博士学位論文 生分解性人工神経の神経再生における 塩基性線維芽細胞増殖因子 (bfgf) 徐放化 システムの有用性 近畿大学大学院 医学研究科医学系専攻 福田智一

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博士学位論文 生分解性人工神経の神経再生における 塩基性線維芽細胞増殖因子 (bfgf) 徐放化 システムの有用性 近畿大学大学院 医学研究科医学系専攻 福田智一

博士学位論文 生分解性人工神経の神経再生における 塩基性線維芽細胞増殖因子 (bfgf) 徐放化 システムの有用性 平成 29 年 11 月 近畿大学大学院医学研究科 医学系専攻 ( 指導 : 磯貝典孝教授 ) 福田智一

生分解性人工神経の神経再生における 塩基性線維芽細胞増殖因子 (bfgf) 徐放化システムの有用性 近畿大学医学部形成外科学教室 福田智一 ( 指導 : 磯貝典孝教授 ) Effect of bfgf slow-release system in nerve regeneration using biodegradable nerve conduit Tomokazu Fukuda Department of Plastic Surgery, Kindai University Faculty of Medicine (Director : Prof. Noritaka Isogai) 抄 録 背景 : 生分解性素材による人工神経は, 未だ自家神経の治療成績に及ばない. そこで, 塩基性線維芽細胞増殖因子 (bfgf) 徐放化システムを人工神経の移植時に併用し, 神経再生誘導を検討した. 方法 :ELISA 法を用いて bfgf 徐放化システムの徐放特性について,bFGF 量の経時的変化を測定し検討した. 次に, ラットの坐骨神経欠損モデルを作成し, 人工神経を移植した後にチューブ周囲に bfgf 徐放化システムを併用した. 人工神経のみを移植した群をコントロールとした. 移植後 2 週,4 週,8 週,20 週にて標本摘出し, 組織学的検索, 免疫組織学的検索および透過型電子顕微鏡の画像解析を実施し, 神経再生誘導能を検討した. 結果 :bfgf 徐放化システムでは, 観察期間 [2 週間 ] において一定量の bfgf が持続的に徐放されていた. 人工神経に bfgf 徐放化システムを併用した場合, 血管内皮細胞の遊走距離は伸長し, 新生血管数は増加した. さらに, その後のシュワン細胞の遊走距離および軸索の成長距離はともに伸長した. 軸索数及び軸索総面積の画像解析結果から経時的に神経成熟度も同時に高まることが判明した. 結論 :bfgf 徐放化システムは人工神経の再生時に関与する血管内皮細胞およびシュワン細胞の両細胞群に対して促進的に作用し, 人工神経の再生誘導能を向上させる上で有用であることが示唆された. Key words: 生分解性人工神経,bFGF, 徐放化システム, 神経再生 1

緒 言 末梢神経欠損の治療は, 自家神経移植が第一選択である. この自家神経移植の供給源としては腓腹神経 前腕皮神経 後骨間神経終末枝などが用いられるが, これらの採取には少なからず犠牲を伴う. そのため近年では自家神経移植の代替として, 人工神経や同種神経移植が臨床現場に導入されている 1 3). 1979 年 Lundborg らが報告したシリコンチューブを用いた神経再生が人工神経移植の最初の試みである 4). 続いて, 中空内部構造をもつ管腔状生分解性素材をベースにした人工神経が開発されてきた. 近年では, 神経再生誘導能を向上させるために, 管腔内をコラーゲンで充填した人工神経が試作された. これらの生分解性素材による人工神経では神経採取に伴う犠牲はないものの, 自家神経移植や同種神経移植に比較して神経再生誘導能が劣り 5 7), いまだ自家神経移植の治療成績には及ばない. 神経の再生誘導には移植神経周囲の血行が重要である 8). 塩基性線維芽細胞増殖因子 (bfgf : basic fibroblast growth factor) は血管新生を促すサイトカインであるため, これを生分解性人工神経に付与することで効率よく人工神経断端および周囲に血管新生を誘導し, 神経再生誘導そのものを促進しうると推測される. ただし生体内での bfgf 半減期は極めて短く不安定であるため ( 血中半減期 :T 1/2 = 1.5 min), 田畑らはこの欠点を補うべく, ゼラチン微粒子に bfgf を組み合わせた bfgf 徐放化システムを作製し, 持続的 bfgf 投与法を開発した 9). そこで今回我々は, この bfgf 徐放化システムを生分解性人工神経に併用し, 人工神経の再生誘導能を促進しうるかを検討した. 方 法 1)bFGF 徐放化システムの作製 bfgf 徐放化システム作製は田畑らの手法を踏襲した 9). まず bfgf 担体となるゼラチン微粒子を以下のように作製した.10% ゼラチン水溶液 0.2 ml ( 等電点 5, 豚皮ゼラチン, 新田ゼラチン株式会社, 大阪 ) をオリーブオイル 5 ml に加え,40 で 1 時間静置した. 撹拌後 4 で冷蔵して粒子化し, さらにゼラチン周囲に付着したオリーブオイルをアセトン 1.5 ml にて洗浄した. 得られた溶液を 4,5,000 rpm で 5 分間遠心分離し, 再度 4 のアセトンにて 3 回洗浄した. その後 4 の冷蔵庫内で 1 週間乾燥させ, 沈殿物であるゼラチン粒子を得た. 次にゼラチン粒子の架橋を行うため, ゼラチン粒子 1 mg に対し 0.1% ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート 1 ml および 25% グルタルアルデヒド 5 L を加え,4 にて 24 時間撹拌した. 次にゼラチン粒子懸濁液を 5,000 rpm で 5 分間遠心分離し, 沈査ゼラチン粒子にグリシン溶液を加え, さらに 1 時間常温で撹拌した. 続いて蒸留水を用いた遠心分離による洗浄を 3 回行った. 得られたゼラチン粒子に超純水を加え, ポアサイズ 70μm および 30μm のストレーナーを用いて粒子径を均一化した. 直径 30 ~ 70μ m のゼラチン粒子を回収し, 液体窒素で凍結させた. 凍結真空乾燥したゼラチン微粒子 ( 直径約 10μm) をエチレンオキサイドガス滅菌した. 最後にゼラチン微粒子に bfgf を含浸させるため,bFGF 100μg ( トラフェルミン, 科研製薬, 東京 ) を Ca/Mg 不含リン酸緩衝液 60μl (Dulbeccoʼs phosphate-buffered saline/pbs, Gibco) に溶解し, ゼラチン微粒子 10 mg を加えて 4 で 24 時間または 37 で 1 時間静置した. 2

2)ELISA 法による bfgf 徐放量の測定生分解性素材による人工神経として, ナーブリッジ ( 直径 1.5 mm, 長さ 12 mm, 東洋紡株式会社, 大阪 ) を用いた. この人工神経はポリグリコール酸 (PGA) 線維束をらせん状に配列し, 壁厚を 500μm に調整した管腔構造体である. 管腔内部は I 型および III 型コラーゲンスポンジによって充填され, 外表面は内腔と同様の組成を有するコラーゲンにて被覆されている. この生分解性人工神経上に, マイクロピペットを用いて bfgf 含浸ゼラチン微粒子を均等に塗布した. またこの bfgf 徐放化システムの徐放特性を調べるため, bfgf 含有ゼラチン微粒子を塗布した生分解性人工神経を PBS (ph 7.4,37,10 ml) に浸漬させ, 浸漬後 1 時間,2 日,4 日,6 日,8 日,10 日,12 日,14 日目に上清を 100μl ずつ回収した. 上清中に含まれる bfgf 量を ELISA 法 (RayBio Human bfgf ELISA Kit) にて測定した. 3) 走査電顕を用いた生分解性人工神経の表面観察走査電顕を用いて bfgf 徐放化システム投与後における生分解性人工神経の表面観察を行った. 生分解性人工神経への bfgf 含浸ゼラチン微粒子の塗布は, 上記と同様にマイクロピペットを用いて行った.bFGF 含浸ゼラチン微粒子の塗布後, 生分解性人工神経には乾燥 金凝着の操作を加えた. ゼラチン微粒子と生分解性人工神経との接着状態の観察には走査型電子顕微鏡 (S- 900,Hitachi,Japan) を用いた. 4) 生分解性人工神経の移植本研究で行った動物実験はすべて近畿大学医学部動物実験委員会規定に基づいて実施された. 実験動物は 14 週齢 SD ラット ( 平均体重 280-324 g, 雄,102 匹,Harlan Sprague Dawley,Indianapolis,IN,USA) を用いた. 飼育は, クリーンラック内で室温 22, 湿度 50%,12 時間明暗サイクルの条件下に行った. 飼料は放射線滅菌 (3 mg) された固形飼料を与え, 飼料用水は制限なく与えた. ウレタンおよび α- クロラロースにて全身麻酔後, 両大腿の坐骨神経を 10 mm 切断して神経欠損モデルを作成した. 次に生分解性人工神経を坐骨神経の神経両断端に 1 mm ずつ引き込み, 手術用顕微鏡下に 10-0 ナイロン糸を用いて水平マットレス縫合した.bFGF 徐放群 ( 実験群 ) およびコントロール群の 2 群を設定し, 実験群では生分解性人工神経を移植した後に bfgf 含有ゼラチン微粒子を塗布した (n=48). またコントロール群では生分解性人工神経の移植後,bFGF 含有ゼラチン微粒子は塗布しなかった (n=48). 移植後の評価期間は 2 週,4 週,8 週,20 週とした ( 図 1). 3

図 1. 実験プロトコール. 5) 免疫組織学的手法を用いた神経成長速度の評価移植後 2 週,4 週,8 週,20 週目に生分解性人工神経を採取し, 組織を 10% 中性緩衝ホルマリン溶液にて 3 日間浸漬 固定した. 次いでパラフィンブロックを作製し, ミトクローム (LEICA SM2000R) にて長軸方向に 5μm の薄切切片を作成した. 組織学的評価では, 血管内皮細胞の染色をするために抗 CD31 抗体 (anti-cd31 Rabbit polyclonal antibodies:abcam,ab28364), シュワン細胞の染色では抗 S100 抗体 (anti-s100 Rabbit polyclonal antibodies:dako,z0311), 軸索の染色では抗 NF 抗体 (anti-neurofilament 68kDa Mouse monoclonal antibodies:dako,m0762) を用いた. 免疫組織染色は以下の方法で行った. まず組織切片を脱パラフィン処理した. 次に抗 CD31 抗体用の切片は, アルカリ性 (ph 8.0) 下で加熱処理した. また, 抗 S100 抗体および抗 NF 抗体は, 酸性 (ph 6.0) 下で加熱処理して抗原の賦活化を行った. 抗原賦活化した切片をリン酸緩衝液 (0.01 M,pH 7.4) で洗浄後, 流水洗を行い, 3.0% H 2 O 2 含有メタノール溶液で内因性ペルオキシダーゼのブロッキングを行った. 上記リン酸緩衝液で洗浄後,0.4 0.8μg/ml (50 100 倍希釈 ) の抗 CD31 抗体,0.1 0.2μg/ml (700 800 倍希釈 ) の抗 S100 抗体, 0.1 0.2μg/ml (700 800 倍希釈 ) の抗 NF 抗体を, 室温にて 30 60 分間反応させた.1 次抗体反応後に上記リン酸緩衝液で洗浄し, 抗 CD31 抗体および抗 S100 抗体用の切片は Histostar mouse (Rb) で, 抗 NF 抗体の切片は Histostar rat (Ms+Rb) で室温にて 15 30 分間 2 次抗体反応させた. 再び上記リン酸生分解性緩衝液で洗浄後,DAB( ニチレイ ) にて発色させて流水洗を行った後, マイヤーヘマトキシリンで核染色した. 作製した切片は脱水 透徹 封入した.CD31 抗体を用いた血管内皮細胞の染色では, 生分解性人工神経の中枢部 ( 中枢側断端より 2.5 mm 末梢側 ), 中央部, 末梢部 ( 末梢側断端より 2.5 mm 中枢側 ) の 3 領域における新生血管数を計測した. 次に S100 抗体を用いたシュワン細胞の染色では, 中枢側および末梢側から生分解性人工神経内へのシュワン細胞の遊走距離を測定した. さらに抗 NF 抗体を用いた軸索の染色では, 中枢側から生分解性人工神経内への軸索の伸長距離を測定した. シュワン細胞の遊走距離および軸索の伸長距離は, 画像解析ソフトウェア Image J (National Institutes of Health, MD, USA) にて測定した. 4

6) 透過型電子顕微鏡を用いた神経成熟度の評価移植後 20 週目に採取した生分解性人工神経は,4% グルタルアルデヒドにて 3 日間浸漬 固定した. 組織はウルトラミクロトーム (LEICA EM UC7) にて横切断方向に薄切 (1.5μm 厚 ) 後,4% オスミウムで後固定した. アルコール系列で脱水し, ウラン染色の後, エポン包埋した. これを 700 A 厚で超薄切し, ウランおよび酢酸鉛で染色後, 透過型電子顕微鏡 (H-7700,Hitachi,Japan) で観察した. 観察部位は生分解性人工神経の中枢部 中央部 末梢部とし, 軸索を確認しうる最大スケールである 50μm 40μm (= 2,000μm 2 ) で軸索数と軸索面積を測定した. 各群の神経断面中央付近の 3 視野を撮影し, 単位面積 2,000μm 2 あたりの平均値を算出した. 解析には画像解析ソフトウェア Image J を用いた. 7) 統計解析すべての実験結果は平均 ± 標準誤差 (SE) として表した. 統計学的有意差は,2 グループ間比較に対しては Student t 検定,3 グループ以上に対しては一元配置分散分析 (one-way analysis of variance/one-way ANOVA) および Holm 後検定で判定した. データ解析処理には GraphPad Prism (GraphPad Software Inc., San Diego, CA, USA) を使用し,P<0.05 で有意差ありと判定した. 結 果 1) 生分解性人工神経における bfgf 徐放量とゼラチン微粒子の局在生分解性人工神経に併用した bfgf の経時的徐放動態を調べるため,ELISA 法にて bfgf 量を測定した ( 図 2). その結果,bFGF は投与後一定の速度で徐放され, 投与後 14 日間目において bfgf 全投与量の 64.9% が徐放された. またこの観察期間においては bfgf 濃度は約 5μg/ 日に維持されていた. 次に走査電顕を用いてゼラチン微粒子の投与後における人工神経の表面観察を行った ( 図 3). その結果, ゼラチン微粒子は生分解性人工神経の側面に沿って局在していた. さらにゼラチン微粒子は隣接する周囲組織に漏出していた. 図 2. 生分解性人工神経に併用した bfgf 徐放化システムの徐放特性生分解性人工神経に bfgf 徐放化システムを併用し,ELISA 法 (RayBio Human bfgf ELISA Kit) にて徐放される bfgf 濃度を経時的に測定した.A: 生分解性人工神経より徐放される経時的累積 bfgf 徐放量比率.B:24 時間毎の bfgf 濃度. 各群 n= 6, 平均値 ± 標準誤差にて表記. 5

図 3 bfgf 徐放化システムを併用した生分解性人工神経の走査電子顕微鏡所見 生分解性人工神経に bfgf 徐放化システムを併用した群 実験群 左 と 併用していない 群 コントロール群 右 を走査電子顕微鏡にて観察した 各群 n=6 代表的所見を提示 2 生分解性人工神経移植後の肉眼所見 移植後 2 週目の実験群では 生分解性人工神経は周囲組織によって被覆されていた 図 4 移植経過に伴い 生分解性人工神経の周囲組織は厚く広く形成され 生分解性人工神経は周囲組織内に埋没していた 一方 コ ントロール群では生分解性人工神経は周囲組織に被覆されることなく 観察期間を通して神経の連続性が観察 された しかし 移植経過に伴い生分解性人工神経は細く変化し 移植後 20 週目において菲薄化していた 図 4 生分解性人工神経移植後の肉眼所見 坐骨神経を切除された SD ラットに bfgf 徐放化システムを併用した生分解性人工神経 左 および併用しない生分解性人工神経 右 を移植し 経時的肉眼的観察を行った P 中枢部, D 末梢部 各群 n=3 代表的所見を提示 6

3) 免疫組織学的手法を用いた神経成長速度生分解性人工神経の 3 部位 ( 中枢部, 中央部, 末梢部 ) における新生血管数の経時的変化を検討した. その結果, 移植後 2 週目の実験群において, 数多くの新生血管が認められた. 新生血管は, 特に中枢部と中央部において有意に増加していた. 移植後 4 週目では, 実験群の末梢部において有意に新生血管数の増加が認められた ( 図 5, 7). 中枢部と中央部では, 両群間に有意差は認められなかった. 移植後 20 週目では, 両群において中枢部および中央部の新生血管数は減少した. 一方, 末梢部では, 実験群に比較しコントロール群において有意に新生血管数の増加が認められた ( 図 6, 7). これらの結果より, 実験群においては, 新生血管数は移植後 2 週目から 4 週目において増加し, 移植後 20 週目では減少することが判明した. 一方, 移植後 20 週目のコントロール群では, 中枢部と中央部おいて実験群と同様の新生血管数の減少傾向が認められたが, 末梢部においては有意に増加していた ( 図 7). 生分解性人工神経におけるシュワン細胞遊走距離の経時的変化を検討した結果, 移植 2 週目の両群において, 中枢側および末梢側の両端からシュワン細胞の遊走像が観察された ( 図 8). また末梢側と比較して, 中枢側からの遊走距離がより長い傾向を認めた. 移植 2 週目および 4 週目の実験群では, コントロール群に比較してシュワン細胞遊走距離が長い傾向が認められた. また移植後 8 週目では, 両群ともに中枢側から末梢側まで連続したシュワン細胞が観察された ( 図 9). 軸索伸長距離の経時的変化を検討した結果, 両群において生分解性人工神経の中枢側から軸索伸長が観察された ( 図 10). また移植 20 週目において軸索は末梢側に到達していることが確認された. 移植期間を通じて実験群の軸索伸長は促進傾向を示したがコントロール群との間に統計学的有意差は認められなかった ( 図 11). 図 5. bfgf 徐放化システムを併用した生分解性人工神経の組織学的評価坐骨神経切除 SD ラットに移植された bfgf 徐放化システムを併用した生分解性人工神経 ( 実験群 ) を経時的に採取し, 中枢部 ( 左 ), 中央部 ( 中 ) 末梢部 ( 右 ) における新生血管を CD31 染色にて評価した. 矢頭 : 新生血管による管腔形成. 各群 n=6, 代表的所見を提示. 7

図 6. bfgf 徐放化システム未使用時の生分解性人工神経の血管新生の組織学的評価坐骨神経切除 SD ラットに移植された bfgf 徐放化システム未使用の生分解性人工神経 ( コントロール群 ) を経時的に採取し, 中枢部 ( 左 ), 中央部 ( 中 ) 末梢部 ( 右 ) における新生血管を CD31 染色にて評価した. 矢頭 : 新生血管による管腔形成. 各群 n=6, 代表的所見を提示. 図 7. bfgf 徐放化システムを併用した生分解性人工神経内での血管新生の定量的評価坐骨神経切除 SD ラットに移植された bfgf 徐放化システムを併用した生分解性人工神経 ( 実験群 ) および bfgf 徐放化システム未使用の生分解性人工神経 ( コントロール群 ) における, 人工神経内 1,500μm 2 あたりの CD31 染色で示される血管新生数を比較した. 各群 n=6, 平均値 ± 標準誤差にて表記. 8

図 8. bfgf 徐放化システムを併用した生分解性人工神経内でのシュワン細胞の組織学的評価坐骨神経切除 SD ラットに移植された bfgf 徐放化システムを併用した生分解性人工神経 ( 実験群 ) および bfgf 徐放化システム未使用の生分解性人工神経 ( コントロール群 ) を経時的に採取し, 中枢部 ( 左 ) 末梢部 ( 右 ) におけるシュワン細胞の分布を S100 染色にて評価した. 各群 n=6, 代表的所見を提示. 図 9. bfgf 徐放化システムを併用した生分解性人工神経内でのシュワン細胞の定量的評価坐骨神経切除 SD ラットに移植された bfgf 徐放化システムを併用した生分解性人工神経 ( 実験群 ) および bfgf 徐放化システム未使用の生分解性人工神経 ( コントロール群 ) における,S100 染色で示されるシュワン細胞伸長距離を比較した. 各群 n=6, 平均値 ± 標準誤差にて表記. 9

図 10. bfgf 徐放化システムを併用した生分解性人工神経内での神経軸索再生の組織学的評価坐骨神経切除 SD ラットに移植された bfgf 徐放化システムを併用した生分解性人工神経 ( 実験群 ) および bfgf 徐放化システム未使用の生分解性人工神経 ( コントロール群 ) を経時的に採取し, 中枢部からの神経軸索再生を NF 染色にて評価した. 各群 n=6, 代表的所見を提示. 図 11. bfgf 徐放化システムを併用した生分解性人工神経内での神経軸索再生の定量的評価坐骨神経切除 SD ラットに移植された bfgf 徐放化システムを併用した生分解性人工神経 ( 実験群 ) および bfgf 徐放化システム未使用の生分解性人工神経 ( コントロール群 ) における,NF 染色で示される神経軸索再生距離を比較した. 各群 n=6, 平均値 ± 標準誤差にて表記. 生分解性人工神経における実験群とコントロールのシュワン細胞遊走距離と軸索伸長距離を比較評価した. その結果, 徐放化システムの投与によって, 移植 2 週目および 4 週目において, シュワン細胞の遊走距離お よび軸索伸長距離が 1.3 ~ 1.7 倍長くなる傾向が認められた ( 表 1). 10

表 1. 生分解性人工神経における実験群とコントロールのシュワン細胞遊走距離と軸索伸長距離の比較検討 4) 透過型電子顕微鏡を用いた神経成熟度生分解性人工神経断面の有髄神経をトルイジンブルー染色したところ, 染色された有髄神経に明らかな偏位は認められなかった. そこで透過型電子顕微鏡を用いて詳細に解析することとした. まず正常坐骨神経における有髄神経の透過型電子顕微鏡画像と軸索面積の分布を確認した ( 図 12). 正常坐骨神経の横断面中央部では, 断面積が 2μm 2 の軸索を頂点とする一峰性曲線の分布が観察された. 次に移植後 20 週目の実験群 ( 図 13) およびコントロール群 ( 図 14) の中枢部, 中央部, 末梢部を採取し, それらの横断面中央部 2,000μm 2 における有髄神経軸索を透過型電子顕微鏡にて観察し, 有髄神経軸索面積を比較検討した. その結果, 実験群では断面積が 2μm 2 の有髄神経数は正常坐骨神経とほぼ同等の値を示した ( 図 13). 一方, コントロール群の有髄神経面積は低値であり, 比較的細い軸索の有髄神経から構成されていた ( 図 14). この有髄神経軸索を各群間で比較したところ ( 図 15), 実験群の単位面積あたりの軸索面積は正常坐骨神経に比して末梢部でのみ有意な低下を示したが, 中枢部および末梢部においては有意差を認めず, ほぼ同等の分布であった. 一方でコントロール群の単位面積あたりの軸索面積は, 正常坐骨神経に比して中枢部, 中央部, 末梢部の全領域において有意な低下を示した. 図 12. 正常坐骨神経の透過型電子顕微鏡所見上 :SD ラットから切除された正常坐骨神経横断面中央部における有髄神経軸索を透過型電子顕微鏡で観察した.n=6, 代表的所見を提示. 下 : 中央部 2,000μm 2 あたりの有髄神経軸索を面積別に定量的評価した. 11

図 13. bfgf 徐放化システムを併用した生分解性人工神経の移植後 20 週での透過型電子顕微鏡所見上 : 坐骨神経切除 SD ラットに移植された bfgf 徐放化システムを併用した生分解性人工神経 ( コントロール群 ) を移植後 20 週目に採取し, 中枢部 ( 左 ), 中央部 ( 中 ) 末梢部 ( 右 ) の横断面中央部における有髄神経軸索を透過型電子顕微鏡で観察した. 下 : 中央部 2,000μm 2 あたりの有髄神経軸索面積を面積別に定量的評価した. 各群 n=6, 平均値 ± 標準誤差にて表記. 図 14. bfgf 徐放化システム未使用時の生分解性人工神経の移植後 20 週での透過型電子顕微鏡所見上 : 坐骨神経切除 SD ラットに移植された bfgf 徐放化システム未使用の生分解性人工神経 ( コントロール群 ) を移植後 20 週目に採取し, 中枢部 ( 左 ), 中央部 ( 中 ) 末梢部 ( 右 ) の横断面中央部における有髄神経軸索を透過型電子顕微鏡で観察した. 下 : 中央部 2,000μm 2 あたりの有髄神経軸索面積を面積別に定量的評価した. 各群 n=6, 平均値 ± 標準誤差にて表記. 12

図 15. 生分解性人工神経移植後 20 週目における有髄神経軸索面積の定量的評価坐骨神経切除 SD ラットに移植された bfgf 徐放化システムを併用した生分解性人工神経 ( 実験群 ) および bfgf 徐放化システム未使用の生分解性人工神経 ( コントロール群 ) を移植後 20 週に採取し, 中枢部 ( 左 ), 中央部 ( 中 ) 末梢部 ( 右 ) の横断面中央部 2,000μm 2 における有髄神経軸索面積を透過型電子顕微鏡で測定した.Native: 正常坐骨神経. 各群 n=6, 平均値 ± 標準誤差にて表記. さらに移植 20 週目における神経横断面 ( 中枢部, 中央部, 末梢部 ) 中央部について, 単位面積 2,000μm 2 あたりの有髄神経数を比較検討した ( 図 16). その結果, 実験群の有髄神経数は正常坐骨神経に比して有意差を認めなかった. 一方でコントロール群は, 中枢部および末梢部において, 正常坐骨神経および実験群と比較して有意に低下していた. 図 16. 生分解性人工神経移植後 20 週目における有髄神経軸索数の定量的評価坐骨神経切除 SD ラットに移植された bfgf 徐放化システムを併用した生分解性人工神経 ( 実験群 ) および bfgf 徐放化システム未使用の生分解性人工神経 ( コントロール群 ) を移植後 20 週に採取し, 中枢部 ( 左 ), 中央部 ( 中 ) 末梢部 ( 右 ) の横断面中央部 2,000μm 2 における有髄神経軸索数を透過型電子顕微鏡で測定した.Native: 正常坐骨神経. 各群 n=6, 平均値 ± 標準誤差にて表記. 13

考 察 末梢神経欠損の治療において, 中空構造体をした人工神経の適応は 2 cm 以内とされ, それ以上の神経欠損長に対しては同種神経移植や自家神経移植が適応されている 1)10). しかし, 本邦において同種神経移植は法的に実施不可能であり, 人工神経の改良が必須とされる状況が続いている. 今回の実験に使用した人工神経は, 管腔壁の厚さを約 500μm に調整した PGA 線維束を管腔構造体に形成した生分解性素材である. また, 従来の中空構造を持つ生分解性人工神経と異なり, 内腔はコラーゲンスポンジで充填されている. 内腔のコラーゲンスポンジは, 神経再生に寄与する種々の細胞が遊走 増殖する際の足場となり, 神経再生能が促進することが報告されている 11 17). 末梢神経の再生については, 以下のような 3 段階の再生機序が報告されている 18). まず神経損傷部は低酸素状態となり, マクロファージが遊走して血管内皮細胞増殖因子 A (VEGF-A) を分泌する. 次に神経組織内に血管内皮細胞が遊走し, 神経走行方向に柱状の血管形成が生じる. 最後に, 形成された血管に沿ってシュワン細胞が遊走し, 軸索が再成長する. このため神経の再生誘導過程においては, 神経再生に先行する血管新生が極めて重要と考えられている. その点で本研究は, 生分解性人工神経による神経再生では上述の末梢神経と同様に神経組織内での新生血管が生ずることを示した. 先行研究では, 人工神経内腔に血管を誘導した場合, 神経再生の臨界欠損とされる 10 mm の 2 倍以上長い 25 mm のラット坐骨神経欠損の神経再生が可能であることが報告されている 19). さらにアルブミンなどの低分子が人工神経壁を透過しうる人工神経を用いれば, 人工神経の側面に血管を隣接させるのみで, 組織学的評価や筋重量, 電気生理学的の観点から人工神経単独よりも神経再生が優れていることが報告されている 16). そこで本研究では, アルブミン分子の管腔壁の透過性がすでに確認されている生分解性人工神経を用い, より多くの血管網を付与する目的から bfgf 徐放化システムを併用した. bfgf は, 血管内皮細胞と血管平滑筋細胞に同時に働き, これらを増殖させ, さらに VEGF,HGF の両因子の発現を調整して血管新生を促進する重要な機能を持つ. また, その効果は VEGF や血小板由来成長因子 (PDGF) に比較してより高いことが報告されている 20 23). 本邦では, 皮膚創傷治癒を促進させる臨床結果に基づき, スプレー剤として皮膚潰瘍や開放創の治療に広くに使用されている. これまでに bfgf が単独投与される場合は, 血中半減期がおよそ 90 秒と生物学的活性が非常に短い欠点が指摘されている. 一方, ゼラチン微粒子と組み合わせて bfgf 徐放化システムとして使用する場合, 塩基性 bfgf と酸性ゼラチン微粒子は静電的に相互作用で吸着し固定化され, ゼラチンの分解速度に合わせて bfgf が徐放される. この結果, 徐放化システムの導入により bfgf の薬理活性を長期間維持することが可能となった. この bfgf 徐放化システムはすでに様々な分野で臨床応用されはじめ, 著しい治療効果が報告され,bFGF の組織濃度は約 2 ~ 10 μg/cm 2 / 日と報告されている 24 28). 神経再生の領域においても, 人工神経に bfgf を塗布することで, 軸索の再生挙動や, 活動電位, 歩行解析結果などより自家神経移植や正常神経とほぼ同等の性能まで回復していることは, これまで報告されている 29 36). そこで本研究では生分解性素材で作製した人工神経に bfgf 徐放化システムを併用した実験モデルを作製し, 人工神経内部に早期より血管新生が誘導され, その後の神経再生誘導が促進されるか否かを検討した. その結果, 生分解性人工神経に bfgf 徐放化システムを併用した場合, 神経の再生過程の早期 (2 4 週 14

目 ) において, 血管内皮細胞の遊走距離および新生血管数が促進され, その後のシュワン細胞の遊走距離および軸索の成長距離は約 1.5 倍伸長して神経再生能が向上することが判明した. さらに透過型電子顕微鏡を用いた軸索数及び軸索総面積の画像解析結果から神経成熟度も同時に高まることが判明した. これらの理由として, 生分解性人工神経の周囲に徐放された bfgf 局所濃度と作用時間が深く関与する機序が推測された. これまでに in vitro において細胞増殖を促進する bfgf 濃度は 10 ng/ml と報告されている 37, 38). 一方, ゼラチン微粒子を用いた bfgf 徐放化システムでは,bFGF の初期濃度を 1 mg/ml とした時に in vivo で最も強い血管新生が認められることが報告されている 39). 本実験では, これまでの報告に基づき bfgf 初期濃度を 1 mg/ ml に設定した.ELISA 法を用いて検討した結果, 生分解性人工神経に併用された bfgf 徐放化システムでは, 一定量の bfgf が持続的に徐放され,2 週間の観察期間における bfgf 濃度は約 5μg/ 日に維持されていることが確認され, これまでの報告と一致していた 28). また徐放後 2 週目では,bFGF 全投与量の 35.1% が残存していた ( 図 3). また本研究では bfgf 徐放化システムを生分解性人工神経の外側に使用した. 本手法の長所は, 現在臨床で使用が試みられている各種人工神経でも用いうる点である. そのため, 今回用いた生分解性人工神経のみならず, 今後改良を施した場合にもシームレスに応用しうる. 一方の短所は,bFGF の作用が人工神経の内部にまで作用しえない可能性がある点である. 今回行った ELISA 法による bfgf 徐放量の測定では ( 図 3), 人工神経内の局在別徐放量の測定にまでは至らなかった. 今後の研究では,bFGF 徐放化システム併用による人工神経内の局在別 bfgf 徐放量を測定するとともに,bFGF 充填型生分解性人工神経の開発も行っていく. 本実験では, 実験群において, シュワン細胞および血管内皮細胞の両細胞群の遊走距離および軸索の成長距離が最も伸長した ( 図 7, 9, 11). その時期は神経再生の早期 ( 移植後 2 4 週目 ) であり,bFGF 徐放により神経周囲に形成された血管網が神経再生に強く影響したことが示唆された.bFGF によって誘導される血管は通常の血管新生によって形成される血管に比較してさらに太く, 比較的構造の整った血管であることが報告されている 40 43). 今後組織学的検討を進め, 生分解性人工神経を取り囲む血管網の形成状態について詳細な観察を予定している. また,bFGF 徐放化システムの導入により, 太い有髄神経が数多く観察されたことから, 運動神経が再生されている可能性があるが, 今回, 運動および知覚を区別する機能的評価は行っておらず今後の課題である. bfgf の生理作用は血管新生を促進させる成長因子としてのみならず, 近年では神経細胞に対する直接的作用が明らかとなりつつある. 特に神経細胞に対する分化促進作用 ( 神経細胞保護作用, 神経軸索伸長作用, 神経幹細胞分化誘導作用等 ) を有する神経栄養因子として注目されている 44). 本研究では, 徐放化システム併用による軸索直径の増加および軸索数の増加を認めた ( 図 15-16). これらの所見は, bfgf が初期に人工神経内部での血管新生を促進させたのち, 神経再生にも直接作用し, 神経の成熟を促していたとも考えられる. 本研究は人工神経内部における血管新生を評価したものであるが, 今後の研究では人工神経を介した神経再生における bfgf の直接的作用を明かにしていく必要がある. 三次元組織の再生誘導技術 (Tissue engineering) では,(1) 細胞,(2) 足場,(3) サイトカインが 3 要素として提唱されている.bFGF 徐放化システムを併用した生分解性人工神経では, 内腔のコラーゲンスポンジが細胞の足場となり, サイトカインである bfgf が加わることで神経再生能が向上した機序が推察される. 今 15

後さらに脂肪幹細胞などの間葉系幹細胞を組み合わせることで 45k), 神経再生能のさらなる向上を図り, 自家 神経移植の代用材料として臨床応用できる技術開発が必要と考えられる. 謝 辞 本稿を終えるにあたり, ご指導 ご校閲を賜りました形成外科学教室 磯貝典孝教授ならびに微生物学教室 藤田貢准教授に深甚な謝意を捧げます. 16

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