最上試験線における 8 導体送電線の加振試験結果 Results of Forced Excitation Test to 8bundled Conductors at Mogami Test Line 齊藤寿幸 (T. Saito) 三塚洋明 (H. Mitsuzuka) 菊池武彦 (T. Kikuchi) 東京電力株式会社 東京電力株式会社 東京電力株式会社 武田浩三 (K. Takeda) 中澤貞範 (S. Nakazawa) 白岩岳治 (T. Shiraiwa) ( 研究開発グループ ) ( 研究開発グループ ) ( 研究開発グループ ) 概要送電線のギャロッピング研究では 固有振動数や減衰定数など ケーブルとしての振動特性を調査することが不可欠である 得られた結果は固有振動の確認や 正しい減衰率を与えることで モデル解析の精度を向上させる UHV8 導体送電線に関しては 固有振動数 減衰定数の測定例は非常に少ないので UHV 送電線におけるギャロッピング対策技術の開発研究の一環として 最上試験線 ( 山形県庄内町 ) において実規模 8 導体の加振試験も実施し UHV 級設備の 8 導体送電線の固有振動数や減衰定数などの基本的な振動特性調査を行ったので その概要を報告する 図 1 最上試験線 UHV 送電線の全景 (8 導体が 2 相架線されているが 試験は下相で実施した ) この論文は 平成 17 年電気学会電力 エネルギー部門大会の論文 346 を再編集したものです AEW 第 34 号 - 9 -
1. 加振試験の方法加振試験は 6 号鉄塔 -7 号鉄塔の 61m 長径間に ACSR61mm 2 8 導体を 2 相架線し その下相にて行った スペーサは 等間隔で 14 個使用した なお今回の試験では ギャロッピングを発生させて計測したものではないが 8 本の素導体には模擬着雪 (.5D 三角型 : 三角形の高さが電線径の 1/2) を取付けている 鉛直方向と捻回方向の振動モードは 奇数ループのケースでは径間 1/2 偶数ループのケースでは径間 1/4 からロープを垂らし 人力で加振して発生させた ( 図 2 3 参照 ) 水平方向の振動モードは 径間中央のスペーサをワイヤーロープで 4 号鉄塔を介して水平方向に引張り 次に破断器により瞬時に電線を引離して発生させた ( 図 4 参照 ) 振動モードの測定は 径間 1/4,1/2 に取付けた標的の挙動をリアルタイムで画像処理し 変位と捻回の時系列データに変換した また同時に風向風速と張力の時系列データを記録した 6 7 鉛直方向 2,4 ルーフ 加振捻回 2 ルーフ 加振 鉛直方向 3 ルーフ 加振捻回 3 ルーフ 加振 高低差 1 6.8m 弛度 32m 61m 図 2 鉛直 捻回方向加振 図 3 加振試験中の 8 導体送電線 4 号鉄塔 6 号鉄塔 7 号鉄塔 61m S/2 付近の 8 導体スペーサ 破断器 破断器により ワイヤーを瞬断する 引き込み 図 4 ウインチ 水平方向加振 4 号鉄塔 AEW 第 34 号 - 1 -
2. 振動周波数 2.1 水平 鉛直方向の振動周波数表 1 に加振試験および固有値解析 (CAFSS ) による水平 鉛直方向の振動周波数を示す また 図 5 に加振して得た振動モードを示す 試験結果と固有値解析結果は良く一致していると言える また これまで同試験線の径間長 36mにて試験した 4 導体送電線と同様に 鉛直 2 ループの振動周波数は 水平 1 ループの約 2 倍の値となっている 弛度と支持点高低差が小さい場合の ケーブル固有の動特性を示したものと考えられる (1) 2.2 捻回方向の振動周波数表 2 に加振試験による捻回方向の振動周波数を示す 加振試験では 鉛直方向と捻回方向の振動周波数は 概ね等しい結果となった 一方 加振試験と固有値解析では 捻回方向の振動周波数に差が生じている これは解析モデルへの回転慣性の入力値による影響と考えられ 今後加振試験結果を基にして入力値を検討してゆく 表 1 水平 鉛直方向の振動周波数 モード形状 振動 加振試験固有値解析 水平 1ループ.92.96 鉛直 2 ループ.183.189 鉛直 3 ループ.267.268 鉛直 4 ループ.375.379 表 2 捻回方向の振動周波数 モード形状 振動 加振試験固有値解析 捻回 2 ループ.192.531 捻回 3 ループ.258.733 水平 1 ループ 鉛直 2 ループ 捻回 2 ループ 鉛直 3 ループ 捻回 3 ループ 鉛直 4 ループ 図 5 発生させた振動モード AEW 第 34 号 - 11 -
3. 減衰定数表 3 に振動モードに対する減衰定数を示す 既設送電線の減衰定数は.2%~4% の範囲にあると言われており (2) 8 導体送電線もその範囲内に入っている 鉛直方向振動では 鉛直 3 ループの減衰定数が大きい 図 6 7 に鉛直 2 ループと鉛直 3 ループの変位の自由振動を示したが 変位変動に対する張力変動比は 2,N/1.4m,2,5N/.6mであり 鉛直 3 ループは 変位変動に対する張力変動が大きいことが分かる 式 (1) に示すように モード減衰比は 1 周期当たりのモード散逸エネルギーの 最大変位によって蓄えられるひずみエネルギーに対する比として定義されている 張力変動が大きいために ひずみエネルギー比が大きくなって減衰が大きくなったと考えられる (3) 2π 損失係数 ( 最大変位による歪エネルギー ) 減衰比 = ( 最大変位による歪エネルギー )+ 初期歪エネルギー -------(1) 捻回方向振動の減衰定数では 2 ループの方が 3 ループより大きくなった 2 ループの方が捻回しやすく 電線素線間の摩擦によるエネルギー消耗が大きくなり 減衰率が大きくなったものと考えられる 表 3 振動モードと減衰定数 (%) モード形状 減衰定数 (%) 水平 1ループ 鉛直 2ループ.9 鉛直 3ループ 1.4 鉛直 4ループ.91 捻回 2ループ 2.1 捻回 3ループ 1. - - - 2 4 6 8 1 12 張力 (N) 3 2 1-1 -2-3 図 6 鉛直 2 ループの自由振動 2 4 6 8 1 12 - - - 2 4 6 8 1 12 張力 (N) 3 2 1-1 -2-3 図 7 鉛直 3 ループの自由振動 2 4 6 8 1 12 なお 鉛直 2 ループにおいて 張力の振動周波数は変位周波数の約 2 倍で発現すると言われている 変位の 1 周期間に 張力は逆対称で 2 周期分振動しているためである その例として 図 8 に AEW 第 34 号 - 12 -
図 6 の鉛直 2 ループの変位と張力の自由振動のスペクトラムを示した 変位の自由振動の周波数.183Hz に対して 張力の自由振動の周波数は約 2 倍の.383Hz を示している spectrum (m).5.3.2.1. 変位 2.18.383..2.6 1. spectrum (N) 25 15 1 5 張力..2.6 1. 図 8 鉛直 2 ループの変位 張力のスペクトラム また 図 9 には実際に発生した鉛直 2 ループギャロッピングの変位と張力の例を示した 変位の周波数.171Hz に対し 張力の周波数は.344Hz を示している 張力 (kn) 4 3 2 1-1 -2 5 1 15 2 25 3 35 4 45 4 35 3 時間 (sec) 25 5 1 15 2 25 3 35 4 時間 (sec) spectrum spectrum 1.171Hz.6.2.2.6 1 1.4 1.6.2.344Hz.2.6 1 図 9 鉛直 2 ループギャロッピングの変位 張力のスペクトラム 4. まとめ 今後の課題 (1) 長径間 ( 径間長 61m) の 8 導体送電線において 人工加振試験を実施し 固有振動と減衰定数を調査した (2) 試験した 2 ループ 3 ループでは 鉛直方向と捻回方向の振動周波数は概ね等しい (3) 減衰定数は 既設送電線の減衰定数の範囲.2%~4% にあることを確認した (4) 今後は ここで得られた結果を解析の精度向上に反映させる 参考文献 (1) 清水ほか : 4 導体送電線の動的挙動に関する検討, 構造工学論文集 Vol.46A,2,3 (2),(3) 電気学会 : 電気学会技術報告第 844 号,pp.39-4,21,7 CAFFS は ( 財 ) 電力中央研究所にて開発された有限要素法解析コード 登録番号 3426 AEW 第 34 号 - 13 -