スーパーカミオカンデにおける超新星観測用 DAQ の開発 森正光高エネルギー物理学研究室 Iceppシンポジウム 24 1
スライドの構成 1. 超新星爆発 2. スーパーカミオカンデの概要 3. 新 DAQの開発 4. まとめと展望 2
超新星爆発について 太陽の 8 倍以上の質量をもつ恒星がその生涯を終えるときに大爆発を起こす現象 そのエネルギーの総量は 10 53 erg に達する エネルギーの 99% はニュートリノとして放出される 4 つの相互作用すべてがかかわる複雑な現象 重力崩壊モデルでは ニュートリノが爆発には深くかかわっている [1] T.TOTANI FUTURE DETECTION OF SUPERNOVA NEUTRINO BURST AND EXPLOSION MECHANISM" Astrophys J. 496, 216-215 Mar (1998) 0.1 1 10 s 超新星爆発のニュートリノのルミノシティの予測 [1] 3
SN1987a 1987 年 地球から約 16.7 万光年離れた大マゼラン星雲で超新星爆発が観測された 世界の 3 つの検出器で計 24 個のニュートリノイベントが観測された 日本のカミオカンデででも 11 個のニュートリノイベントを観測 これにより重力崩壊モデルが裏付けられた SN1987a からのニュートリノイベントのエネルギーの時間変化 [2] 後前 SN1987aの爆発の前後 [2] [2]SK 公式 HP http://www-sk.icrr.u-tokyo.ac.jp/sk/ 4
スーパーカミオカンデ 岐阜県神岡町にある水チェレンコフ型の検出器 直径 39.3 m 高さ 41.4 mのタンクに13,000 本 (ID:11,000 OD:2,000) のPMT がついている Fiducial Volumeは22.5 kton( カミオカンデと比べて約 20 倍 ) ニュートリノによる超新星爆発の観測を行っている 陽子崩壊探索やニュートリノ観測を行っている 10kpcの距離の超新星爆発からのSKで観測されるニュートリノイベントの計算 [3] [3] SK Collaboration Real-time supernova neutrino burst monitor at Super- Kamiokande"Astropartphys 81,39-48(2016) SK の概観 [2] 5
ベテルギウス オリオン座に含まれる恒星の一つ 地球から約 640 光年離れている 近い将来超新星爆発を起こす可能性が指摘されている ベテルギウスが超新星爆発を起こした場合のイベント数を sn1987aから見積もる 2 167000 ly 11 個 640 ly 1 2 3 4 20 (1~2) 30 10 6 個 1. カミオカンデで観測されたイベント数 2. ベテルギウスと SN1987a の距離の逆 2 乗 3. カミオカンデと SK の体積比 4. カミオカンデと SK の PMT の被覆率の比の効果 このイベント数が 10 s で来るとするデータ量にして 40 MB/s で現在の DAQ の処理能力を上回るデータ量 6
SK の DAQ QBEE ボードのブロック図 DB buffer L1 buffer 16 MB/s 12 MB/s SIC FIFO SK では 2008 年から QBEE(QTC Based Electronics with Ethernet) と呼ばれるフロントエンドボードで PMT からの信号をデジタル処理している QBEE には時間のかかる処理の前には Buffer が搭載されている 普段の測定ではこれらのBuffer(L1 以外 ) があふれることはないが超新星爆発では Bufferがオーバーフローすることが予測されている 7
新 DAQ の概要 QBEE のバッファオーバーフローの影響を受けない新しい DAQ を開発 (SN module, veto module) SN module は QBEE の HITSUM という PMT のヒット数を表す信号を読み出す HITSUM はバッファの上流にあるためオーバーフローの影響を受けない SN module はイベントレートが高いときに SN トリガーという信号を出す Veto moduleはsnトリガーの数 (0~12) を監視してSNトリガーがある基準を満たしたらveto 信号をQBEEに送りQBEEのイベントを間引く Veto は QBEE の TDC のみを止め HITSUM 自体は引き続き使える PMT 24 QBEE QBEE QBEE 10 HITSUM SN module SN module SN module 12 SN トリガー Veto module veto トリガー 60MHz clock + 60kHz counter 本研究の主目的 マスタークロック veto 8
Veto module FPGA を用いて開発 シミュレーション上でファームウェアの動作確認 Veto module は QBEE の負荷 ( SN トリガーの数 ) に応じて veto の長さを変える Veto 信号は 60kHz のクロックに同期させる 得られるイベントをできるだけ多くするために veto 信号のパラメータを最適化する必要がある 決めるべきパラメータ 1. veto 信号を出す SN トリガーの閾値 2. 1 の閾値を何回連続で超えたら veto を出すかの閾値 3. 2 の条件も満たされた時の veto の長さ Veto 60kHz clock Veto 前の HIT Veto 後の HIT 5 clock 1 Veto 信号の構造の例図の veto 信号は 1/6 にイベントを間引く 9
Veto module の外観 Veto module のボード 取り付けたところ 10
LD バーストテスト DAQ の性能評価と veto パラメータ決定のために LD バーストテストを行った LD バーストはタンク内で LD(Laser Diode) を光らせて疑似的に超新星爆発を再現するテスト 10 秒間で 60,000~60,000,000 までのイベントを発生できる (4 kpc ~ 150 pc 相当 ) C.G Periodic or Random 略 LD バーストの回路図 P.S LD Optical fiber Half mirror ND filter Monitor PMT Discriminator Diffuser ball V.S QBEE SK タンク rate (arbitrary) LD バーストの時間構造 0.05s 0.5s 3s 3 1 0.2 t 11
QBEE のイベント数 QBEE での LD バーストの観測 LD が光った回数と QBEE のイベント数 Periodic Random 10 秒間一定のレートのバースト 線形性が崩れている LD が光った回数 LD が光った回数と QBEE でのイベント数をプロットすると高レートのバーストでは線形性が崩れているのが分かる 12
SN module で記録した PMT のヒット数 QBEE のエラー 総イベント数 6M~10M バーストの測定 8.5M イベントのバースト以上でオーバーフローによるエラーが出た 10M nhits L1 Buffer full error 6M 7.5M 8.5M SIC FIFO full error DB Buffer full error SIC full DB full 14 分 60 khz counter L1 Buffer はバースト関係なく短時間溢れている SIC FIFO は 10M バーストで溢れている DB buffer はバーストから時間がたって溢れている 13
30M バースト ( ベテルギウスの超新星爆発相当 ) データ抜け nhits L1 Buffer full SIC FIFO full DB Buffer full 拡大 10 s 0.06 s 縦軸は QBEE で取得した PMT のヒット数 オーバーフローによりヒット数が減衰している ヒット数が完全に抜け落ちている瞬間もある 14
Veto module を導入しての LD バースト 前述の LD バーストの結果より veto parameter を次のように設定した オーバーフローが出る閾値である 8.5M バースト程度になるようにイベントを間引く SNトリガーの閾値 per us 間引き率 11 per 64 us 1/2 12 per 160 us 1/3 12 per 1600 us 1/4 10M バーストの SN トリガー 15
Veto module を入れた状態での QBEE のエラー Veto あり 30M バースト Veto なし 30M バースト nhits L1 Buffer full error SIC FIFO full error DB Buffer full error Veto module を入れた方では L1 full, SIC Full,DB full を抑えることができた 16
今後の課題 QBEEのデータから再構成した Nhits from and Veto signal 30Mバースト 拡大図 Nhits from QBEE and Veto signal nhits Veto signal nhits Veto signal Veto がでたところが全くデータが取れていない データが取れていたところを拡大すると veto 信号の間隔でデータが間引けていることが分かる QBEE のスイッチングが間に合わなかったためであると考えられる QBEE のスイッチングの最小時間 16us Veto 信号の幅 16us 17
まとめと展望 超新星爆発は複雑な現象でその解明のためにニュートリノでの観測が望まれている SK ではニュートリノでの超新星爆発観測を行っているが地球近傍で起こった場合は現行の DAQ では処理しきれない可能性がある Veto module 自体の動作確認は完了して正常に動作していることを確かめた ただし veto 信号が出たところではイベントの間引きができずにほとんど抜け落ちてしまった 2 月末にもう一度テストをして完成させる 18
Back up 19
重力崩壊モデルの模式図 20
エネルギーの時間変化 位置 21
Veto module を入れた LD バーストの回路 全 QBEE へ veto in SN module SN トリガー 略 Veto 信号 SN module 12 SN module Veto module Veto 信号 V.S #15003/4 MCKL veto in QBEE Veto 信号 Hut 3 Central hut 22
30M バースト Veto なし nhits L1 Buffer full SIC FIFO full DB Buffer full 30M バースト Veto あり nhits L1 Buffer full SIC FIFO full DB Buffer full 23
超新星爆発探索の概要 現在 SKはSK-IVという実験フェーズで測定している SK-IVではエレクトロニクスの入れ替えなどにより感度が向上 2008 年からのSK-IVの測定でそれ以外の期間を上回るデータがある SK-IVのデータを使用しての超新星爆発探索は行われていない 24
探索方法 ある長さの time-window を決めその間のイベントを数え上げイベントクラスターを見つけた エネルギー (MeV) > 7 > 17 総電荷 (p.e.) < 1000 Goodness > 0.4 0.3 (2) Time-window (s) ( イベント個数 ) 2.0 (3) 10 (4) 探索期間 2008 年 9 月 15 日 ~2017 年 8 月 8 日 2008 年 9 月 15 日 ~2017 年 8 月 10 日 これらの条件は MC によって決定した この条件では 400 kpc 程度まで観測可能 25
結果 7 MeV 探索 17 MeV 探索 上の図は各探索で見つかったクラスターのイベント間の平均距離 R mean のヒストグラム MCによると典型的には1,000 cm 以上になる 見つかったクラスター 7 MeV : 32214 個 17 MeV : 11 個 今後はこれらのクラスターを詳細に解析して超新星爆発かどうかを判断する 26
超新星爆発探索 SK-IVのデータを使用した探索を行った 条件はMCを使って決めた 使ったモデルはwilsonモデル 今後さまざまなモデルを使って検証する 超新星爆発の候補となるクラスターが見つかって今後は詳細に解析して超新星爆発がどうか判断する 27