日本のエネルギー・環境戦略

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特集 IPCC 第 5 次評価報告書 (AR5) 第 3 作業部会 (WG3) 報告書について RITE Today 2015 IPCC 第 5 次評価報告書 (AR5) 第 3 作業部会 (WG3) 報告書について システム研究グループリーダー秋元圭吾 1. はじめに 気候変動に関する政府間パネル

MARKALモデルによる2050年の水素エネルギーの導入量の推計

参考資料 1 約束草案関連資料 中央環境審議会地球環境部会 2020 年以降の地球温暖化対策検討小委員会 産業構造審議会産業技術環境分科会地球環境小委員会約束草案検討ワーキンググループ合同会合事務局 平成 27 年 4 月 30 日

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資料1:地球温暖化対策基本法案(環境大臣案の概要)

(別紙1)気候変動に関する政府間パネル(IPCC)第5次評価報告書統合報告書 政策決定者向け要約(SPM)の概要(速報版)

温暖化問題と原子力発電

扉〜目次

COP21合意と今後の課題

平成 21 年度資源エネルギー関連概算要求について 21 年度概算要求の考え方 1. 資源 エネルギー政策の重要性の加速度的高まり 2. 歳出 歳入一体改革の推進 予算の効率化と重点化の徹底 エネルギー安全保障の強化 資源の安定供給確保 低炭素社会の実現 Cool Earth -1-

緒論 : 電気事業者による地球温暖化対策への考え方 産業界における地球温暖化対策については 事業実態を把握している事業者自身が 技術動向その他の経営判断の要素を総合的に勘案して 費用対効果の高い対策を自ら立案 実施する自主的取り組みが最も有効であると考えており 電気事業者としても 平成 28 年 2

Journal of Japan Society of Energy and Resources, Vol. 38, No. 1 パリ協定 2 目標から見た我が国の 2050 年排出削減目標に関する分析 Analyses on Japan's GHG Emission Reduction Targe

間を検討する 締約国が提出した 貢献 は 公的な登録簿に記録される 締約国は 貢献 ( による排出 吸収量 ) を計算する また 計算においては 環境の保全 透明性 正確性 完全性 比較可能性及び整合性を促進し 並びに二重計上の回避を確保する 締約国は 各国の異なる事情に照らしたそれぞれ共通に有して

電解水素製造の経済性 再エネからの水素製造 - 余剰電力の特定 - 再エネの水素製造への利用方法 エネルギー貯蔵としての再エネ水素 まとめ Copyright 215, IEEJ, All rights reserved 2

日本のエネルギー・環境戦略

IPCC 第1作業部会 第5次評価報告書 政策決定者のためのサマリー

正誤表 ( 抜粋版 ) 気象庁訳 (2015 年 7 月 1 日版 ) 注意 この資料は IPCC 第 5 次評価報告書第 1 作業部会報告書の正誤表を 日本語訳版に関連する部分について抜粋して翻訳 作成したものである この翻訳は IPCC ホームページに掲載された正誤表 (2015 年 4 月 1

電気事業者による再生可能エネルギー電気の調達に関する特別措置法改正に関する意見書

IPCC 第 5 次報告書における排出ガスの抑制シナリオ 最新の IPCC 第 5 次報告書 (AR5) では 温室効果ガス濃度の推移の違いによる 4 つの RCP シナリオが用意されている パリ協定における将来の気温上昇を 2 以下に抑えるという目標に相当する排出量の最も低い RCP2.6 や最大

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RIETI Highlight Vol.66

気候変動と森林 IPCC 第 5 次評価報告書 (AR5) から 2014 年 8 月 29 日 東京 第 3 回森林分野における国際的な動向等に関する報告会 林野庁森林利用課 佐藤雄一

気候変動に関する科学的知見の整理について (前回資料2)

資料 2 接続可能量 (2017 年度算定値 ) の算定について 平成 29 年 9 月資源エネルギー庁

IPCC 第 5 次評価報告書に向けた将来シナリオの検討日本からの貢献とその意義環境研究総合推進費 A 1103 統合評価モデルを用いた世界の温暖化対策を考慮したわが国の温暖化政策の効果と影響 藤森真一郎 国立環境研究所 社会環境システム研究センター 環境研究総合推進費戦略的研究プロジェクト一般公開

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報道発表資料 平成 26 年 11 月 2 日 文 部 科 学 省 経 済 産 業 省 気 象 庁 環 境 省 気候変動に関する政府間パネル (IPCC) 第 5 次評価報告書 統合報告書の公表について 気候変動に関する政府間パネル (IPCC) 第 40 回総会 ( 平成 26 年 10 月 27

Monitoring National Greenhouse Gases

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23 年のエネルギーミックス 一次エネルギー供給構成 発電構成 6 原油換算百万 kl 億 kwh % 24% 再生可能 ( 含水力 ) 原子力 % 1% ,666 9,88 1,65 17% 程度の省エネ 再生可能 22~24

参考資料 5 ( 平成 26 年 10 月 24 日合同専門家会合第 1 回資料 4-1 より抜粋 データを最新のものに更新 ) 温室効果ガス排出量の現状等について 平成 27 年 1 月 23 日

参考 :SWITCH モデルの概要 SW ITCH モデル は既存の発電所 系統 需要データを基にして 各地域における将来の自然エネルギーの普及 ( 設備容量 ) をシミュレーションし 発電コストや CO 排出量などを計算するモデルです このモデルでは さらに需要と気象の時間変動データから 自然エネ

Beyond2010の国際貢献

NEWS 特定非営利活動法人環境エネルギーネットワーク 21 No 年 9 月 IPCC(Intergovernmental Panel on Climate Change) の概要 環境エネルギーネットワーク 21 主任研究員大崎歌奈子 今年の夏は世界各国で猛暑や洪水 干ばつ

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バイオマス比率をめぐる現状 課題と対応の方向性 1 FIT 認定を受けたバイオマス発電設備については 毎の総売電量のうち そのにおける各区分のバイオマス燃料の投入比率 ( バイオマス比率 ) を乗じた分が FIT による売電量となっている 現状 各区分のバイオマス比率については FIT 入札の落札案

目 次 Ⅰ. 今後の電力需給見通しと燃料について Ⅱ. 原油 重油を巡る状況について Ⅲ.LNGを巡る状況について IV. 石炭を巡る状況について V. 電力の燃料調達について ( まとめ ) 2

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公開用_ZEB(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)の定義と評価方法(150629)

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Beyond2010の国際貢献

2 政策体系における政策目的の位置付け 3 達成目標及び測定指標 1. 地球温暖化対策の推進 1-2 国内における温室効果ガスの排出抑制 租税特別措置等により達成しようとする目標 2030 年の電源構成における再生可能エネルギーの割合を 22~24% とする 租税特別措置等による達成目標に係る測定指

1. はじめに 1 需要曲線の考え方については 第 8 回検討会 (2/1) 第 9 回検討会 (3/5) において 事務局案を提示してご議論いただいている 本日は これまでの議論を踏まえて 需要曲線の設計に必要となる考え方について整理を行う 具体的には 需要曲線の設計にあたり 目標調達量 目標調達

4.1 はじめに 二酸化炭素 (CO 2 ) メタン (CH 4 ) 一酸化二窒素 (N 2 O) ハイドロフルオロカーボン (HFCs) パーフルオロカーボン (PFCs) 六ふっ化硫黄 (SF 6 ) 三ふっ化窒素 (NF 3 ) について 温室効果ガス別 部門別に 以下のとおり 2020 年度

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実績 実績 実績 京都議定書 中期目標検討委員会 (2009.6) ( 鳩山元首相 ) での見通し ( 現目標 ) 第四次環境基本計画 (2012) 温室効果ガス排出量 [ 二酸化炭素換算 100 万トン ] 低炭素社会の

企業ネットワークによる地球温暖化に関する政策提言についてのアンケート

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エネルギー供給事業者による非化石エネルギー源の利用及び化石エネルギー原料の有効な利用の促進に関する法律の制定の背景及び概要 ( 平成 22 年 11 月 ) 資源エネルギー庁総合政策課編

( 出所 ) 中国自動車工業協会公表資料等より作成現在 中国で販売されている電気自動車のほとんどは民族系メーカーによる国産車である 15 年に販売された電気自動車のうち 約 6 割が乗用車で 約 4 割弱がバスであった 乗用車の中で 整備重量が1,kg 以下の小型車が9 割近くを占めた 14 年 8

2-2 需要予測モデルの全体構造交通需要予測の方法としては,1950 年代より四段階推定法が開発され, 広く実務的に適用されてきた 四段階推定法とは, 以下の4つの手順によって交通需要を予測する方法である 四段階推定法将来人口を出発点に, 1 発生集中交通量 ( 交通が, どこで発生し, どこへ集中

地球温暖化に関する知識

参考資料3(第1回検討会資料3)

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日本市場における 2020/2030 年に向けた太陽光発電導入量予測 のポイント 2020 年までの短 中期の太陽光発電システム導入量を予測 FIT 制度や電力事業をめぐる動き等を高精度に分析して導入量予測を提示しました 2030 年までの長期の太陽光発電システム導入量を予測省エネルギー スマート社

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2007年12月10日 初稿

日本のエネルギー・環境戦略

センタリング

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別添 4 レファレンスアプローチと部門別アプローチの比較とエネルギー収支 A4.2. CO 2 排出量の差異について 1990~2012 年度における CO 2 排出量の差異の変動幅は -1.92%(2002 年度 )~1.96%(2008 年度 ) となっている なお エネルギーとして利用された廃

輸入バイオマス燃料の状況 2019 年 10 月 株式会社 FT カーボン 目 次 1. 概要 PKS PKS の輸入動向 年の PKS の輸入動向 PKS の輸入単価 木質ペレット

宮下第三章

報告書の主な内容 2012 年度冬季の電力需給の結果分析 2012 年度冬季電力需給の事前想定と実績とを比較 検証 2013 年度夏季の電力需給の見通し 需要面と供給面の精査を行い 各電力会社の需給バランスについて安定供給が可能であるかを検証 電力需給検証小委員会としての要請 2013 年度夏季の電

第1章

) まとめ シート 複数の電源に共通する条件等を設定します 設定する条件は 以下の 6 つです. 割引率 - 0% % % 5% から選択. 為替レート - 任意の円 / ドルの為替レートを入力. 燃料価格上昇率 ( シナリオ ) - 現行政策シナリオ 新政策シナリオを選択 4. CO 価格見通し

(2) ベースラインエネルギー使用量 それぞれの排出起源のベースラインエネルギー使用量の算定方法は以下のとおり 1) 発電電力起源 EL BL = EL ( 式 1) 記号定義単位 ELBL ベースライン電力使用量 kwh/ 年 EL 事業実施後のコージェネレーションによる発電量 kwh/ 年 2)

Preface Proposal Framework of the Action Plan Background I

内の他の国を見てみよう 他の国の発電の特徴は何だろうか ロシアでは火力発電が カナダでは水力発電が フランスでは原子力発電が多い それぞれの国の特徴を簡単に説明 いったいどうして日本では火力発電がさかんなのだろうか 水力発電の特徴は何だろうか 水力発電所はどこに位置しているだろうか ダムを作り 水を

( 太陽光 風力については 1/2~5/6 の間で設定 中小水力 地熱 バイオマスについては 1/3~2/3 の間で設定 )) 7 適用又は延長期間 2 年間 ( 平成 31 年度末まで ) 8 必要性等 1 政策目的及びその根拠 租税特別措置等により実現しようとする政策目的 長期エネルギー需給見通

LED 照明の種類 LED 照明は主に器具と光源が一体化したシーリングライトなどの LED 照明器具 と白熱電球や蛍光灯の光源部分を LED に置き替えた LED ランプ に分類されます ( 図 2-1) 省エネ性と環境性が重視され 公共建築物で使用された LED 照明器具の採用機種数は 2010

IPCC第48回総会に際しての勉強会資料

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問題意識 民生部門 ( 業務部門と家庭部門 ) の温室効果ガス排出量削減が喫緊の課題 民生部門対策が進まなければ 他部門の対策強化や 海外からの排出クレジット取得に頼らざるを得ない 民生部門対策において IT の重要性が増大 ( 利用拡大に伴う排出量増加と省エネポテンシャル ) IT を有効に活用し

事例2_自動車用材料

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IPCC「1.5度特別報告書」の背景にある脆弱国の危機感

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御意見の内容 御意見に対する電力 ガス取引監視等委員会事務局の考え方ることは可能です このような訴求は 小売電気事業者が行うことを想定したものですが 消費者においても そのような訴求を行っている小売電気事業者から電気の小売供給を受け 自らが実質的に再生可能エネルギーに由来する電気を消費していることを

平成 30 年度地方税制改正 ( 税負担軽減措置等 ) 要望事項 ( 新設 拡充 延長 その他 ) No 8 府省庁名環境省 対象税目個人住民税法人住民税事業税不動産取得税固定資産税事業所税その他 ( ) 要望項目名 要望内容 ( 概要 ) 再生可能エネルギー発電設備に係る課税標準の特例措置の延長

参考資料2.国環研試算(その1)

第 1 章 我が国のエネルギーの現状と電力自由化 第 章 我が国のエネルギーの現状と電力自由化 1. 我が国のエネルギーの現状 (1) エネルギー消費 我が国のエネルギー消費は 経済の発展とともに増加してきましたが 世紀に入り経済成長がストップしたことや省エネが進んだことから 年度から 年度にかけて

エネルギーに関する年次報告

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揮発油税等の当分の間税率とその環境効果 揮発油税の概要 揮発油税及び地方揮発油税の税率は 昭和 49 年度税制改正において税率引上げが行われた際に 暫定的な措置として 租税特別措置法により税率の特例措置が講じられて以来 平成 20 年度改正において平成 30 年 3 月末までの 10 年間の措置とし

日本経済の現状と見通し ( インフレーションを中心に ) 2017 年 2 月 17 日 関根敏隆日本銀行調査統計局

東洋インキグループの環境データ(2011〜2017年)

Transcription:

第 49 回原産年次大会 2016 年 4 月 13 日 3E における原子力の価値に 関する定量的評価 ( 公財 ) 地球環境産業技術研究機構 (RITE) システム研究グループグループリーダー秋元圭吾

Electricity (TWh/yr) 世界の経済成長と電力消費量の関係 2 25000 1971~2013 年 y = 432.21x - 1742.9 R² = 0.9969 20000 15000 10000 5000 0 10 20 30 40 50 60 出典 )IEA 統計 2015 GDP (Trillion US$/yr) 世界の経済成長と電力消費量とは線形に近い強い正の関係が見られる 近年でもその傾向に変化は見られない そして 経済成長とともに 乳幼児死亡率等も大きく低下させ それに伴い社会の効用は向上してきたと考えられる

気温上昇の推移とその要因 3 気候システムの温暖化には疑う余地がなく 1950 年代以降 観測された変化の多くは数十年 ~ 数千年間で前例のないもの 1880~2012 年の期間では 0.85 (90% 信頼区間では 0.65~ 1.06) 上昇した 人間活動が 20 世紀半ば以降に観測された温暖化の主な要因 * であった可能性が極めて高い (95 100% 程度の確率 ) * IPCC は温暖化のすべてが人間活動によるものと言っているわけではなく 太陽活動等による影響もあることは認めている 出典 )IPCC WG1 第 5 次評価報告書 2013

日本における豪雨 大型台風被害 4 地球温暖化で海水温が上昇 海水の蒸発による大気中の水蒸気が増加 豪雨や大型台風が多発 ただし 具体的な被害事例について 人為的な CO2 排出との因果関係について明確に言うことはできず 大きな不確実性があることは認識することが必要 出典 )blog.livedoor.jp 豪雨による広島土砂災害 2014 年 8 月死者 行方不明 :74 人家屋全壊 :133 戸 出典 ) 産経デジタル 豪雨による鬼怒川堤防決壊 2015 年 9 月茨城 常総市の浸水被害 :1 万 1000 棟

パリ協定 (COP21) における長期目標 5 2015 年 12 月の国連気候変動枠組条約締約国会合 (COP21) において ほぼすべての国による 2020 年以降の気候変動対応のための国際枠組となるパリ協定が合意された 2030 年に向けた取り組みが中核となっているが 長期の目標 それに向けた取り組みとして下記のような内容が含まれる 全球平均気温上昇を産業革命前に比べ 2 未満に十分に ( well below ) 抑える また 1.5 に抑えるような努力を追求する ( 第 2 条 1 項 (a)) 協定第 2 条の長期目標を達成するため 世界の温室効果ガス排出をできる限り早期にピークにする その後 急速に削減し 今世紀後半には 温室効果ガスについて人為的起源排出とシンクによる吸収をバランスさせる ( 第 4 条 1 項 ) 協定の目的と長期目標に向けた世界全体の前進を評価するために 協定の実施状況を 5 年毎に把握 ( グローバル ストックテイク 2023 年が第 1 回 )( 第 4 条 9 項 第 14 条 ) すべての国は 温室効果ガス低減のための長期発展戦略を策定するよう努力すべき ( 第 4 条 19 項 )(COP21 決定には 2020 年までにと時期も明示されている )

GHG 排出量 [GtCO2eq/yr] 2 目標のための温室効果ガス排出経路 (~2100 年 ) 6 70 60 50 40 +9% 19% 2100 年 2.0 _ 気候感度 2.5 2100 年 2.0 _ 気候感度 3.0 ( オーバーシュート ) 2.0 安定化 _ 気候感度 2.5 30 2.0 安定化 _ 気候感度 3.0 20 31% 42% 10 71% いずれも 2010 年比 0 1990 2010 2030 2050 2070 2090 2100 450ppm 濃度安定化 2020 年以降の約束草案を踏まえた排出見通し (RITE 推計 ) 出典 )MAGICC DNE21+ を用いて RITE にて試算 エルマウサミット言及 ( 40~70%:IPCC AR5 450 シナリオ ) - たとえ 2 未満に抑制するとしても 2 未満とする時期 実現期待確率 気候感度の分布等によって 排出経路は大きく異なってくる ( 例えば 2050 年に 2010 年比で +9%~ 71%) ただし 気温安定化のためには どの気温水準であってもいずれ CO2 ではほぼゼロ排出にすることが必要 - 約束草案は 特に 450 ppm CO2eq 安定化シナリオや 2 安定化 ( 気候感度 3 ) シナリオ (2050 年に 40~ 70% 削減程度 ) とは大きなギャップあり

2010 年実績 2100 年 2.0 _ 気候感度 2.5 2100 年 2.0 _ 気候感度 3.0 ( オーバーシュート ) 2.0 安定化 _ 気候感度 2.5 2.0 安定化 _ 気候感度 3.0 450ppm 濃度安定化 発電電力量 [TWh/yr] 2 目標 世界の限界削減費用均等化時の日本の 2050 年の電源構成 7 1400 2050 年 26$/tCO2 120$/tCO2 57$/tCO2 244$/tCO2 2075$/tCO2 水素 1200 太陽光 1000 800 600 400 風力原子力水力 地熱バイオマス (CCS 有 ) バイオマス (CCS 無 ) 200 ガス (CCS 有 ) 0 ガス (CCS 無 ) 石油 (CCS 有 ) 石油 (CCS 無 ) 石炭 (CCS 有 ) 石炭 (CCS 無 ) 2 と整合的なシナリオであっても石炭が支配的とするのが費用効率的となるケースさえある 一方 2 をより高い確率で達成するシナリオでは原子力 二酸化炭素回収貯留 (CCS) の大幅利用が費用効率的に 更に 450 ppm シナリオでは再エネ 水素利用の大幅な利用が費用効率的に ( ただしこの時の限界削減費用は 2100$/tCO2 程度 )

GHG 排出量 [MtCO2eq/yr] 2 目標と整合的な日本の温室効果ガス排出経路 ( 世界の限界削減費用均等化 ) 8 1600 1400 1200 カンクンプレッジ 2005 年比 3.8% 限界費用 :26$/tCO2 +0% 実績値 カンクンプレッジ + 約束草案 1000 800 600 約束草案 2013 年比 26% 57$/tCO2 28% 120$/tCO2 38% 244$/tCO2 53% 2100 年 2.0 _ 気候感度 2.5 2100 年 2.0 _ 気候感度 3.0 ( オーバーシュート ) 2.0 安定化 _ 気候感度 2.5 400 200 2075$/tCO2 いずれも2010 年比 77% 2.0 安定化 _ 気候感度 3.0 450ppm 濃度安定化 0 1990 2000 2010 2020 2030 2040 2050 2100 年 2.0 _ 気候感度 2.5 と整合的な世界排出量経路について 世界の限界削減費用が均等化 ( このとき炭素価格 26$/tCO2) の場合 2050 年の日本の排出量は 2010 年比 +0% これでも 2 目標との整合性は残しているが 2030 年の約束草案よりも 2050 年は深堀が必要と考えると これを除いた排出経路を中心に考える必要あり このとき いずれも原子力は増大させることが費用効率的な対策となる

排出削減レベルごとの電力のシェア (2050 年 ) 9 大きな排出削減 ( 温室効果ガス濃度水準 : 小 ) 2010 年水準 出典 )IPCC WG3 第 5 次評価報告書 2014 排出削減レベルが厳しくなるに従い 最終エネルギーにおける電力シェアを高めることが重要になる ( 同時に電源の脱炭素化を強化する )

発電コスト WG による 2014 年時点の電源別コスト推計 10

日本政府の 2030 年のエネルギーミックス案ー電源構成ー 11 出典 ) 資源エネルギー庁

全産業 (GDP) 全製造業 エネルギー多消費産業 その他製造業 ( 機械産業等 ) 産業別 付加価値額の変化 (%, 政府エネルギーミックスケース比 ) サービス産業他 GDP の変化 (%, 参照ケース比 ) 日本のエネルギーミックスのマクロ経済影響 12 0.0% -0.5% -1.0% -1.5% -2.0% -2.5% -3.0% 2020 2030 5.6 兆円 16.1 兆円 2030 年にエネルギー起源 CO 2 排出量を 2013 年比 21.9% 時 ( 原子力比率 20% の場合 ) (2030 年炭素価格 :252$/tCO 2 2020 年の炭素価格は 2030 年の炭素価格をベースにし IEA WEO2014 450 シナリオにおける EU の炭素価格シナリオの成長率を用いて想定した場合 (55$/tCO 2 ) RITE 経済モデル DEARS による分析 ) 原子力比率 : -5% ポイント 0.0% -0.5% -1.0% -1.5% -2.0% -2.5% -0.2% -0.3% 1.39 兆円 -1.8% -0.1% -0.2%

エネ白書におけるエネルギーセキュリティ指標評価 13 出典 ) エネルギー白書 2015 日本のエネルギー安全保障は 主要国と比較して圧倒的に脆弱 震災後 一層脆弱に エネルギー安全保障上のリスクを強く認識すべき

発電端発電電力量 (TWh/yr) 一次エネルギー供給量 (Mtoe/yr) エネミックスのエネルギーセキュリティ指標評価 一次エネルギー供給量とハーフィンダール指数ハーフィンタ ール指数 (HHI) (HHI) 600 400 HHI: 2593 HHI: 3033 HHI: 2202 風力 PV 水力 地熱 ハ イオマス 他 原子力 ハーフィンダール指数 (HHI): 大きいほど脆弱と考えられる 14 200 0 2010 2014 2030 ガス 石油 石炭 IEA 統計 DNE21+ 結果 1250 1000 750 500 電源構成とハーフィンダール指数ハーフィンタ ール指数 (HHI) (HHI) HHI: 2328 HHI: 3018 HHI: 2273 風力 PV 水力 地熱 ハ イオマス 他原子力ガス 2030 年の政府エネルギーミックスは 2014 年度比でエネルギーセキュリティ上の脆弱性が相対的に低下 250 0 2010 2014 2030 IEA 統計 DNE21+ 結果 石油 石炭

3E+S の総合的なバランスが重要 15 多様なリスクを総合的に把握し バランスのとれたエネルギー対策をとることが 将来における社会のリスク低減のため重要 なお 原子力事故だけが 甚大な被害が予期されるわけではない 3E すべてにおいて 甚大な被害が生じる可能性は存在する 総合的なリスク管理が必要 エネルギー安全保障 安定供給 安全 安心 (S) 多様なエネルギーによる構成は基本的にはエネルギー安全保障のためには重要 再エネは安全保障面では良い方向に働くが 安定供給面に難あり 経済性 個別エネルギーの安全は当然重要だが 原子力以外の電源も含めリスクは存在 ゼロリスクはない ソフト面を含めた安全 安心の確保が重要 環境 高いエネルギーコストは経済にダメージ 高い再生可能エネルギーの過度な導入は経済にダメージをもたらす 無駄の削減の省エネは経済に良い影響もあるが 無理な省エネもまた経済にダメージ 地球温暖化は不確実性が大きいものの 集中豪雨による被害が大きくなってきていると考えられ リスクの大きさを認識することが重要 適応も含めた総合的なリスク管理が重要だが CO2 排出削減対策は重要

付録

1850~1899 年比気温上昇 [K] 全球平均気温上昇経路例 (2 目標 ) 17 2.5 2 2.0 安定化 _ 気候感度 2.5 (580 ppm を超えない ) 2.0 安定化 _ 気候感度 3.0 (500 ppm 程度以下 ) 1.5 1 2100 年 2.0 _ 気候感度 3.0 (530 ppm を一旦超える 気温のオーバーシュート ) 2100 年 2.0 _ 気候感度 2.5 (580 ppm を一旦超える ) 0.5 1990 2040 2090 2140 2190 2240 2290 MAGICC を用いて RITE にて試算 450ppmCO2eq 安定化 _ 気候感度 3.0 IPCC AR4 カテゴリー I 相当 (>66% で 2100 年に 2 未満 >50% で 2 安定化 ) 例えば 2 未満に抑制するシナリオに限っても >66% で 2100 年に 2 未満 ( かつ >50% で 2 安定化 ) >66% で 2 安定化 ( 上記グラフにはこの経路は示していない ) >50% で 2100 年に 2 未満 ( かつ >50% で 2 安定化 ) など 様々考えられる

日本政府の 2030 年のエネルギーミックス案 18 出典 ) 資源エネルギー庁

エネ白書におけるエネルギーセキュリティ指標 19 評価基軸指標 (1) 国産 準国産エネルギー資源の開発 利用 一次エネルギー自給率 ( 原子力含む ) (2) エネルギー輸入先多様化 各資源輸入相手国の寡占度 (3) エネルギー供給源構造多様化 一次エネルギー供給源の分散度 発電電力量構成の分散度 (4) 資源の輸送リスク管理 チョークポイントリスクへの依存度 (5) 国内リスク管理 電力供給信頼度 ( 停電時間 ) (6) 需要抑制 エネルギー消費の GDP 原単位 (7) 供給途絶への対応 石油備蓄日数 評価補足指標 (1 ) 国産 準国産エネルギー資源の開発 利用 電源設備利用率 (2 ) エネルギー輸入先多様化 評価対象国から産資源国への直接投資額 (5 ) 国内リスク管理 政府のエネルギー R&D 予算額 (6 ) 需要抑制 部門別エネルギー消費の GDP 原単位 (7 ) 供給途絶への対応 国産資源利用可能年数

エネ白書のエネルギーセキュリティ指標評価 20 出典 ) エネルギー白書 2015 エネルギー安全保障を高めるには エネルギー輸入先の多様化など 様々な方策があり 複合的に対応することが重要である しかしながら 原子力の停止は エネルギー安全保障を大きく損なう一因となっている

一次エネルギー供給量 (Mtoe/yr) 輸入量 (Mtoe/yr) 200 150 100 50 0 エネミックスのエネルギーセキュリティ指標評価 石油 ガスの輸入先とハーフィンダール指数 (HHI) HHI: 2335 HHI: 6374 2014 2030 2014 2030 ガス ハーフィンタ ール指数 (HHI) HHI: 6826 原油 HHI: 8505 中南米 北米 メキシコ オセアニア アジア 欧州 旧ソ連 サブサハラアフリカ 中東 北アフリカ 21 RITE DNE21+ のコスト最小化計算結果からは ガスのハーフィンダール指数は 2014 年度時点で小さく集中度が低い ( 分散度が高い ) が 2030 年はインドネシア ブルネイといったアジア地域に集中する結果である これは中東 オセアニアなどの供給がインドなどの南アジアに向かう影響も大きい 原油については今後とも中東 北アフリカへの依存度が高い結果である ( ハーフィンダール指数が大きい 即ち 集中度が高い 分散度が低い ) 500 チョークポイント通過回数平均 : 400 その他 2030 年に輸入先の集中度が高まりエネルギーセキュリティ上の懸念が一段と増す方向の結果である一方 チョークポイントリスクについては減少する結果 300 200 100 0 174 105 0.7 回理由 ) カタール,UAE, オマーンへの依存度は計 28% 182 87 1.7 回 161 理由 ) 中東依存度 82% 138 2014 年 _IEA 統計実績 2030 年 _DNE21+ モデル分析 0 回理由 ) 北米, イント ネシア, フ ルネイなどから輸入増 1.8 回理由 ) 中東依存度 92% ガス輸入 原油輸入