講演資料 ABS/ESC 機能を対象とした Simscape を用いたプラントモデリング手法の紹介 6 月 27 日 ( 金 )@ 御茶ノ水ソラシティカンファレンスセンター
目次 1 /29 1. JMAABでの取り組みと目的 2. ABS/ESC 機能を実現するブレーキ油圧回路の概要 3. ブレーキ油圧回路のSimscapeを用いたモデル化 4. 車両モデルへの接続 5. まとめ
2 /29 1.JMAAB での取り組みと目的
経緯 3 /29 JMAAB プラントモデリング WS(PMWS) 活動の目標 プラントモデルの再利用性向上および流通促進 JMAAB にて Simulink 版プラントモデルガイドラインを発行 27 R27a Simscape Release! 21 PMWS1 (MathWorks) モデリング手法検討 ツール紹介 PMWS2&3 211 MuPAD 数式処理 ワークフロー検討 Simscapeモデル増加 ( ヘルプ Matlab central) 212 213 Mupad の入門書を発行 PMWS4 Simscape を中心にモデリング検討 Mathworks のプラントモデリングに関わるツールについて トライアルや評価を実施してきた JMAAB:Japan MBD Automotive Advisory Board 日本の自動車業界の MATLAB プロダクトファミリユーザがモデルベース開発の推進させるためのユーザ会
PMWS4 活動の目的と概要 4 /29 PMWS4 の狙い Simscape を題材にモデリング手法を検討 活動目的 1)Simscape 活用検討 各社課題 / 悩み事の整理 基礎 + 新機能の紹介 ( 未経験者でも参加できるように ) 2) 物理モデリング手法の普及検討 流通 再利用の観点からの考え方 / 課題を整理 活動内容 1)Simscape language レクチャー 基礎 + 新機能の学習 カスタムコンポーネントの作成方法 2)Simscape 課題共有用モデルの作成トライ 実際にモデルを作りながらコツ/ 課題を共有 各社の取り組み (E.g.) Simple Vehicle model Battery model Power Window model Brake model Engine Cooling model etc.
5 /29 今回の Simscape モデルを作成する観点 以下の観点で課題共有用のモデルを作成した プラントモデリングのしやすさ ( 可視性 可読性 ) 制御モデルとの接続性 拡張性 そのプラントモデルは 車両開発の中で どのようなことに活用 / 応用できそうか 課題共有モデルの対象領域 (ABS/ESC) ブレーキ油圧モデル + 車両モデル ブレーキシステム
6 /29 プラントモデルを活用するワークフロー 同定 対象モデルの分析 対象モデルの立式 プラントモデル作成 制御設計と性能評価 検証 モデル化方針 モデル化範囲決め 対象についての運動方程式の立式 / 整理 プラントモデリング諸元 / 特性入力 制御設計 性能評価シミュレーション ( 数式的アプローチにて基本原理の解明 ) ( 部品ベースのモデリング ) MathWorks が提供するツール MuPAD Simscape TM Simulink /Stateflow
7 /29 2. ABS/ESC 機能を 実現するブレーキ油圧回路の概要
8 /29 ABS システム概要 ABS(Antilock Brake System) 急制動や滑りやすい路面で制動するとき 車輪のロックを防止することで車両の姿勢を安定させ ハンドルの効きを確保しようとする装置 ロックを回避するためにブレーキ圧を減圧
VSA とは ESC システム概要 ESC(Electronic Stablity Control) ESCは急なハンドル操作時や滑りやすい路面を走行中に車両の横滑りを感知すると 自動的に 車両の進行方向を保つように車両を制御 赤 :ESC 装着車青 :ESC 非装着車 早い回頭性のために外輪のブレーキを増圧 挙動を収束させるために内輪ブレーキを増圧 安定挙動 適切に個々の車輪にブレーキを使用したり エンジン出力を制御して車両の向きを修正して横滑りを防止する制御
1 /29 ブレーキ用油圧回路構成要素 Inlet バルブ Outlet バルブ キャリパー マスターシリンダ カットバルブ P ポンプモータ リザーバ サクションバルブ M マスターシリンダー カットバルブ Inlet バルブ Outlet バルブ サクションバルブ リザーバ ポンプ キャリパー 再現したい事象マスタシリンダ圧 /INLET/OUTLET バルブとキャリパ圧の関係 Inlet バルブ Outlet バルブ 閉開開閉 ABS 動作中 キャリパ圧 減圧 増圧 油圧回路中のバルブ開閉をコントロールすることにより ブレーキ液圧に対する増圧 減圧 保持を実現
システム構成 油圧回路の動作イメージ (1) 動作イメージ 通常制動時 ( システム非作動時 ) カットバルブ P サクションバルブ Inlet バルブ Outlet バルブ ポンプ M ポンプモータ リザーバ
システム構成 油圧回路の動作イメージ (2) ABS 制動時 ( 減圧作動 ) カットバルブ P ドライバのフットペダル動作 サクションバルブ Inlet バルブ Outlet バルブ ポンプ 逃がした液はポンプによって戻される M ポンプモータ リザーバ
システム構成 油圧回路の動作イメージ (3) ドライバのフットペダル動作なし ESC 作動時 ( 非ブレーキ中の増圧 ) カットバルブ P 調圧 余剰分はリリーフ サクションバルブ ポンプ ポンプモータ Inlet バルブ M 吸い込み Outlet バルブ リザーバ
14 /29 3. ブレーキ油圧回路の Simscape を用いたモデル化
15 /29 モデル対象範囲と入出力信号 1ABS 制御 : メイン ( 指示液圧計算 ) 2ABS 制御 : サブ ( 油圧バルブコントロール ) 3 ブレーキ油圧回路 (ABS/ESC アクチュエータ ) Simulink 増圧量 減圧量 Stateflow 入力 Simscape/ SimHydaulics 出力 車輪速 車速 マスター圧 車両モデル Inlet バルブ信号 Outlet バルブ信号 Motor 指示信号 各車輪へのキャリパー圧 ABS/ESC 制御からのバルブ信号を元に 車輪へのキャリパー圧まで計算
16 /29 モデル作成手法 Simscape/SimHydaulics ライブラリ 2-Way Directional Valve SimScape モデル < 概念図 > に照らし合わせて配置 バルブ要素 諸元設定画面 ヘルプ画面 バルブ要素 ( コンポーネント ) を表現 ヘルプ画面を見ながら コンポーネントの特性を押さえてモデリングを実施
17 /29 ブレーキ油圧モデルの構成 ABS/ESC アクチュエータ マスタシリンダ カットバルブ サクションバルブ < 概念図 > Inlet バルブ Outlet バルブ コントローラからのバルブ指示 リザーバ SimHydaulics のライブラリを用いることで概念図とほぼ同じ構成で 油圧モデルを作成することが可能
18 /29 油圧モデルを用いた計算結果 ABS 制動時動作 1.5 1 [ 閉 ] Inletバルブ指示.5.5.55.6.65.7.75.8.85.9.95 1 1.5 1.5 [ 開 ] Outlet バルブ指示 Outlet バルブ指示 増圧 カットバルブ.5.55.6.65.7.75.8.85.9.95 1 5 4 3 2 1 [bar] 減圧 キャリパー圧 キャリパ圧.5.55.6.65.7.75.8.85.9.95 1 [ 時間 ] Inlet/Outlet バルブの開閉動作にて キャリパ圧の減圧 / 保持 / 増圧を表現
19 /29 油圧モデルを用いた計算結果 ESC 時動作 ( 非ブレーキ中の増圧 ) 1.5 1.5 Pump.5 1 1.5 2 2.5 3 3.5 4 4.5 レギュレータバルブ指示 1.5 1.5.5 1 1.5 2 2.5 3 3.5 4 4.5 サクションバルブ指示 1.5 1.5.5 1 1.5 2 2.5 3 3.5 4 4.5 キャリパー圧 5 [ON] [ 閉 ] [ 開 ] [bar] ポンプ動作指示 カットバルブ指示 サクションバルブ指示 キャリパ圧 カットバルブ.5 1 1.5 2 2.5 3 3.5 4 4.5 ポンプを作動させ カット / サクションバルブの開閉動作にて キャリパ圧の増圧を表現
2 /29 5. 車両モデルへの接続
車両モデルに接続して表現したいこと アクセルを踏んで車両を加速させ コースティングになった状態での急ブレーキを踏んだ時に ABS 作動のシミュレーション 21 /29 加速定常走行急減速 ABS 作動時の制動距離はどのくらい? 車速 車輪速 車輪速変化幅はどのくらい? エンジン回転数 影響? 時間 車輪速変化のパワープラントへの影響は? 車両モデルに結合し ブレーキシステムのダイナミクスの影響を加味した車輪速 エンジントルク 回転数等を表現したい
22 /29 車両全体システムの構成 車輪速 車速 ブレーキペダル量 1ABS 制御 : メイン ( 指示液圧計算 ) Simulink 増圧量 減圧量 2ABS 制御 : サブ ( 油圧バルブコントロール ) 車両モデル Stateflow 接続 入力 Inlet バルブ信号 Outlet バルブ信号 Motor 指示信号 3 ブレーキ油圧回路 (ABS/ESC アクチュエータ ) Simscape/ SimHydaulics 接続 出力 各車輪へのキャリパー圧 既存の Simscape 車両モデルに 構築したブレーキシステムを接続
23 /29 コントローラ (Simulink) との接続 ABS 制御 : メイン ( 指示液圧計算 ) ABS 制御 : サブ ( 油圧バルブコントロール ) ブレーキ油圧モデル コンバータを介することで油圧モデル ( 物理ドメイン ) とコントローラを容易に接続 コントローラ (Simulink) との接続性は高い
車両モデル + ブレーキ油圧モデルの概観 24 /29 < ブレーキペダル指示 > ブレーキトルク エンジンモデル トランスミッション ECU < アクセルペダル指示 > トルクコンバータ トランスミッション < 車両挙動 >
車両モデルを用いた計算の一例 5 25 /29 アクセルを踏んで 車体を加速させコースティングの状態になった時に急ブレーキを踏んだ時の ABS 作動状態を表現する スロットル開度 ブレーキペダル 5 1 15 2 25 3 エンジントルク 2 1 5 1 15 2 25 3 ブレーキトルク (ABSシステム指示) 1 5 5 1 15 2 25 3 車体速度 車輪速度 2 1 5 1 15 2 25 3 Engine 回転数 2 1 5 1 15 2 25 3 トランスミッション回転数 2 1 スロットルペダル ブレーキペダル 23 秒後からブレーキペダルを踏む 5 1 15 2 25 3 拡大す る 1 ABS ブレーキ中計算結果 変動する 8 6 ブレーキトルク 4 2 ブレーキトルク (ABS システム指示 ) 2 21 22 23 24 25 26 27 28 29 3 12 1 8 6 車輪速 車速 4 2 2 15 ブレーキトルク指示 車体速度 車輪速度 2 21 22 23 24 25 26 27 28 29 3 1 エンジン回転数 5 Engine 回転数 ABSシステムの液圧指示する ABS 作動中の車輪速の変化 する エンジン回転数の変化する 2 21 22 23 24 25 26 27 28 29 3 走る 止まるに関する車両ダイナミクスをパワープラントの状態を含めて表現
26 /29 プラントモデル活用シーン
プラントモデルの活用シーン 開発の初期段階にて 基本諸元にて構成されたブレーキの影響を考慮したパワープラント系のダイナミクス ( エンジン回転数 トルク シフト位置 ) を表現することができれば 27 /29 ブレーキトルク (ABSシステム指示) 1 8 6 4 2 2 21 22 23 24 25 26 27 28 29 3 12 1 8 6 4 2 2 15 1 2 21 22 23 24 25 26 27 28 29 3 5 車体速度 / 車輪速度 車体速度 車輪速度 Engine 回転数 エンジン回転数 2 21 22 23 24 25 26 27 28 29 3 活用場面 ( 例 ) ABS/ESC 制御設計とメカブレーキの諸元設計 - ブレーキのメカ諸元を考慮した制御設計 効果確認 ESC/ エンジン制御コンセプトと役割分担の考え方 - シチュエーション別における制御協調 調停のすりあわせ 走る 止まる機能が必要な ACC などの ADAS 領域への応用 機能がまたがる部署間やメーカ / サプライヤ間での仕様決めする際の共通言語として活用ができる
28 /29 プラントモデルを活用する効果 制御骨格確認 制御骨格確認 制御チューニング プラントモデルを活用した制御開発 要求仕様 < 制御モデル > ロシ ック再検討 実車テスト 実車 従来の実車を使った制御開発 要求仕様 実車テスト 実車 ロシ ック再検討 実車テスト 実車 プラントモデルを活用し 制御設計や制御確認を机上で実施することで開発のフロントローディングが可能
29 /29 まとめ Simscape は MATLAB/Simulink との親和性が高く 開発初期段階での初期の制御コンセプト 特に複数ドメイン デバイスをまたがるような協調制御や干渉の効果確認する上では有効 Simscape の基本的な考え方 概念図や I/F が事前に考慮できていれば つながて動かすというレベルまでのモデリングはしやすい 見た目が概念図と相対しやすいため可読性がよく 他人とも共有しやすい
3 /29 ご静聴ありがとうございました