単元構造図の簡素化とその活用 ~ 九州体育 保健体育ネットワーク研究会 2016 ファイナル in 福岡 ~ 佐賀県伊万里市立伊万里中学校教頭福井宏和 1 はじめに伊万里市立伊万里中学校は, 平成 20 年度から平成 22 年度までの3 年間, 文部科学省 国立教育政策研究所 学力の把握に関する研究

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Ⅰ 評価の基本的な考え方 1 学力のとらえ方 学力については 知識や技能だけでなく 自ら学ぶ意欲や思考力 判断力 表現力などの資質や能力などを含めて基礎 基本ととらえ その基礎 基本の確実な定着を前提に 自ら学び 自ら考える力などの 生きる力 がはぐくまれているかどうかを含めて学力ととらえる必要があ

平成 28 年度全国学力 学習状況調査の結果伊達市教育委員会〇平成 28 年 4 月 19 日 ( 火 ) に実施した平成 28 年度全国学力 学習状況調査の北海道における参加状況は 下記のとおりである 北海道 伊達市 ( 星の丘小 中学校を除く ) 学校数 児童生徒数 学校数 児童生徒数 小学校

(1) 体育・保健体育の授業を改善するために

平成 年度佐賀県教育センタープロジェクト研究小 中学校校内研究の在り方研究委員会 2 研究の実際 (4) 校内研究の推進 充実のための方策の実施 実践 3 教科の枠を越えた協議を目指した授業研究会 C 中学校における実践 C 中学校は 昨年度までの付箋を用いた協議の場においては 意見を出

の間で動いています 今年度は特に中学校の数学 A 区分 ( 知識 に関する問題 ) の平均正答率が全 国の平均正答率より 2.4 ポイント上回り 高い正答率となっています <H9 年度からの平均正答率の経年変化を表すグラフ > * 平成 22 年度は抽出調査のためデータがありません 平

学習指導要領の領域等の平均正答率をみると 各教科のすべての領域でほぼ同じ値か わずかに低い値を示しています 国語では A 問題のすべての領域で 全国の平均正答率をわずかながら低い値を示しています このことから 基礎知識をしっかりと定着させるための日常的な学習活動が必要です 家庭学習が形式的になってい

工業教育資料347号

4.原稿(資料)

H

2 教科に関する調査の結果 ( 各教科での % ) (1) 小学校 国語 4 年生 5 年生 6 年生 狭山市埼玉県狭山市埼玉県狭山市埼玉県 平領均域正等答別率 話すこと 聞くこと 書くこと

平成 21 年度全国学力 学習状況調査結果の概要と分析及び改善計画 調査実施期日 平成 21 年 10 月 2 日 ( 金 ) 教務部 平成 21 年 4 月 21 日 ( 火 )AM8:50~11:50 調査実施学級数等 三次市立十日市小学校第 6 学年い ろ は に組 (95 名 ) 教科に関す

①H28公表資料p.1~2

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(2) 国語 B 算数数学 B 知識 技能等を実生活の様々な場面に活用する力や 様々な課題解決のための構想を立て実践し 評価 改善する力などに関わる主として 活用 に関する問題です (3) 児童生徒質問紙児童生徒の生活習慣や意識等に関する調査です 3 平成 20 年度全国学力 学習状況調査の結果 (

ICTを軸にした小中連携

2 教科に関する調査の結果 (1) 平均正答率 % 小学校 中学校 4 年生 5 年生 6 年生 1 年生 2 年生 3 年生 国語算数 数学英語 狭山市 埼玉県 狭山市 61.4

目 次 1 学力調査の概要 1 2 内容別調査結果の概要 (1) 内容別正答率 2 (2) 分類 区分別正答率 小学校国語 A( 知識 ) 国語 B( 活用 ) 3 小学校算数 A( 知識 ) 算数 B( 活用 ) 5 中学校国語 A( 知識 ) 国語 B( 活用 ) 7 中学校数学 A( 知識 )

p.1~2◇◇Ⅰ調査の概要、Ⅱ公表について、Ⅲ_1教科に対する調査の結果_0821_2改訂

活実態と関連を図りながら重点的に指導していきたい また, 栄養教諭による給食献立の栄養バランスや食事によるエネルギー量を基盤として, グループごとに話合い活動を取り入れるなどの指導の工夫を行いたい また, 授業の導入にアイスブレイクや, カード式発想法を取り入れることにより, 生徒が本気で語ることが

問 3 問 1 で複数種目を回答した場合 指導形態について該当するものを選んでください ( 問 1 で複数種目回答していない場合は回答不要 ) 1 学校が選択した複数種目をすべての生徒に履修させている 2 学校が提示した複数種目から生徒が選択して履修できるようにしている 3 その他 ( 具体的な指導

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自己紹介をしよう

領域別正答率 Zzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzz んんんんんんんんんんんんん 小学校 中学校ともに 国語 A B 算数( 数学 )A B のほとんどの領域において 奈良県 全国を上回っています 小学校国語 書く B において 奈良県 全国を大きく上回っています しかし 質問紙調査では 自分

表 2 家庭にミシンがあり, 家族 ( 自分を含む ) が使用している 37% 家庭にミシンはあるが, ほとんど使用していない 26% 家庭にミシンがない 37% 指導観 1 年生にとって, 中学校に入学して初めての被服製作題材である 小学校の家庭科でも布を用いた製作を行ってきているが, 授業後,

1. 研究主題 学び方を身につけ, 見通しをもって意欲的に学ぶ子どもの育成 ~ 複式学級における算数科授業づくりを通して ~ 2. 主題設定の理由 本校では, 平成 22 年度から平成 24 年度までの3 年間, 生き生きと学ぶ子どもの育成 ~ 複式学級における授業づくり通して~ を研究主題に意欲的

ホームページ掲載資料 平成 30 年度 全国学力 学習状況調査結果 ( 上尾市立小 中学校概要 ) 平成 30 年 4 月 17 日実施 上尾市教育委員会

平成 29 年度 全国学力 学習状況調査結果と対策 1 全国学力調査の結果 ( 校種 検査項目ごとの平均正答率の比較から ) (1) 小学校の結果 会津若松市 国語 A は 全国平均を上回る 国語 B はやや上回る 算数は A B ともに全国平均を上回る 昨年度の国語 A はほぼ同じ 他科目はやや下

3 第 3 学年及び第 4 学年の評価規準 集団活動や生活への関心 意欲態度 集団の一員としての思考 判断 実践 学級の生活上の問題に関心 楽しい学級をつくるために を持ち 他の児童と協力して意 話し合い 自己の役割や集団と 欲的に集団活動に取り組もう してよりよい方法について考 としている え 判

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新潟市立亀田西中学校

第 1 章総則第 1 教育課程編成の一般方針 1( 前略 ) 学校の教育活動を進めるに当たっては 各学校において 児童に生きる力をはぐくむことを目指し 創意工夫を生かした特色ある教育活動を展開する中で 基礎的 基本的な知識及び技能を確実に習得させ これらを活用して課題を解決するために必要な思考力 判

2 生活習慣や学習環境等に関する質問紙調査 児童生徒に対する調査 学校意欲 学習方法 学習環境 生活の諸側面等に関する調査 学校に対する調査 指導方法に関する取組や人的 物的な教育条件の整備の状況等に関する調査 2

H30全国HP

Microsoft Word - 社会科

愛媛県学力向上5か年計画

今年度は 創立 125 周年 です 平成 29 年度 12 月号杉並区立杉並第三小学校 杉並区高円寺南 TEL FAX 杉三小の子

123

フトを用いて 質問項目間の相関関係に着目し 分析することにした 2 研究目的 全国学力 学習状況調査結果の分析を通して 本県の児童生徒の国語及び算数 数学の学習 に対する関心 意欲の傾向を考察する 3 研究方法平成 25 年度全国学力 学習状況調査の児童生徒質問紙のうち 国語及び算数 数学の学習に対

平成 25 年度学力定着状況確認問題の結果について 概要版 山口県教育庁義務教育課 平成 2 6 年 1 月 1 実施概要 (1) 目 的 児童生徒の客観的な学力状況の経年的な把握と分析を通して 課題解決に向けた 指導の工夫改善等の取組の充実を図る全県的な検証改善サイクルを確立し 県内す べての児童

3 題材の目標 (1) (2) 4 題材の評価規準 ( 指導要録の四つの観点 ( 生活や技術への関心 意欲 態度 ) から題材の学習を通して目指す生徒の姿を示します ) 文章の語尾は 評価規準の作成, 評価方法の工夫改善のための参考資料 ( 中学校技術 家庭 ) 平成 23 年 11 月 ( 国立教

平成25~27年度間

3 特別支援学級における学習指導案 特別支援学級においても 学習指導案は授業の設計図としての働きに変わりはありません しかし 特別支援学級では 児童生徒の実態から指導の内容や計画を考えることに大きな意味があります 通常の学級の学習指導案では 例えば 単元について は学習指導要領に沿った指導計画に基づ

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1. 調査結果の概況 (1) の児童 ( 小学校 ) の状況 < 国語 A> 今年度より, ( 公立 ) と市町村立の平均正答率は整数値で表示となりました < 国語 B> 4 国語 A 平均正答率 5 国語 B 平均正答率 ( 公立 ) 74.8 ( 公立 ) 57.5 ( 公立 ) 74 ( 公立

いろいろな衣装を知ろう

国語 A では, 領域別, 観点別, 問題形式別に見て, どの区分においても全国平均を上回り, 高い正答率でした しかし, 設問別でみると全国および新潟県平均正答率を下回った設問が, 15 問中 1 問, 新潟県の平均正答率を下回った設問は,15 問中 1 問ありました 設問の概要関屋小新潟県全国

( 中学校調査 ) 1 時限目 2 時限目 3 時限目 4 時限目 5 時限目 国語 A (45 分 ) 国語 B (45 分 ) 数学 A (45 分 ) 数学 B (45 分 ) 生徒質問紙 (2 分程度 ) (6) 集計児童生徒 学校数 1 集計基準児童生徒に対する調査について, 平成 29

2 調査結果 (1) 教科に関する調査結果 全体の平均正答率では, 小 5, 中 2の全ての教科で 全国的期待値 ( 参考値 ) ( 以下 全国値 という ) との5ポイント以上の有意差は見られなかった 基礎 基本 については,5ポイント以上の有意差は見られなかったものの, 小 5 中 2ともに,

授業の構成要素 学び合う授業で育つ 3 つの力 資料 2 基礎 基本の力知識 理解 技能 問題解決力思考力 判断力 表現力 想像力 学ぼうとする力学習意欲 自己有用感 身に付けた知識 技能を活用したり その成果を踏まえた探究活動を行う中で学び合う授業を展開する 教師の役割 < 問題提示の工夫 > 多

教育調査 ( 教職員用 ) 1 教育計画の作成にあたって 教職員でよく話し合っていますか 度数 相対度数 (%) 累積度数累積相対度数 (%) はい どちらかといえばはい どちらかといえばいいえ いいえ 0

国語の授業で目的に応じて資料を読み, 自分の考えを 話したり, 書いたりしている

小学校の結果は 国語 B 算数 A で全国平均正答率を上回っており 改善傾向が見られる しかし 国語 A 算数 B では依然として全国平均正答率を下回っており 課題が残る 中学校の結果は 国語 B 以外の教科で全国平均正答率を上回った ア平成 26 年度全国学力 学習状況調査における宇部市の平均正答

上体おこし長座体前屈反復横跳持久走三年女子 上体おこし長座体前屈反復横跳持久走三年男子 力ンド力ンド幅跳び幅跳び保健体育科学習指導案 指導者三和中学校小浦麻美日時平成 23 年 9 月 30 日 ( 金 ) 第 5 校時 ( 三良坂中学校体育館 ) 学年三和中学校第 3 学年 23 名 ( 男子 9

教育研究グループ報告書

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第 2 学年 * 組保健体育科 ( 保健分野 ) 学習指導案 1 単元名生涯の各段階における健康 ( イ ) 結婚生活と健康 指導者間中大介 2 単元の目標 生涯の各段階における健康について, 課題の解決に向けての話し合いや模擬授業, ディベート形式のディスカッションなどの学習活動に意欲的に取り組む

Microsoft PowerPoint - syogaku [互換モード]

実践 報告書テンプレート

2 全国 埼玉県 狭山市の平均正答率 ( 教科に関する調査の結果 ) ( 単位 %) (1) 小学校第 6 学年 教科ごとの区分 教科 狭山市 埼玉県 全国 国語 A 国語 B 算数 A 算数 B 学習指導要領の

成績評価を「学習のための評価」に

3. ➀ 1 1 ➁ 2 ➀ ➁ /

(2) 学習指導要領の領域別の平均正答率 1 小学校国語 A (%) 学習指導要領の領域 領 域 話すこと 聞くこと 66.6(69.2) 77.0(79.2) 書くこと 61.8(60.6) 69.3(72.8) 読むこと 69.9(70.2) 77.4(78.5) 伝統的な言語文化等 78.3(

国語 B 柏原 埼玉県 全国 話すこと 聞くこと 書くこと 読むこと 算数 A 柏原 埼玉県 全国 数と計算 量と測定 図形 数量関係 算数 B 柏原 埼玉県 全国

瑞浪市調査結果概略(平成19年度全国学力・学習状況調査)

学習意欲の向上 学習習慣の確立 改訂の趣旨 今回の学習指導要領改訂に当たって 基本的な考え方の一つに学習 意欲の向上 学習習慣の確立が明示された これは 教育基本法第 6 条第 2 項 あるいは学校教育法第 30 条第 2 項の条文にある 自ら進んで学習する意欲の重視にかかわる文言を受けるものである

Microsoft Word - 研究の概要他(西小) 最終

本年度の調査結果を更に詳しく分析するため 本道の課題となっている質問紙の項目について 継続して成果を上げている福井県 秋田県 広島県と比較した結果を示しています ( 全国を 100 とした場合の全道及び他県の状況をレーダーチャートで示したもの ) 1 福井県との比較 (~P51) 継続的に成果を上げ

第 3 学年 2 組算数科学習指導案 1 単元名たし算とひき算の筆算 指導者永田佳江 2 単元について (1) 単元観 該当する学習指導要領の内容 A 数と計算 A(2) 加法, 減法 (2) 加法及び減法の計算が確実にできるようにし, それらを適切に用いる能力を伸ばす 本単元で扱う たし算とひき算

Water Sunshine

2、協同的探究学習について

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平成 22 年度全国学力 学習状況調査結果の概要と分析及び改善計画 調査実施期日 平成 22 年 4 月 20 日 ( 火 )AM8:50~11:50 平成 22 年 9 月 14 日 ( 火 ) 研究主任山口嘉子 調査実施学級数等 三次市立十日市小学校第 6 学年い ろ は に組 (105 名 )

< 先生方へ > 長崎県学力向上推進協議会では 子どもに確かな学力をつけていくためには 何 が大切か また 学力の向上を阻害している要因は何かなどについて 検討を重ね ています その中から次のようなことが指摘されました 1 家庭で毎日決まった時間に学習をする習慣をつけることが大切である 2 食事や睡

平成 2 2 年度 広島市教育センター 目標の明確化と指導と評価の一体化に関する研究 - 指導計画とイメージマップの工夫 改善 - 広島市立安西中学校教諭松岡美香 研究の要約 知識基盤社会 の時代, 子どもたちに 生きる力 をはぐくむという理念はますます重要であり, 確かな学力を身に付けさせるために

○数学科 2年 連立方程式

の 問を提示して定着度を確認していく 1 分けて計算するやり方 70 = =216 2 =6 2 筆算で計算する方法 題材の指導計画 ( 全 10 時間扱い ) ⑴ ⑵ ⑶ 何十 何百 1 位数の計算 1 時間 2 位数 1 位数

平成 30 年度 品川区学力定着度調査 の結果から明らかになった課題と学力向上に向けた取組 ( 国語 ) 1. 国語の定着状況についての概要 どの学年もほとんどすべての項目において 目標値を上回った 昨年度から取り組んできた 文章を書き表す際の 言葉の正しい使い方の指導 が 言葉についての知識 理解

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小学生の英語学習に関する調査

調査実施概況 小学校 ( 都道府県 ( 指定都市除く )) 教育委員会数 ( 1) 学校数児童数 ( 2) 全体 実施数 調査対象者在籍学校数 実施数国語 A 国語 B 主体的 対話的で深い学びに関する状況 ( 3) 算数 A 算数 B 質問紙 平均正答率 13~15 問 国語

彩の国埼玉県 埼玉県のマスコット コバトン 科学的な見方や考え方を養う理科の授業 小学校理科の観察 実験で大切なことは? 県立総合教育センターでの 学校間の接続に関する調査研究 の意識調査では 埼玉県内の児童生徒の多くは 理科が好きな理由として 観察 実験などの活動があること を一番にあげています

解禁日時新聞平成 30 年 8 月 1 日朝刊テレビ ラジオ インターネット平成 30 年 7 月 31 日午後 5 時以降 報道資料 年月日 平成 30 年 7 月 31 日 ( 火 ) 担当課 学校教育課 担当者 義務教育係 垣内 宏志 富倉 勇 TEL 直通 内線 5

国語 B では 話すこと 聞くこと 領域において 全国及び県平均を上回っているが 他の三つの領域においては 全国及び県平均を下回っている 活用する力を育成する取組のさらなる充実が必要である 設問 1 の目的に応じて 話し合いの観点を整理する力は身についてきている 設問 3 の二つの詩を比べて読み 自

教育 学びのイノベーション事業 ( 平成 23~25 年度 ) 総務省と連携し 一人一台の情報端末や電子黒板 無線 LAN 等が整備された環境の下で 教科指導や特別支援教育において ICT を効果的に活用して 子供たちが主体的に学習する 新たな学び を創造する実証研究を実施 小学校 (10 校 )

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上に食に関する指導の充実が求められている 食環境の乱れが社会的課題とっている今日 中学生が食生活の自立を目指した学習をすることは大切なことであるので 本時は 自分や家族の食生活の中で見付けた問題点の改善に自主的に取り組むことができるように 指導を進めることにした 指導に当たっては これまでの学習を踏

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(2) 国語科 国語 A 国語 A においては 平均正答率が平均を上回っている 国語 A の正答数の分布では 平均に比べ 中位層が薄く 上位層 下位層が厚い傾向が見られる 漢字を読む 漢字を書く 設問において 平均正答率が平均を下回っている 国語 B 国語 B においては 平均正答率が平均を上回って

「標準的な研修プログラム《

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2 各教科の領域別結果および状況 小学校 国語 A 書くこと 伝統的言語文化と国語の特質に関する事項 の2 領域は おおむね満足できると考えられる 話すこと 聞くこと 読むこと の2 領域は 一部課題がある 国語 B 書くこと 読むこと の領域は 一定身についているがさらに伸ばしたい 短答式はおおむ

実践 報告書テンプレート

Taro-① 平成30年度全国学力・学習状況調査の結果の概要について

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5 児童生徒質問紙調査 (~P23) (1) 運動に対する意識等 [ 小学校男子 ] 1 運動やスポーツを [ 小学校女子 ] することが好き 1 運動やスポーツをすることが好き H30 全国 H30 北海道 6 放課後や学校が休みの日に 運動部や地域のスポーツクラブ以外で運動やスポーツをすることが

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単元構造図の簡素化とその活用 ~ 九州体育 保健体育ネットワーク研究会 2016 ファイナル in 福岡 ~ 佐賀県伊万里市立伊万里中学校教頭福井宏和 1 はじめに伊万里市立伊万里中学校は, 平成 20 年度から平成 22 年度までの3 年間, 文部科学省 国立教育政策研究所 学力の把握に関する研究指定校 の指定を受け, 指導と評価の一体化を図る実践的研究に取り組んだ そこで, 引き続き伊万里市教育研究会保健体育部会において, その取組の中の単元構造図について実践研究を行うことになった 2 単元構造図でできることは 学習指導要領や解説の内容の理解が進む 単元の目標, 内容, 評価について全体的に確認できる 授業者の多様なアイディアを引き出せる 学習内容と評価機会を精選することで効果的 効率的な評価ができる But ペーパー 1 枚に収められている情報が多い どの保健体育科教員でも作成にチャレンジしようと思わない 手軽に活用できないできない So 簡易版単元構造図の作成と活用 3 市の研究会での取組 (1) 単元構造図の理解と簡易簡易版単元構造図の版単元構造図の作成簡易版単元構造図への取組は, まず, 平成 23 24 年度に図 1のような単元構造図フルバージョンのワークショップを行い, 単元構造図の意義の理解を深め, 作成の手順の理解を図った 図 1 単元構造図フルバージョン 図 2 ワークショップ資料

平成 25 年度には, 各学校で単元構造図を作成 活用する中での課題等を整理し, 図 2のように 簡易版単元構造図 の作成の検討とワークショップを行い, 伊万里市内の中学校 8 校で実施されている領域 種目を各中学校で分担し作成することにした 簡易版への手順は, まず, 図 3のように単元の指導内容と評価計画が一目で全体的に確認できるように, 平成 20 年 3 月改訂の学習指導要領や同解説の記載内容をカットし, A4ペーパー 1 枚に収まるよ図 3 簡易版単元構造図 Ver1 うにした 次に,A4ペーパー 1 枚に収まったもののまだ情報量が多いために, 何をいつ教えるのか, そのためにはどんな工夫をすればよいのかがはっきり見えないことなどから, 図 4のように観点別の指導のポイントをカットし, 評価時期と評価規準を明確化した これで, すべての保健体育科教図 4 簡易版単元構造図 Ver2 員が単元構造図を容易に作成し活用できるようになった さらに, 本校では今年度から図 5のように簡易版単元構造図に各授業時間の技能のめあてを書き込んだものに修正し, それを学習カードの裏面に印刷するなど, より学習内容を明確にしたり, いつでも, めあてや単元の流れが確認したりできるようにした 単元における各授業時間に 技能のめあてを書き込み 身につけなければならない内容の意識化を図った 図 5 学習カードと構造図

(2) 簡易版単元構造図の活用と結果 考察簡素化した単元構造図を作成 活用したことについて, 市教研保体部会の保健体育科教員 13 名と本校 3 年生の159 名にアンケートを実施した 1 教員対象活用アンケートより表 1の教員対象の活用アン表 1 活用アンケート ( 教員 ) ケートの問 1では 単元構造図を作成したことにより, 教える内容が明確になった と全員が回答した 問 2 単元構造図を作成したことにより, 教員が単元の流れと学習評価時期が理解できた, 問 3 生徒に単元構造図を使って単元の流れを示 N=13 した, 問 8 毎時間, 生徒に授業のめあてを書き示した では, 約 1 割の教員が理解できていなかったり, 生徒への提示ができていなかった 問 4 単元構造図を作成したことにより生徒が単元の流れを理解できた, 問 5 単元構造図を作成したことにより, 生徒が単元で身に付けなければならない学習内容を理解できた では, 約 3 割の教員が生徒は理解できていないという回答だったため, 理解できるよう, どのようにしていけばよいかが, これからの課題である 問 7 生徒は評価内容について理解できている では, 約 6 割の教員が理解できていないと回答した 2 生徒対象活用アンケートより表 2 活用アンケート ( 生徒 ) 肯定的な回答 69% 表 3 活用アンケート ( 生徒 ) 肯定的な回答 69% 教員対象活用アンケートの問 8では 毎時間, 生徒にめあてを書き示した と回答した教員は 91.7% であり, 表 2の生徒対象活用アンケートの問 3 めあてを理解し, 達成するように活動できましたか? では,69% が毎時間できている ほとんどできていると回答しており, 時々できているを加えると, すべての生徒ができていると回答した また, 表 3の生徒対象活用アンケートの問 4 めあてがあることで, 関心 意欲が高まりますか? では,69% がとても高まる 高まると回答しており, 少し高まるを加えると, 98% が関心 意欲が高まると回答している 教員及び生徒アンケート結果より, 簡易版単元構造図の作成によって教師が指導する内容が明確になり, 生徒へのめあての提示が毎

時間できたものと考えられる また, 生徒も明確なめあてを示されることにより, 活動に対す る関心や意欲が高まり, 目標を達成しようとする自主的 意欲的な活動につながったと考える 表 4 活用アンケート ( 生徒 ) 肯定的な回答 87% 表 5 活用アンケート ( 生徒 ) 肯定的な回答 81% 簡易版単元構造図を単元のオリエンテーション時に提示し, 単元の流れを視覚化したり, 単元の中で身につけなければならない技能等や観点ごとの評価の解説をしたりした 表 4の生徒対象活用アンケートの問 5 毎時間の授業の流れを理解できていますか? では, 87% がとても理解できている 理解できていると回答している 時々理解できているを加えるとすべての生徒が理解できていると回答している また, 表 5の生徒対象活用アンケートの問 6 競技ごとに身に付けなければならない学習内容を理解できていますか? では,81% がとても理解できている 理解できていると回答しており, 時々理解できているを加えるとすべての生徒が理解できていると回答している これらのアンケート結果からも, 単元全体の 流れを簡易版単元構造図により視覚化することで, 単元全体を通して身につけなければならない技能や態度, 思考 判断, 知識が明確に示され, 生徒の理解度につながったものと考えられる また, このことが, 自主的 意欲的な活動につながった要因の一つではないかと考える 表 6 活用アンケート ( 生徒 ) 肯定的な回答 79% 表 6の生徒対象活用アンケートの問 7 評価内容について理解できていますか? では, 79% が理解できていると回答しており, 評価される内容を理解して活動していたことが分かった しかし, 約 2 割の生徒がよく理解できずに授業で活動しているため, 全員が理解して活動できる手だてを考えていかなければならない

表 7 活用アンケート ( 生徒 ) 表 7の生徒対象活用アンケートの問 8 評価の4つの観点のうち, どの観点が大切だと思いますか? では, すべての評価の観点が大切であると回答している生徒が48% であり, 次いで, 関心 意欲 態度 と回答した生徒が39% である 思考 判断 技能 知識 理解 は各々 5% 程度であった 表 6 7の生徒対象活用アンケートの結果から, 簡易版単元構造図を活用して, 生徒が身につけなければならない学習内容と評価内容 評価規準が関連していることが理解できたのではないかと考える また, 本校では, わかった できた の成功体験をさせるために, 前日から活動場所を準備し, 生徒の意欲向上に努めている それに合わせて, 学習内容の定着を確認するためにも, しっかりと学習ノートに活動状況や自分の課題等を記入させチェックしている これらのことで, 思考を促す活動機会や評価を生み出している しかし, 体育の授業では, 必要な運動量の確保と技能の習得 思考の場面の設定も大切であるが, 本校では, 学習規律や学習ルールを守らせること等の態度形成の指導に力を入れていることから, 表 7のように 関心 意欲 態度 と回答した生徒が4 割近くいたのではないかと考える 表 8 活用アンケート ( 教員と生徒生徒のクロス ) N=13 表 8のように評価内容の理解度について生徒側と教師側で比較をした 教員対象アンケートの問 7 生徒は評価内容について理解できている では, 教員は42% しか理解できていると感じていないが, 本校 3 年生のアンケートによると79% の生徒が評価内容を理解していると感じている 本校では簡易版単元構造図で4 観点ごとの評価規準を生徒に示し, 機会あるごとに4 観点の評価について伝えていることから,8 割近くの生徒が理解できていると回答しているのではないかと考える 実際, 授業中に評価について触れると, 生徒の活動が好転する場面が多く見られた したがって, 単元構造図などを活用し, 生徒に評価内容をしっかりと伝えることが重要である 今後は,4 観点ごとの評価規準を生徒にしっかりと落とし込み, 理解させることが必要と考える

表 9 活用アンケート ( 生徒 ) 肯定的な回答 85% 肯定的な回答 89% 表 9の生徒対象活用アンケートのように 運動をすることが好き と答えた生徒は85% であったが, 体育の授業は好き と答えた生徒は 89% になっている この体育の授業への好感度が4% 高いということは, 単元構造図の活用により, 身に付けなければならない学習内容がより明確化し, 生徒が理解しやすかったことや評価規準をしっかりと伝えたことで, できる わかる 体育の授業が展開されたことが要因ではないかと考える 4 まとめ 授業では, 運動量の確保や技能の習得も大切 but 学習規律も重要 本校では, 授業間の休み時間にランニング めあての確認 ( 学習ノートへのめあて記入 ) 活動場所の設定や思考を促す学習活動の工夫により, 生徒が できるようになって嬉しい 頑張ってよかった ちゃんと評価されている! という できた わかった という成功体験をより味わわせることができた 自己肯定感, 自己有用感の向上 評価規準を生徒に示すことにより 態度形成にも大きく役立つ そのためにも具体的な説明が必要であり 単元構造図の活用がより 身につける学習内容 = 評価規準このことを理解できると, 自主的 意欲的な活動につながる 体育の授業が大好き運動が大好き な子どもを育つ!