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技術資料 産卵低下症候群 - 1976 不活化ワクチン力価試験用赤血球凝集抗原及び参照血清の 作製と評価 曵地七星 嶋﨑洋子 石川容子 鈴木祥子 蒲生恒一郎 中溝万里 中村成幸 大石弘司 ( 受付 : 平成 27 年 7 月 30 日 受理 : 平成 27 年 11 月 13 日 ) TECHNICAL REPORT Production and Evaluation of Reference Antigen and Reference Serum for Potency Test of Egg Drop Syndrome-1976 Inactivated Vaccine. Nanase HIKICHI, Yohko SHIMAZAKI, Yohko ISHIKAWA, Shoko SUZUKI, Koichiro GAMOH, Mari NAKAMIZO, Shigeyuki NAKAMURA and Koji OISHI National Veterinary Assay Laboratory, Ministry of Agriculture, Forestry and Fisheries, 1-15-1 Tokura, Kokubunji-Shi, Tokyo,185-8511 Japan (Received: 30th July 2015, Accepted: 13th November 2015) Abstract The potency test of egg drop syndrome-1976 (EDS-1976) inactivated vaccine is performed by the haemagglutination (HA) test. We prepared the candidate reference antigen and candidate reference positive sera used for the HA test, checked inactivation of the antigen and evaluated the HA titer of the antigen and the antibody titer of the positive sera based upon the biological products standard. As a result of the examination, the HA titer of the antigen was 640, and antibody titer of candidates of two kinds of reference positive sera were 256 and 64, respectively. Based on these results, we judged these candidates to be suitable as new references for EDS-1976 haemagglutinin production. 要旨産卵低下症候群 -1976 を対象とする不活化ワクチンの国家検定における力価試験は 赤血球凝集抑制試験により行われている 現在 当所では動物用の生物学的製剤標準品の確保に取り組んでおり その一環として当該試験に用いる赤血球凝集 (HA) 抗原及び参照陽性血清を新たに作製し 動物用生物学的製剤基準に準拠して 抗原の不活化を確認し 抗原価 及び参照陽性血清の抗体価について評定を行った その結果 HA 抗原候補品の抗原価は 640 倍 2 種類の参照陽性血清候補品の抗体価はそれぞれ 256 倍及び 64 倍であり 産卵低下症候群 -1976 を対象とする不活化ワクチンの力価試験を行う上で妥当であると判断した 緒言産卵低下症候群 -1976( egg drop syndrome-1976 以下 EDS という ) は 産卵鶏における産卵低下及び卵殻異常卵の産卵を主徴とする感染症であり アデノウイルス科に属する産卵 141 137

曵地七星 嶋﨑洋子 石川容子 鈴木祥子 蒲生恒一郎 中溝万里 中村成幸 大石弘司 低下症候群 -1976 ウイルス ( 以下 EDSV という ) によって引き起こされる 本病の予防には不活化ワクチンが用いられており 単味のワクチンのほかに ニューカッスル病や鶏伝染性気管支炎と混合されたワクチンが承認されている 動物用生物学的製剤基準 ( 農林水産省 2002 以下 動生剤基準 という ) に収載されている EDS を対象とする単味又は混合不活化ワクチン ( 以下 EDS 不活化ワクチン という ) の有効性を確認するための力価試験は ワクチンを注射した鶏の血清を用いた赤血球凝集抑制試験 ( 以下 HI 試験 という ) により行われており この試験に用いる赤血球凝集抗原 ( 以下 HA 抗原 という ) については 動生剤基準においてその規格が設定されている 現在 動物医薬品検査所では 動物用生物学的製剤等の品質管理等を適切に行うため 業務プロジェクトとして 動物用生物学的製剤の品質管理のための標準品 ( 参照微生物株 標準製剤 参照血清等 ) の確保に取り組んでいる また 平成 20 年 10 月に導入されたワクチンのシードロットシステムは ワクチン製造用株及び製造用細胞株について規格を設定し GMP に基づく製造及び品質管理を行うことで品質の向上及び安定化を図るものであり これらにより 品質管理試験において 一定の品質の標準品を用いる必要性が高まっているところである HI 試験を力価試験として規定している EDS ワクチンは 7 所社 19 品目 ( 平成 27 年 7 月 30 日時点 ) 存在し 本試験に必須である HA 抗原は ワクチンの品質確保において重要な役割を担っている そのため 一定の標準品を用いることによって品質確保に寄与することを目的として 今般 参照陽性血清と共に標準品作製の検討を行った また 作製したそれらの候補品について 標準品として適当な品質を備えているかどうかの評定試験を行い 良好な成績が得られたので その結果を報告する 材料及び方法 1 鶏胚肝初代 ( 以下 CEL という ) 細胞の作製及び EDSV JPA-1 株培養の検討 EDS 不活化ワクチン力価試験に供する HA 抗原は 動生剤基準においては 産卵低下症候群 -1976 ウイルス JPA-1 株又は同等と認められた株を生ワクチン製造用材料の規格 1.3 の発育あひる卵で増殖させて得た尿膜腔液又は生ワクチン製造用材料の規格 2.1.3 の鶏胚肝初代細胞で増殖させて得た培養上清に 0.2vol % になるようにホルマリンを加えて不活化したもの と規定されている そこで今回 EDS 不活化ワクチン力価試験用 HA 抗原候補品を作製するため 次の方法で CEL 細胞の作製及び EDSV JPA-1 株の培養を行った (1)18~20 日齢 SPF 発育鶏卵由来鶏胚から肝臓を摘出し 細切後 0.1vol%PSK( ペニシリン ストレプトマイシン カナマイシン ) を添加したリン酸緩衝食塩液 ( 以下 PBS という ) で洗浄する (2) 肝臓を 0.2vol% トリプシン溶液により 37 5 分間撹拌処理し 静置した後 上清を吸引除去する (3)(2) の肝臓消化物を 0.2vol% トリプシン溶液により 37 3~8 分間撹拌処理し 上清を牛胎子血清 ( 以下 FBS という ) 入り滅菌瓶に移して 4 で保存する この作業を 3 ~4 回繰り返す (4)(3) で得られた上清をナイロンメッシュでろ過し 800rpm 3 分間遠心する (5) 沈殿物を細胞増殖用培養液 (0.1%PSK 及び 7vol% FBS 添加 MEMα 培地 ) に浮遊させ 1 10 6 個 /mlに調整後 コラーゲンコート処理した 6 穴プレートに 4ml/ 穴ずつ分注し 37 142 138

産卵低下症候群 -1976 不活化ワクチン力価試験用赤血球凝集抗原及び参照血清の作製と評価 5vol% 炭酸ガス下で培養する (6) 翌日 培養液を吸引除去後 PSK 添加 PBS で細胞を洗浄し 細胞維持用培養液 (0.1%PSK 及び 1vol% FBS 添加 MEMα 培地 ) を加えた後 コンフルエントになるまで 4 日間培養する (7) コンフルエントとなった CEL 細胞に 0.1ml 当たり 10 3.0 TCID 50 に調整した EDSV JPA-1 株を 0.2ml/ 穴ずつ接種し 37 で 90 分間感作後 細胞維持用培養液を添加して 37 5vol% 炭酸ガス下で培養する (8) 経時的に培養上清を採取し 抗原価を測定する 2 EDS 不活化ワクチン力価試験用 HA 抗原候補品の作製 HA 抗原候補品の作製においては 上述の培養条件を基本として 15~16 日齢 SPF 発育鶏卵由来鶏胚から CEL 細胞を作製し 5 10 5 個 /ml~1 10 6 個 /mlの CEL 細胞をコラーゲン処理培養容器で培養後 EDSV JPA-1 株をコンフルエントとなった CEL 細胞に接種し 培養後 HA 試験により抗原価 1024 倍以上となったことを確認して培養上清を採取した 培養上清を 3000rpm で 10 分間遠心分離して得られた上清に 0.2vol% となるようホルマリンを添加後 4 で 26 日間以上不活化処理した 動生剤基準の 産卵低下症候群 -1976( アジュバント加 ) 不活化ワクチン 等に準じて培養細胞を用いる場合の不活化試験を実施し 不活化が確認された培養上清について 5w/v% となるように乳糖を添加して混合後 ガラスバイアルに 1ml ずつ分注し 凍結乾燥を行い EDS 不活化ワクチン力価試験用 HA 抗原候補品とした 3 参照陽性血清候補品の作製参照陽性血清候補品の作製には CEL 細胞で培養した EDSV JPA-1 株上清をホルマリンによって不活化したものと オイルアジュバント (Montanide ISA71VG;SEPPIC 社 ) を 3: 7 となるように混合し 乳化したものを免疫抗原として用いた 免疫抗原を 5 週齢の SPF 鶏 ( 白色レグホン種 ) の脚部筋肉内に注射し 3~ 4 週後に採血して得られた血清を参照陽性血清原液とし HI 抗体価を測定した 原液は EDS 抗体陰性血清 ( 非免疫 SPF 鶏群から採取した血清 ) を用いて HI 抗体価 512 倍及び 64 倍に調整後 保存剤としてアジ化ナトリウムを 0.01vol% となるよう添加し ガラスバイアルに 1ml ずつ分注後 凍結乾燥し 参照陽性血清候補品 PS-H 及び PS-L とした 4 EDS 不活化ワクチン力価試験用 HA 抗原候補品の評定 HA 抗原候補品の抗原価及び参照陽性血清候補品の抗体価の評定は 産卵低下症候群 -1976 ( アジュバント加 ) 不活化ワクチン 等動生剤基準における EDS 不活化ワクチンの力価試験法に準拠して行った (1) HA 試験 (EDS 不活化ワクチン力価試験用 HA 抗原候補品 ) HA 抗原 1 バイアルを PBS 0.5ml で溶解したものを試験に用いた 96 穴プレート (U 字 ) を用いて PBS で 2 倍階段希釈した各抗原希釈列 25μl に PBS 25μl を加えた後 0.5vol% 鶏赤血球浮遊液 50μl を加え 振とう混合し 室温に 1 時間静置した後に判定した HA 反応の判定は 穴全体に一様な赤血球凝集が認められる完全凝集を HA 陽性とし (Figure 1) 完全凝集を示した最高希釈倍数を抗原価 1 単位とした (2) HI 試験 ( 参照陽性血清候補品 ) 143 139

曵地七星 嶋﨑洋子 石川容子 鈴木祥子 蒲生恒一郎 中溝万里 中村成幸 大石弘司 2 種類の参照陽性血清候補品 PS-H 及び PS-L をそれぞれ PBS 1mL で溶解したものを試験に用いた 各血清 1 容に 25w/v% カオリン液 3 容を混合し 室温で 20 分間処理後 遠心して得られた上清を 4 倍希釈血清とした カオリン処理した血清をプレート上で更に PBS で 2 倍階段希釈し 各血清希釈列の 25μl に HA 抗原候補品から 25μl 中 4 単位に調整した抗原液を 25μl ずつ加えて振とう混合した 30 分間室温で静置した後 0.5vol% 鶏赤血球浮遊液を各穴に 50μl ずつ加えて振とう混合し 室温で 60 分間静置後 判定した HI 反応の判定は プレートを傾けて行った 穴の底の血球の流れ ( 垂れ ) の形状が血清対照 ( 血清 25μl と PBS 25μl を混合後 鶏赤血球浮遊液 50μl を加えたもの ) のそれと同じものを完全凝集抑制とし 完全凝集抑制を示した血清の最高希釈倍数を HI 抗体価とした (Figure 2) 結果 1 CEL 細胞の作製及び EDSV JPA-1 株培養の検討 CEL 細胞は培養翌日に培地交換し 不要な細胞等を除去することによって 培養 5 日目でコンフルエントな状態となった (Figure 3) EDS JPA-1 株接種後経時的に培養上清を採取し 抗原価を測定したところ 培養上清中の抗原価は 接種 3 日目から上昇し 7 日目以降は 512~1024 倍を示した ( Table 1) 2 HA 試験 ( EDS 不活化ワクチン力価試験用 HA 抗原候補品 ) 評定試験の結果 凍結乾燥後無作為に抽出した2 本の HA 抗原候補品の抗原価は いずれも 640 倍であった また 再現性を確認するため 複数の試験実施者で試験を実施したところ 一致した結果が得られた (Table 2) 3 HI 試験 ( 参照陽性血清候補品 ) 評定試験の結果 2 種類の参照陽性血清候補品の HI 抗体価は PS-H が 256 倍 PS-L が 64 倍であった また 再現性を確認するため 複数の試験実施者で試験を実施したところ それぞれ一致した結果が得られた (Table 3) 考察作製した CEL 細胞において EDSV JPA-1 株の HA 抗原は 接種後 3 日目以降から検出され 約 7 日目から 512 倍又は 1024 倍以上の抗原価を示した 本試験によって EDSV JPA-1 株が CEL 細胞で良好に増殖することが示された 今回 新たに作製された EDS 不活化ワクチン力価試験用 HA 抗原候補品においては 1 バイアルを PBS 0.5ml に溶解した場合 640 倍の抗原価であることが確認され 2 名の試験実施者間でも一致した抗原価が得られた EDS 不活化ワクチンの動生剤基準における小分製品の力価試験では 4 単位に調整した HA 抗原を用いることから 本 HA 抗原候補品は力価試験に供するに当たり 均一かつ十分な抗原価を有すると考えられた 2 種類の参照陽性血清候補品 PS-H 及び PS-L は 1 バイアルを PBS 1mlに溶解した場合に それぞれ 256 倍及び 64 倍の HI 抗体価を示した また 2 名の試験実施者間で測定した HI 抗体価は一致し 再現性が認められたことから 今回作製した参照陽性血清候補品は試験ごとの変動を評価する上でも有用でと考えられた 144 140

産卵低下症候群 -1976 不活化ワクチン力価試験用赤血球凝集抗原及び参照血清の作製と評価 以上により 今回作製した HA 抗原及び参照陽性血清は 力価試験を行う上で十分な品質を 有しており また各製造所社において製造される HA 抗原を更新する際に 客観的に評価する ための指標としても有用であると考えられることから 標準品として妥当と判断された 引用文献農林水産省 (2002) 動物用生物学的製剤基準. 平成 14 年 10 月 3 日農林水産省告示第 1567 号 Table 1. Potency (HA titer) of EDSV JPA-1strain after inoculation to CEL cells. days after virus inoculation. 1 2 3 4 7 8 9 Potency (HA titer) <1 <1 8 32 1024 512 1024 Table 2. Results of potency test of candidates for the reference HA antigen. Antigen Experimenter Potency (HA titer) 1 A 640 B 640 2 A 640 B 640 Table 3. Results of potency test of candidates for the reference positive sera. HA antigen Experimenter HI titer of candidates PS-L PS-H 1 2 A 64 256 B 64 256 A 64 256 B 64 256 141

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