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2 片脚での体重支持 ( 立脚中期, 立脚終期 ) 60 3 下肢の振り出し ( 前遊脚期, 遊脚初期, 遊脚中期, 遊脚終期 ) 64 第 3 章ケーススタディ ❶ 変形性股関節症ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

M波H波解説

要旨 [ 目的 ] 歩行中の足部の機能は 正常歩行において重要な役割を担っている プラスチック短下肢装具 (AFO) 装着により足関節の運動が制限されてしまう 本研究は AFO 装着により歩行立脚期における下肢関節運動への衝撃吸収作用や前方への推進作用に対しどのような影響を及ぼすかを検討した [ 対

運動療法と電気療法の併用 ~シングルケース~

膝関節運動制限による下肢の関節運動と筋活動への影響

背屈遊動 / 部分遊動 装具の良好な適合性 底屈制動 重心移動を容易にするには継手を用いる ただし痙性による可動域に抵抗が無い場合 装具の適合性は筋緊張の抑制に効果がある 出来るだけ正常歩行に近付けるため 痙性が軽度な場合に用いる 重度の痙性では内反を矯正しきれないので不安定感 ( 外 ) や足部外

今日勉強すること 1. 反射弓と伸張反射 2. 屈曲反射 3. 膝蓋腱反射の調節機構 4. 大脳皮質運動野の機能

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吉備国際大学研究紀要 ( 保健科学部 ) 第 20 号,13~18,2010 閉運動連鎖最大下出力時における下肢筋収縮様式の解析 * 河村顕治加納良男 ** 酒井孝文 ** 山下智徳 ** 松尾高行 ** 梅居洋史 *** 井上茂樹 Analysis of muscle recruitment pa

行為システムとしての 歩行を治療する 認知神経リハビリテーションの観点

を0%,2 枚目の初期接地 (IC2) を 100% として歩行周期を算出した. 初期接地 (IC1) は垂直 9) 分力 (Fz) が 20Nを超えた時点, 荷重応答期 (LR) は Fz の第 1ピーク時, および遊脚後期 (Tsw) は IC1 から 10% 前の時点とした 10). 本研究の

332 理学療法科学第 22 巻 3 号 I. はじめに脳卒中後遺症者などの中枢神経系障害を持つ患者が示す臨床像は, 環境への適応行動が阻害され, その基盤となる姿勢制御の障害は著しい 理学療法士がその構成要素 (Components) を明確にし, 再構築のために運動療法を行っていくことは必須であ

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足部について

選考会実施種目 強化指定標準記録 ( 女子 / 肢体不自由 視覚障がい ) 選考会実施種目 ( 選考会参加標準記録あり ) トラック 100m 200m 400m 800m 1500m T T T T33/34 24

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リハビリテーション歩行訓練 片麻痺で歩行困難となった場合 麻痺側の足にしっかりと体重をかけて 適切な刺激を外から与えることで麻痺の回復を促進させていく必要があります 麻痺が重度の場合は体重をかけようとしても膝折れしてしまうため そのままでは適切な荷重訓練ができませんが 膝と足首を固定する長下肢装具を

【股関節の機能解剖】

理学療法科学 22(1):33 38,2007 特集 脳卒中における機能障害と評価 Impairments and their Assessment in Stroke Patients 望月久 1) HISASHI MOCHIZUKI 1) 1) Department of Rehabilitat

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歩行およびランニングからのストップ動作に関する バイオメカニクス的研究


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中枢神経系の可塑性 中枢神経系障害を持つ患者の不適切な介入は不適切な可塑性適応を起こす 運動コントロールの改善には治療中に行われる運動ができるだけ正常と同じ様に遂行される事や皮膚 関節 筋からの求心的情報を必要とする 中枢神経系が環境と相互作用する為には運動やバランス アライメント トーンの絶え間な

学会名 : 第 71 回体力医学会大会学会日付 : 平成 28 年 9 月演題名 : 高校生サッカー選手におけるボール速度と蹴り足の運動速度との関連 学会名 : 第 75 回日本癌学会学術総会学会日付 : 平成 28 年 10 月 6-8 日演題名 :Effect of sugar intake o

ランニング ( 床反力 ) m / 分足足部にかかる負担部にかかる負担膝にかかる負担 運動不足解消に 久しぶりにランニングしたら膝が痛くなった そんな人にも脚全体の負担が軽い自転車で 筋力が向上するのかを調査してみました ロコモティブシンドローム という言葉をご存知ですか? 筋肉の衰えや

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村上 ほか:片 麻痺 に対す る短下肢装具 の適応基準 2-2 反張膝 反張 膝 は立 脚 中期 か ら後期 にみ られ,下 肢 の支 持 性 の コ ン トロー ル が不 十 分 な場 合 に,膝 関節 を 最 大 伸 展 し軟 部 組 織 に よ る支 持 性 を求 め る結 果 と して起 こ

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方向の3 成分を全て合成したもので 対象の体重で除して標準化 (% 体重 ) した 表 1を見ると 体格指数 BMI では変形無しと初期では差はなく 中高等度で高かった しかし 体脂肪率では変形の度合が増加するにつれて高くなっていた この結果から身長と体重だけで評価できる体格指数 BMI では膝 O

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Ø Ø Ø

氏名 ( 本籍 ) 中 川 達雄 ( 大阪府 ) 学位の種類 博士 ( 人間科学 ) 学位記番号 博甲第 54 号 学位授与年月日 平成 30 年 3 月 21 日 学位授与の要件 学位規則第 4 条第 1 項該当 学位論文題目 股関節マイクロ牽引が腰下肢部柔軟性に及ぼす影響 - 身体機能および腰痛

のモチベーションを上げ またボールを使用することによって 指導者の理解も得られやすいのではないかと考えています 実施中は必ず 2 人 1 組になって パートナーがジャンプ着地のアライメントをチェックし 不良な場合は 膝が内側に入っているよ! と指摘し うまくいっている場合は よくできているよ! とフ

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要旨一般的に脚長差が3cm 以下であれば 著明な跛行は呈しにくいと考えられているが客観的な根拠を示すような報告は非常に少ない 本研究の目的は 脚長差が体幹加速度の変動性に与える影響を 加速度センサーを用いて定量化することである 対象者は 健常若年成人男性 12 名とした 腰部に加速度センサーを装着し

復習問題

国際エクササイズサイエンス学会誌 1:20 25,2018 症例研究 足趾踵荷重位での立位姿勢保持運動が足部形態に 与える影響 扁平足症例に対しての予備的研究 嶋田裕司 1)4), 昇寛 2)3), 佐野徳雄 2), 小俣彩香 1), 丸山仁司 4) 要旨 :[ 目的 ] 足趾踵荷重位での立位姿勢保

運動制御のレベルと脳の構造 監視判断予測随意的選択 大脳連合野 評価 辺縁系 脳と運動丹治 更衣動作 小脳 汎用性運動ジェネレータ 大脳運動野 大脳基底核 アクションジェネレータ 中脳 橋 1 ヵ月後 感覚入力 パターンジェネレータ 運動出力 初期時 脊髄 脳幹 着衣の問題更衣動作 : 正常運動のコ

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研究成果報告書

2012 年度リハビリテーション科勉強会 4/5 ACL 術後 症例検討 高田 5/10 肩関節前方脱臼 症例検討 梅本 5/17 右鼠径部痛症候群 右足関節不安定症 左変形性膝関節症 症例検討 北田 月田 新井 6/7 第 47 回日本理学療法学術大会 運動器シンポジウム投球動作からみ肩関節機能

位 1/3 左脛骨遠位 1/3 左右外果 左右第二中足骨頭 左右踵骨の計 33 箇所だった. マーカー座標は,200Hz で収集した. (2) 筋電計筋活動の計測のために, 表面筋電計 ( マルチテレメータ. 日本光電社製 ) を用いた. 計測はすべて支持脚側とし, 脊柱起立筋 大殿筋 中殿筋 大腿

体幹トレーニング

Ⅰ はじめに 臨床実習において 座位での膝関節伸展筋力の測定および筋力増強訓練を行っ た際に 体幹を後方に傾ける現象を体験した Helen ら1 によると 膝関節伸展 の徒手筋力測定法は 座位で患者の両手は身体の両脇に検査台の上に置き安定を はかるか あるいは台の縁をつかませる また 膝関節屈筋群の

スライド タイトルなし

2011/9/9 Bobath Concept 脳卒中片麻痺患者の評価と治療 研修会 評価 治療の進め方と実際 誠愛リハビリテーション病院 PT 山下早百合 ボバース概念は 中枢神経系の損傷により失われた機能 運動 姿勢コントロールにおける個人個人の問題に対して 評価と治療を行う問題解決アプローチで

立石科学技術振興財団 Fig. 2 Phase division in walking motion (The left leg is colored with gray) Fig. 1 Robot Suit HAL for Well-being ベースにした両下肢支援用モデルを用いた Fig.1に

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Ⅱ 筋の伸張方法と張力調節に関わる刺激と身体で起こる反応について筋の伸張方法について ストレッチングの技法からまとめた 現在日本で用いられているストレッチングは 主に4つとされている 3, 4) それぞれの技法について 図 1にまとめた 性があるため 筋の張力調節においてあまり推奨されていない その

大阪府立大学大学院 総合リハビリテーション学研究科 博士論文 脳性麻痺児の歩行における けりだし強化に関する研究 Increased push-off improves gait in children with cerebral palsy 215 年 3 月 石原みさ子

でリハビリが行われてきました 症例の数もかかわった施設の数も少なく まだ手探りの分野といえます この治療は胸髄損傷の完全麻痺を対象としているので やはり歩行機能が再獲得されるのか という点がもっとも注目を集めるポイントになると思います 大阪大学の報告している8 例の中で半数以上の症例で移植後に何らか

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第 10 回 歩行のバイオメカニクス FF:足部水平 足底面がすべて地面に接地すること (Foot Flat) HO:踵離地 踵が地面から離れること (Heel Off) TO つま先離れ つま先が地面から離れること (Toe Off) 上記の定義に気をつけて歩いてみれば 歩行では両足で身体を支持してい

生物 第39講~第47講 テキスト

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理学療法学43_supplement 1

JIS T 9216:1991 金属製下肢装具用ひざ ( 膝 ) 継手 評価 ( 可能 おそらく可 不可 評価対象外 ) 9 試験方法 9.1 継手の遊び ( がた ) 量の測定方法 ひざ継手の大腿支柱を固定し 下腿支柱の矢状面内の屈曲 伸展方向に引張力を加え 変位量と引張力を検出できる装置を用いて

柔整国試に出るポイント&出る問題下巻.indb

走行時の接地パターンの違いによる内側縦アーチの動態の検討 五十嵐將斗 < 要約 > 後足部接地 (RFS) は前足部接地 (FFS) に比し下肢 overuse 障害の発生が多いことが報告されているが, これに関する運動学的なメカニズムは明らかではない. 本研究の目的は FFS と RFS における


身体福祉論

運動器検診マニュアル(表紙~本文)

6 腰椎用エクササイズパッケージ a. スポーツ選手の筋々膜性腰痛症 ワイパー運動 ワイパー運動 では 股関節の内外旋を繰り返すことにより 大腿骨頭の前後方向への可動範囲を拡大します 1. 基本姿勢から両下肢を伸展します 2. 踵を支店に 両股関節の内旋 外旋を繰り返します 3. 大腿骨頭の前後の移

リハビリテーションを受けること 以下 リハビリ 理想 病院でも自宅でも 自分が納得できる 期間や時間のリハビリを受けたい 現実: 現実: リ ビリが受けられる期間や時間は制度で リハビリが受けられる期間や時間は制度で 決 決められています いつ どこで どのように いつ どこで どのように リハビリ

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足関節

姿勢


高齢者におけるサルコペニアの実態について みやぐち医院 宮口信吾 我が国では 高齢化社会が進行し 脳血管疾患 悪性腫瘍の増加ばかりでなく 骨 筋肉を中心とした運動器疾患と加齢との関係が注目されている 要介護になる疾患の原因として 第 1 位は脳卒中 第 2 位は認知症 第 3 位が老衰 第 4 位に

SICE東北支部研究集会資料(2011年)

ITTF Para Table Tennis クラス分けルール (2018 年発行版一部日本語訳 ) 翻訳 : 鈴木聖一 大野洋平 ( 日本肢体不自由者卓球協会チームドクター ) * 肢体不自由アスリート向けの部分のみ抜粋して日本語訳しました (

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リハビリテーションにおける立ち上がり訓練とブリッジ動作の筋活動量の検討 リハビリテーションにおける立ち上がり訓練とブリッジ動作の筋活動量の検討 中井真吾 1) 館俊樹 1) 中西健一郎 2) 山田悟史 1) Examination of the amount of muscle activity i

歩行時の足部外反角度 外転角度最大値ならびに変化量は関連する,3) 歩行立脚期における舟状骨高最低位 (the lowest navicular height: 以下 LNH と略す ) 時の足部外反角度 外転角度は関連することとした. Ⅱ. 対象と方法 1. 被験者被験者は健常成人 20 名 (

機械式ムーブメント 機械式時計の品質とメンテナンス なぜロンジンは機械式ムーブメントを搭載した時計をコレクションに加えているの でしょうか 答えは単純です 最新式の手巻ムーブメントもしくは自動巻ムーブメントを搭載している時計に優る満足は 他のムーブメントを搭載している時計からは得 られないからです

第3回 筋系

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1 内側広筋自体を狙って研究を開始したの は 2007 年にこの大学に来てからです 5 6 最終的にはスクワット動作にもっていきたいのですが 方法論的にスクワット動作において股 膝 足関節の運動範囲や速度を厳密に規定しないと関節モーメントの大きさが違ってきます 当然それに起因して筋活動量や筋電図の周

本研究の目的は, 方形回内筋の浅頭と深頭の形態と両頭への前骨間神経の神経支配のパターンを明らかにすることである < 対象と方法 > 本研究には東京医科歯科大学解剖実習体 26 体 46 側 ( 男性 7 名, 女性 19 名, 平均年齢 76.7 歳 ) を使用した 観察には実体顕微鏡を用いた 方形

今日の流れ 捻挫とは? 足の解剖から捻挫の定義まで 捻挫の受傷起点 救急処置 長期的観点から見た捻挫 再損傷予防 捻挫について 22

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未来投資会議構造改革徹底推進会合 健康 医療 介護 会合資料 2 平成 30 年 3 月 9 日 ( 第 4 回 ) 保険外サービス 脳卒中後遺症特化型完全マンツーマンリハビリ 株式会社ワイズ 早見泰弘 Y s,inc, Ltd. All rights reserved.

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2009 年 11 月 16 日版 ( 久家 ) 遠地 P 波の変位波形の作成 遠地 P 波の変位波形 ( 変位の時間関数 ) は 波線理論をもとに P U () t = S()* t E()* t P() t で近似的に計算できる * は畳み込み積分 (convolution) を表す ( 付録

サカナに逃げろ!と指令する神経細胞の分子メカニズムを解明 -個性的な神経細胞のでき方の理解につながり,難聴治療の創薬標的への応用に期待-

92 る (7,8) HAL は 腰部フレーム 下肢フレーム 床反力センサー付きの専用靴が一体化した装着型のロボットであり 膝関節と股関節部分のモーターが駆動し 動作支援を行う 装着者の状態に応じて 下肢のアライメント調整 股 膝関節屈曲伸展の角度制限設定 HAL からのトルクの最大出力上限設定 (

< 研究の背景と経緯 > 同じ目的を持った運動でも 運動を始める前の身体の位置によって異なった筋肉が使われています 例えば 私たちは目の前の物体をつかむという運動を日常生活でよく行います 手の初期位置が物体の左にある場合は手首や肘の伸筋 右にある場合は屈筋という正反対の機能を持つ筋肉が活動しています

1/8 Japanese Journal of Comprehensive Rehabilitation Science (2014) Original Article 足関節硬さ測定装置の開発および生体力学モデルによる関節粘弾性と筋収縮要素の推定 富田豊, 1 谷野元一, 1,2,3 水野志保,

研究成果報告書

た, 膝関節装具と空気圧シリンダにより膝関節の伸展動作を補助する装置 [4] などがすすめられている. 本研究では, 高齢者のつまずきによる転倒を防止するため, 歩行時の遊脚期における足関節部の背屈動作を能動的に支援する歩行支援シューズを開発する. このように能動的に支援を行うには何らかのエネルギー

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Transcription:

理学療法士講習会応用編 脳卒中歩行病態の評価と 3D 下肢装具療法 平成 26 年 7 月 19 20 日 ( 株 ) リハライフ 神経学的解釈と運動学的解釈 神経系専門理学療法士梅田匡純 京丹後市立弥栄病院リハビリテーション科

2005.10 第 2 回 PKAFO 療法講習会参加.12 1 症例目回復期脳梗塞左片麻痺 2006. 5 2 症例目回復期脳出血右片麻痺 10m 歩行 5 秒 この間 8 週間

2005.10 第 2 回 PKAFO 療法講習会参加.12 1 症例目回復期脳梗塞左片麻痺 2006. 5 2 症例目回復期脳出血右片麻痺 10m 歩行 5 秒. 8 3 症例目維持期脳出血左片麻痺 この間 3 週間

維持期脳卒中症例の車いすからの脱却 歩行自立度 開始約 3 週間で歩行自立 生活自立 歩行自立レベル 近位監視歩行レベル 車いす 歩行レベル 車いすレベル 67 秒 /10m 38 歩 80 秒 /10m 41 歩 11 秒 /10m 19 歩 14 秒 /10m 22 歩 入院 通所などでの回復過程 PKAFO 療法 発症 1 年 1 年 8 ヶ月 2 年経過期間

脳卒中のリハビリテーション 神経生理学的根拠に基づいたアプローチ 認知運動療法 Bobath PNF CIMT BWSTT TMS ほか 解剖学神経生理学運動学系統発生学発達学心理学 ほか

本日の主な論点 理論的背景は定まってきているが 装具 = 固定 からの転換 ほどよい制限と可動性 P.KAFO が生体に与えている影響 筋電図学的検証

運動制御の基本的枠組み ( 高草木 2010)

( 高草木 2010) 内側運動制御系と外側運動制御系 内側運動制御系と外側運動制御系

運動に先行する姿勢セットと精緻運動の神経機構に関する作業仮説 すべての運動において 姿勢の制御 (postural set) が随伴しており 先行する姿勢制御がない限り 意図する運動を実行できない ( 高草木,2010)

先行随伴性姿勢制御 Anticipatory Posture Adjustments ; APAs 先行性姿勢制御 (Preparatory APAs : papas) 随意運動によって生じる姿勢の乱れを予測し 運動に 50msec 以上 (100msec という文献もある ) 先行して姿勢を安定させる 主に同側性支持性に伴う体幹の活動 随伴性姿勢制御 (Accompanying APAs : aapas) 随意運動中 姿勢を安定させている 特に 末梢部の運動に先行する近位部 ( 肩甲帯や股関節など ) の活動

先行随伴性姿勢制御 Anticipatory Posture Adjustments ; APAs 姿勢と運動の全体的企画 運動前野 補足運動野大脳基底核 小脳など papa 信号 皮質橋網様体脊髄路 早い 100ms~ 視蓋脊髄路 赤核脊髄路 aapa 信号 papa papa/aapa aapa 皮質延髄網様体脊髄路 橋 延髄網様体 運動発現の信号第一次運動野 (4 野 ) 遅い 300~ 400ms 外側皮質脊髄路 同側体幹 吻側橋網様核 同側頭部反対側リーチ 尾側橋網様核延髄巨大細胞性網様核 両側 : パターン発生器 延髄巨大細胞性網様核 反対側の運動 ( 手の運動 ) (Schepens B 2004)

予測的姿勢調整 (APA s) 姿勢の安定性が低過ぎても 高過ぎても APA s は生じにくい (Aruin et al 1998, Weaver et al 2012) 転倒の恐怖感があると減弱する (Adkin et al 2002) 一側上肢での強い把握は APA s を減弱させる (Roberto et al 2012)

姿勢制御のための脊髄小脳路 背側脊髄小脳路 : 位置覚や運動の正確な情報 ( 固有感覚情報 ) を小脳に伝える 筋紡錘 ゴルジ腱器官 皮膚受容器 関節受容器からの情報を伝える 交差しない 腹側脊髄小脳路 : 全般的な感覚情報と現在進行している運動 ( 活動 ) の情報を伝える 2 回交差する 運動の階層性制御森茂美運動制御と運動学習協同医書出版社 1997

( 高草木 2010) Half center model Rhythm generator Pattern formation

CPG は四肢の協調された動きから生まれる 上肢と下肢の運動の間 規則的にこれらの四肢を調整するリズミカルな CPG コントローラーがある 中央の疑問符は未知の領域を表すが 固有脊髄路と上位脊髄の連結を推定した点に注意が必要 上肢と下肢における CPGs の対側対同側の相対的な強さは ヒトでは不確定 E.Paul Zehr: Neural Control of Rhythmic Human Movement: The Common Core Hypo thesis; Exercise and Sport Sciences Reviews, 2005

筋線維の種類と性質 性質 筋線維の種類 S 型 FR 型 FF 型 収縮速度 遅い 速い 速い 疲労度 極めて難 難 易 運動ニューロンサイズ 小 中 大 神経支配比 小 中 大 閾値 低 中 高 支配筋線維 Ⅰ(SO) Ⅱa(FOG) Ⅱb(FG) 収縮タイプ 持久型 パワー型 瞬発型 張力 低 高 遅高

(Henneman;1965) サイズの原理 収縮張力が小さく 疲労しにくい筋線維を支配している α 運動ニューロン ( 神経細胞体が小さく 動員閾値が低い ) から順次動員される 姿勢筋は筋細胞が小さく 閾値が低いので発火しやすく 疲労しにくい ヒラメ筋 腓腹筋

(Christensen:2001)

単関節筋と二関節筋 姿勢筋は単関節筋で深部に多い 単関節筋は重力対応のために生まれた筋であり 二関節筋は運動制御担当のために生まれてきた したがって寝たきりになり 重力負荷が消えると一番に衰えるのは単関節筋 ( 熊本水頼 : 二関節筋 医学書院 2008) 姿勢異常を有する多くの症例は単関節筋が機能不全を起こし 多関節筋が過剰に機能している ( 理学療法 :p182.2007.1) 姿勢筋は typeⅠ( 遅筋 ) ヒラメ筋は 89% が typeⅠ 単関節筋 : 主として関節の固定と正しい運動方向の誘導 二関節筋 : 大きな運動をつかさどる ( 関節モーメントを発揮する ) 筋 ( 福井勉 ) ( 大槻資料より一部改変 )

( 堀清記 ;1999) 筋線維タイプによる反応 typeⅠ 線維では刺激頻度が多くなると 加重による融合が生じ 強縮 (tetanus) となって単収縮時より大きな張力となる typeⅡ 線維では大きな張力を発生するが 頻度が多少高い刺激でも加重は生じない

P.KAFO 効果の神経学的裏付け 54 歳男性維持期右視床出血 第 10 回日本神経理学療法学会学術集会演題 2013.12.14 15

介入前 (1/18) 短下肢装具 (DPC 足継手 ) 大殿筋 外側広筋 半腱様筋 前脛骨筋 腓腹筋 ヒラメ筋 サイドケイン 3 動作後ろ型

下腿前後傾角 (SVA ; shank to vertical angle) ROM 移動軸 : 下腿 基本軸 : 靴底

プラスチック製長下肢装具 (PKAFO) ROM SVA 伸展 -10 制動四頭筋活動を促通させる 底屈 5 制動伸張反射を惹起させない 踵補高 (35 mm )

2 週間後 (1/31) PKAFO 大殿筋 外側広筋 半腱様筋 前脛骨筋 腓腹筋 ヒラメ筋 サイドケイン 3 動作揃え型

10 週間後 (3/27) PKAFO 大殿筋 外側広筋 半腱様筋 前脛骨筋 腓腹筋 ヒラメ筋 杖なし

歩行中の EMG のタイミングと相対的な大きさ (Knutson LM, Soderberg GL.1995)

歩行学習の過程 大殿筋 荷重連鎖障害 促通期 再構築期 介入前 2 週間後 10 週間後 外側広筋 半腱様筋 前脛骨筋 腓腹筋 ヒラメ筋 フットスイッチ 膝角度 2 50 sec 3 00 sec 1 22 sec 立脚 : 遊脚 73:27 76:24 51:49

踵骨は床面との相性が良いとはいえない ( ネッター解剖学アトラスより )

Clinical Reasoning 踵の形状は不安定転がる (Rocker Function) には最適 足関節周囲筋によってスティッフネスを高め安定化させる必要あり 外側運動制御系の活動を求める必要がある 伸張反射経路の興奮が増大される (Christensen) 特に typeⅠ 線維を多く含むヒラメ筋は閾値が低く影響を受けやすい 伸張反射亢進 加重 強縮 踵骨は床面との相性が良いとはいえない 痙性は荷重連鎖となる足部と膝 股関節の運動制御を困難にさせる ( 佐藤 ) ( ネッター解剖学アトラスより )

立脚初期 ヒラメ筋の痙縮を惹起させない Heel Contact をつくる 皮質脊髄路障害に対して末梢のコントロール ( 外側系 ) は課題が大きい 下腿三頭筋に過度な伸長を課さず踵のウェッジと底屈制動で SVA を整えることが効果的な荷重連鎖を開始させる 膝伸展を制動し 股 体幹に床反力を伝える 踵骨は床面との相性が良いとはいえない 立脚相の抗重力伸展活動を促通する 外側系の課題をコントロールし 内側系の姿勢制御を優先的に求めるアプローチ ( ネッター解剖学アトラスより )

安静時 typeⅠ 線維の反応が変化した

介入前 (1/18) 大殿筋 外側広筋 半腱様筋 前脛骨筋 腓腹筋 ヒラメ筋

10 週間後 (3/27) の歩行練習の前 大殿筋 外側広筋 半腱様筋 前脛骨筋 腓腹筋 ヒラメ筋

10 週間後 (3/27) の歩行練習のあと 大殿筋 外側広筋 半腱様筋 前脛骨筋 腓腹筋 ヒラメ筋 14 秒後

安静時筋活動の変化 ( 腓腹筋とヒラメ筋 ) 平均活動電位 (μv) 1.18 練習前 1.03 7.53 Modified Ashworth Scale 3 3.27 練習前 1.42 1.22 3.27 練習後 1.23 3.03 Modified Ashworth Scale 2 3.65μV 14 秒後 1.78μV

P.KAFO 効果の運動学的裏付け 70 歳男性両下肢痙性麻痺 第 53 回近畿理学療法学術集会演題 2013.11.3

Heel Rocker をターゲットに底屈制動機能を備えた製品が注目されてきた が

足関節背屈制限が立脚相に与える影響 先行研究 立脚終期の下腿三頭筋の働きを代償し heel off が出現することで 膝伸展角度が保持できた ( 岡村 ;2012) 麻痺側立脚中期の足関節底屈筋の活動を補助し 膝折れを防ぐ ( 小山ら ;2006 高木ら ;2007 岡田ら ;2013) 目的 足背屈制動によって ankle rocker から forefoot rocker に必要な下腿三頭筋の筋活動を補うことが 下腿の前方傾斜を抑制し膝折れを防ぐことを筋電波形から検証すること

正常歩行立脚相の rocker function3 相 Heel rocker Ankle rocker Fore foot rocker

正常歩行立脚相の rocker function3 相 重心を上昇させる Heel rocker Ankle rocker Fore foot rocker MSt. 以降の足底屈パワーが重要

弛緩性麻痺によくみられる膝折れ 歩行中断 Heel rocker Ankle rocker Fore foot rocker

対象 70 歳代男性両下肢痙性麻痺 (T6 7 化膿性脊椎炎 ) フランケル分類 D1 足クローヌス + Barthel Index85 点歩行能力 両側ロフストランド杖両側長下肢装具理学療法室内自立 Th6 Th7 左側立脚 右側立脚 MSt 時に両側膝折れやスナッピングが生じ その現象が著明な右側 ( 下図 ) を被検側とした

測定条件 1 共通条件 CCAD ジョイント (FRAP 技研 ) 付長下肢装具膝継手伸展制動 -10 足継手底屈制動なし 条件 A 足関節背屈制動なし 条件 B 足関節背屈制動あり 条件 A 足関節背屈制動なし 膝伸展制動 -10 膝伸展制動 -10 膝伸展制動 -10 SVA 0 (Shank to vertical angle) 制動なし 前方ストッパーによる背屈制動 制動なし

測定条件 2 自由歩行を条件 A- 条件 B- 条件 A の順で測定 被検筋 大殿筋外側広筋半腱様筋前脛骨筋腓腹筋ヒラメ筋 計測条件 機器 Noraxon G2 インピーダンス 10kΩ 以下電極間距離 25mm 解析方法 1 フットスイッチにより 歩行周期を特定する 2 生波形を正規化 RMS 処理 (50msec) し 安定した 5 歩行周期の電位 (μv) の平均と標準偏差を求めた 3 測定条件下 (A-B-A ) の立脚相のみを抜き出し それを 100% とした 4 各筋がピーク電位 (μv) を示したタイミングを立脚相に換算し 測定条件間での変化を検証した 5 正常歩行時の活動ピークは RLANRC を参考にした

歩行中の EMG のタイミングと相対的な大きさ % 100% (Knutson LM, Soderberg GL.1995)

結果 各筋の筋電波形がピークを示した立脚相のタイミング 立脚相の時間 ( % ) 120 100 80 60 40 104.7 67.9 57.1 104.7 95.5 73.8 61.9 57.6 54.9 大殿筋外側広筋半腱様筋前脛骨筋腓腹筋ヒラメ筋 正常歩行時のピーク 大殿筋 13.7% 外側広筋 18.4% 半腱様筋 159.2% 前脛骨筋 12.2% 腓腹筋 75.5% ヒラメ筋 81.6% RLANRC 部分修正 ¹) 20 0 21.9 21.2 18.8 14.1 16.7 12.5 11 6.1 3.1 条件 A 条件 B 条件 A

今回の足関節背屈制動によって生じた腓腹筋のピーク時期の Tst. への遅れは 下図右のメカニズムを発生させ 荷重連鎖から生じる下肢の抗重力伸展活動を促すことができる環境が整えられる可能性があると考えた 足関節背屈制動なし 足関節背屈制動あり 重心の高さ 重心の高さ 4 重心の急激な下降を避ける 3 実効長の延長 背屈モーメント 1 底屈モーメント発生 足関節を中心とした円軌道 2 支点の移動 (FR) 中足指節間関節を中心とした円軌道

足関節背屈制動なし 足関節背屈制動あり

正常歩行立脚相の rocker function3 相 重心を上昇させる Heel rocker Ankle rocker Fore foot rocker 装具に求められる機能 足底屈制動 足背屈制動

2014.3.1 京都 伊根町 舟屋の里 において

受動歩行ロボット ( 円弧型足部 ) 重力効果のみによって 遊脚膝が自然に曲がり脚の振り抜きが行われる. これは 本質的にリンク構造のみで 歩ける ことを意味している ( 佐野 )

2005.10 第 2 回 PKAFO 療法講習会参加.12 1 症例目回復期脳梗塞左片麻痺 2006. 5 2 症例目回復期脳出血右片麻痺 10m 歩行 5 秒台. 8 3 症例目維持期脳出血左片麻痺 2007. 7 5 症例目中心性頸髄損傷不全痙性四肢麻痺.11 9 症例目頸椎症性頸髄症不全痙性四肢麻痺両 TKA 2014. 5 脊柱管狭窄症手術後両下肢弛緩性麻痺 MMT poor

床反力を効率よく膝 股 体幹に伝えることで 筋力が乏しくても PKAFO の構造によって シェル構造をリンク構造の作用に変換でき 立脚相を得ることが可能となっている

床反力を効率よく膝 股 体幹に伝えることで 筋力が乏しくても PKAFO の構造によって シェル構造をリンク構造的な作用に変換でき 立脚相を得ることが可能となっている

足部の形状の違い ギネス認定実機 ( 円弧型足部 ) 人足型足部

( 名古屋工業大学佐野研究所より資料提供 ) 足関節部 前足部

受動歩行ロボット ( 人足型足部 ) 足関節に動きを与えると両脚支持期が約 20% 生じ ヒトの歩行に近づくが 難易度は非常に高くなる

P.KAFO の特長 生体との親和性 シェル型構造 前面の大腿カフ 足関節と膝関節の同時制御

金属素材と生体の親和性 背屈制限なし 背屈制限あり 膝継手遊動の金属支柱型長下肢装具を健常者が装着し ダブルクレンザック足継手を制限なしと前方制背屈制限 0 限背屈 0 度 ( ロッド固定 ) の際の筋活動

金属どおしの衝撃の強さ

シェル型構造 内部に脚を収めることができる 接触面積が広い コントロールしやすい 装具の内部に人の下肢が収まることで リンク構造として機能することに加え 下肢の活動の制限と促通などコントロールが容易に可能となっている

前面の大腿カフ 足と膝を同時にコントロールできる 大腿カフ 伸展制動 膝軸のモーメントアーム 背屈制動 足軸のモーメントアーム 床反力ベクトル 大腿カフが前面にあることで 足底接地の際に床反力ベクトルを膝軸より前方で得ることができ 下肢を抗重力伸展方向に促す

本日のまとめ 歩行練習の理論的背景は同じ 神経学的 運動学的に適した調整が可能 姿勢制御 (postural set) を先行するアプローチを行った 筋活動の促通効果が期待できる ( 膝 股関節 ) 背屈制動によりankle rocker 以降のコントロールが可能 少ない筋活動で効率のよい歩行を可能にする 装具の調整と筋電波形の変化

みなさまとディスカッションができればと思っていますご清聴ありがとうございました