今 月 のトピックス No.223-1(215 年 1 月 21 日 ) 1.イタリアのガス 業 界 の 概 要 イタリアのガスインフラ 整 備 イタリアのエネルギー 構 成 :イタリアは ガス 火 力 の 利 用 が 盛 んであり 一 次 エネルギー 電 源 構 成 共 にガスの 比 率 が 高 い 国 である( 図 表 1-1) 日 本 と 同 様 にエネルギー 自 給 率 が 低 いことから 原 子 力 の 導 入 に 積 極 的 であったが チェルノブイリ 原 子 力 発 電 所 事 故 や 日 本 の 福 島 第 一 原 子 力 発 電 所 事 故 を 受 け その 検 討 は 白 紙 に 戻 っている そのため 電 源 は 火 力 の 中 でも CO 2 問 題 等 の 懸 念 が 小 さく 地 元 住 民 の 了 解 が 得 られやすいガス 火 力 に 集 中 している イタリアのガス 事 業 :イタリアのガス 事 業 は 政 府 6% 出 資 の 上 流 開 発 事 業 者 Agip 社 (1926 年 設 立 ) によるポー 川 流 域 の 国 産 資 源 ( 石 油 ガス) 開 発 に 始 まる 1953 年 には Agip 社 とその 他 ガス 関 連 会 社 を 統 合 する 形 で 国 営 石 油 ガス 事 業 者 Eni 社 が 誕 生 同 社 がガス 開 発 からガスの 輸 送 販 売 までを 独 占 的 に 行 い イタリアのガス 事 業 を 発 展 させてきた その 後 は 1998 年 ~29 年 にかけて 段 階 的 に 示 されたEUガス 指 令 ( )に 沿 う 形 で イタリアでもシステム 改 革 が 進 められ 現 在 では 全 面 自 由 化 ガスインフラ 事 業 の 所 有 権 分 離 が 達 成 されている ( )EUにより 示 された 欧 州 域 内 のガス 市 場 自 由 化 公 平 性 透 明 性 確 保 のためのガスインフラ 部 門 の 分 離 に 関 する 指 令 で 1998 年 第 一 次 :ガス 市 場 の 自 由 化 23 年 第 二 次 :ガスインフラ 事 業 の 法 的 分 離 ( 垂 直 統 合 型 のガス 事 業 者 のインフラ 部 門 を 別 会 社 化 法 人 格 の 分 離 ) 29 年 第 三 次 :ガスインフラ 事 業 のうちパイプライン 事 業 の 更 なる 独 立 性 の 強 化 が 要 請 されてい る イタリアのガス 調 達 :197 年 代 は 国 産 ガスで 国 内 需 要 を 賄 うことが 出 来 たが その 後 の 国 産 ガスの 減 少 や 発 電 を 中 心 とする 国 内 需 要 の 増 加 を 受 け( 図 表 1-2) 現 在 では 国 内 消 費 量 のほぼ 全 量 に 相 当 す る 量 を 海 外 からの 輸 入 で 賄 っている なお 輸 入 先 としては ロシアとアルジェリアに 大 きく 依 存 を している( 図 表 1-3) 図 表 1-1 日 本 とイタリアの 一 次 エネルギー 構 成 と 電 源 構 成 (21 年 ) 一 次 エネルギー 構 成 電 源 構 成 図 表 1-2 ( 億 m 3 ) 9 6 石 炭 石 油 ガス 原 子 力 水 力 他 4.1% 15.% 17.2% 4.6% 13.4% 4.% 38.3% 23.% 8.3% 日 本 イタリア ( 備 考 )IEA Energy Balances of OECD Countries 212により 作 成 イタリアの 用 途 別 ガス 需 要 推 移 家 庭 用 商 業 用 工 業 用 発 電 用 その 他 石 炭 石 油 天 然 ガス 原 子 力 水 力 他 アルジェリア ロシア リビア カタール オランダ ノルウェー その 他 9% 8.1% 29.8% 6.1% 26.1% 日 本 イタリア ( 備 考 )IEA Electricity Information 212により 作 成 図 表 1-3 イタリアのガス 輸 入 先 内 訳 (212 年 ) 7% 7% 8% 28% 29.7% 49% 6% 16% 32% 3 9% 28% 1973 198 199 2 29 21 211( 年 ) ( 備 考 )IEA Natural Gas Information 213により 作 成 ( 備 考 )IEA Natural Gas Information 213により 作 成
今 月 のトピックス No.223-2(215 年 1 月 21 日 ) 2.イタリアのガスインフラ 概 要 イタリアのガスインフラ:イタリアには 総 延 長 33,kmのガスパイプラインと3ヵ 所 のLNG 基 地 15.9Bcmの 貯 蔵 容 量 を 有 する 地 下 貯 蔵 設 備 がある ガスパイプラインは ロシアからの 輸 入 エント リーポイントとアルジェリアからの 輸 入 エントリーポイント 等 を 南 北 につなぐ 約 8,kmの 基 幹 パイ プラインと25,kmの 地 域 配 ガスパイプラインで 構 成 されており 輸 入 ガスを 国 内 に 流 通 させるネッ トワークが 整 っている( 図 表 2-1) なお イタリアの 輸 入 ガスはほとんどがパイプラインによる 気 体 ガスの 輸 入 であり 液 体 ガスであるLNGによる 輸 入 は 総 ガス 輸 入 量 の 約 1% 程 度 に 留 まっている(カ タール 等 ) イタリアの 主 要 なガスインフラ 事 業 者 :イタリアのガスインフラの 多 くは Eni 社 およびEni 社 に 統 合 さ れた 国 営 ガス 関 連 事 業 者 ( 以 下 Eni 社 )により 政 府 主 導 で 整 備 されてきた 特 にガスパイプラインに ついては ほぼ 全 域 をEni 社 が 整 備 してきた 歴 史 がある 現 在 Eni 社 が 保 有 していたガスインフラ 事 業 は 先 述 の 所 有 権 分 離 の 過 程 でSnam 社 に 分 離 され 株 式 の 一 部 は212 年 1 月 にイタリアの 政 府 系 金 融 機 関 (CDP 社 )に 売 却 されている( 図 表 2-2) Snam 社 は 基 幹 パイプライン 配 ガスパイプライン LNG 基 地 地 下 貯 蔵 等 の 保 有 運 営 を 行 っており 基 幹 パイプライン 事 業 では 9 割 以 上 のシェアを 有 する 独 占 事 業 者 である( 図 表 2-3) 図 表 2-1 イタリアのガスパイプライン 網 図 表 2-3 Snam 社 の 事 業 範 囲 ロシアからの ガス 輸 入 エントリーポイント 国 産 ガス 生 産 者 ガス 輸 入 事 業 者 基 幹 パイプライン 事 業 者 (94%) LNG 基 地 事 業 者 (21%) 地 下 貯 蔵 事 業 者 (5%) アルジェリアからの ガス 輸 入 エントリーポイント ( 備 考 ) 各 種 公 表 資 料 により 作 成 図 表 2-2 Snam 社 株 主 構 成 (214 年 5 月 時 点 ) イタリア 政 府 系 金 融 機 関 (CDP 社 ) Eni 社 個 人 投 資 家 機 関 投 資 家 配 ガス 事 業 者 (33%) 販 売 事 業 者 Snam 社 の 事 業 範 囲 ( 括 弧 内 はSnam 社 の 事 業 シェア) 1% 3% 最 終 需 要 家 51% 9% ( 備 考 )ヒアリング 等 により 日 本 政 策 投 資 銀 行 作 成 ( 備 考 )Snam 社 公 表 データにより 作 成
今 月 のトピックス No.223-3(215 年 1 月 21 日 ) 3.イタリアのガスインフラにかかる 規 制 料 金 制 度 と 整 備 資 金 ガスインフラ 事 業 の 規 制 料 金 制 度 :イタリアのガスインフラ 事 業 は 規 制 料 金 制 度 により 安 定 的 に 投 資 回 収 を 図 ることができる 仕 組 みとなっている 規 制 料 金 の 考 え 方 の 大 枠 は 日 本 の 電 気 料 金 やガ ス 料 金 と 同 じ 総 括 原 価 方 式 である 少 し 異 なるのは 事 業 報 酬 と 減 価 償 却 の 考 え 方 で 日 本 の 場 合 事 業 報 酬 は 耐 用 年 数 15 年 をベースに 資 産 簿 価 WACC( 加 重 平 均 資 本 コスト)で 計 算 されるのに 対 し イタリアの 場 合 はRAB(Regulated Asset Base) WACCという 方 式 がとられており 規 制 当 局 が 過 去 の 費 用 実 績 をベースに 将 来 価 値 を 評 価 したRABをベースに 計 算 がなされる 資 産 価 値 がパイプラインの 実 耐 用 年 数 に 近 い5 年 で 評 価 され 長 期 に 渡 り 安 定 的 な 報 酬 を 受 け 取 ることができる 仕 組 みとなってい る( 図 表 3-1) 新 規 投 資 インセンティブ:さらに 新 規 投 資 に 対 しては 事 業 報 酬 率 に1~4%のプレミアム( 建 設 期 間 中 は1%)が 付 される 他 ( 図 表 3-2) 必 要 に 応 じて 第 三 者 アクセスの 適 用 除 外 措 置 が 認 められて いる インフラ 整 備 の 資 金 :イタリアに 限 らず 欧 州 等 では このような 長 期 安 定 的 なローリスクローリター ンのアセット(ガスパイプライン 送 電 線 等 )には 年 金 基 金 やインフラファンド 等 の 長 期 安 定 型 の リターンを 好 む 投 資 家 が 投 資 をしているケースが 多 く 見 られる( 図 表 3-3) イタリアのSnam 社 の 例 でみると 大 株 主 であるCDP 社 はこれらのガスインフラ 投 資 で 郵 貯 資 金 の 運 用 を 行 っている 図 表 3-1 イタリア 規 制 料 金 制 度 ( 規 制 料 金 計 算 期 間 4~6 年 ) 事 業 報 酬 (RAB WACC) + 減 価 償 却 費 + オペレーティングコスト イ タ リ ア 日 本 RABの 算 出 方 法 規 制 料 金 計 算 期 間 初 年 度 に 過 去 の 費 用 実 績 をベースに 将 来 価 値 を 評 価 規 制 料 金 計 算 期 間 中 は 期 初 RAB+ 新 規 投 資 +メンテナンス 投 資 + 増 加 運 転 資 金 - 減 価 償 却 費 +イ ンフレ= 期 末 RABで 計 算 WACCの 算 出 方 法 WACC= 他 人 資 本 収 益 率 と 自 己 資 本 収 益 率 より 算 出 他 人 資 本 収 益 率 =1 年 イタリア 国 債 をベースに 算 出 実 耐 用 年 数 ベースでの 超 長 期 の 減 価 償 却 期 間 を 設 定 (パイプライン5 年 地 下 貯 蔵 6 年 等 ) 資 産 簿 価 WACC パイプライン 耐 用 年 数 :13 年 規 制 料 金 計 算 期 間 初 年 度 に 過 去 の 費 用 実 績 をベースにオペ レーティングコストが 設 定 さ れ 規 制 料 金 計 算 期 間 中 は 当 該 数 値 にインフレが 加 味 さ れる 事 業 者 の 合 理 化 努 力 により 費 用 削 減 ができた 部 分 は 事 業 者 のマージン 次 の 利 息 計 算 期 間 初 年 度 は 前 年 の 当 社 の 実 コスト+( 前 年 のコスト- 前 年 の 当 社 実 コ スト) 5%で 算 出 ヤードスティック 方 式 ( 備 考 )The Regulatory Authority for Electricity Gas and Water ヒアリング 等 により 作 成 図 表 3-2 イタリアの 新 規 投 資 へのインセンティブ(213 年 時 点 ) 新 規 投 資 事 業 報 酬 パイプラ イン 地 下 貯 蔵 設 備 LNG 基 地 設 備 = RAB WACC + プレミアム 対 象 設 備 基 幹 パイプライン 地 域 配 ガス パイプライン プレミアム +1% (7~1 年 間 ) 輸 入 受 入 地 点 の 容 量 増 強 +2%(1 年 間 ) 既 存 設 備 の 能 力 増 強 +4%(8 年 間 ) 新 規 設 備 の 能 力 増 強 +4%(16 年 間 ) 新 規 設 備 既 存 設 備 の 能 力 増 強 (3% 以 上 ) +2%(16 年 間 ) ( ) 建 設 期 間 中 のプレミアムは+1% ( 備 考 )Snam 社 公 表 資 料 により 作 成 図 表 3-3 年 金 基 金 やインフラファンド 等 によるガスインフラ 事 業 への 投 資 事 例 投 資 先 TIGF 社 (フランス 送 ガス 事 業 ) DBNGP 社 ( 豪 州 送 ガス 事 業 ) スペイン 配 ガス 事 業 イタリア 配 ガス 事 業 投 資 家 シンガポール 政 府 投 資 公 社 DUET Group (Macquarie Capital, AMP Capita)l Morgan Stanley Goldman Sachs AXA Private Equity ( 備 考 ) 各 種 公 開 情 報 により 作 成
今 月 のトピックス No.223-4(215 年 1 月 21 日 ) 4.イタリアの 今 後 のガスインフラ 整 備 イタリアのガス 事 業 の 課 題 :イタリアの 電 力 料 金 は 他 の 欧 州 各 国 に 比 べ 高 い 水 準 に 留 まっている ( 図 表 4-1) 電 力 料 金 を 引 き 上 げている 要 因 の1つは 電 源 の 約 5 割 を 占 めるガス 火 力 の 原 料 価 格 で あり ガスの 調 達 コスト 低 減 が 国 家 の 課 題 である 先 述 の 通 り イタリアは ガスの 輸 入 をロシアと アルジェリアの2ヵ 国 に 依 存 していることから 競 争 が 働 いておらず 輸 入 価 格 の 抑 制 が 進 んでいな い また この2ヵ 国 依 存 は ロシアが 抱 える 地 政 学 リスク 等 も 踏 まえれば 安 定 調 達 上 も 好 ましくな いと 考 えられている イタリアのガス 事 業 戦 略 :ガス 輸 入 価 格 の 低 減 や 安 定 調 達 に 向 けた 具 体 的 な 解 決 策 として イタリア 政 府 は イタリアを 南 ヨーロッパにおけるガスハブ 国 にすることを 計 画 している 具 体 的 には 1こ れまでのロシア( 東 方 向 ) アルジェリア( 南 方 向 )からの 輸 入 ルートに 加 え 東 西 方 向 南 北 方 向 の 輸 入 輸 出 ルートの 確 立 2ガス 取 引 市 場 の 拡 充 等 を 進 めている( 図 表 4-2) また 1 2 以 外 に もLNG 基 地 の 建 設 等 も 計 画 されている 1 東 西 南 北 方 向 の 輸 入 輸 出 ルート 確 立 : 東 西 南 北 のルート 整 備 は スペイン-ロシア イギリス -イタリアをつなぐガスのパイプラインネットワークの 整 備 である これにより 今 までのロシア アルジェリアに 加 え 北 海 やスペインLNG 基 地 経 由 のガスも 輸 入 できるようになり 調 達 ポートフォ リオの 多 様 化 が 可 能 となる( 図 表 4-3) 輸 入 先 の 多 様 化 に 加 え 輸 入 ガス 種 類 (パイプラインによる 天 然 ガスの 輸 入 LNGの 輸 入 )も 分 散 させることで 調 達 競 争 力 の 強 化 や 安 定 調 達 が 実 現 できる ま た これまで 輸 入 が 主 であったイタリアにおいて ガスの 受 入 ( 輸 入 )だけでなく 他 国 からの 輸 入 ガスの 送 出 ( 輸 出 )もできるパイプラインを 整 備 することで 価 格 競 争 の 促 進 も 期 待 されている 2ガス 取 引 市 場 の 拡 充 :イタリアには 既 にガスの 取 引 を 行 う 市 場 があり この 数 年 で 急 激 に 取 引 量 を 増 やしている( 図 表 4-4) 現 在 は OTC 決 済 取 引 と 呼 ばれる 取 引 市 場 にて 決 済 を 行 う 相 対 取 引 がほと んどであるが(21 年 よりスポット 取 引 も 開 始 しているが 取 引 量 は 数 %に 留 まる) 22 年 を 目 途 に スポット 市 場 の 拡 大 や 先 物 取 引 の 開 始 が 検 討 されている イタリア 政 府 は 上 記 1でガスの 流 通 量 を 増 やしつつ ガス 取 引 市 場 を 拡 充 することで ガス 価 格 の 透 明 性 を 確 保 し 調 達 交 渉 力 のさらな る 向 上 を 目 指 している なお この 取 引 市 場 は 先 述 のガスパイプライン 事 業 者 Snam 社 により 運 営 さ れている 図 表 4-1 欧 州 各 国 の 電 力 料 金 比 較 (211 年 課 税 前 ) 図 表 4-2 イタリアのガス 事 業 戦 略 ( /MWh) 16 12 8 4 イタリア フランス イギリス ドイツ 家 庭 用 産 業 用 ( 備 考 )IEA Electricity Information 212により 作 成 エネルギー 価 格 の 低 減 エネルギーの 安 定 供 給 22 年 EU 温 暖 化 対 策 目 標 の 達 成 エネルギー 業 界 への 投 資 促 進 による 経 済 成 長 イタリアを 南 ヨーロッパのガスハブ 国 化 -1- 東 西 南 北 方 向 の 輸 入 輸 出 ルート 確 立 -2- ガス 取 引 市 場 の 拡 充 ( 備 考 )ヒアリング 等 により 作 成 図 表 4-3 イタリアの 東 西 南 北 インフラ 整 備 計 画 図 表 4-4 ( 億 m 3 ) 8 イタリアのガス 取 引 所 取 引 量 推 移 6 4 東 西 ルート 南 北 ルート ( 備 考 )ヒアリング 等 により 作 成 2 24 25 26 27 28 29 21 211 212 ( 年 ) ( 備 考 )Snam 社 公 表 資 料 により 作 成
今 月 のトピックス No.223-5(215 年 1 月 21 日 ) 5.Snam 社 の 取 り 組 みの 現 状 と 今 後 への 期 待 イタリアガス 事 業 戦 略 実 現 に 向 けた 取 り 組 み:Snam 社 では 足 元 先 述 のイタリアの 取 り 組 みのうち 1にあたる 輸 入 輸 出 ルートの 確 立 に 資 するパイプライン 整 備 が 進 められている これにより イタ リアでは 輸 入 先 多 様 化 と 輸 出 に 伴 うガスの 流 通 量 増 加 から 競 争 が 促 進 され ガス 価 格 の 低 減 が 図 ら れることが 期 待 される また Snam 社 はガスの 取 引 市 場 の 運 営 者 でもあることから 今 後 はガス 取 引 市 場 の 拡 充 にも 関 与 していくことで ガスの 価 格 透 明 性 を 高 め イタリアの 一 層 の 輸 入 価 格 抑 制 に 貢 献 していくものと 考 えられる 東 西 ルートの 整 備 : 東 西 ルート 整 備 のため Snam 社 は 213 年 にスペインのLNG 基 地 と 連 結 している 南 フランスのガスパイプライン 事 業 者 TIGF 社 214 年 にロシアからイタリアへのガス 輸 入 ルートにあ たるオーストリアのガスパイプライン 事 業 者 TAG 社 を 買 収 している(TIGF 社 については シンガポー ル 政 府 投 資 公 社 GIC 社 およびフランスの 大 手 エネルギー 事 業 者 EDF 社 と 共 同 買 収 ) 今 後 も スペイン からロシアまでの 東 西 ルート 上 にあるパイプラインの 能 力 増 強 や 双 方 向 融 通 を 可 能 とする 投 資 等 を 行 い 東 西 にガスを 流 通 させるパイプラインの 整 備 を 進 めていく 方 針 である( 図 表 5-1) 南 北 ルートの 整 備 : 南 北 ルート 整 備 のためには Snam 社 は 212 年 にベルギーのガスパイプライン 事 業 者 Fluxys 社 と 共 にイギリス-ベルギーをつなぐ 海 底 パイプラインを 買 収 している Fluxys 社 は イギ リス-イタリアをつなぐルート 上 にあるドイツ スイスにもガスパイプラインを 保 有 していることか ら 南 北 ルートの 整 備 は Snam 社 とFluxys 社 の 連 携 により 進 められている 今 後 も イタリア 南 部 か らイギリスまでの 南 北 ルート 上 にあるパイプラインの 能 力 増 強 や 双 方 向 融 通 を 可 能 とする 投 資 等 を 行 い 南 北 にガスを 流 通 させるパイプラインの 整 備 を 進 めていく 方 針 である( 図 表 5-1) 図 表 5-1 Snam 社 が 買 収 した 欧 州 パイプライン 事 業 および 事 業 者 緑 字 : 東 西 ルート 整 備 赤 字 : 南 北 ルート 整 備 Interconnector ( 英 国 とベルギーをつなぐ 海 底 パイプライン) Fluxys (ベルギーのガスパイプ ( )ドイツ スイスに もパイプラインを 保 有 TAG (オーストリアのガスパイプ Snam (イタリアのガスパイプ TIGF ( 南 フランスのガスパイプ ( 備 考 ) 日 本 政 策 投 資 銀 行 作 成
今 月 のトピックス No.223-6(215 年 1 月 21 日 ) 6.イタリア 事 例 から 日 本 への 示 唆 イタリアの 事 例 の 総 括 :イタリアは 国 策 として 政 府 が 国 内 ガスインフラを 整 備 してきた 国 である 現 在 は 政 府 が 示 すガス 事 業 戦 略 に 沿 ったインフラ 投 資 が 政 府 系 金 融 機 関 CDP 社 が 大 株 主 となる Snam 社 主 導 のもとで 進 められている 日 本 のガスインフラ: 日 本 では イタリアとは 異 なり 民 間 のエネルギー 事 業 者 によりLNG 基 地 ガ スパイプラインが 整 備 されてきた 結 果 として 民 間 事 業 者 の 事 業 性 に 適 した 地 域 でのインフラ 整 備 は 進 んだものの パイプラインによる 天 然 ガスの 供 給 エリアは 国 土 の 約 5%に 留 まっている また 日 本 は LNGでガスを 輸 入 するため LNG 基 地 周 辺 でのパイプライン 整 備 は 進 んだが 全 国 的 なもの にはならず ガスパイプラインの 未 整 備 地 域 においては サテライトの 建 設 やローリーでの 輸 送 によ るガス 供 給 が 行 われている パイプライン 整 備 によるメリット1:ガスは 石 炭 や 石 油 に 比 べCO 2 排 出 量 が 少 なく 世 界 的 にも 広 く 分 散 して 賦 存 していることに 加 え シェールガス 等 の 新 たな 供 給 源 も 出 てきていることから 一 層 の 利 用 拡 大 を 進 めていくべきであるとされている ガスパイプラインは 需 要 が 点 在 するような 地 域 を 除 けば ローリー 輸 送 に 比 べ 安 定 供 給 や 効 率 性 の 観 点 で 優 れており ガス 利 用 拡 大 の 一 助 となり 得 る パイプライン 整 備 によるメリット2:また 日 本 もガスの 調 達 を 輸 入 に 依 存 しており 輸 入 価 格 の 抑 制 は 大 きな 課 題 である 日 本 は 原 油 価 格 に 連 動 する 調 達 価 格 でLNGを 輸 入 してきたが 米 国 で 多 くの シェールガスが 生 産 されたことを 受 け 米 国 の 主 要 取 引 価 格 指 標 であるヘンリーハブ 価 格 と 日 本 の 調 達 価 格 との 間 に 大 きな 乖 離 が 生 じている( 図 表 6-1) 原 油 価 格 リンクでの 調 達 に 加 え 米 国 のヘン リーハブリンクやアジアスポットリンクでの 調 達 を 増 やす 等 これまでに 日 本 でも 調 達 の 多 様 化 に 向 けた 取 り 組 みが 進 められてきた( 図 表 6-2) さらに 将 来 的 な 可 能 性 として ガスの 種 類 を 多 様 化 する ことができるロシアからのパイプラインによるガスの 輸 入 や 価 格 を 透 明 化 することができる 国 内 ガス スポット 市 場 の 創 設 等 も 議 論 されているが これらを 進 める 際 には ガスを 全 国 に 流 通 させることが できるガスパイプラインが 必 要 となってくる 今 後 の 日 本 のガスパイプラインの 整 備 と 整 備 資 金 :ガスパイプラインの 整 備 は エネルギー 政 策 や 調 達 戦 略 と 密 接 に 関 係 していることから これらとセットで 考 える 必 要 がある 仮 に 全 国 的 なガスパイ プライン 整 備 を 実 施 した 場 合 には 1~2 兆 円 近 い 設 備 投 資 が 必 要 であると 言 われている これまで 日 本 では ガスインフラはエネルギー 事 業 者 によって 整 備 されてきた 1~2 兆 円 という 巨 額 な 設 備 投 資 を 実 施 していくにあたっては パイプライン 整 備 の 意 義 を 踏 まえつつ 官 民 で 役 割 を 分 担 し 進 め ていく 必 要 がある また イタリア 事 例 等 のように 年 金 基 金 やインフラファンド 等 の 資 金 を 呼 び 込 んでいくような 仕 組 みも 検 討 に 値 するであろう 図 表 6-1 日 本 と 米 国 のガス 価 格 推 移 図 表 6-2 日 本 の 調 達 多 様 化 の 取 り 組 み 2 16 ($/ 百 万 Btu) 事 業 者 名 大 阪 ガス 中 部 電 力 取 り 組 み 事 例 米 国 フリーポートLNGプロジェ クトよりヘンリーハブリンクで LNGを 調 達 予 定 12 8 4 1 21 211 日 本 輸 入 LNG ( 液 化 輸 送 コスト 含 む) 212 米 国 ヘンリーハブ 213 214 ( 月 次 ) 5 東 京 ガス 中 部 電 力 米 国 キャメロンLNGプロジェク ト コーブポイントLNGプロ ジェクトよりヘンリーハブリン クでLNGを 調 達 予 定 GDFスエズグループとの 間 で 契 約 価 格 の 一 部 がアジアスポット 市 況 に 連 動 するLNG 購 入 に 関 す る 基 本 合 意 書 を 締 結 ( 備 考 ) 各 社 公 表 データにより 作 成 ( 備 考 ) 財 務 省 IMF 公 表 データにより 作 成 [ 産 業 調 査 部 上 田 絵 理 ]
今 月 のトピックス No.22 - (21 年 1 月 日 ) 本 資 料 は 著 作 物 であり 著 作 権 法 に 基 づき 保 護 されています 著 作 権 法 の 定 めに 従 い 引 用 す る 際 は 必 ず 出 所 : 日 本 政 策 投 資 銀 行 と 明 記 して 下 さい 本 資 料 の 全 文 または 一 部 を 転 載 複 製 する 際 は 著 作 権 者 の 許 諾 が 必 要 ですので 当 行 までご 連 絡 下 さい お 問 い 合 わせ 先 株 式 会 社 日 本 政 策 投 資 銀 行 産 業 調 査 部 Tel: 3-3244-184 E-mail: report@dbj.jp