<4D F736F F F696E74202D2093A790CD97C AA92988CF882B582BD838A C582CC88EA97E12893BF E707074>

Similar documents
九州支部卒後研修会症例

(1) ) ) (2) (3) (4) (5) (1) (2) b (3)..

2010 年 6 月 25 表 身体所見 134 cm 31 kg /60 mmhg 83/ ,

腎性尿崩症の3例

untitled

125 2 P 1st washout 2 PB P mg/dL nd washout 2 P 5.5mg/dL< mg/dL <2.5mg/dL P P 2 D D 3 Ca 10

sick contact1l

Microsoft PowerPoint - 薬物療法専門薬剤師制度_症例サマリー例_HP掲載用.pptx

高脂血症の検査

2.7.6 MJR a MRI CT b 2 Beecham r-afs mg/ mg/ Gn-RH 742

表 1 入院時検査所見 11,500L 471 L 17.0 gdl.3 L ph 7.49 PaCO 37.8 mmhg PaO 67.4 mmhg HCO 3.6 meql B E 1. meql 141 meql K 3.9 meql Cl 108 meql Ca 8.4 mgdl P 4.5

BUN, CRP K mg/ cm, 49.6 kg, BMI /72 mmhg, 92/ Hb 6.7 g/dl PT-INR CT 1 MRI 2a, b T1 T2 T1 MRI

387 ( ) ( ) ( ) ( ) ( ) ( ) ( ) ( ) ( ) ( ) ( ) ( ) ( )

/12/28 UP 3+, TP 4.2g/dl, Alb 1.9g/dl PSL 50mg/day 1/17 PSL 45mg/day PSL 2006/4/4 PSL 30mg/day mpsl mpsl1000mg 3 2 5/ :90 / :114/64 mmhg

72 20 Ope / class Alb g/ cm 47.9kg : /min 112/60m

_”÷’X

症例 A: 30 歳 女性 半年くらい前から徐々に全身倦怠感が増強 診察時の検査で BUN 130 mg/dl ( 正常値 : 9~20) クレアチニン 11.4 mg/dl ( 正常値 : 0.5~1.0) である 症例 B: 38 歳 男性 10 年前から高血圧を指摘され 6 年前から高血圧が悪

敗血症性ショックから DICを来たした一例

_03大山.indd

慈大呼吸器_25-1_02T_CS5.indd

佐賀県肺がん地域連携パス様式 1 ( 臨床情報台帳 1) 患者様情報 氏名 性別 男性 女性 生年月日 住所 M T S H 西暦 電話番号 年月日 ( ) - 氏名 ( キーパーソンに ) 続柄居住地電話番号備考 ( ) - 家族構成 ( ) - ( ) - ( ) - ( ) - 担当医情報 医

<8C9F8DB85F3338E4508CB495612E786C73>


血糖高いのは朝食後のため検査項目 下限値上限値 単位名称 9 月 3 日 9 月 6 日 9 月 15 日 9 月 18 日 9 月 21 日 9 月 24 日 9 月 28 日 10 月 1 日 10 月 3 日 10 月 5 日 10 月 9 日 10 月 12 日 10 月 15 日 10 月

糖尿病経口薬 QOL 研究会研究 1 症例報告書 新規 2 型糖尿病患者に対する経口糖尿病薬クラス別の治療効果と QOL の相関についての臨床試験 施設名医師氏名割付群記入年月日 症例登録番号 / 被験者識別コード / 1/12

_02三浦.indd

59 20 : 50 : : : : : 2 / :20 / 25 GTP /28 5/3 5/4 5/8 6/1 1 7kg 6/9 :178.7cm :68.55kg BMI:21.47 :37.3 :78 / :156/78mmHg 1

日本呼吸器学会雑誌第47巻第6号

CPC

減量・コース投与期間短縮の基準

基準範囲の考え方 ph 7.35~ mmHg pco2 mmhg po2 mmhg HCO3 mmol/l BE mmol/l 35~45 85~105 60> 呼吸不全 21~28-2~+3 so2(%) 95~99% 静脈 pco2=45mmhg po2=40mmhg 動脈 pco

生化学検査 臨床検査基準値一覧 近畿大学病院 (1) 検査項目 基準値 単位 検査項目 基準値 単位 CRP mg/dl WBC /μl Na mmol/l M RBC K mmol/l F 3.86-

デスフルラン

Sample2 g/dl Target1 : 6.01 g/dl TP Target2 : 8.39 g/dl

日本呼吸器学会雑誌第44巻第1号

日本呼吸器学会雑誌第44巻第6号

人間ドック結果報告書 1/5 ページ 所属 : 株式会社 ケンコウタロウ健康太郎 様 性別 / 年齢 男性 / 49 歳 生年月日 昭和 40 年 3 月 17 日 受診日 平成 26 年 5 月 2 日 受診コース 人間ドック ( 胃カメラ ) 問診項目 今回前回前々回平成 26 年 5 月 2

1 2 2 ANCA pouci immune IgG C3 ANCA 68 '01 '02 7 UN 14mg/dl, Cr 0.7 mg/dl, -, - ' UN 45mg/dl, Cr 2.4 mg/dl, Ht 29.5%, 4+, cm 61

1 8 ぜ 表2 入院時検査成績 2 諺齢 APTT ALP 1471U I Fib 274 LDH 2971U 1 AT3 FDP alb 4 2 BUN 16 Cr K4 O Cl g dl O DLST 許 皇磯 二 図1 入院時胸骨骨髄像 低形成で 異常細胞は認め

ページつき

日本呼吸器学会雑誌第44巻第10号

日本呼吸器学会雑誌第48巻第6号

untitled

障害程度等級表 級別じん臓機能障害 1 級 じん臓の機能の障害により自己の身辺の日常生活活動が極度に制限されるもの 2 級 3 級 じん臓の機能の障害により家庭内での日常生活活動が著しく制限されるもの 4 級 じん臓の機能の障害により社会での日常生活活動が著しく制限されるもの

モーニングレクチャー 腎臓内科編

本文1-5.indd

37, 9-14, 2017 : cefcapene piperacillin 3 CT Clostridium difficile CD vancomycin CD 7 Clostridium difficile CD CD associate

医学教育用基準範囲 JCCLS 共用基準範囲に基づく 医学部学生用基準範囲設定についてのパブリックコメント公募 JCCLS 基準範囲共用化委員会 JCCLS 共用基準範囲は一般的な臨床検査 40 項目の基準範囲であり 日本臨床検査医学会 日本臨床化学会 日本臨床衛生検査技師会 日本検査血液学会の共同

J Hospitalist Network Journal Club! DKAの輸液は生食と乳酸リンゲル液では どちらがいいのか! Fluid management in diabetic-acidosis! Ringer s lactate versus normal saline:! a ran

遡及調査にて77日前の献血時のHBVウイルス血症が確認できた急性B型肝炎の一例

Microsoft Word - 第1回RCPC案内

1. 重篤な不正出血の発現状況 ( 患者背景 ) (1) 患者背景 ( 子宮腺筋症 子宮筋腫合併例の割合 ) 重篤な不正出血発現例の多くは子宮腺筋症を合併する症例でした 重篤な不正出血を発現した 54 例中 48 例 (88.9%) は 子宮腺筋症を合併する症例でした また 子宮腺筋症 子宮筋腫のい

ONS60409_gencyo.indd

190 東京医科大学雑誌第 72 巻第 3 号 東医大誌 72 3 : , 2014 The Current State and the Prospects for the Future of Center for Health Surveillance and Preventive

糖尿病

症例報告書の記入における注意点 1 必須ではない項目 データ 斜線を引くこと 未取得 / 未測定の項目 2 血圧平均値 小数点以下は切り捨てとする 3 治験薬服薬状況 前回来院 今回来院までの服薬状況を記載する服薬無しの場合は 1 日投与量を 0 錠 とし 0 錠となった日付を特定すること < 演習

小児感染免疫第25巻第2号

BMP7MS08_693.pdf

2017 年 9 月 画像診断部 中央放射線科 造影剤投与マニュアル ver 2.0 本マニュアルは ESUR 造影剤ガイドライン version 9.0(ESUR: 欧州泌尿生殖器放射線学会 ) などを参照し 前マニュアルを改訂して作成した ( 前マニュアル作成 2014 年 3 月 今回の改訂

はじめに この 成人 T 細胞白血病リンパ腫 (ATLL) の治療日記 は を服用される患者さんが 服用状況 体調の変化 検査結果の経過などを記録するための冊子です は 催奇形性があり サリドマイドの同類薬です は 胎児 ( お腹の赤ちゃん ) に障害を起こす可能性があります 生まれてくる赤ちゃんに

Microsoft Word - 血液検査.docx

 85歳(141


H26_大和証券_研究業績_C本文_p indd

- 9 91, (2006)

腎薬ニュース第 5 号 (2007 年 6 月 ;2012 年 1 月加筆修正 ) 熊本大学薬学部臨床薬理学分野平田純生 添付文書どおり腎機能に基づいた投与量にしても起こるアシクロビル中毒の原因は? 1. アシクロビル中毒の症状は? 慢性腎臓病 (CKD) 患者に頻発するアシクロビル バラシクロビル

08症例報告4山内.indd

健康な生活を送るために(高校生用)第2章 喫煙、飲酒と健康 その2

スイスイ検診ってなに?? 20 歳以上の方で ご自分の身体について ふと思う事はありませんか? たとえば 健康について気になるけど健康診断 人間ドックを受けていない! 病院で診察を受けるまでもないけど ちょっと気になる! 健康管理に気をつけているから大丈夫だと思うけど 検査の数値が気になる! 主人は

透析看護の基本知識項目チェック確認確認終了 腎不全の病態と治療方法腎不全腎臓の構造と働き急性腎不全と慢性腎不全の病態腎不全の原疾患の病態慢性腎不全の病期と治療方法血液透析の特色腹膜透析の特色腎不全の特色 透析療法の仕組み血液透析の原理ダイアライザーの種類 適応 選択透析液供給装置の機能透析液の組成抗

パネルディスカッション 2 Q 専門領域について選択してください 1. 消化器内科 2. 消化器外科 3. 放射線科 1% 4% 3% 21% 4. その他の医師 5. その他 ( 医師以外 ) 71%

「血液製剤の使用指針《(改定版)

NEW版下_健診べんり2016_01-12

I はじめに本年 1 月 29 日 東京都から厚生労働省に対し 兵庫県及び千葉県において 有機リン中毒の疑いがある事案が発生し 両県事案においては 患者すべてが発症直前に JTフーズ ( 株 )( 東京都品川区 ) が中国から同一時期 ( 平成 19 年 11 月 ) に輸入した同一製造者 ( 河北

現況解析2 [081027].indd

診療工房 診診連携機能説明資料 診療工房について 1. 新しい診診連携機能 2. 情報提供 ( 診診送信 ) の仕方 3. 受信確認の仕方 4. システム設定の受信設定タブ 5. 新しいログイン管理 6. 検査データコピー機能ランチャーについて 7. 県中のボタン医師署名システムについて 8. 医師

untitled

巻 頭 言

Microsoft Word - 平成24年度医学部卒業試験問題-2.docx

2 章 +αの 情 報 に 着 目 する! 1 血 球 算 定 検 査 結 果 2 生 化 学 検 査 結 果 手 がかりに 乏 しいのも+α 1 症 例 をみてみよう! 1 60 吉 見 祐 輔 percutaneous coronary intervention PCI

BA_kanen_QA_zenpan_kani_univers.indd

酸塩基平衡


H29_第40集_大和証券_研究業績_C本文_p indd

SpO2と血液ガス

Microsoft PowerPoint - 当日H3001標準化報告会用hiramitu.pptx

Microsoft Word - 基準文書1.doc

スライド 1

対象 :ICU で急性血液浄化法が必要な患者を診療する機会のある医師 急性血液浄化法は ICU における急性期管理の重要な治療方法の一つです しかし エビデンスの乏しさ 設備や器具の準備 マンパワー等の問題もあり その施行は施設によって異なっていると思われます 今回のアンケートでは 導入 準備 具体

レジデント初期研修用資料 内科診療ヒントブック 改訂2版

CD1 data

Part 1 症状が強すぎて所見が取れないめまいをどうするか? 頭部 CT は中枢性めまいの検査に役立つか? 1 めまい診療が難しい理由は? MRI 感度は 50% 未満, さらには診断学が使えないから 3

血圧低下に対する工夫

がん化学(放射線)療法レジメン申請書

indd

Microsoft Word - CDDP+VNR患者用パンフレット doc

低マグネシウム血症

PowerPoint プレゼンテーション

研究協力施設における検討例 病理解剖症例 80 代男性 東京逓信病院症例 1 検討の概要ルギローシスとして矛盾しない ( 図 1) 臨床診断 慢性壊死性肺アスペルギルス症 臨床経過概要 30 年前より糖尿病で当院通院 12 年前に狭心症で CABG 施行 2 年前にも肺炎で入院したが 1 年前に慢性

第1 総 括 的 事 項

Transcription:

透析療法が著効した リチウム中毒の一例 徳之島徳洲会病院 2 年次研修医 中嶋駿介 山本朋納

症例 患者 50 歳代女性 主訴 意識障害 発熱 現病歴 30 年以上前から躁うつ病にて近医精神科に通院し 入退院を繰り返していた 来院 10 日前から下肢の脱力を自覚し ふらついて転倒するようになった 来院 8 日前に四肢の脱力を自覚し 同院に入院となった 来院 4 日前に 38 の発熱が出現 血中リチウム濃度が 2.56mEq/L と中毒域であったため 内服を減量 来院 2 日前から四肢の脱力が増悪し その後意識障害が出現し 舌根沈下 眼球上転がみられたため 全身管理目的に当院に転院搬送となった 入院時現症 JCS 20, BT 38.8, HR 64, BP 116/62 RR 20, SpO2 89%(room) 来院時の身体所見には特記事項なし

症例 既往歴 躁うつ病 社会生活歴 タバコ ; なしアルコール ; なし 内服歴 炭酸リチウム (200) 3T/3x ニューレプチル (5) 2T/2x トリヘキシン (2) 3T/3x サイレース (1) 1T/1x ベゲタミンB 1T/1x

Laboratory Data Hematology CPK 109 IU/l blood gas analysis WBC 8330 /mm 3 TP 6.4 g/dl (room air, RR 20) Hb 8.6 g/dl ALB 3.7 g/dl ph 7.411 Ht 28.9 % BUN 20.1 mg/dl pco2 31.7 MCV 103.6 fl Cre 1.1 mg/dl po2 102.8 MCH 30.8 pg Na 146.3 meq/l HCO3 19.7 MCHC 29.8% K 4.7 meq/l urine analysis Plt 12.8 10 10 3 /mm 3 Blood biochemistry Cl 114.9 meq/l 性状 T-Chol AST 16 IU/I HDL-C ALT 18 IU/l LDL-C LDH 198 IU/l TG ALP 308 IU/l CRP γ-gtp 32 IU/l BNP 性状 134 mg/dl 比重 53 mg/dl ph 99 mg/dl 蛋白 黄 清 比重 1.010 ph 6.5 蛋白 (-) 78 mg/dl 糖 (-) 0.04 mg/dl ケトン (-) 1426 pg/ml 潜血 (-) AMY 47 IU/l posm 304 mosm/l uosm 325 mosm/l

頭部 CT(2009/08/07)

頭部 MRI(2009/09/07)

#1 リチウム中毒 #2 意識障害 #3 発熱 #4 心不全 #5 相対的徐脈 #6 貧血 #7 Na Cl 軽度上昇 #8 BUN/Cre 上昇 #9 躁うつ病 Problem List

#1 リチウム中毒 Assessment & Plan 補液を中心にみていく (2000ml/day) #2 意識障害 リチウム中毒が考えられるが 発熱も伴っており 脳炎や髄膜炎の可能性も考慮し 髄液穿刺施行 #3 発熱 胸部 CT 尿検査では明らかな炎症のFocusはとらえられない #2とともに髄膜炎 脳炎の可能性も考慮して髄液穿刺 アシクロビル250mg q8hを投与 #4 心不全 まずは他の治療をしながら エコー等でフォローアップしていく

#5 相対的徐脈 Assessment & Plan 体温上昇に対して脈拍数が遅く 相対的徐脈と判断 おそらくリチウム中毒によるものと考え 原疾患の治療を優先 #6 貧血 原疾患の治療をしながら経過フォローアップ #7 Na, Cl 高値 #8 BUN/Cre 高値 脱水の影響か 輸液にて対応 #9 躁うつ病 リチウム中毒が安定するまでは治療中止

髄液検査 初圧 ;17mmH2O 外観 ; 清 細胞数 ;2/mm 3 ( 単核球 ;100% 多核球;0%) 蛋白 ;26.0 mg/dl 糖 ;85 mg/dl

経過 1 透析 1 透析 2

経過 2 入院翌日から徐々に意識レベル回復 尿量は 1 日 3000~4000ml 以上出ており 輸液負荷しているにも関わらず 脱水が改善せず Na 濃度が徐々に上昇 電解質異常が改善せず 当院に来院してからのリチウム濃度が不明であり 前医受診時よりもリチウム濃度が高値である可能性もあったため 8/11 血液透析施行 透析にて Na 濃度は 150 台に低下したが その後も改善ないため 8/13 に再度透析施行 8/14 に当院到着時の Li 濃度が 1.22mEq/L であることが判明 その後は電解質異常なく In-out Balance も改善し 徐々に症状軽快したため 8/29 退院 相対的徐脈については 原疾患の治療とともに改善

考察 ~ リチウム中毒と透析療法について ~

躁病治療に対する炭酸リチウム 1949 年に Cade が躁状態の治療薬として炭酸リチウムを用いてから 感情障害全般にリチウム療法が普及した

炭酸リチウム 治療域血中濃度 ;0.6~1.2mEq/L 0.6~1.2mEq/L; 躁病予防 1.0~1.5mEq/L; 急性躁病治療 1.5~2.5mEq/L; 軽度中毒 2.5~3.5mEq/L; 中等度中毒 3.5mEq/L 以上 ; 重度中毒 ( 致死的 ) 最高血中濃度到達時間 ; 約 3 時間 吸収率 ( 経口 );100% 生物学的半減期 ; 約 10 時間 24 時間以内に約 60% が尿中へ排泄 ( 代謝はされずほとんどが腎から排泄 )

リチウム中毒 症状 中枢神経系症状意識障害 運動過多 筋力低下 小脳症状 発語障害 嚥下障害 知覚障害 ミオクローヌス 循環器系症状血圧低下 不整脈 心電図異常 (T 波陰転化 ) 消化器系症状嘔気 嘔吐 下痢 泌尿器系症状乏尿 腎性尿崩症 遠位尿細管アシドーシス その他甲状腺機能低下 ARDS

治療上の注意点 リチウム中毒 リチウムは活性炭に吸着しない 大量服用では 服用後数時間してから症状出現 治療目的で長期間服薬を継続している患者で 中毒症状が出た場合は 重症で難治性 細胞内に蓄積したリチウムは細胞外液中にはなかなか出てこない リバウンド現象が起こる

リチウム中毒 治療 一般的支持療法気道確保 酸素投与など 胃洗浄大量服薬後まもなくであれば有効 補液腎機能が正常であれば有効 活性炭ハロペリドールなど多剤と併用の場合有効 その他リチウム排泄促進目的で アミノフィリン マンニトール炭酸水素ナトリウム アセタゾラミド

リチウム中毒と透析療法 リチウムは分子量が低く 蛋白に結合しない 透析されやすい物質 リチウムクリアランス 生体 ( 腎 );15~20ml/min 血液透析 ;70~170ml/min CHDF;38~62ml/min しばしば透析後に血中濃度の再上昇を認める 透析時間が長い方がよい 6 時間以上

Indication for hemodialysis in lithium poisoning (Timmer RT et al ; Lithium intoxication, J Am Soc Nephrol. 1999 ; 10 ; 566-74) Lithium level;>6meq/l any patient Lithium level;>4meq/l any patient on chronic lithium therapy Lithium level;2.5-4meq/l any patient with severe neurologic symptoms, renal insufficiency, or unstable hemodynamically or neurologically Lithium level;<2.5meq/l hemodialysis indicated only for patients with end-stage renal disease or patients whose lithium levels increase after admission or whose lithium level below 1 meq/l in 30h

結語 リチウム中毒により高ナトリウム血症を来たし血液透析にて著明に改善した 1 例を経験した 離島ではリチウム濃度の結果が出るには相当な時間を要するので 重症度を上げて結果が出る前に対処することが求められる

Reference 原田幸児ら ; リチウム中毒が原因と考えられた急性腎不全の 1 例 ;ICU と CCU, 2006;30 別冊号 ;165-166 中島修二ら ; 炭酸リチウム中毒に血液透析を用いた 2 症例 ; ICU と CCU, 2006;30 別冊号 ;167-169 忽滑谷和孝ら ; リチウム中毒患者への血液透析の適応 ; 精神科治療学 6(2), 1991;193-202 戸田成志ら ; 持続的血液濾過透析が有用であった重症慢性リチウム中毒の 1 症例 ; 日本救急医学会雑誌 15(10), 2004; 556-559 竹原栄一ら ; 洞機能不全を呈したリチウム中毒の 1 症例 ; 中毒研究 (7), 2004;59-62 Timmer RT et al ; Lithium intoxication, J Am Soc Nephrol. 1999 ; 10 ; 566-74