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いろいろな衣装を知ろう

いきたいと考える 第二に ビデオに撮ったインタビューの様子を繰り返し見て振り返ることで パターンに沿った質問だけでなく 自分なりの質問を考える活動に発展させていきたい そのために ビデオ視聴による振り返りを3 回行う また 自己評価だけでなく 他者評価により互いの良さを確認することで 話すことへの自

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(2) 計画学習課題 学習内容 時間 連立方程式とその解 二元一次方程式とその解の意味 2 連立方程式とその解の意味 ( 本時 1/2) 連立方程式の解き方 文字の消去の意味 加減法による連立方程式の解き方 5 代入法による連立方程式の解き方 連立方程式の利用 問題を解決するために 2つの文字を使っ

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平成 28 年度全国学力 学習状況調査の結果伊達市教育委員会〇平成 28 年 4 月 19 日 ( 火 ) に実施した平成 28 年度全国学力 学習状況調査の北海道における参加状況は 下記のとおりである 北海道 伊達市 ( 星の丘小 中学校を除く ) 学校数 児童生徒数 学校数 児童生徒数 小学校

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う来なかった 翌々日の月曜日 あきらは じゅんに いいよ と返事をもらったのに どうしてこなかったのか と詰め寄った それに対して じゅんからは いいよ って 断ったじゃないか という返事が返ってきた という内容である ここでは 文字だけで思いを伝える難しさと 相手の立場をよく考えて情報を発信する大

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(2) 記録用サポートブックの作り方 記録用サポートブックは 一般様式 を使って書きます 一般様式 は 項目 本人の状況 支援方法 の 3 つの枠からできています 様式一般様式支援者 : 場所 : 日付 : < 項目 > 例 ) 話を聞く( 授業中 ) 使い ポイント 方 気になるな 困ったな と思

4 研究主題との関連 自分を見つめ 友達の思いを大切にする子供の育成 道徳授業の充実を通して 研究主題に迫るために 4 年生では子供たちの目指すべき児童像を 自分の思いを見つめる子 友達の思いに気付く子とした また 目指すべき具体的な児童像を 資料の世界観に浸り 登場人物に自分を重ねながら登場人物の

人的環境の整備 教師 友達 分かりやすい説明の手本となるように, 話す速さや声の大きさを意識して簡潔に話したり, 話すポイントを視覚的に示したりする 道案内の手順を知ることや説明原稿の作成に時間が掛かった場合は, 教師間で役割分担しながらアドバイスする グループ内での自分の役割が明確になるように,

7 本時の指導構想 (1) 本時のねらい本時は, 前時までの活動を受けて, 単元テーマ なぜ働くのだろう について, さらに考えを深めるための自己課題を設定させる () 論理の意識化を図る学習活動 に関わって 考えがいのある課題設定 学習課題を 職業調べの自己課題を設定する と設定する ( 学習課題

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上に食に関する指導の充実が求められている 食環境の乱れが社会的課題とっている今日 中学生が食生活の自立を目指した学習をすることは大切なことであるので 本時は 自分や家族の食生活の中で見付けた問題点の改善に自主的に取り組むことができるように 指導を進めることにした 指導に当たっては これまでの学習を踏

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5 児童の実態と主題に迫るための手だて (1) 児童の実態本学級の児童は明るく 男女の仲もよい いろいろな場面で声を掛け合ったり 仕事を手伝ったりできる児童も多い 話し合い活動では 友達の意見のいいところを取り上げて考えをまとめることができたり 人の意見を聞いて自分の考えを変えることができたりする児

6 年 No.12 英語劇をしよう (2/7) 英語での 桃太郎 のお話を理解し 音読する 導 あいさつをす 挨拶の後 Rows and Columns を交え 天気や時 入 候の確認 既習事項の確認をす (T1,T2) ペンマンシップ ペンマンシップ教材を用いて アルファベットの ジングル絵カー

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5 年 No.64 英語劇をしよう (2/8) まとまった話を聞いて内容を理解することができる 主な言語料 して天気や日時などの確認をす 教 1 本時のめあてを知 Peach Boy を詳しく聞いてみよう物語を聞く (3 回目 ) 登場人物全体について聞かせ 聞き取れた単語をカタカナでもいいので書き

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4. 題材の評価規準 題材の評価規準 については, B 日常の食事と調理の基礎 (2),(3), D 身近な消費生活 と環境 (1) の 評価規準に盛り込むべき事項 及び 評価規準の設定例 を参考に設定して いる 家庭生活への関心 意欲 態度 お弁当作りに関心をもち, おか 生活を創意工夫する能力

(2) 児童観児童は1 年生 1 月に おはなしをつくろう で 昔話をもとにして 人物と出来事を考えて簡単に物語を書く学習を行っている また 2 年生の1 学期には じゅんじょよく書こう の学習で はじめ 中 おわり の構成を考え 自分の経験を伝える文章を書く学習をしてきている この学習を通して 順

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第 3 学年 学級活動学習指導案 平成 18 年 6 月 30 日 ( 金曜日 ) 第 5 時限指導者二階堂聡 1 題 材 夏休みに向けて1 学期の学習を振り返ろう 2 題材について 生徒にとって, 夏休みの過ごし方はそれぞれである 部活動に熱中する生徒, 夏期 講習に参加し, 学力向上に努める生徒

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(4) ものごとを最後までやり遂げて, うれしかったことがありますか (5) 難しいことでも, 失敗を恐れないで挑戦していますか

< 児童の実態 > 男子 23 名, 女子 12 名, 計 35 名の学級である 男女の仲がよく, 休み時間など活発に遊んでいる様子が見られる いろいろなことに興味を持ち, 集中して努力することができる 最上級生として, 学校の中での活躍も見られるようになっている 学習に対する意欲は高くなってきてい

生徒用プリント ( 裏 ) メールで意図は伝わるか??? 90% が伝わると考えているが 実際は 50% 月刊誌 人格 社会心理学会ジャーナル に発表された研究によると 電子メールのメッセージの意味合いを正しく捉えている可能性は 50% しかないという結果が出ている この研究では 人は受信する電子メ

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文章構成の在り方を実感できる「読むこと」の学習指導


とで児童に活動の見通しを持たせ, 自分で課題を立て情報を集め整理し, 発表する等に取り組めるようにしていきたい 調査計画の場面では, 目的に照らしてどのような調査をしていくことがよいのか児童にしっかりと考えさせたい 例えば, データはどう集めたらよいのか, アンケートを実施する場合には, 誰にアンケ

学習指導要領の領域等の平均正答率をみると 各教科のすべての領域でほぼ同じ値か わずかに低い値を示しています 国語では A 問題のすべての領域で 全国の平均正答率をわずかながら低い値を示しています このことから 基礎知識をしっかりと定着させるための日常的な学習活動が必要です 家庭学習が形式的になってい

第 学年 組 図画工作科学習指導案

(3) 指導観公民的分野は地理的分野と歴史的分野の学びの積み重ねによるところが大きい 用語や概念も高度化し 生徒の感想にも 難しい と感じるものが多くなっている そこで その難しいと感じる公民の用語などは積極的に用語集を活用し 難しい言葉に対する抵抗感を少しでも和らげるよう授業でも活用している また

03指導案前段

(4) ものごとを最後までやりとげて, うれしかったことがありますか (5) 自分には, よいところがあると思いますか

ホームページ掲載資料 平成 30 年度 全国学力 学習状況調査結果 ( 上尾市立小 中学校概要 ) 平成 30 年 4 月 17 日実施 上尾市教育委員会

第 3 学年 2 組算数科学習指導案 1 単元名たし算とひき算の筆算 指導者永田佳江 2 単元について (1) 単元観 該当する学習指導要領の内容 A 数と計算 A(2) 加法, 減法 (2) 加法及び減法の計算が確実にできるようにし, それらを適切に用いる能力を伸ばす 本単元で扱う たし算とひき算

子葉と本葉に注目すると植物の成長の変化を見ることができるという見方や, 植物は 葉 茎 根 からできていて, それらからできているものが植物であるという見方ができるようにしていく また, 学んだことを生かして科学的なものの見方を育てるために, 生活の中で口にしている野菜も取り上げて観察する活動を取り

3 特別支援学級における学習指導案 特別支援学級においても 学習指導案は授業の設計図としての働きに変わりはありません しかし 特別支援学級では 児童生徒の実態から指導の内容や計画を考えることに大きな意味があります 通常の学級の学習指導案では 例えば 単元について は学習指導要領に沿った指導計画に基づ

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Transcription:

群教セ I01-08 平 26.254 集 特 情緒障害 中学校自閉症 情緒障害特別支援学級における人と関わる意識を高める支援の工夫 自己肯定感を高めるための振り返りと ソーシャルスキルトレーニングを通して 特別研修員田子賢一 Ⅰ 研究テーマ設定の理由 自閉症 情緒障害特別支援学級の生徒は 社会生活を円滑に行うために必要となる 自己理解をする力やコミュニケーション力の不足という特性が見られることが多い 本学級生徒は 場に合わない言動をしてしまい 相手とうまく意思の疎通が図れないためにトラブルとなることがある また 自分の気持ちや思いをうまく伝えて会話を楽しみたい 人と気持ちよく関わって生活したいという思いはあるが 自信を持った言動ができなかったり 人と関わることが苦手であったりといった傾向も見られる 本研究では 自分のよさや生活を振り返る活動と合わせて 人と関わるコツを身に付けるソーシャルスキルトレーニング ( 以下 SSTとする ) を取り入れ 学級活動を中心とした実践を行う 肯定的な自己理解によって学習意欲を高めた上で SSTを行うことは 生徒の自己肯定感や自己の課題を解決しようとする意欲及びコミュニケーション力を高めることにつながると考えた そして 授業実践と同時に 学校生活全般で自分の思いを相手にうまく伝えたり 相手の気持ちを考えたりすることができる経験を積むことで 生徒は充実感や満足感を得て よりよく人に関わりたいという意識がさらに高まり 実践意欲や態度へと結びつくと考え 本テーマを設定した Ⅱ 研究内容 1 研究構想図 2 授業改善に向けた手立て (1) 実践における手立て生徒が自分の生活を振り返ることでソーシャルスキルを身に付けることの大切さを知り 今後の活動への見通しを持つことをねらいとして 次のような手立ての工夫を行った - 1 -

1 友達と関わる自分の姿を振り返りやすくするための工夫 班活動等の学習場面をビデオ撮影し 映像を見ることで 自分の姿を振り返りやすくする 2 自己理解を深め SSTにより課題解決への意識を持たせるための工夫 個別の自己チェック表を確認することで 自分にできていることや苦手とすることを理解し SST により課題解決していくことを意識する 実践では ビデオの映像やチェック表により ソーシャルスキルについての理解と今後の学習への意識付けはできた ソーシャルスキルを着実に身に付けさせるためには どのような言葉づかいや行動をすればよいのかといったことを明確にして提示することが必要である (2) 実践 1における手立て 1 自分の生活を振り返り 自己肯定感や課題解決に向けての意欲を高めるための工夫 導入時に 関わりのある教師から 生徒のよさについてのコメントを伝える場面を設定する 2 相手の気持ちを考えた話しかけ方を身に付けさせるための工夫 既習のソーシャルスキルを確かめる活動を取り入れる モデルとなる場面を教師が演示し 相手の気持ちを考える場面を設定する 身近な場面を設定し 話しかけ方の手順を提示してロールプレイを行う 実践 1では 生徒は自分のよさが認められるという自己肯定感につながる体験をすることができ その後の SSTに意欲的に取り組む姿が見られた また 話しかけ方の手順を提示したことで 生徒はどこに注意すればよいのかというポイントを意識をして SSTを行うことができた 次の段階として 習得したソーシャルスキルの確認や定着に向けた復習が必要であることが課題となった (3) 実践 2における手立て 1 自分の生活を振り返り 自己肯定感や課題解決に向けての意欲を高めるための工夫 導入時に 関わりのある教師から 生徒の成長についてのコメントを伝える場面を設定する 身に付いたソーシャルスキルをチェックし 発表する 2 場面や相手の状況に応じて話すことができるようにするための工夫 既習のソーシャルスキルのポイントカードを提示する 復習したい場面を選択して ロールプレイを行う Ⅲ 研究のまとめ 1 成果 自分のよさが認められる体験やチェック表でソーシャルスキルを振り返る活動を重ねていくことにより 生徒は自信を持つことができ 自己肯定感を高めることができた 話しかけるポイントを意識させ 具体的な場面でのロールプレイを取り入れた SSTを行ったことで声のかけ方を考えようとする姿が見られ 人と関わる意識を高めることができた 2 課題 ソーシャルスキルの定着には 成功体験の積み重ねが重要である 今後も生徒の能力に応じて 計画的 継続的なSSTを行うとともに学んだことを生かそうとする意欲や自己肯定感を高めていきたい 生徒がより人と関わろうとする意欲を持てるように 自分のよさに気付ける活動を継続して行っていく必要がある 3 提言〇自分のよさに気付く振り返りと SSTの活動を取り入れたことは 生徒の自己肯定感を高め 前向きに自己課題に取り組む姿につながった このような活動の積み重ねが 自閉症 情緒障害特別支援学級の生徒にとって よりよく人と関わろうとする意識を高め 実践意欲や態度につながると考える - 2 -

< 授業実践 > 実践 1 1 題材名 友達とのよりよい関わり方を学ぼう ~ 相手の行動や表情から気持ちを考えて話そう 2 本題材及び本時について SSTを知る学習の実践後 日常の生活場面で必要な SSTを随時行ってきたが 既習のソーシャルスキル の確認とともに さらに次の段階を身に付けさせたいと考え 改めて生徒の実態を見直した ( 表 1) 表 1 人との関わりやソーシャルスキルに関する生徒の実態 人との関わりの様子 関係するソーシャルスキル 人に話しかけることは苦手で 自分から話しかけることは少ないと 自己理解 自己理解している 2 名 自分から話しかけることができていると自己理解している 1 名 必要な場面によっては友達に自分から話しかけることができるが 話しかけるきっかけの言葉 話しかけるタイミングをつかむことが苦手であったり 話しかけ方 質問の仕方 が唐突であったりすることが多い 相手の顔を見ないことあり 全 相手の気持ちを考えた話しかけ方 相手の状況や 気持ちを考えた話しかけ方は苦手 2 名 いろいろな気持ちの読み取り 言葉以外で自分の意思を伝えようとすることがある 1 名 気持ちの伝え方 友達が困っているときに手を貸そうとすことができる 1 名 困っている人を見たらどうするか 当番活動で 役割として任されたことはやり通すことができる 全 自分は何をすればよいか 授業中は分かったときに 進んで発言することが増えてきた 1 名 身に付いている やや身に付いている 身に付けさせたい 上記の実態をもとに 本時では 導入で自分のよさや生活を振り返り 習得が不十分であると思われる 話しかけるきっかけとなる言葉 についてまず確認する活動を行い その後 中心となる 相手の気持 ちを考えた話しかけ方 の SSTを行うことにした 3 授業の実際 (1) 本時のねらい人との関わり方を振り返り 相手の状況を見て気持ちを考え 話しかけることができる (2) 手立ての実際 1 自分の生活を振り返り 自己肯定感や課題解決に向けての意欲を高めるための工夫 導入時に 関わりのある教師からのコメントを聞く 授業を担当している教師から自分のよさを認められることで 生徒は自信を持つことができ 自己肯定感の高まりとともに新たなソーシャルスキルを身に付けようという学習意欲も高められるであろうと考えた コメントを聞いた場面 T S1くんは 英語の授業のとき 質問に対し 積極的に答えようとすることが多くなってきていますよ S1 ふふっ と笑う ( 興奮した様子で 笑顔を見せながら ) 他の生徒も コメントを聞いた時に 照れを隠すようにしながら笑みを漏らしたり にやりとする表情が見られた 関わりのある教師から 直接コメントを聞くことができた S1 は その後の 授業の中で進んで発言したり自分から積極的に SST に取り組んだりするな図 1 関わりのある教 ど 言動が活発になった 他の生徒も表情よく学習に取り組むことができた 師から見た生徒のよさ - 3 -

2 相手の気持ちを考えた話しかけ方を身に付けさせるための工夫 既習のソーシャルスキルが身に付いているか確かめる活動を取り入れる 友達にノートなどを借りようとする場面 職員室で先生に提出物を渡す場面 を使い 話すきっかけとなる言葉を3 択にしてどの言葉かけが最もよいか選ばせ 確かめた 話しかけるきっかけとなる言葉 どちらの場面においても 生徒は 相手の名前を呼ぶ 自分の存在に気付いてもらう言葉を言う という きっかけの言葉を使った表現を選ぶことができた モデルとなる場面を教師が演示し 声をかけられたときの相手の気持ちを考える 吹き出しカードを用い 気持ちを表現させた にこやかな表情 や しかめっ面の表情 の表情カードを提示し 相手の気持ちの確認を行った 相手の気持ちを考える T このような表情の時は どんな気持ちですか? ( しかめっ面表情カードを示しながら )( 図 2) S1 機嫌が悪い S2 いきなり呼ばれて 気分が悪い 表情の読み取りはどの生徒もできていた 図 2 表情カード 話しかける際のポイントとなる手順を示し 練習をさせる 名前を呼ぶ 表情を見る 相手の気持ちを考える 話しかける言葉を選ぶ をポイントとして提示し それを確認しながら教師が演示を行った ( 図 3) 話しかける言葉の例を3つ挙げ 最もよい例をロールプレイで体験させた ( 図 4) ア ごめんね ( 悪いけれど ) すぐに返すから ( 少しだけ ) ノートを貸してくれるかな? イ 少しでいいからノートを貸してくれる? ウ ノート貸して 話しかけるロールプレイの実践 S3のやりとり S3 ねえ 君 ( 相手の表情をちらっと見て ) T なあに? ( にこやかに ) S3 ちょっとでいいから ノートを貸してくれる ( 相手をちらちら見ながら ) T いいよ S3 ありがとう 図 4 場面と話しかける言葉の例図 3 話しかけるポイント 掲示した言葉の例を見て 話しかけるきっかけの言葉を言い出すことができた (S2) 照れながらであったが 自分で考えて声をかけることができた (S1) 本時についての学習の振り返りから抜粋 言い方をていねいにすることは とてもいいことだと思いました 楽しかった 復習になりました 話しかける方法がよく分かってきた 4 考察導入時に関わりのある教師が生徒のよさを認めることで 生徒の学習活動を活発にすることにつながった また 話しかけるときのポイントを掲示し 確認をしながら演示を行ったことは 生徒がポイントを意識をしてロ-ルプレイを行うために役立った ロ-ルプレイではゲストティーチャーが相手役となったが 話しかけられる側の体験もできれば より相手の気持ちを深く考えて行動しようとする意識を高めることができたと考える - 4 -

実践 2 1 題材名 友達とのよりよい関わり方を学ぼう ~ 場面を考えて話してみよう 2 本題材及び本時について実践 1の後 学校生活全般の中で機会を捉え 学習したソーシャルスキルを実践してみるよう声かけを行った その結果 友達の名前をまず呼びかけたり 教師にはていねいな言葉で話しかけるなど 関わり方を意識している姿が見られた しかし 生徒に実践した様子を聞くと 友達にうまく気持ちを伝えられたか分からない 声が出せなかった などと戸惑いの返事が聞かれた ソーシャルスキルの定着を図るためには 前時のよさを生かしてさらに発展的な授業を設定することが必要であると考えた 本時では 実践 1 同様 自分のよさを知るという導入にさらに工夫を加え 身に付いた自分のソーシャルスキルを発表したり 生徒が自分で場面を選び 友達同士で関わり方の SSTを行ったりする活動を通して ソーシャルスキルのさらなる定着を図りたいと考えた 3 授業の実際 (1) 本時のねらい人との関わり方を振り返り 場面や状況に応じて 話をすることができる (2) 手立ての実際 1 自分の生活を振り返り 自己肯定感や課題解決に向けての意欲を高めるための工夫 導入時に 関わりのある教師から 生徒の成長についてのコメントを伝える場面を設定する 関わりのある教師から 事前に生徒の成長の様子を手紙形式で書いてもらい 一人一人の生徒に渡した コメントの概要 自分の思いを伝えようと 発言したり行動したりするときに 言葉のかけ方やタイミングを考えることができるようになってきた 積極的に自分の思いを伝えられるようになってきた 自分の言葉でしっかりと相手に伝わるように言葉を選んで話ができている 相手に応じて 言葉づかいに気を付けて話すことができる 人を褒める言葉がけができるようになってきた コメントに対する生徒の様子 読んだ後の感想を聞くと ありがたい気持ちです うれしかったです と うれしそうな表情をしてつぶやいたり 少し昂揚した態度を見せたりした 身に付いたソーシャルスキルをチェックし 発表する 教師からもらったコメントも参考に チェック表にどの程度ソーシャルスキルが身に付いたかを自分で確認し その中の一つを発表する S1 相手によって 言葉づかいを気を付けるということができていると思います S2 顔を見て静かに聞くということに気を付けています S3 相手によって言葉づかいを気を付けています 初めは照れながら発表する生徒もいたが 次第に全員が 周りに聞こえるように発表する姿が見られた 自己肯定感が高まり 自信につながっていると感じることができた 図 5 ソーシャルスキルのチェック表 - 5 -

2 場面や相手の状況に応じて話すことができるようにするための工夫 既習のソーシャルスキルのポイントカードを提示する これまでに学習してきた 相手と関わるために必要なソーシャルスキルのポイントをまとめたカードを提示した 話しかけるときのポイント 聞くときのポイント お願いするときのポイント 質問するときのポイント 話しはじめのポイント( 図 6) 説明するときのポイント 復習したい場面を選択して ロールプレイを行う ア 友達にノートを借りる場面 イ 職員室で先生にノートを提出する場面 ウ 教科書を忘れて困っている友達を見かけた場面 エ 掃除の順番を 友達に教えてあげる場面 オ 理科の実験で自分の役割がわからなくなってしまった場面 図 6 話しはじめ のポイントカード 以上から 一人一人が場面を選び 話しかける役と相手役に分かれ ロ-ルプレイを行った その 際 どのソーシャルスキルのポイントを活用すればよいのかも選ばせ ソーシャルスキルの理解を見 取った また ロールプレイの途中で 相手役の生徒に 話しかけられたときの気持ちをたずねるこ とで 相手の気持ちを考えることの大切さに気付かせるようにした ロールプレイの実践 S1 場面ごとに自分で言葉を考えて 積極的に話すことができた S2 ポイントカードを見て 気を付けながら話しかけることができた S3 場面ごとにポイントカードを見て 気を付けて話しかけることができた 自分が選んだ場面で は 自信を持って声をかける姿が見られた すべての生徒が それぞれの場面で必要なソーシャルスキルを選択することができた 本時についての学習の振り返りワークシートから抜粋 今日学習したことを生かしていきます これからもソーシャルスキルを生かしていこうと思います 手紙をもらってうれしかったです ソーシャルスキルは 将来の自分をよくするため 相手の立場を考えるときに役立つと思います これからもっとソーシャルスキルをうまく使えるようになりたいと思います 図 7 学習の振り返りワークシート 4 考察導入時に関わりのある教師からのコメントを渡したことは 生徒にとって 自分のことを見ていてくれて 自分も認められているという意識を強く持つことにつながった 身に付いたソーシャルスキルを発表する際にも 自信を持って発言している様子が見られ 自己肯定感が高まり 学習への意欲にもつながったと考える ポイントカードを場面に合わせて選び 活用しようとした生徒の姿から ソーシャルスキルの定着が図れてきていることが分かった しかし 実際の場面での活用は十分でないと考えられるため 今後も計画的 継続的に SSTを行う必要があると考える 授業の振り返りの生徒の記述からも ソーシャルスキルを生かしていこうとする意識の高まりを見ることができた 人と関わろうという意識を今後も持続させるために 自分のよさに気付き 自信を持てるような活動を工夫していく必要があると考える - 6 -