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様式 3 2018 年度環境医学実習報告書 9 班 化学物質の環境曝露 リスク評価 指導教官大阪大学大学院研究科環境エネルギー工学専攻環境マネジメント学教授東海明宏実習学生小泉遙 橋本尚吾 林大智 1. 背景現在 我々は様々な環境物質に曝露され生きている 中には国によって規制が設けられているが 多くは規制が乏しい それらの規制の基準を設ける際に 各物質がそれぞれ異なる身体的悪影響を与える中で 同じ尺度でリスクを評価する方法が必要となってくる 本実習ではそのリスク評価方法を実際に自身で扱って 各物質のリスクを評価することを通じて 評価方法の定着 その限界を学んでいく 2. 目的 班員各自で様々な物質の人体への有害性の評価を DALY を用いて解析し 最後に それぞれが 調べた物質の解析結果を統合し 簡単にリスクの比較を行う 3. 方法評価方法は主に二つのフェーズに分けられる 1 つは 有害物質の曝露によりどれほどの確率で有害事象を引き起こすのかを解析する曝露解析もう一つは 有害物質の曝露により生じた疾病の重度を評価する有害性の評価である 3.1 曝露解析の方法 各物質につき曝露状況を資料で求めた幾何平均値 GM 幾何標準偏差値 GSD を用いて 対数正規分布に則る累積確率密度関数 Φ(x) を以下の式より求める Φ(x)=LOGNORM.DIST(x,ln(GM),ln(GSD),TRUE) Φ(x) を用い 曝露量 x に対する曝露人口の分布値 f(x) を求める 体内に取り込んだ化学物質がどれほどの確率で身体へ影響を及ぼすのかを明らかにするために US EPA の IRIS データの NOAEL( 無毒性量 ) を用いてグラフにした 仮定 NOAEL の用量でヒトに 0.5% の発症率が生じるとする GM=NOAEL GSD^2.58 3.2 有害性評価の方法 DALY の概念を用いた DALY: 障害調整生命年 [ 年 -DALY/ 件 ] =YLL( 早死にすることで失われた年数 ) +YLD( 障害を持ちながら生活することで失われた年数 ) YLD=DW 障害継続期間 /(1+r) C(α+x)e DW=disability weight x= 障害発生からの経過年 r= 割引率 C= 定数 (0.1658) β= 定数 (0.04)

α= 障害発生年齢以上の二つの結果を掛け合わせてリスク値として評価した 3.3 評価対象物質今回 水俣条約等により国際的に削減の取り組みの始まったメチル水銀 ( 林 ) 大気汚染物質の代表といえる窒素酸化物 ( 小泉 ) 必須元素というベネフィットもあるものの過剰摂取でリスクが懸念される亜鉛 ( 橋本 ) について基礎データを調査するとともにリスク評価を実施した 4. 結果 4.1 メチル水銀の地理的 経時的変化について ( 林 ) メチル水銀の有毒性は水俣病などで有名であり 現在日本では魚類などからの摂取量が厳しく制限されている 一方海外では未だに水銀を金採掘 (ASGM) などに使用している地域がある今回は ASGM を行っている国 日本と同じように魚類を介して摂取している国 水俣病の際の WHO の設けた水銀基準値を比較してみた 世界の様々な国の毛髪 Hg 量データより 血中 MeHg 曝露平均値を算出し 解析に用いた さらにここに水俣病時に WHO が勧告した上限値である毛髪水銀濃度 50ppm で暴露した場合のリスク値も統合する 表 1 表 1 リスク評価値の比較 ( 赤線 = 日本の飲料水中に含まれる臭素酸曝露による障害過剰がん発生のリスク ) 4.2 亜鉛の過剰摂取によるリスク期待値 ( 橋本 ) 亜鉛は数百におよぶ酵素たんぱく質の構成要素として さまざまな生体内の反応に関与している必須のミネラルである 亜鉛の過剰摂取により 銅の吸収阻害による銅欠乏 嘔吐腎障害 免疫 低銅血症 下痢などのおそれがある 亜鉛過剰症による神経障害例 39 歳女性.1 年前より下肢痙性, 上下肢異常感覚が出現し, 痙性による歩行障害が進行した. 神経学的に両下肢痙性, 両下肢深部感覚障害, 四肢異常感覚を認めた.5 年以上前から牡蠣を毎日 15 ~20 個摂取するという極端な食生活が判明し, 亜鉛過剰摂取が原因と考えた. 亜鉛過剰摂取による銅欠乏症が原因である

日本の測定事例 ( 平均値 ) 食事 7,02(mg/ 日 ) 3483 人 ( 厚生労働省 H21) 耐容上限量 35~45(mg/ 日 ) (18 歳の男女 ) NOAEL 48~102 mg/kg 体重 / 日神経の後遺症 (dw = 0.388-0.468) を調査目的とし 発症年齢は 20 歳としたこのデータをもとに曝露量の分布と用量反応関係のグラフを算出したところ次のようになった 曝露量の分布幾何平均値 99.48 µg/kg-bw/ 日幾何標準偏差 1.5 図 -2 横軸 :μg/kg-bw/ 日 縦軸 : 単位なし 用量反応関係 NOAEL 75000.0 µg/kg-bw/ 日幾何平均値 1118306.9 µg/kg-bw/ 日幾何標準偏差 2.9 図 -3 横軸 :μg/kg-bw/ 日 縦軸 : 単位なし そして神経障害のリスク期待値を求めたところ以下のようになった

疾病の発生確率 疾病の重篤度 リスク期待値 [-] [year-daly/ 件 ] [year-daly/ 生涯曝露 ] 亜鉛 ( 神経障害 ) 3.9E-17 3.047 1.2E-16 4.3 NO₂ のリスク評価 ( 小泉 ) NO₂ とは高温燃焼に伴い必然的に発生するガスで 自動車や工場だけでなくビル 家庭からの排出もある 大気汚染防止法では有害物質 特定物質に含まれるが他の有害物質と比べ排出量が多く 排出源も多様である NO 2 は高濃度で呼吸器と循環器に影響を与えるとされています 肺胞上皮に分子レベルで変化を与え 呼吸器感染症のリスクを増加させる酸化的ストレスを与え 炎症を引きおこすことにより 心血管系イベントに繋がる可能性が示唆されている NO₂ の循環器疾患と呼吸器疾患の疾患過剰発生率をまとめた 図 -4 心疾患の DALY の算出 YLL=10.8 循環器疾患においては 心筋は再生しないため発症後障害が寿命まで続くと考えて平均寿命ー YLL ー平均発症年齢 = 障害継続期間と考えて YLD を計算した DW は 0.79 発症年齢を 61 歳 ( 心筋梗塞の平均入院年齢 ) 呼吸器疾患の DALY YLL は循環器疾患と同様にして 8.12 YLD は循環器疾患と違い治癒するため 平均入院日数 (14 日 ) を障害継続期間と設定した DW は 0.1 発症年齢を 75 歳 ( 肺炎の平均入院年齢 ) 以上のようにして算出した これらをもとにリスク値を算出した

5. 考察 5.1 メチル水銀 ( 林 ) 魚類摂取群と金採掘群の MeHg 被ばくによるリスクはおおむね同じような範囲内の数値である魚類摂取 + 金採掘群においては 明らかに他のグループよりも高リスクであるという結果が得られた また 水俣病発生時に WHO が提唱した基準値はリスク期待値でみた場合 ASGM や魚類摂取よりもはるかに危険な水準であるといえる 5.2 亜鉛 ( 橋本 ) この結果から 神経障害の症状が出る亜鉛過剰症になったときの疾患重篤度は高いと言えるが 過剰に亜鉛を摂取することが少ないため 総合的なリスクは低い結果となった また 用量反応曲線によると亜鉛を摂取するほど罹患リスクは高まった 亜鉛は必須アミノ酸であり 亜鉛不足の方が起こりやすい そのため 過剰症に気をつけるよりも 亜鉛を不足しない食生活を続けることが重要である 5.3 窒素酸化物 ( 小泉 ) 環境基準を超えて 曝露されている人はほとんどいないにも関わらず 水銀による健康被害よりも高いリスク値となっている 屋外よりも屋内の方が NO 2 濃度が高くリスクが大きくなっている 従来から注目されていた呼吸器疾患に対するリスクよりも循環器疾患に対するリスクの方が高くなっている 6. まとめ 3つの事例を比較すると 本解析をもとに推察できることは NO₂ の曝露によるリスクの方が MeHg によるものよりも大きいということである

世間的な注目度としては MeHg の方が多いが 実はその関心度合いと実際のリスクは必ずしも比例していないということが分かった化学物質曝露による疾病の重篤度のみに対する関心ではなく 我々の曝露状況を鑑みたうえでのより正確なリスク評価の知識を得ることが肝要であると考える 7. 参考文献 *1 The impact of long-term past exposure to elemental mercury on antioxidative capacity and lipid peroxidation in mercury miners *2 Measurement of hair mercury in areas concerned with mercury pollution around the world Masatake Fujimura, Akito Matsuyama, Kunihiko Nakamura National Institute for Minamata Disease, Department of Basic Medical Science, Toxicologic Pathology Section *3 Ranking the risks of 12 major environmental pollutants that occur in Japan Author links open overlay *4 Methylmercury (MeHg); CASRN 22967-92-6 Integrated Risk Information System (IRIS) U.S. Environmental Protection Agency Chemical Assessment Summary National Center for Environmental Assessment *5 水俣病の原因究明及び発生源確定の過程 ( その3) - 昭和 40(1965) 年 5 月の新潟水俣病公式発表から 昭和 43(1968) 年 9 月の政府統一見解の発表まで- *6www.neurology-jp.org/Journal/public.../056100690.pd... *7Integrated Science Assessment for Oxides of nitrogen-health Criteria *8Eur Respir 2014 厚生労働省人口統計より