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情報理工学実験レポート 実験テーマ名 : ムーアの法則に関する調査 職員番号 4570 氏名蚊野浩 提出日 2019 年 4 月 9 日 要約 大規模集積回路のトランジスタ数が 18 ヶ月で2 倍になる というムーアの法則を検証した その結果 Intel 社のマイクロプロセッサに関して 1971 年から 2016 年の平均で 26.4 ヶ月に2 倍 というペースであった このことからムーアの法則のペースが遅くなっていることがわかった ムーアの法則は半導体チップの微細化と大面積化によって実現されてきた 半導体チップの面積に関して 現在では チップの面積は用途によってさまざまである スマホのようなモバイル用途のチップは小さく サーバー用のチップは大きい 半導体チップの微細化は 現在まで順調に進歩してきた しかし 今後は不透明である 2020 年代以降 微細化技術は限界に達する可能性が高いように思われる これらのことから 今後のコンピュータ技術の進歩は アーキテクチャやシステムあるいはアルゴリズムよる改善が重要になる

目次 1. 実験の目的... 1 2. 実験の方法... 1 3. 実験結果... 1 3.1 発表年とトランジスタ数の関係... 1 3.2 発表年と線幅 面積の関係... 3 4. 考察 検討... 4 5. 結論... 4 参考文献... 5 ii

1. 実験の目的ムーアの法則を調査することで 大規模集積回路技術のトレンドを理解することが目的である また この実験レポートの作成を通じて グラフ作成のノウハウやレポート作成の基礎を習得する 2. 実験の方法あらかじめ配布された ムーアの法則に関する調査用資料 [1] を用いる その資料に掲載されている Intel 社の主なプロセッサの名称 発表年 トランジスタ数などの数値を利用する 表に掲載されている数値をグラフ化することで トレンドを可視化し 傾向を定量的に読み取る 3. 実験結果 資料 [1] のデータを表 1に再掲する この表の数値をグラフ化することでムーアの法 則など 大規模集積回路の製造に関するトレンドを解析した 表 1 Intel 社の主な CPU の発表年 トランジスタ数などのデータ 2,, ( ) ),, ), (, ), ( ( ( ),, 379,,, 3793,,( ( ( ( 2 5 5 379,, ( (,( 2559 379,,,, ( ( 495 77 379 7 7 ), )( 7 9 ( ) 1 C - 9687 7 9 ) -56B70 7 9 ) ) 3.1 発表年とトランジスタ数の関係 表 1の発表年を横軸に トランジスタ数を縦軸にとった通常スケールのグラフを図 1 に示す 図において Pentium 4 のトランジスタ数は 4,200 万個であるが この程度の トランジスタ数では 0 の軸に貼りついたようになる トランジス数の増加傾向が直線 1

的ではないため 通常のグラフでは正しく傾向を読み取ることができない 指数関数の性質を持つ変化を 線形のスケールでグラフ化した場合 この例のように L 字型になってしまうことがある 3,500,000,000 3,000,000,000 2,500,000,000 2,000,000,000 1,500,000,000 1,000,000,000 500,000,000 0 図 1 マイクロプロセッサの発表年とトランジスタ数の関係図 1と同じデータを 縦軸を対数化してグラフ化すると図 2を得る このグラフではデータの点列が直線化されている 実際には 縦軸が 1000,10000,100000 と増加しているので トランジスタ数の増加傾向は指数のオーダである 図中の青点線は Excel の機能で作成した指数曲線 ( グラフ上では直線になる ) である 1.E+10 1.E+09 1.E+08 1.E+07 1.E+06 1.E+05 1.E+04 1.E+03 図 2 マイクロプロセッサの発表年とトランジスタ数の関係 ( 縦軸を対数化 ) ムーアの法則は 集積回路上のトランジスタ数が 18 ヶ月 (1.5 年 ) ごとに倍になる 2

ということで これを式で表現すると n 年後の倍率 p は p=2 n/1.5 となる [2] これは 10 年間で約 100 倍のペースである これを図 2に重ねると赤点線になる 青と赤の点線を比較すると 今回のデータで検証したトランジスタ数の増加傾向は 確かに指数オーダになっているが 18 ヶ月で2 倍 のペースよりは緩やかである 表 1の 4004 から Core i7 Broadwell-E を比較すると 45 年でトランジスタ数が 1,391,304 倍になっている これは 概ね 26.4 ヶ月で2 倍 のペースである 3.2 発表年と線幅 面積の関係表 1から発表年が進むにつれ 線幅が小さくなっていることがわかる この関係をグラフ化したものが図 3である 図 3 左のグラフは縦軸が線形になっている 右のグラフは縦軸が対数になっている 線幅の縮小傾向は トランジスタ数の増加ほどに劇的ではないでの 通常のグラフ表示でも縮小の傾向を読み取ることができる しかし 片対数のグラフを用いると 傾向がより鮮明になる 12,000 100,000 10,000 10,000 8,000 1,000 6,000 4,000 100 2,000 10 0 1 図 3 マイクロプロセッサの発表年と線幅の関係発表年と面積の関係をグラフ化したものが図 4である マイクロプロセッサは 1990 年代までは 単調に大型化していたことが読み取れる その後は 用途に応じて いろいろな面積のチップが設計されている スマホなどモバイル向けは小さく (100mm 2 程度 ) パソコン向けは中ぐらい (200mm 2 程度 ) サーバー向けは大きく(400mm 2 以上 ) なっているようである マイクロプロセッサに実装できるトランジスタ数は線幅の2 乗に反比例し 面積に比例すると考えられる 4004 と Core i7 Broadwell-E を比較すると 線幅が 10,000:14 面積が 12:246 である これから Core i7 Broadwell-E は 4004 の 10,459,183 倍のトランジスタを実装できると推定できる これは 実際の数値である 1,391,304 倍に近い数値である このことから 大規模集積回路の実装密度は VLSI のデザインルールである線幅によって ほぼ決まっていることがわかる 3

350 300 250 200 150 100 50 0 図 4 発表年と面積の関係 4. 考察 検討ムーアの法則は 18 ヶ月でトランジスタ数が2 倍になる ということではあるが 18 ヶ月から 24 ヶ月で2 倍になる という説明もしばしば見かける 今回 文献 [3] を使い 1971 年から 2016 年までの Intel 社の代表的なマイクロプロセッサについて検証した結果 この期間の平均では 26.4 ヶ月で2 倍であった したがって ムーアの法則を維持することが難しくなっていることがわかる ムーアの法則は線幅の微細化とチップ面積の大型化によって支えられていた モバイルやパソコンの用途では チップ面積の増加傾向は見られなくなっている これが 18 ヶ月で 2 倍 を維持できない一つの理由である 線幅の微細化は ペースを維持するための製造コストが膨大になっているし 微細化の限界も近い [4] 2020 年代には 大規模集積回路の実装密度が飽和していくと考えられる そのようになれば コンピュータ技術の進歩は アーキテクチャ的な工夫 アルゴリズム的な工夫 システム的な工夫 ソフトウエア的な工夫の比重がますます大きくなる 5. 結論インターネット上の情報を利用してムーアの法則を検証した その結果 大規模集積回路に実装できるトランジスタ数が 18 ヶ月で2 倍になる というペースを維持できていないことがわかった インテル CPU に関して 1971 年から 2016 年の平均で 26.4 ヶ月で2 倍 というペースであった 2020 年代になれば 集積回路の密度は飽和傾向になる このことから 今後のコンピュータ技術の進歩は アーキテクチャ的な工夫 4

アルゴリズム的な工夫 システム的な工夫 ソフトウエア的な発想がより重要になる 参考文献 [1] 蚊野浩, ムーアの法則に関する調査用資料 2019 年 [2] ムーアの法則 https://ja.wikipedia.org/wiki/ ムーアの法則 [3] Transistor count, https://en.wikipedia.org/wiki/transistor_count [4] 岩井洋 半導体微細化ロードマップの終焉とその後の世界 http://semicon.jeita.or.jp/strj/strj/2015/2015_08_tokubetsu_v2.pdf 5