第 5 講原子量とモル数 1 原子量 (1) 相対質量 まず, 大きさの復習から 原子 ピンポン玉 原子の直径は, 約 1 億分の 1cm ( 第 1 講 ) 原子とピンポン玉の関係は, ピンポン玉と地球の関係と同じくらいの大きさです 地球 では, 原子 1 つの質量は? 水素原子は,0.167 10-23 g 酸素原子は,2.656 10-23 g 炭素原子は,1.993 10-23 g 原子の質量は, とても軽いので,1 個の重さを使うのは, 小さくて扱いにくい そこで, 相対質量を使います 相対質量とは? 質量そのものではなくて, 何かを基準として質量を表したとき, その値を相対質量という 3 6 1 鉛筆, 消しゴム, 小さな玉のそれぞれの質量を, 小さな玉の質量を基準にして比べる てんびんを使い, 鉛筆は, 小さな玉 3 つ, 消しゴムは小さな玉 6 つと釣り合った 鉛筆 消しゴムは, 小さな玉の数の比から, 小さな玉の質量を基準にして,2 つの質量を表すことができる 1
(2) 原子の質量 では, 原子の質量に, 相対質量の考え方を当てはめてみよう 12 C の炭素原子 1 個の質量 1.993 10-23 g を 12 ぴったりとして, その他を比較した数字を, 相対質量という 単位はつけない 原子 1 個の質量は, きわめて小さい このままだと計算が大変なので, 炭素 1 個の質量を,1.993 10-23 g 12 ぴったりとして, その他の元素も, 計算してみた 水素 0.167 10-23 g 炭素 1.993 10-23 g 酸素 2.656 10-23 g 1.00 12 16.00 H 0.167 10-23 g C O 1.993 10-23g 2.656 10-23 g Na 3.18175 10-23 g H 1 Na 23 C 12 O 16 炭素原子を基準にして, 相対質量を考えると, 水素原子は 1.0, 酸素原子は 16.0 と表すことができる これは, 質量数に近い値になるね もし, 実際の質量で水を計算すると H 2 O,1 分子の重さは (0.167 10-23 2 + 2.656 10-23) = 2.990 10-23 g となり, いつもいつも計算が大変! そこで, 相対質量を使うと (1 2+16)=18g で, おおまかな質量を比較する時に, 質量数を用いることができ, 非常に簡単に計算が出来る 12 C を基準 H 原子 12 OOOO OOOO OOOO 水素原子の相対質量 =1 12 個 基準になる炭素原子 1 個と, 水素原子ならば12 個, 酸素原子 1 個ならば, 水素原子 16 個が釣り合うことを意味している ( 注 ) 映像では, 表示上の都合のため, 一部表現が省略されています 2
(3) 同位体の存在比 すでに第 2 講で, 同位体とは, 同じ元素でできているが, 質量数の異なることも習った 天然に存在する元素の多くは, さまざまな種類の同位体が一定の割合で混ざっている 原子量とは, 各同位体の質量に, それぞれのを かけて, 和を求めた 値である 原子量には単位はありません 12 C 13 C 相対質量 12 13 存在比 98.9% 1.1% 13 C 自然界では 99 個の 12 C の炭素に対して 1 個の 13 C が存在する 見て区別することは困難だ 12 C すべて 12.01 とする 分けることが出来ないならば, 平均値を計算し, すべてを 12.01 の炭素として取り扱う 98.9 1.1 原子量 = 12 + 13 = 12.01 100 100 注意 1 元素によっては,1 種類の原子しか存在せず, 同位体のないものもある (Be,F,Na,Al,P 等 ) この場合相対質量が, そのまま原子量になる 3
例題 1 塩素は, 相対質量 35 の原子が 75%, 相対質量 37 の原子が 25% 存在している 塩素の原子量を計算せよ 金属の Cu( 銅 ) は, 相対質量 62.9 の原子が 69%, 相対質量 64.9 の原子が 31% 存在している 銅の原子量を計算せよ. 4
2 分子量 式量 分子量は, 各原子の原子量の和で計算する 分子量も原子量と同じように, 単位はつけません 例えば, H 2 O と書く, 水分子で考えてみよう H の原子量が 1.0,O の原子量が 16 なので, 水の分子量は, 合計の 18 です CO 2 の場合も, 考えてみよう O の原子量が 16,C の原子量が 12 なので, 二酸化炭素の分子量は, 合計の 44 となります 水分子 H 2 O H O H 二酸化炭素 CO 2 O OC O H H O 原子量 1.0 1.0 16 分子量 18 OC O 原子量 12 16 16 分子量 44 O さらに, 塩化ナトリウム NaCl を見てみよう 塩化ナトリウムは, 分子をつくらず,Na + と Cl - というイオンからできている Na の原子量 23 と,Cl の原子量 35.5 をそのまま足して,58.5 となります この 58.5 は, 分子量に対して, 式量という + Na Cl O- 原子量 23 35.5 式量 58.5 5
まとめ 例題 2 次の分子量, または式量を求めよ ただし, それぞれの原子量は, 次を使うこと (H=1.0,C=12.0,N=14.0,O=16.0,Na=23.0,Cl=35.5) (1)NH 3 (2)HCl (3)HNO 3 (4)Na 2 CO 3. 6
3 物質量 ( モル数 ) (1) 小さな粒の集まり化学では, 小さな原子という粒から, 物質はできていると習ったね つまり, コップの中の水は, 小さな小さな水分子の粒が集まって, やっと, 液体として目に見えてるというイメージが大切です! 18g = 1 モル 水 H 2 O 酸素 O 2 大きな一粒ではなく, 小さな粒の集まりと考えること いっぱい (2) アボガドロ数物質は, たくさんの粒の集まりで, できていることがわかった しかし, これらの粒子は, 目に見えないほど小さな物質なので, 個を, ひとくくりにして考えます 水 1 粒は, 極めて小さい重さである これをたくさん集めて H 2 O の分子量,18 グラムになるまで, 集めた個数を, という 6.02 10 23 個って? 水 (H 2 O)1 粒の極めて小さな重さ アボガドロ数 = 18g 18g アボガドロ数 = = 6.02 10 23 2.986 10-23 g つまり 6.02 10 23 個は, 相対質量から計算で出てきた数字です だれも数えたことがありません 7
同様に, 原子量, 分子量に g をつけた 炭素原子 1 粒の重さ 1.993 10-23 g 6.02 10 23 酸素原子 1 粒の重さ 2.656 10-23 g 6.02 10 23 CO 2 分子 1 粒の重さ 7.305 10-23 g 6.02 10 23 = 12g = 16g = 44g つまり, 原子や分子の 1 粒の重さに,6.02 10 23 個集めると, 原子の相対質量や分子量の数字になる ( 計算が便利 ) そこで, 細かい数字よりも,6.02 10 23 個集めた重さの方が, 計算が非常にしやすいので, この6.02 10 23 個集まった状態をという 1モルには,6.0 10 23 個の粒子が含まれている 注意 1 個,2 個のように 個 の単位で数えたものは 数 であるのに対して 1mol,2molのように mol の単位で数えたものを, 物質量 という (3) モル数の考え方 モルのイメージは つぶつぶ H 2 O について考えよう 水が 18g 入ったビーカーと,9g 入ったビーカーがある 18g 9g 粒の数は半分 水の分子量は 18, 18g で 6.0 10 23 個集まって, 1mol になっている 今, 水が 9g しかないと, 粒子の数が半分の 3.0 10 23 個であるから, 物質量は 0.5mol となる 8
(4) 気体の体積は? ポイント 気体の体積 = 気体の動ける空間 気体の体積は, 容積と勘違いしてはダメ! 気体の体積は,1 気圧の外圧の中で, 気体の のこと 1 気圧 (5) 気体の体積と, モル数 体積 8.0L 体積 4.0L 粒の数が 2 倍 粒が 8 粒 2 倍になれば動ける空間も 2 倍 4 粒が作る空間 粒の数が半分 体積 2.0L つまり, モルは つぶつぶ なので, 粒の数すなわち 物質量に して, 気体の体積も変わる 9
(6) 気体の標準状態とは? 気体の体積は温度, 圧力などによって, 大きく異なる そこで, 基準となる条件 ( 標準状態 ) を決めた 標準状態というのは,0 1.01 10 5 Pa の状態をいう 標準状態では, どんな気体であろうと 1mol = L 1 気圧 =1.01 10 5 Pa 22.4 L 標準状態では, 水素だろうと二酸化炭素だろうと, メタンだろうと, 6.0 10 23 コの粒子が集まると, その種類に関係なく, 体積が 22.4L になる (7) 気体の標準状態とモル数の関係 6.0 10 23 粒が半分ではコ 3.0 10 23 コ 6.0 10 23 コで L を作るならば 3.0 10 23 コでは 粒が半分しかないので動ける空間も半分 L 10
4 モル数の計算をしよう (H=1.0,C=12.0,N=14.0,O=16.0) 例題 3 次の空欄にあてはまる数値を記入せよ 1) 2.2g の二酸化炭素の物質量は,1 mol で, その標準状態の体積は 2 L である この二酸化炭素の分子の個数は,3 個であり 炭素原子は 4 個, 酸素原子は 5 個である CO 2 = 44 44g=1mol 6.0 10 23 個集まって 22.4L の動ける空間 2) 標準状態で5.6Lの窒素の物質量は,1 molで, その質量は,2 gになる この窒素の分子の個数は3 個であり, 窒素原子の個数は4 個である N 2 = 28 28g=1mol 6.0 10 23 個集まって 22.4L の動ける空間. 11
3) 6.0 10 21 個の H 2 O 分子の物質量は,1 mol で, 質量は 2 g であり, またその標準状態の体積は 3 L である 水素原子は 4 個, 酸素原子は 5 個である H 2 O = 18 18g=1mol 6.0 10 23 個集まって 22.4L の動ける空間 慣れてきたら, これを使うといいね 重さ g 分子量 物質量 粒子数 6.02 10 23 個 物質量 物質量 mol 体積 L 22.4L 物質量 粒子数 6.02 10 23 個 0.01mol = 6.02 10 21 個 重さg 18 0.01mol = 0.18g 物質量 0.01mol 体積 L 22.4L 0.01mol = 0.224L 12
例題 4 次を計算せよ (H=1.0,C=12.0,N=14.0,O=16.0, Al=27.0 アボガドロ数は 6.0 10 23 とする ) (1) 炭素 3.0mol に含まれる粒子の個数は (2) 水 0.2mol の標準状態での体積は何 L か (3) 1 円玉は, アルミニウム 1g であるが, 何 mol になるか (4) この 1 円玉に含まれる粒子の個数は. 13
例題 の解答 例題 1 塩素の原子量 35.5 銅の原子量 63.52 例題 2 (1) 17.0 (2) 36.5 (3) 63.0 (4) 106 例題 3 (1)1 0.05 2 1.12 3 3.0 10 22 4 3.0 10 22 5 6.0 10 22 (2)1 0.25 2 7.0 3 1.5 10 23 4 3.0 10 23 (3)1 0.01 2 0.18 3 0.224 4 12 10 21 5 6.0 10 21 例題 4 (1) 18 10 23 個 (2) 4.48 L (3) 0.037 mol 3 2.2 10 22 個 14