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おお航海士 Aは 22 時 00 分ごろ福岡県宗像市大島東方沖で船長から 船橋当直を引き継ぎ レーダー 1 台を 6 海里 (M) レンジとして 電 子海図表示装置及び GPS プロッターを 12M レンジとしてそれぞれ 作動させ 操舵スタンド後方に立って単独で操船に当たった 本船は 航海士 A が

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スライド タイトルなし

本船は 船長が1 人で船橋当直につき 主機を回転数毎分約 1,2 00( 出力約 20%) とし 約 5ノットの対地速力で 早岐港南東方沖を手動操舵により南南東進中 11 時 07 分ごろ主機が突然停止した 機関長は 温度計測の目的で機関室出入口の垂直はしごを降りていたところ ふだんと違う同室の音を

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その他の事項 約 200 であり 船首の作業灯がついていて 船長が投錨する旨を指 示したので 機関室に移動して発電機を起動し いつでも主機を中立 運転にできるように準備した後 自室に戻った 航海士 A は 20 時 00 分ごろ本船が減速していることに気付いて 昇橋したところ 船長から船位が分からな

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リハビリテーションマネジメント加算 計画の進捗状況を定期的に評価し 必要に応じ見直しを実施 ( 初回評価は約 2 週間以内 その後は約 3 月毎に実施 ) 介護支援専門員を通じ その他サービス事業者に 利用者の日常生活の留意点や介護の工夫等の情報を伝達 利用者の興味 関心 身体の状況 家屋の状況 家

このように見張りは重要な任務であることから運輸省告示 ( 平成 8 年 12 月 24 日第 704 号 ) 1 のなかで 見張りは 船舶の状況及び衝突 乗揚げその他の航海上の危険のおそれを十分に判断するために適切なものであること として 見張り員の能力を含め適切に配置するよう規定している 2 それ

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( 東京事案 ) 1 旅客船龍宮城乗組員死亡 2 プレジャーボートかいきょう丸プレジャーボートこくら丸衝突 3 遊漁船しぶさき10 号沈没 4 遊漁船はなぶさ釣り客負傷 5 モーターボートKaiser 衝突 ( 係船杭 ) 6 漁船若栄丸小型兼用船福寿丸衝突 7 遊漁船一福丸モーターボート可奈丸衝突

1 趣旨このガイドラインは 日本国内の公道 ( 道路交通法 ( 昭和 35 年法律第 105 号 ) 第 2 条第 1 項第 1 号に規定する 道路 をいう 以下同じ ) において 自動走行システム ( 加速 操舵 制動のうち複数の操作を一度に行い 又はその全てを行うシステムをいう 以下同じ ) を

エ事務部門 (9) 利用者 教職員 学生等及び臨時利用者で 本学情報システムを利用する者をいう (10) 教職員 本学に勤務する常勤又は非常勤の教職員 ( 派遣職員を含む ) をいう (11) 学生等 本学学則に定める学部学生 大学院学生 大学院研究生 科目等履修生及び聴講生 等をいう (12) 臨

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海上安全管理 (Marine Safety Management) 海上安全 + 安全管理 海上安全 船 - 操船者 - 環境 の相互連環システムに視点をおいた安全施策 安全管理 安全性を高めるために関係者のモチベーション醸成とコンセンサス形成を図ること 井上欣三著 海上安全管理 研究 (2006

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さらに真値よりも遠い方に認識される特性があること などが報告されている (4) しかし 一般的に距離感とは 経験に基づく記憶や 学習に基づいて認知されて得られる認知距離と 単に大きさや物体の形状から得られる知覚距離の両方を総称したものと言え (5)(6) 船上での航海経験の多少や個人の特性によっても

イ -3 ( 法令等へ抵触するおそれが高い分野の法令遵守 ) サービスの態様に応じて 抵触のおそれが高い法令 ( 業法 税法 著作権法等 ) を特に明示して遵守させること イ -4 ( 公序良俗違反行為の禁止 ) 公序良俗に反する行為を禁止すること イ利用規約等 利用規約 / 契約書 イ -5 (

東京湾海上交通センター 利用の手引き

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海の安全情報 1 海の安全情報 インターネットホームページ 仙崎海上保安部のホームページの中に 海の安全情報がリンクされ 気象 海象のほか 港の工事 海難などの海上交通に関 する様々な安全情報を提供しています

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1 航空重大インシデントの概要 (1.1) ANAウイングス株式会社所属ボンバルディア式 DHC 型 JA461Aは 平成 29 年 1 月 19 日 ( 木 ) 運送の共同引受をしていた全日本空輸株式会社の定期 1831 便として秋田空港を離陸し 新千歳空港滑走路 01Rに着陸した際

次の内容により各組合の保険約款に規定 普通損害保険 1 通常部分危険区分 ( 漁業種類 トン数区分 船質及び塡補範囲等 ) 毎に再保険料率 ( 告示 ) を下回らない範囲で基準率が定められ これに再保険と同率の各種割増引きが適用 2 異常部分 ( 危険部分であり 台風 風浪 低気圧及び突風による危険

初任運転者に対する指導内容 ( 座学 ) 菰野東部交通株式会社 指導教育の内容 事業用自動車の安全な運転に関する基本的事項 道路運送法その他の法令に基づき運転者が遵守すべき事項及び交通ルール等を理解させるとともに 事業用自動車を安全に運転するための基本的な心構えをしゅうとくさせる ( 事業用自動車に

船の規則と IMO 船舶 国際市場において建造 取引 管理 運用 構造, 安全管理, 海洋環境保護の取り決め 国際的な場で議論 関係国の利益がぶつかり合い 政治的技術的調整で規則が決まる 国際海事機関 IMO (International Maritime Organization) 本部 : イギ


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Japan Transport Safety Board 1 コンテナ船 ACX CRYSTAL ミサイル駆逐艦 USS FITZGERALD 衝突事故 運輸安全委員会令和元年 8 月

船舶事故の概要 報告書 1 ページ コンテナ船 ACX CRYSTAL は 船長 二等航海士及び甲板手ほか 17 人が乗り組み 京浜港東京区に向けて静岡県南伊豆町石廊埼南東方沖を北東進中 ミサイル駆逐艦 USS FITZGERALD は 艦長 当直士官 3 人及び甲板手ほか 288 人が乗り組み 石廊埼南東方沖を南進中 平成 29 年 6 月 17 日 01 時 30 分 34 秒ごろ 両船が衝突した USS FITZGERALD は 乗組員 7 人が死亡 3 人が負傷し 右舷艦体中央前部外板の破口等を生じて浸水し ACX CRYSTAL は左舷船首部ブルワークの曲損等を生じた 静岡県伊豆半島 石廊埼灯台 神子元島灯台 本事故発生場所 2

3 船舶の主要目 ACX CRYSTAL (A 船 ) 船籍港 船舶所有者 運航者 船舶管理会社 総トン数 L B D 機関 出力 推進器 進水年月日 フィリピン共和国マニラ SINBANALI SHIPPING INC. NYK CONTAINER LINE 株式会社 (A 1 社 ) SEA QUEST SHIP MANAGEMENT INC. (A 2 社 ) 29,060 トン 222.60m 30.10m 16.80m ディーゼル機関 1 基 28,880kW 固定ピッチプロペラ 1 個 2008 年 6 月 20 日 USS FITZGERALD (B 船 ) 船舶所有者 運航者 総トン数 L B D 機関 出力 推進器 進水年月日 報告書 19~20 ページ アメリカ合衆国海軍 アメリカ合衆国海軍 8,261 トン 153.90m 20.10m 9.40m ガスタービン機関 4 基 73,500kW 可変ピッチプロペラ 2 個 1994 年 1 月 29 日

乗組員に関する情報 報告書 18 ページ A 船 船長 A 1995 年に船員となり 2009 年から船長職を執るようになった 2017 年 4 月 23 日から A 船に乗船していた 本事故発生場所付近の航行経験は 50 回以上あった 航海士 A 甲板手 A B 船 艦長 B 2015 年 11 月に B 船に副長として乗艦し アメリカ合衆国にて数か月の訓練を受け 2017 年 5 月 13 日艦長に就任した 当直士官 B 1 2013 年 8 月士官訓練センターを経てアメリカ合衆国海軍に入り B 船は 2 隻目の船舶であった B 船には 2016 年 5 月に乗艦し 2017 年 1 月航海士官に就任した 当直士官 B 2 1987 年に船員となり 2017 年 4 月 23 日から A 船に乗船していた 本事故発生場所付近の航行経験は 50 回以上あった 2001 年に船員となり 2016 年 11 月 27 日から A 船に乗り組んでいた 2012 年にアメリカ合衆国海軍に入り B 船は 5 年間で 3 隻目の船舶であった 当直士官 B 3 2016 年 10 月にアメリカ合衆国海軍に入り 海軍士官候補生学校を 2017 年 1 月に卒業し B 船に乗艦した 2017 年 3 月から 5 月の間 基本航海士コースに入った 4

5 推定航行経路図 報告書 39 ページ 静岡県伊豆半島 B 船 C 船 石廊埼灯台 神子元島灯台 D 船 A 船 E 船

事故の経過 報告書 8~10 ページ A 船 1 2 3 4 5 6 7 01 時 17 分ごろ 針路を 088 から 069 に変更した 01 時 25 分ごろ B 船をレーダー及び目視により確認し 右舷灯が見え南進していたので 自船が保持船であり B 船が自船を避けると思った 01 時 27 分ごろ B 船の避ける動作が確認されなかったので 昼間信号灯を B 船に向けて照射した 01 時 29 分 13 秒ごろ 右舵 15 とした 01 時 29 分 25 秒ごろ及び 48 秒ごろ B 船に向けて昼間信号灯を照射した 01 時 30 分 18 秒ごろ 右舵一杯とした 01 時 30 分 34 秒ごろ B 船と衝突した B 船 2 3 A 船 4 5 6 7 6

事故の経過 報告書 11~13 ページ B 船 1 2 3 4 5 6 01 時 05 分ごろ D 船の船首方約 1,500 ヤード ( 約 0.7M) を通過する見込みであったが A 船はレーダー映像が頻繁に途切れる状態で CPA( 最接近位置 ) 情報が入手できなかった 当直士官 B 2 は 01 時 20 分ごろ A 船の存在を目視により確認して衝突のおそれを認識し 当直士官 B 1 に報告し 減速するよう進言した 当直士官 B 1 は 艦長 B へ報告する準備中であり 当直士官 B 2 の進言を検討したが 周辺船舶へ混乱を招くことを懸念し 約 20kn の速力を維持した 01 時 25~27 分ごろ B 船の周囲 2~3M の範囲でレーダー画面にクラッターが生じ クラッター範囲内の船舶等の確認が困難となっていた 01 時 27 分ごろ A 船及び D 船の間を航行する目的で針路を 240 にする変針の指示を出したものの すぐに撤回して左転及び 25kn の速力に増速する指示を出したが いずれも実行されなかった 01 時 29 分ごろ 左舵一杯の指示を出した 01 時 30 分ごろ A 船と衝突した 6 5 4 3 B 船 2 A 船 7

8 損傷状況 (A 船 ) 報告書 16 ページ

9 損傷状況 (B 船 ) 報告書 17~18 ページ 右舷艦体中央前部付近

10 分析 報告書 32~35 ページ (1) A 船 航海士 A 及び甲板手 A は 自船が針路及び速力を保つ船舶であり B 船が A 船を避けると思ったものと考えられる 航海士 A は B 船に対して昼間信号灯による照射を実施し それに対する B 船からの反応はなかったものの 昼間信号灯の照射を繰り返していれば B 船が気付いて A 船を避けると思ったことから 針路及び速力を維持して航行したものと考えられる なお 1972 年の海上における衝突の予防のための国際規則に関する条約 (COLREG 条約 ) に基づく警告信号は汽笛による短音 5 回以上であり 同信号灯の照射は警告信号ではなかったものと認められる 航海士 A は 衝突を避けるための協力動作をとり始めるのが遅かったものと考えられる 航海士 A は A 船の当直命令簿に基づき 他船との DCPA( 最接近距離 ) が 1M 又は TCPA ( 最接近時間 ) が 6 分より近づいたときには注意を払い 船長への報告が定められていたが B 船が A 船を避けると思い 報告していなかった

分析 報告書 32~35 ページ (2) B 船 当直士官 B 1 は A 船のレーダー映像が頻繁に途切れる状態で A 船の CPA 情報を入手できなかったものと考えられる 当直士官 B 1 は B 船の右舷船首方に D 船が接近していたこと及び A 船のレーダー情報が確実に入手されなかったことから A 船の見張りを適切に行っていなかった可能性が考えられる 当直士官 B 1 は 当直士官 B 2 より A 船と衝突のおそれがあり 減速するよう進言を受けたが 周辺船舶へ混乱を招くことを懸念し A 船の北方を並走していた D 船に注意して A 船の見張りを適切に行っておらず 針路及び速力を維持して航行したものと考えられる 当直士官 B 1 は B 船の周囲 2~3M の範囲でレーダー画面にクラッターが生じ A 船の動向を把握していなかったものと考えられる 当直士官 B 1 は 01 時 27 分ごろ 240 に変針の指示を出したが すぐに撤回し 左転及び 25kn の速力の増速の指示を出したものと考えられるが 変針を撤回した理由並びに左転及び増速が実行されなかった理由は明らかにすることはできなかった 当直士官 B 1 当直士官 B 2 及び当直士官 B 3 は 見張りを適切に行っておらず A 船から B 船に照射された昼間信号灯に気付かなかったものと考えられる 当直士官 B 1 は B 船の当直命令簿に基づき 他船との DCPA が 3M 未満となった際 艦長への報告が定められており 00 時 30 分ごろには報告したが 特段の指示を受けず 00 時 58 分ごろには報告していなかったものと考えられる 11

12 原因 報告書 36 ページ 本事故は 夜間 石廊埼南東方沖において A 船が北東進中 B 船が南進中 B 船が A 船の北方を並走していた D 船に注意して A 船の見張りを適切に行っておらず 針路及び速力を維持して航行し また A 船が 針路及び速力を維持して航行したため 両船が衝突したものと考えられる B 船が A 船の北方を並走していた D 船に注意して A 船の見張りを適切に行っていなかったのは B 船の右舷船首方に D 船が接近していたこと及び A 船のレーダー情報が確実に入手されなかったことによる可能性が考えられる A 船が針路及び速力を維持して航行したのは 自船が針路及び速力を保つ船舶であり B 船に対する昼間信号灯の照射を行ったことから B 船が気付いて A 船を避けると思ったことによるものと考えられる

その他判明した安全に関する事項 報告書 36 ページ (1) レーダーの適切な調整による見張りの徹底 B 船は B 船の周囲 2~3M の範囲でレーダー画面にクラッターが生じて A 船の動向を把握できなかったが レーダーの調整を適切に行ってクラッターを取り除く必要があったものと考えられる (2) 警告信号の実施 A 舶は 他の船舶の意図若しくは動作を理解することができないとき 又は他の船舶が衝突を避けるために十分な動作をとっているかどうか疑いがあるときは 警告信号を行う必要があったものと考えられる (3) 当直命令簿の規定の適切な実施 A 船は 当直命令簿に基づく他船の接近情報に関する船長への報告がなされず また B 船は 当直命令簿に基づく適切な措置がなされなかったが 両船とも当直命令簿に従って適切な措置を行う必要があったものと考えられる 13

再発防止策 報告書 36~37 ページ 当直中の乗組員は 周囲の状況及び他の船舶との衝突のおそれについて十分判断することができるようレーダー (ARPA を含む ) その他の航海計器を適切に調整した上 常時適切な見張りを行うこと 他の船舶の意図若しくは動作を理解することができないとき 又は他の船舶が衝突を避けるために十分な動作をとっているかどうか疑いがあるときは 警告信号を行うこと 自船が針路及び速力を保つ船舶の場合でも 相手方船舶の動作のみでは衝突を避けることができないと認める場合には 衝突を避けるための協力動作をとること 乗組員は 当直命令簿の規定を遵守すること 14

15 事故後に講じられた事故等防止策 報告書 37 ページ A 1 社及び A 2 社により講じられた措置 A 船の乗組員に対し 当直体制や航海計器の使用方法を再度周知するべく訪船指導を実施 ISM コードに基づいた船橋航海当直手順 (BTM) の見直しを提案 衝突事故回避を目的とした航海士 A に対する再教育 当直交代時の引継ぎの見直し ( 内容にはレーダー上におけるターゲットや交通状況の確認を包含 ) 船長による航海当直能力に対する評価の採用

16 事故後に講じられた事故等防止策 報告書 38 ページ アメリカ合衆国海軍により講じられた措置 日本配備艦船に対し 整備 訓練及び乗組員の資格認定に十分な時間を確保するための運用計画の修正 全ての日本への前方展開艦船に対する即応態勢評価 輻輳海域を頻繁に運航する日本配備艦船に対し 有資格の士官及び下士官を適切に乗り組ませるための人員配置方針の策定 海上経験の時間及び海技向上訓練の時間を十分に確保するための水上艦士官のキャリアパス再構築 水上艦士官の全経歴を通じてシーマンシップ及び操艦技能を評価するプログラムの標準化 水上艦士官候補者 水上艦士官 操舵手及びその他運航に関係する者に対し シーマンシップ並びに個人の技能に係る要件及び訓練の改善 ニアミスの報告並びにその評価及び教訓習得を行う方策の実施 艦橋システムの最新化に関する責任及び権限の整理統合 脅威警戒態勢での運航を除き 米海軍艦船に対し 輻輳海域における AIS 情報の発信指示 概日リズム ( サーカディアンリズム ( 体内時計 )) を考慮した当直計画の実施 米海軍艦船における操舵及び推進制御システムの使用方式の変更