CFA ジャーナル CONTENTS No.1 創 刊 号 2012 年 11 月 創 刊 にあたり 中 瀬 康 彦 CFA 1 FAJ 論 文 より 2 解 題 佐 々 木 龍 CFA - 2 論 評 鹿 毛 雄 二 - 4 勝 者 のゲーム ( 全 訳 ) チャールズ エリス CFA - 6 概



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平成25年度 独立行政法人日本学生支援機構の役職員の報酬・給与等について

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公表表紙

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2 役 員 の 報 酬 等 の 支 給 状 況 平 成 27 年 度 年 間 報 酬 等 の 総 額 就 任 退 任 の 状 況 役 名 報 酬 ( 給 与 ) 賞 与 その 他 ( 内 容 ) 就 任 退 任 2,142 ( 地 域 手 当 ) 17,205 11,580 3,311 4 月 1

( 別 紙 ) 以 下 法 とあるのは 改 正 法 第 5 条 の 規 定 による 改 正 後 の 健 康 保 険 法 を 指 す ( 施 行 期 日 は 平 成 28 年 4 月 1 日 ) 1. 標 準 報 酬 月 額 の 等 級 区 分 の 追 加 について 問 1 法 改 正 により 追 加


Microsoft Word - ☆f.doc

18 国立高等専門学校機構

損 益 計 算 書 自. 平 成 26 年 4 月 1 日 至. 平 成 27 年 3 月 31 日 科 目 内 訳 金 額 千 円 千 円 営 業 収 益 6,167,402 委 託 者 報 酬 4,328,295 運 用 受 託 報 酬 1,839,106 営 業 費 用 3,911,389 一

預 金 を 確 保 しつつ 資 金 調 達 手 段 も 確 保 する 収 益 性 を 示 す 指 標 として 営 業 利 益 率 を 採 用 し 営 業 利 益 率 の 目 安 となる 数 値 を 公 表 する 株 主 の 皆 様 への 還 元 については 持 続 的 な 成 長 による 配 当 可

m07 北見工業大学 様式①

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第316回取締役会議案

は 固 定 流 動 及 び 繰 延 に 区 分 することとし 減 価 償 却 を 行 うべき 固 定 の 取 得 又 は 改 良 に 充 てるための 補 助 金 等 の 交 付 を 受 けた 場 合 にお いては その 交 付 を 受 けた 金 額 に 相 当 する 額 を 長 期 前 受 金 とし

公 的 年 金 制 度 について 制 度 の 持 続 可 能 性 を 高 め 将 来 の 世 代 の 給 付 水 準 の 確 保 等 を 図 るため 持 続 可 能 な 社 会 保 障 制 度 の 確 立 を 図 るための 改 革 の 推 進 に 関 する 法 律 に 基 づく 社 会 経 済 情

●電力自由化推進法案

建設特別・資産運用の基本方針

注 記 事 項 (1) 当 四 半 期 連 結 累 計 期 間 における 重 要 な 子 会 社 の 異 動 : 無 (2) 四 半 期 連 結 財 務 諸 表 の 作 成 に 特 有 の 会 計 処 理 の 適 用 : 有 ( 注 ) 詳 細 は 添 付 資 料 4ページ 2.サマリー 情 報 (


経 常 収 支 差 引 額 の 状 況 平 成 22 年 度 平 成 21 年 度 対 前 年 度 比 較 経 常 収 支 差 引 額 4,154 億 円 5,234 億 円 1,080 億 円 改 善 赤 字 組 合 の 赤 字 総 額 4,836 億 円 5,636 億 円 800 億 円 減

経 常 収 支 差 引 額 等 の 状 況 平 成 26 年 度 予 算 早 期 集 計 平 成 25 年 度 予 算 対 前 年 度 比 較 経 常 収 支 差 引 額 3,689 億 円 4,597 億 円 908 億 円 減 少 赤 字 組 合 数 1,114 組 合 1,180 組 合 66


為 が 行 われるおそれがある 場 合 に 都 道 府 県 公 安 委 員 会 がその 指 定 暴 力 団 等 を 特 定 抗 争 指 定 暴 力 団 等 として 指 定 し その 所 属 する 指 定 暴 力 団 員 が 警 戒 区 域 内 において 暴 力 団 の 事 務 所 を 新 たに 設

2 役 員 の 報 酬 等 の 支 給 状 況 役 名 法 人 の 長 理 事 理 事 ( 非 常 勤 ) 平 成 25 年 度 年 間 報 酬 等 の 総 額 就 任 退 任 の 状 況 報 酬 ( 給 与 ) 賞 与 その 他 ( 内 容 ) 就 任 退 任 16,936 10,654 4,36

スライド 1

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連結計算書

私立大学等研究設備整備費等補助金(私立大学等

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Microsoft Word 第1章 定款.doc

16 日本学生支援機構

別 紙 第 号 高 知 県 立 学 校 授 業 料 等 徴 収 条 例 の 一 部 を 改 正 する 条 例 議 案 高 知 県 立 学 校 授 業 料 等 徴 収 条 例 の 一 部 を 改 正 する 条 例 を 次 のように 定 める 平 成 26 年 2 月 日 提 出 高 知 県 知 事 尾

(6) 事 務 局 職 場 積 立 NISAの 運 営 に 係 る 以 下 の 事 務 等 を 担 当 する 事 業 主 等 の 組 織 ( 当 該 事 務 を 代 行 する 組 織 を 含 む )をいう イ 利 用 者 からの 諸 届 出 受 付 事 務 ロ 利 用 者 への 諸 連 絡 事 務

2. 会 計 規 程 の 業 務 (1) 規 程 と 実 際 の 業 務 の 調 査 規 程 や 運 用 方 針 に 規 定 されている 業 務 ( 帳 票 )が 実 際 に 行 われているか( 作 成 されている か)どうかについて 調 べてみた 以 下 の 表 は 規 程 の 条 項 とそこに

平成16年年金制度改正 ~年金の昔・今・未来を考える~

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目 次 高 山 市 連 結 財 務 諸 表 について 1 連 結 貸 借 対 照 表 2 連 結 行 政 コスト 計 算 書 4 連 結 純 資 産 変 動 計 算 書 6 連 結 資 金 収 支 計 算 書 7

入 札 参 加 者 は 入 札 の 執 行 完 了 に 至 るまではいつでも 入 札 を 辞 退 することができ これを 理 由 として 以 降 の 指 名 等 において 不 利 益 な 取 扱 いを 受 けることはない 12 入 札 保 証 金 免 除 13 契 約 保 証 金 免 除 14 入

Microsoft Word - ★HP版平成27年度検査の結果

(5) 給 与 制 度 の 総 合 的 見 直 しの 実 施 状 況 について 概 要 の 給 与 制 度 の 総 合 的 見 直 しにおいては 俸 給 表 の 水 準 の 平 均 2の 引 き 下 げ 及 び 地 域 手 当 の 支 給 割 合 の 見 直 し 等 に 取 り 組 むとされている

( 別 途 調 査 様 式 1) 減 損 損 失 を 認 識 するに 至 った 経 緯 等 1 列 2 列 3 列 4 列 5 列 6 列 7 列 8 列 9 列 10 列 11 列 12 列 13 列 14 列 15 列 16 列 17 列 18 列 19 列 20 列 21 列 22 列 固 定

しかし 主 に 欧 州 の 一 部 の 回 答 者 は 受 託 責 任 について 資 源 配 分 の 意 思 決 定 の 有 用 性 とは 独 立 の 財 務 報 告 の 目 的 とすべきであると 回 答 した 本 ED に 対 する ASBJ のコメント レターにおける 意 見 経 営 者 の 受

平成24年度税制改正要望 公募結果 153. 不動産取得税

PowerPoint プレゼンテーション

リング 不 能 な 将 来 減 算 一 時 差 異 に 係 る 繰 延 税 金 資 産 について 回 収 可 能 性 がないも のとする 原 則 的 な 取 扱 いに 対 して スケジューリング 不 能 な 将 来 減 算 一 時 差 異 を 回 収 できることを 反 証 できる 場 合 に 原 則

Ⅰ 調 査 の 概 要 1 目 的 義 務 教 育 の 機 会 均 等 その 水 準 の 維 持 向 上 の 観 点 から 的 な 児 童 生 徒 の 学 力 や 学 習 状 況 を 把 握 分 析 し 教 育 施 策 の 成 果 課 題 を 検 証 し その 改 善 を 図 るもに 学 校 におけ

47 高 校 講 座 モ オ モ 圏 比 較 危 述 覚 普 第 章 : 活

社 会 保 障 税 一 体 改 革 ( 年 金 分 野 )の 経 緯 社 会 保 障 税 一 体 改 革 大 綱 (2 月 17 日 閣 議 決 定 ) 国 年 法 等 改 正 法 案 (2 月 10 日 提 出 ) 法 案 を 提 出 する または 法 案 提 出 を 検 討 する と された 事

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Microsoft Word - 全国エリアマネジメントネットワーク規約.docx

科 売 上 原 価 売 上 総 利 益 損 益 計 算 書 ( 自 平 成 26 年 4 月 1 日 至 平 成 27 年 3 月 31 日 ) 目 売 上 高 販 売 費 及 び 一 般 管 理 費 営 業 利 益 営 業 外 収 益 受 取 保 険 金 受 取 支 援 金 補 助 金 収 入 保

平 成 27 年 11 月 ~ 平 成 28 年 4 月 に 公 開 の 対 象 となった 専 門 協 議 等 における 各 専 門 委 員 等 の 寄 附 金 契 約 金 等 の 受 取 状 況 審 査 ( 別 紙 ) 専 門 協 議 等 の 件 数 専 門 委 員 数 500 万 円 超 の 受

った 場 合 など 監 事 の 任 務 懈 怠 の 場 合 は その 程 度 に 応 じて 業 績 勘 案 率 を 減 算 する (8) 役 員 の 法 人 に 対 する 特 段 の 貢 献 が 認 められる 場 合 は その 程 度 に 応 じて 業 績 勘 案 率 を 加 算 することができる


スライド 1

Microsoft Word )40期決算公開用.doc

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Microsoft Word - 奨学金相談Q&A.rtf

弁護士報酬規定(抜粋)

国 家 公 務 員 の 年 金 払 い 退 職 給 付 の 創 設 について 検 討 を 進 めるものとする 平 成 19 年 法 案 をベースに 一 元 化 の 具 体 的 内 容 について 検 討 する 関 係 省 庁 間 で 調 整 の 上 平 成 24 年 通 常 国 会 への 法 案 提

2. ど の 様 な 経 緯 で 発 覚 し た の か ま た 遡 っ た の を 昨 年 4 月 ま で と し た の は 何 故 か 明 ら か に す る こ と 回 答 3 月 17 日 に 実 施 し た ダ イ ヤ 改 正 で 静 岡 車 両 区 の 構 内 運 転 が 静 岡 運

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就 業 規 則 ( 福 利 厚 生 ) 第 章 福 利 厚 生 ( 死 亡 弔 慰 金 等 ) 第 条 法 人 が 群 馬 県 社 会 福 祉 協 議 会 民 間 社 会 福 祉 施 設 等 職 員 共 済 規 程 に 基 づき 群 馬 県 社 会 福 祉 協 議 会 との 間 において 締 結 す

国立研究開発法人土木研究所の役職員の報酬・給与等について

損 益 計 算 書 ( 平 成 25 年 10 月 1 日 から 平 成 26 年 9 月 30 日 まで) ( 単 位 : 千 円 ) 科 目 金 額 営 業 収 益 304,971 営 業 費 用 566,243 営 業 総 損 失 261,271 営 業 外 収 益 受 取 利 息 3,545

ていることから それに 先 行 する 形 で 下 請 業 者 についても 対 策 を 講 じることとしまし た 本 県 としましては それまでの 間 に 未 加 入 の 建 設 業 者 に 加 入 していただきますよう 28 年 4 月 から 実 施 することとしました 問 6 公 共 工 事 の

文化政策情報システムの運用等

質 問 票 ( 様 式 3) 質 問 番 号 62-1 質 問 内 容 鑑 定 評 価 依 頼 先 は 千 葉 県 などは 入 札 制 度 にしているが 神 奈 川 県 は 入 札 なのか?または 随 契 なのか?その 理 由 は? 地 価 調 査 業 務 は 単 にそれぞれの 地 点 の 鑑 定

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福 岡 厚 生 年 金 事 案 4486 第 1 委 員 会 の 結 論 申 立 人 の 申 立 期 間 については その 主 張 する 標 準 報 酬 月 額 に 基 づく 厚 生 年 金 保 険 料 を 事 業 主 により 給 与 から 控 除 されていたことが 認 められることから 申 立 期

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している 5. これに 対 して 親 会 社 の 持 分 変 動 による 差 額 を 資 本 剰 余 金 として 処 理 した 結 果 資 本 剰 余 金 残 高 が 負 の 値 となるような 場 合 の 取 扱 いの 明 確 化 を 求 めるコメントが 複 数 寄 せられた 6. コメントでは 親

技 能 労 務 職 公 務 員 民 間 参 考 区 分 平 均 年 齢 職 員 数 平 均 給 与 月 額 平 均 給 与 月 額 平 均 給 料 月 額 (A) ( 国 ベース) 平 均 年 齢 平 均 給 与 月 額 対 応 する 民 間 の 類 似 職 種 東 庄 町 51.3 歳 18 77

(1) 率 等 一 覧 ( 平 成 26 年 度 ) 目 課 客 体 及 び 納 義 務 者 課 標 準 及 び 率 法 内 に 住 所 を 有 する ( 均 等 割 所 得 割 ) 内 に 事 務 所 事 業 所 又 は 家 屋 敷 を 有 する で 内 に 住 所 を 有 し ないもの( 均 等

定款

検 討 検 討 の 進 め 方 検 討 状 況 簡 易 収 支 の 世 帯 からサンプリング 世 帯 名 作 成 事 務 の 廃 止 4 5 必 要 な 世 帯 数 の 確 保 が 可 能 か 簡 易 収 支 を 実 施 している 民 間 事 業 者 との 連 絡 等 に 伴 う 事 務 の 複 雑

平成24年度 業務概況書

別紙3

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Microsoft PowerPoint - 基金制度

スライド 1

根 本 確 根 本 確 民 主 率 運 民 主 率 運 確 施 保 障 確 施 保 障 自 治 本 旨 現 資 自 治 本 旨 現 資 挙 管 挙 管 代 表 監 査 教 育 代 表 監 査 教 育 警 視 総 監 道 府 県 警 察 本 部 市 町 村 警 視 総 監 道 府 県 警 察 本 部

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( 会 員 資 格 の 取 得 ) 第 6 条 本 会 の 会 員 になろうとする 者 は 別 に 定 める 入 会 届 により 申 し 込 みを し 理 事 会 の 承 認 を 得 なければならない ( 会 員 の 権 利 義 務 ) 第 7 条 会 員 は 本 会 の 事 業 活 動 につき そ

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1. 決 算 の 概 要 法 人 全 体 として 2,459 億 円 の 当 期 総 利 益 を 計 上 し 末 をもって 繰 越 欠 損 金 を 解 消 しています ( : 当 期 総 利 益 2,092 億 円 ) 中 期 計 画 における 収 支 改 善 項 目 に 関 して ( : 繰 越

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CFA ジャーナル 2012 年 11 月 No.1 創 刊 号 勝 者 のゲーム チャールズ エリス CFA 概 ね 効 率 的 な 市 場 におけるアクティブ 運 用 ロバート ジョー ンズ CFA ラス ラーマーズ 市 場 のネットワーク 価 値 理 論 とパズル ロバート スニガロフ デイビッド ロブルスキー 隠 された 債 務 :エンロンの 商 品 プリペイドからリーマンのレポ 105まで ロナルド スミス レバレッジ 回 避 とリスク パリティ クリフォード アスネス アンドレア フラズィーニ ラス ペダーセン 人 口 動 態 が 金 融 市 場 と 経 済 に 与 える 影 響 ロバート アーノッ ト デニス チャベス チャレンジする 企 業 年 金 近 藤 英 男 佐 川 利 通 久 保 俊 一 荻 島 誠 治 喜 多 幸 之 助 上 場 商 品 を 用 いたボラティリティ 投 資 の 実 践 高 橋 康 匡 日 本 におけるESG 投 資 の 課 題 と 今 後 の 展 望 辻 本 臣 哉 CFA

CFA ジャーナル CONTENTS No.1 創 刊 号 2012 年 11 月 創 刊 にあたり 中 瀬 康 彦 CFA 1 FAJ 論 文 より 2 解 題 佐 々 木 龍 CFA - 2 論 評 鹿 毛 雄 二 - 4 勝 者 のゲーム ( 全 訳 ) チャールズ エリス CFA - 6 概 ね 効 率 的 な 市 場 におけるアクティブ 運 用 ( 全 訳 ) ロバート ジョーンズ - 16 CFA ラス ワーマーズ 市 場 のネットワーク 価 値 理 論 とパズル ( 抄 訳 ) ロバート スニガロフ - 36 デイビッド ロブルスキー 隠 された 債 務 :エンロンの 商 品 プリペイドからリーマンのレポ 105 まで - 41 ( 抄 訳 ) ロナルド スミス レバレッジ 回 避 とリスク パリティ ( 抄 訳 ) クリフォード アスネス - 45 アンドレア フラズィーニ ラス ペダーセン 人 口 動 態 が 金 融 市 場 と 経 済 に 与 える 影 響 ( 抄 訳 ) ロバート アーノット - 50 デニス チャベス 日 本 CFA 協 会 主 催 セミナー 講 演 要 旨 54 チャレンジする 企 業 年 金 近 藤 英 男 佐 川 利 通 久 保 俊 一 荻 島 誠 治 - 54 喜 多 幸 之 助 (2012 年 1 月 16 日 開 催 ) 上 場 商 品 を 用 いたボラティリティ 投 資 の 実 践 高 橋 康 匡 - 59 (2012 年 2 月 21 日 開 催 ) スタディグループより 60 日 本 における ESG 投 資 の 課 題 と 今 後 の 展 望 辻 本 臣 哉 CFA - 60 ブック レビュー 67 G20の 経 済 学 国 際 協 調 と 日 本 の 成 長 戦 略 ( 中 林 伸 一 著 ) 他 佐 志 田 晶 夫 CFA

CFA ジャーナル 創 刊 にあたり 一 般 社 団 法 人 日 本 CFA 協 会 会 長 中 瀬 康 彦 日 本 CFA 協 会 の 定 期 刊 行 物 としては これまで CFA ニュースレター があり メディアと 会 員 に 向 けた 情 報 発 信 を 行 う 役 割 を 担 ってきましたが より 投 資 の 実 践 と 理 論 に 重 点 を 置 く CFA ジャーナル が 創 刊 される 運 びとなったのは 誠 に 喜 ばしいことであります CFA 協 会 が 発 行 する 定 期 刊 行 物 としては Financial Analysts Journal(FAJ)があり 投 資 分 析 と 資 産 運 用 に 関 わる 論 文 誌 として 定 評 があります しかし 英 語 であることから 同 誌 に 掲 載 される 重 要 な 論 文 が 日 本 国 内 では 必 ずしも 十 分 に 消 化 されていない 可 能 性 があります FAJ に 掲 載 さ れた 論 文 から 厳 選 して 全 訳 あるいは 要 約 翻 訳 を 行 い それを 一 つの 柱 として 日 本 国 内 に 紹 介 すると 共 に 当 協 会 の 活 動 の 中 から 生 まれてくるコンテンツや 寄 稿 論 文 で 構 成 するという 本 誌 は 大 変 意 義 深 く 会 員 その 他 資 産 運 用 業 界 の 方 々に 広 く 読 まれ 活 用 されていくものと 確 信 しております 本 誌 の 企 画 に 加 えて 主 要 コンテンツは FAJ 論 文 の 翻 訳 といい セミナー 講 演 録 の 作 成 といい 多 数 のボラン ティア 諸 氏 の 力 を 結 集 しています こうした 意 欲 に 満 ちたボランティアの 存 在 は グローバルに 展 開 する CFA コ ミュニティが 発 展 してきた 原 動 力 であり その 伝 統 を 受 け 継 ぐものです また 当 協 会 スタディグループの 研 究 成 果 の 発 表 や 寄 稿 論 文 も 掲 載 する 予 定 であり 当 協 会 の 活 動 に 関 わる 方 々が 様 々な 形 で 資 産 運 用 業 界 の 発 展 に 寄 与 する 意 欲 発 揚 の 場 として 本 誌 を 活 用 していただけるように 構 成 されています 小 さな 電 子 ジャーナルとして スタートする 本 誌 が 当 協 会 の 発 展 と 共 に 内 容 を 拡 充 し 認 知 度 を 高 めていき 我 が 国 の 資 産 運 用 業 界 に 欠 かす ことのできない 論 文 誌 に 発 展 していくことを 願 ってやみません そのためにも 読 者 の 方 々から 本 誌 に 対 する 忌 憚 のないご 意 見 ご 感 想 をお 寄 せいただければ 幸 いと 存 じます 最 後 に 本 誌 の 創 刊 に 向 けて 惜 しみない 時 間 と 情 熱 を 傾 けられた 編 集 委 員 の 方 々を 始 め ご 協 力 いただいた 皆 様 すべてに 感 謝 申 し 上 げます 1

FAJ 論 文 より 解 題 CFA ジャーナルの 創 刊 号 では CFA 協 会 の FAJ (Financial Analyst Journal)から 投 資 家 や 実 務 家 にとり 興 味 深 い 幅 広 いテーマを 選 んで 紹 介 する ア クティブ 運 用 に 関 するテーマでは 否 定 的 な 立 場 (エリス)と 肯 定 的 な 立 場 (ジョーンズ ワーマー ズ)からそれぞれ 論 文 を 用 意 した 2 論 文 の 解 説 に ついては 次 節 の 論 評 を 参 照 されたい 他 テーマで は 株 式 価 値 に 市 場 機 能 を 加 味 した 論 文 (スニガロ フ ロブルスキー) 会 計 操 作 の 実 例 を 紹 介 する 論 文 (スミス) リスクベースの 戦 略 アセット アロ ケーションを 紹 介 する 論 文 (アスネス フラズィー ニ ペダーセン) 人 口 動 態 と 経 済 金 融 市 場 の 関 係 を 論 じた 論 文 (アーノット チャベス)を 取 り 揃 えた 以 下 に 要 訳 した 各 論 文 の 概 要 を 紹 介 する スニガロフ ロブルスキー 論 文 市 場 のネット ワーク 価 値 理 論 とパズル は 株 式 価 値 はインフラ としての 株 式 市 場 の 価 値 を 反 映 するとの 理 論 を 紹 介 するものである こうした 価 値 の 考 察 を 通 じ 株 式 市 場 に 存 在 する パズル の 解 決 を 試 みている 株 式 市 場 は 流 動 性 情 報 インフラとして 機 能 する 複 雑 なネットワークであり 常 に 正 となる 価 値 が 存 在 する その 価 値 は 株 式 市 場 の 取 引 量 で 測 定 可 能 で その 上 昇 に 伴 い 非 線 形 に 市 場 価 値 も 上 昇 するとして いる これを 配 当 割 引 モデル(DDM)の 追 加 項 として 組 み 込 み 標 準 的 な DDM の 説 明 力 向 上 を 試 みている ネットワーク 価 値 の 効 果 を 検 証 するため GDP 期 間 スプレッド 規 模 ファクター あるいは バリュー 株 ファクターを DDM の 追 加 項 とした 場 合 と 株 価 配 当 率 の 説 明 力 を 比 較 し ネットワーク 価 値 ( 売 買 回 転 率 )の 説 明 力 が 高 いとしている 次 に 株 式 市 場 に 存 在 するパズルの 解 決 を 試 みて いる 株 式 プレミアム パズルは 配 当 成 長 の 価 値 は 長 期 的 に 概 ね 一 定 であり ネットワーク 価 値 向 上 により 説 明 可 能 としている ネットワーク 価 値 向 上 は 小 型 株 式 により 大 きな 恩 恵 を 与 えるとする イン フレ パズルは ネットワーク 価 値 は 実 物 資 産 のた めインフレ 率 上 昇 により 悪 影 響 を 受 けることで 説 明 可 能 としている ニュース パズルについては 市 場 機 能 そのものがネットワーク 価 値 であり 市 場 の 機 能 不 全 が 株 式 市 場 下 落 の 要 因 となるとしている スミス 論 文 隠 された 債 務 :エンロンの 商 品 プリ ペイドからリーマンのレポ 105 まで は 財 務 内 容 業 績 改 善 のため 会 計 ルールが 悪 用 された 事 例 を 紹 介 している エンロンおよびリーマン ブラザー ズに 焦 点 を 当 て 合 法 的 な 取 引 の 組 み 合 わせにより 会 計 ルールの 趣 旨 を 逸 脱 する 手 法 が 説 明 され 会 計 ルールを 悪 用 する 企 業 とともにそれを 可 能 とした 監 査 法 人 の 責 任 を 問 う 内 容 でもある エンロンのケースでは 商 品 プリペイド とい う 普 通 の 商 取 引 に 商 品 スワップを 組 み 合 わせること により 債 務 をオフバランス 化 し 営 業 キャッシュフ ローを 底 上 げすることが 可 能 となった この 取 引 は 決 算 操 作 の 手 口 としては 複 雑 な 特 別 目 的 会 社 の 利 用 よりも 悪 質 ではないか と 述 べている 監 査 法 人 は 本 来 であれば 一 連 の 取 引 として 処 理 すべき 商 品 プリペイド 取 引 とスワップ 取 引 を 分 けて 処 理 する ことが 可 能 となる 指 針 を 示 しており また 監 査 の 際 に 経 済 的 な 実 態 ではなく 表 面 的 ルールに 従 って 取 引 の 会 計 処 理 を 認 めていた リーマンのケースでは 一 般 的 に 行 われているレポ 取 引 を 加 工 した レポ 2

105 を 実 施 することにより 決 算 操 作 を 可 能 とした 事 例 である 通 常 レポの 借 手 が 差 し 出 す 担 保 は 資 金 調 達 額 を 若 干 上 回 る 水 準 に 設 定 される しかし リーマンの 場 合 は 敢 えて 通 常 よりも 多 い 担 保 ( 高 いヘアカット)を 差 し 出 すことにより 債 務 計 上 を 回 避 する 決 算 処 理 を 可 能 としたものである こうした 決 算 操 作 を 防 ぐため 貸 借 対 照 表 の 主 要 項 目 の 期 中 平 残 や 標 準 偏 差 の 提 供 外 部 向 けの 日 次 データ 提 供 ルールではなく 原 則 に 基 づいた 決 算 書 の 作 成 を 求 めている さらに 監 査 法 人 は 知 りう る 限 りにおいて 財 務 諸 表 は 金 融 の 実 態 を 正 確 に 反 映 し 投 資 判 断 において 信 頼 に 足 るものであること を 宣 言 すべきとの 提 言 を 行 っている アスネス フラズィーニ ペダーセン 論 文 レバ レッジ 回 避 とリスク パリティ は 戦 略 的 アセッ ト アロケーションの 手 法 としてリスクに 基 づいた 分 散 投 資 の 考 え 方 を 紹 介 するものである 理 論 的 根 拠 と 実 証 研 究 結 果 を 示 しながら マーケットポート フォリオを 上 回 る 優 れたリスク リターン 特 性 の 獲 得 が 可 能 としている 標 準 的 な 資 本 資 産 価 格 モデル(CAPM)は すべ ての 投 資 家 はマーケットポートフォリオを 保 有 し リスク 選 好 度 に 応 じてレバレッジ 水 準 を 定 めるとす るが これは 理 論 的 かつ 実 証 結 果 により 否 定 される としている レバレッジ 回 避 の 投 資 家 の 存 在 を 認 め れば 接 点 ポートフォリオより 期 待 リターンの 高 い 投 資 家 はリスク 資 産 への 配 分 を 高 め すべての 投 資 家 がレバレッジを 除 き 同 一 ポートフォリオを 有 する との CAPM の 前 提 は 成 り 立 たないとしている レバレッジ 回 避 の 投 資 家 の 存 在 のため 複 数 資 産 間 および 資 産 内 の 証 券 市 場 線 はフラット 化 する そ のため 接 点 ポートフォリオは 事 前 に 特 定 できず 安 全 資 産 のオーバーウェイトにより 接 点 ポートフォ リオに 近 いポートフォリオを 得 られ リスク 調 整 後 リターンが 向 上 するのである リスク パリティ 投 資 では 株 式 と 債 券 のリスク 量 を 等 しくするという 考 え 方 であり これはマーケットポートフォリオや 株 式 と 債 券 の 比 率 が 60 対 40 のポートフォリオより も 接 点 ポートフォリオに 近 いとの 実 証 研 究 を 示 し ている そのため レバレッジの 活 用 が 可 能 な 投 資 家 は 期 待 リターンを 得 るためにはリスク パリ ティ 投 資 にレバレッジを 組 み 合 わせることにより 高 いリスク 調 整 後 リターンを 獲 得 できるとする アーノット チャベス 論 文 人 口 動 態 が 金 融 市 場 と 経 済 に 与 える 影 響 は 人 口 動 態 と 経 済 金 融 市 場 の 関 係 についての 実 証 研 究 を 紹 介 している 人 口 動 態 に 関 する 年 齢 グループ 別 データを 用 い GDP 成 長 率 や 株 式 債 券 リターンとの 関 係 について 高 次 多 項 式 による 回 帰 分 析 を 行 った 先 進 国 の 場 合 子 供 時 代 青 年 期 中 年 期 そし て 定 年 退 職 後 世 代 等 の 年 齢 層 に 応 じて GDP 成 長 率 や 株 式 債 券 リターンへの 影 響 は 異 なるという 結 果 が 示 された また 国 毎 の 年 齢 構 成 の 違 いにより GDP 成 長 率 や 株 式 債 券 リターンにも 違 いが 出 る ことも 示 唆 されている 新 興 市 場 について 実 施 した 頑 健 性 テストでは 人 口 動 態 と 経 済 成 長 率 の 関 係 は 先 進 国 と 似 た 結 果 を 得 た 今 後 の 経 済 金 融 市 場 の 情 勢 については 先 進 国 では 経 済 成 長 はマイナスで 債 券 リターンにはプラス な 環 境 であるとする 予 測 を 得 た 新 興 市 場 を 含 めて も アフリカなど 生 産 年 齢 層 が 若 い 地 域 を 除 くと 経 済 成 長 率 は 悲 観 的 で 債 券 リターンは 楽 観 的 となる 株 式 に 関 しては 国 毎 に 異 なる 結 果 を 予 測 する 最 後 に 本 ジャーナルを 読 んで 興 味 が 深 まった 読 者 は CFA 協 会 サイトに 掲 載 されている 原 文 をご 覧 になることをお 薦 めする 佐 々 木 龍 CFA 3

論 評 勝 者 のゲーム チャールズ エリス CFA および 概 ね 効 率 的 な 市 場 におけるアクティブ 運 用 ロバート ジョーンズ CFA ラス ワーマーズについて 鹿 毛 雄 二 ブラックストーン グループ ジャパン 特 別 顧 問 Robert Jones と Russ Wermers( 以 下 RJRW と 略 称 ) による 論 文 概 ね 効 率 的 な 市 場 におけるアクティブ 運 用 は 次 のように 主 張 する 1. コスト 控 除 後 リスク 調 整 後 のアクティブ リ ターンはマネジャー 全 体 として 長 期 的 平 均 的 に 見 れば ゼロに 近 い 2. 投 資 家 は 容 易 ではないが 1( 適 切 に 調 整 した) 過 去 のパフォーマンス 2マクロ 経 済 との 相 関 3ファ ンド マネジャー 特 性 4ファンド 保 有 銘 柄 分 析 を 考 慮 することで アクティブ リターンを 生 み 出 すファ ンド マネジャー(SAM)を 事 前 に 特 定 することが 可 能 と 思 われる 3. SAM を 事 前 に 特 定 することで アクティブ 運 用 を ポートフォリオに 組 み 入 れる 意 義 がある ただ 評 者 が 長 年 実 務 に 携 わっていた 立 場 からは 冒 頭 の SAM を 事 前 に 特 定 できる という 論 旨 には 以 下 のような 疑 問 が 浮 かぶ 第 一 に 結 論 のサポートとして RJRW 自 身 の 実 証 研 究 というより これまでの 膨 大 な 実 証 研 究 に 依 存 して いるが それぞれの 実 証 研 究 には 調 査 対 象 ユニ バース ファンドタイプ 期 間 等 の 前 提 限 界 がある という 点 だ 生 存 バイアスや 自 己 選 択 バイアスもある それぞれ 限 界 を 持 つ 実 証 研 究 から どこまで 冒 頭 のよ うな 普 遍 的 な 結 論 が 出 せるかは それらを 熟 読 するま で 判 らない RJRW 自 身 もそうした 限 界 を 指 摘 しては いる 第 二 に 特 に SAM は 事 前 に 特 定 できる という 論 証 の 説 得 性 だ 確 かに 過 去 のパフォーマンスやマク ロ 経 済 データと 将 来 のパフォーマンスとの 相 関 を 実 証 する 分 析 例 がいくつかあげられてはいるものの 厳 密 に 言 えば これは 過 去 の 一 時 点 における それ 以 前 のデータとそれ 以 後 のデータとの 相 関 であって 現 在 時 点 での 過 去 データと 将 来 との 相 関 についての 実 証 研 究 ではありえない つまり 仮 に 過 去 においてこ の 両 者 間 に 相 関 が 認 められたとしても 将 来 それが 繰 り 返 される という 論 証 にはなっていない 将 来 のパ フォーマンスについては スキルの 継 続 性 とか 環 境 が 追 い 風 かどうか など 様 々な 条 件 しだいだからだ 第 三 に スキル のとらえ 方 だ 本 稿 では スキ ルは 持 続 性 を 持 つ という 前 提 に 立 っている 確 かに そうした 面 がある 事 は 否 定 できないが 同 時 に 我 々 は 優 れたファンド マネジャーの 成 績 が 採 用 後 に 大 き く 崩 れた 経 験 を 持 つ 受 託 金 額 が 急 増 するとパフォー マンスが 低 下 するのは 一 般 的 に 見 られるところだろう ファンド マネジャーも 人 間 だから 成 績 不 良 の 時 は 必 死 に 働 くが 好 転 後 も 同 じ 緊 張 感 を 持 ち 続 けるのは なかなか 難 しい 成 功 こそが 成 功 継 続 のためには 最 大 の 敵 なのだが この 点 を 乗 り 越 えられる 運 用 機 関 は 稀 だ さらに 昨 今 運 用 機 関 の 合 併 買 収 事 業 売 却 あるいは 優 秀 なチームの 引 き 抜 きやスピンアウトと いう 例 は 少 なくなく そうした 経 営 の 不 安 定 な 状 況 下 では ファンド マネジャーが 力 を 発 揮 することはで きない 要 するに スキルはファンド マネジャーが 常 に 発 揮 できるものではなく 環 境 如 何 で 変 わりうる ものと 考 えた 方 が 良 い そもそも 好 成 績 の 原 因 がスキ ルかラックかを 見 分 けることも なかなか 難 しい 課 題 だろう 厳 密 に 見 分 けるには 70 年 かかる という 説 4

すらある また パフォーマンス データは スキル を 示 すものと 言 うよりスキルを 示 す 標 本 に 過 ぎない 測 定 期 間 を 1-2 年 ずらすだけで ベンチマークに 対 する 勝 ち 負 けが 逆 転 することも 良 くある しかし 本 稿 はアクティブ 運 用 の 価 値 について 現 在 の 文 献 と 論 点 を 出 来 るだけ 広 く 整 理 したものとは 言 え るだろう 一 方 チャールズ エリスの 論 文 勝 者 のゲーム は 彼 が 長 年 努 めてきた 運 用 機 関 に 対 するアドバイス や 著 作 の 集 大 成 とも 言 える 論 文 である エリスは 運 用 機 関 の 犯 しやすい 以 下 三 つの 失 敗 を 指 摘 した 上 で そのあるべき 姿 を 示 そうとする 第 一 に 過 去 50 年 間 で 市 場 の 効 率 性 が 劇 的 に 高 まった 結 果 投 資 家 が 市 場 に 勝 つことがほとんど 不 可 能 になったにもかかわらず 運 用 機 関 がその 使 命 を 市 場 インデックスに 勝 つ ことと 誤 解 していること そして 投 資 家 が 事 前 に 優 秀 なマネジャーを 見 出 すこと は 困 難 と 主 張 する この 点 RJRW とは 対 照 的 だ 第 二 に 資 産 運 用 業 の 経 営 目 標 が 短 期 的 な 収 益 増 大 特 に 運 用 資 産 の 拡 大 いわゆるアセット ギャザリン グに 極 端 にシフトし 長 期 的 な 運 用 能 力 の 向 上 が 二 の 次 になっている 事 だ 第 三 は 運 用 機 関 は 経 験 の 浅 い 個 人 投 資 家 や 多 くの 年 金 基 金 財 団 基 金 等 に 対 して その 専 門 性 を 生 かし て さまざまな 形 で 助 言 出 来 る 立 場 にあるにもかかわ らず この 大 事 な 機 能 を 果 たそうとしないことだ その 上 で エリスは 運 用 機 関 に 対 しこうした 過 ちを 認 識 し 経 営 目 標 を 市 場 に 勝 つ 事 運 用 資 産 拡 大 を 図 ること から 組 織 の 投 資 目 的 やリスク 許 容 度 の 確 認 市 場 の 現 実 の 理 解 投 資 政 策 の 策 定 等 の 助 言 提 供 に 変 更 すべきと 言 う 運 用 機 関 とその 顧 客 との 理 解 と 信 頼 関 係 を 深 めることで 個 々の 顧 客 にとって 現 実 的 な 運 用 目 標 の 策 定 と その 達 成 に 向 けた 執 行 に 取 り 組 む 事 が 出 来 ると 主 張 する このようにエリス 論 文 は パッシブ アクティブ 運 用 の 議 論 というよりは 運 用 機 関 経 営 のあり 方 を 述 べ たものだ ただ 運 用 機 関 が 顧 客 に 有 効 なアドバイスを 提 供 す るのは 容 易 ではない 年 金 や 大 学 財 団 などの 投 資 政 策 策 定 を 助 言 するためにはその 組 織 固 有 の 事 情 政 策 や 債 務 の 状 況 を 詳 しく 知 る 必 要 がある また 日 本 に 限 らず 世 界 の 運 用 プロのほとんどは 株 式 運 用 か 債 券 運 用 のプロであって ポートフォリオ 全 体 の 資 産 配 分 やリ スク 管 理 の 専 門 家 の 数 は 少 ない 運 用 機 関 経 営 をそう した 方 向 へシフトするためには 明 確 な 方 針 決 定 と 長 期 的 な 人 材 育 成 が 欠 かせないだろう なお 現 実 にはアクティブ 運 用 への 期 待 は 何 故 か 大 きい その 結 果 アクティブ 運 用 機 関 へ 人 材 が 流 れ 市 場 の 効 率 性 を 高 めるという 役 割 を 果 たしている それ なくしてはパッシブ 運 用 が 成 り 立 たない またパッシ ブ 運 用 が 存 在 することで 市 場 に 非 効 率 な 部 分 が 生 ま れアクティブ 運 用 を 支 えるわけだ その 意 味 で この 両 論 文 のような 議 論 が 続 く 事 が 市 場 と 資 産 運 用 の 活 性 化 経 済 発 展 を 支 える と 言 えるだろう 5

( 全 訳 ) FAJ 2011 年 7/8 月 号 勝 者 のゲーム The Winners Game チャールズ D エリス CFA Charles D. Ellis, CFA 誰 もが 投 資 で 成 功 したいと 願 っている 多 くの 投 資 家 にとっては 投 資 の 成 否 次 第 で 老 後 の 安 心 を 確 保 し 子 供 の 教 育 費 を 賄 い より 良 い 生 活 を 楽 しめるか どうかが 決 まってくる 学 校 や 病 院 美 術 館 大 学 は 上 手 に 投 資 を 行 うことで その 重 要 な 使 命 を 果 たしう る 投 資 プロフェッショナルとして 提 供 するサービ スが 投 資 家 の 現 実 的 な 長 期 目 標 達 成 の 一 助 となるので あれば 資 産 運 用 業 は 素 晴 らしい 職 業 となりうるので ある ところが 投 資 家 は 深 刻 な 資 金 不 足 に 陥 っていると 認 めざるを 得 ないような 証 拠 が 相 次 いでいる 問 題 の 一 端 は 投 資 家 が 犯 す 過 ちによるものである しかし 過 ちを 犯 すのは 投 資 家 ばかりではない 投 資 プロ フェッショナルとして 責 任 の 大 半 は 実 際 には 顧 客 で はなく われわれ 資 産 運 用 業 界 側 にあることを 認 識 す る 必 要 がある それらは 主 に 三 つの 組 織 的 な 過 ちに 基 づく 残 念 な 結 果 によるものである 幸 いなことに やり 方 を 改 めれば 顧 客 である 投 資 家 と 資 産 運 用 業 界 双 方 にとって 投 資 が 真 に 勝 者 のゲームとなるよう 手 助 けすることができるし またそうすべきでもある 驚 くほど 複 雑 であるにもかかわらず 投 資 運 用 の 分 野 は 実 際 には 主 に 二 つの 側 面 から 成 り 立 っているに すぎない 一 つは 顧 客 のために 最 善 を 尽 くす 職 業 (profession)としての 側 面 であり もう 一 つは 運 用 マネジャーにとって 最 善 の 利 益 をはかる 事 業 (business)としての 側 面 である 法 律 や 医 学 建 築 チャールズ D エリス CFA はホワイトヘッド インスティテュート(マサチューセッツ 州 ケンブ リッジ) 会 長 を 務 める 経 営 コンサルティング 等 他 の 専 門 職 と 同 様 に 職 業 と しての 価 値 (value)と 事 業 としての 経 済 性 (economics)との 間 に 絶 えず 葛 藤 がある われわれ は 顧 客 の 信 頼 を 確 保 することと 事 業 を 存 続 させる ことをうまく 両 立 させなければならないが 長 期 的 に は 顧 客 の 信 頼 があってこそ 事 業 は 存 続 するのである 極 めて 遺 憾 ながら 今 日 の 資 産 運 用 業 が 他 の 多 くの 専 門 職 と 異 なる 点 は 葛 藤 に 屈 して 事 業 上 の 目 的 を 職 業 としての 価 値 と 責 任 に 優 先 させていることである われわれが 自 らの 使 命 を 定 義 しなおし 投 資 助 言 を 行 うという 専 門 職 としての 価 値 および 投 資 家 と 投 資 に 関 する 理 解 に 重 点 を 置 き 顧 客 が 勝 者 となることがで き また 勝 者 となるに 値 するような 投 資 のゲームに 焦 点 を 当 てるよう 手 助 けするならば 葛 藤 に 屈 した 状 態 に 終 止 符 を 打 つことが 可 能 となる 幸 いなことに 職 業 としての 達 成 感 を 得 るために 役 立 つものは 長 期 的 には 事 業 にも 役 立 つのである 研 鑽 を 必 要 とする 他 の 専 門 職 と 同 様 に 投 資 専 門 職 にも 優 れた 技 能 を 必 要 とする 極 めて 難 解 な 面 が 多 く ほぼ 日 増 しに 複 雑 さが 増 しているが 重 要 な 側 面 は 二 つだけである 一 つには ますます 難 易 度 が 増 してい る 課 題 であるが 独 創 的 な 調 査 分 析 と 機 動 的 なポート フォリオ 運 用 を 上 手 く 組 み 合 わせて 今 や 市 場 を 支 配 し 全 体 として 証 券 価 格 を 形 成 する 増 える 一 方 の 幾 多 の 投 資 プロフェッショナルを 出 し 抜 いて 優 れた 運 用 成 績 をあげることである 常 に 興 味 深 く 度 々 魅 了 さ れ 時 にはぞくぞくさせられるのだが 市 場 を 打 ち 負 かす 競 争 は 激 しくなる 一 方 であり 今 や 極 めて 困 難 な 仕 事 になってきている ほとんどの 投 資 家 は 市 場 6

を 打 ち 負 かすどころか 市 場 に 打 ち 負 かされているの が 実 情 である 難 しいことが 必 ずしも 重 要 であるとは 限 らない 医 療 では ペニシリンを 除 いて 救 命 に 最 も 効 果 的 なのが 単 なる 手 洗 いの 励 行 であることが 明 らかになっている 幸 いなことに 投 資 プロフェッショナルの 仕 事 の 中 で 最 も 価 値 があるのは 最 も 取 り 組 みやすい 投 資 助 言 で ある 経 験 豊 富 な 専 門 家 として われわれは 各 顧 客 が 収 入 や 資 産 の 市 場 価 値 の 変 動 あるいは 流 動 性 の 制 約 等 さまざまなリスクに 対 する 許 容 度 の 範 囲 内 で 自 身 の 現 実 的 な 長 期 目 標 を 達 成 する 可 能 性 が 最 も 高 い 妥 当 な 投 資 計 画 を 十 分 に 検 討 して 決 定 するように 支 援 することができる そして 顧 客 が 妥 当 な 投 資 計 画 を 維 持 することを 手 助 けできるのは 特 に 市 場 が 今 回 は 違 う と 胸 が 躍 るような 投 資 機 会 に 満 ちている あ るいは 動 揺 するような 危 険 に 満 ちているように 見 える ときである 1 投 資 助 言 で 成 功 することは 単 純 なこと でも 容 易 でもないが 投 資 運 用 で 成 功 することに 比 べ ればはるかに 易 しい 優 れた 運 用 成 績 をあげることが 着 実 に 難 しくなっているときでさえ 投 資 プロフェッ ショナルに 利 用 可 能 な 新 しいツール 2 のおかげで 投 資 助 言 はますます 容 易 になっている 三 つの 過 ち 何 とも 皮 肉 ではあるが 投 資 運 用 に 携 わる 者 は 意 図 せず 三 つの 問 題 を 自 ら 生 みだしてきた そのうち 二 つ は 作 為 による 過 ちであり 以 前 にも 増 して 深 刻 な 結 果 を 招 いている 三 つ 目 はさらに 重 大 な 不 作 為 による 過 ちである やり 方 を 変 えない 限 り この 過 ちの 三 重 奏 は これまで 知 的 にも 報 酬 面 でも 多 くの 業 界 人 に 実 りをもたらしてくれた 専 門 的 職 業 に 害 を 及 ぼすことに なるであろう まず それぞれの 過 ちについて 順 に 説 明 した 後 最 善 の 解 決 策 を 提 案 することとしたい 過 ちその1: 使 命 の 取 り 違 え 一 つ 目 の 過 ちは 既 存 顧 客 および 見 込 み 顧 客 に 対 する 専 門 家 としての 使 命 を 市 場 を 打 ち 負 かす ことと 取 り 違 えていることであ る 50 年 前 であれば 使 命 をそのように 捉 えた 者 にも ある 程 度 成 功 の 見 込 みがあった しかしそのような 時 代 は 既 に 過 去 の 話 となっている 今 日 のように 競 争 の 激 しい 証 券 市 場 では 長 期 的 に たとえ1%でさえ 市 場 をアウトパフォームするアクティブ マネジャーは ほとんどおらず ほとんどの 運 用 マネジャーが 市 場 を 下 回 っており 程 度 の 点 からは アンダーパフォーム の 度 合 いがアウトパフォームの 度 合 いを 大 幅 に 上 回 っ ている さらに 将 来 の 勝 ち 組 となる 稀 有 な 運 用 マネジャーを 特 定 することが 難 しいことはよく 知 られ ているとおりであり 3 一 時 的 な 市 場 のリーダー がその 後 成 績 不 振 に 陥 る 割 合 は 高 い 4 非 常 に 大 きな 変 化 が 市 場 と 投 資 運 用 のあり 方 を 大 き く 変 えたため たいていの 投 資 家 は 市 場 を 打 ち 負 か すことがもはや 現 実 的 な 目 標 ではないことを 認 めざる を 得 なくなっている 過 去 50 年 間 にわたり 次 に 述 べ るような 変 化 が 積 み 重 なって アクティブ 運 用 は 敗 者 のゲームへと 変 容 したのである ニューヨーク 証 券 取 引 所 の 出 来 高 は1 日 当 たり 約 200 万 株 から 約 40 億 株 へと2,000 倍 超 にまで 増 加 した 世 界 の 他 の 主 要 証 券 取 引 所 でも 同 じような 取 引 高 の 増 加 が 見 られる 投 資 家 の 構 成 が 大 きく 変 化 した ニューヨーク 証 券 取 引 所 上 場 株 式 では 公 開 市 場 における 取 引 高 の90パーセントを 個 人 が 占 めていたが 今 や 機 関 投 資 家 が90%を 占 めている また 古 い 時 代 を 知 る 人 であれば 誰 でも 往 時 と 比 べて 今 日 の 機 関 投 資 家 は 規 模 が 格 段 に 大 きく 洗 練 されていて 侮 りがたく かつ 機 敏 であると 言 うであろう 取 引 集 中 度 も 大 変 なものである 最 も 活 発 に 取 引 を 行 う 機 関 投 資 家 上 位 50 社 が ニューヨーク 証 券 取 引 所 における 上 場 株 式 取 引 高 全 体 の50パーセントを 占 め 50 社 の 中 で 最 も 規 模 が 小 さい 機 関 投 資 家 でも 世 界 の 証 券 業 界 が 提 供 するサービスに 対 して 年 間 1 億 米 ドルの 手 数 料 を 支 払 っている 当 然 これら 大 手 の 機 関 投 資 家 は 証 券 会 社 から 真 っ 先 に 連 絡 を 受 けることになる 7

デリバティブ 市 場 の 規 模 は ほぼゼロから 現 物 市 場 を 上 回 るまでに 成 長 した CFA 協 会 認 定 証 券 アナリストの 資 格 者 は50 年 前 のほ ぼゼロから およそ10 万 人 となり 北 米 中 国 イ ンドを 中 心 にさらに20 万 人 の 受 験 者 がいる 公 平 情 報 開 示 規 則 (Regulation Fair Disclosure) 通 称 Reg FD の 施 行 により 企 業 が 公 表 する 投 資 情 報 の 大 半 が コモディティ 化 した アルゴリズム 取 引 コンピュータ モデルおよび 多 数 の 独 創 的 なクオンツ 戦 略 が 市 場 で 大 きな 影 響 力 を 持 つようになった グローバル 化 やヘッジファンド プライベート エ クイティ ファンドがすべて 証 券 市 場 における 競 争 激 化 をもたらした ブルームバーグ インターネット 電 子 メール 等 が 世 界 の 情 報 通 信 分 野 に 技 術 革 新 をもたらした 実 際 誰 もがネットワーク 化 されているのである 世 界 の 主 要 市 場 で 大 手 証 券 会 社 が 発 行 する 投 資 調 査 レポートを 通 じて 膨 大 な 量 の 有 用 な 情 報 がもたら され インターネット 経 由 でほぼ 瞬 時 に 迅 速 な 意 思 決 定 を 行 う 組 織 で 働 く 世 界 中 の 何 万 人 ものアナリ ストやポートフォリオ マネジャーに 配 信 されてい る 上 記 以 外 にも 多 くの 変 化 によって 世 界 最 大 かつ 最 も 取 引 が 活 発 な 予 測 市 場 である 株 式 市 場 は ます ます 効 率 的 になった そのため 情 報 やコンピュータ に 経 験 を 駆 使 し 市 場 価 格 を 形 成 する 頭 が 切 れて 勤 勉 な 専 門 家 に 打 ち 勝 つことはますます 難 しくなっている さらに 取 引 費 用 および 報 酬 控 除 後 で 市 場 に 打 ち 勝 つことははるかに 困 難 になっている だからこそ 投 資 信 託 のうち 報 酬 控 除 後 で 市 場 平 均 を 下 回 る 割 合 が どの1 年 間 で 見 ても 約 60パーセント 10 年 間 では 約 70 パーセント 20 年 間 では80パーセントにも 達 するので ある 5 残 念 ながら パフォーマンス の 説 明 では あら ゆる 投 資 に 係 る 最 も 重 要 な 要 素 であるリスクについて 言 及 もしていないことがほとんどである そこで 敗 者 が 市 場 をアンダーパフォームする 度 合 いは 勝 者 がアウトパフォームする 度 合 いの2 倍 に 達 す ることを 思 い 出 してもらいたい 6 また パフォーマ ンス データは 税 金 も 考 慮 されていないが 今 やポー トフォリオの 売 買 回 転 率 は100パーセントが 普 通 であ り それに 伴 う 短 期 売 買 で 生 じる 利 益 にかかる 重 い 税 負 担 に 特 に 留 意 する 必 要 がある 7 そして 最 後 に ファンドのパフォーマンスは 通 常 金 額 加 重 収 益 率 ではなく 時 間 加 重 収 益 率 を 用 いて 示 されるため 報 告 される 運 用 成 績 は 投 資 による 真 の 成 果 を 示 していない 投 資 家 の 資 金 が 実 際 にいくらになったのかを 示 すには 金 額 加 重 収 益 率 を 用 いるしかない そうすると 見 栄 え はよくない 顧 客 である 個 人 投 資 家 や 機 関 投 資 家 が アンダーパ フォーマンスが 数 年 続 いた 運 用 マネジャーに 対 する 失 望 から 最 近 の 実 績 が 注 目 を 集 めるほど 好 調 な 運 用 マネジャーに 乗 り 換 え 高 値 で 買 って 安 値 で 売 ると いう 過 ちを 繰 り 返 し ファンドの 長 期 リターンから 実 際 に 約 3 分 の1を 享 受 し 損 なっている 状 況 を 見 ると 気 分 が 滅 入 ってくる 8 ( 自 らアクティブ 運 用 を 行 う 個 人 投 資 家 のパフォーマンスはさらに 悪 いこともよく 知 られている) 9 残 念 ながら こうした 高 くつく 投 資 行 動 を 助 長 しているのが 資 産 運 用 会 社 であり 売 上 げ を 増 やすために ある 特 定 の 期 間 を 抽 出 して 直 近 の 運 用 実 績 が 殊 更 よく 見 える ファンドを 選 んで 集 中 的 に 宣 伝 するのである 数 百 本 の 様 々なファンドを 有 する 資 産 運 用 会 社 であれば 常 に 記 録 上 の 勝 者 を 何 本 か 抱 えているのは 明 白 である 新 たに 運 用 マネジャーを 選 定 する 際 に 個 人 投 資 家 が 過 去 の 実 績 に 頼 りがちであることは 広 く 知 られてい るが 投 資 信 託 に 関 する 研 究 によれば 過 去 のパ フォーマンスで 十 分 位 にわけた10のマネジャー 群 のう ち9のマネジャー 群 は 将 来 のパフォーマンスが 過 去 の 8

パフォーマンスとはほとんど 無 関 係 であるという ( 過 去 データのうち 予 測 能 力 が 認 められたのは 最 下 位 の 第 10 十 分 位 だけであった なぜなら 報 酬 の 高 さ と 恒 常 的 な 運 用 能 力 の 低 さだけが 運 用 マネジャーの 成 績 に 信 頼 できる 反 復 的 な 影 響 を 及 ぼしているのであ る) 残 念 ながら 機 関 投 資 家 個 人 投 資 家 ともに 最 高 の 運 用 成 績 が 出 た 後 にマネジャーを 採 用 し 最 悪 期 を 脱 した 後 に 解 約 することを 繰 り 返 している 年 金 基 金 の 運 用 委 員 会 の83パーセントが 運 用 に 係 る 専 門 能 力 について 平 均 以 上 と 自 己 評 価 しているが 皮 肉 なことに 解 約 した 運 用 マネジャーのその 後 数 年 間 の 平 均 リターンは 新 たに 採 用 した 運 用 マネジャーの 平 均 リターンをわずかながら 上 回 っているのである 10 機 関 投 資 家 が 解 約 した 投 資 商 品 のパフォーマンスは 購 入 した 商 品 をその 後 アウトパフォームしている 11 こうした 投 資 行 動 の 代 償 は 大 きい 顧 客 がこう 尋 ねても 不 思 議 ではない どうしてこ うなるのか コンサルタントの 説 明 では 彼 らが 推 奨 する 運 用 マネジャーは 通 常 ベンチマークを 上 回 るので はなかったのか リスク 調 整 後 でも 運 用 マネジャーは 市 場 をいくらかでも 上 回 る 収 益 をあげているはずでは なかったのか こうした 楽 観 的 な 見 方 を 持 つ 投 資 家 にとっては 残 念 なことだが 多 くのコンサルタントが 通 常 提 示 するデータには 不 備 がある 従 来 の 方 法 で 提 示 される データ の 中 から 二 つのバイアス すな わちデータ 遡 及 と 生 存 者 バイアスを 取 り 除 くと コン サルタントが 調 査 対 象 としている 運 用 マネジャーの 運 用 実 績 は 見 かけ 上 市 場 を 上 回 っている ように 見 えたものが 実 際 には 市 場 を 下 回 っている 現 実 が 露 わになってしまう 12 規 模 が 大 きく 洗 練 された 機 関 投 資 家 でも 見 張 りの 見 張 りまで 用 意 していないこと を 理 解 しておくべきである 一 つ 目 の 作 為 による 過 ちに 関 する 厳 然 たる 事 実 は ほとんどの 運 用 マネジャーが 達 成 しておらず また 現 実 的 に 達 成 することのない 商 品 すなわち 市 場 を 打 ち 負 かすパフォーマンスを 売 り 込 み 続 けていることであ る たいていの 投 資 家 が 気 づいていない 事 実 であるが すべてとは 言 わないまでも ほとんどの 投 資 を 低 コス トのインデックス ファンドあるいはインデックス 連 動 型 上 場 投 信 (ETF)に 投 じていれば その 方 が 成 果 はあがるだろう しかし これはウォーレン バ フェット(Warren Buffett) 氏 が 事 業 に 求 める 競 争 に 対 する 強 力 な 防 御 のための 堀 にはならない 投 資 家 がまだ 気 づいてない 理 由 の 一 つは 報 酬 に 関 する 大 きな 誤 解 があるためである 報 酬 の 実 態 たいていの 投 資 家 は 報 酬 が 決 して 低 くはないことにまだ 気 づいていない 13 報 酬 の 実 態 を 理 解 したならば 本 当 は 非 常 に 高 いのである 0.5 パーセントの 報 酬 は 資 産 に 対 する 割 合 であるが 想 定 される 平 均 的 な 年 間 リターンに 対 する 割 合 がゆうに 5パーセントを 超 えることは 確 実 である 14 投 資 家 は インデックス ファンドに 投 資 すれば10ベーシスポイ ント 以 下 で 市 場 リターンがほぼ 保 証 されるため アク ティブ マネジャーに 委 託 して 実 際 に 買 っている のはリスク 調 整 後 の 追 加 リターンである リスク 調 整 後 の 追 加 リターンに 対 する 比 率 として 計 測 すると 運 用 報 酬 は 決 して 低 いとはいえず むしろ 高 い 過 去 50 年 間 で 報 酬 が 上 昇 し 現 在 では 運 用 報 酬 総 額 がリスク 調 整 後 の 追 加 リターンを 上 回 っている これはとりも なおさず 運 用 マネジャーが 実 際 に 生 み 出 した 収 益 の 100パーセントを 越 える 報 酬 を 顧 客 に 課 していること になる この 紛 れもない 事 実 が 慎 重 ながらもある 程 度 のスピード 感 をもって 顧 客 に 対 する 投 資 プロ フェッショナルとしてのあり 方 を 見 直 すべき 大 きな 理 由 の 一 つである 資 産 運 用 業 界 にとって 最 良 の 機 会 顧 客 の 信 用 と 信 頼 を 勝 ち 得 た 投 資 助 言 者 は 多 くの 顧 客 の 長 期 リター ン 向 上 にポートフォリオ マネジャーが 望 むよりはる かに 多 く 寄 与 することができる これは お 手 軽 な 解 決 策 ではない 投 資 助 言 を 効 果 的 に 行 うには 時 間 を 要 し 複 雑 な 市 場 に 関 する 知 識 投 資 実 務 および 投 資 家 についての 理 解 勤 勉 さが 必 要 とされる とはい 9

え 投 資 助 言 を 効 果 的 に 行 うことは 可 能 であり 繰 り 返 し 上 手 く 行 うことも 可 能 である 優 秀 な 助 言 者 は 顧 客 が 投 資 に 係 るリスクを 理 解 し 現 実 的 な 運 用 目 標 を 設 定 し 貯 蓄 および 支 出 について 現 実 的 に 考 え 適 切 な 資 産 クラスを 選 択 し 適 切 に 資 産 配 分 を 行 い そ して 何 よりも 重 要 なことであるが 市 場 の 高 騰 や 下 落 に 対 して 過 剰 反 応 しないよう 手 助 けすることができる 助 言 者 は 運 用 マネジャーが 長 期 的 に 何 を 達 成 しよう としているかについて 顧 客 の 理 解 を 助 けることによっ て 顧 客 が 方 針 を 変 えることなく 長 期 的 な 視 点 を 維 持 し 動 揺 させるような 市 場 の 混 乱 は 想 定 されるもので あることを 理 解 し 忍 耐 力 と 意 思 の 強 さが 長 期 の 運 用 成 績 によって 正 当 に 報 われると 確 信 を 持 つことができ るよう 手 助 けすることができる 過 ちその2: 優 先 順 位 を 誤 る 作 為 による 過 ちの 二 つ 目 は 職 業 としての 価 値 より 事 業 の 経 済 性 をますます 優 先 してきたことである これはおそらく 個 人 レベル で 最 も 明 白 に 表 れているであろう 裕 福 な 生 活 が 明 ら かに 幸 せなものであることを 誰 が 否 定 できるだろうか と われわれは 自 らに 率 直 に 問 いかけるべきである 投 資 プロフェッショナルたちは 50 年 前 に 比 べて 立 派 な 家 に 住 み 高 級 車 に 乗 り 趣 向 を 凝 らした 休 暇 を 楽 しみ 大 きな 家 やオフィスを 絵 画 や 彫 刻 の 名 品 で 飾 るようになってきた プライベートジェットの 所 有 や 自 分 の 名 前 を 冠 した 慈 善 活 動 の 実 施 もよく 知 られ たところである 現 実 問 題 として 個 人 の 金 銭 面 での 最 大 の 課 題 は いかにして 債 務 を 返 済 し 子 供 の 大 学 費 用 を 捻 出 するかではなく 子 供 たちに 自 力 で 成 功 を 勝 ち 取 るという 正 しい 価 値 観 を 授 けず あまりに 早 い 時 期 から 与 えすぎることにより 子 供 の 人 生 を 台 無 し にしてしまう 愚 を いかに 避 けるかということである 資 産 運 用 業 界 に 引 き 寄 せられた 有 能 で 競 争 意 識 の 強 い 人 々は 意 図 しないまま 形 ある 報 償 を 求 めて 競 争 に 没 頭 した 結 果 特 に 自 分 が 極 めて 優 秀 で 大 変 な 努 力 もしていると 自 負 する 人 ほど 彼 らの 最 善 の 努 力 の 真 価 をあるいは 崩 壊 させかねない 問 いを 発 しないままで いる 過 去 50 年 間 に 資 産 運 用 業 界 の 収 益 性 がどのよ うに 向 上 してきたか その 主 な 要 因 は 以 下 の 通 りであ る 運 用 資 産 残 高 は 一 時 的 な 停 滞 期 も 何 度 かあったも のの 10 倍 に 増 加 運 用 資 産 残 高 に 対 する 運 用 報 酬 の 比 率 は5 倍 超 に 上 昇 この 組 み 合 わせの 威 力 は 絶 大 であった 収 益 性 が 飛 躍 的 に 向 上 した 結 果 以 下 のような 状 況 を 生 み 出 した 個 人 の 報 酬 は 約 10 倍 に 増 加 企 業 価 値 はさらに 大 きく 上 昇 魅 力 ある 事 業 資 産 運 用 業 は 利 益 率 が 高 く 所 要 資 本 が 比 較 的 小 さく 事 業 リスクが 最 小 限 であり 長 期 的 な 成 長 がほぼ 約 束 されていることから 資 産 運 用 会 社 は 銀 行 保 険 証 券 会 社 など 資 産 運 用 会 社 以 外 の 巨 大 金 融 サービス グループの 格 好 の 買 収 対 象 となっ てきた 15 独 立 路 線 を 選 択 する 資 産 運 用 会 社 のなか には 株 式 を 公 開 する 会 社 もあれば 非 公 開 企 業 であり 続 ける 会 社 もあるが いずれにしても 事 業 規 模 が 拡 大 してきた 事 実 を 認 識 しており 適 切 な 経 営 を 行 ってい る 資 産 運 用 会 社 の 規 模 が 拡 大 するにつれて 驚 くには 当 たらないが 経 営 幹 部 には 投 資 プロフェッショナル に 代 わって 専 門 的 経 営 者 が 登 用 されることが 増 えて きており また 事 業 上 の 論 理 がますます 職 業 としての 論 理 より 優 先 されるようになってきている 事 業 上 の 論 理 は 強 い 出 世 意 欲 を 持 つ 人 々の 関 心 を 利 益 拡 大 に 向 かわせるが その 達 成 には 資 産 集 め の 強 化 が 最 も 効 果 的 なのである 一 方 投 資 プロフェッショナル にとって 資 産 規 模 の 拡 大 が 通 常 パフォーマンスに 悪 影 響 を 及 ぼすことは 常 識 である 大 手 の 金 融 サービ ス グループの 経 営 幹 部 は 当 然 ながら 運 用 成 績 より 利 益 を 重 視 して 部 門 別 業 績 を 評 価 することから 事 業 の 成 否 は 公 表 利 益 の 一 貫 性 および 成 長 率 によって 判 断 される 事 業 規 模 が 大 きいほど 経 営 幹 部 の 関 心 が 事 業 利 益 の 拡 大 に 向 けられる 可 能 性 が 高 い 10

事 業 としての 投 資 長 期 的 な 価 値 を 追 求 する 投 資 プ ロフェッショナルは 絶 えず 変 化 し 時 に 乱 高 下 する 足 元 の 市 場 価 格 に 細 心 の 注 意 を 払 う 必 要 があることを 知 っている しかし 企 業 利 益 を 重 視 する 資 産 運 用 会 社 の 所 有 者 にとっては 資 産 運 用 業 の 長 期 トレンドが 全 く 別 の 視 点 をもたらす もちろん 市 場 は 時 として 急 激 に また 大 幅 に 変 動 するものだが ポートフォリ オ 運 用 の 教 訓 にしたがい 複 数 の 資 産 クラスに 分 散 投 資 することで 利 益 変 動 の 幅 および 頻 度 を 減 らし 資 産 運 用 会 社 を 上 手 く 運 営 することが 可 能 である さら に 重 要 なことは 投 資 市 場 がすべて 長 期 上 昇 傾 向 にあ ることは 非 常 に 有 利 であり 明 敏 な 経 営 者 であれば 長 期 間 では 利 益 が 平 準 化 されることに 気 付 くであろう 10 年 間 に 限 っても 資 産 運 用 会 社 の 所 有 者 は 金 融 市 場 の 変 動 による 影 響 を 吸 収 し 事 業 の 長 期 トレンドに 焦 点 を 合 わせることができる 名 目 的 な 市 場 価 値 は 基 本 的 なトレンドとして 明 ら かに 増 加 基 調 にあり 複 利 成 長 率 で 年 平 均 5パーセン ト 超 もしくは 経 済 全 体 の 成 長 率 の2 倍 超 のペースで 拡 大 している これに 既 存 顧 客 への 販 売 増 加 新 市 場 に 対 する 既 存 商 品 の 投 入 および 既 存 顧 客 向 けの 新 商 品 開 発 の 効 果 を 加 味 すると 年 複 利 平 均 成 長 率 は10 パーセントを 超 える 10パーセント 成 長 が 可 能 なサー ビス 業 で 潜 在 的 損 失 に 備 える 所 要 資 本 がほとんど 必 要 なく 高 い 利 益 率 を 維 持 しながら 大 きく 成 長 するこ とができる 点 では メイ ウェスト(Mae West)のう まい 表 現 を 借 りるならまさに 最 高 (Wunnerful!) である このような 状 況 では 投 資 プロフェッショナ ルが 経 験 から 運 用 資 産 の 増 加 が 大 敵 となりえることを 理 解 していたとしても 精 力 旺 盛 な 経 営 者 であればど のように 行 動 するだろうか 追 加 資 産 の 高 い 利 益 率 に 気 付 いた 経 営 者 は 資 産 集 めに 力 を 入 れ 事 業 を 拡 大 させ 売 れる 商 品 を 売 るのではないだろうか 世 界 の 資 産 運 用 会 社 の 内 部 において 起 きた 二 つの 最 も 重 要 な 変 化 は 投 資 調 査 やポートフォリオ 運 用 に 関 してではない それは 新 規 事 業 開 発 ( 運 用 成 績 の 好 調 時 にビジネスをさらに 獲 得 すること)とリレー ションシップ マネジメント( 特 に 運 用 成 績 の 不 振 時 に 取 引 関 係 を 維 持 すること)であった こうした 変 化 は 何 よりももっぱら 事 業 の 現 実 に 対 応 したものであ り 専 門 職 としての 純 粋 な 要 請 でも ましてや 投 資 家 としての 顧 客 からの 要 請 でもなかった 経 営 が 優 先 される 状 況 は 投 資 プロフェッショナル にとって 好 ましいものではない これはかなり 頻 繁 に 起 こることだが 資 産 集 めに 成 功 し いずれ 優 れた 投 資 を 行 う 専 門 能 力 に 過 度 の 負 担 がかかるようになると 投 資 家 が 享 受 する 運 用 成 績 はしりすぼみとなる さら に コスト 管 理 や 報 酬 引 上 げ 生 産 性 向 上 努 力 な ど 事 業 としての 組 織 の 業 績 向 上 を 目 的 とした 行 動 は 運 用 成 績 悪 化 の 可 能 性 を 高 める 過 ちその3: 綿 密 なアドバイスを 省 略 する 三 つ 目 の 過 ちである 不 作 為 による 過 ちは 自 らの 仕 事 を 価 値 の ある 専 門 的 サービスであると 認 められたいすべての 資 産 運 用 業 界 人 にとって 特 に 悩 ましい 問 題 である 達 成 する 見 込 みがますます 薄 くなっている 中 で 市 場 を 打 ち 負 かすことを 投 資 プロフェッショナルの 最 適 な 評 価 尺 度 と 受 け 入 れること 専 門 家 としての 成 功 よりも 事 業 面 の 達 成 度 を 一 層 重 視 する という 作 為 による 二 つの 過 ちに 加 えて 我 々は 顧 客 の 役 に 立 つという 職 業 とし ての 最 良 の 機 会 をどういうわけか 見 失 い 効 果 的 な 投 資 助 言 から 注 意 をそらしてしまった 16 専 門 職 員 を 抱 える 大 規 模 な 機 関 投 資 家 向 けファンドであれば 最 適 な 長 期 運 用 計 画 を 設 計 するという 複 雑 な 仕 事 を 行 う 訓 練 と 経 験 を 積 んだ 専 門 家 の 助 けを 借 りなくとも す べての 責 任 を 引 き 受 けることは 確 かに 可 能 であろうが 特 に 個 人 投 資 家 そしてほとんどの 中 小 規 模 の 公 的 年 金 基 金 や 企 業 年 金 基 金 大 学 や 美 術 館 病 院 の 基 金 に おける 資 産 運 用 委 員 会 など たいていの 投 資 家 は 最 先 端 の 投 資 運 用 の 専 門 家 ではなく 広 範 な 経 験 を 有 し ていないとしても 当 然 である だからこそ 手 助 けを 必 要 としている 投 資 家 は 多 い 専 門 家 の 最 良 の 知 見 や 判 断 を 受 けることが 可 能 となれば 誰 もが 歓 迎 するで 11

あろう 役 に 立 つことができる 投 資 プロフェッショナルは 重 要 な 手 助 けをすることができる 格 好 の 立 場 にいる 長 期 的 に 実 際 に 市 場 を 打 ち 負 かすと 見 込 まれる 運 用 マ ネジャーを 選 定 することが もはや 現 実 的 な 想 定 ある いは 所 与 ではないと 理 解 してもらうのも 顧 客 が 必 要 とする 手 助 けのひとつである(もちろん 運 用 マ ネジャーの 中 には 市 場 を 打 ち 負 かす 者 もいるであろ うが 事 前 にそうした 運 用 マネジャーを 見 つけること は 極 めて 困 難 になっている) 投 資 家 は 市 場 を 上 回 ろうとすればするほど 損 失 が 利 益 を 上 回 ることを 理 解 するのにも 手 助 けを 必 要 としている さらに 重 要 なこ とは まずリスクとボラティリティにつき 次 に 収 益 性 につき 様 々な 種 類 の 投 資 に 係 る 中 長 期 の 見 通 しを 現 実 的 に 理 解 する 手 助 けが 必 要 とされており それによ り 投 資 家 は 何 を 期 待 すればよいか どのように 戦 略 的 ポートフォリオと 投 資 方 針 を 決 定 すればよいかを 理 解 できるようになるのである それ 以 上 に 重 要 なことは 前 述 のとおり たいてい の 投 資 家 は 自 分 自 身 と 自 分 の 置 かれた 状 況 について バランスの 取 れた 客 観 的 な 理 解 ができるよう 手 助 けを 必 要 としていることである 具 体 的 には 投 資 に 関 す る 知 識 と 技 能 資 産 や 収 入 流 動 性 に 対 するリスク 許 容 度 資 金 面 および 心 理 面 の 要 請 財 源 短 期 および 長 期 の 資 金 目 的 や 負 債 を 理 解 することである 投 資 家 は 最 も 対 処 と 解 決 がなされるべき 課 題 が 市 場 を 打 ち 負 かすことではないことを 認 識 する 必 要 がある これ ら 他 の 要 因 が 重 なって 投 資 家 として 顧 客 自 身 の 現 実 が 明 らかになるのである すべての 投 資 家 に 共 通 する 点 もいくつかあるものの はるかに 多 くの 点 でそれぞれ 大 きく 異 なる すべての 投 資 家 に 共 通 する 点 は 多 くの 選 択 肢 を 持 ち 選 択 の 自 由 があること その 選 択 が 重 要 であり 誰 もがうまく やりたいと 望 んでおり 過 ちを 回 避 したいと 考 えてい ることである 同 時 にすべての 投 資 家 が 資 産 収 入 支 出 の 義 務 と 予 定 投 資 期 間 投 資 技 能 リスクと 不 確 実 性 に 対 する 許 容 度 市 場 経 験 負 債 など 多 くの 点 で 異 なる かくも 多 様 な 個 人 投 資 家 および 機 関 投 資 家 は 投 資 家 としての 長 所 と 短 所 を 考 慮 した 上 で それ ぞれに 真 に 適 した 投 資 計 画 を 設 計 する 際 に 手 助 けが 必 要 となる 重 要 なことだが たいていの 投 資 家 にとっ て 正 しいことは 集 団 行 動 的 に 市 場 を 打 ち 負 かすこと に 血 道 をあげることではないのである スキーに 例 えれば 分 かりやすいだろう コロラド 州 のヴェイルやアスペンでは その 他 の 名 だたるスキー リゾート 同 様 数 多 くのスキー 客 がそれぞれ 楽 しい 時 間 を 過 ごしている 景 色 も 美 しいし 雪 の 量 も 多 く 整 備 も 行 き 届 いているが 何 と 言 ってもスキー 客 がそ れぞれの 技 能 や 体 力 興 味 に 応 じて 最 も 適 したルート を 明 確 に 選 べることが 最 大 の 理 由 である 緩 やかな 初 心 者 向 けコース を 好 む 人 適 度 に 難 しい 中 級 者 向 けコースを 好 む 人 がいれば 上 級 者 や 足 のばねが 強 く 恐 怖 心 がない10 代 後 半 の 達 人 にとっても 難 しい コースに 挑 戦 したい 人 もいる スキー 客 が 自 分 に 適 し たコースで それぞれに 適 した 速 さで 滑 っているとき 誰 もが 最 高 の 一 日 を 過 ごしていて 全 員 が 勝 者 である 役 立 つべきである 同 様 に 投 資 プロフェッショナ ルが 投 資 家 の 運 用 技 能 や 経 験 財 務 状 況 リスクおよ び 不 確 実 性 に 対 する 許 容 度 に 適 った 投 資 計 画 を 選 択 で きるよう 手 助 けすることができれば 多 様 な 投 資 家 の 大 半 が 投 資 計 画 を 自 分 の 運 用 技 能 や 財 源 に 見 合 ったも のにすることができ 通 常 は 現 実 的 な 長 期 の 目 的 を 達 成 することが 可 能 になるであろう このことは 基 本 的 な 投 資 助 言 の 重 要 な 仕 事 であり さほど 難 しくはない われわれがほぼすべての 投 資 家 に 提 供 できる 最 も 価 値 ある 専 門 サービスは 効 果 的 な 投 資 助 言 である ご くわずかな 例 外 を 除 いて たいていの 運 用 マネジャー は 現 在 この 重 要 な 仕 事 を 無 視 している 17 投 資 家 が 必 要 としていることが 最 も 明 瞭 であり 投 資 家 にとっ て 最 も 価 値 があり 徹 底 して 行 えば 成 功 する 確 率 が 高 い 専 門 サービスに 関 心 が 払 われていないとは 皮 肉 で すまされる 話 ではない このことは 今 後 の 資 産 運 用 業 12

界 における 最 大 の 課 題 であり 最 良 の 機 会 でもあろう 必 要 性 を 示 す 事 例 個 人 に 対 する 投 資 助 言 が 決 定 的 に 必 要 とされるようになったのは 退 職 年 金 基 金 が 確 定 給 付 型 (DB)から 確 定 拠 出 型 (DC)へ 移 行 したた めである おそらく 個 人 に 対 して 提 供 された 最 も 価 値 ある 金 融 サービスである 確 定 給 付 年 金 は 退 職 者 に 低 コストで 長 期 的 に 管 理 の 行 き 届 いた 投 資 から 定 期 的 に 給 付 金 の 支 払 いが 行 われ 投 資 に 関 する 知 識 や 技 能 を 必 要 とせず 市 場 の 高 値 警 戒 も 必 要 とせず 市 場 が 大 きく 下 落 しても 勇 気 を 奮 い 起 す 必 要 もなく 長 寿 リ スクを 心 配 する 必 要 もないものである 対 照 的 に 今 日 のDCプランでは5,500 万 人 の 加 入 者 が 自 らポートフォリオを 決 定 している 20パーセント 程 度 の 投 資 家 が 全 額 マネー マーケット ファンドに 投 資 しているが 残 高 が 少 なかった 積 立 開 始 時 よ り 当 初 の 資 産 配 分 を 変 えていないことがその 理 由 で ある 年 金 の 母 体 企 業 の 株 式 に 投 資 できる 年 金 制 度 で は 17パーセントの 加 入 者 が 口 座 残 高 の40パーセント 超 を 母 体 企 業 の 株 式 に 投 資 している (エンロン 社 や ポラロイド 社 他 の 事 例 が 示 すように これには 分 散 を 行 わないことで 痛 手 を 被 る 潜 在 的 な 可 能 性 がある ) 多 くの 労 働 者 にとってさらに 重 要 な 問 題 は 快 適 な 生 活 を 送 るための 所 要 月 額 を 得 るのに 資 金 がどのくらい 必 要 なのか またどれほど 多 くの 受 給 者 が 老 後 資 金 不 足 に 陥 ることになるかを どれだけの 人 が 理 解 してい ないか という 点 にある ひとつの 基 準 は 年 間 引 出 額 を 資 産 の4パーセントに 抑 えることである 積 立 期 間 がこの 先 10 年 しかない50 代 半 ばの 加 入 者 は 現 在 の 平 均 的 な 残 高 が15 万 米 ドルである 4パーセントで 計 算 すると 税 金 およびインフレ 考 慮 前 で 年 間 わずか6 千 米 ドルにしかならず 6パーセントでも 年 間 9 千 米 ド ルにしかならない これは 大 変 である 有 益 な 変 化 ターゲット デート ファンドあるい はライフサイクル ファンドは 自 分 でつくる 投 資 商 品 をサービスに 転 換 するもので 正 しい 方 向 への 一 歩 である 大 手 の401(k) 運 用 会 社 が 提 供 する 低 コス トのコンピュータ モデルも 同 様 である 商 品 中 心 か らサービス 中 心 の 戦 略 へ 移 行 している 資 産 運 用 会 社 は 運 用 実 績 および 企 業 業 績 面 で 非 常 に 良 い 結 果 を 残 して いる こうした 資 産 運 用 会 社 は 基 本 的 な 投 資 助 言 に 拡 張 性 を 持 たせ さらにサービスの 充 実 に 期 待 が 持 て る 例 えば ターゲット デート ポートフォリオを 一 つに 絞 るのではなく 市 場 リスク 選 好 度 が 高 い 低 い または 平 均 並 みという3 種 類 のファンドを 設 ける のはどうだろうか 母 体 企 業 が 加 入 者 に 対 して 投 資 の 意 思 決 定 に 関 する 基 本 的 な 助 言 を 行 うことについて 米 国 議 会 は 従 来 のように 禁 止 するのではなく むし ろ 容 認 することで 後 押 ししている 大 手 資 産 運 用 会 社 のなかには 現 在 どのセクターに 魅 力 があり どのセ クターの 魅 力 が 乏 しいかについて 実 験 的 に 助 言 を 始 めているところもあるが 18 投 資 家 の 置 かれた 状 況 運 用 能 力 及 び 目 的 を 理 解 するという 重 要 な 仕 事 に は 手 をつけていないのが 普 通 である ほんの 一 部 では あるが 幅 広 い 運 用 サービスとそれぞれの 顧 客 に 最 適 な 商 品 の 組 み 合 わせについての 助 言 を 提 供 する 資 産 運 用 会 社 もある 投 資 家 が 必 要 とするサービスと 投 資 家 が 利 用 可 能 な 商 品 との 溝 を 埋 めるためにすべきこと はまだたくさんある 結 論 : 将 来 の 約 束 運 用 サービスと 各 投 資 家 の 長 期 的 な 目 標 との 適 合 性 を 高 めること すなわち 自 己 責 任 が 求 められる 商 品 販 売 から より 長 続 きする 理 解 を 共 有 するサービス 重 視 の 顧 客 関 係 に 移 行 することにより 顧 客 関 係 の 持 続 性 言 い 換 えれば 忠 誠 心 を 高 め 結 果 的 に 顧 客 と マネジャーとの 関 係 は 経 済 的 価 値 が 高 まることになる 顧 客 と 運 用 マネジャーとの 関 係 の 持 続 性 が 高 まれば 双 方 に 大 きな 恩 恵 がもたらされることになる 必 要 と されるサービスを 提 供 する 最 良 の 方 法 が 既 存 の 顧 客 と 運 用 マネジャーとの 関 係 に 投 資 助 言 を 加 え 関 係 を 維 持 長 期 化 することだとしても 既 存 事 業 の 高 い 利 益 率 からすれば 多 少 の 費 用 は 吸 収 できるのではないだろ うか 資 産 運 用 業 界 の 使 命 あるいは 職 業 的 使 命 として 専 門 家 としての 使 命 を 定 義 しなおし 賢 明 な 投 資 助 言 13

を 含 めることで 顧 客 と 理 解 を 共 有 し 成 功 を 分 かち 合 うことができるのではないだろうか 専 門 家 として 市 場 を 打 ち 負 かすことを 使 命 と 捉 え 事 業 の 短 期 的 な 経 済 性 を 職 業 としての 長 期 的 な 価 値 に 優 先 させるという 二 つの 作 為 による 過 ちを 正 そう 不 作 為 の 過 ちを 正 して 顧 客 との 関 係 における 投 資 助 言 を 再 認 識 すれば 我 々と 顧 客 の 双 方 に 利 益 のある 本 来 の 状 況 が 当 然 生 まれるはずだ 資 産 運 用 業 界 の 顧 客 と 実 務 家 が 互 いに 利 益 を 得 るた めには 市 場 を 打 ち 負 かすという 敗 者 のゲームに 勝 とう として 労 力 を 費 やすのではなく 技 能 や 知 識 および 時 間 をかけて 顧 客 が 市 場 の 現 実 を 認 識 し 投 資 家 としての 本 分 を 理 解 し 現 実 的 な 目 標 を 明 確 にし それぞれに 相 応 しい 方 針 を 維 持 する 手 助 けをする 必 要 がある 適 切 な 行 動 をとれば 資 産 運 用 業 界 は 信 頼 される 専 門 的 職 業 として また 個 人 は 投 資 プロフェッショナル として 将 来 の 成 功 を 享 受 することができる 顧 客 の 側 で 正 しく 振 る 舞 い 投 資 という 勝 者 のゲームに 勝 てる よう 顧 客 を 導 くならば 資 産 運 用 業 界 自 身 も 報 いられ ることになるだろう バートン マルキール(Burt Malkiel) 氏 リュウ サ ンダーズ(Lew Sanders) 氏 アート ケリー(Art Kelly) 氏 フィリップ ブレン(Phil Bullen) 氏 ディーン ルバロン(Dean LeBaron) 氏 マーク ラップマン(Mark Lapman) 氏 マーティン レボ ウィッツ(Marty Leibowitz) 氏 ピート コルホーン ( Pete Colhoun) 氏 ゲイリー ブリンソン(Gary Brinson) 氏 グ コク ソン(Ng Kok Song) 氏 パーカー ホール(Parker Hall) 氏 には 有 益 な 示 唆 をいただいた ここに 感 謝 の 意 を 表 する 森 由 紀 CFA 注 1 ヨットに 親 しんでいた 少 年 時 代 強 い 風 が 吹 く 日 にわざと 出 航 し 風 を 受 けてボートを 大 きく 傾 かせ 海 に 慣 れていない 従 兄 弟 を 怖 がらせたものである ボートが 今 にも 転 覆 しそうに 見 えても 実 際 にはキールが 復 元 梃 子 の 働 きをするためそれ 以 上 傾 くこと はないと 知 っていた 2 例 えば フィナンシャル エンジンズ 社 (Financial Engines)およ びマーケットライダーズ 社 (MarketRiders) 3. 運 用 機 関 の 運 用 実 績 を 評 価 しようとする 際 に 専 門 家 でさえも 運 と 技 能 を 区 別 することに 苦 労 する 4 グリニッジ アソシエイツ 社 (Greenwich Associates)の 年 次 調 査 によると 40 年 前 の 米 国 年 金 運 用 受 託 機 関 上 位 20 社 のうち 現 在 も20 位 内 にあるのは1 社 のみである 英 国 では 30 年 前 の 運 用 受 託 機 関 上 位 20 社 のうち 現 在 も20 位 内 にあるのは2 社 のみである 5. 出 所 : リッパー アソシエイツ 社 (Lipper Associates) 6. 売 買 回 転 率 が 年 平 均 100% 以 上 の 機 関 投 資 家 のポートフォリオは 70~90 銘 柄 を 保 有 し 運 用 実 績 が 頻 繁 に ベンチマーク と 比 較 され ベンチマークを アンダーパフォーム することがほとん ど 許 されないことから ポートフォリオ マネジャーは 多 くの 技 能 に 優 れた 競 争 相 手 を 出 し 抜 くことは 言 うまでもなく 市 場 に 追 随 することに 苦 労 している 7. 機 関 投 資 家 向 けファンドの 運 用 会 社 は 顧 客 および 見 込 み 顧 客 に 報 酬 控 除 後 ではなく 報 酬 控 除 前 のパフォーマンスを 示 してご まかそうとしていることがあまりにも 多 い CFA 協 会 は 過 去 何 年 にもわたり この 問 題 を 解 決 するための 改 革 を 提 唱 してきた 8. J.C. Bogle, Don t Count on It! (Hoboken, NJ: John Wiley & Sons, 2011) 74 頁 9. カルフォルニア 大 学 ロサンゼルス 校 の 教 授 テリー オディーン (Terry Odean) 氏 の 調 査 データが 最 も 良 く 示 している 10. A. Goyal and S. Wahal, The Selection and Termination of Investment Management Firms by Plan Sponsors, Journal of Finance, vol 63, no.4 (2008 年 8 月 ): 1805~1847 頁 ( 当 然 のことながら 採 用 された 運 用 会 社 は 過 去 のパフォーマンスが 極 めて 良 かった しかし パ フォーマンス の 評 価 や より 良 い 運 用 機 関 を 探 すことに 運 用 委 員 会 の 注 意 を 集 中 させるコンサルタントが 本 当 は 顧 客 の 長 期 的 なリスク 調 整 後 リターンと 顧 客 に 報 酬 を 払 い 続 けるよう 納 得 さ せることのどちらにより 関 心 があるのか 疑 問 を 感 じざるをえな い) 行 動 経 済 学 者 によると 80パーセントの 人 が ユーモアの センス 運 動 能 力 話 術 他 者 理 解 力 育 児 ダンス その 他 多 くの 点 において 自 らを 平 均 以 上 と 評 価 している 11. S.D. Stewart, J.J. Neumann, C.R. Knittel and J. Heisler, Absence of Value: An Analysis of Investment Allocation Decisions by Institutional Plan Sponsors, Financial Analysts Journal, vol.65, no.6 (2009 年 11/12 月 ): 34~51 頁 12. D.F. Swensen, Unconventional Success: A Fundamental Approach to 14

Personal Investment (New York: Free Press, 2005) 13. 驚 くことに インデックス ファンドの 一 部 にも 運 用 報 酬 が 高 いものがあり S&P 500 指 数 連 動 型 ファンドの 中 には75 bpsの 報 酬 を 課 すファンドもある 14. 債 券 型 投 資 信 託 の 平 均 経 費 率 は75 bpsである トリプルA 格 社 債 の 利 回 りを5パーセントと 仮 定 すると 投 資 家 は 期 待 リターンの 15パーセントを 運 用 報 酬 として 支 払 うことになる 期 待 インフレ 率 を2.5パーセントと 仮 定 すると 投 資 家 は 社 債 ポートフォリオ の 実 質 期 待 リターンの30パーセントを 運 用 報 酬 として 支 払 うこと になる 15. 事 業 の 売 り 手 側 も 大 金 を 手 に 入 れるようになった ただし 第 一 世 代 のサービス 業 所 有 権 にとって 10 億 米 ドルが 大 金 ではない と 思 う 人 を 除 く 16. 運 用 マネジャーが 投 資 助 言 から 遠 ざかった 理 由 の 一 つは 機 関 投 資 家 がより 多 くの 特 化 が 進 んだ 運 用 機 関 を 選 択 するようになり 外 部 監 査 人 が 財 務 諸 表 の 監 査 を 行 うのと 同 じように 独 立 した 運 用 コンサルタントに 運 用 機 関 のモニタリングを 任 せ 二 つの 機 能 を 分 離 したいと 考 えたことかもしれない 17. これは 運 用 コンサルタントが 多 用 されていることによって 実 証 されている 運 用 コンサルティングは 運 用 機 関 の 代 わりに 投 資 助 言 業 務 の 空 白 を 埋 めるべく 成 長 した 関 連 業 界 である 多 くの コンサルタントが 運 用 機 関 の 入 れ 替 えに 焦 点 を 当 てたミーティン グで 驚 くほど ありきたりな 投 資 助 言 を 行 い 実 際 は 顧 客 満 足 および 顧 客 維 持 を 優 先 させているスタッフで 占 められていること が 多 い 18. 政 策 アセットミックスへのリバランスはたいていリターンを 向 上 させる 15

( 全 訳 ) FAJ 2011 年 11/12 月 号 概 ね 効 率 的 な 市 場 におけるアクティブ 運 用 Active Management in Mostly Efficient Markets ロバート C ジョーンズ CFA ラス ワーマーズ Robert C. Jones, CFA, and Russ Wermers アクティブ 運 用 の 価 値 に 関 する 論 文 を 調 査 した 本 稿 は アクティブ マネジャーが 平 均 して(ベンチマークを) アウトパフォームしていないこと ただし ごく 少 数 のアクティブ マネジャーは 確 かに 付 加 価 値 を 創 出 してい ることを 示 している さらに 各 種 研 究 は 投 資 家 が 公 開 情 報 を 用 いて 優 れたアクティブ マネジャー(superior active managers: SAM)を 事 前 に 特 定 しうることを 示 唆 している SAM を 特 定 できる 投 資 家 は アクティブ 戦 略 に 意 味 ある 配 分 を 行 うことによって 全 体 のシャープレシオを 向 上 させることが 可 能 であろう リンカーンがダグラスに 勝 ち ケネディがニクソン に 勝 ち レーガンがモンデールに 勝 ったように 大 半 の 討 論 で 勝 者 は 明 白 である しかし アクティブ 運 用 か パッシブ 運 用 かを 巡 る 議 論 は 40 年 以 上 も 論 争 が 続 いている 投 資 家 はインデックスのリターンに 満 足 すべきか あるいは 既 に 証 券 価 格 に 織 り 込 まれてい... るかもしれない情 報 を 収 集 し 分 析 することによって インデックスをアウトパフォームすることを 追 求 すべ きか この 問 題 では 両 陣 営 ともに 自 らの 信 念 に 関 して 教 条 的 であり それぞれの 主 張 を 裏 付 ける 説 得 力 のあ る 議 論 を 展 開 している 我 々は 投 資 家 に 実 践 的 な 助 言 を 提 供 するため 理 論 と 実 証 分 析 の 両 面 から 学 術 研 究 の 調 査 を 行 った 我 々の 目 的 は 次 に 掲 げる 投 資 家 に とって 重 要 な 3 つの 疑 問 に 答 えることであった 1. アクティブ 運 用 は 付 加 価 値 を 創 出 できるのか ロバート C ジョーンズ CFA は アーウェン アドバイザーズ 社 (Arwen Advisors, Newark, New Jersey)の 会 長 ラス ワーマーズは メリーラン ド 大 学 ロバート H スミス スクール(Robert H. Smith School of Business, University of Maryland, College Park)の 金 融 准 教 授 2. 優 れたアクティブ マネジャーを 事 前 に(ex ante) 特 定 できるのか 3. 投 資 家 はポートフォリオにどれだけのアクティ ブ リスクを 加 えるべきか 注 意 事 項 この 分 野 での 学 術 研 究 は 豊 富 にあり 結 果 が 必 ずし も 一 貫 していない 場 合 もある 結 論 はしばしば 対 象 期 間 使 用 した 方 法 検 討 するファンドのユニバースお よびタイプ また 執 筆 者 のバイアスに 依 存 する 我 々 はこれら 様 々な 結 果 を 取 捨 選 択 し 相 対 的 にデータ 量 が 豊 富 でしっかりした 分 析 を 行 った 研 究 をより 重 視 す ることで 実 践 的 な 助 言 を 抽 出 するよう 試 みたが 我 々 自 身 のバイアスが 結 果 の 解 釈 に 影 響 を 与 え また は 将 来 がこれらの 研 究 で 対 象 とした 期 間 とは 著 しく 異 なるものとなる 可 能 性 は 常 に 存 在 する さらに データの 入 手 可 能 性 の 理 由 から ほとんど の 調 査 研 究 が 米 国 国 内 の 投 資 信 託 を 分 析 している 他 の 資 産 クラス( 債 券 米 国 以 外 の 株 式 不 動 産 コモ ディティなど)や 他 のアクティブ 運 用 商 品 ( 単 独 運 用 口 座 ヘッジファンド 上 場 投 資 信 託 (ETF))に 関 する 調 査 は 極 めて 限 定 的 か 存 在 しないことさえある 入 手 可 能 なデータでも 生 存 者 バイアス(パフォーマ 16

ンスの 悪 化 により 閉 鎖 されたファンドや 運 用 プロダク トは 除 外 されること)や 自 己 選 択 バイアス(データの 提 供 を 選 択 したマネジャーのみが 含 まれること)を 含 む 可 能 性 があり またリターンの 頻 度 が 限 定 される ( 月 次 または 日 次 ではなく 年 次 または 四 半 期 毎 )こと もある さらに アクティブに 運 用 される ETF のサ ンプルについては 統 計 的 に 信 頼 しうる 分 析 を 行 うに は 規 模 が 小 さ 過 ぎ 設 定 されて 間 もないことに 注 意 を 要 する それにもかかわらず この 概 念 は 業 界 で 多 く の 関 心 を 集 めつつあり 将 来 の 学 術 調 査 で 焦 点 が 当 て られることになろう また アクティブ 運 用 の 投 資 信 託 に 関 する 調 査 結 果 の 多 くは アクティブ 運 用 の ETF にも 当 てはまるものと 推 測 する なぜなら 両 者 とも 同 じマネジャーが 同 じ 戦 略 で 運 用 することが 多 いから である 我 々の 結 論 がこれら 他 の 資 産 クラスや 運 用 商 品 にも 当 てはまる 可 能 性 があるのか または 当 てはまらない のかを 指 摘 しようと 試 みた しかし 一 般 的 に 機 関 投 資 家 向 けファンド( 単 独 運 用 口 座 合 同 運 用 信 託 ファ ンドなど)は リテール ファンド( 個 人 投 資 家 向 け 投 資 信 託 など)をアウトパフォームすると 予 想 すべき であろう その 理 由 として 機 関 投 資 家 向 けファンド の 方 が (1) 通 常 は 規 模 の 経 済 により 運 用 報 酬 が 低 い こと (2) マネジャーと 投 資 家 の 利 害 をより 一 致 させ るような 成 功 報 酬 を 多 く 利 用 できること (3) 顧 客 口 座 の 会 計 処 理 顧 客 サービス 日 々のキャッシュフ ロー 管 理 にかかる 費 用 が 低 いこと が 挙 げられる 最 後 に 研 究 結 果 が 直 観 的 および 統 計 的 に 有 意 であ... るとしても それらは 平 均 的 に当 てはまるだけであっ て 必 ずしも 特 定 のマネジャーやファンドに 当 てはま るものではない 例 えば Chevalier and Ellison(1999) は 学 生 の 平 均 SAT スコアが 相 対 的 に 高 い 大 学 を 卒 業 したマネジャーが 他 のマネジャーをアウトパフォー ムしたことを 示 した しかし この 調 査 結 果 は そう したマネジャーのすべてがアウトパフォームすること あるいは 他 の 学 校 を 卒 業 したマネジャーがアウトパ フォームしないことを 意 味 するものではない このよ うに 我 々の 推 奨 はすべて 個 別 のファンドやマネ ジャーに 当 てはまるものではなく 一 般 的 なものであ る アクティブ 運 用 は 付 加 価 値 を 創 出 するか すべてのアクティブに 運 用 されるファンドを 総 合 す ると 市 場 に 一 致 する つまりアクティブ 運 用 をゼロサ ム ゲームと 仮 定 するならば アクティブ ファンド のリターンを 総 合 すると 市 場 リターンと 同 一 となるが 取 引 コストおよび 報 酬 がかかるため 報 酬 費 用 相 当 分 は 市 場 に 劣 後 することとなる 実 証 研 究 はこの 結 論 を 広 く 支 持 するようだ 1 Jensen の 著 名 な 研 究 (1968)に 続 く 数 多 くの 研 究 は アクティブに 運 用 される 投 資 信 託 は 平 均 して 報 酬 費 用 控 除 後 でアルファを 創 出 していない という 同 じ 結 論 に 達 している 図 1では 直 近 の 2 つの 研 究 (Barras, Scaillet, and Wermers 2010; Busse, Goyal, and Wahal 2010)による 結 果 をまとめている この 図 は 投 資 信 託 と 機 関 投 資 家 の 単 独 運 用 口 座 (institutional separate account: ISA)のいずれも 平 均 すると Carhart の 4 ファクター モデル(1997) を 用 いて 市 場 とスタイルのリスクを 調 整 した 後 に 報 酬 費 用 控 除 後 でプラスのアルファを 生 み 出 していな いことを 示 している 我 々の 調 査 では 税 引 き 後 の 結 果 を 採 り 上 げてはいないが 税 引 き 後 ではアクティブ ファンドがパッシブ ファンドをアウトパフォームす ることがさらに 難 しいとする 研 究 もある(Dickson and Shoven(1993)など) 実 際 に これらの 研 究 で 報 告 されたアンダーパフォーマンス 幅 の 平 均 は ア クティブ マネジャーに 支 払 う 平 均 報 酬 率 をやや 下 回 っているに 過 ぎず アクティブ マネジャーは 平 均 すると 報 酬 控 除 前 でプラスのアルファを 創 出 している が アクティブ 運 用 にかかるコストを 十 分 に 賄 えてい ないことを 示 唆 している さらに 国 内 株 式 ファンド 債 券 ファンド インターナショナル( 米 国 を 除 くグ ローバル) 株 式 ファンド バランス 型 ファンド そし 17

図 1.アクティブ 株 式 投 資 信 託 およびアクティブ 株 式 機 関 投 資 家 単 独 口 座 (ISA)の 4 ファクター アルファ 報 酬 費 用 控 除 後 年 率 換 算 4 ファクター アルファ(%) 全 ファンド 全 グロース アグレッシブ グロース 等 加 重 金 額 加 重 ファンド グロース インカム ネット ネット アクティブ 株 式 ミューチュアル ファンドのデータに 基 づく(1975 年 1 月 -2006 年 12 月 ) アクティブ 株 式 機 関 投 資 家 単 独 口 座 のデータに 基 づく(1991 年 -2007 年 ) 出 所 : 投 資 信 託 のデータは Barra, Scaillet, and Werners (2010) ISA のデータは Busse, Goyal, and Wahal (2010) て 恐 らくヘッジファンドやプライベート エクティに も この 結 論 は 当 てはまると 思 われる ( 最 後 の 二 つ のケースでは データが 直 ちに 入 手 可 能 ではないため 結 論 の 説 得 力 は 弱 い) 2 アクティブ 運 用 の 支 持 者 は 市 場 のボラティリティ が 高 まり 景 気 が 低 迷 している 時 期 に その 利 点 が 最 も 際 立 つとしばしば 主 張 する 世 界 金 融 危 機 (2007 年 -2009 年 )の 時 期 についての 関 連 する 研 究 はまだ ないが スタンダード アンド プアーズがある 程 度 の 比 較 を 行 っている 3 2010 年 12 月 までの 5 年 間 を 調 べた 結 果 は アクティブとパッシブの 成 績 表 が かなり 拮 抗 していることを 示 している 具 体 的 には 海 外 および 国 内 すべての 主 要 株 式 分 類 にわたり 市 場 インデックスが 大 多 数 のアクティブ マネジャーをア ウトパフォームしているが 資 産 加 重 平 均 したアク ティブ マネジャーのパフォーマンスは 中 型 株 イ ンターナショナル 株 式 エマージング 市 場 株 式 を 除 く 大 半 の 分 野 で ベンチマークと 同 等 かやや 上 回 ってい る 同 じく 5 年 間 の 結 果 を 債 券 ファンドで 見 ると アク ティブ マネジャーの 方 が 幾 分 悪 い エマージング 市 場 債 券 を 除 けば 50 パーセント 以 上 のアクティブ マネジャーがベンチマークに 勝 っていない 5 年 間 の 資 産 加 重 平 均 リターンは 三 つの 分 野 を 除 きアクティ ブ ファンドの 方 が 低 いものの 同 じ 投 資 ホライズン での 等 加 重 リターンは すべての 分 野 で 劣 後 している このように 世 界 金 融 危 機 を 含 む 直 近 の 5 年 間 は 以 前 の 研 究 が 対 象 としたかなり 長 期 の 時 期 よりも 明 らかにアクティブ 株 式 運 用 にやや 有 利 であった ただ し 顕 著 ではない 後 ほど 見 るように アクティブ ファンドは 財 務 内 容 の 悪 化 や 景 気 後 退 の 時 期 にアウト パフォームする 可 能 性 が 高 まるとする 研 究 者 もいる しかし 緊 張 時 と 平 常 時 をともに 含 む 長 期 の 結 果 は 平 均 的 な アクティブ マネジャーをほと んど 支 持 していない 18

アクティブ 運 用 と 概 ね 効 率 的 な 市 場 市 場 価 格 は 一 般 に 入 手 可 能 なすべての 情 報 を 完 全 か つ 正 確 に 織 り 込 むとするセミストロング 型 の 効 率 的 市 場 仮 説 は 合 理 的 な 投 資 家 (インサイダー 情 報 を 持 た ない)であれば 常 にアクティブ 運 用 ではなくパッシ ブ 運 用 を 選 択 すると 予 測 するが そうなっていないの は 明 らかである なぜそうならないのか 投 資 家 は 非 合 理 なのか それならば 市 場 はどのように 効 率 的 と なりうるのか Grossman and Stiglitz(1980)は 彼 らの 著 名 な 論 文 のなかで 情 報 にコストがかかる 世 界 において 情 報 に 通 じたトレーダーは 超 過 リターン を 獲 得 するはずである さもなければ 価 格 の 効 率 性 (つまり 情 報 の 反 映 )を 高 めるために 情 報 を 集 めて 分 析 する 動 機 がないと 主 張 した 4 言 い 換 えれば 市 場 は 概 ね 効 率 的 だが 完 全 に 効 率 的 ではない 必 要 があ り さもなければ 投 資 家 は 価 格 が 適 正 であるかど うかを 評 価 する 努 力 をしないであろう そうでなけれ ば 価 格 はもはや 入 手 可 能 なすべての 関 連 する 情 報 を 適 切 に 反 映 しなくなり 市 場 は 資 本 を 効 率 的 に 配 分 す る 能 力 を 失 うであろう それゆえ アクティブ マネ ジャー 間 の 競 争 はゼロサム ゲームかもしれないが アクティブ 運 用 全 体 では 明 確 に 違 う 市 場 の 効 率 性 を 高 めることによって アクティブ 運 用 は 資 本 の 配 分 ひいては 経 済 の 効 率 性 と 成 長 を 向 上 させ 結 果 として 社 会 全 体 の 富 の 総 和 を 増 加 させる のである した がって 情 報 に 通 じたトレーダーが 獲 得 する 超 過 リ ターンを 情 報 を 入 手 加 工 し それによって 市 場 の 効 率 性 を 高 めるために 支 払 われる 一 種 の 経 済 的 地 代 と みなすことができる Grossman-Stiglitz の 均 衡 論 (1980)では 限 界 的 な(スキルが 最 も 劣 る)アクティブ マネジャーは 資 産 をアクティブに 運 用 するコスト(つまり 人 的 資 本 コストを 含 め 情 報 の 収 集 と 分 析 にかかるコスト) に 等 しい 超 過 リターンを 獲 得 する こうして 均 衡 状 態 では 超 過 リターンの 形 でなんとか 自 分 たちの 報 酬 を 確 保 する 限 界 的 だがアクティブな( 恐 らく 多 数 の) マネジャーが 存 在 すると 想 定 すべきであろう しかし 実 世 界 では アクティブ ファンドを 平 均 すると 報 酬 控 除 後 でインデックスをアンダーパフォームしている なぜそうなるのであろうか ファンドは 報 酬 を 正 当 化 するために 流 動 性 保 管 経 理 規 模 選 択 肢 分 散 投 資 といった 他 の 便 益 をも たらさなければならない 実 際 には ほぼ....... 100 パー... セントのパッシブ ファンドが 報 酬 控 除 後 で 関 連 する... インデックスをアンダーパフォームしている 平 均 報 酬 率 は 米 国 大 型 株 に 投 資 するパッシブ 運 用 投 資 信 託 の 年 率 15 bps 未 満 から パッシブ 運 用 エマージング 株 式 ファンドの 年 率 75 bps 以 上 までの 間 にある 5 し たがって 意 味 のある 比 較 は パッシブ ファンドと の 比 較 であって インデックス 自 体 ではない その 基 準 で 言 えば アクティブ ファンドの 平 均 リターンは 報 酬 控 除 後 でパッシブ ファンドの 平 均 とほぼ 同 じで ある 6 我 々を 取 り 巻 く 世 界 すなわち 平 均 して 報 酬 控 除 後 で(パッシブ マネジャーと 比 較 して) 超 過 リター ンをもたらさないアクティブ マネジャーで 溢 れてい る 世 界 は 価 格 がコストのかかる 情 報 を 十 分 に 反 映 し ない 概 ね 効 率 的 な 市 場 を 想 定 する Grossman- Stiglitz モデル(1980)に 完 全 に 当 てはまる 実 世 界 では アクティブ マネジャーの 間 でスキルが 異 なる ため 情 報 を 収 集 分 析 する 優 れた 能 力 に 比 例 して 意 味 のある 超 過 リターンを 生 み 出 すような 情 報 に 通 じ たトレーダー(または 優 れたアクティブ マネジャー) は 見 つかるものと 予 想 される( 実 際 に 確 認 される) もちろん 他 者 のために 資 産 を 運 用 する 限 りにおいて そのサービスに 対 して 要 求 する 報 酬 も 高 くなると 思 わ れる しかし 市 場 はランダムに 動 くため 投 資 家 が スキルの 優 れたアクティブ マネジャーと 劣 るアク ティブ マネジャーをあらかじめ(ex ante) 完 全 に 区 別 することは ほぼ 不 可 能 である したがって 優 れたアクティブ マネジャーが 相 対 的 に 高 い 報 酬 の 形 ですべての 付 加 価 値 を 獲 得 することはできない 7 そ こで 次 の 疑 問 は 報 酬 を 上 回 る 付 加 価 値 を 創 出 する 優 19

れたアクティブ マネジャーを 事 前 に 特 定 できるか ということである これについて いくつかの 学 術 研 究 は 肯 定 的 な 結 果 を 示 している 優 れたアクティブ マネジャーの 特 定 ゼロサム ゲームでは プラスのアルファを 創 出 す る 投 資 家 ( 優 れたアクティブ マネジャー superior active manager: SAM)がいれば 他 の 投 資 家 ( 劣 る アクティブ マネジャー inferior active manager: IAM)はマイナスのアルファを 創 出 するはずであ る SAM は (1) 優 れた 情 報 および 分 析 能 力 を 持 つ ことで 結 果 をより 正 確 に 予 測 できること (2) IAM が 予 想 に 関 係 ない 理 由 ( 解 約 に 応 じるなど)で 早 急 に 売 買 する 必 要 がある 時 に 流 動 性 / 即 時 性 を 提 供 するこ と これら 二 つのうちいずれかの 方 法 で IAM より 優 位 に 立 つことができる もちろん 投 資 家 の 予 測 精 度 は 銘 柄 によって 異 なり 時 間 とともに 変 化 することが ある さらに 今 日 は 流 動 性 を 供 給 しても 明 日 は 流 動 性 を 必 要 とすることもある また 幸 運 やランダム 性 が 重 要 な 役 割 を 果 たすこともある したがって ア クティブ 運 用 は SAM と IAM の 競 争 なのであって そこでは 誰 がどちらかを 正 確 に 判 断 することは 難 しい ことがある( 象 のホートンなら 聞 くことができるかも しれないが) 8 Barras, Scaillet, and Wermers(2010)は 報 酬 控 除 後 で 市 場 をアウトパフォームできるスキルを 持 つ マネジャーは 確 かにいるが こうしたスキルのあるマ ネジャーを 単 に 運 がいいためパフォーマンスが 高 いマ ネジャーと 区 別 することは 実 際 には 不 可 能 であると 主 張 した 投 資 家 が 単 に 過 去 のリターンのみを 捉 える のであれば この 議 論 は 正 当 かもしれないが 研 究 者 は 投 資 家 が 他 のデータや 方 法 を 用 いることによって SAM を 特 定 する 多 くの 方 法 を 見 つけてきた 我 々は 投 資 家 が SAM を 特 定 し 評 価 するにあたり 次 の 四 つの 方 法 すべてを 検 討 することを 推 奨 する すなわち (1) 過 去 のパフォーマンス( 適 切 に 調 整 後 ) (2) マ クロ 経 済 予 測 (3) ファンド/マネジャーの 特 性 (4) ファンド 保 有 銘 柄 の 分 析 である 過 去 のパフォーマンス:SAM が 優 位 な 情 報 または 分 析 能 力 を 有 するならば この 利 点 は 長 期 にわたり 持 続 するものと 推 定 される であれば 一 期 間 でアウト パフォームする SAM は 次 の 期 間 も 同 様 にアウトパ フォームする 可 能 性 が 高 いであろう この 可 能 性 は 様 々なエージェンシー 効 果 や 競 争 圧 力 によって 相 殺 さ れる ファンドのパフォーマンスが 振 るわないマネ ジャーは 戦 略 の 変 更 や 運 用 者 の 交 代 を 図 り その 結 果 として 将 来 のパフォーマンスが 改 善 される 可 能 性 が 高 まる 9 パフォーマンス 上 位 のファンドを 運 用 するマ ネジャーは おそらく 証 券 分 析 にかかるテクノロジー の 変 化 意 欲 の 減 退 過 信 を 原 因 として 競 争 力 を 失 う 可 能 性 があり また 自 己 の 評 判 や 報 酬 を 守 るために ファンドのリスクを 引 き 下 げるかもしれない それと 等 しく 問 題 となるのは パフォーマンス 上 位 のマネ ジャーが 報 酬 を 引 き 上 げるか 多 くの 資 産 を 集 めすぎ て 過 去 と 同 じような 報 酬 控 除 後 の 超 過 リターンを 継 続 して 達 成 できなくなる(すなわち ある 時 点 でアク ティブ 運 用 にとって 規 模 の 不 利 益 となる) 可 能 性 であ る このように パフォーマンスが 持 続 しないことは 必 ずしもマネジャーにスキルがないことを 意 味 するも のではない 実 証 結 果 はまちまちであるが 投 資 信 託 のリターン は 適 度 に 持 続 す る よ う で あ る た だ し そ れ は Carhart の 4 ファクター モデル(1997)や Fama- French の 3 ファクター モデル(1993)を 用 いて スタイル バイアスを 考 慮 して 超 過 リターンを 調 整 し た 場 合 のみである 多 くの 関 連 する 研 究 のなかで 典 型 的 なものとして Harlow and Brown(2006)は ス タイル 調 整 後 リターンを 用 いると アウトパフォーム するファンドを 見 出 す 確 率 が 45 パーセントから 60 パーセントに 向 上 できることを 示 した 同 論 文 から 引 用 した 図 2 は 過 去 のアルファが 上 位 25%のファン ドが 将 来 に 報 酬 控 除 後 で 年 率 約 150 bps のアルファを 創 出 し て い る こ と を 示 し て い る Pástor and 20

Stambaugh (2002) は セクター バイアスを 調 整 す れば 結 果 をさらに 改 善 できることを 示 した 図 2 は ファンドのアルファに 見 られる 非 正 規 性 ( 歪 度 やファットテールなど)を 調 整 すると リター ンの 持 続 性 がより 高 いファンドを 特 定 する 確 率 が 高 ま ることを 示 した Kosowski, Timmermann, Wermers, and White(2006)の 研 究 結 果 も 示 している 直 観 的 に 一 部 の SAM はリターンがプラス 方 向 に 傾 いてお り 投 資 家 にとって 価 値 があると 考 えられる そのた め ランダム スキューネス (ファンドのリター ンに 観 測 される 統 計 的 に 有 意 ではない 歪 度 と 定 義 する) を 調 整 すれば 幸 運 だったマネジャーとアクティブ リターンにプラスのバイアス(または 歪 み)のあるマ ネジャーとを 識 別 することに 役 立 つであろう 調 査 結 果 は 持 続 性 が 短 期 間 ( 月 次 または 四 半 期 毎 ) で 最 も 強 く 見 られることを 示 しているが 3 年 から 4 年 といった 長 期 間 での 持 続 性 を 報 告 する 研 究 もある 10 ただし これらの 研 究 はいずれも ファンドのリバラ ンスによる 潜 在 的 コストを 考 慮 していない このコス トを 考 慮 すれば 過 去 のリターンあるいはリスク 調 整 後 パフォーマンスのみに 基 づいてアクティブ マネ ジャーを 選 ぶことがもたらしうる 付 加 価 値 は 軽 減 さ れるであろう ヘッジファンド マネジャーの 間 にスキルの 持 続 性 があることを 実 証 した 研 究 もある Kosowski, Naik, and Teo ( 2007 )は Kosowski, Timmermann, Wermers, and White(2006)のブートストラップ 法 をヘッジファンドにも 適 用 した ヘッジファンドの 非 正 規 的 なリターンを 考 慮 することは 特 に 重 要 である なぜなら 多 くのヘッジファンドが 行 う 動 的 戦 略 や 銘 図 2. 過 去 のパフォーマンスの 持 続 性 過 去 のアルファによる 十 分 位 将 来 の 年 率 アルファ(%) Kosowski Timmermann Wermers および White の 4 ファクター アルファ モデル Harlow および Brown の 3 ファクター アルファ モデル 注 :Harlow and Brown(2006)は 3 ファクター アルファ モデルを 用 いて 1973 年 -2003 年 にわたり 四 半 期 毎 にリバランスした Kosowski, Timmermann, Wermers, and White (2006) は 4 ファクター モデルを 3 年 間 のランキングで 使 用 し 1978 年 -2002 年 にわたり 年 次 でリバランスした 出 所 :Harlow and Brown(2006); Kosowski, Timmermann, Wermers, and White (2006) 21

柄 選 択 ( 各 種 デリバティブを 含 む)が ポートフォリ オのリターンを 明 らかに 非 正 規 的 なものとしているか らだ Kosowski, Naik, and Teo(2007)によれば 上 位 25%のヘッジファンド( 事 後 ベイズ 確 率 で 調 整 した 過 去 2 年 間 のアルファによるランク 付 け)は 翌 年 のパフォーマンスが 下 位 25%のファンドを 5.8% 上 回 った 通 常 の 単 純 な 最 小 二 乗 法 によるランキングで は 上 位 25%と 下 位 25%のマネジャー 間 に 有 意 な 差 は 見 られず ヘッジファンドのリターン 分 布 の 非 正 規 性 を 調 整 する 重 要 性 が 示 された Fung, Hsieh, Naik, and Ramadorai(2008)は Fung-Hsieh の 7 ファクター モデル(2004)を 用 い て 1995 年 から 2004 年 までの 期 間 におけるファン ド オブ ヘッジファンズのパフォーマンス リスク 資 本 形 成 を 検 証 した ファンド オブ ファンズは... 平 均 すると 1998 年 10 月 から 2000 年 3 月 までの 期 間 においてのみアルファを 創 出 したが 一 定 群 のファン ド オブ ファンズは より 長 期 にわたり 持 続 するア ルファを 創 出 した こうしたアルファを 生 み 出 してい るファンドは より 安 定 した 資 金 流 入 を 経 験 しており 解 約 の 可 能 性 が 相 対 的 に 低 い これらの 資 金 流 入 は 将 来 にアルファを 創 出 する 能 力 を 軽 減 するが それを 消 し 去 ってしまうわけではない 数 は 遥 かに 少 ないが 他 の 資 産 クラスや 運 用 手 段 に 関 する 研 究 も ヘッジファンドおよび 国 内 株 式 投 資 信 託 に 関 する 研 究 と 同 様 の 結 果 を 示 している Kaplan and Schoar ( 2005 ) は プ ラ イ ベ ー ト エ ク イ ティ ファンドのパフォーマンスに 持 続 性 があること を 示 した ただし 我 々が 調 査 した 他 の 投 資 分 野 とは 異 なり ゼネラル パートナーは 投 資 先 の 市 場 価 値 について 平 準 化 した 推 定 を 行 うことによって 見 か け 上 のパフォーマンスを 良 くする 時 がある 11 また これらのゼネラル パートナーがより 良 い 投 資 先 を 選 んでいるのか 投 資 先 企 業 を 監 督 する 優 れたスキルを 持 っているのか(あるいは 両 者 か)は 不 明 である Bers and Madura(2000)は アクティブに 運 用 されるクローズド エンド 型 ファンド(CEF)のリ ターンに 持 続 性 が 見 られることを 示 した この 結 果 が 注 目 される 理 由 は CEF が(ISA と 同 様 に) 定 期 的 な 資 金 の 流 出 入 を 気 にする 必 要 がないからである 資 金 の 流 出 入 は スキルの 識 別 をより 難 しくすることが ある(なぜなら オープン エンド 型 ファンドのマネ ジャーは 流 動 性 と 情 報 の 両 方 の 目 的 で 売 買 しなけれ ばならないからだ) Huij and Derwall(2008)は 債 券 ファンド なかでもハイイールド 債 ファンドにお いて 複 数 のベンチマークについて 調 整 した 後 にリ ターンの 持 続 性 があることを 実 証 した Busse, Goyal, and Wahal(2010)は ISA を 取 り 上 げた 数 少 ない 研 究 の 一 つである( 図 1 を 参 照 ) そ こでは 国 内 の 株 式 ファンドと 債 券 ファンドにおいて 1 年 間 までは 弱 い 持 続 性 があるが インターナショナ ル 株 式 ファンドの 持 続 性 は 低 いことを 示 した しかし 彼 らはシステマティック リスク( 国 通 貨 スタイ ルなど)を 調 整 しておらず それがインターナショナ ル ファンドにおいて リターンの 持 続 性 が 弱 い 研 究 結 果 を 説 明 するかもしれない Goyal and Wahal(2008)は 持 続 性 自 体 を 検 証 す るかわりに 機 関 投 資 家 スポンサーによる 採 用 および 解 約 の 判 断 を 調 べ 機 関 投 資 家 が 採 用 するマネジャー が 解 約 するマネジャーをアウトパフォームしていない ことを 示 した 12 マネジャーの 採 用 と 解 約 にはサー チ コストと 移 管 コストがかかるため 13 意 味 すると ころは 機 関 投 資 家 があまり 積 極 的 にマネジャーを 変 更 すべきではないということである しかし 機 関 投 資 家 はパフォーマンス 以 外 の 理 由 からマネジャーをし ばしば 変 更 するため この 調 査 結 果 は 投 資 家 がマネ ジャーを 変 更 する 時 は 慎 重 であるべきことを 意 味 して いるとしても リターンの 持 続 性 を 否 定 する 直 接 的 な 証 拠 とはならない つまり 投 資 家 がそうした 意 思 決 定 をする 際 には 過 去 のリターンを 適 切 に 調 整 し 移 管 コストなど 他 の 要 因 を 検 討 すべきである( 追 加 の 要 因 については 本 稿 の 後 段 で 論 じる) 22

過 去 のパフォーマンスを 評 価 する 際 には マネ ジャーの 寄 与 度 とファンド 運 用 会 社 の 寄 与 度 を 区 別 す ることは 困 難 となりうる 通 常 SAM が 良 好 なパ フォーマンスを 達 成 するにはチームの 支 援 を 必 要 とす るからだ Baks(2003)は 両 者 の 区 別 を 試 みて 投 資 プロセスにもよるが リターンの 持 続 性 の 10 パー セントから 50 パーセントをマネジャーの 寄 与 とし 残 りをファンド 運 用 会 社 や 他 の 要 因 によるものとした したがって 直 近 にファンド マネジャーが 変 更 され た 場 合 には 過 去 のパフォーマンスを 割 り 引 くことが 望 ましいかもしれない チーム アプローチや 定 量 プロ セスではなく 花 形 マネジャーに 依 存 するファンド では 特 にそうである 同 様 に 投 資 家 は 花 形 マネ ジャーを 転 職 先 まで 追 いかけることには 慎 重 であるべ きだ 表 1 に 持 続 性 に 関 するいくつかの 研 究 をまとめて ある これらを 含 む 研 究 結 果 に 基 づく 我 々の 結 論 とし て 投 資 家 は 過 去 のパフォーマンスを 分 析 することに よって SAM を 特 定 する 可 能 性 はあるが 非 正 規 的 なリターン 分 布 ( 歪 みやファット テールなど)およ び 各 種 スタイルやセクターのバイアスを 評 価 するにあ たっては 洗 練 されたパフォーマンス 要 因 分 析 システ ムを 用 いて 慎 重 に 考 慮 すべきである 洗 練 度 の 低 い 手 法 を 用 いるならば 過 去 のパフォーマンスに 基 づき 真 の SAM を 見 出 す 能 力 が 大 幅 に 減 じることになる さ らに 投 資 家 はマネジャー 変 更 によって 見 込 まれるパ フォーマンスの 改 善 が 移 管 コストに 見 合 うものかど うかを 慎 重 に 評 価 すべきである マクロ 経 済 予 測 :マクロ 経 済 予 測 に 関 する 研 究 では アクティブ マネジャーが 一 般 的 に 特 定 の 環 境 下 でパ フォーマンスが 相 対 的 に 高 いのか また 所 与 の 環 境 下 でパフォーマンスが 最 も 良 好 となるマネジャーを 事 前 に 予 測 することが 可 能 かどうかを 判 断 しようとする 言 い 換 えれば 状 況 次 第 で IAM が SAM に(または 逆 に)なることがあるかどうかである 結 果 は 極 めて 期 待 できそうではあるが この 戦 略 は 頻 繁 にマネ ジャー 変 更 を 行 うため マネジャー 移 管 コストを 控 除 した 後 の 利 点 は それほど 高 くないと 思 われる ファンドのアルファが 時 間 の 経 過 とともにシステマ ティックに 変 化 する 範 囲 では この 変 化 の 原 因 は (1) 内 在 するマクロ 経 済 への 感 応 度 ( 継 続 的 な 循 環 銘 柄 の オーバーウェイトなど) (2) 時 間 の 経 過 に 伴 うスキ 表 1. 過 去 のパフォーマンスの 持 続 性 論 文 資 産 クラス( 期 間 ) 調 査 結 果 Bers and Madura (2009) アクティブ クローズドエンド ファンド(1976-1996) リターン Harlow and Brown (2006) 株 式 投 資 信 託 (1979-2003) スタイル 調 整 後 リターン Huij and Derwall (2008) 債 券 ファンド(1990-2003) ベンチマーク 調 整 後 リターン Bollen and Busse (2005) 株 式 投 資 信 託 (1985-1995) 次 四 半 期 における 調 整 前 リターン Baks (2003) 株 式 投 資 信 託 (1992-1999) ファンド マネジャー 固 有 リターン Kosowsk, Timmermann, Wermers, and White (2006) 株 式 投 資 信 託 (1975-2002) ブートストラップ アルファ Busse, Goyal, and Wahal (2010) 機 関 投 資 家 単 独 運 用 (1991-2008) 国 内 株 式 の 弱 いリターン Fung, Hsieh, Naik, and Ramadorai (2008) ヘッジ ファンズ オブ ファン ズ(1995-2004) アルファ Goyal and Wahal (2008) 機 関 投 資 家 単 独 運 用 (1994-2003) 解 約 なし Jagannathan, Malakhov, and Novikov (2010) ヘッジファンド(1996-2005) 優 良 ファンドのみ Kosowski, Naik, and Teo (2007) ヘッジファンド(1994-2003) ベイジアン 手 法 で 計 測 したアルファ Kaplan and Schoar (2005) プライベート エクイティ ファ ンド(1980-2001) 割 引 キャッシュ 流 入 / 流 出 23