Microsoft Word - 季刊1-1.doc



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●電力自由化推進法案

(4) 武 力 攻 撃 原 子 力 災 害 合 同 対 策 協 議 会 との 連 携 1 市 は 国 の 現 地 対 策 本 部 長 が 運 営 する 武 力 攻 撃 原 子 力 災 害 合 同 対 策 協 議 会 に 職 員 を 派 遣 するなど 同 協 議 会 と 必 要 な 連 携 を 図 る

岡山県警察用航空機の運用等に関する訓令

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2 役 員 の 報 酬 等 の 支 給 状 況 平 成 27 年 度 年 間 報 酬 等 の 総 額 就 任 退 任 の 状 況 役 名 報 酬 ( 給 与 ) 賞 与 その 他 ( 内 容 ) 就 任 退 任 2,142 ( 地 域 手 当 ) 17,205 11,580 3,311 4 月 1

為 が 行 われるおそれがある 場 合 に 都 道 府 県 公 安 委 員 会 がその 指 定 暴 力 団 等 を 特 定 抗 争 指 定 暴 力 団 等 として 指 定 し その 所 属 する 指 定 暴 力 団 員 が 警 戒 区 域 内 において 暴 力 団 の 事 務 所 を 新 たに 設

〔自 衛 隊〕

預 金 を 確 保 しつつ 資 金 調 達 手 段 も 確 保 する 収 益 性 を 示 す 指 標 として 営 業 利 益 率 を 採 用 し 営 業 利 益 率 の 目 安 となる 数 値 を 公 表 する 株 主 の 皆 様 への 還 元 については 持 続 的 な 成 長 による 配 当 可

入 札 参 加 者 は 入 札 の 執 行 完 了 に 至 るまではいつでも 入 札 を 辞 退 することができ これを 理 由 として 以 降 の 指 名 等 において 不 利 益 な 取 扱 いを 受 けることはない 12 入 札 保 証 金 免 除 13 契 約 保 証 金 免 除 14 入

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2 役 員 の 報 酬 等 の 支 給 状 況 役 名 法 人 の 長 理 事 理 事 ( 非 常 勤 ) 平 成 25 年 度 年 間 報 酬 等 の 総 額 就 任 退 任 の 状 況 報 酬 ( 給 与 ) 賞 与 その 他 ( 内 容 ) 就 任 退 任 16,936 10,654 4,36

平成25年度 独立行政法人日本学生支援機構の役職員の報酬・給与等について

1 総 合 設 計 一 定 規 模 以 上 の 敷 地 面 積 及 び 一 定 割 合 以 上 の 空 地 を 有 する 建 築 計 画 について 特 定 行 政 庁 の 許 可 により 容 積 率 斜 線 制 限 などの 制 限 を 緩 和 する 制 度 である 建 築 敷 地 の 共 同 化 や

弁護士報酬規定(抜粋)

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別 紙 第 号 高 知 県 立 学 校 授 業 料 等 徴 収 条 例 の 一 部 を 改 正 する 条 例 議 案 高 知 県 立 学 校 授 業 料 等 徴 収 条 例 の 一 部 を 改 正 する 条 例 を 次 のように 定 める 平 成 26 年 2 月 日 提 出 高 知 県 知 事 尾

2. ど の 様 な 経 緯 で 発 覚 し た の か ま た 遡 っ た の を 昨 年 4 月 ま で と し た の は 何 故 か 明 ら か に す る こ と 回 答 3 月 17 日 に 実 施 し た ダ イ ヤ 改 正 で 静 岡 車 両 区 の 構 内 運 転 が 静 岡 運

の 購 入 費 又 は 賃 借 料 (2) 専 用 ポール 等 機 器 の 設 置 工 事 費 (3) ケーブル 設 置 工 事 費 (4) 防 犯 カメラの 設 置 を 示 す 看 板 等 の 設 置 費 (5) その 他 設 置 に 必 要 な 経 費 ( 補 助 金 の 額 ) 第 6 条 補

その 他 事 業 推 進 体 制 平 成 20 年 3 月 26 日 に 石 垣 島 国 営 土 地 改 良 事 業 推 進 協 議 会 を 設 立 し 事 業 を 推 進 ( 構 成 : 石 垣 市 石 垣 市 議 会 石 垣 島 土 地 改 良 区 石 垣 市 農 業 委 員 会 沖 縄 県 農

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セルフメディケーション推進のための一般用医薬品等に関する所得控除制度の創設(個別要望事項:HP掲載用)

根 本 確 根 本 確 民 主 率 運 民 主 率 運 確 施 保 障 確 施 保 障 自 治 本 旨 現 資 自 治 本 旨 現 資 挙 管 挙 管 代 表 監 査 教 育 代 表 監 査 教 育 警 視 総 監 道 府 県 警 察 本 部 市 町 村 警 視 総 監 道 府 県 警 察 本 部

2. 建 築 基 準 法 に 基 づく 限 着 色 項 目 の 地 区 が 尾 張 旭 市 内 にはあります 関 係 課 で 確 認 してください 項 目 所 管 課 窓 口 市 役 所 内 電 話 備 考 がけに 関 する 限 (がけ 条 例 ) 都 市 計 画 課 建 築 住 宅 係 南 庁 舎

定款  変更

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スライド 1

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する ( 評 定 の 時 期 ) 第 条 成 績 評 定 の 時 期 は 第 3 次 評 定 者 にあっては 完 成 検 査 及 び 部 分 引 渡 しに 伴 う 検 査 の 時 とし 第 次 評 定 者 及 び 第 次 評 定 者 にあっては 工 事 の 完 成 の 時 とする ( 成 績 評 定

4 松 山 市 暴 力 団 排 除 条 の 一 部 風 俗 営 業 等 の 規 制 及 び 業 務 の 適 正 化 等 に 関 する 法 律 等 の 改 正 に 伴 い, 公 共 工 事 から 排 除 する 対 象 者 の 拡 大 等 を 図 るものです 第 30 号 H H28.1

公 的 年 金 制 度 について 制 度 の 持 続 可 能 性 を 高 め 将 来 の 世 代 の 給 付 水 準 の 確 保 等 を 図 るため 持 続 可 能 な 社 会 保 障 制 度 の 確 立 を 図 るための 改 革 の 推 進 に 関 する 法 律 に 基 づく 社 会 経 済 情

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別 表 1 土 地 建 物 提 案 型 の 供 給 計 画 に 関 する 評 価 項 目 と 評 価 点 数 表 項 目 区 分 評 価 内 容 と 点 数 一 般 評 価 項 目 立 地 条 件 (1) 交 通 利 便 性 ( 徒 歩 =80m/1 分 ) 25 (2) 生 活 利 便

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参 考 様 式 再 就 者 から 依 頼 等 を 受 けた 場 合 の 届 出 公 平 委 員 会 委 員 長 様 年 月 日 地 方 公 務 員 法 ( 昭 和 25 年 法 律 第 261 号 ) 第 38 条 の2 第 7 項 規 定 に 基 づき 下 記 のとおり 届 出 を します この

( 別 紙 ) 以 下 法 とあるのは 改 正 法 第 5 条 の 規 定 による 改 正 後 の 健 康 保 険 法 を 指 す ( 施 行 期 日 は 平 成 28 年 4 月 1 日 ) 1. 標 準 報 酬 月 額 の 等 級 区 分 の 追 加 について 問 1 法 改 正 により 追 加

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目 次 第 1 章 総 則 第 1 節 計 画 の 目 的... 1 第 1 計 画 の 目 的 1 第 2 計 画 の 策 定 1 第 3 計 画 の 構 成 2 第 4 用 語 の 意 義 2 第 2 節 計 画 の 前 提 条 件... 3 第 1 自 然 条 件 3 第 2 社 会 条 件

定款

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1 育 児 休 業 代 替 任 期 付 職 員 ( 一 般 事 務 職 )とは 育 児 休 業 代 替 任 期 付 職 員 とは 一 般 の 職 員 が 育 児 休 業 を 取 得 した 際 に 代 替 職 員 とし て 勤 務 する 職 員 です 一 般 事 務 職 については 候 補 者 として

●幼児教育振興法案


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- 1 - 総 控 負 傷 疾 病 療 養 産 産 女 性 責 帰 べ 由 試 ~ 8 契 約 契 約 完 了 ほ 契 約 超 締 結 専 門 的 知 識 技 術 験 専 門 的 知 識 高 大 臣 専 門 的 知 識 高 専 門 的 知 識 締 結 契 約 満 歳 締 結 契 約 契 約 係 始

(Microsoft Word - \220\340\226\276\217\221.doc)

は 固 定 流 動 及 び 繰 延 に 区 分 することとし 減 価 償 却 を 行 うべき 固 定 の 取 得 又 は 改 良 に 充 てるための 補 助 金 等 の 交 付 を 受 けた 場 合 にお いては その 交 付 を 受 けた 金 額 に 相 当 する 額 を 長 期 前 受 金 とし

m07 北見工業大学 様式①

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目 次 第 1. 土 区 画 整 理 事 業 の 名 称 等 1 (1) 土 区 画 整 理 事 業 の 名 称 1 (2) 施 行 者 の 名 称 1 第 2. 施 行 区 1 (1) 施 行 区 の 位 置 1 (2) 施 行 区 位 置 図 1 (3) 施 行 区 の 区 域 1 (4) 施

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検 討 検 討 の 進 め 方 検 討 状 況 簡 易 収 支 の 世 帯 からサンプリング 世 帯 名 作 成 事 務 の 廃 止 4 5 必 要 な 世 帯 数 の 確 保 が 可 能 か 簡 易 収 支 を 実 施 している 民 間 事 業 者 との 連 絡 等 に 伴 う 事 務 の 複 雑

国立研究開発法人土木研究所の役職員の報酬・給与等について

Ⅶ 東 海 地 震 に 関 して 注 意 情 報 発 表 時 及 び 警 戒 宣 言 発 令 時 の 対 応 大 規 模 地 震 対 策 特 別 措 置 法 第 6 条 の 規 定 に 基 づき 本 県 の 東 海 地 震 に 係 る 地 震 防 災 対 策 強 化 地 域 において 東 海 地 震

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1 変更の許可等(都市計画法第35条の2)

16 日本学生支援機構

質 問 票 ( 様 式 3) 質 問 番 号 62-1 質 問 内 容 鑑 定 評 価 依 頼 先 は 千 葉 県 などは 入 札 制 度 にしているが 神 奈 川 県 は 入 札 なのか?または 随 契 なのか?その 理 由 は? 地 価 調 査 業 務 は 単 にそれぞれの 地 点 の 鑑 定

ていることから それに 先 行 する 形 で 下 請 業 者 についても 対 策 を 講 じることとしまし た 本 県 としましては それまでの 間 に 未 加 入 の 建 設 業 者 に 加 入 していただきますよう 28 年 4 月 から 実 施 することとしました 問 6 公 共 工 事 の

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資料6 国の行政機関等における法曹有資格者の採用状況についての調査結果報告(平成27年10月実施分)(法務省提出資料)

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参 考 改 正 災 害 対 策 基 本 法 1 ( 災 害 時 における 車 両 の 移 動 等 ) 第 七 十 六 条 の 六 道 路 管 理 者 は その 管 理 する 道 路 の 存 する 都 道 府 県 又 はこれに 隣 接 し 若 しくは 近 接 する 都 道 府 県 の 地 域 に 係

した 開 示 決 定 等 に 当 たっては, 法 11 条 を 適 用 して, 平 成 23 年 5 月 13 日 まで 開 示 決 定 等 の 期 限 を 延 長 し, 同 年 4 月 11 日 付 け 防 官 文 第 号 により,1 枚 目 を 一 部 開 示 した そして, 同 年

公表表紙

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独立行政法人国立病院機構

(6) 事 務 局 職 場 積 立 NISAの 運 営 に 係 る 以 下 の 事 務 等 を 担 当 する 事 業 主 等 の 組 織 ( 当 該 事 務 を 代 行 する 組 織 を 含 む )をいう イ 利 用 者 からの 諸 届 出 受 付 事 務 ロ 利 用 者 への 諸 連 絡 事 務

財団法人○○会における最初の評議員の選任方法(案)

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1 林 地 台 帳 整 備 マニュアル( 案 )について 林 地 台 帳 整 備 マニュアル( 案 )の 構 成 構 成 記 載 内 容 第 1 章 はじめに 本 マニュアルの 目 的 記 載 内 容 について 説 明 しています 第 2 章 第 3 章 第 4 章 第 5 章 第 6 章 林 地

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4 調 査 の 対 話 内 容 (1) 調 査 対 象 財 産 の 土 地 建 物 等 を 活 用 して 展 開 できる 事 業 のアイディアをお 聞 かせく ださい 事 業 アイディアには, 次 の 可 能 性 も 含 めて 提 案 をお 願 いします ア 地 域 の 活 性 化 と 様 々な 世

01.活性化計画(上大久保)

続 に 基 づく 一 般 競 争 ( 指 名 競 争 ) 参 加 資 格 の 再 認 定 を 受 けていること ) c) 会 社 更 生 法 に 基 づき 更 生 手 続 開 始 の 申 立 てがなされている 者 又 は 民 事 再 生 法 に 基 づき 再 生 手 続 開 始 の 申 立 てがなさ

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Taro-事務処理要綱250820

った 場 合 など 監 事 の 任 務 懈 怠 の 場 合 は その 程 度 に 応 じて 業 績 勘 案 率 を 減 算 する (8) 役 員 の 法 人 に 対 する 特 段 の 貢 献 が 認 められる 場 合 は その 程 度 に 応 じて 業 績 勘 案 率 を 加 算 することができる

【労働保険事務組合事務処理規約】

(3) その 他 市 長 が 必 要 と 認 める 書 類 ( 補 助 金 の 交 付 決 定 ) 第 6 条 市 長 は 前 条 の 申 請 書 を 受 理 したときは 速 やかにその 内 容 を 審 査 し 補 助 金 を 交 付 すべきものと 認 めたときは 規 則 第 7 条 に 規 定 す

頸 がん 予 防 措 置 の 実 施 の 推 進 のために 講 ずる 具 体 的 な 施 策 等 について 定 めることにより 子 宮 頸 がんの 確 実 な 予 防 を 図 ることを 目 的 とする ( 定 義 ) 第 二 条 この 法 律 において 子 宮 頸 がん 予 防 措 置 とは 子 宮

Transcription:

台 湾 の 南 シナ 海 南 沙 諸 島 太 平 島 における 滑 走 路 建 設 をめぐる 論 争 とその 政 策 的 含 意 宋 燕 輝 ( 中 興 大 学 国 際 政 治 研 究 所 教 授 ) 要 約 行 政 院 は 1993 年 4 月 南 海 政 策 綱 領 を 認 可 した この 綱 領 実 施 要 綱 における 交 通 関 連 事 項 には 南 シナ 海 における 空 港 および 埠 頭 施 設 建 設 が 含 まれている 交 通 部 が 同 年 南 沙 諸 島 太 平 島 における 空 港 建 設 計 画 への 評 価 を 行 なったが 建 設 の 決 定 は 下 されなかった 12 年 を 経 て メディアが 南 シナ 海 南 沙 諸 島 太 平 島 の 航 空 機 滑 走 路 建 設 を 報 じたことにより 国 内 の 環 境 保 護 団 体 から 抗 議 の 声 が 上 が り 野 党 からは 陳 水 扁 政 権 の 政 策 決 定 および 経 費 支 出 の 正 当 性 合 法 性 が 疑 問 視 され 南 シナ 海 主 権 主 張 国 のベトナムからは 台 湾 の 建 設 工 事 停 止 を 要 求 する 強 硬 な 声 明 発 表 という 反 応 を 受 けた こうし た 事 態 にも 関 わらず 太 平 島 の 滑 走 路 は 2007 年 末 に 順 調 に 落 成 を 見 た 本 稿 では 台 湾 による 太 平 島 滑 走 路 建 設 の 背 景 政 策 決 定 とそ れにより 誘 発 された 国 内 政 策 論 議 他 の 南 シナ 海 主 権 主 張 国 の 反 応 および 滑 走 路 建 設 がもたらす 戦 略 的 政 策 的 含 意 について 分 析 する 序 論 に 続 く 第 二 章 では 南 シナ 海 の 最 近 の 情 勢 について 概 説 す る 第 三 章 では 太 平 島 の 地 理 的 位 置 と 戦 略 的 重 要 性 第 四 章 では -1-

問 題 と 研 究 第 37 巻 3 号 太 平 プロジェクト と 関 連 政 策 決 定 について 説 明 する 第 五 章 で は 太 平 島 の 航 空 機 用 滑 走 路 建 設 が 誘 発 した 建 設 の 必 要 性 経 費 計 上 と 支 出 の 合 法 性 生 態 破 壊 是 非 をめぐる 国 内 政 策 論 争 について 分 析 する 第 六 章 では 滑 走 路 竣 工 と 陳 水 扁 による 太 平 島 上 陸 視 察 お よび 南 沙 提 案 提 唱 について 概 説 し 第 七 章 では 台 湾 の 滑 走 路 建 設 と 南 沙 提 案 に 対 する 他 の 南 シナ 海 主 権 主 張 国 の 反 応 について 分 析 する 第 八 章 では 滑 走 路 建 設 の 戦 略 的 政 策 的 含 意 について 論 述 し 第 九 章 に 本 稿 の 結 論 を 示 す キーワード 台 湾 南 シナ 海 太 平 島 空 港 滑 走 路 政 策 的 含 意 -2-

2008 年 7.8.9 月 号 台 湾 の 南 シナ 海 南 沙 諸 島 太 平 島 における 滑 走 路 建 設 をめぐる 論 争 とその 政 策 的 含 意 一 序 論 1993 年 4 月 中 華 民 国 ( 以 下 台 湾 とする) 行 政 院 は 南 シナ 海 政 策 綱 領 1 を 承 認 した 当 綱 領 実 施 要 綱 は 南 シナ 海 における 空 港 および 埠 頭 施 設 建 設 を 含 む 交 通 事 項 に 関 するものである 2 当 綱 領 に よると 内 政 部 が 作 成 した 南 シナ 海 政 策 綱 領 実 施 要 綱 分 担 表 で は 交 通 部 が 空 港 および 埠 頭 施 設 建 設 の 主 要 任 務 を 担 当 し 国 防 部 農 業 委 員 会 高 雄 市 政 府 が 協 力 機 関 として 列 挙 されている 同 年 交 通 部 は 南 沙 諸 島 太 平 島 空 港 建 設 計 画 に 対 する 評 価 を 行 なった が 結 局 建 設 の 決 定 は 行 なわなかった その 後 12 年 を 経 て 報 道 機 関 により 台 湾 の 南 シナ 海 南 沙 諸 島 太 平 島 における 滑 走 路 建 設 が 明 ら かになると 3 国 内 の 環 境 保 護 団 体 が 反 発 4 野 党 は 陳 水 扁 政 権 の 政 策 決 定 経 費 使 用 の 正 当 性 および 合 法 性 を 疑 問 視 した 5 また 南 シナ 海 主 権 主 張 国 の 一 つであるベトナムの 外 交 部 が 台 湾 による 建 設 工 事 即 時 停 止 を 求 める 強 硬 な 声 明 を 発 表 した 6 しかしながら 結 局 太 平 島 の 滑 走 路 は 2007 年 末 に 順 調 に 完 工 を 見 た( 図 1 図 2 を 参 照 ) 2008 年 3 月 台 湾 では 第 12 代 総 統 を 選 ぶ 選 挙 が 行 われたが その 1 2 3 4 5 6 中 華 民 国 82 年 4 月 13 日 行 政 院 台 82 内 字 第 09692 号 書 簡 承 認 当 綱 領 前 文 は 地 政 法 規 全 球 資 訊 網 http://www.land.moi.gov.tw/law/を 参 照 南 シナ 海 政 策 綱 領 三 実 施 要 綱 ( 四 ) 交 通 事 項 :4 同 上 2005 年 10 月 台 湾 の 週 刊 誌 新 新 聞 が 太 平 島 空 港 建 設 の 情 報 をスクープした 時 報 周 刊 でも 関 連 情 報 が 報 道 された 太 平 島 偸 蓋 機 場 生 態 全 毀 自 由 時 報 (2006 年 5 月 19 日 ) 南 沙 太 平 島 歴 生 態 浩 劫 聯 合 報 )2006 年 8 月 21 日 )A6 面 総 予 算 表 決 / 軍 購 三 項 全 数 封 殺 南 沙 機 場 要 補 提 予 算 今 日 新 聞 (2006 年 1 月 12 日 ) http://www.nownews.com/2006/01/12/10844-1893402.htm Politics & Law Vietnam Condemns Airport Plan of Taiwan in Spratlys, Financial Times Information, Vietnam News Briefs, December 30, 2005, LexisNexis News search, page number not available. -3-

問 題 と 研 究 第 37 巻 3 号 選 挙 期 間 中 陳 水 扁 総 統 ( 当 時 )と 馬 英 九 国 民 党 総 統 候 補 はそれぞ れ 南 シナ 海 諸 島 の 領 土 主 権 論 争 と 今 後 の 南 シナ 海 開 発 建 設 問 題 につ いて 政 策 表 明 と 主 張 を 展 開 した まず 選 挙 日 前 に 陳 水 扁 総 統 が 三 軍 総 帥 として 陰 暦 の 春 節 期 間 中 に 軍 用 機 C-130 に 搭 乗 し 太 平 島 での 滑 走 路 完 工 使 用 開 始 式 典 を 主 催 した 同 時 に 島 内 施 設 を 視 察 し 駐 留 する 軍 関 係 者 を 慰 問 し 南 沙 提 案 7 を 発 表 した また 馬 蕭 選 挙 本 部 も 海 洋 政 策 を 発 表 し 南 シナ 海 の 開 放 共 同 開 発 アジア 太 平 洋 地 域 の 安 定 促 進 を 強 調 した この 中 で 南 沙 諸 島 太 平 島 と 中 州 礁 に 国 際 保 護 団 体 と 共 同 で 南 シナ 海 平 和 公 園 を 建 設 する 計 画 を 発 表 アジア 太 平 洋 地 域 の 人 民 の 共 同 の 福 祉 を 促 進 する ため 国 際 協 力 と 積 極 的 な 相 互 交 流 を 強 調 し 生 態 および 人 文 的 資 産 を 保 護 するとした 8 最 近 十 数 年 間 の 南 シナ 海 情 勢 の 全 体 的 な 発 展 を 見 ると 台 湾 が 1993 年 の 南 シナ 海 政 策 綱 領 に 掲 げた 南 シナ 海 の 主 権 維 持 の 堅 持 南 シナ 海 開 発 管 理 強 化 南 シナ 海 協 力 積 極 促 進 南 シナ 海 紛 争 平 和 的 処 理 南 シナ 海 の 生 態 環 境 維 持 という 五 大 政 策 目 標 の 達 成 にはかなり 不 利 である 9 例 えば 1995 年 中 華 人 民 共 和 国 ( 以 下 7 8 9 扁 提 南 沙 倡 議 生 態 環 保 至 上 自 由 時 報 ( 電 子 報 ) (2008 年 2 月 3 日 ) http://www.libertytimes.com.tw/2008/new/feb/3/today-p1-2.htm 馬 英 九 海 洋 政 策 - 藍 色 革 命 海 洋 興 国 馬 英 九 與 蕭 万 長 2008 総 統 大 選 競 選 ウェ ブサイト http://www.ma19.net/policy4you/oceans Yann-huei Song, The United States and the South China Sea Dispute: A Study of Ocean Law and Policy, University of Maryland School of Law, 2002; Yann-huie Song, The Overall Situation in the South China Sea in the New Millennium: Before and After the September 11 Terrorist Attacks, Ocean Development and International Law, Vol. 34, Nos. 3-4, pp. 229-277;Ian Storey, Trouble and Strife in the South China Sea: Vietnam and China, China Brief, Vol. VIII, Issue 8, April 14, 2008, pp. 11-14; Ian Storey, Trouble and Strife in the South China Sea: The Phillipines and China, China Brief, Vol. VIII, Issue 9, April 28, 2008, pp. 5-8; 宋 燕 輝 南 海 各 方 行 為 宣 言 簽 署 後 之 南 海 情 勢 2005 年 両 岸 南 海 問 題 学 -4-

2008 年 7.8.9 月 号 台 湾 の 南 シナ 海 南 沙 諸 島 太 平 島 における 滑 走 路 建 設 をめぐる 論 争 とその 政 策 的 含 意 中 国 とする)とフィリピンの 間 に 南 沙 諸 島 美 済 礁 の 主 権 問 題 で 深 刻 な 摩 擦 が 発 生 してからというもの 南 シナ 海 情 勢 は 緊 張 を 高 めてい る また 同 年 台 湾 の 保 七 南 巡 が 失 敗 に 終 り 引 き 返 してから 台 湾 は 国 際 社 会 およびアジア 太 平 洋 地 域 において 南 シナ 海 問 題 を 議 論 する 場 や 同 問 題 の 対 話 プロセスから 徐 々に 取 り 残 されている 2002 年 には 中 国 と ASEAN が 南 シナ 海 における 関 係 国 の 行 動 に 関 する 宣 言 10 に 調 印 したが 台 湾 はこの 宣 言 の 策 定 折 衝 プロセスに 参 加 要 請 を 受 けなかっただけでなく 宣 言 への 調 印 加 入 の 機 会 と 権 利 さえ 剥 奪 された 2005 年 には 中 国 ベトナム フィリピンの 国 営 石 油 会 社 が 南 シナ 海 の 地 震 探 査 協 定 である Tripartite Agreement for Joint Marine Seismic Undertaking in the Agreement Area in the South China Sea 南 シナ 海 の 協 定 地 域 における 三 カ 国 の 共 同 海 洋 地 震 作 業 の 協 議 11 を 締 結 したものの 台 湾 の 国 営 石 油 会 社 は 参 加 要 請 を 受 けなかった 同 様 に 現 在 ASEAN と 中 国 が 策 定 中 の 南 シナ 海 にお ける 行 動 準 則 でも 台 湾 は 完 全 に 交 渉 の 蚊 帳 の 外 に 置 かれている 10 11 術 研 討 会 : 両 岸 在 南 海 問 題 上 的 合 作 : 機 会 與 方 向 における 発 表 論 文 ( 台 北 : 国 立 政 治 大 学 国 際 関 係 研 究 中 心 2005 年 5 月 21 日 ); 宋 燕 輝 近 期 南 海 情 勢 発 展 之 観 察 與 分 析 東 南 亜 研 究 第 172 期 ( 中 国 大 陸 広 東 暨 南 大 学 東 南 亜 研 究 所 2008 年 1 月 ) 37-44 ページ Declaration on the Conduct of Parties in the South China Sea, done on November 4, 2002 in Phnom Penh, Cambodia. 宣 言 の 全 文 は ASEAN ウェブサイトhttp://www.aseansec.org/ 13163.htmを 参 照 当 合 意 は 機 密 条 項 を 含 み 締 約 国 が 合 意 の 執 行 開 始 から 5 年 間 は 合 意 内 容 を 開 示 し てはならないと 定 めているため 現 在 も 合 意 の 詳 細 は 公 開 されていない -5-

問 題 と 研 究 第 37 巻 3 号 図 1: 太 平 島 衛 星 写 真 ( 出 典 :Google Earth) 図 2: 太 平 島 に 建 設 された 滑 走 路 福 衛 二 号 が 2008 年 1 月 27 日 に 撮 影 した 衛 星 写 真 には 新 たに 完 成 した 空 港 の 全 長 約 1200 メートル 滑 走 路 がはっきりと 写 っている( 国 家 太 空 センター 提 供 ) -6-

2008 年 7.8.9 月 号 台 湾 の 南 シナ 海 南 沙 諸 島 太 平 島 における 滑 走 路 建 設 をめぐる 論 争 とその 政 策 的 含 意 近 年 の 南 シナ 海 情 勢 の 発 展 および 台 湾 にもたらされるマイナスの 影 響 を 観 察 すると 台 湾 による 太 平 島 の 滑 走 路 建 設 決 定 と 後 の 運 営 使 用 が 政 治 経 済 外 交 安 全 保 障 戦 略 ひいては 国 土 計 画 開 発 面 などで 高 度 に 政 策 的 含 意 を 持 つことは 明 らかである この 滑 走 路 は 平 時 においては 重 要 な 輸 送 作 業 に 役 立 つだけでなく 現 在 往 復 で 7-9 日 必 要 な 輸 送 航 路 および 大 量 の 燃 料 など 時 間 とコストの 大 幅 削 減 を 実 現 する 上 一 旦 有 事 となれば 人 道 救 援 患 者 の 台 湾 帰 還 移 送 船 舶 救 助 軍 事 増 援 海 事 安 全 の 強 化 および 敵 国 の 対 台 湾 軍 事 威 嚇 行 動 への 抑 止 を 含 む 積 極 的 価 値 を 有 する 戦 略 的 安 全 保 障 から 見 て も 太 平 島 の 滑 走 路 建 設 は 台 湾 が 縦 深 戦 略 を 台 湾 海 峡 から 南 シナ 海 の 海 域 南 方 まで 拡 大 する 上 で 効 果 を 発 揮 する 将 来 台 湾 がもし 本 当 に 島 内 に 潜 水 艦 奇 襲 地 区 基 地 を 建 設 し P-3C 対 潜 哨 戒 機 を 配 備 することになれば 太 平 島 が 南 シナ 海 戦 略 および 海 事 安 全 情 報 偵 察 活 動 において 果 たしうる 重 要 な 役 割 が 大 幅 に 強 化 され また 台 湾 とアジア 太 平 洋 地 域 諸 国 が 関 連 の 軍 事 監 視 および 情 報 交 換 協 力 を 進 める 上 でも 有 益 である 政 策 的 には 太 平 島 の 滑 走 路 建 設 は 台 湾 の 南 シナ 海 政 策 が 新 たな 調 整 発 展 の 段 階 に 突 入 したことを 意 味 す るため 政 策 的 にも 重 要 な 転 換 点 であるといえよう 本 稿 は 台 湾 が 太 平 島 に 滑 走 路 を 建 設 した 背 景 と 政 策 決 定 過 程 これにより 誘 発 された 国 内 の 政 策 論 争 と 他 の 南 シナ 海 主 権 主 張 国 の 反 応 および 滑 走 路 建 設 がもたらす 戦 略 政 策 的 含 意 を 分 析 するこ とを 主 な 目 的 としている 序 論 に 続 く 第 二 章 では 近 年 の 南 シナ 海 情 勢 について 概 説 する 第 三 章 は 太 平 島 の 地 理 的 位 置 とその 戦 略 的 重 要 性 について 第 四 章 では 太 平 島 滑 走 路 建 設 の 太 平 プロジェクト と 関 連 する 政 策 の 決 定 について 説 明 する 第 五 章 では 太 平 島 滑 走 路 建 設 が 誘 発 した 建 設 必 要 性 建 設 費 用 の 形 状 と 支 出 の 合 法 性 論 争 と 滑 走 路 建 設 による 生 態 破 壊 是 非 の 国 内 政 治 外 交 環 境 保 護 政 策 -7-

問 題 と 研 究 第 37 巻 3 号 の 論 争 について 第 六 章 では 太 平 島 滑 走 路 完 工 使 用 開 始 と 陳 水 扁 総 統 の 現 場 視 察 および 南 沙 提 案 について 概 説 する 第 七 章 では 他 の 南 沙 諸 島 主 権 主 張 国 が 台 湾 の 太 平 島 滑 走 路 建 設 および 陳 水 扁 総 統 の 南 沙 提 案 にどのように 反 応 したかについて 分 析 し 第 八 章 では 太 平 島 滑 走 路 の 戦 略 的 政 策 的 含 意 について 論 述 する 第 9 章 では 本 稿 の 結 論 を 提 起 する 二 南 シナ 海 の 現 状 についての 概 説 南 シナ 海 は 東 沙 諸 島 西 沙 諸 島 中 沙 諸 島 南 沙 諸 島 の 4 大 諸 島 から 構 成 される 東 沙 諸 島 (Pratas Islands)は 現 在 台 湾 が 実 効 支 配 しており 海 峡 の 両 側 を 除 いて 主 権 論 争 は 存 在 しない 2007 年 1 月 台 湾 は 東 沙 諸 島 に 台 湾 第 7 番 目 の 国 立 公 園 となる 東 沙 環 礁 国 家 公 園 を 設 立 している これは 中 華 民 国 内 政 部 営 建 署 が 管 轄 し 同 年 10 月 に 設 立 された 海 洋 国 家 公 園 管 理 処 が 管 理 に 当 たっている 東 沙 島 は 高 雄 市 から 445 キロの 場 所 に 位 置 し 島 内 には 幅 30 メート ル 全 長 1550 メートルの 滑 走 路 を 有 する 小 型 空 港 が 設 置 され 定 期 的 に 軍 用 機 民 間 機 が 発 着 している 12 現 在 は 生 態 保 護 のため 一 般 観 光 客 には 開 放 されていない 西 沙 諸 島 (Paracel Islands ベトナム 語 ではホアンサ 諸 島 Quần đảo Hoàng Sa と 称 される)は 現 在 中 国 が 実 効 支 配 しているが ベトナ ムと 台 湾 もその 主 権 を 主 張 している 1974 年 中 国 とベトナムの 間 に 西 沙 諸 島 を 巡 る 海 戦 が 勃 発 したが ベトナムの 敗 北 に 終 わってか らは 中 国 の 実 効 支 配 が 始 まり 現 在 に 至 っている 西 沙 諸 島 最 大 の 永 興 島 には 全 長 約 2500 メートルの 滑 走 路 および 埠 頭 が 建 設 されてい る 中 国 は 1997 年 西 沙 諸 島 を 観 光 エリアにする 計 画 を 発 表 したが 12 東 沙 環 礁 国 家 公 園 ウィキペディア http://zh.wikipedia.org/ 参 照 -8-

2008 年 7.8.9 月 号 台 湾 の 南 シナ 海 南 沙 諸 島 太 平 島 における 滑 走 路 建 設 をめぐる 論 争 とその 政 策 的 含 意 現 時 点 のところ 観 光 への 開 放 には 至 っていない 13 中 沙 諸 島 は 海 域 付 近 の 黄 岩 環 礁 (Scarborough Shoal)を 除 けば 水 面 に 露 出 していないサンゴ 礁 である 14 中 沙 諸 島 は 満 潮 時 水 没 して いるが 中 国 と 台 湾 が 中 沙 諸 島 の 主 権 を 主 張 している フィリピン も 黄 岩 環 礁 の 主 権 を 主 張 しており 1990 年 代 後 半 に 中 国 との 間 で 黄 岩 環 礁 とその 近 海 における 資 源 開 発 および 管 轄 権 を 巡 り 衝 突 して いる 15 南 沙 諸 島 (Spratly Islands)は 南 シナ 海 の 4 大 諸 島 のうち もっ とも 広 い 海 域 を 占 める 諸 島 で 島 岩 礁 数 も 最 多 である 中 国 とベ トナムの 間 で 1988 年 南 沙 諸 島 赤 瓜 環 礁 付 近 の 海 域 において 海 戦 が 勃 発 したが 中 国 がベトナムを 撃 退 し 赤 瓜 環 礁 を 占 有 した そ れ 以 来 中 国 はその 勢 力 を 西 沙 諸 島 から 南 下 させ 南 シナ 海 南 部 の 南 沙 諸 島 まで 拡 大 更 には 南 沙 諸 島 の 島 岩 礁 の 一 部 を 占 拠 し 始 め ている 現 在 中 国 ベトナム 台 湾 フィリピン マレーシア ブ ルネイが 諸 島 全 部 または 一 部 の 主 権 および 諸 島 周 囲 のうち 1982 年 国 連 海 洋 法 条 約 16 で 定 められた 排 他 的 経 済 水 域 と 大 陸 棚 の 主 権 および 管 轄 権 を 主 張 している 軍 事 面 では ベトナムが 占 有 してい る 島 岩 礁 が 最 も 多 く 27~30 カ 所 である 中 国 は 11 カ 所 フィリ 13 14 15 16 西 沙 群 島 ウィキペディア http://zh.wikipedia.org/ 参 照 西 沙 諸 島 の 観 光 情 報 は 西 沙 群 島 旅 遊 http://www.527ziyou.com/admin/newshtml/ql55/2006727113609. asp 参 照 中 沙 群 島 ウィキペディア http://zh.wikipedia.org/ 参 照 Zou Keyuan, Scarborough Reef: A New Flashpoint in Sino Philippine Relations? IBRU Boundary and Security Bulletin, Summer 1999, pp. 71 81 全 文 は http://www.dur.ac.uk/ resources/ibru/publications/bsbfirstpages/bsb7-2_keyuan_p1.pdf 参 照 The 1982 United Nations Convention on the Law of the Sea, 条 約 の 中 国 語 版 全 文 は 国 連 ウェブサイトhttp://www.un.org/chinese/law/sea/ 参 照 2008 年 6 月 4 日 の 時 点 で 条 約 締 結 国 は 155 カ 国 である http://www.un.org/depts/los/reference_files/status2008.pdf 参 照 -9-

問 題 と 研 究 第 37 巻 3 号 ピンが 9 カ 所 台 湾 が 1 カ 所 マレーシアが 5~6 カ 所 である ブル ネイは 南 通 礁 1 カ 所 の 占 有 を 主 張 しているが 現 時 点 で 派 兵 による 占 有 は 行 なっていない 17 南 沙 諸 島 で 占 有 されている 島 岩 礁 のう ち ベトナムの 南 威 島 マレーシアの 弾 丸 礁 フィリピンの 中 業 島 には 滑 走 路 が 建 設 されている 2007 年 末 の 時 点 で 南 沙 諸 島 主 権 主 張 国 のうち 滑 走 路 を 持 たない 国 は 中 国 台 湾 ブルネイであった 現 時 点 では 南 沙 諸 島 の 主 権 主 張 国 のうち 滑 走 路 を 持 たないのは 中 国 ブルネイだけとなった 南 シナ 海 の 各 諸 島 は 太 平 洋 からインド 洋 への 中 枢 に 位 置 し 戦 略 的 位 置 付 けは 非 常 に 重 要 である 上 海 洋 生 物 無 生 物 資 源 も 非 常 に 豊 富 である 南 シナ 海 の 周 辺 国 は イデオロギー 文 化 宗 教 社 会 制 度 などが 多 元 化 しているが 近 年 の 急 速 な 経 済 発 展 の 結 果 域 外 の 大 国 が 当 該 地 域 で 協 力 相 手 獲 得 にしのぎを 削 る 状 況 となって いる また 南 シナ 海 の 国 際 的 な 海 運 ルートとしての 重 要 性 から 東 北 アジア 諸 国 ( 主 に 韓 国 と 日 本 )および ASEAN 諸 国 にとってイン ド 洋 太 平 洋 における 海 上 貿 易 の 玄 関 口 として 存 在 し アジア 太 平 洋 地 域 諸 国 の 経 済 利 益 にも 密 接 に 関 わっている したがって 南 シナ 海 周 辺 の 平 和 と 安 定 は 国 際 社 会 が 一 貫 して 注 目 している 問 題 であ 17 ベトナムが 占 有 している 南 沙 諸 島 の 島 環 礁 は 南 子 島 奈 羅 礁 安 達 礁 大 現 礁 小 現 礁 鬼 喊 礁 鴻 麻 島 日 積 礁 景 宏 島 無 礁 瓊 礁 畢 生 礁 六 門 礁 東 礁 舶 蘭 礁 廣 雅 礁 蓬 勃 暗 沙 蓬 勃 堡 南 威 島 安 波 沙 洲 萬 安 灘 立 威 島 南 華 礁 西 礁 中 礁 康 楽 礁 柏 礁 華 礁 泛 愛 暗 沙 敦 謙 沙 洲 などである 中 国 が 占 有 しているのは 渚 碧 礁 南 薫 礁 赤 瓜 礁 永 暑 礁 東 門 礁 華 陽 礁 美 済 礁 五 方 礁 仁 愛 礁 信 義 礁 仙 俄 礁 などである フィリピンが 占 有 しているのは 北 子 島 費 信 島 馬 歓 島 司 令 礁 中 業 島 南 鑰 島 礼 楽 灘 楊 信 沙 洲 西 月 島 などで ある マレーシアが 占 有 しているのは 光 星 仔 礁 弾 丸 礁 南 海 礁 安 渡 礁 楡 亜 暗 沙 簸 萁 礁 などである 主 権 主 張 国 が 実 際 に 占 有 する 島 環 礁 の 数 と 正 確 な 名 称 に 関 しては 公 式 資 料 がなく 上 記 は 参 考 として 列 挙 した -10-

2008 年 7.8.9 月 号 台 湾 の 南 シナ 海 南 沙 諸 島 太 平 島 における 滑 走 路 建 設 をめぐる 論 争 とその 政 策 的 含 意 る 国 際 的 な 原 油 高 につれ エネルギー 供 給 とエネルギー 安 全 保 障 は 南 シナ 海 周 辺 国 が 重 視 する 戦 略 的 安 全 保 障 問 題 ともなってい る また 海 上 テロやマラッカ 海 峡 の 海 賊 攻 撃 の 脅 威 および 海 上 交 通 路 (Sea Lanes of Communications, SLOCs) 確 保 などを 考 慮 し 戦 略 的 安 全 保 障 海 事 安 全 保 障 海 上 運 輸 交 通 石 油 ガス 資 源 開 発 漁 業 資 源 開 発 領 土 主 権 紛 争 の 解 決 海 上 の 境 界 線 画 定 海 上 犯 罪 へ の 共 同 対 処 生 物 の 多 様 性 と 海 洋 環 境 の 保 存 および 保 護 地 域 内 に おける 伝 統 的 安 全 保 障 および 非 伝 統 的 安 全 保 障 上 の 協 力 などの 領 域 において 南 シナ 海 が 果 たす 役 割 が 益 々 重 要 になっている 現 在 南 シナ 海 の 主 権 主 張 国 は 各 国 とも 島 岩 礁 の 領 土 主 権 の 主 張 を 強 化 しており 管 轄 権 と 南 シナ 海 資 源 開 発 強 化 に 向 けたアクショ ンを 積 極 化 させている 中 でも 注 目 されるのは フィリピン 国 会 が 南 沙 諸 島 の 大 部 分 の 島 岩 礁 である 卡 拉 雅 安 群 島 (Kalayaan island group) 黄 岩 島 (Scarborgough Shoal) 美 済 礁 (Mischief Reef)を 含 むよう 諸 島 領 海 基 線 を 拡 大 する 立 法 草 案 を 提 案 したことである 18 フィリピンが 占 有 する 南 沙 中 業 島 (Pag-asa island)およびは 海 洋 レジャー ダイビング 観 光 エリアとして 開 発 される 計 画 である 19 また 国 連 に 対 して 南 沙 海 域 の 大 陸 棚 境 界 線 までの 拡 大 を 申 請 す 18 19 Philippines House to Further Re-asses and Review the Proposed Baseline Bill, Financial Times Information, Thai Press Report, June 2, 2008, LexisNexis News search, page number not available; House bill wants Spratlys to be part of regime of islands, Inquirer, April 28, 2008, available at: http://services.inquirer.net/mobile/08/04/29/html_output/xmlhtml/ 20080428-133244-xml.html; Ava Kashima K. Austria, House asked to go slow on delineating boundaries (Document shows Beijing s conserns about Manila s claim over Spratlys), Business World, March 13, 2008, p. S1/12. Philippine officials eye disputed Spratly islands as a tourist destination, Associated Press Worldstream, May 5, 2008, LexisNexis News search, page not available. -11-

問 題 と 研 究 第 37 巻 3 号 る 計 画 もこれに 含 まれている 20 ベトナムは 南 シナ 海 の 監 視 を 強 化 するため 海 軍 の 強 化 を 積 極 化 している 中 国 に 対 する 牽 制 を 目 的 とし ベトナム 海 軍 も 各 国 との 軍 事 協 力 や 相 互 交 流 を 強 化 しつつあ る ベトナムに 関 しては インドとの 軍 事 協 力 が 緊 密 化 しているこ とが 注 目 される 2007 年 末 にはインドのアントニー 国 防 相 がベトナ ムを 訪 問 両 国 が 一 連 の 海 軍 協 力 合 意 に 調 印 しており 今 後 両 国 が 防 衛 協 力 関 係 を 発 展 させることになろう ベトナムとしては イン ドの 援 助 の 下 海 軍 装 備 更 新 計 画 実 施 を 加 速 化 し 南 シナ 海 の 諸 島 に 対 する 影 響 力 を 強 化 することを 目 的 としている 21 ベトナムも 自 身 が 占 有 する 南 沙 諸 島 の 南 威 島 の 開 発 22 および 南 シナ 海 における 石 油 ガス 漁 業 資 源 の 開 発 23 を 積 極 化 している 同 時 に 中 国 の 南 シナ 海 における 動 きも 近 年 目 を 引 いている 現 在 中 国 は 南 シナ 海 での 石 油 天 然 ガス 天 然 ガスハイドレート( 一 般 に 燃 える 氷 とも 言 われる) および 非 伝 統 的 エネルギー 資 源 の 開 発 戦 略 を 加 速 化 させており 同 時 に 論 争 棚 上 げと 共 同 開 発 政 策 で 論 争 中 の 南 沙 諸 島 水 域 を 拡 大 して いわゆる 伝 統 的 な 島 嶼 の 帰 属 線 または 歴 史 的 根 拠 から 南 シナ 海 のほぼ 全 域 を 取 り 込 む U 字 型 の 領 有 権 を 主 張 している また マレーシアやブルネイに 加 え 南 沙 諸 島 の 主 権 論 争 に 関 わりのないインドネシアを 現 行 の 中 国 ベ トナム フィリピンの 三 者 間 南 シナ 海 合 意 区 域 における 共 同 海 洋 地 20 Cynthia D. Balana, Miriam Warns against Rushing Baseline Bill, Philippine Daily Inquirer, 21 22 23 June 3, 2008, LexisNexis News search, page not available. 越 南 積 極 打 造 地 区 性 軍 事 強 国 新 民 晩 報 (2008 年 5 月 22 日 ) http://big5. news365.com.cn:82/gate/big5/xinmin.news365.com.cn/jjlw/200805/t20080522_1881107.htm 中 国 南 海 - 越 占 南 威 島 鳥 瞰 飛 揚 軍 事 (2007 年 12 月 5 日 ) http://www. fyjs.cn/bbs/htm_data/169/0712/118466.html 越 南 在 南 沙 群 島 再 次 宣 示 主 権 掠 奪 石 油 天 然 気 資 源 中 国 網 (2007 年 6 月 15 日 ) http://big5.china.com.cn/news/txt/2007-06/15/content_8392017.htm -12-

2008 年 7.8.9 月 号 台 湾 の 南 シナ 海 南 沙 諸 島 太 平 島 における 滑 走 路 建 設 をめぐる 論 争 とその 政 策 的 含 意 震 作 業 協 力 の 枠 内 に 引 き 込 もうとしている 24 中 国 は 海 上 救 難 海 域 巡 回 海 上 油 流 出 事 故 の 演 習 や 海 洋 考 古 学 研 究 沈 没 船 引 上 げな どの 活 動 も 活 発 に 南 シナ 海 で 実 施 している 南 海 一 号 の 引 き 上 げ や 海 のシルクロード 博 物 館 建 設 などの 活 動 は 国 際 社 会 からも 注 目 されている 25 また 中 国 は 海 南 省 に 南 シナ 海 西 沙 中 沙 南 沙 の 三 大 諸 島 を 管 轄 する 三 沙 市 を 県 レベルの 行 政 単 位 として 設 置 することを 計 画 したが これにはベトナム 政 府 が 強 く 抗 議 した 上 ベトナムの 民 衆 が 街 頭 で 反 中 国 のデモ 行 進 を 行 なうという 珍 し い 事 態 に 発 展 した 26 ただ 国 際 社 会 が 現 在 最 も 注 目 しているのは 中 国 が 南 シナ 海 で 行 なう 軍 事 演 習 と 空 母 独 自 建 造 計 画 であり 延 い ては 空 母 艦 隊 で 本 格 的 海 軍 の 構 築 が 加 速 化 するかということに 集 中 しており 中 国 による 海 南 省 三 亜 での 地 下 核 潜 水 艦 基 地 建 設 に ついても 報 道 されている 27 上 述 の 南 シナ 海 情 勢 の 近 年 の 発 展 は 台 湾 が 太 平 島 に 滑 走 路 建 設 を 決 定 したことと 密 接 な 関 係 があり 今 後 の 台 湾 の 南 シナ 海 政 策 の 動 向 および 安 全 保 障 戦 略 配 置 に 影 響 を 与 える 24 25 26 27 Yann-huei Song, The Potential Marine Pollution Threat From Oil and Gas Development Activities in the Disputes South China Sea/ Spratly Area: A Role That Taiwan Can Play, Ocean Development and International Law, Vol. 39, 2008, pp. 150-177. 南 海 一 号 の 引 き 上 げおよび 海 のシルクロード 博 物 館 ( 南 海 一 号 博 物 館 ) 建 設 に 関 しては 特 に 国 際 的 な 注 目 を 浴 びている 海 上 絲 綢 之 路 博 物 館 百 度 百 科 2008 年 2 月 http://baike.baidu.com/history/id=3093785 参 照 南 海 一 号 水 晶 宮 首 次 実 施 海 水 灌 注 中 国 評 論 新 聞 網 (2008 年 3 月 26 日 ) http://www.chinareviewnews.com/ doc/1006/0/5/1/100605163.html?coluid=48&kindid=0&docid=100605163&mdate=0326165 127 South China Sea Flashpoint, Financial Times Information, Philippine Daily Inquirer, April 20, 2008, LexisNexis News search, page not available. 中 国 海 軍 三 亜 核 潜 艦 基 地 威 脅 南 海 均 勢 自 由 時 報 電 子 報 (2008 年 5 月 6 日 ) http://www.libertytimes.com.tw/2008/new/may/6/today-int4-13-

問 題 と 研 究 第 37 巻 3 号 三 太 平 島 の 地 理 的 位 置 と 戦 略 的 重 要 性 太 平 島 ( 別 名 黄 山 馬 礁 英 語 名 Itu Aba Island ベトナム 名 Dao Ba Binh)は サンゴ 礁 で 構 成 され 海 抜 が 低 く 平 地 で 東 西 全 長 約 1,289.3 メートル 南 北 全 長 約 365.7 メートルと 東 西 に 細 長 く 面 積 約 0.49 平 方 キロメートルの 島 である 北 緯 10 度 22 分 38 秒 東 経 114 度 21 分 59 秒 に 位 置 し 南 シナ 海 南 沙 諸 島 北 部 中 央 鄭 和 群 礁 の 西 北 南 シナ 海 の 西 側 航 路 の 東 側 に 位 置 している マラッカ 海 峡 の 東 口 であるシンガポールから 約 540 海 里 にあり その 地 理 的 位 置 は 戦 略 的 にも 重 要 で 太 平 洋 とインド 洋 の 要 であり 南 シナ 海 から 東 シナ 海 および 日 本 海 へと 抜 ける 海 上 交 通 路 である 軍 事 専 門 家 によ れば 太 平 島 の 位 置 は 台 湾 の 縦 深 戦 略 および 早 期 警 戒 戦 略 に 非 常 に 有 効 であるという 1939 年 日 本 軍 は 太 平 島 を 占 拠 し 長 島 と 改 名 高 雄 市 の 管 轄 化 に 置 いた その 後 日 本 軍 は 島 内 に 陸 戦 隊 気 象 情 報 部 隊 通 信 派 遣 部 隊 偵 察 機 部 隊 などを 駐 屯 させ 1944 年 には 潜 水 艦 基 地 を 設 置 した 1956 年 にわが 国 がフィリピンから 太 平 島 を 奪 還 してからは 海 兵 隊 が 駐 屯 した 2000 年 1 月 1 日 に 海 巡 署 が 設 立 されると 海 巡 署 が 太 平 島 を 管 轄 するようになった 現 在 行 政 単 位 としては 太 平 島 は 高 雄 市 旗 津 区 中 興 里 に 区 画 されている 高 雄 港 からは 約 1,600 キロメートルに 位 置 する 島 内 に 駐 在 する 海 巡 署 関 係 者 は 約 200 名 余 りである 28 28 太 平 島 ウィキペディアhttp://zh.wikipedia.org/ 参 照 ; 南 沙 太 平 島 簡 介 大 洋 網 (2008 年 1 月 21 日 ) http://59.42.241.184:82/gate/big5/news.dayoo.com/world/news/ 2008-01/21/content_3272488.htm; 南 沙 簡 介 行 政 院 海 巡 署 岸 総 局 南 部 地 区 巡 防 局 ウェ ブページ http://www.cga.gov.tw/south/taiping/index.asp; 張 廷 廷 太 平 機 場 的 地 縁 戦 略 価 値 中 国 時 報 時 論 広 場 (2008 年 2 月 4 日 ) A15 面 -14-

2008 年 7.8.9 月 号 台 湾 の 南 シナ 海 南 沙 諸 島 太 平 島 における 滑 走 路 建 設 をめぐる 論 争 とその 政 策 的 含 意 四 太 平 プロジェクト と 滑 走 路 建 設 政 策 の 考 察 1 太 平 プロジェクト 台 湾 政 府 による 太 平 島 の 滑 走 路 建 設 決 定 は 一 体 いつだったのであ ろうか 太 平 プロジェクト はいつ 作 成 されたのか 政 策 決 定 機 関 はどの 機 関 であったのか 陳 水 扁 総 統 個 人 のアイディアだったの か 或 いは 国 防 部 海 巡 署 国 家 安 全 会 議 ( 国 安 会 )など 政 府 関 連 機 関 の 提 案 に 総 統 がゴーサインを 出 したのだろうか 国 防 安 全 保 障 機 密 資 料 の 入 手 が 困 難 であることから 本 稿 では 報 道 機 関 による 報 道 と 収 集 可 能 な 関 連 資 料 の 分 析 に 基 づき 上 記 の 疑 問 点 の 解 明 を 試 みたい 内 政 部 部 長 余 政 憲 は 2003 年 8 月 に 太 平 島 を 視 察 している 台 北 に 戻 ると 行 政 院 南 海 小 組 会 議 を 招 集 し 南 沙 太 平 島 開 発 の 具 体 的 戦 略 について 討 論 を 行 なった 海 巡 署 も 行 政 院 長 游 錫 堃 の 指 示 で 太 平 島 周 辺 海 域 情 勢 について 全 面 的 な 評 価 を 行 っているが 同 時 に 太 平 島 に 滑 走 路 および 埠 頭 を 建 設 する 提 案 をしていたはずで ある 29 2005 年 には 南 シナ 海 戦 略 安 全 保 障 に 関 する 次 のような 出 来 事 が 発 生 しており 結 果 として 台 湾 による 太 平 島 での 滑 走 路 埠 頭 建 設 決 断 につながった 可 能 性 がある 同 年 5 月 末 内 政 部 は 国 安 会 に 書 状 で 南 海 小 組 の 業 務 を 引 き 継 ぐよう 依 頼 した 同 月 行 政 院 は 内 政 部 の 担 当 業 務 から 南 シナ 海 業 務 を 外 すことを 承 認 している 2005 年 6 月 中 旬 には 国 安 会 が 内 政 部 に 対 し 書 状 で 南 シナ 海 業 務 を 引 き 継 ぐことに 同 意 を 表 明 している 2005 年 8 月 中 旬 国 安 会 は 南 シナ 海 業 務 拡 大 を 決 定 し 東 シナ 海 と 西 太 平 洋 の 海 域 安 全 保 障 問 題 を 併 29 投 棋 布 勢 太 平 島 - 台 国 防 部 太 平 島 修 建 機 場 支 另 類 思 考 軍 事 文 摘 2006 年 3 期 http://info.51ca/digest/kj_js/2006/03/29/125596.shtml 参 照 -15-

問 題 と 研 究 第 37 巻 3 号 せて 海 域 情 勢 会 報 ( 報 告 会 議 ) を 設 立 することを 総 統 に 提 案 し 承 認 を 受 けた 30 これと 平 行 して 2005 年 3 月 中 国 は 反 分 裂 国 家 法 を 可 決 フィリピン ベトナムとの 間 で 南 シナ 海 交 渉 地 域 に おける 共 同 海 洋 地 震 作 業 合 意 を 締 結 している また 米 国 の 衛 星 が 収 集 した 情 報 から 中 国 が 海 南 省 南 部 で 潜 水 艦 基 地 に 関 わる 新 た な 工 事 を 進 めていること および 中 国 の 軍 艦 が 太 平 島 周 辺 海 域 に 出 現 していることが 判 明 している 同 時 期 には 台 湾 と 米 国 が 軍 備 調 達 に 関 して 潜 水 艦 と P-3C 対 潜 哨 戒 機 調 達 の 可 能 性 について 討 議 し ている 2005 年 7 月 台 湾 軍 関 係 高 層 部 は 南 シナ 海 の 戦 略 的 位 置 の 重 要 性 を 痛 感 し 今 後 地 域 内 に 石 油 ガス 資 源 を 巡 り 武 装 衝 突 が 発 生 す る 可 能 性 を 考 慮 した 上 で 中 国 が 南 シナ 海 で 徐 々に 軍 事 的 配 備 を 強 化 させ 南 シナ 海 の 海 上 通 路 の 制 圧 権 を 奪 取 し 東 沙 を 掌 握 し そ の 後 で 太 平 島 を 掌 握 する 作 戦 計 画 を 策 定 していると 察 知 した こ れに 対 し 駐 屯 する 台 湾 海 巡 署 の 持 つ 防 衛 装 備 が 薄 弱 であること また 台 湾 からの 距 離 が 遠 いこと 一 旦 襲 撃 されれば 増 援 が 困 難 なこ 30 海 域 情 勢 会 報 設 置 要 点 によると 国 安 会 秘 書 長 が 議 長 を 務 め 次 の 人 員 が 兼 任 の 形 で 出 席 した (1) 行 政 院 秘 書 長 (2) 内 政 部 部 長 (3) 外 交 部 部 長 (4) 国 防 部 部 長 (5) 交 通 部 部 長 (6) 経 済 部 部 長 (7) 行 政 院 海 岸 巡 防 署 署 長 (8) 行 政 院 大 陸 委 員 会 主 任 委 員 (9) 行 政 院 国 家 科 学 委 員 会 主 任 委 員 (10) 行 政 院 経 済 建 設 委 員 会 主 任 委 員 (11) 行 政 院 農 業 委 員 会 主 任 委 員 (12) 国 家 安 全 局 局 長 (13) 高 雄 市 市 長 (14) 会 報 幕 僚 工 作 会 議 議 長 報 告 会 議 の 任 務 と 管 轄 範 囲 は 東 シナ 海 海 域 南 シナ 海 海 域 および 西 太 平 洋 海 域 における 次 の 事 項 に 関 する 研 究 討 議 と された (1) 国 家 主 権 維 持 に 関 わる 事 項 (2) 周 辺 国 との 国 際 関 係 と 国 際 協 力 紛 争 に 関 わる 事 項 (3) 両 岸 関 係 に 関 わる 事 項 (4) 海 洋 戦 略 に 関 わる 事 項 (5) 海 上 安 全 保 障 空 間 に 関 わる 事 項 (6)その 他 関 連 事 項 報 告 会 議 は 原 則 として 3 カ 月 毎 に 開 催 され 必 要 に 応 じて 議 長 が 臨 時 会 議 を 招 集 することとした 海 域 情 勢 会 報 設 置 要 点 第 5 項 の 規 定 により 幕 僚 工 作 会 議 が 設 立 されたため 海 域 情 報 会 報 幕 僚 工 作 会 議 作 業 要 点 が 制 定 された -16-

2008 年 7.8.9 月 号 台 湾 の 南 シナ 海 南 沙 諸 島 太 平 島 における 滑 走 路 建 設 をめぐる 論 争 とその 政 策 的 含 意 とを 考 慮 し 太 平 島 を 固 守 する 能 力 を 強 化 し 島 内 の 兵 器 装 備 を 強 化 することを 決 め ひいては 改 めて 軍 を 駐 屯 させることまで 考 慮 し たのである 2005 年 下 半 期 には 国 防 部 が 太 平 プロジェクト を 提 案 し 国 安 会 がプロジェクトについて 協 調 会 議 を 招 集 している 最 終 的 には 国 安 会 の 主 席 即 ち 陳 水 扁 総 統 に 報 告 され 決 断 が 下 さ れた 陳 水 扁 が 2005 年 9 月 16 日 に 今 後 3 年 以 内 に 台 湾 最 南 端 の 太 平 島 に 上 陸 し 報 道 記 者 を 招 いて 歴 史 の 立 会 人 となる の 実 現 を 希 望 し また 必 ず 実 現 させると 明 言 した 31 のは あるいはこのこ とが 原 因 であったのかもしれない 2005 年 9 月 国 防 部 と 海 巡 署 は 太 平 プロジェクト の 執 行 に 着 手 担 当 者 を 太 平 島 に 派 遣 し 実 地 視 察 を 行 なっている いわゆる 太 平 プロジェクト は 太 平 島 に 全 長 約 1,150 メートル 幅 約 30 メートルの 飛 行 機 用 滑 走 路 とその 関 連 施 設 を 建 設 することであっ た 2005 年 10 月 と 11 月 には 陸 軍 第 6 軍 団 53 工 兵 群 工 3 営 官 兵 が 複 数 回 に 分 けて 太 平 島 に 移 動 し 滑 走 路 建 設 の 前 期 準 備 作 業 に 着 手 している 2005 年 11 月 中 旬 には 国 防 部 の 霍 守 業 前 副 部 長 が 船 で 太 平 島 に 向 かい 自 ら 太 平 プロジェクト の 執 行 状 況 を 視 察 してい る 32 その 後 2005 年 12 月 には 報 道 機 関 が 太 平 プロジェクト の 内 容 をスクープし 政 府 も 太 平 島 での 滑 走 路 建 設 の 起 工 を 認 めた 2 太 平 島 滑 走 路 建 設 理 由 2005 年 末 当 時 の 国 防 部 副 部 長 霍 守 業 が 滑 走 路 建 設 を 発 表 した 際 強 調 したのは 滑 走 路 は 民 間 および 人 道 支 援 目 的 であるとの 点 31 32 走 透 透 従 来 不 喊 累 陳 総 統 : 未 来 一 定 要 登 上 太 平 島 今 日 新 聞 (2005 年 9 月 16 日 ) http://www.ettoday.com/2005/09/16/10844-1845102.htm 投 棋 布 勢 太 平 島 -17-

問 題 と 研 究 第 37 巻 3 号 で 滑 走 路 は 短 すぎるため 戦 闘 機 の 離 着 陸 は 不 可 能 であり 軍 事 用 途 には 使 用 不 可 能 であるとした 33 海 巡 署 の 許 恵 佑 前 署 長 も 滑 走 建 設 の 出 発 点 は 人 道 的 考 慮 であるとし 医 療 救 援 日 用 品 補 給 運 送 な ど 海 岸 巡 視 任 務 の 必 要 に 応 えるもので 防 衛 とは 無 関 係 であると 語 った 但 し 近 接 する 中 国 マレーシアなどが 南 シナ 海 の 島 岩 礁 を 占 拠 し 始 め 空 港 建 設 も 進 められていることから 台 湾 も 太 平 島 に 飛 行 機 用 滑 走 路 を 建 設 する 必 要 性 は 確 かにあるとし 許 恵 佑 は 更 に 太 平 島 は 台 湾 から 861 海 里 の 距 離 にあり 駐 留 している 海 巡 署 関 係 者 は 200 人 余 りで 補 給 物 資 の 海 上 運 送 に 往 復 8 日 燃 料 費 用 は 4,000 万 台 湾 ドル 以 上 かかっており 太 平 島 にヘリコプター 発 着 施 設 はあるものの 太 平 島 までは 一 般 のヘリコプターの 飛 行 距 離 以 上 の 距 離 があるという 事 実 にも 触 れた これも 太 平 島 に 滑 走 路 を 建 設 した 理 由 の 一 つであろう 34 2006 年 1 月 初 頭 にも 外 交 部 がベト ナムの 抗 議 を 受 けて 太 平 島 の 滑 走 路 建 設 に 政 治 的 軍 事 的 意 図 は ないと 再 度 表 明 している 35 しかし 外 交 部 声 明 発 表 後 2 日 余 りしか 経 ずして 国 防 部 の 蔡 明 憲 前 副 部 長 が 立 法 院 国 防 委 員 会 の 答 弁 で 太 平 島 の 滑 走 路 建 設 には もちろん 戦 略 的 考 慮 があるとし 台 湾 海 峡 は 200 キロ 余 りしかな く 縦 深 戦 略 も 不 十 分 な 上 中 共 のミサイル 航 空 機 が 5 分 から 10 分 で 台 湾 に 到 達 できるという 状 況 で 縦 深 戦 略 を 拡 大 できれば 台 湾 にとって 有 効 である 戦 略 的 位 置 から 言 って 太 平 島 は 南 シナ 海 33 34 35 Taiwan to build airport in Spratlys for humanitarian purposes BBC Monitoring Asia Pacific Political, December 15, 2005, LexisNexis News search, page number not available. Taiwan plans to Build Airfield on Disputed S. China Sea Island, Asia Pulse, December 16, 2005, LexisNexis News search, page number not available. Taiwan renews claim over Spratlys, calls for talks to solve disputes, Xinhua Financial Network News, January 4, 2006, LexisNexis News search, page number not available. -18-

2008 年 7.8.9 月 号 台 湾 の 南 シナ 海 南 沙 諸 島 太 平 島 における 滑 走 路 建 設 をめぐる 論 争 とその 政 策 的 含 意 に 位 置 しており 南 シナ 海 が 航 空 機 船 舶 共 に 通 過 する 場 所 である ことから ここに 太 平 島 のような 拠 点 または 戦 略 地 点 を 持 つこと は 縦 深 戦 略 および 早 期 警 戒 戦 略 にとって 効 果 的 である 36 と 語 っ た 報 道 機 関 も 軍 部 が 太 平 島 に 滑 走 路 を 建 設 したのは 主 に 戦 略 的 要 因 で 救 援 や 補 給 物 資 輸 送 は 二 次 的 なものであり 国 際 的 な 南 シナ 海 問 題 の 交 渉 や 台 湾 が 将 来 的 に 南 シナ 海 海 域 に 潜 水 艦 奇 襲 地 区 2 カ 所 を 設 置 しようとしている 計 画 とも 関 連 している 37 と 伝 え た 上 記 以 外 の 理 由 としては 台 湾 軍 が 陳 水 扁 総 統 個 人 の 意 図 を 汲 も うとしたことが 指 摘 されている 2005 年 9 月 16 日 陳 水 扁 は 太 平 島 に 上 陸 することを 希 望 し またきっと 実 現 させると 公 開 の 場 で 明 言 した 38 この 理 由 については 部 分 的 に 関 連 はあっても 主 な 原 因 では ないだろう 軍 事 専 門 家 によると 太 平 島 滑 走 路 建 設 は 陳 水 扁 が 総 統 退 任 までに 太 平 島 を 視 察 したいという 願 望 を 汲 もうとしただけ では 決 してなく 台 湾 軍 部 が 南 シナ 海 における 軍 事 力 を 強 化 し 戦 略 拡 大 を 考 慮 したものであるという 総 統 は 三 軍 の 総 帥 であり 国 家 の 安 全 保 障 戦 略 政 策 および 太 平 島 滑 走 路 建 設 の 最 終 的 決 定 が 総 統 の 決 断 によるものであることから 前 述 したとおり 陳 水 扁 が 自 信 を 持 って 必 ず 太 平 島 に 上 陸 すると 公 開 の 場 で 発 言 したことから 政 府 として 国 家 安 全 保 障 戦 略 と 外 交 を 考 慮 した 上 で 太 平 島 滑 走 路 建 設 に 陳 水 扁 の 承 認 が 与 えられていたことは 明 らかである 36 37 38 MND admits strategic value of Spratly airstrip Taipei Times, January, 2006, 2. 国 軍 南 海 大 戦 略 規 画 潜 艦 伏 撃 区 中 国 時 報 (2006 年 1 月 5 日 ) 注 31 に 同 じ -19-

問 題 と 研 究 第 37 巻 3 号 五 生 態 破 壊 論 争 と 野 党 によるボイコット 1 生 態 破 壊 論 争 2005 年 末 の 報 道 によると 当 時 の 国 防 部 副 部 長 霍 守 業 は 政 府 が 太 平 島 滑 走 路 建 設 決 定 後 国 内 環 境 保 護 団 体 および 生 態 研 究 の 学 者 専 門 家 から 強 い 反 対 が 表 明 されたと 認 めている 環 境 保 護 団 体 は 島 内 の 原 生 樹 林 植 物 を 伐 採 して 滑 走 路 を 建 設 することに 強 く 反 対 した また 滑 走 路 が 砂 浜 に 食 い 込 む 形 で 建 設 されると 強 風 や 潮 の 作 用 で 砂 浜 が 大 量 に 流 失 し 滑 走 路 自 体 が 海 水 に 浸 食 される 危 険 性 を 指 摘 する 学 者 も 現 れた しかも 滑 走 路 の 安 全 を 保 証 する ためには 大 量 のコンクリート 消 波 堤 を 投 下 する 必 要 が 生 じ 結 果 として 砂 浜 が 更 に 大 きく 流 失 することになろうとも 指 摘 された そ の 他 にも 太 平 島 は 南 シナ 海 のアオウミガメの 最 も 重 要 な 産 卵 地 の 一 つであり 政 府 が 建 設 を 計 画 している 滑 走 路 先 端 がちょうど 太 平 島 でもウミガメ 産 卵 が 集 中 する 地 区 であるということも 指 摘 され た この 砂 浜 は 島 内 で 最 も 長 く 幅 の 広 い 砂 浜 であるため ウミガ メの 40-60%がここに 上 陸 して 産 卵 しており 滑 走 路 が 建 設 されれば ウミガメの 産 卵 場 所 がなくなり 結 果 としてウミガメの 重 要 な 生 息 地 が 地 球 上 から 消 失 するといわれた 39 環 境 保 護 団 体 と 学 者 専 門 家 は 政 府 が 法 律 に 基 づき 事 前 に 行 な うべき 環 境 影 響 評 価 を 行 なわず 生 態 に 多 大 な 影 響 を 及 ぼしたと 批 判 し 即 時 工 事 停 止 を 要 求 した 生 態 学 界 および 環 境 保 護 団 体 の 強 力 な 反 発 抗 議 により 立 法 院 は 滑 走 路 建 設 経 費 の 給 付 停 止 を 決 議 する 結 果 となったが 国 防 部 および 海 巡 署 は 生 態 破 壊 の 指 摘 に 対 39 程 一 駿 太 平 島 機 場 蓋 掉 緑 蠵 亀 棲 地 聯 合 報 (2006 年 12 月 19 日 ) http://www.udn.com/2006/12/19/news/opinion/x1/3653145.shtml -20-

2008 年 7.8.9 月 号 台 湾 の 南 シナ 海 南 沙 諸 島 太 平 島 における 滑 走 路 建 設 をめぐる 論 争 とその 政 策 的 含 意 し 反 駁 太 平 島 に 建 設 している 滑 走 路 は 元 来 島 内 に 存 在 した 幅 の 広 い 道 路 上 に 建 設 しているので 設 計 の 段 階 で 樹 木 が 生 い 茂 っている 地 域 を 回 避 しており 島 内 の 中 央 道 路 の 樹 木 の 比 較 的 まばらな 地 域 に 限 って 工 事 されていると 強 調 した 施 工 範 囲 も 全 島 のうち 11%に 過 ぎず ほとんどの 地 域 の 樹 木 はそのまま 手 付 かずだとも 強 調 し た また 道 路 拡 張 工 事 も 法 律 で 環 境 影 響 評 価 実 施 が 不 要 のもので あり 既 に 行 政 院 環 保 署 および 高 雄 市 政 府 環 保 局 により 審 査 認 定 されているとした 国 防 部 軍 事 報 道 官 は 施 工 前 に 樹 木 の 移 植 を 進 めており 施 工 期 間 中 も 施 工 部 隊 が 原 始 林 を 破 壊 しないよう ウミ ガメの 活 動 や 産 卵 地 の 砂 浜 に 影 響 を 与 えないよう 厳 格 に 管 理 してい ると 語 った 40 政 府 は 太 平 島 のウミガメ 保 護 のため 2007 年 3 月 漁 業 法 第 45 条 の 規 定 に 基 づき 太 平 島 ウミガメ 繁 殖 保 育 区 を 公 告 し た 41 また 施 工 および 生 活 廃 棄 物 に 関 しては 全 て 台 湾 本 島 に 持 ち 帰 って 処 理 するとした 更 に 国 防 部 は 工 事 再 開 計 画 に 環 境 保 護 お よび 復 元 工 事 予 算 を 計 上 し 島 内 の 植 被 率 向 上 と 砂 浜 および 原 生 植 林 への 影 響 低 下 のため 施 工 期 間 および 完 工 後 にこれを 行 うこと とした 42 という 国 防 部 が 太 平 島 滑 走 路 建 設 には 環 境 影 響 評 価 の 実 施 が 不 要 だとい うのは 果 たして 正 しいのかについては 環 境 影 響 評 估 法 43 軍 40 41 42 43 環 境 資 訊 中 心 国 防 部 : 太 平 島 工 程 絶 無 破 壊 生 態 中 央 社 (2006 年 8 月 21 日 台 北 発 ) http://e-info.org.tw/node/13347; 太 平 専 案 環 保 至 上 国 軍 悉 心 維 護 生 態 軍 事 新 聞 通 訊 社 (2008 年 2 月 2 日 ) http://mna.gpwb.gov.tw/mnanew/internet/news Detail.aspx?GUID=38247 環 境 資 訊 中 心 南 沙 太 平 島 成 立 海 亀 保 育 区 聨 合 報 (2007 年 3 月 10 日 高 雄 発 ) http://e-info.org.tw/node/20400 太 平 専 案 復 工 環 保 與 生 態 均 獲 善 維 護 軍 事 新 聞 通 訊 社 (2007 年 8 月 30 日 ) http://mna.gpwb.gov.tw/mnanew/internet/newsdetail.aspx?guid=35231 中 華 民 国 83 年 12 月 30 日 華 総 ( 一 ) 義 字 第 8156 号 例 制 定 公 布 全 文 32 条 民 国 83-21-

問 題 と 研 究 第 37 巻 3 号 事 秘 密 及 緊 急 性 国 防 工 程 環 境 影 響 評 估 作 業 弁 法 44 開 発 行 為 応 実 施 環 境 影 響 評 估 細 目 及 範 囲 認 定 標 準 45 という 関 連 規 定 に 示 されてい る 環 境 影 響 評 估 法 第 5 条 の 規 定 では 道 路 および 空 港 の 開 発 行 為 で 環 境 に 不 利 益 な 影 響 を 与 える 恐 れのある 場 合 環 境 影 響 評 価 を 実 施 することと 定 められ 併 せて 開 発 行 為 応 実 施 環 境 影 響 評 估 細 目 及 範 囲 認 定 標 準 でこれを 認 定 している 環 境 影 響 評 估 法 第 25 条 には 開 発 行 為 が 軍 事 機 密 および 緊 急 の 国 防 工 事 に 関 わるものの 場 合 その 環 境 影 響 評 価 に 関 わる 作 業 は 中 央 主 管 機 関 が 国 防 部 と 会 合 の 上 これを 別 途 定 める との 規 定 がある また 同 法 第 26 条 では 環 境 に 影 響 を 与 える 恐 れのある 政 府 の 政 策 について 環 境 影 響 評 価 に 関 わる 作 業 は 中 央 主 管 機 関 がこれを 別 途 定 める と 規 定 されている 軍 事 秘 密 及 緊 急 性 国 防 工 程 環 境 影 響 評 估 作 業 弁 法 第 5 条 によると 開 発 行 為 が 軍 事 機 密 または 緊 急 の 国 防 工 事 に 関 わ り 環 境 に 不 利 益 な 影 響 を 与 える 恐 れのある 場 合 環 境 影 響 評 価 を 実 施 することとする その 認 定 は 開 発 行 為 に 従 い 環 境 影 響 評 估 細 目 および 範 囲 認 定 標 準 にしたがって 処 理 する と 定 められてい る 開 発 行 為 応 実 施 環 境 影 響 評 估 細 目 及 範 囲 認 定 基 準 第 5 条 第 3 項 には 都 市 以 外 の 土 地 に 位 置 し 道 路 拡 幅 が 一 車 線 以 上 の 幅 に 達 し 道 路 延 長 が 10 キロ 以 上 に 達 する 場 合 環 境 影 響 評 価 を 実 施 する ことと 定 めている 政 府 は 太 平 島 で 空 港 を 建 設 するわけではなく 島 内 中 央 に 位 置 し 東 西 に 伸 びる 既 存 の 道 路 を 拡 幅 し 道 路 の 厚 さ 44 45 88 91 92 年 に 改 訂 行 政 院 環 境 保 護 署 91 年 1 月 31 日 環 署 綜 字 第 0910008156 号 令 国 防 部 91 年 1 月 31 日 鐸 錮 字 第 000160 号 令 署 名 により 全 文 10 条 を 制 定 発 布 中 華 民 国 84 年 10 月 17 日 (84) 環 署 綜 字 第 5406 号 令 制 定 発 布 民 国 86 87 89 90 91 93 95 年 に 改 訂 -22-

2008 年 7.8.9 月 号 台 湾 の 南 シナ 海 南 沙 諸 島 太 平 島 における 滑 走 路 建 設 をめぐる 論 争 とその 政 策 的 含 意 を 増 強 することで 平 時 には 歩 行 者 車 両 通 行 用 とし 緊 急 時 に 航 空 機 発 着 の 滑 走 路 に 転 用 できるようにするもので 道 路 延 長 も 1,200 メートルに 過 ぎなかった したがって 開 発 行 為 応 実 施 環 境 影 響 評 估 細 目 及 範 囲 認 定 標 準 第 5 条 の 規 定 に 基 づき 環 境 影 響 評 価 実 施 不 要 とされたのである とはいえ 前 述 の 通 り 国 防 部 は 施 工 期 間 中 施 工 部 隊 に 対 して 生 態 破 壊 を 厳 禁 し 工 事 再 開 計 画 に 環 境 保 護 及 復 元 工 程 予 算 を 組 み 込 み 将 来 も 生 態 復 元 保 護 作 業 を 行 なう と 公 約 した 生 態 保 育 政 策 という 観 点 からいえば 太 平 島 の 滑 走 路 建 設 工 事 が 島 内 の 原 始 林 や 植 物 ひいてはアオウミガメなどに 一 定 の 影 響 を 与 えることは 確 かだが その 程 度 はどの 程 度 なのか また 将 来 的 に 復 元 と 保 護 は 可 能 なのか そしてそのために 必 要 な 方 法 や 時 間 については 今 後 の 追 跡 調 査 研 究 が 待 たれる 部 分 である 但 し 法 律 的 観 点 から 分 析 するとすれば 法 律 により 環 境 影 響 評 価 実 施 は 不 要 とする 国 防 部 の 立 場 は 根 拠 のあるものだと 言 えよう 2 野 党 による 反 対 とボイコット 立 法 院 における 泛 藍 政 党 の 立 法 委 員 は 陳 水 扁 政 権 が 太 平 島 に 滑 走 路 建 設 を 決 定 したことに 対 して 疑 問 視 し ボイコットひいては 反 対 の 態 度 を 示 した 中 国 国 民 党 の 蘇 起 議 員 は 陳 水 扁 総 統 が 報 道 関 係 者 を 伴 って 南 沙 諸 島 に 行 くと 2005 年 9 月 に 明 示 したからこそ 軍 部 が 空 港 を 建 設 しようとしたのであるとし 南 シナ 海 の 戦 略 政 治 的 含 意 は 非 常 に 微 妙 な 意 味 合 いがあり 空 港 建 設 という 行 為 は 国 際 紛 争 を 誘 発 しかねないことから 南 沙 諸 島 に 空 港 を 建 設 すること は 自 ら 紛 争 を 招 く ようなもので アジア 太 平 洋 地 域 の 安 定 と 平 和 にとって 不 利 であると 捉 え 太 平 島 に 航 空 機 用 滑 走 路 を 建 設 する -23-

問 題 と 研 究 第 37 巻 3 号 ことに 反 対 を 表 明 した 46 国 民 党 所 属 の 頼 士 葆 議 員 も 当 時 の 南 沙 情 勢 は 特 殊 な 状 態 で 各 国 間 の 論 争 が 多 発 し 一 種 の 火 薬 庫 のよ うなものであることから 国 際 情 勢 に 鑑 み 空 港 建 設 には 特 に 慎 重 でなければならないとした 47 また 政 府 の 財 源 と 行 政 準 備 金 を 支 出 することの 正 当 性 合 法 性 について 疑 問 視 する 議 員 もいた 2005 年 末 当 時 の 国 防 部 部 長 李 傑 は 秘 密 裏 に 予 備 金 を 流 用 し 正 常 な 予 算 編 成 手 続 をとらなかったため 立 法 院 に 経 費 を 凍 結 された 48 その 結 果 太 平 島 の 滑 走 路 建 設 工 事 は 停 止 せざるを 得 ない 事 態 となった 2007 年 8 月 政 府 は 2007 年 度 予 備 金 支 出 により 2007 年 末 までに 太 平 島 滑 走 路 建 設 工 事 を 完 了 させると 発 表 し 同 年 9 月 太 平 島 の 滑 走 路 工 事 は 再 開 される 2007 年 11 月 上 旬 国 防 部 部 長 李 天 羽 は 完 成 間 近 の 太 平 島 航 空 機 用 滑 走 路 工 事 を 視 察 し 南 沙 諸 島 周 辺 の 各 国 が 南 シナ 海 海 域 で 占 有 している 島 岩 礁 で 空 港 滑 走 路 を 建 設 していることに 触 れ 台 湾 も 今 しなければ 将 来 必 ず 後 悔 するだ ろう と 語 った また 李 天 羽 は 太 平 島 滑 走 路 建 設 工 事 が 島 内 の 自 然 生 態 に 影 響 を 与 えることはないと 強 調 し 将 来 も 太 平 島 は 依 然 と して 南 沙 諸 島 の 海 上 に 浮 かぶ 一 粒 の 真 珠 として 存 在 するであろう と 語 った 49 国 防 部 が 太 平 島 滑 走 路 建 設 工 事 を 再 開 し かつ 2007 年 末 前 完 工 と 46 47 48 49 詭 譎 南 海 風 雲 下 的 太 平 専 案 南 方 快 報 ( 2005 年 12 月 16 日 ) http://w1.southnews.com.tw/snews/specil_coul/sea/01/0269.htm 台 湾 軍 方 擬 在 南 沙 蓋 機 場 立 委 指 応 謹 慎 中 国 評 論 新 聞 網 (2005 年 12 月 15 日 ) http://www.zhaojun.net/crn-webapp/doc/docdetailcnml.jsp?coluid=4&kindid=19& docid=100072639 総 予 算 表 決 / 軍 購 三 項 権 数 封 殺 南 沙 機 場 要 補 提 予 算 今 日 新 聞 (2006 年 1 月 12 日 ) http://www.nownews.com/2006/01/12/10844-1893402.htm 台 湾 在 南 沙 太 平 島 修 建 跑 道 将 完 工 大 紀 元 ( 2007 年 11 月 7 日 ) http://news.epochtimes.com/b5/7/11/7/n1894171.htm -24-

2008 年 7.8.9 月 号 台 湾 の 南 シナ 海 南 沙 諸 島 太 平 島 における 滑 走 路 建 設 をめぐる 論 争 とその 政 策 的 含 意 工 事 を 加 速 化 させたことは 主 に 陳 水 扁 総 統 が 太 平 島 を 訪 れ 滑 走 路 完 工 使 用 開 始 式 典 のテープカットという 卒 業 旅 行 を 実 現 する ためだと 国 民 党 系 の 立 法 委 員 から 批 判 された 国 民 党 所 属 の 林 郁 方 議 員 からは 太 平 島 滑 走 路 建 設 工 事 予 算 は 可 決 されていないことか ら 国 防 部 が 予 備 金 を 支 出 したのは 違 法 であるという 指 摘 も 行 なわ れた やはり 国 民 党 所 属 の 廖 婉 汝 議 員 も 太 平 島 滑 走 路 建 設 工 事 に 反 対 し 軍 部 が 完 工 を 前 倒 しないよう 希 望 し 陳 水 扁 がテープカッ トできないようにしようとした 50 立 法 院 では 国 民 党 系 の 立 法 委 員 の 反 対 に 直 面 したが 陳 水 扁 政 権 は 太 平 島 滑 走 路 建 設 工 事 早 期 完 工 を 堅 持 したのであった 六 滑 走 路 完 工 使 用 開 始 陳 水 扁 上 陸 視 察 と 南 沙 提 案 発 言 太 平 島 の 滑 走 路 完 工 は 2007 年 12 月 から 2008 年 1 月 の 間 であった と 考 えられる この 時 期 報 道 機 関 も 陳 水 扁 総 統 が 軍 用 機 で 太 平 島 視 察 を 行 い 台 湾 が 南 沙 の 主 権 を 有 することを 発 表 すると 報 じ 始 めた 51 2008 年 1 月 21 日 台 湾 空 軍 の C-130 輸 送 機 が 秘 密 裏 に 初 の 太 平 島 着 陸 に 成 功 し 同 日 台 湾 に 帰 還 している 52 出 発 前 台 湾 国 内 には 様 々な 意 見 や 批 評 が 出 現 したが 2008 年 2 月 2 日 陳 水 扁 は 1318 号 空 軍 C-130 輸 送 機 で 太 平 島 に 到 着 空 港 落 成 使 用 開 始 式 典 を 主 催 して 駐 留 する 軍 関 係 者 を 慰 問 し 南 沙 提 案 を 発 表 し 将 来 の 台 湾 50 51 52 台 軍 欲 建 機 場 譲 陳 水 扁 畢 業 旅 行 遭 民 代 質 疑 中 国 台 湾 網 (2007 年 10 月 8 日 ) http://news.tom.com/2007-10-08/oi2b/36147172.html; 太 平 島 機 場 復 工 立 委 批 軍 方 偸 跑 自 由 時 報 (2007 年 8 月 31 日 )A3 面 扁 将 登 南 沙 宣 示 主 権 聯 合 報 (2008 年 1 月 20 日 )A2 面 宣 示 主 権 我 運 輸 機 密 降 南 沙 聯 合 報 (2008 年 1 月 23 日 )A13 面 -25-

問 題 と 研 究 第 37 巻 3 号 の 南 シナ 海 政 策 の 発 展 の 青 写 真 を 描 いて 見 せた 53 歴 史 の 証 人 として 同 行 させる 報 道 関 係 者 がそれほど 多 かったわけではなかったもの の 陳 水 扁 本 人 にとっては 2005 年 9 月 に 行 なった 太 平 島 に 上 陸 する という 政 治 的 公 約 を 実 現 させた 形 となった また 総 統 の 上 陸 が 春 節 5 日 前 で 3 月 の 総 統 選 まで 50 日 というタイミングだったため 民 進 党 総 統 候 補 謝 長 廷 に 同 行 を 求 めず 選 挙 政 治 を 煽 る 目 的 だと いう 嫌 疑 を 弱 めることにもなった 歴 史 という 観 点 から 見 れば 陳 水 扁 は 確 かに 台 湾 で 人 が 駐 留 する 最 南 端 の 領 土 太 平 島 に 上 陸 した 初 の 中 華 民 国 三 軍 総 帥 であり 総 統 となり 重 要 な 象 徴 的 意 義 があっ た 政 策 面 を 見 た 場 合 陳 水 扁 が 島 内 で 南 シナ 海 の 島 嶼 に 関 する 主 権 と 政 策 を 発 表 し 台 湾 の 南 シナ 海 政 策 の 発 展 に 関 する 南 沙 提 案 を 提 唱 したことが 南 シナ 海 資 源 開 発 および 地 域 協 力 南 シナ 海 生 態 環 境 保 護 南 シナ 海 地 域 全 体 の 今 後 の 平 和 と 安 定 にどのような 影 響 を 与 えるかは 今 後 更 に 細 かく 観 察 するに 値 するポイントであろ う 陳 水 扁 が 滑 走 路 使 用 開 始 式 典 で 行 なったスピーチでは まず 台 湾 が 太 平 島 の 領 土 主 権 を 有 することに 触 れ 次 のように 語 った 太 平 島 はわが 国 固 有 の 領 土 であり 1946 年 12 月 12 日 太 平 艦 が 占 有 して 太 平 島 と 命 名 して 以 来 終 始 国 軍 および 海 巡 署 の 諸 君 が 駐 留 してきた また 気 象 救 難 生 態 観 測 施 設 を 次 々と 設 置 し 実 効 占 有 と 実 質 管 轄 は 半 世 紀 の 長 きに 渡 っている 行 政 管 理 面 では 太 平 島 は 高 雄 市 旗 津 区 中 興 里 に 属 し 昨 年 3 月 には 高 雄 市 政 府 海 洋 局 が 漁 業 法 第 45 条 の 規 定 に 基 づき 太 平 島 のウミガメ 繁 殖 保 育 地 域 として 画 定 し 公 告 を 行 なった したがって 台 湾 が 太 平 島 の 主 権 を 有 していることに 疑 義 はなく 今 後 も 駐 留 する 海 巡 署 の 53 扁 視 察 南 沙 太 平 島 自 由 時 報 (2008 年 2 月 3 日 )A1 面 -26-

2008 年 7.8.9 月 号 台 湾 の 南 シナ 海 南 沙 諸 島 太 平 島 における 滑 走 路 建 設 をめぐる 論 争 とその 政 策 的 含 意 ハード 面 ソフト 面 での 設 備 強 化 を 継 続 し 海 巡 署 現 場 勤 務 と 海 域 安 全 保 障 維 持 のレベルを 向 上 させると 共 に 国 防 部 が 積 極 的 に 海 巡 署 と 協 力 し 共 同 でわが 国 海 上 境 界 線 と 領 土 の 完 全 性 を 防 衛 すると いう 重 大 任 務 を 担 っていくようにする 54 しかし 陳 水 扁 は 台 湾 がこれまで 主 張 してきた 南 シナ 海 の 東 沙 西 沙 中 沙 南 沙 諸 島 全 部 の 領 土 主 権 については 触 れず 発 言 が 南 沙 諸 島 最 大 の 島 である 太 平 島 だけに 限 定 された また 陳 水 扁 は 台 湾 が 滑 走 路 建 設 を 決 断 した 過 程 における 安 全 保 障 戦 略 の 考 慮 という ことについては 全 く 触 れず むしろ 交 通 人 道 救 援 環 境 保 護 の 必 要 性 を 強 調 したが これは 南 シナ 海 の 主 権 を 主 張 する 他 国 の 不 安 と 反 対 を 打 ち 消 すことを 意 図 したもので 同 時 に 台 湾 国 内 の 環 境 保 護 派 による 太 平 島 生 態 破 壊 への 抗 議 と 憂 慮 に 応 え 南 沙 提 案 にも 即 したものであった 外 交 的 には 陳 水 扁 のスピーチで 特 に 台 湾 が 南 シナ 海 問 題 の 対 話 安 全 保 障 メカニズムから 排 除 されているという 不 公 平 な 現 状 に 触 れ 南 シナ 海 における 関 係 国 の 行 動 に 関 する 宣 言 南 シナ 海 交 渉 地 域 における 共 同 海 洋 地 震 作 業 合 意 への 調 印 参 加 や 地 域 内 の 各 種 安 全 保 障 協 力 対 話 メカニズムにも 参 加 できな いため 台 湾 の 南 シナ 海 における 権 益 が 深 刻 な 侵 害 を 受 けていると 指 摘 した したがって 陳 水 扁 は 次 の 点 を 協 調 した このように 複 雑 かつ 微 妙 な 領 土 主 権 の 論 争 に 対 して 台 湾 は 南 シナ 海 の 一 当 事 国 としてここに 周 辺 各 国 が 国 連 憲 章 と 国 連 海 洋 法 条 約 に 基 づき 平 和 的 に 南 シナ 海 紛 争 を 解 決 するよう 呼 びか ける 同 時 に 台 湾 は 主 権 平 等 という 基 礎 に 立 ち 南 シナ 海 におけ 54 総 統 視 導 南 彊 海 域 踏 上 太 平 島 在 太 平 島 機 場 啓 用 典 礼 致 詞 中 華 民 国 ( 台 湾 ) 総 統 府 総 統 講 祝 詞 致 詞 内 容 全 文 (2008 年 2 月 2 日 ) http://www.president.gov.tw/ php-bin/pres/showspeak.php4?_section=4&_recno=7-27-

問 題 と 研 究 第 37 巻 3 号 る 関 係 国 の 行 動 に 関 する 宣 言 の 内 容 を 受 け 入 れ 南 シナ 海 の 国 際 水 路 の 順 調 な 通 航 と 安 全 を 確 保 し 将 来 的 には 南 シナ 海 における 行 動 指 針 の 制 定 に 参 加 し 南 シナ 海 の 安 全 と 安 定 が 早 期 実 現 する ことを 期 待 している 55 最 後 に 陳 水 扁 は 南 シナ 海 問 題 の 将 来 の 処 理 方 法 について 環 境 保 護 を 主 権 論 争 に 生 態 存 続 を 資 源 搾 取 に 置 き 換 える ことを 提 唱 した 具 体 的 には 次 の 4 点 を 台 湾 の 南 沙 提 案 として 提 唱 した 第 一 台 湾 は 南 シナ 海 における 関 係 国 の 行 動 に 関 する 宣 言 が 掲 げる 精 神 と 原 則 を 受 け 入 れ 平 和 的 方 法 による 領 土 管 轄 権 論 争 の 解 決 を 堅 持 する 第 二 南 シナ 海 の 開 発 は 環 境 生 態 の 保 護 育 成 を 優 先 させ 中 でも 世 界 温 暖 化 と 海 面 上 昇 が 南 シナ 海 の 島 や 岩 礁 の 永 続 に 与 える 脅 威 を 直 視 するべきである 台 湾 は 関 係 各 国 が 南 シナ 海 を 海 洋 生 態 保 護 育 成 区 域 として 画 定 し 海 洋 資 源 搾 取 停 止 を 優 先 的 に 考 慮 するようここに 呼 びかける 第 三 国 際 的 な 生 態 学 研 究 者 および 環 境 保 護 団 体 を 招 聘 し 定 期 的 に 東 沙 環 礁 太 平 島 および 中 洲 礁 における 研 究 調 査 を 行 な えるよう 開 放 する 第 四 微 妙 な 主 権 問 題 が 各 国 の 南 シナ 海 地 域 における 協 力 を 阻 害 す ることを 回 避 し 民 間 団 体 として 南 シナ 海 研 究 センター を 設 置 し 定 期 的 に 国 際 シンポジウムを 開 催 し セカンドト ラックによる 接 触 を 試 み 南 シナ 海 の 不 安 定 な 情 勢 の 積 極 的 な 緩 和 を 図 るよう 奨 励 する 56 55 56 総 統 視 導 南 彊 海 域 踏 上 太 平 島 在 太 平 島 機 場 啓 用 典 礼 致 詞 総 統 視 導 南 彊 海 域 踏 上 太 平 島 在 太 平 島 機 場 啓 用 典 礼 致 詞 -28-

2008 年 7.8.9 月 号 台 湾 の 南 シナ 海 南 沙 諸 島 太 平 島 における 滑 走 路 建 設 をめぐる 論 争 とその 政 策 的 含 意 これに 続 き 陳 水 扁 は 2008 年 2 月 10 日 に 東 沙 島 を 視 察 した 際 に も 南 沙 提 案 を 再 度 提 唱 し 平 和 生 態 協 力 こそが 南 シナ 海 共 同 の 未 来 であると 強 調 した また 関 係 各 国 が 南 シナ 海 を 海 洋 生 態 保 護 育 成 区 域 として 画 定 することを 呼 びかけ 東 沙 環 礁 国 家 公 園 設 立 は 正 に 台 湾 が 率 先 してこれを 実 行 していることを 示 す 第 一 歩 であると 指 摘 した 57 七 南 シナ 海 島 嶼 の 主 権 主 張 国 による 台 湾 の 太 平 島 空 港 建 設 と 南 沙 提 案 提 唱 に 対 する 反 応 台 湾 が 太 平 島 に 滑 走 路 を 建 設 し 陳 水 扁 が 上 陸 視 察 したことに 対 して マレーシア ブルネイ 両 国 は 公 式 声 明 や 抗 議 声 明 を 発 表 し なかったが これは 太 平 島 が 両 国 の 主 張 する 南 沙 諸 島 の 島 嶼 範 囲 外 に 位 置 し 微 妙 な 領 土 主 権 問 題 に 直 接 的 には 関 わらなかったことが 原 因 であろう しかし 南 沙 諸 島 の 主 権 主 張 国 の 他 の 3 カ 国 につい ては 中 国 の 立 場 は 微 妙 だったが ベトナムが 最 も 強 硬 な 態 度 を 示 し フィリピンは 相 対 的 に 控 えめだった 中 国 にとっては 台 湾 を 自 国 の 領 土 の 一 部 分 としているため 台 湾 が 主 権 を 主 張 する 領 土 に 滑 走 路 を 建 設 することに 反 対 を 表 明 すれ ば 南 沙 諸 島 に 主 権 を 有 するという 自 身 の 主 張 に 不 利 である また 中 国 は 自 身 が 太 平 島 問 題 で 態 度 を 表 明 することで 陳 水 扁 が 意 図 している 南 シナ 海 主 権 問 題 の 選 挙 争 点 化 という 思 惑 にはまるまいと していた 58 それに 加 え 中 国 の 政 策 的 思 考 としては 中 台 が 将 来 統 57 58 総 統 視 導 東 沙 導 致 詞 中 華 民 国 ( 台 湾 ) 総 統 府 総 統 講 祝 詞 致 詞 内 容 全 文 (2008 年 2 月 10 日 ) 総 統 抵 東 沙 向 官 兵 賀 節 籲 各 国 重 視 南 海 生 態 軍 事 新 聞 通 訊 社 (2008 年 2 月 10 日 ) http://mna.gpwb.gov.tw/mnanew/internet/newsdetail.aspx?guid= 38387 国 防 部 前 副 部 長 を 務 めた 淡 江 大 学 戦 略 研 究 所 の 林 中 斌 教 授 およびカナダ 漢 和 情 報 -29-

問 題 と 研 究 第 37 巻 3 号 一 されれば 太 平 島 の 滑 走 路 を 中 国 の 掌 握 する 南 シナ 海 西 沙 諸 島 永 興 島 の 空 港 と 連 結 させることができ 中 国 の 縦 深 戦 略 が 南 シナ 海 南 部 まで 拡 大 される 上 南 シナ 海 の 重 要 な 海 上 航 路 と 航 空 路 を 掌 握 することにもなるということであったろう 中 国 は 台 湾 のアクショ ンが 南 シナ 海 情 勢 の 緊 迫 化 させることを 憂 慮 したではあろうが 台 湾 が 島 内 に 滑 走 路 を 建 設 することは 自 身 の 南 シナ 海 の 島 嶼 に 対 する 主 権 主 張 に 符 合 し かつ 東 南 アジア 諸 国 を 陳 水 扁 の 主 張 する 国 連 加 盟 住 民 投 票 に 反 対 するという 点 で 中 国 側 に 引 き 込 むことができると いう 思 惑 が 働 き 陳 総 統 による 太 平 島 上 陸 視 察 には 冷 静 な 態 度 を 取 った ベトナムは 南 沙 諸 島 主 権 主 張 国 の 中 で 最 も 対 応 が 難 しく しかも 潜 在 的 脅 威 も 最 大 の 国 である 太 平 島 は 鄭 和 群 礁 の 中 に 位 置 してい るが 南 薫 礁 は 中 国 が 占 有 し 太 平 島 と 中 洲 礁 は 台 湾 が 占 有 してい るのを 除 けば 太 平 島 の 四 方 を 囲 む 敦 謙 沙 洲 舶 蘭 礁 安 達 礁 鴻 麻 島 は 全 てベトナムが 占 有 している 2005 年 末 に 台 湾 が 太 平 島 に 滑 走 路 を 建 設 すると 報 道 されて 以 来 ベトナムは 一 貫 して 公 式 に 強 硬 な 立 場 を 表 明 しており 台 湾 がベトナムの 領 土 主 権 を 侵 犯 している と 認 識 し 即 時 工 事 停 止 を 要 求 してきた 59 2008 年 2 月 3 日 には 59 評 論 Andrei Pinkov 編 集 長 も 同 様 の 見 方 を 示 している 越 馬 恐 抗 議 中 共 会 冷 処 理 聯 合 報 (2008 年 1 月 20 日 )A2 面 Vietnam says sovereignty violated by Taiwan runway construction, BBC Monitoring Asia Pacific Political, December 30, 2005, LexisNexis News search, page number not available; Taiwan Asked to Stop Work on Vietnam s Ba Binh Island Runway, Financial Times Information, Thai Press Reports, January 4, 2006, LexisNexis News search, page number not available.; Vietnam protests Taiwan s plan to build infrastructure on Ba Binh Island, The Spokesman of Ministry of Foreign Affairs Le Dzung Answers Question on 14 th September 2007, Spokesman s Statement, Ministry of Foreign affairs, Vietnam, September 20, 2007, available at: http://www.mofa.gov.vn/en/tt_baochi/pbnfn/ns070914091401; Philippines, -30-

2008 年 7.8.9 月 号 台 湾 の 南 シナ 海 南 沙 諸 島 太 平 島 における 滑 走 路 建 設 をめぐる 論 争 とその 政 策 的 含 意 ベトナム 政 府 が 陳 水 扁 総 統 の 太 平 島 視 察 について 抗 議 し 外 交 部 報 道 官 黎 勇 が この 度 の 行 動 は 対 立 を 急 速 に 悪 化 させるものであ り ベトナムの 南 沙 諸 島 における 主 権 を 侵 犯 するもので 地 域 情 勢 を 緊 張 させ 複 雑 化 させるものである 台 湾 はこれにより 引 き 起 こ される 事 態 の 責 任 の 一 切 を 負 うべきである ベトナム 政 府 はこの 地 域 における 侵 犯 行 為 を 即 時 停 止 するよう 台 湾 に 求 める 60 と 発 言 し た フィリピンは 台 湾 による 太 平 島 での 滑 走 路 建 設 と 陳 水 扁 総 統 の 太 平 島 上 陸 視 察 について 直 接 的 な 評 価 は 避 けたが 公 式 声 明 および 台 湾 軍 機 によるフィリピンの 飛 行 情 報 区 通 過 に 同 意 した 事 実 から フィリピンの 抗 議 反 対 の 度 合 いは 強 硬 ではないと 考 えられる 陳 水 扁 総 統 による 太 平 島 視 察 の 一 件 について フィリピン 外 相 は 無 責 任 な 政 治 的 見 世 物 であるとし 南 シナ 海 周 辺 国 が 2002 年 に 調 印 し た 南 シナ 海 における 関 係 国 の 行 動 に 関 する 宣 言 に 基 づき 行 なっ ている 南 シナ 海 の 平 和 と 安 定 を 維 持 するための 共 同 努 力 に 抵 触 する ものだと 解 釈 している 61 フィリピン 国 防 相 も 国 家 元 首 が 太 平 島 に 上 陸 したことには 重 要 な 意 義 があり 台 湾 が 島 嶼 の 主 権 主 張 を 強 化 したという 意 味 であると 指 摘 し 陳 水 扁 総 統 が 太 平 島 上 陸 視 察 を 行 60 61 Vietnam concerned over Taiwan s moves on disputed isles, leader visit, BBC Monitoring Asia Pacific Political, January 30, 2008, LexisNexis News search, page number not available. 越 南 抗 議 対 立 升 高 聯 合 報 (2008 年 2 月 4 日 )A4 面 ; Spratlys row heats up after Chen visit, The Standard, February 4, 2008, available at: http://www.thestandard.com. hk/news_detail.asp?we_cat=3&art_id=61101&sid=17428987&con_type=1&d_str=20080204 &fc=1. Manila says Taiwan leader s Spratly trip irresponsible political posturing, BBC Monitoring Asia Pacific Political, February 3, 2008, LexisNexis News search, page number not available. -31-

問 題 と 研 究 第 37 巻 3 号 なったことは 南 シナ 海 の 行 動 指 針 に 違 反 すると 語 った しかし 現 実 には 台 湾 は 南 シナ 海 における 関 係 国 の 行 動 に 関 する 宣 言 調 印 から 排 除 されているだけでなく 他 の 南 沙 諸 島 主 権 主 張 国 と 2 国 間 の 南 シナ 海 における 行 動 指 針 を 締 結 したこともない フィリピン 陸 軍 参 謀 総 長 は フィリピンは 論 争 となっている 地 域 である 南 沙 諸 島 に 部 隊 を 増 派 する 計 画 はないが 南 沙 の 監 視 は 強 化 すると 語 った 62 が その 一 方 でフィリピンの 駐 台 商 務 代 表 はフィリピン 台 湾 間 の 経 済 回 廊 (Economic Corridor) 交 渉 が 既 に 最 終 段 階 に 入 ったと 語 っ ている すなわち フィリピン 政 府 が 陳 水 扁 の 太 平 島 上 陸 視 察 に 強 い 関 心 を 表 明 したにも 拘 らず 台 湾 との 関 係 強 化 を 継 続 するとした ことは 注 目 に 値 しよう 63 2008 年 5 月 下 旬 台 湾 国 防 部 部 長 蔡 明 憲 が 立 法 院 国 防 委 員 会 を 伴 って 南 シナ 海 太 平 島 を 視 察 するという 報 道 が 行 なわれると 国 内 で 視 察 のタイミングについて 論 争 となりはしたが 台 湾 の 軍 事 戦 略 防 衛 という 観 点 から 立 法 院 国 防 委 員 会 の 委 員 は 確 かに 視 察 の 必 要 があると 認 定 した しかし 天 候 およびその 他 政 治 外 交 問 題 が 原 因 となって 視 察 日 程 は 取 りやめとなった 64 とはいえ 南 シナ 海 の 他 の 主 権 主 張 国 がこの 視 察 計 画 に 対 してどのように 反 応 したかに 注 目 62 DND: No need to tighten Spratly security, ABS-CBN News, February 4, 2004, available at: 63 64 http://www.abs-cbnnews.com/storypage.aspx?storyid=107957; Philippine Military Chief Says Boosted Surveillance of Spratlys Needed, Financial Times Information, BBC Monitoring International Reports, February 5, 2008, LexisNexis News search, page number not available. Philippine envoy reaffirms close partnership with Taiwan amid isle dispute, BBC Monitoring Asia Pacific Political, February 3, 2008, LexisNexis News search, page number not available. Taiwan defence minister s Taiping island visit cancelled over weather, BBC Monitoring Asia-Pacific Political, May 5, 2008, LexisNexis News Search, page number unavailable. -32-

2008 年 7.8.9 月 号 台 湾 の 南 シナ 海 南 沙 諸 島 太 平 島 における 滑 走 路 建 設 をめぐる 論 争 とその 政 策 的 含 意 する 必 要 はあろう ベトナムは 台 湾 国 防 部 長 による 太 平 島 (ベトナム 語 では Ba Binh Island) 視 察 について 強 硬 な 反 対 を 表 明 した 5 月 5 日 ベトナム 外 交 部 報 道 官 は 西 沙 および 南 沙 諸 島 の 主 権 を 再 度 強 調 した 上 で 台 湾 が 視 察 を 取 りやめるよう 強 く 求 めた 65 フィリピンでは 南 沙 諸 島 の 主 権 問 題 が 国 内 政 治 的 に 持 つ 微 妙 さから 国 会 下 院 で 領 海 基 線 法 の 草 案 が 提 出 された 南 シナ 海 交 渉 地 域 における 三 者 共 同 海 洋 地 震 作 業 合 意 が 誘 発 した 国 内 憲 政 論 議 および 領 土 主 権 論 議 などがあ り フィリピンも 他 の 主 権 主 張 国 が 南 沙 諸 島 で 行 なう 活 動 により 大 きな 注 意 を 示 すようになったため フィリピンの 反 応 も 従 前 以 上 に 強 いものとなった フィリピン 上 院 外 交 委 員 会 のミリアム ディフ ェンソール サンチャゴ 委 員 長 は 台 湾 の 国 防 部 長 による 南 シナ 海 太 平 島 視 察 は 挑 発 的 な 行 為 であり マニラ 駐 台 北 経 済 文 化 弁 事 処 を 通 じて 台 湾 政 府 に 抗 議 を 申 し 立 てた サンチャゴ 上 院 議 員 は フィ リピン 国 防 相 および 参 謀 総 長 が 台 湾 側 の 同 レベルの 閣 僚 とこの 件 に ついて 対 話 を 行 なうべきであると 提 議 し 台 湾 は 2002 年 11 月 に 中 国 と ASEAN が 調 印 した 南 シナ 海 における 関 係 国 の 行 動 に 関 する 宣 言 の 調 印 国 ではないものの この 宣 言 に 基 づき 当 該 地 域 で 発 展 し た 慣 習 国 際 法 は 台 湾 も 遵 守 すべきであると 指 摘 した サンチャゴ 上 院 議 員 も 台 湾 国 防 部 長 による 太 平 島 視 察 計 画 は 南 シナ 海 におけ る 関 係 国 の 行 動 に 関 する 宣 言 違 反 となると 解 釈 したのである 66 ベ 65 66 Politics & Law, Vietnam Calls on Taiwanese Army Official to Stop Visit to Spratlys, Financial Times Information, Vietnam News Brief, May 6, 2008, LexisNexis News Search, page number unavailable; Vietnam Reaffirms Sovereignty over Truong Sa, Hoang Sa Islands, Financial Times Information, Thai Press Reporst, May 7, 2008, LexisNexis News Search, page number unavailable. Angelo S. Samonte, Arroyo gov't warns Taiwan on Spratly Islands visit, Manila Times -33-

問 題 と 研 究 第 37 巻 3 号 トナムとフィリピンを 除 けば 中 国 マレーシア ブルネイからは 特 に 反 応 はなかった 南 沙 提 案 については 南 沙 提 案 関 連 の 国 際 報 道 を 検 索 して も 南 シナ 海 主 権 主 張 国 からは 積 極 的 にせよ 消 極 的 にせよ 何 の 反 応 も 見 当 たらなかった その 原 因 としては 南 沙 提 案 の 内 容 と 南 シナ 海 島 嶼 紛 争 の 処 理 に 関 する 既 存 の 方 向 性 が 概 ね 一 致 していたこ とが 考 えられる 67 台 湾 の 外 交 部 は 陳 水 扁 提 唱 の 南 沙 提 案 の 精 神 と 原 則 について 関 連 国 と 意 思 疎 通 を 図 り 説 明 を 続 ける 68 と 強 調 し たものの 南 沙 提 案 には アメ は 多 くとも ムチ は 見 当 たら ず 提 案 の 第 1 点 目 でさえ 台 湾 が 南 シナ 海 における 行 動 指 針 に 参 加 するという 立 場 を 特 別 強 調 したものでもない 台 湾 が 他 国 や 国 際 社 会 からの 重 視 を 受 けるためには 台 湾 の 南 シナ 海 政 策 中 でも 南 沙 提 案 を 受 けた 今 後 の 行 動 を 積 極 化 させ 具 体 的 化 させるべきで 67 68 (Philippines), May 5, 2008, LexisNexis News search, page number unavailable. 米 国 の 学 者 Mark J. Valencia は 陳 水 扁 の 南 沙 提 案 および 台 湾 が 東 沙 島 で 設 立 し た 環 礁 国 立 公 園 は 南 シナ 海 の 環 境 を 保 護 する 優 良 な 第 一 歩 であり 他 の 南 シナ 海 主 権 主 張 国 も 同 様 の 方 法 を 取 るべきだと 呼 びかけた Mark J. Valencia, Environmental protection key to Spratlys, Taiwan Journal, March 14, 2008, p. 7. 参 照 また 2008 年 4 月 7-11 日 には 第 4 回 海 洋 海 岸 島 嶼 会 議 (the 4 th Conference on Oceans, Coasts, and Islands: Advancing Ecosystem Management and Integrated Coastal and Ocean Management in the Context of Climate Change)がベトナム ハノイで 開 催 され 南 シナ 海 の 環 境 と 生 態 に 深 刻 な 破 壊 が 発 生 しており 主 権 紛 争 を 棚 上 げして 南 シナ 海 の 環 境 資 源 悪 化 問 題 に 即 時 取 り 組 みが 必 要 だと 指 摘 された 中 でもフィリピン 代 表 の Robert Jara は ( 島 嶼 主 権 の) 主 張 問 題 処 理 を 環 境 問 題 処 置 に 優 先 させれば 最 終 的 に 勝 者 と なるものは 一 人 もいない と 発 言 した Terjemahan, South China Sea headed for troubled waters: marine experts, Joyo Indonesia News Service, April 13, 2008, available at: http://66.114.70.144/cgi-bin/terjem.rex?south_china_sea_heade_for_troubled_waters_marin e_experts-8041301 参 照 Taiwan wiling to discuss Spratly Initiative with neighbours FM, BBC Monitoring Asia Pacific Political, February 6, 2008, LexisNexis News search, page number not available. -34-

2008 年 7.8.9 月 号 台 湾 の 南 シナ 海 南 沙 諸 島 太 平 島 における 滑 走 路 建 設 をめぐる 論 争 とその 政 策 的 含 意 あろう 八 太 平 島 空 港 建 設 の 政 策 的 戦 略 的 含 意 1 台 湾 の 南 シナ 海 政 策 における 再 調 整 か 1993 年 4 月 に 行 政 院 が 南 海 政 策 綱 領 を 承 認 した 後 南 シナ 海 という 広 大 な 海 洋 国 土 を 永 続 的 に 運 営 することに 対 して 台 湾 では 真 摯 な 思 考 に 欠 けていた その 主 な 原 因 としては 中 国 の 台 湾 本 島 に 対 する 軍 事 的 脅 威 に 防 衛 の 主 力 を 置 いていたことに 加 え 台 湾 と 南 沙 諸 島 の 距 離 が 遠 く 台 湾 本 島 の 軍 事 防 衛 力 を 南 沙 諸 島 太 平 島 ま で 投 射 できないことが 指 摘 できよう また 政 府 の 南 シナ 海 政 策 執 行 における 態 度 には この 十 数 年 来 事 なかれ 主 義 的 な 部 分 が 少 な からずあり 中 国 やその 他 の 南 シナ 海 主 権 主 張 国 に 対 して 島 嶼 主 権 の 明 示 や 強 化 などの 各 種 政 策 行 為 を 効 果 的 に 採 れないでいた その 結 果 台 湾 が 南 シナ 海 の 地 域 安 全 保 障 対 話 メカニズムから 排 除 され ているのである 前 述 の 通 り 中 国 と ASEAN が 2002 年 11 月 に 調 印 した 南 シナ 海 における 関 係 国 の 行 動 に 関 する 宣 言 は 故 意 に 台 湾 の 参 加 を 除 外 している 2005 年 3 月 に 中 国 ベトナム フィリピ ン 3 カ 国 の 国 営 石 油 会 社 が 南 シナ 海 係 争 地 域 について Tripartite Agreement for Joint Marine Seismic Undertaking in the Agreement Area in the South China Sea 南 シナ 海 の 協 定 地 域 における 三 カ 国 の 共 同 海 洋 地 震 作 業 の 協 議 を 進 めた 際 も 台 湾 の 中 油 公 司 は 参 加 要 請 を 受 けなかった 台 湾 が 南 シナ 海 において 一 方 的 な 強 硬 策 を 進 められた としても 台 湾 の 行 動 やそれが 引 き 起 こす 政 策 的 影 響 に 他 の 南 シナ 海 主 権 主 張 国 がより 大 きな 懸 念 を 持 つであろう 事 実 台 湾 が 2005 年 末 太 平 島 に 滑 走 路 建 設 を 決 定 して 以 降 ベトナムから 何 度 も 抗 議 を 受 けている 但 し 台 湾 の 採 った 行 動 により 他 の 南 沙 諸 島 主 権 主 張 国 が 台 湾 の 立 場 を 政 策 策 定 において 考 慮 するようになってい -35-

問 題 と 研 究 第 37 巻 3 号 る したがって 太 平 島 の 滑 走 路 建 設 は 台 湾 の 南 シナ 海 政 策 の 転 換 点 であると 見 ることができよう 台 湾 新 幹 線 も 完 工 し 台 湾 本 島 と 南 シナ 海 諸 島 ( 東 沙 諸 島 および 南 沙 諸 島 太 平 島 を 含 む)の 時 空 的 距 離 は 将 来 的 に 短 縮 される これ に 伴 い 海 洋 建 設 開 発 利 用 工 事 環 境 保 護 国 際 協 力 海 域 法 執 行 海 洋 権 益 保 護 などの 各 種 問 題 が 顕 在 化 するであろう 1993 年 の 南 海 政 策 綱 領 第 3 点 に 定 められている 実 施 綱 要 について 言 えば 今 後 の 台 湾 の 南 シナ 海 政 策 の 発 展 において 避 けて 通 れないこととし て 海 域 の 巡 回 警 備 力 の 構 築 漁 業 関 係 者 への 支 援 強 化 南 シナ 海 問 題 の 国 際 シンポジウム 開 催 計 画 などが 挙 げられている 国 際 協 力 については 沿 海 諸 国 およびその 他 諸 国 の 立 場 や 主 張 に 対 して 対 応 策 を 検 討 し 南 シナ 海 の 地 域 協 力 を 促 進 することが 指 摘 されてい る 安 全 維 持 という 意 味 では 衝 突 の 可 能 性 を 秘 めた 問 題 の 研 究 分 析 漁 業 関 係 者 保 護 と 海 上 交 通 保 護 の 強 化 海 上 開 発 作 業 の 安 全 戦 備 整 備 強 化 巡 回 強 化 により 南 シナ 海 諸 島 を 防 衛 することが 含 まれる 交 通 関 連 では 衛 星 通 信 施 設 の 構 築 気 象 台 施 設 および 機 能 の 強 化 GPS および 航 行 支 援 施 設 の 建 設 空 港 および 埠 頭 施 設 の 建 設 南 シナ 海 観 光 の 開 放 の 実 行 可 能 性 研 究 などが 挙 げられてい る 環 境 保 護 関 連 では 南 シナ 海 の 地 域 国 際 環 境 保 護 協 力 事 業 が 指 摘 されている 中 台 関 係 については 中 台 問 題 および 南 シナ 海 問 題 に 関 する 研 究 学 術 研 究 では 南 シナ 海 関 連 の 戦 略 政 治 法 律 問 題 の 研 究 海 洋 科 学 や 自 然 資 源 の 調 査 研 究 収 集 翻 訳 南 シナ 海 の 史 料 編 集 研 究 分 析 などがある 資 源 開 発 では 利 用 可 能 な 資 源 の 探 査 開 発 と 共 同 開 発 の 実 行 可 能 性 検 討 などである 69 国 防 部 部 長 李 天 羽 が 2007 年 11 月 に 太 平 島 視 察 後 に 語 ったと 69 南 海 政 策 綱 領 第 三 点 実 施 綱 要 第 1~9 項 注 1を 参 照 -36-

2008 年 7.8.9 月 号 台 湾 の 南 シナ 海 南 沙 諸 島 太 平 島 における 滑 走 路 建 設 をめぐる 論 争 とその 政 策 的 含 意 おり 太 平 島 滑 走 路 建 設 の 目 的 は 人 道 的 救 援 だけでなく 国 土 の 永 続 的 な 運 営 にもある 例 えば 日 本 は 1987 年 から 約 600 億 円 を 投 じ 太 平 洋 最 南 端 にある 領 土 沖 ノ 鳥 島 が 水 没 により 陸 地 領 土 とし ての 法 律 的 な 位 置 付 けを 失 わないよう 努 めることで 面 積 37 万 平 方 キロメートルの 陸 地 領 土 よりも 遥 かに 広 大 な 海 洋 領 土 に 対 して 日 本 の 主 権 を 主 張 することに 成 功 している 南 シナ 海 東 沙 諸 島 と 南 沙 太 平 島 の 国 土 の 永 続 的 な 運 営 にもこれと 同 様 の 見 地 と 役 割 がある 台 湾 の 政 策 目 標 を 南 沙 諸 島 の 領 土 と 近 接 する 広 大 な 海 洋 領 土 の 永 続 的 な 運 営 に 置 くのであれば 台 湾 の 南 シナ 海 政 策 も 調 整 が 必 至 であ る つまり これまでの 受 動 的 消 極 的 な 態 度 が 今 後 自 発 的 積 極 的 に 変 わっていくことを 示 唆 しているのである 陳 水 扁 政 権 期 の 総 統 府 関 係 者 によると 太 平 島 滑 走 路 建 設 は 国 民 党 政 権 時 代 の 1993 年 に 策 定 した 南 海 政 策 綱 領 第 3 条 第 4 項 第 4 点 で 処 理 すべき 事 項 としたものを 国 防 部 が 引 き 継 いだものであ り 正 しい 政 策 であるという 70 確 かに 南 海 政 策 綱 領 以 外 にも 1993 年 9 月 には 当 時 の 連 戦 行 政 院 長 が 内 政 部 主 催 の 南 シナ 海 問 題 シ ンポジウムに 出 席 し 次 のように 発 言 している わが 国 が 南 シナ 海 諸 島 の 主 権 を 有 していることは どの 国 も 否 定 することはできない 南 シナ 海 周 辺 国 は 域 内 の 平 和 で 安 定 した 発 展 の 環 境 を 創 出 するため 共 同 利 益 共 存 の 原 則 に 基 づき 資 源 争 奪 や 軍 事 的 対 抗 を 止 め 相 互 の 経 済 協 力 を 強 化 するべきである ま た アジア 太 平 洋 地 域 の 安 全 を 維 持 するため わが 国 は 南 シナ 海 周 辺 各 国 と 共 に 科 学 的 研 究 や 資 源 開 発 海 域 汚 染 防 止 作 業 などの 協 力 に 努 める 誠 意 を 有 している わが 国 政 府 は 国 際 社 会 に 貢 献 する 70 太 平 島 建 機 場 府 : 延 続 国 民 党 政 策 自 由 時 報 (2008 年 2 月 4 日 ) http://www.liberytimes.com.tw/2008/new/feb/4/today-p2.htm -37-