SLAの 考 え 方 総 務 省
SLAの 考 え 方 この 単 元 の 構 成 と 目 的 序 SLAの 定 義 公 共 ITにおけるアウトソーシングに 関 するガイドライン について 1 SLAを 設 定 する 対 象 について 2 SLAの 運 用 について ここでの 目 的 は SLAについて 考 えていきたいと 思 います 各 団 体 は 業 務 のすべてを その 団 体 の 職 員 等 だけでまかなうことはもはや 不 可 能 となってきており 様 々な 業 務 を 外 部 に 委 託 (アウトソーシング)し 運 用 管 理 を 行 っているかと 思 います アウトソーシングにおいては サービスに 対 して 対 価 を 支 払 う こととなりま すが 品 質 の 確 保 や 測 定 が 行 いにくいといった 点 が 課 題 になりがちです このような 背 景 のもとで 考 慮 されてきているのが SLAで 委 託 先 調 達 先 の 選 定 において 価 格 のみならず 技 術 やサービス 等 の 内 容 面 からの 評 価 を 的 確 に 行 い 保 守 運 用 においてサービスの 質 が 確 保 されているかを 監 視 することが 非 常 に 重 要 です このテキストでは 最 初 に 用 語 の 定 義 とガイドライン 類 について 確 認 した 後 に 実 際 にSLAを 導 入 するまでに 考 慮 することについて 考 えていきます 1
序 SLAの 定 義 ここでのテーマと 課 題 SLA という 用 語 の 定 義 はどのようなものか 解 説 SLAという 用 語 は ISO/IEC20000-1:2005においては 次 のように 定 義 されています サービス 及 び 合 意 されたサービスレベルを 文 書 化 した サービスプロバイダと 顧 客 間 の 書 面 による 合 意 ただしこれではわかりにくいと 思 います そこで 情 報 システムに 係 る 政 府 調 達 へ のSLA 導 入 ガイドライン でのSLAの 定 義 を 参 考 にしてみます ITサービスの 提 供 者 と 委 託 者 との 間 で ITサービスの 契 約 を 締 結 する 際 に 提 供 するサービスの 範 囲 内 容 及 び 前 提 となる 諸 事 項 を 踏 まえた 上 で サービスの 品 質 に 対 する 要 求 水 準 を 規 定 するとともに 規 定 した 内 容 が 適 正 に 実 現 されるための 運 営 ルール を 両 者 の 合 意 として 明 文 化 したもの どちらについても 共 通 していえることは 委 託 元 と 委 託 先 との 合 意 が 必 要 文 書 化 ( 明 文 化 )が 必 要 といったことです なお 後 者 ではガイドラインの 性 質 上 ITサービス という 用 語 を 用 いています が IT の 文 字 を 取 り 外 して 考 えると SLAの 用 語 の 定 義 が 非 常 に 見 えやすくな るかと 思 います 参 考 文 献 (1) 情 報 システムに 係 る 政 府 調 達 へのSLAガイドライン ( 独 立 行 政 法 人 情 報 処 理 推 進 機 構 平 成 16 年 ) 参 照 :http://www.meti.go.jp/kohosys/press/0005140/1/040414it2.pdf 2
序 公 共 ITにおけるアウトソーシングに 関 するガイドライン について ここでのテーマと 課 題 公 共 ITにおけるアウトソーシングに 関 するガイドライン にはどの ような 内 容 がかかれているのか 解 説 公 共 ITにおけるアウトソーシングに 関 するガイドライン では アウトソーシン グ 導 入 契 約 締 結 に 関 することはもちろんですが SLAの 考 え 方 について 非 常 に 多 く の 内 容 が 書 かれており 参 考 になります このガイドラインでは アウトソーシングビジネスを 以 下 の6つに 分 け それぞれに ついて 及 びこれらを 総 合 した 内 容 について SLAの 設 定 例 を 作 成 しています サービスサポート セキュリティ アプリケーション ホスティング ネットワーク セキュリティ また SLAにおける 構 成 要 素 について 以 下 4 項 目 が 述 べられています 1サービスメニュー SLAの 対 象 となるサービスの 種 別 と 各 サービスの 機 能 要 件 のことです サービスの 範 囲 などもここに 含 めることになるので できるだけ 具 体 的 な 記 述 が 求 められます 2サービス 要 件 サービスメニューごとに 規 定 される 定 量 的 又 は 定 性 的 要 件 で 後 の 評 価 やパフォー マンス 設 定 の 前 提 となる 要 件 になります 3SLA 評 価 項 目 サービスメニューに 対 応 する 品 質 を 定 量 的 に 設 定 評 価 する 項 目 で 提 供 されてい るサービスについて 評 価 する 項 目 となるので できるだけ 測 定 が 可 能 なものにする 必 要 があります 3
序 公 共 ITにおけるアウトソーシングに 関 するガイドライン について 4SLA 設 定 値 報 告 要 件 ペナルティ 等 のSLA 評 価 項 目 関 連 項 目 SLA 設 定 値 とは SLA 評 価 項 目 の 具 体 的 な 値 のことです これには 保 証 値 と 目 標 値 の 二 つがあります 保 証 値 は いわば 守 らなくてはいけない 値 です 測 定 さ れ 報 告 された 結 果 守 られていなければ 減 額 等 のペナルティを 科 すことができま す 一 方 で 目 標 値 は あくまで 目 標 であり 必 ずしも 守 らなければならないもので はありません 報 告 要 件 では その 報 告 の 周 期 や 方 法 のほか SLA 測 定 方 法 についてもここで 定 義 することが 望 ましいといえます ペナルティは 対 象 とするサービスメニューやサービス 要 件 SLA 設 定 値 等 が 達 成 されなかったときの 影 響 度 や 未 達 の 度 合 いなどによって 考 慮 すればよいかと 思 います それ 以 外 にも 免 責 やSLAに 関 し 委 託 元 と 委 託 先 の 義 務 についても 記 述 されると 望 ましいでしょう また SLAの 定 義 でも 述 べましたが これらについて 明 文 化 することがなにより 重 要 となります このガイドラインでは SLAに 関 する 合 意 事 項 については 契 約 書 ではなく 仕 様 書 に 記 載 することが 望 ましいとされています 理 由 としては サービス 要 件 やSLA 設 定 値 などは その 時 々の 状 況 により 変 化 する 可 能 性 があるためです ( SLA 定 義 書 という 形 で 記 載 されている 例 もあります ) 参 考 文 献 (1) 公 共 ITにおけるアウトソーシングに 関 するガイドライン ( 総 務 省 平 成 15 年 ) 参 照 :http://www.soumu.go.jp/denshijiti/pdf/060213_03.pdf 4
1 SLAを 設 定 する 対 象 について ここでのテーマと 課 題 SLAを 設 定 する 場 合 どのような 対 象 に 設 定 するべきかについて 理 解 します 解 説 SLAは 前 の 項 でも 述 べましたが 委 託 元 と 委 託 先 の 合 意 によって 形 成 される 契 約 であるので 極 端 に 言 えば 合 意 があればどのような 内 容 でもSLAは 設 定 できると いえます ですが SLAを 設 定 する 目 的 を 考 えると 求 めるサービスレベルを 一 定 に 保 つ ようにする ためであると 思 います 例 えば 重 要 なシステムの 保 守 業 務 を 思 い 浮 かべてください このシステムが 原 因 不 明 で 利 用 停 止 になったとします 多 くの 場 合 は 保 守 の 委 託 先 へ 連 絡 することになるかと 思 います このとき 担 当 者 が 不 在 で 対 応 が 明 日 にな る 対 応 開 始 が6 時 間 後 になる などと 通 知 されるとシステムの 可 用 性 が 損 なわ れてしまいます 一 方 で 緊 急 対 応 を 行 うにあたって 必 要 な 人 数 などはあまり 問 われないケース が 多 いかと 思 います このように SLAを 求 めるべき 対 象 はサービスによって 変 わってくるはずです しかも このような 内 容 はサービスの 提 供 を 受 けている 時 はもちろんですが 受 ける 前 からある 程 度 求 めるサービスレベルを 想 定 しておかなくてはなりません 5
1 SLAを 設 定 する 対 象 について これまでの 内 容 を 受 けて SLAを 設 定 する 対 象 の 判 断 基 準 は 以 下 4つにあると 考 え ます 委 託 するサービスの 重 要 性 はどの 程 度 のものか SLAの 内 容 を 明 文 化 できるか SLAを 設 定 した 場 合 の 測 定 が 可 能 であるか SLAを 設 定 した 場 合 その 内 容 を 達 成 できる 環 境 があるか これを 踏 まえまして SLAを 設 定 する 対 象 の 例 を 次 にあげたいと 思 います あくま で 例 なので 上 記 判 断 基 準 をもとに 各 団 体 で 考 慮 されることが 望 ましいと 考 えます 対 象 セキュリティ サポートデスク 保 守 項 目 ファイアウォール ウイルス 対 策 情 報 提 供 ヘルプデスク 障 害 対 策 内 容 不 正 アクセスを 検 出 するまでの 時 間 不 正 アクセス 検 出 後 通 知 までの 時 間 パターンファイル 更 新 までの 時 間 ウイルススキャンにかかる 時 間 最 新 セキュリティ 情 報 を 提 供 する 間 隔 最 新 セキュリティ 情 報 を 提 供 する 件 数 受 付 時 間 解 決 率 電 話 がつながらない 確 率 時 間 コールバックまでの 時 間 対 応 時 間 復 旧 時 間 原 因 判 明 率 原 因 究 明 までの 時 間 6
1 SLAを 設 定 する 対 象 について 対 象 アプリケーション ネットワーク ホスティング ストレージ (データ) 項 目 アプリケーションの 稼 動 ネットワークの 稼 動 ホスティング 管 理 データ 管 理 サービス 提 供 時 間 処 理 完 了 までの 時 間 帳 票 出 力 までの 時 間 稼 働 率 同 時 接 続 可 能 数 バックアップに 要 する 時 間 バックアップタイミング リストアに 要 する 時 間 アプリケーション 変 更 に 要 する 時 間 回 線 の 種 類 稼 働 率 伝 送 遅 延 時 間 トラフィック 管 理 内 容 ID パスワードの 変 更 に 要 する 時 間 公 的 認 証 の 取 得 状 況 ログ 収 集 の 間 隔 閾 値 の 監 視 間 隔 世 代 管 理 ディスク 負 荷 率 容 量 の 監 視 間 隔 データベースバージョンアップの 方 法 バックアップ 媒 体 と 保 管 世 代 数 バックアップタイミング バックアップの 保 存 期 間 データリカバリの 復 旧 時 間 SLAを 設 定 する 対 象 を 決 定 したら 次 に 行 うことは 指 標 の 設 定 です 指 標 は 具 体 的 な 数 値 とすることが 望 ましいですが 場 合 によっては あり/なし で 判 断 することも あるかと 思 います 7
2 SLAの 運 用 について ここでのテーマと 課 題 SLAを 設 定 した 後 の 運 用 課 題 について 考 えます 解 説 SLAは 委 託 元 と 委 託 先 の 合 意 によって 成 立 するものであることは 前 にも 述 べま した 委 託 先 に 要 件 を 求 めるということは 委 託 元 にも 当 然 何 らかの 義 務 が 発 生 しま す その 中 で 一 番 重 要 なことは SLAが 適 切 に 実 施 されているかの 運 用 の 確 認 となり ます ここで 運 用 の 確 認 とは 実 施 されているかだけではなく 適 切 な 監 視 と 見 直 し す なわちPDCAサイクルの 実 施 をさします 簡 単 にいいますと P( 計 画 ) :SLAを 設 定 すべき 対 象 の 決 定 D( 実 施 ) :SLA 達 成 状 況 の 測 定 C( 確 認 ) : 測 定 結 果 の 検 証 評 価 A( 見 直 し):SLAの 改 善 になります PDCAにおける P( 計 画 ) については 前 項 で 見 たので 残 りの 実 施 から 見 直 しまでについて 考 えてみます 8
2 SLAの 運 用 について (1)D: 実 施 について この 段 階 で 求 められることは サービスの 提 供 状 況 の 確 認 すなわち SLAの 測 定 になります SLAの 測 定 を 行 うのは 委 託 元 でも 委 託 先 でもどちらでもかまいません 必 要 なの は 測 定 をどのように 実 施 するかになります ですが 現 実 的 には 委 託 先 が 測 定 を 行 い 委 託 元 が 確 認 をすることになるでしょう 特 にシステムのパフォーマンスについては 委 託 元 で 測 定 することはなかなか 難 しいと 思 います また 測 定 の 結 果 は 定 期 的 に 委 託 元 と 委 託 先 が 確 認 することが 必 要 です このため 報 告 の 形 式 などについても 決 定 しておくほうが 望 ましいといえます (2)C: 確 認 について この 段 階 で 求 められることは 測 定 結 果 の 検 証 と 評 価 です 報 告 された 内 容 が 設 定 した 値 を 満 たしているか 否 かということはもちろんですが 特 に 満 たしていない 場 合 は 原 因 を 探 り 総 合 的 に 評 価 することが 必 要 となります 評 価 の 観 点 は 例 えば 以 下 があげられます 委 託 元 の 体 制 は 十 分 か SLAを 満 たせる 環 境 となっているか 委 託 先 の 体 制 は 十 分 か SLAの 設 定 した 対 象 は 妥 当 であったか (3)A: 見 直 しについて この 段 階 で 求 められることは SLAを 設 定 した 対 象 やその 値 の 見 直 しです C: 確 認 の 段 階 で SLAが 満 たされていない 場 合 はもちろんですが 満 たされてい る 場 合 にも 設 定 値 を 厳 しくすることや 逆 に 緩 和 することも 考 えられます これは サービスを 受 ける 側 ( 委 託 元 とは 限 りません )の 要 求 事 項 市 場 技 術 コスト 委 託 先 の 体 制 などといった 点 を 考 慮 することが 肝 心 であるためです また ここでSLAが 満 たされていない 場 合 のペナルティを 課 すことや ペナルティ の 内 容 についても 見 直 されることとなります 9
2 SLAの 運 用 について このように PDCAサイクルを 実 施 することが 運 用 では 求 められます ただし こ れらのすべてを 委 託 先 が 実 施 してしまうと 適 正 な 評 価 にならないおそれがあります 最 後 に この 単 元 すべてを 踏 まえて 考 えられるSLA 導 入 のメリット 及 びデメリット を 以 下 にあげておきます 導 入 のメリット サービスレベルの 質 が 向 上 できます SLAを 設 定 することで 提 供 されるサービスレベルが 明 確 になり それを 継 続 的 に 見 直 すことで 質 の 向 上 が 可 能 となります サービス 全 体 の 水 準 が 統 一 化 できます SLAを 設 定 検 証 し それを 展 開 することで 庁 内 で 同 じようなサービスを 受 けているものに 対 して 庁 内 でサービスの 水 準 が 決 定 されます サービスが 提 供 されない 場 合 の 保 険 となります SLAが 未 達 の 場 合 は 場 合 によってペナルティが 与 えられます これにより サービスが 提 供 できない 場 合 の 一 種 の 損 失 補 てんが 可 能 となります 導 入 のデメリット 管 理 するための 確 認 事 項 が 増 加 します SLAを 運 用 するためには このテキストで 述 べたとおり 様 々な 確 認 事 項 があり ます また 計 画 段 階 でも 管 理 考 慮 するべきことが 増 えます 管 理 するためのコストが 増 加 します 確 認 事 項 が 増 加 するということは 結 果 的 にコストに 響 きます 委 託 先 もSLA 測 定 など 作 業 内 容 が 増 えるため コスト 増 を 要 求 することが 一 般 的 です 外 部 業 者 に 対 する 参 入 障 壁 となります 委 託 先 がSLAを 測 定 したり 実 際 に 管 理 するにはそれなりのスキルがないと 実 施 されません 結 果 として 委 託 できる 業 者 が 限 定 されるおそれがあります 10
この 単 元 での 課 題 を 考 える 課 題 を 考 える SLA 導 入 の 判 断 を 行 う 例 示 する 対 象 のそれぞれについて SLA 導 入 を 行 うべきか 行 わないべきかの 判 断 を 行 います 事 前 学 習 課 題 8 この 単 元 のポイントを 参 考 に 様 式 にあるそれぞれの 対 象 について SLA 導 入 を 行 うべきか 行 わないべきかを 判 断 し 併 せて 理 由 を 述 べてください ここでは 要 / 不 要 の 判 断 のみでかまいません 判 断 にあたっては 自 団 体 の 状 況 を 踏 まえてください 事 前 学 習 課 題 08: 様 式 に 記 入 11