表 2. グループ 経 営 機 能 の 日 本 本 社 と 海 外 子 会 社 の 役 割 分 担 表 ( 例 ) 1 方 針 レ ベ ル 2 役 割 権 限 設 定 レ ベ ル 管 理 対 象 海 外 子 会 社 に 関 する 内 容 企 画 立 案 承 認 実 行 評 価 1.グループ 理 念



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2 役 員 の 報 酬 等 の 支 給 状 況 平 成 27 年 度 年 間 報 酬 等 の 総 額 就 任 退 任 の 状 況 役 名 報 酬 ( 給 与 ) 賞 与 その 他 ( 内 容 ) 就 任 退 任 2,142 ( 地 域 手 当 ) 17,205 11,580 3,311 4 月 1

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続 に 基 づく 一 般 競 争 ( 指 名 競 争 ) 参 加 資 格 の 再 認 定 を 受 けていること ) c) 会 社 更 生 法 に 基 づき 更 生 手 続 開 始 の 申 立 てがなされている 者 又 は 民 事 再 生 法 に 基 づき 再 生 手 続 開 始 の 申 立 てがなさ

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6. 概 要 コメント 本 法 は 社 会 保 険 関 係 を 規 範 化 し 公 民 の 社 会 保 険 への 参 加 社 会 保 険 待 遇 を 享 受 す る 権 益 を 保 護 し 公 民 に 国 家 発 展 の 成 果 を 共 同 で 享 受 させ 社 会 の 調 和 と 安 定 を 促


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預 金 を 確 保 しつつ 資 金 調 達 手 段 も 確 保 する 収 益 性 を 示 す 指 標 として 営 業 利 益 率 を 採 用 し 営 業 利 益 率 の 目 安 となる 数 値 を 公 表 する 株 主 の 皆 様 への 還 元 については 持 続 的 な 成 長 による 配 当 可

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ていることから それに 先 行 する 形 で 下 請 業 者 についても 対 策 を 講 じることとしまし た 本 県 としましては それまでの 間 に 未 加 入 の 建 設 業 者 に 加 入 していただきますよう 28 年 4 月 から 実 施 することとしました 問 6 公 共 工 事 の

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小 売 電 気 の 登 録 数 の 推 移 昨 年 8 月 の 前 登 録 申 請 の 受 付 開 始 以 降 小 売 電 気 の 登 録 申 請 は 着 実 に 増 加 しており これまでに310 件 を 登 録 (6 月 30 日 時 点 ) 本 年 4 月 の 全 面 自 由 化 以 降 申

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第5回法人課税ディスカッショングループ 法D5-4

3. 選 任 固 定 資 産 評 価 員 は 固 定 資 産 の 評 価 に 関 する 知 識 及 び 経 験 を 有 する 者 のうちから 市 町 村 長 が 当 該 市 町 村 の 議 会 の 同 意 を 得 て 選 任 する 二 以 上 の 市 町 村 の 長 は 当 該 市 町 村 の 議

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学校法人日本医科大学利益相反マネジメント規程

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学校教育法等の一部を改正する法律の施行に伴う文部科学省関係省令の整備に関する省令等について(通知)

私立大学等研究設備整備費等補助金(私立大学等

リング 不 能 な 将 来 減 算 一 時 差 異 に 係 る 繰 延 税 金 資 産 について 回 収 可 能 性 がないも のとする 原 則 的 な 取 扱 いに 対 して スケジューリング 不 能 な 将 来 減 算 一 時 差 異 を 回 収 できることを 反 証 できる 場 合 に 原 則

(4) 武 力 攻 撃 原 子 力 災 害 合 同 対 策 協 議 会 との 連 携 1 市 は 国 の 現 地 対 策 本 部 長 が 運 営 する 武 力 攻 撃 原 子 力 災 害 合 同 対 策 協 議 会 に 職 員 を 派 遣 するなど 同 協 議 会 と 必 要 な 連 携 を 図 る

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(Microsoft Word - \203A \225\345\217W\227v\227\314 .doc)

< 現 在 の 我 が 国 D&O 保 険 の 基 本 的 な 設 計 (イメージ)> < 一 般 的 な 補 償 の 範 囲 の 概 要 > 請 求 の 形 態 会 社 の 役 員 会 社 による 請 求 に 対 する 損 免 責 事 由 の 場 合 に 害 賠 償 請 求 は 補 償 されず(

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1 総 合 設 計 一 定 規 模 以 上 の 敷 地 面 積 及 び 一 定 割 合 以 上 の 空 地 を 有 する 建 築 計 画 について 特 定 行 政 庁 の 許 可 により 容 積 率 斜 線 制 限 などの 制 限 を 緩 和 する 制 度 である 建 築 敷 地 の 共 同 化 や

二 資本金の管理

・モニター広告運営事業仕様書

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2 一 般 行 政 職 給 料 表 の 状 況 ( 平 成 23 年 4 月 1 日 現 在 ) 1 級 2 級 3 級 4 級 5 級 6 級 7 級 1 号 給 の 給 料 月 額 最 高 号 給 の 給 料 月 額 135,600 円 185,800 円 222,900 円 261,900 円

< F2D A C5817A C495B6817A>

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平成24年度開設予定大学院等一覧(判定を「不可」とするもの)

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海 外 子 会 社 の 役 割 設 定 の 重 要 性 について ~ 海 外 子 会 社 へ 派 遣 されるグローバル 人 材 育 成 を 進 める 前 に~ みずほ 総 合 研 究 所 コンサルティング 部 主 席 コンサルタント 佐 野 暢 彦 海 外 子 会 社 マネジメントを 進 める 上 で ビジネスのグローバル 化 を 進 める 日 本 企 業 にとって 海 外 子 会 社 のマネジ メントのあり 方 については 多 く 議 論 され ているところである 議 論 の 背 景 には 日 本 企 業 による 海 外 事 業 運 営 のさま ざまな 問 題 課 題 がある これらは 大 き く 分 けると 海 外 進 出 時 のものと 海 外 進 出 後 一 定 期 間 が 経 過 した 後 の 海 外 佐 野 主 席 コンサルタント 事 業 運 営 上 のものとに 区 分 できる 本 稿 では 後 者 ( 海 外 事 業 運 営 上 の 問 題 課 題 )について 論 じたい 内 部 監 査 の 限 界 海 外 進 出 後 の 事 業 運 営 が 軌 道 に 乗 り 出 した 現 地 法 人 では 管 理 面 の 問 題 が 多 く 見 られるようになる 不 正 誤 謬 の 発 生 現 地 の 法 規 制 商 習 慣 による 制 約 高 離 職 率 労 働 争 議 発 生 など さまざまな 問 題 が 起 こっている これらの 問 題 のうち 弊 社 コンサルタントの 経 験 や 書 籍 レポート 等 の 文 献 からの 情 報 収 集 を 含 め 海 外 子 会 社 の 主 な 問 題 課 題 を 経 営 資 源 (ヒトモノ 情 報 カネ)の 観 点 から 整 理 したものが 表 1である これら 問 題 の 早 期 発 見 や 是 正 のための 手 法 として 会 社 のマネジメントの 安 全 性 正 確 性 といった 観 点 から 対 処 するための 内 部 監 査 は 効 果 的 な 取 り 組 みであると 考 えられる しかし 海 外 子 会 社 のマネジメントに 関 する 多 様 な 問 題 を 概 観 する に 内 部 監 査 の 観 点 からでは 対 処 できない 問 題 が 含 まれていると 考 え 表 1. 海 外 子 会 社 に 係 る 問 題 課 題 の 事 例 ヒ ト モ ノ 情 報 カ ネ 事 例 内 容 海 外 子 会 社 派 遣 候 補 者 人 材 に 対 して 習 得 させる 知 識 スキルが 定 まっていない 将 来 的 に 海 外 子 会 社 の 経 営 を 担 わせる 現 地 人 材 の 計 画 的 な 育 成 ができていない 海 外 子 会 社 の 現 地 社 員 の 離 職 率 が 高 く 人 材 が 定 着 しない 海 外 子 会 社 における 紛 争 訴 訟 によりグループ 本 社 が 被 るリスクヘッジ 体 制 が 築 けていない 現 地 法 分 野 ( 独 占 禁 止 法 外 国 公 務 員 への 贈 賄 罪 税 法 他 )について 海 外 子 会 社 と 連 携 できずにいる 移 転 価 格 タックスヘイブン 税 制 ダンピング 規 制 等 を 含 めた 取 引 条 件 のチェック 体 制 が 築 けていない ディスクロージャー( 財 務 諸 表 事 業 報 告 等 )に 係 る 海 外 子 会 社 からの 情 報 収 集 ができていない 海 外 子 会 社 が 現 地 当 局 から 罰 金 を 科 され( 税 金 滞 納 他 ) コンプライアンス 体 制 上 の 不 備 が 生 じている 海 外 子 会 社 の 予 算 と 実 績 の 比 較 について 海 外 子 会 社 からの 情 報 に 依 拠 する 傾 向 が 強 い 海 外 子 会 社 の 経 理 処 理 が 適 正 に 行 われているか 把 握 できていない ( 出 所 ) 海 外 展 開 成 功 のためのリスク 事 例 集 中 小 企 業 海 外 展 開 支 援 関 係 機 関 連 絡 会 議 みずほ 国 際 人 事 労 務 セミナー みずほ 銀 行 直 投 支 援 部 2012 年 2 月 9 日 ホーチミン 商 工 会 主 催 現 地 人 ミドルマネジャー 育 成 セミナー 協 賛 :( 公 財 ) 日 本 生 産 性 本 部 ほか られる というのは これら 問 題 の 多 くは 本 社 の 方 針 や 期 待 される 役 割 が 十 分 に 共 有 できていないことが 原 因 の 一 つと 考 えられ 組 織 体 の 経 営 目 標 の 効 果 的 な 達 成 に 役 立 つことを 目 的 とする 内 部 監 査 *1 では 対 応 しきれないといえる たとえば 必 要 な 現 地 人 材 像 が 描 けず 海 外 子 会 社 での 計 画 的 な 採 用 ができない 海 外 子 会 社 の 離 職 率 が 高 く 人 材 が 定 着 しな い 労 働 争 議 が 発 生 などは 決 められた 方 針 ルールに 則 って 運 営 を 行 っていたか 否 かの 問 題 というよりは 適 切 な 方 針 ルールを 設 定 で きていないことに 問 題 の 根 源 があるといえ 明 確 な 人 材 像 を 描 けて いない 現 地 従 業 員 への 一 方 的 なルールの 押 しつけ といったこと が 原 因 である 可 能 性 が 高 い A 社 ( 東 証 1 部 上 場 )の 事 例 弊 社 では グループ 経 営 の 観 点 からどのような 本 社 機 能 を 保 有 す べきか ということをテーマに 経 営 コンサルティングに 取 り 組 んでいる その 中 で 海 外 子 会 社 との 関 係 で 検 討 したケースを 紹 介 する 海 外 進 出 後 20 年 を 超 えるA 社 は 傘 下 の 海 外 子 会 社 事 業 のグループへ の 業 績 貢 献 割 合 が 高 く 海 外 ビジネスの 成 功 企 業 といえる A 社 では 海 外 子 会 社 の 自 主 性 を 重 んじ 大 きな 裁 量 を 与 えるとも に 日 本 国 内 で 培 った 信 用 力 で 海 外 子 会 社 の 事 業 成 長 を 後 押 しして きた 日 本 と 海 外 子 会 社 の 情 報 共 有 においても A 社 の 管 理 部 門 や 事 業 部 門 のトップはもちろん A 社 社 長 自 らも 頻 繁 に 現 地 に 赴 き 各 種 会 議 体 によりコミュニケーションを 図 ってきた しかし 業 績 貢 献 度 が 高 くなるにつれ A 社 では 海 外 が 暴 走 気 味 海 外 からの 十 分 な 情 報 が 取 れない といった 海 外 子 会 社 に 対 問 題 箇 所 する 懸 念 が 出 始 めた 一 方 の 海 外 現 地 法 人 の 経 営 者 社 員 か らは 本 社 の 意 向 に 沿 った 事 業 運 営 をして 組 織 いるが 現 地 ビジネスのスピード 感 を 理 解 し 制 度 てほしい 本 社 のフォーマットに 基 づき 情 報 提 供 しているのに まだ 情 報 が 足 りないと 言 人 材 配 置 われる といった 声 があり 日 本 本 社 と 海 外 子 会 社 にギャップが 発 生 している この 事 例 の 会 社 では 事 業 執 行 や 各 種 管 理 に 関 する 人 員 体 制 はかなり 整 備 され 12 mizuho global news 2014 SEP&OCT vol.75

表 2. グループ 経 営 機 能 の 日 本 本 社 と 海 外 子 会 社 の 役 割 分 担 表 ( 例 ) 1 方 針 レ ベ ル 2 役 割 権 限 設 定 レ ベ ル 管 理 対 象 海 外 子 会 社 に 関 する 内 容 企 画 立 案 承 認 実 行 評 価 1.グループ 理 念 グループの 根 本 となる 考 え 概 念 方 向 性 行 動 規 範 - - - 本 社 経 営 会 議 2.グ ル ー プ ビ ジ ョ ン 年 後 の 到 達 点 ( 規 模 エリア 取 り 扱 い 品 目 など) 本 社 経 営 企 画 本 社 経 営 会 議 - 本 社 経 営 会 議 3.グループ 戦 略 海 外 での 取 り 扱 い 事 業 の 見 直 し 会 社 の 統 廃 合 本 社 経 営 企 画 本 社 経 営 会 議 海 外 子 会 社 本 社 経 営 会 議 4.グループ 管 理 機 能 人 事 海 外 子 会 社 役 員 人 事 任 命 本 社 経 営 会 議 本 社 経 営 会 議 - 本 社 経 営 会 議 人 事 評 価 制 度 の 見 直 し など 本 社 人 事 本 社 経 営 会 議 海 外 子 会 社 本 社 経 営 会 議 新 卒 中 途 の 採 用 海 外 子 会 社 海 外 子 会 社 海 外 子 会 社 本 社 人 事 会 計 財 務 海 外 子 会 社 の 資 金 調 達 グループ 内 ファイナンス 本 社 財 務 本 社 経 営 会 議 本 社 財 務 本 社 経 営 会 議 投 資 設 備 等 の 投 資 案 件 経 営 上 の 最 重 要 な 案 件 ( 百 万 円 以 上 ) 本 社 経 営 企 画 本 社 経 営 会 議 海 外 子 会 社 本 社 経 営 会 議 設 備 等 の 投 資 案 件 経 営 上 の 重 要 な 案 件 ( 百 万 円 以 下 ) 海 外 子 会 社 海 外 子 会 社 海 外 子 会 社 本 社 経 営 企 画 事 業 計 画 売 上 利 益 経 費 販 売 数 量 等 の 数 値 目 標 設 定 本 社 経 営 企 画 本 社 経 営 会 議 海 外 子 会 社 本 社 経 営 会 議 シナジー 連 携 情 報 共 有 コミュニケーション 本 社 経 営 企 画 本 社 経 営 会 議 海 外 子 会 社 本 社 経 営 会 議 グループ 経 営 に 係 る 必 要 機 能 ( 役 割 体 制 )が 整 っている 上 記 の ギャップが 発 生 する 原 因 としては 日 本 本 社 と 海 外 子 会 社 それぞれが 担 う 役 割 が 明 確 になっていないことが 考 えられる ドメイン 事 業 戦 略 に 基 づき どのような 役 割 権 限 を 保 有 し どのよう な 制 度 ルールを 構 築 し どのような 人 材 を 配 置 するのかが 検 討 される べきである 役 割 設 定 方 法 とその 考 え 方 役 割 設 定 は どのような 役 割 を 担 うか3つのレベルで 考 えると 整 理 しやすい 1 海 外 事 業 に 係 る 経 営 方 針 や 海 外 事 業 ビジョンといった 方 針 レベル 2 事 業 執 行 機 能 管 理 機 能 に 係 る 役 割 権 限 設 定 レベ ル 3 業 務 フローや 各 種 運 用 ルールレベルである これらの 中 で 3 のような 細 目 レ ベ ル ではなく 1 2といった 方 針 権 限 レ ベ ル で 抜 け 漏 れの 有 無 を 確 認 する 必 要 がある 次 に 1 2レベルでの 充 足 状 況 を 踏 まえ 今 度 は 各 種 方 針 役 割 権 限 が 本 社 と 海 外 子 会 社 どちら がどの 部 分 を 分 担 するのかを 明 確 にする 必 要 がある( 表 2) 1 2レ ベルを 整 備 するためのフレームワークであり 参 考 にしてほしい *2 役 割 設 定 の 整 備 は 変 化 する 市 場 環 境 や 自 社 の 事 業 拡 大 の 度 合 いなど 将 来 像 を 見 据 え どの 程 度 の 役 割 を 充 足 するのか 本 社 海 外 子 会 社 のどちらが 担 うのかを 検 討 する 必 要 がある 役 割 分 担 の 対 象 となる 各 レベルで 外 部 内 部 の 環 境 要 因 を 考 慮 しつつ 役 割 を 設 定 するのは 容 易 なことではない 役 割 設 定 の 考 え 方 については 企 業 の 戦 略 と 組 織 設 計 のあり 方 海 外 に 派 遣 する 経 営 者 スタッフの 役 割 の 明 確 化 教 科 書 的 には 担 うべき 役 割 責 任 ( 権 限 設 定 )を 明 確 にして その 役 割 や 責 任 を 担 える 能 力 経 験 スキル 等 をもった 人 材 を 任 用 せよ と いうことになる とはいえ 海 外 子 会 社 の 事 業 執 行 責 任 を 担 いながら 海 外 事 業 の リスク 管 理 を 含 めた 管 理 業 務 全 般 を 豊 富 な 経 験 とスキルをもって 遂 行 できる 有 能 な 人 材 がいるかといえば そう 簡 単 に 見 つからないのが 実 情 である 海 外 子 会 社 の 事 業 運 営 の 任 に 当 たらせる 経 営 者 やスタッフは 自 社 の 限 られた 人 材 から 選 ぶことになり 海 外 子 会 社 の 経 営 に 精 通 し た 経 験 豊 富 な 人 材 を 任 用 することは 難 しいと 思 われる しかし どのよ うなことが 役 割 期 待 としてあり どのようなことを 担 ってほしいのかを 可 能 な 限 り 具 体 的 に 示 すことはできる 示 された 役 割 に 対 して 足 りな い 業 務 知 識 やスキルの 獲 得 が 海 外 事 業 展 開 上 の 人 材 育 成 の 取 り 組 むべきテーマとなり 示 された 役 割 期 待 を 担 える 人 材 が 育 成 採 用 すべき 人 材 像 となる をベースに 説 明 したい 企 業 の 戦 略 とは ビジョン ドメイン 全 社 事 業 戦 略 などから 構 成 さ れ グループ 全 社 と 事 業 ごとに ありたい 姿 (ビジョン)を 実 現 するため にどのような 事 業 領 域 において(ドメイン) どのような 事 業 活 動 を 行 うか ( 事 業 機 能 戦 略 )を 規 定 することである そして 戦 略 遂 行 を 下 支 えするのが 組 織 であり その 組 織 の 構 成 要 素 として 組 織 の 骨 格 と 担 う 役 割 権 限 (Structure) 制 度 ルール (System) 人 材 配 置 (Staffing)がある 海 外 子 会 社 の 役 割 設 定 を 想 定 した 場 合 海 外 子 会 社 のビジョン *1 内 部 監 査 とは 組 織 体 の 経 営 目 標 の 効 果 的 な 達 成 に 役 立 つことを 目 的 として 合 法 性 と 合 理 性 の 観 点 から 公 正 かつ 独 立 の 立 場 で ガバナンスプロセス リスクマネジメント およびコントロールに 関 連 する 経 営 諸 活 動 の 遂 行 状 況 を 内 部 監 査 人 としての 規 律 遵 守 の 態 度 をもって 評 価 し これに 基 づいて 客 観 的 意 見 を 述 べ 助 言 勧 告 を 行 うアシュ アランス 業 務 および 特 定 の 経 営 諸 活 動 の 支 援 を 行 うアドバイザリー 業 務 である 日 本 内 部 監 査 協 会 監 査 基 準 より *2 このフレームワークは 純 粋 持 株 会 社 ( 親 会 社 )が 事 業 子 会 社 を 管 理 監 督 するうえで 各 種 方 針 ( 表 中 の 管 理 対 象 項 目 : 理 念 ビジョン 戦 略 )とグループ 管 理 機 能 について それぞれの 項 目 のPDCA( 企 画 立 案 承 認 実 行 評 価 )のどのプロセスを 親 会 社 子 会 社 が 担 うのかを 整 理 するためのものである 事 業 執 行 上 の 機 能 についてはこのフ レームワークでは 対 応 していない mizuho global news 2014 SEP&OCT vol.75 13

中 国 環 境 保 護 法 の 改 正 ~2015 年 1 月 1 日 の 施 行 前 に 予 想 される 関 連 法 令 の 改 正 にも 留 意 を~ 弁 護 士 法 人 キャスト 日 本 国 弁 護 士 金 藤 力 氏 ( 監 修 : 上 海 勤 瑞 律 師 事 務 所 中 国 律 師 徐 暁 青 氏 ) 中 国 の 環 境 保 護 法 が 4 月 24 日 に 改 正 され 2015 年 1 月 1 日 に 施 行 される 改 正 環 境 保 護 法 ( 以 下 改 正 法 )は 国 家 環 境 保 護 第 12 次 5ヵ 年 計 画 (2011 年 12 月 )や 中 国 共 産 党 第 18 期 中 央 委 員 会 第 3 回 全 体 会 議 (2013 年 11 月 )などで 示 された 政 策 方 針 に 基 づいているが もともと 環 境 保 護 法 は 原 則 的 な 規 定 が 多 く 詳 細 は 水 汚 染 防 止 処 理 法 や 大 気 汚 染 防 止 処 理 法 などの 法 律 行 政 法 規 や 各 地 における 地 方 性 法 規 さらには 各 種 の 環 境 基 準 によって 定 められている これらも 今 回 の 改 正 法 施 行 前 に 対 応 して 改 正 されていくことが 予 想 される なお 本 稿 は 6 月 時 点 の 状 況 を 紹 介 している 政 府 機 関 の 監 督 管 理 責 任 の 強 調 改 正 法 では 地 方 各 級 の 人 民 政 府 が 当 該 行 政 区 域 の 環 境 品 質 に ついて 責 任 を 負 うべきことを 規 定 し( 改 正 法 第 6 条 ) 例 えば 基 準 に 達 しない 地 域 の 地 方 人 民 政 府 が 期 間 を 限 った 基 準 到 達 計 画 を 制 定 し かつ 措 置 を 講 じて 期 限 どおりに 基 準 に 到 達 させる 義 務 を 負 うこと( 改 正 法 第 28 条 ) 人 民 代 表 大 会 への 報 告 および 監 督 を 受 けること( 改 正 法 第 27 条 )などが 盛 り 込 まれている さらに 国 家 発 展 改 革 委 員 会 の 省 エネ 排 出 削 減 に 関 する 第 12 次 5ヵ 年 計 画 の 行 動 方 案 では 省 エネ 排 出 削 減 目 標 未 達 の 地 区 につい てはその 後 1 年 は 関 係 する 責 任 者 を 昇 格 させず また 一 部 の 新 たなプ ロジェクトの 審 査 認 可 を 暫 定 的 に 停 止 するという 方 針 を 取 っている び 政 府 調 達 等 の 面 における 奨 励 および 支 持 について 明 文 化 する 条 項 を 新 たに 追 加 した すなわち 1 国 による 環 境 保 護 産 業 の 発 展 の 奨 励 支 持 ( 改 正 法 第 21 条 ) 2 企 業 が 法 定 要 求 以 上 に 汚 染 物 排 出 を 減 少 させる 措 置 への 奨 励 支 持 ( 改 正 法 第 22 条 ) 3 企 業 が 環 境 改 善 のために 移 転 閉 鎖 等 を 行 うことへの 支 持 ( 改 正 法 第 23 条 ) さらに4 国 家 機 関 および 財 政 資 金 を 使 用 するその 他 の 組 織 は 省 エ ネ 節 水 材 料 節 約 等 の 環 境 保 護 に 有 利 な 製 品 設 備 および 施 設 を 優 先 的 に 調 達 および 使 用 しなければならないこと( 改 正 法 第 36 条 ) 等 である 2011 年 ~2015 年 における 中 国 の 政 府 環 境 投 資 の 予 算 ( 政 府 金 融 機 関 企 業 および 社 会 の 投 資 を 含 む)は5 兆 人 民 元 を 超 えており 政 府 機 関 の 対 応 強 化 により 環 境 投 資 がさらに 促 進 される ことも 予 想 され 日 系 企 業 の 持 つ 環 境 保 護 に 関 する 技 術 やサービス を 活 用 しようとする 動 きが 出 てくることが 期 待 できる 毎 年 6 月 5 日 が 焦 点 に 改 正 法 第 10 条 では 毎 年 6 月 5 日 を 環 境 の 日 とすることを 明 記 し た 6 月 5 日 前 後 の 報 道 では 環 境 保 護 部 が 5 月 27 日 付 の 2013 年 中 国 環 境 状 況 公 報 を 発 表 し 例 えば 大 気 汚 染 に つき2016 年 1 月 1 日 から 全 国 で 施 行 予 定 の 新 基 準 での 測 定 74 都 市 のうち 基 準 値 合 格 は4.1%しかないことなどが 発 表 されている また 上 海 や 広 州 で 違 法 企 業 リストが 公 表 されるなど 来 年 以 降 もレピュテー ション 維 持 の 観 点 から 留 意 すべき 日 となると 予 想 される 環 境 保 護 のための 財 政 措 置 等 を 明 文 化 改 正 法 では 政 府 による 環 境 保 護 のための 財 政 租 税 価 格 およ 図 表. 改 正 点 の 概 要 政 府 機 関 の 責 任 財 政 措 置 環 境 の 日 情 報 公 開 公 衆 参 与 罰 則 強 化 現 行 法 既 存 法 令 改 正 法 派 生 事 項 抽 象 的 規 定 ほぼなし なし なし 抑 止 力 が 弱 いもの 政 策 上 で 個 別 実 施 一 部 は 先 行 実 施 従 来 より 強 調 明 文 化 詳 細 化 新 設 明 文 化 従 来 より 強 化 目 標 管 理 を 強 化 個 別 の 規 制 強 化 報 道 等 住 民 運 動 情 報 公 開 および 公 衆 参 与 改 正 法 をめぐる 対 応 を 考 えていくうえでは 環 境 に 関 する 大 規 模 な デモとの 関 係 という 視 点 が 欠 かせない 現 地 企 業 の 操 業 安 定 に 大 き な 影 響 を 与 えるからである 次 頁 の 表 の 事 例 から 見 ると 企 業 にとっては 適 正 に 法 定 の 手 続 を 行 うことだけではなく 地 元 政 府 による 周 辺 住 民 等 への 補 償 等 が 適 切 に 行 われているか 否 かなどについても 十 分 に 配 慮 する 必 要 がある また いずれも 公 衆 への 情 報 公 開 の 難 しさを 感 じさせられる 改 正 法 では 特 に 情 報 公 開 と 公 衆 参 与 の 一 章 ( 第 5 章 第 53 条 ~ 第 58 条 )を 設 け 公 衆 の 環 境 情 報 の 取 得 環 境 保 護 への 参 与 監 督 の 権 利 を 明 確 に 規 定 している 改 正 法 では 環 境 保 護 部 や 各 級 の 環 境 保 護 部 門 による 環 境 品 質 環 境 モニタリング 突 発 的 環 境 事 件 環 境 行 政 許 可 行 政 処 罰 な 14 mizuho global news 2014 SEP&OCT vol.75

表. 改 正 法 公 布 前 後 の 報 道 事 例 3 月 4 月 5 月 広 東 省 茂 名 市 甘 粛 省 蘭 州 市 浙 江 省 杭 州 市 らびに 汚 染 物 排 出 費 の 徴 収 および 使 用 状 況 等 の 情 報 の 公 開 ( 改 正 法 第 53 条 )や 重 大 な 環 境 影 響 をもたらすおそれのあるプロジェク トにつき 要 求 される 環 境 影 響 報 告 書 は 原 則 として 全 文 公 開 すべき 旨 が 定 められた( 改 正 法 第 56 条 ) このうち 建 設 プロジェクトにかかる 環 境 影 響 報 告 書 の 全 文 公 開 については すでに 環 境 保 護 部 によるガイ ドラインがあり 1 月 1 日 からこれに 従 った 実 務 の 運 用 が 開 始 されている さらに 改 正 法 では 公 衆 による 通 報 の 権 利 を 明 記 しており ( 改 正 法 第 57 条 ) 現 地 での 製 造 業 の 事 業 展 開 においては いわゆ る 周 辺 住 民 対 策 がより 一 層 重 要 となってくる 環 境 保 護 公 益 訴 訟 石 油 化 学 プロジェクトの 建 設 をめぐってデモ 隊 と 警 官 の 衝 突 に 至 り 数 十 名 の 負 傷 者 が 出 る 騒 動 が 発 生 した 水 道 水 からベンゼンが 検 出 され 市 民 がミネ ラ ル ウォー ターを 買 いに 殺 到 する 等 の パニックが 発 生 ゴミ 焼 却 場 の 建 設 をめぐっ て 数 千 人 の 群 衆 が 道 路 を 塞 ぎ 警 官 と 民 間 人 の 双 方 に 数 十 名 の 負 傷 者 が 出 る 騒 動 となった 改 正 法 は 1 政 府 の 民 政 部 門 において 登 記 し 2 環 境 保 護 公 益 活 動 に 連 続 5 年 以 上 従 事 し 規 律 違 反 記 録 がない 社 会 組 織 は 人 民 法 院 に 対 して 環 境 保 護 公 益 訴 訟 を 提 起 できることとした( 改 正 法 第 58 条 ) これは2012 年 の 改 正 民 事 訴 訟 法 第 55 条 に 定 める 公 益 訴 訟 主 体 の 明 確 化 と 位 置 づけられる ただし この 基 準 を 満 たす 組 織 は 現 在 のところ 全 国 で10あまりの 政 府 系 組 織 しかないようである 生 態 保 護 レッドラインの 確 定 改 正 法 は 特 定 区 域 につき 国 家 が 生 態 保 護 レッドライン( 紅 線 )を 確 定 し 厳 格 な 保 護 を 実 行 するとした( 改 正 法 第 29 条 ) これは 経 済 優 先 の 開 発 に 歯 止 めをかけるための1つの 意 思 表 明 であると 理 解 できる 汚 染 物 排 出 費 または 環 境 保 護 税 の 徴 収 従 来 から 汚 染 物 排 出 費 徴 収 使 用 管 理 条 例 や 水 汚 染 防 止 処 理 法 等 の 個 別 立 法 により 汚 染 物 排 出 費 が 徴 収 されていたが 改 正 法 ではこれを 改 めて 一 般 的 な 形 で 規 定 した( 改 正 法 第 43 条 ) 違 法 行 為 に 対 する 処 罰 の 強 化 事 前 にプロジェクトの 無 害 性 に 関 する 説 明 会 等 を 行 ったが 結 果 として 信 用 されず 逆 に 群 衆 の 反 感 を 買 ったという 経 緯 が あった 発 表 の 遅 れが 公 衆 の 不 信 感 を 煽 る 結 果 となった 原 因 が10 年 以 上 前 の 石 油 化 学 工 場 の 事 故 2 件 とされ 土 壌 汚 染 に 対 する 規 制 強 化 の 動 きにも 影 響 あり 専 門 家 の 見 地 からは 技 術 的 な 問 題 がないとされているにもか かわらず 周 辺 の 不 動 産 価 格 の 下 落 などの 経 済 的 利 益 など も 絡 んで 騒 動 に 発 展 している 改 正 法 においては 汚 染 に 対 する 罰 則 が 大 幅 に 強 化 されている その1つが 違 法 状 態 が 解 消 するまでは1 日 ごとに 罰 金 を 科 すという 制 度 であるが( 改 正 法 第 59 条 ) これは 是 正 を 拒 絶 した 場 合 の 罰 則 であ る むしろ 改 正 法 では 環 境 保 護 部 門 による 生 産 制 限 や 生 産 停 止 等 の 命 令 が 出 しやすくなった 点 に 注 目 すべきであろう( 改 正 法 第 60 条 ) 例 えば 2013 年 6 月 の 安 徽 省 安 慶 市 の 事 例 では 中 国 石 化 集 団 傘 下 の 企 業 に 罰 金 を 科 した 事 例 が 画 期 的 なものとして 報 じられたが そ の 罰 金 額 は9 万 元 にすぎなかった 改 正 前 の 環 境 保 護 法 でも 罰 金 のほかに 業 務 停 止 命 令 という 処 罰 が 設 けられていたが( 改 正 前 の 第 39 条 ) この 規 定 は 中 央 企 業 の 業 務 停 止 等 については 必 ず 国 務 院 の 承 認 を 得 なければならないという 高 いハードルを 設 けていた 今 回 の 改 正 を 受 けて 企 業 側 として 今 後 心 配 されるのは いった ん 事 故 が 起 これば 万 全 の 是 正 措 置 を 求 められ 過 剰 と 見 える 対 策 で あってもそれが 完 了 しない 限 り 正 常 操 業 に 戻 ることを 許 されないおそ れである もちろん 排 出 基 準 等 の 遵 守 による 事 故 防 止 が 最 優 先 であ るが 万 一 の 場 合 には 解 決 までのスピードが 問 われることとなる 一 方 で 環 境 保 護 関 連 の 製 品 やサービスを 提 供 する 場 面 では 対 応 のス ムーズさを1つのアピールポイントとすることも 有 益 となろう なお 罰 則 ではないがもう1つ 注 目 すべきは 企 業 内 における 責 任 者 および 関 連 人 員 の 責 任 を 明 確 にすべき 旨 の 規 定 が 追 加 された 点 にある( 改 正 法 第 42 条 ) 従 来 日 本 本 社 から 派 遣 された 董 事 や 総 経 理 が( 具 体 的 な 関 与 がないにもかかわらず) 直 接 責 任 者 としての 処 罰 対 象 となる 懸 念 もあったが 今 後 は 責 任 者 を 明 確 にすることでそのよう な 不 慮 のリスクを 避 けることが 期 待 できる 土 壌 汚 染 に 関 する 規 制 の 厳 格 化 など 今 後 の 法 令 改 正 に 留 意 を 改 正 法 公 布 後 環 境 保 護 局 が 5 月 14 日 に 発 布 した 環 発 [2014]66 号 通 知 では 用 地 環 境 調 査 およびリスク 評 価 汚 染 に 関 する 処 理 修 復 責 任 主 体 の 明 確 化 を 経 ていない 工 場 跡 地 につき 土 地 の 流 通 を 禁 じることとされている 製 造 業 企 業 における 事 業 再 編 の 場 面 (ASEAN 諸 国 や 中 国 国 内 の 内 陸 地 域 への 工 場 移 転 など)で も 大 きな 影 響 をもたらす 要 素 となる このように 環 境 保 護 法 の 改 正 はそれ 自 体 が 完 結 したものでは なく 関 連 する 法 令 が 今 後 も 整 備 されてくると 見 込 まれる これらの 情 報 を 適 時 に 把 握 することは 自 社 における 事 故 を 防 止 するのみならず 中 国 での 事 業 展 開 にとっても 重 要 であると 思 われる 金 藤 力 氏 プロフィール 弁 護 士 法 人 キャスト:パートナー 日 本 国 弁 護 士 ( 大 阪 弁 護 士 会 所 属 ) 京 都 大 学 法 学 部 卒 業 2000 年 弁 護 士 登 録 徐 暁 青 氏 プロフィール 上 海 勤 瑞 律 師 事 務 所 : 創 立 パートナー 中 国 律 師 2000 年 中 国 律 師 登 録 mizuho global news 2014 SEP&OCT vol.75 15

ASEANにおけるM&A 戦 略 の 考 察 ~ 近 時 の 日 本 企 業 の 事 業 展 開 を 踏 まえて~ みずほセキュリティーズシンガポール M&Aアドバイザリー 部 鴨 井 聰 はじめに わが 国 の 経 済 の 先 行 きは 各 種 統 計 によ ると 輸 出 は 弱 いものの 堅 調 な 国 内 需 要 に 支 えられ 前 向 きな 景 気 循 環 メカニズムが 作 用 しており 潜 在 成 長 力 を 上 回 る 成 長 が 期 待 できそうである 他 方 経 済 成 長 率 雇 用 と いったファンダメンタルズを 諸 外 国 と 比 較 する と 少 子 高 齢 化 生 産 年 齢 人 口 の 減 少 製 造 業 の 国 内 空 洞 化 といった 構 造 的 な 問 題 に 直 面 する 長 期 的 な 視 座 を 持 ち 経 営 戦 略 を 考 えるとき わが 国 の 企 業 経 営 者 が 加 盟 10ヵ 国 の 総 人 口 が6 億 人 を 超 えるASEAN を 最 も 有 望 な 事 業 展 開 先 国 とし さらには ASEAN 各 国 の 企 業 への 出 資 買 収 による 事 業 拡 大 の 戦 略 を 採 る 日 本 企 業 が 増 加 して いるのは 自 然 な 流 れであると 言 える 本 稿 では ASEANにおけるわが 国 企 業 の M&A 戦 略 について 考 察 してみたい 業 種 別 にみたASEAN 市 場 およびM&A 戦 略 (1) 製 造 業 図 表 1. 中 期 的 有 望 事 業 展 開 先 地 域 順 位 回 答 社 数 ( 社 ) 得 票 率 (%) 国 地 域 名 2013 年 2012 年 2013 年 2012 年 2013 年 2012 年 ( 計 ) 488 514 1 3 インドネシア 219 215 44.9 41.8 2 2 インド 213 290 43.6 56.4 3 4 タイ 188 165 38.5 32.1 4 1 中 国 183 319 37.5 62.1 5 5 ベトナム 148 163 30.3 31.7 6 6 ブラジル 114 132 23.4 25.7 7 7 メキシコ 84 72 17.2 14.0 8 10 ミャンマー 64 51 13.1 9.9 9 8 ロシア 60 64 12.3 12.5 10 9 米 国 54 53 11.1 10.3 11 15 フィリピン 39 21 8.0 4.1 12 11 マレーシア 37 36 7.6 7.0 13 12 韓 国 28 23 5.7 4.5 14 14 台 湾 23 22 4.7 4.3 14 12 トルコ 23 23 4.7 4.5 16 16 シンガポール 19 16 3.9 3.1 17 17 カンボジア 12 13 2.5 2.5 18 20 ドイツ 10 6 2.0 1.2 19 23 南 アフリカ 10 3 2.0 0.6 20 23 ラオス 9 3 1.8 0.6 ( 出 所 )JBIC わが 国 製 造 業 企 業 の 海 外 事 業 展 開 に 関 する 調 査 報 告 国 際 協 力 銀 行 によるわが 国 製 造 業 企 業 のアンケート 調 査 によると 中 期 的 に 有 望 な 事 業 展 開 国 として 2012 年 に1 位 であった 中 国 が4 位 に 転 落 した 一 方 で 2013 年 の 調 査 では 1 位 にインドネシア 3 位 にタイ 5 位 にベトナムとASEAN 各 国 が 軒 なみ 上 位 に 浮 上 した( 図 表 1) 製 造 業 のうち 特 に 耐 久 消 費 財 ( 自 動 車 家 電 )については 1960 年 よ りASEANに 現 地 生 産 拠 点 を 設 立 し すでに 高 い 市 場 シェアを 有 しているが 中 国 および タイの 労 働 コスト 上 昇 労 働 力 不 足 の 観 点 か ら チ ャ イ ナプ ラ ス ワ ン タ イプ ラ ス ワ ン といったアジアで 域 内 分 散 化 サプライチェー ン 再 構 築 の 動 きが 見 られる 自 動 車 部 品 メー カーおいては 労 働 集 約 的 な 部 品 は カンボ ジア ラオス 等 で 生 産 し タイで 組 み 立 てる 分 業 体 制 構 築 の 動 きが 見 られる また 当 該 調 査 でも 有 望 国 としてミャンマーが8 位 にランク されるなど CLM(カンボジア ラオス ミャン マー)も 生 産 拠 点 として 検 討 されていること がうかがえる 耐 久 消 費 財 機 械 消 費 財 ( 日 用 品 ) 素 材 等 の 製 造 業 で 早 い 時 期 にASEANに 進 出 している 一 部 のわが 国 企 業 は 高 いシェ アを 占 めて おり 中 国 韓 国 からの 攻 勢 から 現 在 のシェア を 守 る 立 場 にある かかる 企 業 はASEAN 域 内 での 最 適 地 生 産 分 業 体 制 により コス ト 競 争 力 を 確 保 していくこと に 加 え 中 間 財 の 生 産 拠 点 輸 出 拠 点 として 長 期 的 視 点 に 立 ち 東 アジ アも 含 めた 国 際 的 分 業 体 制 を 構 築 する 視 点 が 必 要 である そのため には 電 力 工 業 用 水 物 流 通 信 等 のハードインフラをODAに 加 え PPP (Public Private Partnerships: 官 民 連 携 ) を 推 進 することで 社 会 インフラ 整 備 を 推 進 し ていくことが 望 まれる M&A 戦 略 の 視 点 では 耐 久 消 費 財 機 械 消 費 財 ( 日 用 品 ) 素 材 等 の 業 界 につい ては ASEAN 向 け 戦 略 商 品 の 現 地 生 産 に 加 え 販 路 を 獲 得 するための 地 場 企 業 への マイノリティ 出 資 が 挙 げられる 特 に BtoBの 業 種 の 場 合 政 府 系 企 業 との 取 り 引 きや 入 札 参 加 資 格 を 保 有 する 地 場 企 業 に 絞 って 買 収 し 商 圏 を 獲 得 するM&Aも 有 効 である 一 方 で 消 費 財 ( 日 用 品 化 粧 品 食 品 ) 医 療 機 器 においては 早 期 に 現 地 に 進 出 し た 一 部 日 系 企 業 を 除 き 欧 米 企 業 地 場 企 業 がASEANで 相 応 のプレゼンスを 有 する また 総 じて 日 系 企 業 は 生 産 拠 点 の 現 地 化 の 途 上 にあるため 地 場 企 業 より 価 格 競 争 力 が 劣 り ボリュームゾーンの 獲 得 ができてい ないことも 多 い この 場 合 日 本 基 準 の 高 品 質 商 品 をASEAN 市 場 に 導 入 する 戦 略 に 加 え ボリュームゾーンを 得 意 とする 地 場 企 業 を 対 象 とするM&Aにより シェアを 獲 得 する 戦 略 が 有 効 であろう 地 場 企 業 にとっても 日 本 企 業 に 優 位 性 がある 技 術 力 品 質 管 理 高 品 質 な 製 品 導 入 を 期 待 していることが 多 く M&A 対 象 企 業 が 一 定 の 水 準 であり 企 業 文 化 等 の 相 性 が 合 うのであれば 海 外 事 業 展 開 をスピーディーに 行 うことも 可 能 である (2) 非 製 造 業 小 売 物 流 TMT(Technology, Media & Telecommunications) 金 融 その 他 サービ ス 等 の 非 製 造 業 の 分 野 は わが 国 企 業 が 国 内 で 培 ってきた 独 自 のノウハウサービスを 活 かして 海 外 に 進 出 し 市 場 シェアを 高 められる 潜 在 的 可 能 性 はあるものの 外 資 規 制 によ 16 mizuho global news 2014 SEP&OCT vol.75