第1回 生体内のエネルギー産生

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第6回 糖新生とグリコーゲン分解

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解糖系でへ 解糖系でへ - リン酸 - リン酸 1,-2 リン酸 ジヒドロキシアセトンリン酸 - リン酸 - リン酸 1,-2 リン酸 ジヒドロキシアセトンリン酸 AT AT リン酸化で細胞外に AT 出られなくなる 異性化して炭素数 AT の分子に分解される AT 2 ホスホエノール AT 2 1

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細胞の構造

生理学 1章 生理学の基礎 1-1. 細胞の主要な構成成分はどれか 1 タンパク質 2 ビタミン 3 無機塩類 4 ATP 第5回 按マ指 (1279) 1-2. 細胞膜の構成成分はどれか 1 無機りん酸 2 リボ核酸 3 りん脂質 4 乳酸 第6回 鍼灸 (1734) E L 1-3. 細胞膜につ

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次の 1~50 に対して最も適切なものを 1 つ (1)~(5) から選べ 1. 細胞内で 酸素と水素の反応によって水を生じさせる反応はどこで行われるか (1) 核 (2) 細胞質基質 (3) ミトコンドリア (4) 小胞体 (5) ゴルジ体 2. 脂溶性ビタミンはどれか (1) ビタミン B 1

1. 電子伝達系では膜の内外の何の濃度差を利用してATPを合成するか?

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1 編 / 生物の特徴 1 章 / 生物の共通性 1 生物の共通性 教科書 p.8 ~ 11 1 生物の特徴 (p.8 ~ 9) 1 地球上のすべての生物には, 次のような共通の特徴がある 生物は,a( 生物は,b( 生物は,c( ) で囲まれた細胞からなっている ) を遺伝情報として用いている )

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細胞の構造

4 章エネルギーの流れと代謝

第4回 炭水化物の消化吸収と代謝(1)

相模女子大学 2017( 平成 29) 年度第 3 年次編入学試験 学力試験問題 ( 食品学分野 栄養学分野 ) 栄養科学部健康栄養学科 2016 年 7 月 2 日 ( 土 )11 時 30 分 ~13 時 00 分 注意事項 1. 監督の指示があるまで 問題用紙を開いてはいけません 2. 開始の

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第4回 炭水化物の消化吸収と代謝(1)

第 Ⅳ 部細胞の内部構造 14 エネルキ ー変換 -ミトコント リアと葉緑体 ( 後半 )p 葉緑体 chloroplast と光合成 photosynthesis 4. ミトコント リアと色素体の遺伝子系 5. 電子伝達系 electron-transport chain の進

2. 看護に必要な栄養と代謝について説明できる 栄養素としての糖質 脂質 蛋白質 核酸 ビタミンなどの性質と役割 およびこれらの栄養素に関連する生命活動について具体例を挙げて説明できる 生体内では常に物質が交代していることを説明できる 代謝とは エネルギーを生み出し 生体成分を作り出す反応であること

木村の理論化学小ネタ 熱化学方程式と反応熱の分類発熱反応と吸熱反応化学反応は, 反応の前後の物質のエネルギーが異なるため, エネルギーの出入りを伴い, それが, 熱 光 電気などのエネルギーの形で現れる とくに, 化学変化と熱エネルギーの関

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EC No. 解糖系 エタノール発酵系酵素 基質 反応様式 反応 ph 生成物 反応温度 温度安定性 Alcohol dehydrogenase YK エナントアルデヒド ( アルデヒド ) 酸化還元反応 (NADPH) 1ヘプタノール ( アルコール ) ~85 85 で 1 時

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2014 年度大学入試センター試験解説 化学 Ⅰ 第 1 問物質の構成 1 問 1 a 1 g に含まれる分子 ( 分子量 M) の数は, アボガドロ定数を N A /mol とすると M N A 個 と表すことができる よって, 分子量 M が最も小さい分子の分子数が最も多い 分 子量は, 1 H

シトリン欠損症説明簡単患者用

生物有機化学

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PRESS RELEASE 2015 年 9 月 24 日理化学研究所東京大学 電気で生きる微生物を初めて特定 微生物が持つ微小電力の利用戦略 要旨理化学研究所環境資源科学研究センター生体機能触媒研究チームの中村龍平チームリーダー 石居拓己研修生 ( 研究当時 ) 東京大学大学院工学系研究科の橋本和

ドリル No.6 Class No. Name 6.1 タンパク質と核酸を構成するおもな元素について述べ, 比較しなさい 6.2 糖質と脂質を構成するおもな元素について, 比較しなさい 6.3 リン (P) の生体内での役割について述べなさい 6.4 生物には, 表 1 に記した微量元素の他に, ど

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Taro-化学3 酸塩基 最新版

第 11 回化学概論 酸化と還元 P63 酸化還元反応 酸化数 酸化剤 還元剤 金属のイオン化傾向 酸化される = 酸素と化合する = 水素を奪われる = 電子を失う = 酸化数が増加する 還元される = 水素と化合する = 酸素を奪われる = 電子を得る = 酸化数が減少する 銅の酸化酸化銅の還元

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2011年度 化学1(物理学科)


木村の有機化学小ネタ セルロース系再生繊維 再生繊維セルロースなど天然高分子物質を化学的処理により溶解後, 細孔から押し出し ( 紡糸 という), 再凝固させて繊維としたもの セルロース系の再生繊維には, ビスコースレーヨン, 銅アンモニア

SO の場合 Leis の酸塩基説 ( 非プロトン性溶媒までも摘要可 一般化 ) B + B の化学反応の酸と塩基 SO + + SO SO + + SO 酸 塩基 酸 塩基 SO は酸にも塩基にもなっている 酸の強さ 酸が強い = 塩基へプロトンを供与する能力が大きい 強酸 ( 優れたプロトン供与

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44 4 I (1) ( ) (10 15 ) ( 17 ) ( 3 1 ) (2)

生活設計レジメ

I II III 28 29

官能基の酸化レベルと官能基相互変換 還元 酸化 炭化水素 アルコール アルデヒド, ケトン カルボン酸 炭酸 H R R' H H R' R OH H R' R OR'' H R' R Br H R' R NH 2 H R' R SR' R" O R R' RO OR R R' アセタール RS S

加工デンプン(栄養学的観点からの検討)

脂質の分解小腸 脂肪分解とカルニチン < 胆汁 > 脂肪の乳化 < 膵液 膵液リパーゼ ( ステアプシン )> 脂肪酸 グリセリン 小腸より吸収吸収された脂肪酸は エステル結合により中性脂肪として蓄積されます 脂肪酸は 体内で分解されエネルギーを産生したり 糖質や余剰のエネルギー産生物質から合成され

ヒトを構成する分子 細胞系 体重 65kg の男性の化学組成 6.6% (40 kg) 7.0% ( kg) 6.% (4 kg).8% (9 kg).5% ( kg) 水分酸素 水素タンパク質酸素 水素 炭素 窒素脂質酸素 水素 炭素糖質酸素 水素 炭素その他 リボソーム ( 粗面 ) 小胞体 タ

微生物燃料電池の原理とリンの析出近年 エネルギー問題への関心の高まりから 廃水からのエネルギー回収が注目されています また リン資源の枯渇への懸念から 廃水からのリン回収もまたその重要性を増しています しかしながら 現在までこれらを両立する手法は存在しませんでした 最近 我々は微生物燃料電池を用いて

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電子配置と価電子 P H 2He 第 4 回化学概論 3Li 4Be 5B 6C 7N 8O 9F 10Ne 周期表と元素イオン 11Na 12Mg 13Al 14Si 15P 16S 17Cl 18Ar 価電子数 陽

CHEMISTRY: ART, SCIENCE, FUN THEORETICAL EXAMINATION ANSWER SHEETS JULY 20, 2007 MOSCOW, RUSSIA Official version team of Japan.

第3回 糖類(炭水化物)

化学 1( 応用生物 生命健康科 現代教育学部 ) ( 解答番号 1 ~ 29 ) Ⅰ 化学結合に関する ⑴~⑶ の文章を読み, 下の問い ( 問 1~5) に答えよ ⑴ 塩化ナトリウム中では, ナトリウムイオン Na + と塩化物イオン Cl - が静電気的な引力で結び ついている このような陽イ

1-1 栄養素の代謝と必要量 : 糖質 炭水化物 1 糖質の消化吸収 デンプンは唾液中のα アミラーゼの作用により加水分解され かなりの部分が消化を受ける ヒト の唾液中に存在するデンプン消化酵素は α アミラーゼがほとんどである 胃では糖質の消化酵素は 分泌されないが 食道から胃内に流入した食塊が

2. PQQ を利用する酵素 AAS 脱水素酵素 クローニングした遺伝子からタンパク質の一次構造を推測したところ AAS 脱水素酵素の前半部分 (N 末端側 ) にはアミノ酸を捕捉するための構造があり 後半部分 (C 末端側 ) には PQQ 結合配列 が 7 つ連続して存在していました ( 図 3

2017 年度茨城キリスト教大学入学試験問題 生物基礎 (A 日程 ) ( 解答は解答用紙に記入すること ) Ⅰ ヒトの肝臓とその働きに関する記述である 以下の設問に答えなさい 肝臓は ( ア ) という構造単位が集まってできている器官である 肝臓に入る血管には, 酸素を 運ぶ肝動脈と栄養素を運ぶ

平成20年度 神戸大学 大学院理学研究科 化学専攻 入学試験問題

実験 解析方法実験は全て BL41XU で行った 初めに波長 0.5A 1.0A の条件化で適切な露光時間をそれぞれ決定した ( 表 1) 続いて同一の結晶を用いてそれぞれの波長を用いてデータを収集し そのデータの統計値を比較した ( 表 2) データの解析は HKL2000/Scalepack と

Hi-level 生物 II( 国公立二次私大対応 ) DNA 1.DNA の構造, 半保存的複製 1.DNA の構造, 半保存的複製 1.DNA の構造 ア.DNA の二重らせんモデル ( ワトソンとクリック,1953 年 ) 塩基 A: アデニン T: チミン G: グアニン C: シトシン U

平成 29 年度大学院博士前期課程入学試験問題 生物工学 I 基礎生物化学 生物化学工学から 1 科目選択ただし 内部受験生は生物化学工学を必ず選択すること 解答には 問題ごとに1 枚の解答用紙を使用しなさい 余った解答用紙にも受験番号を記載しなさい 試験終了時に回収します 受験番号

生化学平成 18 年度 (2006) 前期試験問題 2 年生本試験 + 再々試験 平成 18 年 7 月 26 日 ( 水 I 第一講義室 ) 解説 金 番号 X 氏名生化一郎点 問題 1 ( 初版 Essential 問題 7-19, 第 2 版 Essential 問題 7-1

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Chap. 1 NMR

補足 中学校では塩基性ではなくアルカリ性という表現を使って学習する アルカリはアラビア語 (al qily) で, アル (al) は定冠詞, カリ (qily) はオカヒジキ属の植物を焼いた灰の意味 植物の灰には Na,K,Ca などの金属元素が含まれており, それに水を加えて溶かすと, NaOH

指導計画 評価の具体例 単元の目標 単元 1 化学変化とイオン 化学変化についての観察, 実験を通して, 水溶液の電気伝導性や中和反応について理解するとともに, これらの事物 現象をイオンのモデルと関連づけて見る見方や考え方を養い, 物質や化学変化に対する興味 関心を高め, 身のまわりの物質や事象を

練習問題

品目 1 四アルキル鉛及びこれを含有する製剤 (1) 酸化隔離法多量の次亜塩素酸塩水溶液を加えて分解させたのち 消石灰 ソーダ灰等を加えて処理し 沈殿濾過し更にセメントを加えて固化し 溶出試験を行い 溶出量が判定基準以下であることを確認して埋立処分する (2) 燃焼隔離法アフターバーナー及びスクラバ

2019 年度大学入試センター試験解説 化学 第 1 問問 1 a 塩化カリウムは, カリウムイオン K + と塩化物イオン Cl - のイオン結合のみを含む物質であり, 共有結合を含まない ( 答 ) 1 1 b 黒鉛の結晶中では, 各炭素原子の 4 つの価電子のうち 3 つが隣り合う他の原子との

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呼吸鎖複合体酵素活性測定 酵素活性の測定には SPECTROstar Nano (BMG LABTECH) を用い 全ての測定は 100 μl の反応系で行う マルチウェルプレートは 96 well, half area UV-Star Microplate (Greiner Bio One) を用

< イオン 電離練習問題 > No. 1 次のイオンの名称を書きなさい (1) H + ( ) (2) Na + ( ) (3) K + ( ) (4) Mg 2+ ( ) (5) Cu 2+ ( ) (6) Zn 2+ ( ) (7) NH4 + ( ) (8) Cl - ( ) (9) OH -

第11回 肝、筋、脳、脂肪組織での代謝の統合

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2004 年度センター化学 ⅠB p1 第 1 問問 1 a 水素結合 X HLY X,Y= F,O,N ( ) この形をもつ分子は 5 NH 3 である 1 5 b 昇華性の物質 ドライアイス CO 2, ヨウ素 I 2, ナフタレン 2 3 c 総電子数 = ( 原子番号 ) d CH 4 :6

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第3類危険物の物質別詳細 練習問題

産総研プレス発表資料

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保健機能食品制度 特定保健用食品 には その摂取により当該保健の目的が期待できる旨の表示をすることができる 栄養機能食品 には 栄養成分の機能の表示をすることができる 食品 医薬品 健康食品 栄養機能食品 栄養成分の機能の表示ができる ( 例 ) カルシウムは骨や歯の形成に 特別用途食品 特定保健用

CERT化学2013前期_問題

高 1 化学冬期課題試験 1 月 11 日 ( 水 ) 実施 [1] 以下の問題に答えよ 1)200g 溶液中に溶質が20g 溶けている この溶液の質量 % はいくらか ( 整数 ) 2)200g 溶媒中に溶質が20g 溶けている この溶液の質量 % はいくらか ( 有効数字 2 桁 ) 3) 同じ

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核内受容体遺伝子の分子生物学

<連載講座>アルマイト従事者のためのやさしい化学(XVII)--まとめと問題 (1)

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品目 1 エチルパラニトロフェニルチオノベンゼンホスホネイト ( 別名 EPN) 及びこれを含有する製剤エチルパラニトロフェニルチオノベンゼンホスホネイト (EPN) (1) 燃焼法 ( ア ) 木粉 ( おが屑 ) 等に吸収させてアフターバーナー及びスクラバーを具備した焼却炉で焼却する ( イ )

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前ページの反応から ビタミン C はヨウ素によって酸化され ヨウ素はビタミン C によって還元された と説明できます あるいはビタミン C は還元剤として働き ヨウ素は酸化剤として働いた ともいう事ができます 定量法 ある物質の量や濃度を知りたいとき いくつかの定量法を使って調べることができます こ

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物理学 II( 熱力学 ) 期末試験問題 (2) 問 (2) : 以下のカルノーサイクルの p V 線図に関して以下の問題に答えなさい. (a) "! (a) p V 線図の各過程 ( ) の名称とそのと (& きの仕事 W の面積を図示せよ. # " %&! (' $! #! " $ %'!!!

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第 1 回生体内のエネルギー産生 日紫喜光良 基礎生化学 2018.4.10 1

暮らしの中の生化学と関連した事象 発酵 発酵食品の製造 酒造 代謝 エネルギー 栄養 栄養素 代謝異常 糖尿病 肥満 2

健康についての疑問は生化学に関連 コラーゲンをたくさんとると肌がぷりぷりになる? ご飯さえ食べなければ太らない ( 糖質ダイエット?) か? 3

教科書 リッピンコットシリーズイラストレイテッド生化学 ( 原書第 6 版 ) (2015?) 丸善 シンプル生化学 ( 改訂第 6 版 )

図表のソース Champe PC, Harvey RA, Ferrier DR. Lippincott's Illustrated Reviews Biochemistry 4th Edition (2008), Lippincott Williams & Wilkins/Wolters Kluwer Health, USA 5

注意事項 関連のある章の要約と概念図をよく読み あいまいな概念がないように本文を何回も読むこと ( 図表ソースの ) 章末の学習問題を解いてみること 6

今日のテーマ 生体内のエネルギー産生 ( 主にイラストレイテッド生化学第 6 章 ) シンプル生化学第 15 章 1 生体内のエネルギー産生の概略 2 電子運搬物質 NADH のはたらき 3 ミトコンドリアの構造と膜輸送システム 7

エネルギー産生 エネルギーの物理学的定義 : 仕事をする能力 熱 電気 光 化学 力学的 ( 運動 位置 ) etc 炭素と水素 ( と酸素 ) を含む化合物 + 酸素 二酸化炭素と水 ( とエネルギー ) 火力発電 : 燃焼 ( 急激な酸化 ) によって高温を発生させる 高温高圧のガスそのもので あるいは高温によって高温高圧の水蒸気を作りタービンを回して電気を作る 生体 : 食物として摂取した化合物の有する化学エネルギーを 化学反応によって いろいろな化学反応と 共役 できる化学物質 (ATP など ) の高エネルギー化学結合に移して 必要な時に取り出せるようにする むしろ マネー アイテムに換える という感じ 8

化学反応とは 原子間の結合のしかたの変化 H H H H 水素 O O H O H H O H 酸素水 結合を切ったり生成したりするために エネルギーが必要 電子がやりとりされる 9

化学反応で原子間の結合が変化する時は 原子と原子との間をとりもっている電子が移動する 電子がある原子間の結合から別の原子間の結合へ移動 電子の移動に伴いエネルギーの吸収または放出がおきる 原子間の結合のエネルギーは 結合する原子や結合の種類によって違う 10

酸化と還元 酸化 : 電子を奪われる 還元 : 電子を受け取る 電子はマネー 還元セール 細胞内での保存が面倒くさいマネーではある どうやって食べたものがマネーになるのか??

生体内のエネルギー産生の概要 3 大栄養素 : 炭水化物 脂質 タンパク質 脂質や 窒素を含む化合物 炭素と酸素と水素から成る化合物に分解 炭素と酸素と水素から成る化合物 二酸化炭素を放出 電子運搬物質に余分な電子を持った水素原子 ( ヒドリドイオン ) を与える ここまでが 代謝 (metabolism) 電子運搬物質が酸素と反応して水を生成 その際に生じる水素イオンの濃度差による水素イオンの流れを利用して 高エネルギーリン酸結合を有する化合物 (ATP など )= 高エネルギー物質を生成 酸化的リン酸化 (oxidative phosphorylation) 代謝 : 炭素などの余分な原子を捨てる反応 12

代謝 酸化的リン酸化 炭水化物 脂肪酸 アミノ酸 酸化 電子運搬物質 還元 電子の授受 ADP+Pi CO 2 H 2 O H + の流れ 還元された電子運搬物質 +H + 酸素 還元された電子運搬物質 酸化 イラストレーテッド生化学図 6.6 ATP H 2 O 電子運搬物質 13

真核生物では酸化的リン酸化はミトコンドリアの内部 ( マトリクス ) でおこなわれる 内膜は多くの小イオン 小分子 大分子に対して非透過的 イラストレーテッド生化学図 6.7 マトリクス TCA 回路の酵素 電子伝達系 ATP シンターゼ イラストレーテッド生化学より 脂肪酸酸化のための酵素 ミトコンドリア DNA, ミトコンドリア RNA ミトコンドリアリボソーム 14

プロトン (H + ) ポンプと ATP 合成 内膜 外膜 ミトコンドリアのマトリクス 膜間空間 ミトコンドリアの内膜と外膜の間 プロトンポンプ H+ の濃度差のエネルギーで ATP を合成 15

電子とプロトンの移動 電子伝達系と酸化的リン酸化 http://hobab.fc2web.com/sub2-respiratory-chain.htm

図 6.8 電子伝達系と電子運搬物質 ミトコンドリアのマトリクス NADH, FADH2 ミトコンドリア 電子の流れ 酸素 NAD+, FAD チトクロームオキシダーゼ 水 ミトコンドリアの内膜 複合体 I~IV: (1) 水素と酸素を反応させる (2)H + の濃度差を作る 複合体 V: ATP を合成 図はイラストレーテッド生化学より 17

電子伝達系の複合体 NADH-ユビキノン酸化還元酵素 ( 複合体 -I) コハク酸 -ユビキノン酸化還元酵素( 複合体 -II) ユビキノン-シトクロムc 酸化還元酵素 ( 複合体 -III) シトクロムc 酸化酵素 ( 複合体 -IV) ATP 合成酵素 ( 複合体 -V) I III IV: プロトンポンプをもつ IV: 酸素と水素が反応して水をつくる

生体内で電子は何に乗って移動するか δ - δ + O C 電子をよりひきつける原子 電子の相対的に少ないところ Nu ( 電子を供与するもの ) (R=O) 例 : カルボニル基への求核付加反応 アルコール ( 水酸基をもつ炭水化物 ) を生成, etc ただし Nu = H - O - C Nu 電子運搬物質に結合 RO - : アルコキシドイオンを生成 アルコール R-OH H - : ヒドリドイオン 水素原子が電子を 1 個余分に引きつけたもの 相手に2 個の電子を与えて水素イオン ( 水素の原子核 = プロトン, H + ) になる 19

生体内のヒドリドイオン供与体 NADH ( 還元型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド ) NADPH ( 還元型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸 ) 実験室では NaBH 4 を用いる 水溶液は強い塩基性を示し 酸性にすると分解して水素を発生する 20

電子運搬物質 (1) NAD + NADH NAD + 電子供与時の反応の向き 物質から電子をはぎとる NADH の酸化 ヒドリドイオン ( プロトン + 電子 2 個 ) NADH ( プロトン : 水素原子のこと ) 電子を奪うときの反応の向き NAD + の還元 イラストレーテッド生化学図 28.14 別の物質に電子を与えるとともに 水素イオンを放出し NAD + にもどる 21

真核生物では酸化的リン酸化はミトコンドリアの内部 ( マトリクス ) でおこなわれる 内膜は多くの小イオン 小分子 大分子に対して非透過的 イラストレーテッド生化学図 6.7 マトリクス TCA 回路の酵素 電子伝達系 ATP シンターゼ イラストレーテッド生化学より 脂肪酸酸化のための酵素 ミトコンドリア DNA, ミトコンドリア RNA ミトコンドリアリボソーム 22

ミトコンドリアの膜はさまざまな物質に 対して非透過的 細胞質 外膜 アセチル CoA など NADH など 内膜 代謝 ( 解糖系 ) 急にエネルギーが必要なときに無酸素的に炭水化物を分解 ミトコンドリア 特別なチャンネルによって物質を取り込む ( 例 : ピルビン酸 ) 23

ミトコンドリア 細胞質間の輸送システム (1) 細胞質 NADH + H+ NAD+ デヒドロキシアセトンリン酸 グリセロール 3- リン酸 デヒドロキシアセトンリン酸 FADH2 FAD グリセロール 3- リン酸 電子伝達系へ ミトコンドリア内膜 24

ミトコンドリア 細胞質間の輸送システム (2) 細胞質 NADH + H+ オキサロ酢酸 グルタミン酸 NAD+ リンゴ酸 アスパラギン酸 α- ケトグルタル酸 アスパラギン酸 α- ケトグルタル酸 NAD+ NADH + H+ リンゴ酸 オキサロ酢酸 グルタミン酸 電子伝達系 ミトコンドリアのマトリクス 25

( 補 ) 微生物燃料電池 酸化または還元状態をもち, かつ細胞膜透過性を有する電子伝達剤 ( メディエータ ) を添加 電子収奪 負極槽 正極槽の間のプロトン交換膜 微生物の選択 電極の高活性化 広島大学柿園俊英研究室 http://home.hiroshima-u.ac.jp/tkakizo/ 26