調査結果 1 平成 30 年度大分県学力定着状況調査 学年 小学校 5 年生 教科 国語 算数 理科 項目 知識 活用 知識 活用 知識 活用 大分県平均正答率 大分県偏差値

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Ⅲ 研究内容 確かな学力を育成するためには 教師の指導 と 児童 生徒の学び のギャップを教師が認識 する必要がある この研究では,1,2 年の文字式の内容において, 全国調査, 置籍校事前調査の 結果から誤答傾向を把握し, 課題を考察した その中から 計算の対象を理解すること, 考察の 対象を明確

平成20年度

1. 調査結果の概況 (1) の児童 ( 小学校 ) の状況 < 国語 A> 今年度より, ( 公立 ) と市町村立の平均正答率は整数値で表示となりました < 国語 B> 4 国語 A 平均正答率 5 国語 B 平均正答率 ( 公立 ) 74.8 ( 公立 ) 57.5 ( 公立 ) 74 ( 公立

小学校の結果は 国語 B 算数 A で全国平均正答率を上回っており 改善傾向が見られる しかし 国語 A 算数 B では依然として全国平均正答率を下回っており 課題が残る 中学校の結果は 国語 B 以外の教科で全国平均正答率を上回った ア平成 26 年度全国学力 学習状況調査における宇部市の平均正答

( 中学校調査 ) 1 時限目 2 時限目 3 時限目 4 時限目 5 時限目 国語 A (45 分 ) 国語 B (45 分 ) 数学 A (45 分 ) 数学 B (45 分 ) 生徒質問紙 (2 分程度 ) (6) 集計児童生徒 学校数 1 集計基準児童生徒に対する調査について, 平成 29

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平成18年度教員勤務実態調査報告書(第1部 調査の目的および設計)

(2) 学習指導要領の領域別の平均正答率 1 小学校国語 A (%) 学習指導要領の領域 領 域 話すこと 聞くこと 66.6(69.2) 77.0(79.2) 書くこと 61.8(60.6) 69.3(72.8) 読むこと 69.9(70.2) 77.4(78.5) 伝統的な言語文化等 78.3(

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国際数学・理科教育動向調査(TIMSS2015)のポイント

平成27年度全国学力・学習状況調査結果の概要

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問題解決的な学習スタイルを充実させるために 3 つのステップを積み上げましょう 課 題 板書を充実させる道具を用意している ( マグ ネット名札 学習の流れカード ) 黒板に日付を書き 単元の流れ 本時の流れを 掲示している ノートに日付 単元の流れ 本時の流れを書かせている 前時の振り返りをノート

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第 2 学年 理科学習指導案 平成 29 年 1 月 1 7 日 ( 火 ) 場所理科室 1 単元名電流とその利用 イ電流と磁界 ( イ ) 磁界中の電流が受ける力 2 単元について ( 1 ) 生徒観略 ( 2 ) 単元観生徒は 小学校第 3 学年で 磁石の性質 第 4 学年で 電気の働き 第 5

平成29年度 小学校教育課程講習会 総合的な学習の時間

指導方法等の改善計画について

スライド 1

平成 21 年度全国学力 学習状況調査結果の概要と分析及び改善計画 調査実施期日 平成 21 年 10 月 2 日 ( 金 ) 教務部 平成 21 年 4 月 21 日 ( 火 )AM8:50~11:50 調査実施学級数等 三次市立十日市小学校第 6 学年い ろ は に組 (95 名 ) 教科に関す

(2) 国語 B 算数数学 B 知識 技能等を実生活の様々な場面に活用する力や 様々な課題解決のための構想を立て実践し 評価 改善する力などに関わる主として 活用 に関する問題です (3) 児童生徒質問紙児童生徒の生活習慣や意識等に関する調査です 3 平成 20 年度全国学力 学習状況調査の結果 (

3 学校教育におけるJSLカリキュラム(中学校編)(理科)2.JSL理科における授業づくりの実際

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平成 28 年度全国学力 学習状況調査の結果伊達市教育委員会〇平成 28 年 4 月 19 日 ( 火 ) に実施した平成 28 年度全国学力 学習状況調査の北海道における参加状況は 下記のとおりである 北海道 伊達市 ( 星の丘小 中学校を除く ) 学校数 児童生徒数 学校数 児童生徒数 小学校

各教科 道徳科 外国語活動 総合的な学習の時間並びに特別活動によって編成するものとする 各教科 道徳科 総合的な学習の時間並びに特別活動によって編成するものとする

5 学習到達度調査の基本的な考え方学習到達度調査では 各教科の設問ごとに 目標値 を定め 児童 生徒の 正答率 がこの 目標値 に対して -5ポイント以上から +5ポイント未満の間であった場合 目標値と同程度としている 目標値 学習指導要領に示された内容について標準的な時間をかけて学んだ場合 設問ご

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季節による太陽の日周運動の変化の認識に関する研究 Questionnaire about student s recognition of solar diurnal motion changings by the seasons. 金井司 *, 久保田善彦 * KANAI,Tsukasa*,KUBOTA,Yoshihiko* 宇都宮大学 * Utsunomiya University* [ 要約 ] 中学校の天文学習のうち, 季節による太陽の日周運動の変化について, 該当する単元の授業を終えたばかりの生徒に, 季節による太陽の動きの変化を天球モデル上に描画させたところ正答率は 3 割に満たなかった 解答を 南中の位置 と 日の出, 日の入りの方位 の 2 つの要素について分析したところ 南中位置 に比べて 日の出, 日の入りの方位 の理解が有意に低いことがわかった さらに, 誤答を分析すると 南中の位置 については, 南中が天頂にまで達してしまう誤答が多く, 日の出, 日の入りの方位 では, 季節が変化しても日の出, 日の入りが常に真東から真西であるという誤答が多いことがわかった また, 天球モデル上に正しく太陽の動きの変化を表すためには, 宇宙視点から見た地球と太陽の位置関係を理解することも重要であるという知見を得た [ キーワード ] 中学校理科, 天文学習, 太陽の年周運動, 生徒の認識 1. はじめに中学校の天文学習は難しく生徒は学びづらさを感じている ( 懸 2004) 特に, 太陽や星座の日周運動や年周運動, 月や金星の満ち欠けは, 複数の視点から観察される現象を統合して理解する必要があるため, その困難性が指摘されている ( たとえば松森 1983, 土田 1986, 間處 林 2013, 荒井 2000) 本論では, 天文学習の困難の解決にせまるために, 季節による太陽の日周運動の変化 についての生徒の認識に着目する 山崎ら (2001) の調査結果によると, 太陽の軌道の図を何種類か示して, その中から夏至の太陽の日周運動の軌道を選択する問題の正答率は約 6 割となっている 一方, 柳本 (2015) は, 季節による太陽高度の変化に比べて, 日の出, 日の入りの位置が変化する認識が非常に低いといわれてきたとしている 現在の学校教育の一般的な学習によって, 南中 高度の変化と日の出, 日の入りの方位の変化の生徒の認識について調査している先行研究は見当たらない そこで, 本研究では生徒の該当単元学習後の, 季節による太陽の日周運動の変化について, 南中高度と日の出, 日の入りの方位の変化のそれぞれの認識について調べることにした 2. 研究の方法 (1) 対象栃木県公立 M 中学校 3 学年生徒 70 名, 栃木県公立 N 中学校 3 学年生徒 228 名, 計 298 名を対象とした なお, 指導に関わった教員は両校合わせて 3 名である (2) 時期 2016 年 12 月, 天文学習での季節による太陽の動きの変化に該当する単元終了直後に質問紙調査を実施した 35

(3) 授業の展開両校ともに A 社の教科書に準じて, 該当単元の授業を行った 季節による太陽の動きの変化を理解するためには, 南中高度の変化, 南中高度と地軸の傾き, 日の出, 日の入りの方位 の 3 点の理解が重要である そこで,A 社および他社の教科書 (A~E 社とする ) を 3 点から整理する 南中高度の変化 及び, 南中高度と地軸の傾き は, 調査した教科書会社のすべてが, 教科書内に解説をしている 日の出, 日の入りの方位 は,A 社は季節による太陽の動きの変化を示した図の注釈に解説が書かれているのみである 日の出, 日の入りの方位 には各社で差が見られる ( 表 1) 表 2 該当単元の授業展開時学習活動 1 天体の位置と天球について理解する 2 太陽の 1 日の動きを透明半球に記録して調べる 3 星の 1 日の動きについて理解する 4 観測地による太陽や星の動きの違いについて理解する 5 太陽や星座の季節による移り変わりについて理解する 6 季節による太陽の高度変化と昼夜の長さの変化を知る 7 季節による気温の変化について理解する (4) 質問紙調査の内容設問 1では, 天球に見立てた透明半球 ( 天球モデル ) 上に, 冬至 春分 夏至の太陽の軌道をそれぞれ書き込ませた 設問 2では, 宇宙視点から見た冬至と夏至のときの太陽に対する地軸の傾きや天体の位置関係の様子について, 図の中から正しいものを選択させた ( 資料 1) 表 1 教科書での解説項目 教科書での解説項目 A B C D E 南中高度の変化 南中高度と地軸の傾き 日の出, 日の入りの方位の変化 : 教科書本文中に解説あり, : 図の注釈で解説あり, : 解説なし A 社の教科書を利用した授業展開は, 以下の通りである はじめに, 天体は天球上に表すことを天球モデルである透明半球に太陽の日周運動を記録することを通して理解させる このとき, 南中や南中高度についても理解させる 次に, 星の 1 日の動きを, 天球モデルを使って表して, 天体は天球上を 1 日に 1 周する ( 日周運動 ) ことを理解させる また, 地球上の観測地の緯度によって同じ天体でも高度が変化することについても学習させる そして, 季節によって観察できる天体が変化することから, 天体は日周運動だけでなく地球の公転によって年周運動をしていることも理解させる 最後に, 季節による太陽の南中高度の変化と気温の変化について理解させる ( 表 2) (5) 分析の方法 1 対象校の比較各校の設問ごとの正解者数と不正解者数を χ 2 検定したところ, 設問 1(χ 2 (1)=0.017), 設問 2 (χ 2 (1)=0.034) ともに人数の偏りに差が見られなかったため, 両校の正答者数を合計して分析することとした ( 表 3) 設問 1 設問 2 表 3 調査実施校の正解者数, 不正解者数の比較 正解 不正解 M 中 19 51 N 中 58 170 M 中 44 26 N 中 154 74 2 設問 1 と設問 2 の正解者数の比較設問 1( 天球モデルへの書き込み ) では, 南中の位置が正しく, さらに日の出, 日の入りの方位も正しい解答を 完全正答 とし, その割合を調べる また, 設問 1 と設問 2( 太陽に対する地軸の傾き ) の正答数をクロス集計し,χ 2 検定を使ってこれらの理解の関連を調べる 3 南中の位置の認識設問 1 については, 生徒の解答を, 南中の位置 と 日の出, 日の入りの方位 の 2 つの要素について以下の通り正答率を調べ, 誤答を含めて解答の特徴を分析する 36

南中の位置については, 南中高度が, 冬至 春分 夏至となるに連れて高くなっていき, 最も高い南中の位置が天頂に達しないものを正答とする 誤答については, 特徴によって分類し, それぞれの誤答がどの程度の割合で出現しているかを調べる の方位について正答した生徒は 298 名中 97 名で正答率は 32.6% である ( 表 5) 直接確率計算の結果, 南中の位置 と 日の出, 日の入りの方位 の正解者数の人数を比べると有意に 南中の位置 の正解者が多いという差がみられた ( 両側検定 :p=0.003,p<.01) 4 日の出, 日の入りの方位の認識日の出, 日の入りの方位については, 季節により, 日の出, 日の入りの方位が 北東 ~ 北西, 東 ~ 西, 南東 ~ 南西 と 3 つに変化し, 別れているものを正答とする 南中のときと同じように, 日の出, 日の入りの変化についても誤答を分類し, 検討する 南中の位置 の正解者数と 日の出, 日の入りの方位 の正解者数を直接確率計算によって比較し, 理解の差についても調べる 3. 結果 (1) 設問 1 と設問 2 の正解者数の比較設問 1 の正解者数は 298 名中 77 名で, 正答率は 25.8% であった 設問 2 の正答者数は 298 名中 198 名で, 正答率は 66.4% であった χ 2 検定の結果, 人数の偏りが有意であった (χ 2 (1)=18.480,p<.01) 残差分析の結果, 設問 2 に正解した群では設問 1 に正解する人数が多くなり, 設問 2 に不正解だった群では設問 1 に正解する人数が少なくなる ( 表 4) 表 4 設問 1 と設問 2 の正解者数, 不正解者数設問 1 計 67 (22.5) 131 (44.0) 198 (66.4) 4.439-4.439 設問 2 10 (3.4) 90 (30.2) 100 (33.6) -4.439 4.439 計 77 (25.8) 221 (74.2) 298 (100.0) ( ) 内は全解答中の割合 (%) 下段は調整された残差 (2) 南中の位置の認識南中の位置について正答した生徒は 298 名中 141 名で正答率は 47.3% である 日の出, 日の入り 表 5 南中の位置と日の出, 日の入りの方位の正解者数 正解 不正解 計 南中の位置 141 (47.3) 157 (52.7) 298 (100.0) 日の出, 日の入りの方位 97 (32.6) 201 (67.4) 298 (100.0) ( ) 内は全解答者中の割合 (%) 南中の位置について, 最も多い誤答は, 南中の位置が天頂に達する 天頂通過型 で, 全解答のうち 15.1% である 次に多い誤答は, 正答と位置は同じだが, 季節の指定が間違っていたり, 指定が抜けていたりするなど, 季節を間違えているもので,14.4% である また, 南中の位置が一つでも天頂を越えて, 北側半球に達している 北中型 などの誤答もみられた 天球モデルを三次元にとらえられていないなど, そもそも天球モデルの意味を理解できていない様子が見られる解答や, 問題文の意味が理解できていないと思われる誤答は その他 とした 無解答のものは 無解答 として分類した ( 図 2 および表 6 参照 ) (3) 日の出, 日の入りの方位の認識日の出, 日の入りの方位において最も多かった誤答は, 季節が変化しても日の出, 日の入りが常に真東から真西になる 真東 真西型 で全解答中 26.5% である 次に多いのは, 日の出, 日の入りの方位が季節によって変化しているが, 本来の方位と明らかに異なっている解答 ( 春分のときの日の出の方位が南東など ) である これを 方位ズレ型 とした この解答は 17.4% である また, 南中同様に その他 と 無解答 を分類した ( 図 2 および表 7 参照 ) 37

表 6 南中の位置についての解答パターン南中位置正解天頂通過型北中型その他無解答季節正解 141 (47.3) 30 (10.1) 6 (2.0) 26 (8.7) 21 (7.0) 季節不正解 43 (14.4) 15 (5.0) 16 (5.4) 計 184 (61.7) 45 (15.1) 22 (7.4) 26 (8.7) 21 (7.0) 表 7 日の出, 日の入りの方位についての解答パターン方位正解真東 真西型方位ズレ型その他無解答季節正解 97 (32.6) 48 (16.1) 32 (10.7) 26 (8.7) 21 (7.0) 季節不正解 23 (7.7) 31 (10.4) 20 (6.7) 計 120 (40.3) 79 (26.5) 52 (17.4) 26 (8.7) 21 (7.0) 表 5 6 ともに ( ) 内は全解答中の割合 (%) 完全正答 の例 天頂通過型 の誤答例 北中型 の誤答例 その他 の誤答例 真東 真西型 の誤答例 方位ズレ型 の誤答例 図 2 設問 1 天球モデルへの書き込み 解答例 4. 考察 (1) 設問 1 と設問 2 での正解者数の比較設問 1 の正答率は,25.8% と該当単元の学習直後の結果としては低い 太陽の軌道を選択肢から選択した山崎らの調査結果の正答率の半分以下となり, 理解が不十分であることがわかる 設問 2 を正しく認識しているほど, 設問 1 の正答数が多くなる このことから, 季節による太陽の動きの変化を正しく理解し表現するためには, 宇宙視点から地球と太陽の位置関係を捉えることも必要だといえる (2) 南中の位置の認識太陽の 南中の位置 の認識と 日の出, 日の入りの方位 の認識では, 日の出, 日の入りの方 位 の認識が有意に低い 南中は生活時間帯に観察ができるため, 生活経験として季節によって南中高度が変化することを経験している 一方で, 日の出, 日の入りを見ることなどの生活経験は南中の位置を体感することに比べて少ない このことが関係していると考えられる また, 教科書の記載は, 南中は地上視点と宇宙視点から丁寧に解説されているが, 日の出, 日の入りの方位の変化の解説は十分でないことも要因と考えられる 南中の位置における誤答については, 南中が天頂を通過してしまう誤答が多い 夏至の南中高度は約 78.4 に達する 約 78.4 を見上げた観察は, 実際よりも真上に近いと感じる そのような生活経験から, 夏には天頂に達していると感じて 38

いる生徒がいると推測する また, 季節の選択が間違っている生徒は, 太陽の軌道の図が季節と対応していない 教科書の図を単純に図形として暗記している可能性がある (3) 日の出, 日の入りの方位の認識季節に関わらず日の出, 日の入りが真東から真西になる生徒は, 太陽は東から昇り, 西に沈む という小学校の学習の, 東と西 を 真西と真東 と捉えている可能性が高い 教科書での日の出, 日の入りの方位の扱いは, 南中の位置 と比較して限定的であることも原因だと考える 5. おわりに季節による太陽の動きの変化についての生徒の認識は低い 季節による太陽の動きの変化の正しい理解のためには, 生徒の生活時間帯にない日の出から南中, 日の出までを定期的に, かつ定点から観察する必要がある そのためには, 学校教育での時間的, 空間的な制限を越えた活動が求められる さらに, 宇宙からの視点と, 地上からの視点 ( 天球モデル ) を統合して考えるような, 視点移動を伴った思考も求められる このような条件を解決する教材, 教具の工夫が求められる また, 天球モデルを三次元に捉えられていなかったり, 意味を理解できていなかったりする生徒も全体の 8.7% いる この質問紙では理解を測定することは難しい生徒である 新たな調査方法の開発と共に, これらの生徒がワークシート上の天球モデルをどのように認識しているのかを調査する必要がある 引用 参考文献懸秀彦 : 理科崩壊 小学校における天文教育の現状と課題, 天文月報,12 月号,pp.726-736,2004 荒井豊 : 理科における視点移動能力の習得に関する一考察 地球の自転 の指導において, 理科教育学研究,41(1),pp.25-35, 2000 有馬朗人ほか 62 名 : 新版理科の世界 3, 大日本図書,pp.197-254,2016 細矢治夫, 養老孟司, 丸山茂徳ほか 27 名 : 自然の探究中学校理科 3, 教育出版, pp.154-205,2016 間處耕吉, 林武広 : 視点移動能力の習得を重視し た金星の見え方の新指導, 地学教育,66(2), pp.31-41,2013 松森靖夫 : 児童生徒の空間認識に関する考察 (Ⅲ) 視点移動の類型化について, 日本理科教育学会研究紀要,24(2),pp.27-34,1983 岡村定矩, 藤島昭ほか 49 名 : 新編新しい科学 3, 東京書籍,pp.178-229,2016 霜田光一, 森本信也ほか 29 名 : 中学校科学 3, 学校図書,pp.181-238,2015 土田理, 小林学 : 児童 生徒の天文分野における視点移動能力の発達過程と関係する基礎的研究, 地学教育,39(5),pp.167-176,1986 塚田捷, 大矢禎一, 江口太郎, 鈴木盛久ほか 58 名 : 未来へひろがるサイエンス3, 啓林館, pp.34-80,2016 柳本高秀 : 天文分野における日周運動と年周運動に関する一考察, 北海道立教育研究所附属理科教育センター研究紀要 (27),pp.50-53,2015 山崎良雄, 高橋典嗣, 宮脇陽 : 中学校理科における天文分野に関する基礎研究 (III : 自然科学編 ), 千葉大学教育学部研究紀要. III, 自然科学編 49, pp.43-57,2001 付記本研究は,JSPS 科研費 26282030,26590228 の助成を受けたものである 39

資料 1 季節による太陽の動き 質問紙 40