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注釈 * ここでニッケルジメチルグリオキシム錯体としてのニッケルの重量分析を行う場合 恒量値を得るために乾燥操作が必要だが それにはかなりの時間を要するであろう ** この方法は, 銅の含有量が 0.5% 未満の合金において最も良い結果が得られる 化学物質および試薬 合金試料, ~0.5 g, ある

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2 単元の評価規準関心 意欲 態度 科学的な思考 表現 観察 実験の技能 知識 理解 酸 アルカリ, 中和と塩に関する事物 現象に興味 関心を持ち, それを科学的に探究しようとするとともに, 事象を日常生活との関わりで捉えようとする 酸 アルカリ, 中和と塩に関する事象 現象の中に問題を見いだし,

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問題 36. 鉄 (Ⅲ) イオンとサリチルサリチル酸の錯形成 (20140304 修正 : ピンク色の部分 ) 1. 序論この簡単な実験では 水溶液中での鉄 (Ⅲ) イオンとサリチル酸の錯形成を検討する その錯体の実験式が求められ その安定度定数を見積もることができる 鉄 (Ⅲ) イオンとサリチル酸 H 2 Sal からなる安定な錯体はいくつか知られている それらの構造と組成はpHにより異なる 酸性溶液では紫色の錯体が生成する 中性のpHでは酸性溶液とは異なり暗赤色の錯体が また塩基性溶液中では橙色の錯体が生成する この実験はpH 2 付近で行う この条件では鉄 (Ⅲ) イオンの加水分解はほとんど抑制される 計算を簡略化するため 錯形成の際に起きるサリチル酸 H 2 Sal の解離は考慮しない 従って 錯体の構造に関わらず 錯形成は次の平衡式で表すことができる : Fe 3+ + n H 2 Sal Fe 3+ (H 2 Sal) n 従って 安定度定数 K f はつぎの式 (1) で定義される K f 3+ [ Fe ( H 2Sal) n ] = (1) 3+ n [ Fe ][ H Sal] 2 なお鉄 (Ⅲ) イオン濃度 [Fe 3+ ] とサリチル酸濃度 [H 2 Sal] は錯形成していない化学種の濃 度を意味する 錯体 Fe 3+ (H 2 Sal) n は528 nmの光をもっとも強く吸収する ( 鉄 (Ⅲ) イオンFe 3+ とサリチル酸 H 2 Sal はこの波長の光を吸収しない ) その濃度[Fe 3+ (H 2 Sal) n ] と光の吸収 A の間の関係はベールの法則により次式で表される A = ε l [Fe 3+ (H 2 Sal) n ] なお εは錯体のモル吸光係数 l は光路長である 錯体の実験式中のnの値を Job の方法により決めることができる この方法に従い 等モル濃度の鉄 (Ⅲ) イオンとサリチル酸の溶液をそれぞれ用意し つぎにこれらを1:9; 2:8 9:1 の各比率で混合する この

とき 得られる溶液中の試薬濃度の総量はすべて等しい 平衡状態における錯体の形成 量は試薬の比が実験式中の n の値と一致するとき最大となるため 溶液の光学的吸収を 測定すれば実験式を推定することができる 2. 薬品と試薬 : - 適当量の硫酸鉄 (Ⅲ) アンモニウムを 500 ml の 0.0025 M 希硫酸に溶かして調製した 0.0025 M 鉄 (Ⅲ) イオン溶液 - 適当量のサリチル酸を 500 ml の 0.0025 M 希硫酸に溶かして調製した 0.0025 M サリ チル酸溶液 - 0.0025 M 希硫酸 ( 約 50 ml) に溶かして調製した飽和サリチル酸溶液 - 3. 装置とガラスガラス器具 : o ガラスビーカー 100 ml, 50 ml o ビュレット 25 ml, o メスフラスコ 500 ml, o 洗ビン o 0.1 mg まで測定できる電子天秤 o 紫外可視分光光度計 o ガラスセル 4. 実験操作 Step 1. Jobの方法方法によりにより錯体錯体の実験式実験式を求める 1. 0.0025 M 鉄 (III) イオンと 0.0025 M サリチル酸溶液の9 通りの組み合わせの混合物をそれぞれ清潔で乾燥した100 ml のビーカーに入れ さらに 10.0 ml の 0.0025 M 塩酸を加える

混合物 1 2 3 4 5 6 7 8 9 V ml 鉄 (III) イオン 1.00 2.00 3.00 4.00 5.00 6.00 7.00 8.00 9.00 V ml サリチル酸 9.00 8.00 7.00 6.00 5.00 4.00 3.0 2.00 1.0 V ml 0.0025 M 塩酸 10.00 10.00 10.00 10.00 10.00 10.00 10.00 10.00 10.00 ( 注意 : 溶液の容量はビュレットを用いて計る ) 2. 各混合物の吸光度を測定する 3. 鉄 (Ⅲ) イオンに対して吸光度をプロットする 吸光度は化学量論比の混合物で最大 となる Step 2. 錯体のモルモル吸光係数 ε を求める 1. ピペットで 1.00, 2.00, 3.00, 4.00, 5.00, 6.00 ml の 0.0025 M 鉄 (Ⅲ) イオン溶液を 5つのビーカー (100mL) に計り取る 各ビーカーに10.00 ml の飽和サリチル酸溶液を入れ 0.0025 M 塩酸を加えて全量を20.00 ml にする 2. 各溶液の吸光度を測定する 3. 吸光度を鉄 (Ⅲ) イオン濃度 [Fe 3+ ] に対してプロットする ( サリチル酸が過剰に存在するので 鉄の濃度が錯体の濃度に等しいと仮定する ) 4. 直線の傾きからモル吸光係数 ε を計算する Step 3. 安定度定数 K f を求める 1. 3 種類の同じ容積の0.0025 M 鉄 (Ⅲ) イオン溶液と0.0025 M サリチル酸溶液の混合物を100 mlビーカー中に用意し 0.0025 M 塩酸で全量を20 mlにする :

混合物 1 2 3 V ml 0.0025 M 鉄 (Ⅲ) イオン 5.00 4.00 3.00 V ml 0.0025 M サリチル酸 5.00 4.00 3.00 V ml 0.0025 M 塩酸 10.00 12.00 14.00 2. 各溶液の吸光度を測定する 3. 各溶液の鉄 (Ⅲ) イオンとサリチル酸の初期濃度 ([Fe 3+ ] initial および [H 2 Sal] initial ) を計算する 4. 測定した吸光度とステップ 2 の 4. で求めたモル吸光係数 ε の値から 各溶液中の錯体 濃度を計算する 5. 平衡時の鉄 (Ⅲ) イオン濃度 [Fe 3+ ] equilibrium とサリチル酸濃度 [H 2 Sal] equilibrium を計算する ただし次式が成り立つと仮定する : [Fe 3+ ] equilibrium = [Fe 3+ ] initial - [Fe 3+ (H 2 Sal) n ] [H 2 Sal] equilibrium = [H 2 Sal] initial n [Fe 3+ (H 2 Sal) n ] 6. 各溶液における平衡定数 K eq を式 1 を用いて計算し その平均値を求める 5. 問題と解析 1. 錯体の実験式を書け 2. 上記の錯体中で配位子のサリチル酸は2つのプロトンを解離しており 通常 [Fe(Sal)] + であると報告されている 2.1 イオン式を用いて錯体 [Fe(Sal)] + が生成する化学反応式を書け 2.2 錯イオン [Fe(Sal)] + の安定度定数を表す式を 観測された平衡定数 K eq, プロトン濃度 [H + ], サリチル酸の酸解離定数 K a1 および K a2 を用いて書け 2.3 サリチル酸のpK a 値 (pk a = -log 10 K a ) は それぞれ2.98 (pk a1 ) および 13.60 (pk a2 ) である (CRC Handbook of Chemistry and Physics, CRC Press, 2003, pp. 1247) ステップ2の3. における各溶液中の錯イオン [Fe(Sal)] + の安定度定数 (Kf) を計算し

その平均値を求めよ なお サリチル酸 H2Sal の解離は無視できると仮定せよ ( ヒント :[H + ]eq = 0.0025 + 2 n [Fe 3+ (H2Sal)n]) 2.4 求めた K f の値について考察し 考えうる誤差を説明せよ