純粋期待仮説 ( 物価と金融政策 ) 講義 2 図が重なっている等見えづらい箇所がありますが これはアニメを使用しているためです 講義で確認してください 文字が小さい箇所があります 印刷の際に必要に応じて拡大等してください 1 設備投資の変化要因 1 GDP= 消費 + 投資 + 政府支出 + 純輸出 GDPは 消費 投資 政府支出 純輸出 のいずれか増加すれば それだけでもGDPは増加する 消費は 所得 つまり GDPが増加すれば 通常 一定の増加が見込まれる 投資 = 設備投資 + 住宅投資設備投資が増えるには 設備投資をした結果 企業業績が増加する必要がある ここで 企業利潤 = 売上 - 費用 (1) (1) 式より 売上が伸びれば 企業利潤は増加するので 設備投資は増加することが考えられる 他方 費用が削減できる または 削減するのであれば それだけでも利潤が増加するので 設備投資をする可能性がある 2 1
設備投資の変化要因 2 住宅投資を増加させるには 住宅投資にかかる費用を減らす必要がある 設備投資 および 住宅投資における費用とは 借入金利したがって 市場金利が下がれば 借入金利も下がる 売上 - 費用 企業利潤 同様に 住宅ローン金利が下がれば 住宅投資が増加する つまり 投資 ( 設備投資 + 住宅投資 ) を増加させるためには 借入金利が低下すること したがって 市場金利が下がることが大切 3 市場金利 って何?!?! 借入金利 市場金利 一般に 市場金利 とは 日本 10 年国債利回り ( 現在 0.30% 程度 ) 国債は デフォルト になるリスクは 0 と考えられる( 特に すべての国債が邦貨建てで発行している場合には 当該国の中央銀行と政府が一体である時 デフォルトになるリスクは 0 となる) デフォルトとは 金利返済の遅滞 元本の償還が不能 という事態をいう なぜなら 政府には 徴税権 があるので 国債を返済できないような事態になれば 増税をするなどにより 返済が可能になるからである ( 但し 外貨建てで発行している場合には 当該外貨を保有する必要があるので デフォルト リスクが 0 となることはない) 以上から 日本 10 年国債利回りは 現在の市場における リスクフリー レート ( 無リスク レート ) として機能することになる 4 2
借入金利とリスクプレミアム 1 借入金利 =ベース金利 +リスクプレミアム ベース金利として 国債利回り 等が使用される リスクプレミアムとは借り手の信用度 ( 安全性 流動性など ) によって上乗せされる金利 < 安全性 > 借り手企業は金融市場環境や業績動向が変化しても 一般に 債務条件を変更することはできない といっても 企業の状況によっては返済が厳しくなる可能性もある このような 条件の変更可能性 が低いほど 安全性が高いと考えられる したがって 政府保証や一般担保 物上担保等がついている方が 安全性が高い と考えられているので そのようなモノが付いていないような債務 つまり 無担保の債務については 高いリスクプレミアムが付けられることになる 5 借入金利とリスクプレミアム 2 < 流動性 > 例えば 債券 ( 債務を化体 ( カタイ ) した証券 ) は有価証券なので 市場で売買が可能である したがって ( 返済の可能性が ) 危ないと感じた時に 市場で売ることが可能であると考えることができる そのため 市場性のある債務 ( つまり 債券 ) の方が 市場性のない債務 ( 銀行借入 ) よりも有利であるということになる また 市場で売買されるためには なるべく大きい会社 なるべく知名度のある会社 なるべく発行量の多い債券 の方が有利になる このような 有利な債券 ほど 流動性が高い ということになり リスクプレミアムが低くなる ということは 逆は逆! 6 3
市場金利と短期金利 1 個別企業によって リスクプレミアム が違うため 借入金利自体は違ってくる 但し マクロ経済的に考えた場合 通常の経済であれば 個別企業のリスクプレミアム自体は大きく変化しないことから 全体としてのリスクプレミアムはほぼ 一定 と考えることができる 他方 市場金利である国債利回りは 景気動向に応じて変化することが知られている つまり 景気が良くなるに従い 国債利回りは上昇するので リスクプレミアムが同じであっても マクロ経済的な借入金利は上昇することになる ( 逆は逆 ) 7 市場金利と短期金利 2 < 純粋期待仮説 > この他に 市場分断仮説 流動性プレミアム仮説 などがある 景気動向に応じて国債利回り ( 市場金利 ) が変動する理由としては 純粋期待仮説 でいえば 短期金利の変化がより長い金利に影響を与えることになる ここで短期金利は 景気が良くなると高くなり 景気が悪化すれば低くなる したがって 好景気の時は 短期金利 長期金利 不景気の時は 短期金利 長期金利 8 4
金融政策のメカニズム 資金供給 IB レートが 買いオペ日本銀行 ( 日銀が ) 債券を買うインターバンク市場 高い場合金利の過度の変動は経済にとって問題 市中銀行 A 資金不足 ブローカー 売りオペ ( 日銀が ) 債券を売る 市中銀行 B 資金余剰 資金不足 > 資金余剰 IB レート 資金不足 < 資金余剰 IB レート 資金吸収 インターバンク市場 ( 無担保コール翌日物金利 : 現在 0.1% に誘導している ) を見ながら インターバンク内における資金量を調整している 9 金融政策と市場金利 1 < 好景気状態 > 景気が良い場合 物価が上昇することから 日銀は金利を引き上げる方向で政策を行う これを 金融引締政策 という つまり 目標となるインターバンク金利の誘導目標を引き上げる対策を採る 例えば 現状の目標誘導金利が 1% の場合 1.25% にする などをいう これによって 短期金利 ( インターバンク金利 ) が上昇するので 純粋期待仮説によれば 長期金利も上昇することになる 長期金利 ( 国債利回り ) の上昇は 企業等のリスクプレミアムが一定の場合 借入金利 ( または 調達金利 ) が高まることを意味する 実際 銀行等は 自身の調達金利であるインターバンク金利が上昇している場合 企業への貸出金利 および 住宅ローン金利はスライド的に上昇させようとするのは当然である 10 5
金融政策と市場金利 2 < 景気後退局面 > 景気後退の状態においては 事業収益が低下しているため 設備投資等を行おうとしなくなる そのため 資金ニーズが低下し 企業は借り入れを抑える傾向があり さらに景気が悪化する可能性が高くなる そこで 日銀は目標誘導レートを引き下げ 短期金利を下げる方向で政策を行う ( 金融緩和政策 ) これによって 純粋期待仮説より 長期金利が低下するとともに 銀行の調達金利が低下するため 企業等への貸出金利が低下することが予想される 借入金利が低下すれば コストが低下することになるので それに見合った設備投資を行うため GDPを押し上げることになる 11 6