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タイトル : 医薬品開発プロジェクトがブレークスルー セラピーに指定された際の CMC に 関する考察 著者 : Earl S. Dye, PhD, John Groskoph, Brian Kelley, George Millili, PhD, Moheb Nasr, PhD, Christopher J. Potter, PhD, Eric Thostesen, and Hans Vermeersch (Pharmaceutical Engineering, 2015, Vol 35, No1, 1-11) 翻訳 : 京都大学大学院医学研究科薬剤疫学分野大学院生山田修平 (Shuhei YAMADA) 本稿では 米国食品医薬品局安全性及び革新法 (Food and Drug Administration Safety and Innovation Act; FDASIA) 1 や 重篤な症状のための迅速プログラムに関する FDA ガイダンス 2 により 開発プロジェクトがブレークスルー セラピーに指定された際の プロジェクトの一部である化学 製造および管理 (Chemistry, Manufacturing and Control; CMC) への影響について議論する ブレークスルー セラピーに指定されると 臨床開発プログラムは加速され 従来の開発プログラムよりも 2 年以上短くなるだろう 加速されうる臨床開発のタイムラインにおいて 臨床開発プログラムが終了する時間内に 承認や患者への供給に必要な従来のすべての CMC 研究を完了するのは困難であろう たとえば 市販製品のリアルタイムの安定性情報が減り 開発研究での安定性情報の強化を必要とすることがある 実生産スケールでの製造経験が限定的となる傾向があり このことが ライフサイクルにおけるバリデーションの原則に影響を与えうる 臨床試験を目的とした製剤を 臨床試験用の製造施設から初期の市販製品として市場に出し 承認後速やかに市販用製剤と市販用製造施設へ転換する検討を必要とすることがある 製剤や製造工程の移管の準備はできるが 市販用製造施設が利用できないか 準備できていない 規格判定基準を導くデータセットが限定的である 実際の CMC 開発プログラムをもとにした仮想のケース スタディーを用いて FDA との議論のもととなる一連のシナリオを作る これらケース スタディーは 上記に挙げたような起こりえる CMC の課題の原因を 開発プログラム全体から浮き彫りにする 規制当局との議論では 患者へ速やかに重要な製品を届けることによる利益と 申請時に従来の CMC データが不足するリスクとのバランスをとるべきである 申請時 従来の CMC デー 1

タの不足に対処するための 以下による規制的アプローチを提案する より柔軟な申請プロセスの採用; 実生産スケールの経験に代わる開発段階のデータやリスク評価の活用 承認後のライフサイクルマネージメントプランの推進 新薬承認申請(New Drug Application; NDA) において より多くの同等性 / 同質性評価プロトコールを含むこと 規制当局とより多くの対話の機会を持つこと ブレークスルー セラピーの CMC 開発中の スポンサーと FDA との対話促進についても考察する はじめに 2012 年 7 月 9 日 米国において食品医薬品局安全性及び革新法 (Food and Drug Administration Safety and Innovation Act; FDASIA) が制定された この法律は 臨床試験の早期段階において重篤または致命的な疾患に対する既存の治療を上回る重要な改善が認められた有望な新薬に対する ブレークスルー セラピー指定を創設した ブレークスルー セラピー指定は 重篤な疾患や症状を治療することを目的とした新薬の開発と市販承認を加速させるために FDA に別枠の規制プロセスを創設した FDA におけるその他の規制プロセスには 迅速承認 (accelerated approval) ファストトラック (fast track) 優先審査 (priority review) がある 表 A に各分類の主な基準と医薬品開発と審査への影響を示した 2 FDA のブレークスルー セラピーの流れは スポンサーが規制当局と密接に関わり 従来の医薬品開発の段階を短縮もしくは結合することにより 既存の承認過程を加速することに焦点を置いている その他の規制当局も 有望な新薬の患者へのアクセスを加速させるプログラムを検討している 2014 年 3 月 欧州医薬品庁 (the European Medicines Agency; EMA) は EU の法律の枠内の審査過程を利用した adaptive licensing pilot program 3 を公表した 2014 年 4 月 英国の規制当局である医薬品 医療製品規制庁 (the Medicines and Healthcare products Regulatory Agency; MHRA) は アンメット メディカル ニーズに対する未承認薬のアクセスをサポートする early access to medicines scheme 4 を公表した 日本の規制当局である厚生労働省は 有望な新薬を患者ができるだけ早く利用できるようにするための迅速審査制度の導入を検討している 本稿では 米国 FDA のブレークスルー セラピープログラムに焦点をあて 臨床開発の早期にブレークスルー セラピーに指定されることの影響や 迅速な臨床開発のタイムラインに対処するための迅速な CMC 開発活動の課題について考察する ブレークスルー セラピー指定における迅速な臨床および安全性のプログラムは 従来 2

の臨床開発プログラムよりも 2 年以上早い販売承認申請をもたらす ブレークスルー セラピーに指定された適応症への承認時に十分に信頼できる製品を患者に提供することが可能な製剤や製造工程の開発が求められる CMC 開発プログラムの審査は すべての従来の CMC 研究とそのデータセットが完了する前に行われることになるだろう このことは 確実な活動を促進し 承認時に患者へ質のよい製剤を適切に供給することを保証するための十分なデータと情報を提供するために リスクに基づいて時間や資源 原材料に優先順位をつけることを必要とするだろう 本稿では 4 つのケース スタディーを通じて 2 つの異なるブレークスルー セラピーの臨床開発プログラムのシナリオが 低分子と高分子医薬品それぞれの CMC 開発プログラムにどのように影響するかを例示する これらのシナリオを通じて CMC の課題を明らかにし 進展するための提案を議論する ケース スタディーについて - 開発プロジェクトの背景ここでは 臨床開発プログラムから CMC 開発の成果への影響を調査することで ハイレベルな開発プロジェクトの立案について議論する 医薬品開発の視点や ブレークスルー セラピーに指定された現在のプロジェクトの産業界での検討から 多くのシナリオが存在する 議論を簡潔にするために ブレークスルー セラピーの指定を受けるタイミングにもとづき 起こりうる 2 つの臨床開発シナリオを議論する CMC がクリティカルパスにある場合 CMC 開発の重要な課題につながる臨床開発の比較的早い段階のどの時点でブレークスルー セラピー指定が与えられるかによって これらのシナリオは選択される これら 2 つのシナリオは 重篤な疾患または症状に対する革新的な臨床的成果が以下で観察されたときに作られる 患者に対する第 Ⅰ 相試験 第 Ⅱ 相試験 図 1 では 重篤な疾患または症状に対するよくコントロールされた試験が 革新的な第 Ⅰ 相試験データに基づくブレークスルー セラピー指定の申請につながっている これらの試験は ボランティアよりも悪性腫瘍の治療適応があるような患者で実施され また FDA ガイダンスが求めるような理想的な比較試験ではない Milestone 1 において ブレークスルー セラピー指定の申請につながる革新的な臨床データが得られている 第 Ⅰ 相試験の終了時 (end of phase1; EOP1) の面談において ブレークスルー セラピーに指定され 第 Ⅱ/Ⅲ 相臨床比較試験が許可される 第 Ⅱ/Ⅲ 相試験の良い結果を想定して 販売承認申請が行われる そして販売承認申請が行われるころに 臨床使用の適応拡大のためのプログラムが開始されることがあり このことは製品選択と供給に関する CMC 開発チームの新たな課題となるだろう 3

この開発シナリオは 革新的な第 Ⅰ 相試験の臨床データが得られ (Milestone 1) 販売承認申請が行われてから およそ 36 ヶ月間と見込まれる これに対し従来の開発プログラムでは 良好な第 Ⅱ 相試験の臨床データが得られてから NDA 申請までに約 36 か月かかると想定される 図 2 では 重篤な疾患または症状に対する革新的な臨床データが よくコントロールされた第 Ⅱ 相試験の中間の情報から明らかになり このことは企業がブレークスルー セラピー指定の申請を検討することをサポートする (Milestone 1) このケースでは 革新的な臨床データの確定が正式なブレークスルー セラピー指定につながり (Milestone 2) この第 Ⅱ 相試験データに基づき 6~9 ヶ月後の販売承認申請につながるだろう ブレークスルー セラピーの NDA 申請の際に 検証的第 Ⅲ 相試験や 適応拡大のための臨床研究が開始されることがある このケースにおける Milestone 3 で CMC チームは FDA と CMC の課題について再検討する このケースでは 良好なシグナルがえられてから販売承認申請まで約 18 ヶ月である CMC ケース スタディーと柔軟な対応の可能性に関する FDA との議論について 4 つのケース スタディーは 以下に示すような 臨床開発プログラムが加速されたとき に直面する CMC のさまざまな課題を示している ケース スタディー 1: 低分子の市販用製剤の迅速な開発 販売承認申請および承認時に ICH に準拠した安定性データがない 標準的な生物学的同等性試験がない ケース スタディー 2: 高分子医薬品の迅速な開発 販売承認申請時に ICH に準拠した安定性パッケージや 原薬や製剤のプロセス稼動性能適格性評価 (process performance qualification; PPQ) のデータがない ケース スタディー 3: 低分子医薬品の迅速な開発 臨床試験用製造施設からの臨床試験用製剤の上市や 市販用製造施設から供給された市販用製剤への急速な変更を必要とする ケース スタディー 4: 高分子医薬品の迅速な開発 臨床試験用製造施設からの上市や 市販用製造施設での製造への急速な変更を必要とする すべてのケースで 患者が許容できる最適な製剤の入手可能性を提案している 全てのシナリオに共通することは 規制の柔軟化を要求していることである 受け入れ可能な 妥当性をもったアプローチに関する提案とともに 関心のあるトピックを議論する すべての議論において 従来の申請と比較して情報のレベルが異なることのリスクや 患者に対する製品供給のリスクをどのように軽減するかについて 明白でなければいけない 規制当局に対し このリスク軽減策について完全に説明し 十分な根拠を示さなければならない 4

その他にも CMC に関する課題があげられる たとえば 限られたデータから規格判定基準を設定することや 供給が容易な原材料を用いた原薬の合成経路への変更などである これらの課題は 今回のケース スタディでは示されていない 迅速な臨床開発プログラムにおいて 短縮された結果の作業時間はおよそ 18~24 ヶ月であることに注意する必要がある このことは CMC の承認に必要なすべての活動を完了するだけでなく 承認後すぐに市販製品を上市し維持するために必要な活動を完了するための時間が 18~24 ヶ月以内であることを意味している 例を簡潔にして 主な CMC の課題に焦点を絞るために CMC 開発に関する以下のような一般的な仮定を設定した 第 Ⅰ 相のケース スタディーにおいて CMC 開発活動の フロントローディング はない フロントローティング は アンメット メディカル ニーズの追求を最終目的とした場合に 予測されるビジネスリスクであると考えられるかもしれないが プログラムのかなり後期に生じる臨床での結果に関してかなり不確実である 大企業は 資金を供給するための複数のプロジェクトや資源があり それゆえ優先順位をつけるが 小さな企業は投資家のサポートを得ることは難しい 第 Ⅱ 相のケース スタディーにおいては 図 2 における Milestone 1 と 2 の間のように FDA がブレークスルー セラピーに指定する前に 企業はブレークスルー セラピーの候補であると自身で判断することが想定されるため いくつかのフロントローディングが想定される 低分子の原薬の合成は 比較的容易である 低分子の場合 製剤はタブレットである 高分子の場合 モノクローナル抗体技術のプラットフォームを使用する 原薬と製剤は安定である ケース スタディー 1 - 低分子 第 Ⅰ 相エントリー 前述の一般的な仮定に加えて このケース スタディーでの仮定は 第 Ⅰ 相試験においては シンプルな製剤を使用する 例 : 混合粉末のカプセル充填 生物薬剤学分類システム(Biopharmaceutics Classification System; BCS)class1 製剤 ( 高い溶解度 高い膜透過性 ) 第 Ⅱ/Ⅲ 相試験開始前に クオリティ バイ デザイン (Quality by Design; QbD) アプローチを用いた市販用製剤の開発を開始するための時間と原薬の入手可能性が限られている しかし QbD アプローチが使われる 臨床試験用製剤の製造のための十分な原薬の入手の可能性は律速であり その量により市販用製剤の開発研究を小規模に制限する 5

図 3 に 第 Ⅰ 相臨床試験のあとにブレークスルー セラピー指定となった低分子医薬品の CMC 開発プランの概要を示した 以下の CMC 開発プランでは 臨床プログラムが上の行に示され 期間や活動は図 1 と 2 から引用した 原薬の開発活動はオレンジに 製剤の開発活動はグリーンに 安定性試験は黄色で示されている このプランで上げられる CMC の課題は 時間と原薬の不足のため 第 Ⅱ/Ⅲ 相試験では 頑健とはいえない製剤が使われる 市販供給のための製剤変更が求められる 生物学的利用能試験は パイロットスケールで製造された市販用製剤を用いて行われる 市販用製剤に関するデータセットが少ない 例: 安定性データ 製剤の PPQ が 段階的に行われ 承認後に完了する これらの課題は 迅速な CMC 開発プログラムの早い段階 図 3 における 3~6 ヶ月の間で 第 Ⅱ/Ⅲ 相試験のために臨床試験用の新医薬品 (Investigational New Drug; IND) を申請するときに FDA と議論するために明らかになるだろう 柔軟な対応の可能性に関する FDA との議論について関心のあるトピック - 製剤開発と生物学的同等性患者に供給するために 頑健な製剤は 主要な第 Ⅱ/Ⅲ 相臨床試験で使用された製剤との生物学的同等性が求められる 検討事項に対する提案製剤開発のアプローチ 特に臨床開発戦略に沿った第 Ⅱ/Ⅲ 相の IND 申請の一部として 市販用製剤の開発をするための QbD アプローチを提示する 2 段階で生物学的同等性を示すことを提案する 1. まず最初に 10 分の 1 スケールでの市販用製剤の 申請時の第 Ⅱ/Ⅲ 相製剤のデータとの生物学的同等性を示す 2. 続いて FDA ガイダンス (Waiver of In Vivo Bioavailability and Bioequivalence Studies for Immediate Release Solid Oral Dosage Forms Based on a Biopharmaceutics Classification System 5 や SUPAC-IR ガイダンス 6 ) で示された PPQ バッチの in vitro における溶出性比較試験を行う プロセスバリデーションライフサイクル (Process Validation Lifecycle) に関する FDA ガイダンスに沿って 承認後に稼動性能適格性評価 (Performance Qualification; PQ) を完了するコミットメントを CMC セクションで示し スケールアップの結果と初期の PQ バッチの特性を提出する 6

補足情報この BSC class1 製剤の実生産スケールの製剤は 第 Ⅱ/Ⅲ 相試験で使用された製剤と生物学的同等性を有しているという良い保証がある パイロットスケールの市販用製剤と第 Ⅱ/Ⅲ 相製剤と比較した生物学的同等性データは NDA の際に提供され 審査の間に 実生産スケールとパイロットスケールの市販用製剤のバッチの in vitro 同等性を示す追加のデータが提供される ブレークスルー セラピー承認時に患者へ製品を提供する利益を考えれば このアプローチはリスクが少ないと考えられる 関心のあるトピック 有効期間 製剤少なくとも初期は 生産のための長いリードタイムと潜在的に低い需要を考慮すると サプライチェーンにおいて 低分子の製剤の患者の入手可能性を維持するために 少なくとも 18 ヶ月の有効期間が必要とされる 検討事項に対する提案審査の間に追加のデータを提供するコミットメントや通常の承認後のコミットメントを想定し 実験室スケールの 3 バッチの 12 ヶ月データや 市販用に包装された市販製品のパイロットスケールの 3 バッチの 6 ヶ月データとともに CMC セクションの提出を開始する 補足データ製品が明らかな分解や変性はしづらいことは 開発段階の苛酷試験や加速試験で示めされ 実験室スケールの 12 ヶ月データで確認された 製剤の化学的 物理的 主観的安定性に影響がないことを示す苛酷試験や加速試験のデータもある 提案されたように段階的な申請を想定すると 例えば実験室スケールの 18 ヶ月データや パイロットスケールの 9 ヶ月または 12 ヶ月データなど さらなるデータが審査中に提供されるであろう ICH-Q1A(R2) 安定性試験ガイドライン 7 とは異なるが 実生産スケールの安定性データによって 計画した承認の際またはその直後に このアプローチが低リスクであることが確認されるだろう 関心のあるトピック 段階的な PPQ 予測される臨床での承認の時点で 高分子の製剤の従来の PPQ は完了していないだろう 検討事項に対する提案 最初の PQ バッチからの原材料を用いて 承認後すみやかに患者に製剤を供給する 補足データ 7

このアプローチは FDA のプロセスバリデーション ガイダンス 8 で示された PPQ バッチのコンカレント リリースのアプローチを用いることよってサポートされる 患者への利益と このバッチとその後のバッチが PPQ プロトコールに従うという保証を前提とすれば 品質の保たれた製剤が患者に供給されることは保証される さらには PPQ プロトコールを審査中に審査官への提供することが提案されるだろう 以上より このアプローチは低リスクと考えられる ケース スタディ 2 - 高分子 第 Ⅰ 相エントリー 前述の一般的な仮定に加えて このケース スタディーでの仮定は 第 Ⅰ 相において溶液製剤であること 第 Ⅱ/Ⅲ 相臨床試験の開始前に 原薬製造工程の開発とスケールアップをする時間が限られていること 製品の収率と原価を優先した工程信頼性に焦点をあて 原薬製造工程の最適化とスケールアップのための研究をすること 第 Ⅰ 相臨床試験のあとにブレークスルー セラピー指定を受けた高分子医薬品の CMC 開 発の概要を図 4 に示す このプランにおける CMC の課題は以下のとおりである 計画された販売承認申請を行う時点では 原薬と製剤の安定性データは ICH-Q5C 生物薬品 ( バイオテクノロジー応用製品 / 生物起源由来製品 ) の安定性試験 9 を満たしていない 計画された販売承認申請を行う時点では 原薬および製剤の PPQ は完了していない 患者へ PPQ バッチから供給することが提案される これらの課題は 迅速な CMC 開発プログラムの早い段階 第 Ⅱ/Ⅲ 相試験に対する IND を申請するとき 図 4 における約 3~6 ヶ月の間で FDA との議論のために明らかにされ るだろう 柔軟な対応の可能性に関する FDA との議論について関心のあるトピック 保管期間 原薬無駄なく 製剤の多数のバッチを合成するのに十分な時間を提供するために 高分子の原薬には 少なくとも 12 ヶ月の保管期間が求められる より短い保管期間は NDA で正当化され提案された原薬のバッチサイズから 許容できないレベルの無駄を生むか 再検査を行う資源の増加をもたらすだろう 8

検討事項に対する提案審査の間に 6 ヶ月データを提供することや 事前合意したプロトコールに沿ったさらなる実生産スケールのデータを供給することのコミットメントとともに生物製剤承認申請 (Biologic License Application; BLA) で提供された実生産スケールの原薬の 1 バッチから得られた 3 ヶ月データに基づき 12 ヶ月の実生産スケール製剤の保管期間を提案する 補足データこの提案は 審査期間中の追加データ提供のオプション ( 例 :24 ヶ月 ) とともに パイロット / 臨床試験用バッチの 18 ヶ月データによってサポートされる 同じプラットフォーム技術を用いて製造された同様のモノクローナル抗体の他の先行試験から スケールによる安定性の違いはないことに関する追加の保証があり エビデンスは安定した製剤であることをサポートする ICH-Q5C 生物薬品( バイオテクノロジー応用製品 / 生物起源由来製品 ) の安定性試験 9 とは異なってはいるが この製剤の良好な安定性パフォーマンスを前提とすると これは低リスクなアプローチであると考えられる 関心のあるトピック 有効期間 製剤少なくとも初期は 生産のための長いリードタイムと潜在的に低い需要を考慮すると サプライチェーンにおいて製剤の患者の入手可能性を維持するために 少なくとも 18 ヶ月の有効期限が必要とされる 検討事項に対する提案審査期間中に 24 ヶ月データを提供するオプションとともに 市販用パックで提供された安定した製剤のパイロット ( 臨床試験用 ) スケールの 2 バッチからの 18 ヶ月のリアルタイムのデータに基づき 初期の使用期限を 18 ヶ月とすることを提案する 実生産スケールの安定性試験は 事前合意したプロトコールにそって実行される PPQ バッチからの 1 ヶ月データは 審査期間中の後半で利用可能になるだろう 実生産スケールの安定性試験のプロトコールにおいて 期間 検査 容器のサイズをマトリックスで表すことを提案する 補足データこれは 無菌充填された溶解製剤のスケール ( 特に充填時間 ) や 市販用パックの用量が安定性に影響しないことを示す 広範囲な開発研究の結果 ( たとえば 製造のスケール 市販用パックの用量を独立変数として調べる加速試験や苛酷試験 ) によりサポートされる 実生産スケールでの少なくとも一つの技術移転バッチ (3 ヶ月 ) からの安定性データは BLA 申請時に利用可能である 製剤の良好な安定性パフォーマンスとプロトコールに従うスポンサーのコミットメントを前提とすれば ICH-Q5C 生物薬品( バイオテクノロジー応用製品 / 生物起源由来製品 ) の安定性試験 9 とは異なるが これは低リスクなアプロー 9

チであると考えられる 補足 :ISPE は 製品を上市するための使用期限の設定をサポートするために 早期の安定性プログラムの設計と文書化に関するガイダンス / ベストプラクティスを提供する機会をみている 関心のあるトピック PPQ 臨床での承認は 原薬と製剤の PPQ 研究の実行と重なり 高分子医薬品の販売承認申請のために BLA 申請時に結果が求められている 製品は 製造において長いリードタイムを持っている 製造のタイミングは 臨床での承認につづいてできるだけ早く上市供給するために 利用可能な材料を得るときであり 市販製品として PPQ バッチを使用することが必要となるだろう 検討事項に対する提案 PPQ 情報の提供に関連した 2 つの提案がある 1. 審査期間中に 場合によっては製品の出荷と同時に 入手可能になったデータを提供するコミットメントとともに PPQ プロトコールに沿った入手可能なスケールアップ 同等性 / 同質性 特性のデータを提出すること これは データがプロトコールの要求をすべて満たすと仮定する 2. 原薬の同等性 / 同質性評価のプロトコールとデータ そして BLA における原薬と製剤の PPQ プロトコールを提出すること 審査期間中に原薬に関するすべてのデータを提供し そのデータは完了していなければならない 製剤に関しては 審査期間中にすべての入手可能なデータを提供すること 患者に提供するために PPQ プロトコール基準に従った PPQ バッチからの材料を製剤に用いることを提案する 補足情報適合性がすでに確立されていることを考慮すると 先に述べたように段階的に PPQ データを提供することは 承認前の審査に最大限の情報を提供する PPQ は 同等性 / 同質性評価のプログラムの一部として行われた多くの繰り返された研究を含み それゆえ PPQ プロトコールの基準に従わないリスクは低い プラットフォーム技術が使われ 実生産スケールバッチと臨床試験用バッチを比較した同等性 / 同質性試験が完了し許容でき 製剤の PPQ プロトコールの提出をサポートするための原薬と製剤の情報の良好なパッケージが BLA に含まれていることを前提して プロト 10

コールに従った PPQ バッチからの製剤を患者に供給することを提案する この提案は FDA のプロセスバリデーション ガイダンス 8 で示された PPQ バッチのコンカレント リリースのアプローチに則している PPQ 適格性レポートを 完成時 もし求められれば承認後に 規制当局へ提供することを提案する これは 低リスクなアプローチと考えられる ケース スタディ 3 - 低分子 第 Ⅱ 相エントリー 前述の一般的な仮定に加えて このケース スタディーでの仮定は 第 Ⅱ 相製剤は目的にあっているが 頑健性や商業的プレゼンテーションに関しては最適化されていない ( 第 Ⅱ 相試験は盲検試験である ) 患者にとって 改善された製剤のできるだけ早い導入が強く必要とされる 原薬の合成経路は 第 Ⅲ 相試験や毒性試験への供給に適している BCS class1 高溶解度 高膜透過性 第 Ⅱ 相臨床試験のあとにブレークスルー セラピーに指定された 低分子医薬品の CMC 開発プランの概要を図 5 に示す このプランから上がった CMC の課題は以下のとおりである パイロット/ 臨床試験用製造施設から 目的にあった第 Ⅱ 相製剤を上市することを提案する 販売承認申請時に パイロット/ 臨床試験用製造施設からの第 Ⅱ 相製剤の安定性データセットが少ない 第 Ⅱ 相製剤の承認の前に 製剤と製造施設変更の承認申請をする 販売承認申請時に 市販用製造施設からの市販用製剤の安定性データセットが少ない このような CMC の課題は 迅速プログラムが開始されたときに明らかになり ブレークスルー セラピー指定の同意が得られた図 2 における Milestone 2 のとき またはその直後に FDA と議論されるだろう 柔軟な対応の可能性に関する FDA との議論について議論のトピック 製剤と製造施設の変更臨床試験用製剤とその製造施設は 患者への長期間にわたる供給には向いていない 検討事項に対する提案臨床試験用製剤は 盲検試験である第 Ⅱ 相臨床試験の目的にあっている 患者への長期 11

間の市販供給にはむいていない 患者のニーズにこたえるために 予定される臨床での承認の際に 臨床試験用製造施設から第 Ⅱ 相試験用製剤を供給することを提案する 第 Ⅱ 相製剤承認前に提出された販売承認申請とともに 患者のニーズにこたえるために改良された製剤への変更や 市販用製造施設からの供給に変更することを提案する 補足情報第 Ⅱ 相試験中の患者や医療従事者からのフィードバックは タブレット剤形が大きすぎることであった 患者集団が治療を意図していることを考慮すると 患者が受け入れやすいように小さな剤形に変更することが強く望まれている 予測される臨床での承認の時には 市販用製剤の開発はしきれておらず また市販用製剤の初期の上市を許可するための第 Ⅱ 相試験製剤との生物学的同等性は示されていない 議論のトピック 第 Ⅱ 相製剤の販売承認申請における非標準的な安定性パッケージ少なくとも初期は 生産のための長いリードタイムと潜在的に低い需要を考慮すると サプライチェーンにおいて製剤の患者の入手可能性を維持するために 少なくとも 18 ヶ月の有効期間が必要とされる 原薬から製剤へのスムーズな進展をサポートするために 少なくとも 12 ヶ月でのリテスト期日が求められる 臨床試験用製造施設で製造された第 Ⅱ 相製剤の販売承認申請を行う際の 安定性パッケージは ICH-Q1A(Rs) に準拠していない 検討事項に対する提案第 Ⅱ 相製剤の販売承認申請を行う際に 以下の安定性データを提案する 初期の合成経路で製造された 1 つ以上のバッチからの 12 ヶ月データでサポートされた 市販用合成経路を用いてパイロットスケールで製造された原薬の 3 バッチの 3 ヶ月データ 市販用パックに包装された製剤の 1 バッチの 12 ヶ月データ 市販用パックに包装された初期の合成経路で製造された製剤の 3 バッチからの 6 ヶ月データ 審査中に入手可能な市販用パックに包装され 最終段階の合成経路の原料を用いて製造された製剤の 3 バッチの 3 ヶ月データ 補足情報臨床試験用パックに包装された製剤の 12 ヶ月以上のデータや 最終合成経路の原薬を用いた 3 ヶ月データや 以前の経路からの 6 ヶ月データにもとづいて 市販パックに包装さ 12

れた第 Ⅱ 相製剤は 18 ヶ月の有効期間が提案されている 原薬および製剤の加速試験データは 原薬の合成経路によって安定性に差がないことを示している 開発研究も 臨床試験用パックと市販用パックに集められた製剤の間で 安定性に差がないことを示した もしデータが承認されたプロトコールの範囲外で作られたものであった場合 規制当局はすみやかに報告を受ける ICH-Q1A(R2) 安定性試験ガイドライン 8 とは異なるが かなりの量のこの安定した製剤のデータを前提とすれば 提案された有効期間と全体のアプローチは 低リスクと考えられる 初期の合成経路からえられた少なくとも 12 ヶ月の十分なデータと パイロットスケールで製造された原薬の 3 バッチからの良い安定性を示す安定した原薬の 3 ヶ月の加速試験データによってサポートされた 原薬に対する 12 ヶ月のリテスト期日が提案されている ICH Q1A(R2) 安定性試験ガイドライン 8 とは異なるが 安定した原薬にとって 提案されたリテスト期日は低リスクであると考えられる 議論のトピック - 第 Ⅱ 相製剤が承認される前の新製剤の販売承認申請第 Ⅱ 相製剤の審査の間 ( たとえば 予測される承認の約 1 ヶ月前 ) 上記で示した情報にもとづき新製剤や施設の申請をすることが提案され この申請の審査がブレークスルー セラピーのタイムラインに属することも提案されている 利益は 患者への質のよい製剤のより確かな供給であろう 検討事項に対する提案この標準的ではない規制プロセスは さらなる議論や規制当局からの事前同意を求めるだろう 多くの論点があるが 例として製剤の安定性と生物学的利用能について選ぶと 市販用製剤の販売承認申請をする際に 次のデータを利用可能とすべきである パイロットスケールで製造された原材料を用いた新製剤と第 Ⅱ 相製剤を比較した生物学的利用能試験のデータ 製剤のパイロットスケールバッチの 3 ヶ月の安定性データと新製剤の審査の間に利用可能な 6 ヶ月データ 補足情報生物学的同等性を 2 段階で示すことが提案されている 1. まず最初に 10 分の 1 スケールでの市販用製剤の 申請時の第 Ⅲ 相製剤のデータとの生物学的同等性を示す 2. その後 FDA ガイダンス (Waiver of In Vivo Bioavailability and Bioequivalence Studies for Immediate Release Solid Oral Dosage Forms Based on a 13

Biopharmaceutics Classification System 5 SUPAC-IR ガイダンス 6 ) による 基準にあ った PPQ バッチの in vitro における溶出性比較試験を行う 製剤の 18 ヶ月の有効期間は以下によって正当化されるだろう プレ フォーミュレーション研究からの広範囲な開発データ 市販用製剤と第 Ⅱ 相製剤を比較した苛酷試験および加速試験データ 市販用製剤の製造のスケールの違いを比較した苛酷試験および加速試験データ パイロットスケール製剤のリアルタイムのデータ ICH Q1A(R2) 安定性試験ガイドライン 7 とは異なるが 安定した原薬にとって 提案されたリテスト期日は低リスクであると考えられる 特にもし 実生産スケールの少なくとも 1 つのバッチからの製剤の 1 または 3 ヶ月の安定性が 審査中に提供された場合 安定性パッケージは 簡略承認申請 (Abbreviated New Drug Application; ANDA) と同様である ケース スタディ 4 - 高分子 第 Ⅱ 相エントリー前述の一般的な仮定に加えて このケース スタディーでの仮定は 第 Ⅱ 相の溶解製剤は 申請のために 市販用量として計画される 申請ができるまでの時間を製造工程適正化試験に集中させる 予測される商業的需要にこたえるために速やかなスケールアップが求められる 第 Ⅱ 相臨床試験のあとにブレークスルー セラピーに指定された 高分子医薬品の CMC 開発プランの概要を図 6 に示す 予測される臨床での承認のタイムスケールに合わせるために パイロットスケールの原薬および製剤製造施設からの上市が提案され このことは 見積もられた初期の市場需要に見合う想定される しかし 見積もられた需要はできるだけ速いスケールアップを求める 市販用製造施設の承認が遅れることで 在庫切れや患者への割り当て制になるかもしれない 患者のニーズや 製剤の製造工程開発とスケールアップをサポートする専門技術や資源の利用可能性を考慮すると パイロットスケールの製造の適格性試験や スケールアップ試験 実生産スケールの製造の適格性試験への資源の割り当てのバランスをとる必要がある このような CMC の課題は 迅速プログラムが開始されたときに明らかになり ブレークスルー セラピー指定の同意が得られた図 2 における Milestone 2 のとき またはその直後に FDA と議論されるだろう 14

柔軟な対応の可能性に関する FDA との議論について議論のトピック 製造施設の変更 パイロットスケール PPQ 研究と商業的スケールアップと PPQ 研究とのバランスこの CMC シナリオは BLA の従来の申請とはかなり異なっており 規制当局との重要な議論を必要とするだろう 従来のアプローチとの大きな違いは以下である パイロットスケールからの限定的な適格性データをもって申請すること 検討事項に対する提案パイロットスケールの製造のための BLA 申請をサポートする PPQ 研究のプロトコールや研究デザインは 一回以上の規制当局との議論や同意を必要とする これらの議論の間 実生産スケールの製造の PPQ をサポートする研究や 実生産スケールの製造のための予定される販売承認申請を行うタイミングの同意を得ることが適切であろう 実生産スケールの申請日は 図 6 では示されていないが 患者の視点から見ると できるだけ早くすべきである 補足情報議論のための情報は プラットフォーム技術からの既存の知識を活用したリスクベースアプローチや 原薬のために行われた開発研究を用いて明らかにされる 実生産スケールの PPQ のための研究は 並行するパイロットスケールの PPQ 研究から情報を得る 論点のトピック 求められる有効期間たとえば 初期のバッチの 12 ヶ月以上のデータや 計画された初期の供給スケールの 3 バッチの 6 ヶ月データなど パイロットスケールでの原薬の安定性データの量は十分でなければならない 予定された初期の供給スケールの 3 バッチの少なくとも 6 ヶ月のデータがあることを前提とすると パイロットスケールの製剤の安定性データの量も十分でなければならない たとえば 18 ヶ月のように 6 ヶ月以上の有効期間は患者への供給を維持するために求められる ( 有効期間の延長が承認されたあとのリラベリングは実際的ではない ) 結論もし開発プロジェクトが 重篤な疾患や症状に対し革新的な臨床データをもたらした場合 企業または FDA は ブレークスルー セラピー指定への正式な申請を要求するだろう もし開発プロジェクトチームが これには可能性があると考えた場合 CMC 開発とのかかわりは重要である たとえば 15

ブレークスルー セラピーへの登録は すべての従来の CMC 研究を完了するのに十分な時間を与えないだろう 申請のためのブレークスルー セラピーの CMC 作業は ブレークスルー セラピーの NDA 申請をサポートするデータや情報を提供するための時間 資源 原材料に優先順位をつけるために また患者に質のよい製品の提供を保証するために リスクベースド アプローチを使用するべきである CMC が完了しないという想定を前提とすると 承認後の活動がより多くなりそうである たとえば -より多くの安定性データ - 追加の確証的バリデーション試験 ( 工程の頑健性 ) - 施設や製造規模 原材料供給者の変更 - 原薬合成経路の変更 - 生物学的利用能試験をともなった製剤への変更 結論として 上記すべてのケース スタディーでは 質を保証してエキサイティングな新薬を患者に提供するための より柔軟な規制アプローチを用いた申請について FDA と議論することの十分な妥当性が認められた CMC 開発チームが限られた時間内で 承認をえて 患者に質のよい製剤を提供することを確実にする対応ができるような回答をえるために FDA との対話は早期に 迅速に 有効に行われるべきである FDA との面談の約 3 ヶ月前に要約した文書を提供し 面談後のおよそ 1 ヶ月で正式な回答を受け取る現行のプロセスは NDA や BLA 申請の戦略に良い影響を与えるような対処できる回答を確実にするには不十分であるといわれている たとえば以下を用いるなど 迅速な承認のための FDA とのよりよい対話が取り入れていくべきである 非公式な電話の会話 スポンサーにはまだ 会話の結論を記録する責任がある IND の改訂 ブレークスルー セラピー指定は 重篤な疾患や症状に対し既存の治療を上回る重要な改善を示す質のよい製剤の承認と供給をサポートする十分な情報を確保するために 企業や FDA がリスクベースド アプローチを用いて対処しなければならない多くの CMC の課題をもたらしている 本文以上 16

< 図表の説明 > 表 A 迅速承認の現行プロセス図 1 第 Ⅰ 相試験データにもとづくブレークスルー セラピー指定図 2 第 Ⅱ 相試験データにもとづくブレークスルー セラピー指定図 3 低分子 第 Ⅰ 相エントリー図 4 高分子 第 Ⅰ 相エントリー図 5 低分子 第 Ⅱ 相エントリー図 6 高分子 第 Ⅱ 相エントリー 17