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Transcription:

23 ウィルダネス 幻 想 への 抵 抗 ビッグ サーの 南 軍 将 軍 における 荒 野 の 戦 い 菅 井 大 地 1. はじめに リチャード ブローティガン(Richard Brautigan)の 小 説 ビッグ サーの 南 軍 将 軍 (A Confederate General from Big Sur, 1964)は カリフォルニア 州 の ビッグ サー(Big Sur)という 土 地 が 主 な 舞 台 となっている 1 この 作 品 では ビッグ サーという 地 域 を 背 景 に 自 身 の 先 祖 に 南 軍 将 軍 が 居 たと 信 じてやま ないリー メロン(Lee Mellon)という 男 と その 友 人 ジェシー(Jesse)との 生 活 が 描 かれる この 作 品 における 人 里 離 れたビッグ サーでの 生 活 は 物 質 的 な 豊 かさを 享 受 していた 当 時 のアメリカ 社 会 からの 逃 避 行 動 を 髣 髴 とさせると 指 摘 されて いる Terence Malley や Tony Tanner は ブローティガンはこの 作 品 において 当 時 のアメリカ 社 会 に 対 して 悲 観 的 な 態 度 を 示 していると 主 張 する 2 また Gerald Locklin と Charles Stetler によれば 文 明 の 利 便 性 から 隔 離 された 土 地 での 生 活 を 試 みる 登 場 人 物 たちは 本 能 的 にアメリカからの 逃 避 を 試 みている (72)とされる ブローティガンの 作 品 が 物 質 主 義 的 なアメリカ 社 会 を 拒 絶 する 当 時 の 若 者 文 化 に 受 け 入 れられたことを 考 慮 すると 1964 年 に 出 版 され た ビッグ サーの 南 軍 将 軍 がアメリカ 社 会 からの 逃 避 や 物 質 主 義 的 繁 栄 に 対 する 否 定 的 な 姿 勢 を 表 しているという 解 釈 が 妥 当 なものであったことは 想 像 に 難 くない 3 また リーの 曽 祖 父 General Augustus Mellon が 戦 ったとされる 荒 野 の 戦 い (the Battle of the Wilderness)を ビッグ サーをはじめとするカリフォ ルニアの 土 地 において 滑 稽 に 反 復 するリーではあるが 彼 の 戦 い は 退 却 の 色 が 濃 く 消 耗 戦 の 様 相 を 呈 する Marc Chénetier は 冒 頭 の Attrition s Old Sweet Song と 題 された 章 で 示 される 南 北 戦 争 における 死 因 一 覧 表 に 着 目 し 消 耗 (attrition)という 語 が 鍵 語 としてこの 作 品 に 通 底 していると 指 摘 する(23) さらに Jack Hicks も 同 様 に 消 耗 という 語 に 関 して although attrition, the gradual death of the substantial world, is inevitable, it must constantly be resisted. Loss, death, and the destruction of dreams wait at every Nagoya American Literature/Culture, No. 4, March 2016 The Nagoya University American Literature/Culture Society, 2016

24 菅 井 大 地 corner but can be held off by the imagination (154)と 述 べる すなわち ビ ッグ サーの 南 軍 将 軍 においては 物 質 的 な 死 に 抗 うかのように 精 神 的 な 死 を 延 期 しようとする 試 みが 描 かれているとの 指 摘 である こうした 議 論 は 上 述 したように 物 質 主 義 的 なアメリカ 社 会 から 逃 避 して 精 神 的 解 放 を 模 索 する 文 化 的 風 潮 をこの 作 品 に 読 み 込 む 試 みと 軌 を 一 にするものといえよう 20 世 紀 初 頭 から ビッグ サーに 芸 術 家 や 作 家 が 移 住 するようになり やが て 観 光 地 化 するとはいえ 1960 年 代 に 至 るまで ビッグ サーは ボヘミアン な 生 活 様 式 を 可 能 にする 楽 園 のイメージを 植 え 付 けられていたようである 4 この 作 品 が 物 質 主 義 的 な 社 会 から 逃 避 し 精 神 的 な 死 に 抗 うことのでき るユートピアとして ビッグ サーを 舞 台 としていることは こ う し た ビ ッ グ サーのイメージを 踏 まえてのことであると 考 えられる また ビッグ サーが 体 現 するウィルダネス(wilderness)が 自 然 を 求 める 人 々の 欲 望 を 引 き 受 けるものであることはすでに 指 摘 されている 1960 年 にウォレス ステグナー(Wallace Stegner)は ウィルダネスをアメリカ 人 の 精 神 的 支 柱 として 捉 えるエッセイを 発 表 している ステグナーは 物 質 文 明 か ら 逃 れることのできるウィルダネスが まだこの 地 上 のどこかに 存 在 するのだ という 感 情 を 保 つためにも ウィルダネスを 保 全 することが 必 要 であると 論 じ ている つまり ウィルダネスに 使 用 価 値 を 見 出 すというよりも むしろ 社 会 から 逸 脱 することのできる 場 所 として ウィルダネスという 概 念 を 守 ることを 重 視 している(Stegner 175-176) さらに William Cronon によれば ウィル ダネスは 手 つかずの 自 然 を 希 求 する 人 々の 欲 望 を 投 影 する 鏡 のようなもので あるという(69) すなわち ウィルダネスとは 文 明 の 力 が 及 んでいない 手 つか ずの 自 然 があるはずだという 欲 望 を 投 影 することができる 場 所 として 機 能 して いる 社 会 から 隔 絶 した 場 所 であり 原 生 自 然 の 残 る 場 所 であるという 幻 想 が ウィルダネスという 概 念 に 付 随 しているのである ビッグ サーの 南 軍 将 軍 に 関 するこれまでの 議 論 は ビッグ サーとい う 場 所 のイメージと さらにはウィルダネスの 概 念 に 関 連 する 文 明 / 自 然 の 二 元 論 を 前 提 とした 議 論 であるといえる つまり 人 里 離 れたビッグ サーと いう 場 所 は いわばウィルダネスを 体 験 できる 場 所 であり 反 順 応 主 義 的 な 人 物 であるリーが 物 質 主 義 的 文 明 から 逸 脱 することのできるユートピアである との 解 釈 を 先 行 研 究 から 読 み 取 ることができる しかし この 作 品 におけるビ ッグ サーという 場 所 は 豊 かな 物 質 文 明 からの 逃 避 先 としての 機 能 を 果 たし ているにすぎないのだろうか 文 明 / 自 然 という 二 項 対 立 を 措 定 し 物 質 主 義 的 文 明 という 悪 から 逃

ウィルダネス 幻 想 への 抵 抗 25 れ 善 なるものである 自 然 の 中 に 救 いを 求 めるという 図 式 は ロマン 主 義 的 な 自 然 観 の 伝 統 に 沿 うものである ロマン 主 義 的 な 自 然 観 に 関 しては Jonathan Bate が if one historicizes the idea of an ecological viewpoint a respect for the earth and a skepticism as to the orthodoxy that economic growth and material production are the be-all and end-all of human society one finds oneself squarely in the Romantic tradition (9)と 述 べる さらに Donald Worster は ロマン 主 義 的 な 自 然 観 において nature had been abruptly exiled by the scientific mechanists from the realms of value, ethics, and beauty (312)とい う 思 想 があることを 指 摘 する 同 様 に Timothy Clark によれば 近 年 のエコ ロジーに 関 する 思 想 は 自 然 に 対 するロマン 主 義 的 な 概 念 を 吸 収 したものであ るとしたうえで 環 境 批 評 に 関 する 議 論 はしばしば 反 工 業 的 であり 自 然 を 倫 理 的 規 範 として 捉 える 伝 統 があるという(16-18) また 自 然 を 根 源 的 に 持 続 可 能 で 平 和 共 存 可 能 な 場 所 として 捉 えるロマン 主 義 的 概 念 は 環 境 破 壊 の 脅 威 によって 補 完 されるものであると James C. McKusick は 述 べる(29) この ように ロマン 主 義 的 自 然 観 は 自 然 に 対 立 する 概 念 を 措 定 することによって 成 立 していることがうかがえる しかし この 作 品 におけるビッグ サーは 必 ずしも 文 明 から 逃 避 してくる 人 間 を 寛 容 的 に 受 け 入 れ 癒 しを 与 える 存 在 ではない つまり アメリカ 社 会 から 逃 れてくることのできる 楽 園 としてビッグ サーを 捉 えることは 文 明 / 自 然 という 二 元 論 を 前 提 とした 幻 想 にすぎない 本 稿 では ビッグ サーの 南 軍 将 軍 におけるビッグ サーでの 生 活 に 着 目 し 必 ずしもビッグ サーという 場 所 が 物 質 主 義 的 社 会 から 逸 脱 することの できる 楽 園 として 描 かれているわけではないことを 検 証 する これにより こ の 作 品 は 自 然 の 中 に 逃 避 して 反 順 応 主 義 的 な 生 き 方 を 模 索 するリーの 姿 を 描 き 出 しているものの ビッグ サーを 反 順 応 主 義 者 のユートピアとして 捉 える ことには 抵 抗 を 示 していることが 明 らかとなる さらに アメリカ 社 会 から 離 れてウィルダネスを 体 験 できるビッグ サーではあるが そこでの 生 活 は 荒 廃 したものであると 同 時 に ビッグ サーも 物 質 主 義 的 なアメリカ 社 会 から 完 全 に 隔 絶 した 土 地 ではないことが 作 品 中 で 示 されている 一 方 で 最 終 的 にウィ ルダネスに 対 する 態 度 を 留 保 していることをこの 作 品 から 読 み 取 ることもでき る この 作 品 における 荒 野 の 戦 い の 再 演 は こうした 葛 藤 を 暗 示 するもの であり ウィルダネス 幻 想 との 戦 いのメタファーとして 機 能 する つまり こ の 作 品 は ウィルダネスを 理 想 的 なものとして 捉 える 文 明 / 自 然 の 二 元 論 の 枠 組 みにとどまらず ウィルダネスを 一 定 の 価 値 観 で 固 定 化 することに 抵 抗 す

26 菅 井 大 地 るものとして 解 釈 することが 出 来 る 2. 荒 野 からの 呼 び 声 ビッグ サーの 理 想 と 現 実 この 作 品 における 主 要 人 物 リーは 自 身 の 先 祖 に 南 軍 将 軍 がいたという 話 に 固 執 する 男 である リーの 先 祖 であるオーガスタスという 男 が 南 軍 将 軍 であっ たことは メロン 家 で 代 々 語 り 継 がれており それを 誇 りに 思 っているという (CG 11) 5 しかし 実 際 にオーガスタスという 男 が 南 軍 に 所 属 していたとい う 記 録 は 無 く その 事 実 を 知 ったリーは 狼 狽 し 彼 の 家 系 に 南 軍 将 軍 がいたこ とを 信 じてくれとジェシーに 懇 願 する(CG 15) リーにとっては 南 軍 将 軍 の 話 は 疑 いようのないものであり メロン 家 の 伝 説 として 神 話 化 されている オーガスタスの 伝 説 に 固 執 するリーは 自 身 の 先 祖 が 戦 ったであろう 荒 野 の 戦 い をビッグ サー 及 びオークランド(Oakland)という 土 地 で 反 復 す る この 作 品 の 冒 頭 で ビッグ サーという 地 域 が 南 北 戦 争 の 際 に 南 部 連 合 の 一 員 として 北 部 諸 州 に 反 旗 を 翻 したという 架 空 の 歴 史 が 提 示 される(CG 3) すなわち ビッグ サーが 南 部 連 合 であったとする 語 りによって 過 去 の 南 北 戦 争 における 戦 いと 現 代 のビッグ サーが 接 続 され リーにとっての 荒 野 の 戦 い の 主 戦 場 がビッグ サーであることが 暗 示 される この 小 説 の 後 半 部 分 では オーガスタスに 関 する 架 空 の 逸 話 が 並 置 され そ の 物 語 において 彼 は 行 方 不 明 の 兵 卒 として 描 かれる(CG 81, 85, 92) しかし 実 際 は 戦 場 を 逃 げ 回 っており 最 終 的 には 北 軍 兵 士 を 見 つけるやいなや 死 体 のふりをすることで 生 き 延 びようとする(CG 97) リーの 信 じていたような 勇 敢 に 戦 ったオーガスタスのイメージとは 対 照 的 な 彼 の 姿 が 滑 稽 に 描 かれる オーガスタスが 戦 いから 逃 げ 回 っていたのと 同 様 に リーの 戦 いも 退 却 の 色 が 濃 い しばらくジェシーの 部 屋 の 階 下 に 住 んでいたリーは 家 賃 が 払 えずオ ークランドに 引 っ 越 す そこでの 戦 い が 以 下 のように 描 写 される Lee Mellon moved out of his room because he couldn t pay the rent and went over and lay siege to Oakland. It was a rather impoverished siege that went on for months and was marked by only one offensive manoeuver, a daring cavalry attack on the Pacific Gas and Electric Company.(CG 24) リーは オークランド 包 囲 戦 を 展 開 し Pacific Gas and Electric Company に 攻 撃 を 仕 掛 け 主 要 ガス 管 までトンネルを 掘 り そこからガスを 盗 む(CG

ウィルダネス 幻 想 への 抵 抗 27 24) ここで 包 囲 (siege) 攻 撃 的 作 戦 行 動 (offensive manoeuver) 騎 兵 攻 撃 (cavalry attack)といった 語 が 使 用 されていることからも リーの 行 動 と 戦 争 のイメージとを 重 ね 合 わせて 提 示 していることは 明 らかである しか し やがて 資 金 が 底 を 尽 いて 家 賃 が 払 えなくなったリーは ビッグ サーへと 退 散 することとなる ビッグ サーへと 撤 退 したリーは ジェシーへの 手 紙 の 中 でビッグ サーの 素 晴 らしさを 謳 い 彼 をその 場 所 へと 誘 い 込 む ジェシーが 興 味 を 示 すと can t you smell that sweet sagebrush-by-the-ocean air of Big Sur? (CG 32)と 煽 り しきりにビッグ サーを 勧 めるのである リーとジェシーの 往 復 書 簡 の 中 で リーはジェシーを 彼 の 小 屋 へと 呼 び 込 むために ビッグ サーの 素 晴 ら しさを 説 く Why don t come down here? I haven t any clothes on, and I just saw a whale. There s plenty of room for everybody.... This morning I saw a coyote walking through the sagebrush right at the very edge of the ocean next stop China. The coyote was acting like he was in New Mexico or Wyoming, except that there were whales passing below.... Come down to Big Sur and let your soul have some room to get outside its marrow. (CG 32-33) 動 物 を 見 ることができ さらに 都 会 では 得 られないような 解 放 感 を 得 られるこ とを 仄 めかすリーの 手 紙 は まるでビッグ サーへ 観 光 客 を 呼 び 込 む 宣 伝 文 句 のようである コヨーテに 関 する 記 述 では ニュー メキシコ 州 やワイオミン グ 州 の 名 が 挙 げられていることから 砂 漠 地 帯 やイエローストーン 国 立 公 園 を 喚 起 する すなわち 社 会 から 隔 てられたウィルダネスの 中 に 居 るかのような コヨーテの 姿 を 提 示 することで ビッグ サーがウィルダネスに 近 い 環 境 であ ることを 暗 示 する そして ビッグ サーを 訪 れて 魂 を 解 放 してはどうかと ジェシーに 迫 る ビッグ サーでの 生 活 に 関 してリーは 電 気 は 無 いがランタンがあり スト ーヴもあると 説 明 するなど 快 適 な 側 面 を 強 調 する(CG 34, 36) さらに 生 活 費 はどうするのかと 問 うジェシーに 対 して I ve got a garden that grows all year around! A 30.30 Winchester for deer, a.22 for rabbits and quail (CG 38) と 答 え 自 給 自 足 が 可 能 であることを 示 す リーが 謳 うビッグ サーは 物 質 主 義 的 な 社 会 から 離 れて 生 きることを 可 能 にする 楽 園 であり リー 曰 く the

28 菅 井 大 地 greatest place in the world (CG 37)なのである このように リーの 手 紙 は ウィルダネスにおいて 都 市 とは 異 なる 満 ち 足 りた 生 活 へとジェシーをいざなう 呼 び 声 としての 機 能 を 果 たす しかし リーの 謳 い 文 句 とは 対 照 的 に ビッグ サーでの 生 活 は 困 窮 を 極 め ていることが 明 らかとなる そこでは 貧 しい 食 糧 事 情 が 描 かれ ユートピア とは 程 遠 いイメージが 喚 起 される ビッグ サーでの 食 事 については the dinner we had that evening was not very good. How could it be when we were reduced to eating food that the cats would not touch? We had no money to buy anything edible and no prospects of getting any. We were just hanging on (CG 41)とあるように 猫 も 口 をつ けないような 食 事 を 余 儀 なくされていることがほのめかされる そして 為 す 術 もなくただ 空 腹 に 耐 えていることがうかがえる 自 給 自 足 が 可 能 であると 謳 われたビッグ サーでの 生 活 は 実 のところ 金 銭 なしでは 食 料 を 賄 えない 状 態 にあったのである さらに リーの 手 紙 によれば 狩 猟 によって 肉 が 手 に 入 ることが 示 唆 されて いるものの 弾 丸 は 乏 しい 上 に リーの 狩 猟 の 腕 も 信 頼 が 置 けるものではない He [Lee] shot a doe in the ass the doe limped off into the lilac bushes and got away (CG 42)とあるように 狙 った 雌 鹿 には 逃 げられてしまう また そ の 翌 日 残 り 二 発 の 弾 丸 を 携 えて 山 に 入 っていったリーは 弾 丸 を 使 い 果 たし 何 も 獲 ることなく 戻 ってくる(CG 43) このような 食 事 に 関 する 描 写 から ビッグ サーでの 戦 い が 食 糧 事 情 の 貧 しい 消 耗 戦 であることが 暗 示 されると 同 時 に 戦 争 のイメージを 食 事 と 直 接 的 に 結 びつける 描 写 も 見 受 けられる リーが 狩 りに 失 敗 して 戻 った 日 の 夜 の 食 事 に 関 しては 再 び not very good (CG 44)と 記 述 され さらには to make meal a perfect gastronomical Hiroshima, we had some of Lee Mellon s bread for dessert. His bread fits perfectly the description of hardtack served to the soldiers of the Civil War (CG 44)との 描 写 がなされる リーが 作 る 堅 パン サンフランシスコ(San Francisco)で 購 入 した 引 き 割 り 麦 (cracked wheat) を 水 と 混 ぜて 加 工 したもので 後 に 猫 も 齧 ることができないと 描 写 される(CG 54) がデザートとして 出 されるが ここで gastronomical Hiroshima という 表 現 が 使 用 される これにより いかにその 堅 パンが 酷 いものであるか が 強 調 されているが ここで 重 要 なのは ヒロシマ という 語 が 使 用 されるこ とで 凄 惨 な 戦 争 のイメージを 喚 起 し ビッグ サーでの 生 活 は リーにとっ ての 戦 い であることを 読 者 に 再 認 識 させる 効 果 を 持 つことである さらに

ウィルダネス 幻 想 への 抵 抗 29 そのパンが 南 北 戦 争 の 兵 士 の 糧 食 にたとえられていることからも 戦 時 下 の 乏 しい 食 糧 事 情 を 彷 彿 とさせ ビッグ サーでの 戦 い が 消 耗 戦 の 様 相 を 呈 していることが 示 される 都 市 での 戦 い に 敗 北 し ビッグ サーへと 逃 げ 込 んだリーではあるが 彼 の 手 紙 は 逃 避 先 であるウィルダネスを 理 想 的 なユートピアとして 喧 伝 する 都 市 生 活 から 逃 れて 自 給 自 足 の 生 活 を 送 ることができる 場 所 として ウィル ダネスを 称 揚 する 態 度 を リーの 手 紙 から 読 み 取 ることができる しかし 実 際 のビッグ サーでの 生 活 は 理 想 的 なものとは 程 遠 い 荒 野 からの 呼 び 声 に 誘 われてビッグ サーにやってきたジェシーが 目 撃 するのは リーの 謳 い 文 句 と はかけ 離 れたビッグ サーでの 消 耗 戦 なのである 3. 文 明 の 侵 入 エリザベスとジョンストン ビッグ サーは 自 給 自 足 が 可 能 な 楽 園 ではなく そこでの 生 活 は 困 窮 を 極 め ている この 作 品 におけるビッグ サーは 物 質 主 義 的 な 社 会 から 隔 絶 した 場 所 であるかに 見 えるが 反 順 応 主 義 者 のユートピアとして 描 かれているわけで はない そこは 都 市 社 会 における 価 値 観 と 荒 野 での 生 活 が 接 触 する 場 所 で ある ビッグ サーを 訪 れるエリザベス(Elizabeth)とジョンストン ウェイ ド(Johnston Wade)という 二 人 の 人 物 に 焦 点 を 当 てることで 物 質 主 義 的 な 社 会 がウィルダネスに 侵 入 してくる 様 が 描 かれていることが 明 らかとなる リ ーの 手 紙 の 中 で 社 会 から 逸 脱 して 自 給 自 足 が 可 能 であるとされたビッグ サ ーではあるが 実 際 は 金 銭 的 に 余 裕 のある 者 が 訪 れて 余 暇 を 楽 しむ 場 所 とし ての 性 質 を 有 している つまり ビッグ サーという 場 所 は 社 会 から 隔 絶 し たユートピアとしては 描 かれてはいない ビッグ サーは 資 本 主 義 社 会 で 金 銭 を 稼 いだ 者 が 束 の 間 のウィルダネス 滞 在 を 楽 しむための 場 所 としての 側 面 を 有 している 資 本 主 義 社 会 においては 何 らかの 商 品 を 貨 幣 と 交 換 し 自 身 の 利 潤 を 追 求 する いわば リーが 理 想 と するウィルダネスの 生 活 とは 対 極 に 位 置 する 社 会 制 度 として 規 定 することが 出 来 よう そうした 社 会 において 金 銭 を 稼 いだ 者 が ビッグ サーでの 余 暇 を 過 ごす それを 象 徴 的 に 表 すのがエリザベスの 生 活 である リーの 友 人 であるエ リザベスは 1 年 のうち 3 か 月 をロサンゼルス(Los Angeles)で 高 級 娼 婦 (a hundred-dollar call girl)として 過 ごし 残 りの 9 か 月 を 働 かずに 過 ごせるほど のまとまった 金 額 をロサンゼルスで 稼 いでくる そして ビ ッ グ サ ー に 戻 り 髪 を 伸 ばして 瞑 想 して 過 ごすという あたかもヒッピーを 模 したような 生 活 を 送 る(CG 56-57)

30 菅 井 大 地 エリザベスの 生 活 様 式 に 関 して she performed a fantastic change and did it with great skill (CG 56)と 描 写 されるように 彼 女 が 対 照 的 な 二 つの 生 活 を 営 んでいることが 示 唆 される 都 市 部 に 出 稼 ぎに 行 くエリザベスの 職 業 は 娼 婦 であるが これは 彼 女 が 自 身 の 性 を 売 り 物 にしていることを 示 す Jean Baudrillard が 消 費 社 会 においては 性 そのものが 消 費 対 象 となる (144)と 述 べるように エリザベスは 消 費 社 会 において 性 を 商 品 として 販 売 する 商 人 としての 側 面 を 持 つのである 一 方 で ビッグ サーにおけるエリザベス と 彼 女 の 子 どもたちの 生 活 は they live in the lonely reaches of the world (CG 56)と 表 現 され 社 会 から 遠 く 隔 絶 した 場 所 での 慎 ましい 生 活 を 読 者 に 喚 起 する このように ロサンゼルスという 都 市 を 離 れ 精 神 的 に 満 ち 足 りた 生 活 を 送 るために ビッグ サーにやってくるエリザベスの 様 子 が 描 写 される このようなエリザベスの 生 活 様 式 は ビッグ サーにおいて 満 ち 足 りた 生 活 を 送 るために 一 旦 は 資 本 主 義 社 会 において 金 銭 を 稼 ぐことが 必 要 となることを 暗 示 する つまり エリザベスとリーの 間 で 決 定 的 に 異 なっているのは 社 会 の 中 で 金 銭 を 得 て 余 暇 としてのウィルダネス 体 験 を 楽 しんでいるか 否 かであ る さらに 資 本 主 義 社 会 での 成 功 者 を 象 徴 するジョンストン ウェイドという 人 物 が ビッグ サーに 侵 入 する チビでデブでハゲであることを 除 けば 映 画 High Sierra に 登 場 する Humphrey Bogart のようだ と 形 容 され リーから は Roy Earle と 呼 ばれるこの 男 は 罪 深 きビジネスマン (a guilty businessman) であり 金 が 詰 め 込 まれたブリーフケースを 携 えているとされる(CG 85) こ の 男 は Johnston Wade Insurance Company の 社 長 であり 自 分 の 金 目 当 ての 家 族 にうんざりしてビッグ サーへと 逃 げ 込 んできたと 述 べる My wife wants to put me in the nut-house because I bought a new car: my Bentley Bomb. She wants all my money and so does my son who goes to Stanford and my daughter who goes to Mills College.... I run the Johnston Wade Insurance Company in San Jose. I am Johnston Wade. Just because I m fifty-three years old and want a sports car, they think they re going to lock me up, put me away.(cg 88) 彼 の 息 子 たちの 学 費 を 支 払 わねばならないにもかかわらず 高 級 スポーツカー を 買 ったために 妻 からは 気 が 狂 っていると 思 われ 精 神 病 院 に 入 れられそう になったジョンストンは そうした 煩 わしい 家 族 関 係 から 逃 避 してきた 男 であ

ウィルダネス 幻 想 への 抵 抗 31 る また ジョンストンに 関 する 描 写 においても 戦 争 を 彷 彿 とさせる 描 写 が 見 受 けられる 自 身 の 出 自 を 述 べるジョンストンは as if he were a prisoner of war, giving his name, rank and serial number (CG 89)と 戦 争 捕 虜 の 比 喩 を 用 いて 描 写 される ここで 資 本 主 義 社 会 からビッグ サーに 侵 入 し ウ ィルダネスに 捕 らえられた 捕 虜 としてのイメージがジョンストンに 付 与 される さらに ビッグ サーに 来 てからのジョンストンは 気 が 狂 っているとされ 海 岸 で 小 火 騒 ぎを 引 き 起 こす(CG 94) そのため 彼 は リーによって 丸 太 に 縛 り 付 けられることとなるが その 丸 太 を 引 きずってジェシーの 前 に 現 れた 彼 の 姿 は it was horrible (CG 102)と 形 容 される これに 加 えて I [Jesse] expected to see a Confederate invasion of Monterey, California, drums and banners going by on Highway I, but all I saw was Roy Earle [Johnston], free of his wife, sitting by the hole of kitchen wall, beating on an overturned washtub (CG 106)とあるように ジョンストンが 叩 く 金 盥 の 音 が ジェシーにとっては 侵 入 してきた 南 軍 の 軍 鼓 の 音 に 聞 こえるという こ の 時 ジョンストンの 座 っている 場 所 が 台 所 の 壁 に 空 いた 穴 のそばであるこ とを 見 逃 すことはできない 台 所 の 壁 の 穴 に 関 しては the wind roared like the Confederate army through the hole in the kitchen wall: Wilderness thousands of soldiers taking up miles of the countryside Wilderness! (CG 79) と 描 写 されるように ここでも 荒 野 を 進 軍 する 南 軍 のイメージを 読 者 に 喚 起 す る 先 日 まで 捕 虜 として 丸 太 につながれていたジョンストンが どういうわけ か 鎖 を 解 いて 自 由 になり 金 盥 という 軍 鼓 を 叩 きながら 友 軍 を 引 き 連 れてウ ィルダネスに 侵 入 してくるかのようなイメージをこれらの 描 写 から 読 み 取 るこ とができる また the hole in the kitchen wall, his [Lee s] inevitable Wilderness (CG 75)とあるように リーにとってもまた 台 所 の 壁 の 穴 はウィ ルダネスとの 接 触 点 であることが 暗 示 されている このことから ジョンスト ンとリーの 想 像 上 の 荒 野 の 戦 い が 台 所 の 壁 の 穴 というモチーフを 通 して 想 起 される しかし ウィルダネスに 侵 入 したジョンストンはやがて コンプトン (Compton)で 顧 客 に 会 うためにビッグ サーを 去 ることになる(CG 109) 資 本 主 義 社 会 からビッグ サーにやってきたジョンストンではあるが 彼 のウ ィルダネス 体 験 は 一 時 的 なものであり いわば 観 光 客 として 荒 野 の 戦 い を 経 験 したに 過 ぎない ウィルダネスに 侵 入 したジョンストンは 再 び 資 本 主 義 社 会 へと 戻 っていくのである

32 菅 井 大 地 このように エリザベスとジョンストンのウィルダネス 体 験 は 一 時 的 なもの にとどまっている どちらの 生 活 に 軸 足 を 置 いているかに 関 して 両 者 の 間 に 程 度 の 差 はあれ 両 者 とも 完 全 に 社 会 から 切 り 離 されてビッグ サーで 生 活 を 送 ることは 無 い このことから ウィルダネスを 象 徴 するビッグ サーも 資 本 主 義 社 会 の 侵 入 に 絶 えずさらされており リーの 謳 うようなユートピアはすで に 存 在 しないことが 明 らかとなる 4. 増 殖 する 終 章 固 定 化 されることへの 抵 抗 反 順 応 主 義 者 のユートピアとしてのビッグ サーはもはや 存 在 しない 社 会 から 逸 脱 して 自 給 自 足 の 生 活 を 送 ることができると 謳 われたウィルダネスに おいても 文 明 の 力 がおよび 金 銭 が 無 ければ 満 ち 足 りた 生 活 を 送 ることがで きないということが この 作 品 を 通 して 示 唆 される このことは 困 窮 したリ ーが 煙 草 の 吸 殻 を 求 めてハイウェイを 歩 き 回 る The Rites of Tobacco という 章 において 顕 著 である どこまでいっても 一 本 の 煙 草 を 見 つけることができず に 戻 ってきたリーを 見 て 語 り 手 は the end of an American dream (CG 73) と 述 べる 自 らの 努 力 によって 成 功 をつかみ 取 ることが 出 来 るとされるアメリ カン ドリームではあるが この 作 品 は そのような 理 想 の 不 可 能 性 が 示 唆 さ れており いわゆる rags-to-riches の 物 語 ではない この 作 品 におけるアメリ カン ドリームが 具 体 的 に 何 を 意 味 するのかは 明 確 ではないものの リーが 理 想 とした 社 会 から 逸 脱 して 自 給 自 足 する 生 活 は すでに 不 可 能 なものになっ ていることを 示 唆 しているのではないだろうか すなわち 安 易 なウィルダネ ス 体 験 を 提 供 する 場 所 となったビッグ サーは 資 本 主 義 社 会 で 金 銭 を 得 た 者 たちが 余 暇 を 過 ごす 場 所 としての 役 割 を 果 たすのである Roderick Frazier Nash が wilderness appealed to those bored or disgusted with man and his works (47)と 述 べるように 社 会 での 人 間 関 係 や 仕 事 にう んざりした 人 々にとって 一 時 的 にせよ 解 放 される 場 所 としてウィルダネスは 魅 力 的 に 映 る しかし ビッグ サーの 南 軍 将 軍 の 2 年 前 に 出 版 された Jack Kerouac の 自 伝 的 小 説 Big Sur において 1960 年 代 においては Hemingway の Big Two-Hearted River を 希 求 することが 出 来 ない (45)と 述 べられてい るように 観 光 客 の 増 加 などにより ウィルダネスは 資 本 主 義 社 会 の 一 部 とな りつつあり 自 然 の 中 に 癒 しを 求 めるというロマン 主 義 的 な 自 然 体 験 は 不 可 能 であることが 示 唆 されている これと 同 様 に ビッグ サーの 南 軍 将 軍 にお いても ウィルダネスへの 憧 れは 幻 想 であることが 示 され 資 本 主 義 社 会 の 侵 入 が 描 かれている

ウィルダネス 幻 想 への 抵 抗 33 しかし この 作 品 の 最 終 章 におけるウィルダネスに 対 する 態 度 は 曖 昧 である この 作 品 を 通 して リーの 謳 う 自 給 自 足 の 生 活 が 不 可 能 であることが 示 され ビッグ サーという 場 所 は 資 本 主 義 社 会 で 金 銭 を 得 た 者 が 余 暇 を 過 ごすため の 簡 易 的 なウィルダネスであることが 示 唆 される その 一 方 で 6 パターンに 別 れたエンディングの 一 つにおいて ジョンストンの 現 金 が 太 平 洋 に 撒 かれ る 場 面 が 描 かれる All this money ever did was bring me here, Roy Earle volunteered as the hundred dollar bills fluttered like birds onto the sea (CG 116)と 描 写 されるように 金 銭 を 稼 ぐことでビッグ サーに 来 ることが 出 来 た が その 金 銭 も 必 要 が 無 くなったために 海 に 投 げ 捨 てていることがうかがえる すなわち 資 本 主 義 社 会 からの 逃 避 の 果 てに 物 質 主 義 から 逸 脱 したユートピ アを 発 見 したのだと 言 わんばかりの 行 動 である このように この 作 品 を 通 して ウィルダネスが 楽 園 であるという 幻 想 を 回 避 しようとしたブローティガンが 最 終 章 において 楽 園 を 発 見 したかのような エピソードを 挿 入 している しかし これは 一 つのエンディングに 過 ぎない Then there are more and more endings: the sixth, the 53rd, 131st, the 9,435th ending, ending going faster and faster, more and more endings, faster and faster until this book is having 186,000 endings per second (CG 116)とあるよ うに エンディングのパターンは 無 限 に 増 殖 し 加 速 し 最 終 的 には 光 速 で 飛 び 去 って 行 く Edward Halsey Foster が このエンディングに 関 して there are seemingly unlimited possibilities or endings for any given moment (45)と 指 摘 するように この 作 品 は 意 味 の 固 定 化 を 嫌 い 様 々な 読 みの 可 能 性 を 示 唆 し ていると 考 えられる すなわち ウィルダネスに 対 する 態 度 を 留 保 することで ブローティガンは 一 つの 意 味 に 固 定 されることのないウィルダネスを 描 き 出 そうとしているのではなかろうか ブローティガンは 物 質 主 義 的 な 社 会 から 逃 れて 精 神 を 解 放 できる 楽 園 と してのウィルダネスは 幻 想 であること またウィルダネスが 資 本 主 義 社 会 の 侵 入 を 受 けており 安 易 なウィルダネス 体 験 を 提 供 する 場 所 になっていることを ビッグ サーの 南 軍 将 軍 において 描 き 出 した 一 方 で この 作 品 は ウィ ルダネスに 何 らかの 価 値 を 見 出 すことそのものが 人 間 の 文 化 的 価 値 観 によっ て 意 味 づけられたものであることも 同 時 に 示 唆 している そうした 姿 勢 を 顕 著 に 表 すのが 断 片 化 して 増 殖 するエンディングであり そこから 読 み 取 ること のできる ウィルダネスに 対 する 態 度 の 留 保 である すなわち この 作 品 にお ける 荒 野 の 戦 い は ウィルダネスを 意 味 づけることに 対 する 葛 藤 を 暗 示 す るものであり そうした 意 味 において 人 間 中 心 主 義 的 な 自 然 観 から 逸 脱 しよ

34 菅 井 大 地 うとする 姿 勢 を ビッグ サーの 南 軍 将 軍 は 提 示 しているのである 註 1 Tomi Kay Lussier によれば ビッグ サーには 具 体 的 な 境 界 が 無 いものの 北 はカ ーメル(Carmel)から 南 はサンシメオン(San Simeon)のあたりまで そしてサ ンタルシア 山 脈 (Santa Lucia Mountains)の 西 側 から 太 平 洋 沿 岸 に 広 がる 地 域 を 指 すとされる(3-4) また Rosalind Sharpe Wall によれば 州 道 1 号 線 が 通 って いるにもかかわらず 食 堂 やガソリンスタンドはほとんどなく 町 と 呼 べるものも 存 在 しない 孤 立 した 地 域 であるとされる(2) 2 Malley は despite the predominantly comic tone of Confederate General.... Brautigan may be said to be pessimistic or at least nostalgic (112)と 述 べる ま た Tanner は Malley と 同 様 にブローティガンの 作 品 における 喜 劇 性 を 指 摘 しつつ there is a pervasive sense of loss, desolation and death in it which amounts to an implicit formulation of an attitude towards contemporary America (406)と 述 べ る 3 1960 年 代 のアメリカにおいて 物 質 主 義 的 な 社 会 を 拒 絶 する 人 々が 存 在 したこと は David Farber と Beth Bailey が 指 摘 している(55) ま た Joseph Heath と Andrew Potter によれば 60 年 代 の 人 々は 本 能 的 欲 求 を 抑 圧 した 上 に 成 り 立 つ 文 明 から 逃 避 するために 従 来 の 文 化 を 拒 絶 したとされる(40) さらに Herbert Marcuse は Political Preface 1966 to Eros and Civilization において 物 質 的 に 豊 かな 社 会 を 拒 絶 することは 人 類 をさらに 発 展 させることになると 主 張 し 簡 素 で 自 然 な 生 活 を 求 めることに 可 能 性 を 見 出 している(231) このような 文 化 的 風 潮 の 中 で ブローティガンは 若 者 たちの 間 で cult hero (Malley 13)として 位 置 付 けられた 4 ビッグ サーに 関 する 歴 史 については Kevin Starr を 参 照 1950 年 代 には ビート などの 前 衛 的 作 家 が 伝 統 からの 逃 避 (an escape from the conventional)を 象 徴 する 場 所 としてビッグ サーを 捉 えており 60 年 代 においてもビッグ サーと いう 土 地 の 気 風 が 非 体 制 的 な 価 値 観 の 苗 床 (a seedbed of alternative value)で あったと Starr は 指 摘 する(328, 347) 5 ビッグ サーの 南 軍 将 軍 からの 引 証 に 際 して 以 下 書 名 はすべて CG と 略 記 す る 引 用 文 献 Bate, Jonathan. Romantic Ecology: Wordsworth and the Environmental Tradition. London:

ウィルダネス 幻 想 への 抵 抗 35 Routledge, 1991. Print. Baudrillard, Jean. The Consumer Society: Myths and Structures. 1970. Trans. Chris Turner. London: Sage, 2012. Print. Brautigan, Richard. A Confederate General from Big Sur. 1964. London: Picador, 1973. Print. Chénetier, Marc. Richard Brautigan. New York: Methuen, 1983. Print. Clark, Timothy. The Cambridge Introduction to Literature and the Environment. Cambridge: Cambridge UP, 2011. Print. Cronon, William. The Trouble with Wilderness; Or, Getting Back to the Wrong Nature. Uncommon Ground: Rethinking the Human Place in Nature. Ed. William Cronon. New York: Norton, 1996. 69-90. Print. Farber, David, and Beth Bailey. The Columbia Guide to America in the 1960s. New York: Columbia UP, 2001. Print. Foster, Edward Halsey. Richard Brautigan. Boston: Twayne, 1983. Print. Heath, Joseph, and Andrew Potter. The Rebel Sell: How the Counterculture Became Consumer Culture. 2005. West Sussex: Capstone. 2006. Print. Hicks, Jack. In the Singer s Temple. Chapel Hill: U of North Carolina P, 1981. Print. Kerouac, Jack. Big Sur. 1962. New York: Penguin, 1992. Print. Locklin, Gerald, and Charles Stetler. Some Observations on A Confederate General from Big Sur. Critique 13.2 (1971): 72-82. ProQuest. Web. 30 Sep. 2013. Lussier, Tomi Kay. Big Sur: A Complete History & Guide. Marina: Big Sur, 1979. Print. Malley, Terence. Richard Brautigan. New York: Warner, 1972. Print. Marcuse, Herbert. Political Preface 1966 to Eros and Civilization. The Continental Philosophy Reader. Ed. Richard Kearney and Mara Rainwater. New York: Routledge, 1996. 227-234. Print. McKusick, James C. Green Writing: Romanticism and Ecology. New York: Palgrave, 2010. Print. Nash, Roderick Frazier. Wilderness and the American Mind. 1967. New Haven: Yale UP, 2014. Print. Starr, Kevin. Golden Dreams: California in an Age of Abundance, 1950-1963. Oxford: Oxford UP, 2009. Print. Stegner, Wallace. The Meaning of Wilderness for American Civilization. American Environmentalism: Reading in Conservation History. Ed. Roderick Frazier Nash. New York: McGraw-Hill, 1990. 175-180. Print.

36 菅 井 大 地 Tanner, Tony. City of Words: American Fiction 1950-1970. New York: Harper and Row, 1971. Print. Wall, Rosalind Sharpe. Big Sur: A Wild Coast & Lonely. San Carlos: Wide World, 1989. Print. Worster, Donald. Nature s Economy: A History of Ecological Ideas. 1977. New York: Cambridge UP, 1995. Print.