1. 初期対応 1) 発生直後の対応 (1) 曝露部位 ( 針刺し 切創等の経皮的創傷 粘膜 皮膚など ) を確認する (2) 曝露部位を直ちに洗浄する 1 創傷 粘膜 正常な皮膚 創傷のある皮膚 : 流水 石鹸で十分に洗浄する 2 口腔 : 大量の水でうがいする 3 眼 : 生理食塩水で十分に洗浄する (3) 曝露の程度 ( 深さ 体液注入量 直接接触量 皮膚の状態 ) を確認する (4) 原因鋭利器材の種類 その使用対象者 ( 汚染源 ) および使用目的を確認する 2) 発生後の手続き (1) 体液曝露の手続き総務課 ( 時間内 ) または事務当直( 時間外 ) にて関連書類を受け取り 体液曝露関連検査依頼票に記入し 必要書類を受け取る (2) 承諾書の作成 ( 曝露源 ( 患者名など ) が確定している場合 ) 曝露源が患者の場合は 担当医が患者に体液曝露について説明し 採血および曝露関連検査を実施するための承諾をいただく ( 患者の署名が必要 ) 患者が署名できない場合 親族 ( 配偶者 両親 子等 ) の署名をいただくこと 患者から事前承認が得られている友人 知人は署名が可能である 患者またはその親族の署名が得られない場合は 主治医の判断で検査依頼を行い 後に担当医より説明し 同意書の署名をいただく (3) 曝露源 ( 患者など ) の検体採取 1 電子カルテへの登録とバーコードラベルの発行検体検査オーダーの機能別 体液曝露 ( 曝露源 ) 検査 より登録し バーコードラベルを印刷後 検体スピッツに貼付する 2 採血採血容器 : 分離剤入り緑のスピッツ採血量 =(2+ 検査依頼項目数 )ml (4) 曝露者の検体採取注意 1) 採血容器 採血量は曝露源と同じ 注意 2) 曝露者検体の電子カルテ登録およびバーコードラベルは不要 注意 3) 各部署にて採血が出来ない場合は 臨床検査部感染免疫検査室に連絡 注意 4) 検査項目に HIV が含まれ妊娠が危惧される場合は 妊娠反応検査の依頼が可能 ( ハルンカップに尿 20cc を採取し 提出 ) (5) 検体 書類の提出下記のものを臨床検査部感染免疫検査室に提出する 曝露源検体と曝露者検体 ( 原則は両検体を同時に提出 )
体液曝露関連検査依頼票 (3 枚複写 本人控えは各自で保管 ) 承諾書 (6) 結果報告 HIV の検査結果は 2 時間以内 HBV の検査結果は 24 時間以内に曝露者に電話連絡す る その他の検査結果は一週間以内に封書で送付する 予防薬の払い出しが可能で曝露者が投薬を希望する場合 総務課専門職員 ( 時間 外 ; 事務当直 ) にて薬剤請求書を受け取り 薬剤部で払い出し後 曝露者の所属部署 で投薬する (7) エピネットの記入および報告 曝露内容を記入し 感染制御部へファックスする 2. と経過観察 曝露後に感染の可能性があると判断し ( 下記参照 ) 経過観察が必要な場合は総務課専門職 員にておよび労災などの手続きについての説明を受けた後 専門医 ( 内科東 ) をす る (1) 以下のような検査結果を示す場合 曝露源 曝露者 HBV HBsAg (+) HBsAg (-) HBs 抗体 (-) HCV HCV 抗体 (+) HCV 抗体 (-) HIV HIV スクリーニング (+) HIV スクリーニング (-) HTLV-Ⅰ HTLV-Ⅰ 抗体 (+) HTLV-Ⅰ 抗体 (-) 梅毒 梅毒脂質抗体 (+) TP 抗体 (+) (2) 曝露源不明 曝露源の検査不能または検査結果が陰性であっても感染が強く疑われる場合 フォローアップ中は二次感染を防ぐ努力が必要となる 性行為の制限やコンドームを適切に使 用する また経過観察期間中の供血 臓器提供は避ける
3. それぞれの病原体に対する対応 1)HBV による曝露 1 回の HBV 曝露による感染率は約 20% である (2) 対応曝露後の対応 ( 右図 ) 発症の予防方法は 曝露後 24 時間以内 ( 遅くとも 48 時間以内 ) に HBV 用免疫グロブリン製剤 ( 乾燥抗 HBs 人免疫グロブリン ) を投与 ( 体重 70Kg 以下は 1000 単位 体重 71Kg 以上は 2000 単位 ) するとともに HB ワクチンを1 週間以内に接種する また 初回ワクチン接種の1ヵ月後および3~6ヶ月後に追加接種する ( 全 3 回 ) HBV ワクチンノンレスポンダーについては 初回の HB グロブリン投与後 に再度投与を行う 2)HCV による曝露 1 回の HCV 曝露による感染率は約 2% である 2 HCV 抗体が陽性であっても 感染既往抗体の可能性もある (2) 対応曝露後の対応 ( 右図 ) 発症の予防方法はなく 発症と同時にインターフェロン等による治療が有効とされている このことから 定期的な経過観察は極めて重要となる 再 再 4.5 ヶ月後 HBV 曝露後の対応 曝露源および曝露者の HBs 抗原 抗体検査 曝露源 :HBs 抗原 (+) 曝露者 :HBs 抗原 抗体 (-) 1 48 時間以内に HB ワクチン接種 48 時間以内に HB グロブリン投与 1 に HB ワクチン追加接種 曝露者の HBs 抗原 抗体, HBV-DNA,AST,ALT などの検査 必要に応じて再治療 HCV 曝露後の対応 曝露源および被汚染者の HCV 抗体検査 曝露源 :HCV 抗体 (+) 曝露者 :HCV 抗体 (-) 予防薬なし 曝露原が HCV 感染者である場合は 曝露者への感染確認のために経過観察が必要となる HCV 抗体,HCV-RNA,AST,ALT などの検査 発症と同時に治療
3)HIV による曝露 1 回の HIV 曝露による感染率は約 0.4% である 2 曝露源の HIV スクリーニング陽性の場合は 直ちに HIV 確認検査を依頼する (2) 対応曝露後の対応 ( 右および下図 ) 発症の予防方法は 曝露後可能な限り速やかに (2 時間以内 ) 抗 HIV 薬を内服 ( アイセントレイス 1 錠 400mg 2 錠分 2/ 日 ツルバダ配合錠 1 錠分 1/ 日 ) を投与する 注 ) 妊娠の可能性のある女性は 妊娠反応検査を実施する 注 ) HBV 感染を確認するために HBs 抗原検査を実施する 再 HIV 曝露後の対応 曝露源および暴露者の HIV スクリーニング検査 曝露源 :HIV スクリーニング (+) 曝露者 :HIV スクリーニング (-) 2 時間以内に抗 HIV 薬の内服 内服しても 感染阻止率は 100% ではないことから 曝露者の経過観察が必要となる HIV 抗体,HIV-RNA などの検査 発症と同時に再治療 HIV ウイルスに曝露したと思われる状況発生 男性 女性 妊娠の可能性を調べる 内服に関して熟知し 前もって決めておく ( 自己決定可能 ) 内服開始 自己決定不可 30 分以内に責任者との相談可能 責任者と相談し決定 自己決定不可 30 分以内に責任者との相談不可 1 回目の内服開始 責任者と相談し その後の対応を決める
4)HTLV-Ⅰによる曝露 1 回の HTLV-Ⅰ 曝露による感染率は不明である (2) 対応発症の予防方法はない ( 専門家または感染制御部の医師に相談する ) HTLV-Ⅰ 曝露後の対応 曝露源および曝露者の HTLV-Ⅰ 抗体検査 曝露源 :HTLV-Ⅰ 抗体 (+) 曝露者 :HTLV-Ⅰ 抗体 (-) 予防薬なし 1 再 曝露者への感染確認のために経過観察が必要となる HTLV-Ⅰ 抗体, 血液像などの検査 感染が確認されても治療法は無い 5) 梅毒による曝露 1 回の梅毒曝露による感染率は不明である 1 梅毒 RPR( 梅毒脂質抗体 ) および TP 抗体が陽性であっても 血液中に梅毒トレポネーマが存在する可能性は少ない 2 先天性梅毒児および第一期後半の梅毒感染者には注意する (2) 対応曝露源の梅毒検査が陽性であっても 血液中に梅毒トレポネーマが存在する可能性は少ないことから 感染判断は専門科または感染制御部の医師に相談する 発症の予防方法は 曝露時に抗梅毒薬を内服するか 曝露後 1~3ヶ月後に梅毒関連検査を実施し 感染が確認されれば内服する 再 1~3 ヶ月後 梅毒曝露後の対応 曝露源および曝露者の梅毒脂質抗体および TP 抗体検査 曝露源 : 脂質抗体および TP 抗体 (+) 抗梅毒薬の内服あるいは経過観察 曝露者が曝露直後に抗梅毒薬を服用しなかった場合は 1~に梅毒検査を実施する 梅毒脂質抗体, 梅毒 TP 抗体検査 感染の確認後に治療開始