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テキストブック - MRI アーチファクト編 - この資料は 製造元から提供される取扱説明書の操作方法 注意事項等を簡潔に記載したものであるため 装置の操作にあたっては 製造元から提供される取扱説明書を参照してください 安全使用に関しての注意等は省略されている場合があります 安全使用のための注意 患者さんの安全確保のために 守っていただきたい事項などにつきましては 取扱説明書 添付文書に従ってください 1/29

テキストブック - MRI アーチファクト編 - Chapter1 画像処理によるアーチファクト 1. エリアジング (Aliasing) 2. 化学シフト (Chemical shift) 3. 打ち切り (Truncation) Chapter2 患者さんによるアーチファクト 1. 体動 (Motion artifact) 2. 拍動 流れ (Flow artifact) Chapter3 RF パルスによるアーチファクト 1. クロストーク (Cross talk) 2. ジッパー (Zipper artifact) Chapter4 磁場によるアーチファクト 1. 静磁場の不均一 (Inhomogeneity of Static Magnetic Field) 2. 磁化率アーチファクト (Susceptibility Artifact) 3. 脂肪抑制 (Fat Suppression) 4. N/2 アーチファクト (N/2 Artifact) 2/29

Chapter1: 画像処理によるアーチファクト - 1. エリアジング (Aliasing)- Aliasing( 折り返し ) 被写体が FOV よりも位相方向に大きい場合 はみ出したものが FOV の中に折り返り 被写体の信号に重なってしまいます これを折り返しアーチファクトと言います 周波数方向 ❶ ❷ ❷ ❶ 図折り返しアーチファクトの概念図 位相方向 位相方向の Over sampling 位相方向に折り返しアーチファクトが発生する場合 位相方向のデータを余分に収集することで折り返しを防ぐことができます 256 128 256 128 3/29 図 Over Sampling の概念図

Chapter1: 画像処理によるアーチファクト - 1. エリアジング (Aliasing)- Aliasing の対処方法 1. FOVの拡大 2. 周波数と位相方向の変更 3. 過剰サンプリング法 (Over Sampling) 位相過剰サンプリング法 (No Phase Wrap) 位相エンコード数が2 倍になるので 撮影時間をかえずに加算回数を半分にします ( ただしS/Nに変化はありません ) 4. 飽和パルス (Saturation Pulse) FOV 外の折り返す被写体をSATパルスで抑制することで折り返しを防ぎます 4/29

Chapter1: 画像処理によるアーチファクト - 1. エリアジング (Aliasing)- ASSET 併用時の Aliasing について <ASSET の基本原理 > (i) ASSET は位相エンコードステップを間引いて撮影時間を短縮します (ii) 位相エンコードを間引いただけでは下図のように折り返しが発生します (iii) そこで 本撮像前に行うキャリブレーションデータを元に折り返ってしまう部分を展開しています A B コイル 1 0.84 0.35 0.40 0.84 コイル 2 A B A B A B コイル 1 で得られる PhaseFOV 画像 A の信号値が 105 だったとすると これは元々の A の信号と 折り返った B の信号の合計と考えられる 感度マップから A の位置の感度 0.84 B の位置の感度 0.35 とすると 105=0.84A+0.35B コイル 2 で得られる PhaseFOV 画像 同様に B の信号値が 96 だったとすると元々の B の信号と折り返った A の信号の合計 感度マップから A の位置の感度 0.48 B の位置の感度 0.80 とすると 96=0.48A+0.80B 図 ASSET の原理概念図 各ボクセル毎に計算を行い折り返し画像を元に戻す 105 = 0.84A + 0.35B 96 = 0.48A + 0.80B 連立方程式 A=100 B=60 ASSET 併用時の Aliasing の対処方法 図 ASSET アーチファクトの例 1. 位相方向の FOV を広げる 2. SMASH 系 (ARC*) のパラレルイメージングに変更する * オプション マルチチャンネルコイルが故障すると展開ミスが起こる可能性があるので注意が必要です 5/29

Chapter1: 画像処理によるアーチファクト - 2. 化学シフト (Chemical Shift)- ケミカルシフトアーチファクト (Chemical Shift Artifact) とは? ケミカルシフトは 水と脂肪のスピンに約 3.5ppm 共鳴周波数差があることから水と脂肪の信号がずれた位置に表示される現象です 周波数方向 図化学シフトアーチファクトの例 位相方向 水と脂肪の共鳴周波数の差 MR では水 (H 2 O) に共鳴周波数を合わせて撮像を行っています 1.5T ; 64MHz 3.0T ; 128MHz 水と脂肪のプロトン (H) は周波数差 3.5ppm があります ppm とは Part Per Million の略で 100 万分の 1 を示します では 3T では 3.5ppm とはどれくらいの周波数差でしょうか? 1.5T ; 64MHz 3.5ppm = 224Hz 3.0T ; 128MHz 3.5ppm = 448Hz 水 脂肪 図水と脂肪のスペクトル例 3.0T で約 440Hz, 1.5T で約 220Hz の水 / 脂肪の周波数差があります 6/29

Chapter1: 画像処理によるアーチファクト - 2. 化学シフト (Chemical Shift)- 磁場強度及びバンド幅による化学シフトのピクセルずれ 水 脂肪 高周波数 3.5ppm ( 約 440Hz @3.0T) 低周波数 図水と脂肪のスペクトル概念図 例 : マトリクス 256 256 受信バンド幅 = ±12.8kHz(= 25.6kHz) とすると 1 ピクセルの周波数幅は 25.6kHz 256 = 100Hz 3.0T の場合のピクセルずれは 440Hz 100Hz = 4.4 約 4~5 ピクセルのずれ 1.5T の場合のピクセルずれは 220Hz 100Hz = 2.2 約 2~3 ピクセルのずれ 磁場強度が上がると化学シフトの影響が大きくなります 7/29

Chapter1: 画像処理によるアーチファクト - 2. 化学シフト (Chemical Shift)- Chemical Shift の対処方法 1. バンド幅を広げる デメリット> SNRの低下 2. 脂肪抑制法により脂肪信号を取り除く 脂肪飽和パルス(Fat SAT Pulse) STIR 法 3.FOVを変えずにマトリクスを減らし ピクセル径を大きくする デメリット> 空間分解能の低下 4. 位相エンコード方向と周波数エンコード方向を交換する 化学シフトの方向を変える 脂肪抑制なし 脂肪抑制併用 図脂肪抑制パルスの有無による化学シフトアーチファクトの違い 脂肪抑制パルスを併用することで脂肪信号が抑制され ピクセルずれが生じていない 8/29

Chapter1: 画像処理によるアーチファクト - 3. 打ち切り (Truncation)- 打ち切りアーチファクト (Truncation Artifact) とは? 高コントラストの接触面近くに隣接する縞模様が現れます フーリエ変換時のサンプリング ( サンプリング不足 ) により生じるアーチファクトです T1 強調画像でも T2 強調画像でも現れます 図 Truncation アーチファクトの例 打ち切りアーチファクト (Truncation Artifact) の原因 サイドローブの大きさ Echo N( サンプリング数 ) が小さいとサイドロープが広くなり矩形からのズレが大きい < 打ち切りアーチファクト > サンプリング時間に制限があるため 階段状に変化した信号強度を正確に近似出来ないことによって起きます 図サンプリング数とサイドロープの大きさの概念図 9/29

Chapter1: 画像処理によるアーチファクト - 3. 打ち切り (Truncation)- Truncation Artifact と撮像パラメータ バンド幅を小さくすると ピクセル径を小さくすると マトリクスを増やす (FOV の変更なし ) BW±100kHz BW±41.7kHz BW±10.4kHz ピクセル径を小さくすると FOV を小さくする ( マトリクスの変更なし ) 128x128 256x256 512 512 FOV24 24 図各撮像パラメータの変化と Truncation アーチファクト FOV20 20 10/29

Chapter1: 画像処理によるアーチファクト - 3. 打ち切り (Truncation)- Truncation Artifact の対処方法 1. サンプリング時間を長くする バンド幅を小さくする 2. ピクセル径を小さくする 周波数エンコード及び位相エンコード数を増やす FOVを小さくする ただし Truncation Artifact が完全に消えるわけではありません 11/29

Chapter2: 患者さんによるアーチファクト - 1. 体動 (Motion Artifact)- 周期的な動きのアーチファクト Motion Artifact の距離 (Dp) は撮像時間を体動周期で除した式で求められます Dp AT: 撮像時間 PT: 体動周期 TR: 繰り返し時間 Ny: フェーズエンコードステップ数 NEX: 加算回数 Dp Dp = AT PT = TR Ny NEX PT 周波数方向 位相方向 遅い呼吸の場合速い呼吸の場合 (10 回 /min) (20 回 /min) 図モーションアーチファクトと呼吸数の関係 12/29

Chapter2: 患者さんによるアーチファクト - 1. 体動 (Motion Artifact)- 加算回数 NEX と呼吸運動によるアーチファクト NEX を増やすと Averaging 効果により Motion Artifact が低減します 位相方向 NEX 1, scan time 1min NEX 2, scan time 2min NEX 4, scan time 4min NEX 8, scan time 8min 図加算回数 NEXとモーションアーチファクトの関係 呼吸同期法によるアーチファクトの低減 呼吸同期法 (Respiratory Triggering ) により Motion Artifact を低減します 位相方向 呼吸同期法なし 呼吸同期法あり 図呼吸同期法の有無によるモーションアーチファクトの差 13/29

Chapter2: 患者さんによるアーチファクト - 2. 拍動 / 流れ (Flow Artifact)- 拍動性のアーチファクト 流れと垂直方向 ( 下図の場合 S, I 方向 ) に Saturation Pulse を付加することによりアーチファクトが低減できる場合があります 位相方向 Saturation Pulseなし Saturation Pulseあり (S, I 方向 :St:SI) 図 Saturation Pulseと拍動性アーチファクト 繰り返し時間 (TR) とゴーストの位置関係 繰り返し時間 (TR) を長くするとゴーストが発生する間隔が遠くなります 折り返しの折り返しに注意 位相方向 TR400msec TR 800msec TR 1,000msec 図繰り返い時間 (TR) とゴーストの位置関係 Motion Artifact の出現方向 周波数 ( 位相 ) 方向を変更することでアーチファクトが出現する向きを変えることができます 位相方向 周波数方向 周波数方向 位相方向 14/29 図周波数 ( 位相 ) 方向とアーチファクトの出現方向

Chapter2: 患者さんによるアーチファクト - 1. 体動 (Motion Artifact)- - 2. 拍動 / 流れ (Flow Artifact)- Motion/Flow Artifact の対処方法 プロペラを使う 呼吸同期などの併用 心拍同期法 ( 心電同期法 脈波同期法 ) の併用 流速補正法 (Flow Compensationなど ) の併用 飽和パルスの付加デメリット> 撮像時間の延長 / 撮像枚数の減少 位相エンコード方向と周波数エンコード方向の交換注意 : アーチファクトの出現方向が変わるにすぎない 患者の固定 TR 位相エンコードステップ数 加算回数を増加させてゴーストの出現間隔を長くする ( 呼吸回数にも注意 ). 患者さんの状態や抑制したいアーチファクトに合わせて上記を選択します 15/29

Chapter3:RF パルスによるアーチファクト - 1. クロストーク (Cross talk) - クロストーク (Cross talk) とは? MRI 検査ではある厚みだけのデータを収集するためにその厚みだけを選択的に励起されます この時 スライス励起の範囲 ( スライスプロフィール ) は理想的には矩形波で励起されるはずですが実際には完全な矩形では励起されず 下記のような状態でその辺縁がひろがった状態でスライスの励起が行なわれます その為にスライスとスライスの間隔が狭い場合はその辺縁が重なることで干渉が起き ノイズが増加して SNR が低下します 十分なスライス間隔を設定するとクロストークの影響を小さくすることができます 理想的なスライスプロファイル クロストーク 実際のスライスプロファイル ( スライス間隔狭い ) スライス間のギャップが小さい場合 実際のスライスプロファイル ( スライス間隔広い ) 図スライスプロファイルとクロストーク スライス間のギャップがある場合 16/29

Chapter3:RF パルスによるアーチファクト - 1. クロストーク (Cross talk) - クロストーク (Cross talk) の例 (i) スライス間隔によるクロストーク (ii) スライスが重なることによるクロストーク スライス厚スライス間隔 10mm スライス厚 0mm スライス間隔図スライス間隔とクロストーク 10mm 5mm 図スライス設定とクロストーク Cross-Talk の対処方法 1. スライス間にギャップを置く スライス厚の 20% 程度 ( 目安 ) 2. インターリーブ法によりスライス間のギャップを得る デメリット > 2 Acquisition になることで撮像時間が 2 倍になる 17/29

Chapter3:RF パルスによるアーチファクト - 2. ジッパーアーチファクト (Zipper Artifact) - ジッパーアーチファクト (Zipper Artifact) とは? 周波数エンコード方向または位相エンコード方向に白黒の信号が交互に現れる破線状のアーチファクトです ジッパーアーチファクトの原因 原因としては下記の要因が主に考えられます 1. MR 信号の混入 MR 信号 (FID, Stimulated echo) が部分的に 180 パルスに重なるために生じます 90 ハ ルス 180 ハ ルス 周波数方向 図位相アーチファクト 位相方向中心に周波数方向の線状アーチファクト FID 信号が無くならない内に 180 パルスが印加される 位相方向 周波数方向 2. RF 励起パルスの混入 RF 励起パルスが完全に消えずに信号に影響を与えるために生じます 位相方向 図周波数アーチファクト 周波数方向中心に位相方向の線状アーチファクト 3. 外部からの RF ノイズの混入 MR 装置以外からの RF( 電磁波 ) の混入により生じます 位相方向に出る線状アーチファクトではありますが 周波数方向の中心ではなく ある特定周波数領域に影響が出ます 図外部からの RF ノイズ混入例 18/29

Chapter3:RF パルスによるアーチファクト - 2. ジッパーアーチファクト (Zipper Artifact) - Zipper Artifact の対処方法 1. MR 信号の混入 不完全なスライス選択励起 あるいは RF 送信コイルの不具合が原因の一つとして考えれます 担当サービスマンにご連絡ください 2. RF 励起パルスの混入 MR 装置またはプロトコルの破損が原因の一つとして考えれます 担当サービスマンにご連絡ください 3. 外部からの RF ノイズの混入 扉が開いてないか確認してください 検査室内でのノイズ発生源の確認をします 1 コイルコネクターの差し直しを行ってください 2 患者様に金属が付いてないか確認します 3 インジェクターなどの機器の電源を落としてみてください 検査室 RF シールドチェック 担当サービスマンにご連絡ください 19/29

Chapter4: 磁場によるアーチファクト - 1. 静磁場の不均一 (Inhomogeneity of Static Magnetic Field)- 静磁場不均一によるアーチファクト 大きさ FOV で撮像すると発生しやすくなります 図静磁場不均一によるアーチファクト例 静磁場不均一の各シーケンスの影響 スピンエコー / ファーストスピンエコー法系列のシーケンスでは影響は少なくなります 理由 : エコー取集のために Refocus RF パルス (180 パルス ) を使用するので 乱れたスピンが再収束されるからです グラディエントエコー法系列のシーケンスでは影響が大きくなります 理由 : エコー取集のためにグラディエントを使用するので 乱れたスピンは再収束されないまま データ収集されるからです 20/29

Chapter4: 磁場によるアーチファクト - 2. 磁化率の違いによるアーチファクト (Susceptibility Artifact)- 磁化率の違いによるコントラストの影響 磁化率の違いによる影響は撮像シーケンスにより異なります Susceptibility の影響を極力大きく表現しようとしたものが磁化率強調画像です SE 法 図出血性病変のコントラスト GRE 法 SWAN 法 図磁化率強調画像の撮像例 (SWAN) 外部的な要因による磁化率アーチファクト 外部的な要因により磁化率アーチファクトが発生する場合があります この場合も上記例と同様に撮像シーケンスにより異なります Fast SE GRE SSFP 図ハローベスト *** 装着患者さんのアーチファクト発生例 *** MR Safe, MR Conditional 以外の金属インプラントの MRI 撮像を容認するものではありません 21/29

Chapter4: 磁場によるアーチファクト - 2. 磁化率の違いによるアーチファクト (Susceptibility Artifact)- 受信バンド幅と磁化率の影響 受信バンド幅を大きくすると磁化率によるアーチファクトは小さくなる傾向があります BW 10.4KHz BW 62.5KHz 図受信バンド幅と磁化率アーチファクト (T1 強調画像 TR 600msec., TE 4.5msec.) エコー時間 (TE) と磁化率の影響 エコー時間 (TE) を小さくすると磁化率によるアーチファクトは小さくなる傾向があります TE 30msec TE 3.5msec 図エコー時間 (TE) と磁化率アーチファクト GRE 法 : TE が短いと位相ズレの影響が少なくなります 22/29

Chapter4: 磁場によるアーチファクト - 2. 磁化率の違いによるアーチファクト (Susceptibility Artifact)- Susceptibility Artifact の対処方法 1. TEを短くする 2. SE/ 高速 SE 法系のパルスシークエンスを使用する 3. 受信バンド幅を大きくする 4. 位相エンコード方向と周波数エンコード方向の交換 SE 法では 180 パルスにより位相ズレを戻すため 磁化率アーチファクトは最小になります SE (FSE)< GRE < SSFP <EPI 23/29

Chapter4: 磁場によるアーチファクト - 3. 脂肪抑制 (Fat Suppression)- 磁場の不均一による脂肪抑制ムラ 頚部 胸部など局所的な磁場不均一の影響で脂肪抑制がかかりにくくなります 図頚部 胸部近傍の脂肪抑制画像 (Chemical SAT) 脂肪抑制法の種類 選択的脂肪抑制法 水と脂肪の周波数差を利用した方法 ChemSAT Fatsat SPECIAL ASPIR 非選択的脂肪抑制法 水と脂肪の緩和時間の差を利用した方法 STIR 水選択励起法 水と脂肪の位相分散の差を利用した方法 SSRF 水 / 脂肪信号相殺法 水と脂肪の位相分散の差を利用した方法 Out of phase IDEAL / FLEX 24/29

Chapter4: 磁場によるアーチファクト - 3. 脂肪抑制 (Fat Suppression)- Susceptibility Artifact の対処方法 選択的脂肪抑制法 : 磁場の不均一による脂肪抑制ムラを軽減するには 1. 磁場の不均一の影響を無くすようなポジショニングの工夫 2. 水の中心周波数の確認 3. 検査に応じて脂肪抑制法の変更 非選択的脂肪抑制法 (STIR) 水選択励起法 (SSRF) 水 / 脂肪信号相殺法 (IDEAL LAVA-FLEX) 25/29

Chapter4: 磁場によるアーチファクト - 4. エヌハーフアーチファクト (N/2 Artifact) - N/2 Artifact とは? EPI 特有のアーチファクトで 位相エンコード方向にゴーストが FOV の半分だけずれて出現します N/2 Artifact の原因 1. 読み出し傾斜磁場の極性を変化させ何度も k 空間内の正 負領域を行き来するため位相の誤りが生じる場合があります 2. 渦電流により不完全な傾斜磁場パルス あるいは 奇数番と偶数番のエコータイミングの不釣合いによってゴーストが位相方向に生じます 渦電流なし 渦電流あり 26/29

Chapter4: 磁場によるアーチファクト - 4. エヌハーフアーチファクト (N/2 Artifact) - N/2 Artifact の対処方法 1. 現象が発生した場合 一度 Auto Shim を ON/OFF してみる Advanced Tab の Integrated Reference Scan を ON/OFF してみる FOV を広げる Phase FOV を 1 にする マトリクスを下げる (128x128 程度 ) ASSET を抜いてみる Ramp Sampling が ON になっていたら OFF にしてみる 渦電流が発生しにくいように 傾斜磁場の傾きを緩くします リファレンススキャンを何度か行なう ( Integrated Reference Scan を ON だとリファレンスキャンは使用できません ) TE が 1 番短くなるバンド幅に変更する Dual Spin Echo を入れてみる 2. 上記設定を試されても改善しない場合は担当サービスにご連絡ください 27/29

おわりに 下図の画像には複数のアーチファクトが発生しています 各々のアーチファクトの詳細は各項目をご確認ください 受信コイルの感度ムラ ( 左右差 ) コイルのコネクターの抜き差しをして下さい 磁場の不均一 手は拳上してますか? 患者様に金属は付いてないですか? 第 2 の化学アーチファクト TE が Out of phase の場合は第 2 の化学アーチファクトが出現します 28/29

製造販売業者の名称と連絡先 発行部署 製造販売業者 : GE ヘルスケア ジャパン株式会社 住所 : 東京都日野市旭が丘 4-7-127 保守サービス連絡先 : GE ヘルスケア ジャパン株式会社 電話 : 0120 055 919 FAX : 042 648 2927 発行部署 : ヘルスケア統括本部 Radiology 推進本部 29/29