大脳深部白質病変を伴った CLIPPERS 症候群が疑われた 1 例 川辺美穂 前川理沙 土屋一洋 2) 日出山拓人 椎尾康 要旨 症例は19 歳, 男性. 聴力障害, 左下肢失調および両下肢痙縮による歩行障害で発症した. 頭部造影 MRIでは脳幹を中心に増強効果を伴う点状の異常信号域が散在性にみられた. ステロイドパルス療法の効果は乏しく,CLIP- PERS(chronic lymphocytic inflammation with pontine perivascular enhancement responsive to steroids) 症候群を疑い, 経口ステロイド内服を開始したところ, 下肢痙縮 画像所見ともに改善を認めた. 特徴的な画像所見から本疾患を疑い, 他疾患を除外したうえで早期に治療を行うことが重要と考えられた. 日内会誌 104:2193~2200,2015 ポイント Key words Chronic lymphocytic inflammation with pontine perivascular enhancement responsive to steroids(clippers) 症候群は 2010 年に提唱された新しい疾患概念であり, 頭部造影 MRI で脳幹 小脳に salt and pepper 様の造影増強効果を伴う散在性点状病変を認めることが特徴である. 経口ステロイド内服により病勢コントロールが得られるため, 早期に診断し, 治療を行うことが重要である. 悪性リンパ腫などの鑑別が問題となることも多く, 症例によっては脳生検による組織診断を検討すべきである. CLIPPERS 症候群,MRI,salt and pepper はじめに の知見について概説する. Chronic lymphocytic inflammation with pontine perivascular enhancement responsive to steroids(clippers) 症候群は 2010 年にPittockらが提唱した新しい疾患概念であり, ステロイド治療反応性の中枢性炎症性疾患である. 頭部造影 MRIで脳幹 小脳に salt and pepper 様の病変を認めることが診断の重要な手がかりとなる. ここでは, 神経放射線学的にCLIPPERS 症候群と考えられた症例を提示し, 本疾患の特徴や最新 症例患者 :19 歳, 男性. 主訴 : 歩きづらい. 手足がしびれる. 現病歴 :11 月上旬に突然左耳が聞こえなくなった. 近医耳鼻科で突発性難聴と診断され, デキサメタゾンを9 日間内服したが, 聴力の改善は不十分であった.12 月上旬に歩行障害が出現し, 階段昇降ができなくなった. 両側大腿に異常感覚が出現した.12 月中旬より左 第 609 回関東地方会 (2014/10/1 推薦 受稿 2015/03/29, 採用 2015/05/01 東京逓信病院神経内科, 2) 同放射線科 Case Report;A case suspected of CLIPPERS syndrome with cerebral white matter lesions. Miho Kawabe, Risa Maekawa, Kazuhiro Tsuchiya 2), Takuto Hideyama and Yasushi Shiio : Department of Neurology, Tokyo Teishin Hospital, Japan and 2) Department of Radiology, Tokyo Teishin Hospital, Japan. 日本内科学会雑誌 104 巻 10 号 2193
聴力障害に対してデキサメタゾン内服を再開した. 歩行障害も悪化し, 坂道を登ることができなくなり, 平地歩行も長時間できなくなった. 左上肢にも異常感覚が出現し, 当院を受診した. 頸髄 MRIで脳幹 脊髄に異常信号域を認め, 神経内科緊急入院となった. 既往歴 : 特記事項なし. 家族歴 生活歴 : 特記事項なし. 身体所見 : 身長 166 cm, 体重 53.7 kg, 体温 37.0, 脈拍 77/ 分, 整. 血圧 122/77 mmhg.spo2 97% ( 室内気 ). 心肺, 腹部に聴診上異常所見なし. 口腔内や皮膚に異常所見なく, 針反応は陰性であった. 神経学的には右眼の左下 1/4 盲, 左感音性難聴, 右下肢優位の錐体路障害 ( 両下肢痙縮 四肢腱反射亢進 病的反射陽性 ), 両下肢深部覚低下, 両下肢および左上肢の異常感覚, 左下肢協調運動障害を認めた. 一口メモ 脳神経障害や小脳失調はCLIPPERS 症候群で高頻度にみられる所見である. 内服薬 : デキサメタゾン1.5 mg/ 日, アデノシン三リン酸二ナトリウム300 mg/ 日, イソソルビド 42 g/ 日, メコバラミン 1,500 μg/ 日, レバミピド300 mg/ 日. 血液検査所見 : 赤血球 492 万 /μl,hb 15.6 g/dl, 白血球 6,800/μl, 血小板 24.0 万 /μl,crp 0.03 mg/dl,ace 7.5 U/l,IgE 158 mg/dl. 抗核抗体 MPO-ANCA PR3-ANCA 抗 SS-A 抗体 抗 SS-B 抗体 抗 AQP4 抗体は陰性. HLAタイピングはA24 * 26,B62 * 39であった. 髄液検査所見 : 細胞数 9 個 /mm 3 ( 多核 1 個 /mm 3, 単核 8 個 /mm 3 ), 糖 53 mg/dl( 同時血糖 89 mg/ dl), 蛋白 47 mg/dl,igg 3.5 mg/dl(igg index 0.46). オリゴクローナルバンドは陰性であった. 入院時頭部造影 MRI( 図 1および図 2A): 大脳深部白質, 皮質下白質および小脳半球に卵円型のT2 延長域 (FLAIR 像で高信号 ) を複数認めた. 脳幹部にも点状散在性のT2 延長域を認めた. これらの病変の一部では造影 T1 強調像で増強効果を認めた. 一口メモ 橋を中心として脳幹から小脳にかけて salt and pepper 様 の造影増強効果を伴う病変を認めることが特徴である. 入院時脊髄造影 MRI( 図 3): 頸髄ではC2~3 椎体レベルの脊髄はやや腫大しており,T2 強調像で内部に高信号域を認めた. 胸髄においても Th4~5 椎体レベルおよびTh7 椎体レベルで内部に高信号域を認めた ( 矢印 ). 電気生理学的検査 : オージオメトリー ( 四分法 ) では左 33.8 db, 右 10.0 dbと左感音性難聴を認めた. 感覚誘発電位検査では両下肢の中枢感覚伝導時間 (P38-N20) は左 16.2 msec, 右 18.0 msecと正常上限程度であった. 経頭蓋磁気刺激法では中枢運動神経伝導時間 (central motor conduction time:cmct) は上肢で左 10.7 msec, 右 7.2 msec と左側で延長しており, 下肢では皮質刺激で導出不能であり錐体路障害が示唆された. 視覚誘発電位ではP100 潜時は左 120 msec, 右 130 msecと延長を認めた. 聴性脳幹反応はI~V 波まで潜時の延長なく正常であった. 臨床経過大脳および脊髄に多発する造影増強効果を伴う病変を認めることから, 入院時は多発性硬化症, 視神経脊髄炎, 急性散在性脳脊髄炎などの脱髄疾患を疑ったが, 脳幹部に多数の小病変が存在し, 大脳病変が少数である点は, これらの疾患としては非典型的であった. 聴力障害および視野障害といった臨床症状からはSusac 症候群の可能性も考えたが, 眼底検査では網膜動脈閉塞を示唆する所見はなく, 頭部 MRIでは脳梁病変はごく少数であり髄軟膜の造影増強効果を認めず否定的であった. 脳幹部の病変が目立つため神経 Behçet 病の可能性を考えたが, 一般身体所見ではBehçet 病を示唆する所見はなく, HLA B51は陰性であった. これらの疾患が否定的であり, 脳幹 小脳の病変がsalt and pepper 2194 日本内科学会雑誌 104 巻 10 号
A B C D 図 1 入院時頭部造影 MRI A:FLAIR 画像,B:Gd 造影 T1 強調像,C: 脳幹部 FLAIR 画像,D: 脳幹部 Gd 造影 T1 強調像 様であることから,CLIPPERS 症候群の可能性が考えられた. 入院第 1 日目よりステロイドパルス療法 (mpsl 1,000 mg/ 日,3 日間 ) を 3 コース施行した. 四肢の異常感覚は消失し, 視野障害も一部改善したが, 下肢の痙縮および失調は改善が乏しかった. 頭部 脊髄 MRI 画像上も脳幹 小脳の増強効果がわずかに改善したのみでほぼ不変であったため, ステロイドパルス療法をさらに 2コース施行した. 痙性歩行はやや改善し, 階段昇降も可能となったが, 痙縮は残存しており, バクロフェン10 mg/ 日の内服を開始し, 入院第 46 日目に自宅退院した. ステロイド内服による後療法の必要性につい ては外来で症状の推移を観察して検討する方針としていたが, 退院から約 2 週間後より下肢痙縮が左優位に緩徐に悪化し, 退院から39 日後に当科再入院となった. 入院時神経学的には下肢痙縮の悪化に加え, 新たに軽度の右顔面神経麻痺も認められた. 頭部造影 MRIでは脳幹 小脳優位に病変の増加 増大傾向を認めた ( 図 2B). 前回入院時のステロイドパルス施行後から短期間での再発であり,CLIPPERS 症候群の可能性が高いと考えられた. 悪性リンパ腫や神経膠腫などの悪性腫瘍の可能性も否定できなかったが, 活動性の高い病変は脳幹 小脳に限局しており, 適切な生検部位がなく脳生検は施行しなかった. 入院第 1 日目よりステロイドパルスを 日本内科学会雑誌 104 巻 10 号 2195
A 第 1 回入院時 B 第 2 回入院時 C 第 2 回退院前 図 2 橋中部 小脳の造影 MRI 所見の推移上段 :FLAIR 画像, 下段 :Gd 造影 T1 強調像 図 3 入院時脊髄造影 MRI( 脂肪抑制 T2 強調像 ) 3コース施行のうえ,PSL 50 mg/ 日の内服を開始した. 顔面神経麻痺は消失し, 両下肢痙縮も明らかに改善した. 入院第 63 日目の頭部造影 MRIでは脳幹 小脳の病変は消退傾向であった ( 図 2C).PSL 35 mg/ 日まで減量のうえ, 入院第 77 日目に退院した. 一口メモ 経口ステロイド内服への治療反応性は良好である. 2196 日本内科学会雑誌 104 巻 10 号
表 考察 CLIPPERS 症候群と鑑別が必要な疾患 自己免疫疾患 脱髄疾患 腫瘍性疾患 血管好性の慢性感染症 神経 Behçet 病神経サルコイドーシス中枢神経限局性血管炎 Bickerstaff 型脳幹脳炎シェーグレン症候群多発性硬化症視神経脊髄炎急性散在性脳脊髄炎悪性リンパ腫神経膠腫リンパ腫様肉芽腫症 Langerhans 細胞組織球症結核神経梅毒 Whipple 病クリプトコッカス感染症 CLIPPERS 症候群は 2010 年にPittockらが提唱した新しい疾患概念であり, 橋を中心とした中枢神経の炎症性疾患である. 症状としては亜急性 進行性の失調および複視 顔面の感覚障害 聴力障害 構音障害などの脳神経障害を高頻度に認める. 脳幹が広範に障害されるため, 本症例のように四肢痙縮や深部感覚障害を認めることもある. 頭部造影 MRIでは, 橋から小脳にかけて salt and pepper 様 と表現される左右対称性に多発する点状病変を認めることが特 徴的である.Pittock らの8 例の報告では, いずれの症例も病変の主座は橋であり, 一部の症例では脊髄や基底核 脳梁まで病変が及んでいたものの本症例のように大脳深部白質に多発する非連続性の病変を認める症例はなかった. しかし, 最近では, 本症例のように大脳深部白質に 2~4) 病変を認める症例が少数ではあるが報告され, 多彩な画像所見を呈し得ることが明らかとなった. したがって, 鑑別すべき疾患は表のように多岐にわたる. 脳幹部の病変が目立つ点から神経 Behçet 病は特に重要な鑑別疾患である. 本症例のように大脳深部白質に病変を認める症例においては, 多発性硬化症および急性散在性 脳脊髄炎との鑑別も問題となりうる. また, 本症例では臨床所見からSusac 症候群の鑑別が必要であった.Susac 症候群では脳梁を中心に snowball lesions と表現される数 mmの T2 延長域が多発することが特徴的であり, 脳幹部に病変が及ぶ症例は14% 程度に過ぎないとされており 5), 本症例の病変の性状 分布からは否定的と考えた. CLIPPERS 症候群の病態機序は不明であるが, ステロイドへの反応性が良好であることから自己免疫的な機序の関与が想定されている. 一部の症例では血清 IgE 高値を示すことがあり, アレルギー反応によって血管周囲へのT 細胞浸潤が生じる可能性が示唆されている 6). 本症例では多発性硬化症との鑑別が問題となったが, 経過 10 年以上の再発寛解型多発性硬化症にCLIP- PERS 症候群が合併した症例も2 例報告されている 7,8). したがってCLIPPERS 症候群には様々な病態機序が関与していると考えられ, 独立した 1つの疾患概念というよりも, 多発性硬化症を含む複数の病態にオーバーラップし得る症候群であるとする見解もある 9). 治療としては経口ステロイド内服への反応性は良好であり, これはCLIPPERS 症候群と診断する根拠としても重要である. 一方でステロイドパルス療法への反応性は限定的であり, 治療後早期に再発を認めることが多い点も特徴的である. 本症例のように, 広範な病変を認める症例ではステロイド漸減中に症状の再燃を認める症 2) 例も多く, 免疫グロブリン療法,azathioprine 2) などの免疫抑制薬,rituximab 10) の併用が必要となることが多い. 本症例ではステロイドパルス終了後 2カ月以内に症状の再燃があり, 経口ステロイド内服で良好な病勢コントロールが得られ,CLIPPERS 症候群に合致する経過であった. 特徴的な画像所見から本症を疑い, 早期にステロイド内服を開始することが望ましいと考えられる. 確定診断には脳生検による病理組織診が重要 日本内科学会雑誌 104 巻 10 号 2197
とされている. 血管周囲白質にCD3 陽性のT 細胞を主体とする著明なリンパ球浸潤を認めることが特徴であり, 脱髄病変や血管炎 肉芽腫 腫瘍性病変を認めないことから他疾患を除外する. 病変の主座が脳幹であり脳生検施行が困難であることが多いため, 臨床的に他疾患を除外したうえで特徴的な画像所見と臨床像から診断可能とする見解もある. しかし, 病変が左右非対称な症例や, 本症例のように病変が大脳までひろがっているような症例では,CLIPPERS 症候群として加療したがステロイドへの反応性が不良であり, 後に生検により悪性リンパ腫と判明することがあるため, 慎重に経過観察することが重要であると考えられる. 最終診断 CLIPPERS 症候群聴力障害 左下肢失調 錐体路徴候などの脳 幹部病変に起因する症状を認め, 頭部造影 MRI で橋を中心に小脳 脊髄 大脳深部白質にかけて点状散在性に造影される病変を認め,CLIP- PERS 症候群を疑った. 経口ステロイドへの治療反応性が良好であったことも上記の診断を支持する根拠と考えた. おわりに 大脳深部白質病変を伴ったCLIPPERS 症候群の1 例を経験した. 近年では本症例のように非典型的な画像所見を呈する症例の報告が散見されるが, 橋を中心としたsalt and pepper 様の点状散在性病変を認めることが特徴的である. 臨床的には神経 Behçet 病 悪性リンパ腫などの他疾患の鑑別を慎重に行いつつ, 早期にステロイド加療を行うことが重要と考えられる. 著者の COI(conflicts of interest) 開示 : 本論文発表内容に関連して特に申告なし 文献 1 ) Pittock SJ, et al : Chronic lynphocytic inflammation with pontine perivascular enhancement responsive to steroids(clippers). Brain 133 : 2626 2634, 2010. 2 ) Gabilondo I, et al : Response to immunotherapy in CLIPPERS syndrome. J Neurol 258 : 2090 2092, 2011. 3 ) Simon NG, et al : Expanding the clinical, radiological and neuropathological phenotype of chronic lymphocytic inflammation with pontine perivascular enhancement responsive to steroids(clippers). J Neurol Neurosurg Psychiatry 83 : 15 22, 2012. 4 ) Smith A, et al : Neurotropic T-cell lymphocytosis : a cutaneous expression of CLIPPERS. J Cutan Pathol 41 : 657 662, 2014. 5 ) Dörr J, et al : Characteristics of Susac syndrome : a review of all reported cases. Nat Rev Neurol 9 : 307 316, 2013. 6 ) Kastrup O, et al : Three cases of CLIPPERS : a serial clinical, laboratory and MRI follow-up study. J Neurol 258 : 2140 2146, 2011. 7 ) Ortega MR, et al : CLIPPERS complicating multiple sclerosis causing concerns of CNS lymphoma. Neurology 79 : 715 716, 2012. 8 ) Ferreira RM, et al : CLIPPERS-like MRI findings in a patient with multiple sclerosis. J Neurol Sci 327 : 61 62, 2013. 9 ) Kira J : The expanding phenotype of CLIPPERS : is it a disease or a syndrome? J Neurol Neurosurg Psychiatry 83 : 2 3, 2012. 10)Taieb G, et al : A new cases of chronic lymphocytic inflammation with pontine perivascular enhancement responsive to steroids with initial normal magnetic resonance imaging. Brain 134 : e182, 2011. 2198 日本内科学会雑誌 104 巻 10 号
症例掲載施設紹介 東京逓信病院神経内科 る中枢伝導検査もルーチンで行っています. 貴重な剖検例も多く神経病理の専門家に委嘱して詳細な検討を加えています. 元気いっぱい, 笑顔いっぱい東京逓信病院について日本郵政 ( 株 ) を経営母体とする477 床の総合病院です. 春には桜が咲き乱れる皇居外濠に面した風光明媚な地にあって, 靖国神社や文教施設に囲まれ,JR, 東京メトロの飯田橋駅に近く交通の便がよいため, 地域医療はもとより首都圏の広い範囲から患者さんが集まります. 神経内科について常勤医 4 名 ( 日本神経学会専門医が3 名 ), 後期研修医 2 名 ( 公募あり ) が在籍しており, 日本内科学会, 日本神経学会, 日本脳卒中学会, 日本臨床神経生理学会の教育施設に認定されています. 年間の入院患者数は400 例ほどで, 脳梗塞, てんかん, 髄膜脳炎などの救急疾患はもちろん,Parkinson 病や脊髄小脳変性症,ALS( 筋萎縮性側索硬化症 ) などの変性疾患や多発性硬化症, 神経筋疾患など幅広く診療しています. 内科的合併症も原則的に当科で診療しており, 内科全般の診療水準の向上にも努めています. また, 電気生理検査, 病理診断に基づく末梢, 筋疾患の診療を得意とし, 経頭蓋磁気刺激によ 研修内容当院では神経内科病棟の他に, 呼吸器, 消化器, 循環器 腎臓, 血液 内分泌代謝の5 病棟をローテーションすることで各領域の疾患を経験することができ, 内科認定医, 総合内科専門医の取得を目指します. 救急疾患から変性疾患, 神経筋疾患まで症例のvariationが大きく, 新 内科専門医制度で求められる神経内科の9 疾患群はもとより, 膠原病など他領域の疾患も経験できます. また, 神経内科をメインにした研修も柔軟に行っています. 初期研修医, 専修医は10 人前後の入院患者を担当し, 急患室での初期対応から入院後の治療方針までスタッフのきめ細かな指導が受けられます. 専修医は外来も週に1~2コマ担当し, プライマリ ケア, common diseaseへの理解を深めます. また, オープンな雰囲気の中で回診, チャートラウンド, 抄読会, リハビリカンファレンスが行われるほか, 放射線カンファレンスでは神経放射線の専門家である土屋先生 ( 共著者 ) と問題症例の検討を行います. 院内では隔週で症例検討会,CPC が交互に開催されており, 内科全般の知識を深められます. さらに当科では内科学会地方会, 神経学会地方会などで年間 15 例ほどの症例発表を行うとともに, 論文を含め積極的な情報発信に取り組んでいます. 我々の目指すもの神経内科は難しいと敬遠する先生もいますが, 我々が一番大切にしていることは, スタッ 日本内科学会雑誌 104 巻 10 号 2199
フ, 研修医が元気いっぱい, 笑顔いっぱいで楽しく仕事ができる雰囲気です. そんな環境でこそ, 各人の能力, 持ち味が遺憾なく発揮され, 高い臨床水準と卒後教育を実現できると考えるからです. ホームページ http://www.hospital.japanpost.jp/tokyo/shinryo/ shinnai/ 文責 : 椎尾康 外堀通り方面から当院 2200 日本内科学会雑誌 104 巻 10 号