第3 糖尿病尿病 (1) はじめに全国の糖尿病有病者数は 平成 9 年から平成 19 年までの10 年間で約 1.3 倍増加しており 今後 人口構成の高齢化に伴い増加ペースは加速すると予想されています 糖尿病は心血管疾患のリスクを高め 神経障害 網膜症 腎症 足病変 歯周病 といった合併症をもたらすなど 生活の質や社会保障資源等に多大の影響を及ぼします 現在 国において糖尿病は 新規透析導入の最大の原因疾患であるとともに成人中途失明の原因疾患として第 2 位に位置している上 心筋梗塞や脳卒中のリスクを2~3 倍増加させるとされています (2) 基本的な考え方ア発症予防 糖尿病の主な危険因子は 加齢 家族歴 肥満 身体活動の低下 ( 運動不足 ) 耐糖能異常( 血糖値の軽度の上昇 ) です 糖尿病は 高血圧 脂質異常症と同様に 循環器疾患の危険因子であることから 糖尿病有病者の増加を抑制します イ重症化予防 未治療や治療の中断が糖尿病の合併症の増加につながることが明確に示されています このため 健診によって糖尿病が強く疑われる人 あるいは可能性を否定できない人を早期に発見し 早期治療を勧奨することが重要であるため まずは健診の受診者を可能な限り増やしていくよう努めます 糖尿病による合併症を予防するには 治療を継続し 良好な血糖コントロール状態を維持することが大切です 治療中断による合併症増悪にならないようフォロー状況を分析し 医療機関と連携した取り組みを推進します (3) と目標ア糖尿病腎症による年間新規透析導入患者数の減少 近年 全国の糖尿病腎症による新規透析導入患者数は 増加から横ばいに転じています 経年変化が認められない理由としては 糖尿病患者総数の増加や高齢化はあるものの 治療や疾病管理の向上効果があるものと考えられ 少なくともこの傾向を維持することが必要です 本市の新規透析導入患者数は 平成 25 で82 人となっています 原因疾患別にみると 糖尿病腎症による新規透析導入患者は22 人で 平成 20 以降は20~30 人台前半で推移しています 血糖コントロールを良好に保つ保健指導は通院治療の有無にかかわらず 糖尿病腎症の予防のために不可欠です 同時に 新規透析導入を防ぐために健診において腎機能低下を早期に発見するための検査が必要です そのため佐賀県では 県内の保険者で構成する佐賀県保険者協議会で協議し 特定健診の検査項目に追加して 血清クレアチニン 血清尿酸 尿潜血検査を 佐賀県医師会の提案と協力により実施しています 3章課題別の実態と対策 糖35
課題別の実態と対策 糖尿病 第3章23 全国 297,126 2,320 24 全国 309,946 2,420 人工透析 の状況 日本透析医学会統計調査委員会の報告 わが国の慢性透析療法の によると 佐賀県 の慢性透析患者数は 平成 24 年 2,221 人で 人口 100 万人に対するとしては全国 16 位で した 平成 23 年と比較した患者数の伸び率でみると全国 2 位となっています 平成 22 年平成 24 年都道府県患者数人口 100 万対都道府県患者数人口 100 万対 1 熊本 5,908 3,251 1 熊本 6,169 3,394 2 徳島 2,503 3,187 2 徳島 2,656 3,381 3 宮崎 3,611 3,181 3 宮崎 3,678 3,240 4 大分 3,760 3,142 4 大分 3,854 3,221 18 佐賀 2,104 2,476 16 佐賀 2,221 2,614 * 伸び率 昭和 60 年 - 平成 24 年都道府県患者数伸び率 1 埼玉 16,085 699.3 2 千葉 13,450 637.4 3 群馬 5,482 627.9 4 茨城 7,444 625.5 9 佐賀 2,221 525.1 20 全国 309,946 467.4 平成 12 年 - 平成 24 年都道府県患者数伸び率 1 広島 7,281 168.6 2 茨城 7,444 168.5 3 佐賀 2,221 168.4 資料 : わが国の慢性透析療法の ( 一社 ) 日本透析医学会統計調査委員会 新規透析導入患者の推移 ( 佐賀市 ) 新規透析導入患者は 平成 25 で82 人となっています 原因疾患別にみると 糖尿病腎症による新規透析導入患者は22 人 腎炎等による患者は60 人です なお 平成 19 年 3 月診療分から 生活保護の透析患者を更正医療で診療するようになったため 平成 19 の件数が急増しています 18 全国 309,946 150.4 平成 23 年 - 平成 24 年都道府県患者数伸び率 1 秋田 1,963 104.3 2 佐賀 2,221 104.0 21 全国 309,946 101.8 平成 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 腎炎ほか 8 11 16 17 37 28 25 23 38 37 37 34 50 94 61 27 51 43 45 60 原因疾患 糖尿病性 0 3 3 3 7 3 20 13 13 23 24 15 32 18 26 28 24 24 31 22 合 計 8 14 19 20 44 31 45 36 51 60 61 49 82 112 87 55 75 67 76 82 36 資料 : 佐賀市更正医療の届けによる
第課題別の実態と対策 糖尿病 イ治療継続者のの増加 糖尿病合併症を抑制するためには 糖尿病の治療中断者を減少させることが必要です 佐賀市の特定健診結果で HbA1c (NGSP 値 ) が6.5% 以上に該当する人のうち 治療を受けている人のをみると 平成 21 は46.9% でしたが 平成 25 は54.5% となっており 増加傾向にあります 糖尿病は高血圧と同様に 食事療法 運動療法 が重要な治療法であり これらの効果を判断するためには医療機関での定期的な検査が必要です しかし 治療を中断している人や未治療の人も少なくないというのが実態です 今後は 糖尿病でありながら未治療である人や治療を中断している人を減少させるために 適切な治療の開始 継続が支援できるような保健指導等の取り組みが必要です 糖尿病治療継続者のの推移 HbA1c(NGSP 値 )6.5% 以上のうち 糖尿病の内服治療中の人 3章 ウ合併症予防のための目標値を超える人のの減少 日本糖尿病学会の 科学的根拠に基づく糖尿病診療ガイドライン2013 では 合併症予防のための目標 として血糖コントロール目標をHbA1c(NGSP)7.0% 未満と位置づけられています このガイドラインでは HbA1c(NGSP 値 )6.9% 未満であれば最小血管合併症の出現の可能性が少ないとの報告もありますが 諸外国の目標値を考慮してHbA1c(NGSP 値 ) 7.0% 未満としています 一方で HbA1c(NGSP 値 )8.0% は 年齢 心血管合併症の既往や低血糖などの理由で治療の強化が難しい場合においても最低限達成が望ましい目標とされています 佐賀市国保の特定健診受診者のうち 合併症予防のための目標値を超える人のは 5.0% 前後で推移しており 今後も医療関係者等と情報を共有しながら 減少を図るための取り組みを推進します 合併症予防のための目標値を超える人のの推移 HbA1c(NGSP 値 )7.0% 以上の人 37
第3章課題別の実態と対策 糖尿病 エ糖尿病有病者の増加の抑制糖尿病有病者の増加を抑制することにより 様々な糖尿病合併症を予防することにつながります 佐賀市の特定健診を受診した人の健診結果をみると 糖尿病有病者のは横ばいの状況です 平成 25 の特定健診結果では 保健指導判定値 HbA1c(NGSP 値 )5.6~6.4% 糖尿病の可能性が否定できない境界領域 を含む の人が 約 6 割存在しています 加齢に伴いインスリンの分泌能力が低下することから 今後さらに高齢化が進展することにより糖尿病有病者の増加が懸念されるところです また 加齢のほか 過食 運動不足 肥満 ストレスなども発症の要因となるとされており 若い世代からの生活習慣等を踏まえた保健指導が必要です 本市では 科学的根拠に基づく糖尿病診療ガイドライン2013 や 糖尿病治療ガイド 2014-2015 等に基づき 解決すべき対象者をより明確にした保健指導を推進します 糖尿病有病者の推移 有病者 平成 21 22 23 24 25 受診者数 9,708 10,092 9,401 9,687 10,473 1 HbA1c(NGSP 値 )6.5% 以上の人 922 1,002 866 902 983 うち内服治療中 ( 再掲 ) (432) (477) (438) (480) (536) 2 HbA1c(NGSP 値 )6.4% 以下で内服治療中の人 137 153 150 225 268 有病者数 (1+2) 1,059 1,155 1,016 1,127 1,251 有病率 10.9% 11.4% 10.8% 11.6% 11.9% HbA1c の年次比較 HbA1c 測定者 正常 HbA1c(NGSP 値 ) 5.5 以下 正常高値 保健指導判定値 糖尿病の可能性が否定できない 合併症予防のための目標 受診勧奨判定値糖尿病最低限達成が望ましい目標 合併症の危険が更に大きくなる 5.6~5.9 6.0~6.4 6.5~6.9 7.0~7.9 8.0 以上 A B B/A C C/A D D/A E E/A F F/A G G/A 平成 21 9,708 2,369 24.4% 4,601 47.4% 1,816 18.7% 437 4.5% 306 3.2% 179 1.8% 22 10,092 2,809 27.8% 4,499 44.6% 1,782 17.7% 497 4.9% 338 3.3% 167 1.7% 23 9,401 2,907 30.9% 4,076 43.4% 1,552 16.5% 414 4.4% 304 3.2% 148 1.6% 24 9,687 3,081 31.8% 4,154 42.9% 1,550 16.0% 431 4.4% 317 3.3% 154 1.6% 25 10,473 3,247 31.0% 4,513 43.1% 1,730 16.5% 483 4.6% 340 3.2% 160 1.5% 38
第(4) 対策 ( 循環器疾患の対策と重複するものは除く ) 尿病 ア糖尿病発症予防及び重症化予防のための施策 糖尿病治療ガイド 等に沿った対象者を明確にした優先的な保健活動の推進 治療を中断している人や未治療の人への保健指導等の取り組みの強化 糖尿病ネットワークの推進 受診勧奨域にあるHbA1c 異常の人について未治療や治療中断による合併症を予防するため に 医療機関と行政が密に連携し 平成 22 に 佐賀市糖尿病ネットワーク を佐賀市医師会に設置し 佐賀市の糖尿病フォロー体制の構築を図るようになった フォロー対象者 : 平成 20 からの特定健診受診者のうち 1 回以上 HbA1c(NGSP 値 ) が 7.0 以上の値に該当し 直近 3 か月間に糖尿病の治療歴がない人 (5) 評価項目ア糖尿病腎症による年間新規透析導入患者数の減少 糖尿病腎症による年間新規透析導入患者数 22 人 ( 平成 25 ) 目標減少傾向へ ( 平成 35 ) イ治療継続者のの増加 HbA1c(NGSP 値 )6.5% 以上のうち糖尿病の内服治療中の人 佐賀市更生医療 届 治療継続者の 54.5% ( 平成 25 ) 目標増加傾向へ ( 平成 35 ) 3章課題別の実態と対策 糖ウ合併症予防のための目標値を超える人のの減少 HbA1c(NGSP 値 )7.0% 以上の人 合併症予防のための目標値を超える人の 4.7%( 平成 25 ) 目標減少傾向へ ( 平成 35 ) エ糖尿病有病者のの減少 HbA1c(NGSP 値 )6.5% 以上または糖尿病の内服治療中の人 糖尿病有病者の 11.9%( 平成 25 ) 目標減少傾向へ ( 平成 35 ) 39