経 営 学 入 門 Ⅱ 第 9 講 https://www.tokaigakuen-u.ac.jp/ichiko/nucb/ 1 第 8 講 企 業 の 組 織 形 態 (2) 1. 職 能 部 門 制 組 織 組 織 区 分 に 製 造, 販 売, 経 理 などの 職 能 を 用 いて 水 平 的 に 部 門 化 した 集 権 的 組 織 単 一 の 事 業 だけを 営 んでいるか,あるいは 複 数 事 業 を 営 んでいるけれども 1つの 特 定 事 業 の 占 有 率 がかなり 高 い 組 織 の 場 合 に 適 している 多 角 化 をして 多 くの 事 業 を 営 んでいる 場 合 には,あまり 適 さない 職 能 部 門 制 組 織 ファンクショナル 型 ライン アンド スタッフ 型 職 能 部 門 制 組 織 の 長 所 短 所 2. 事 業 部 制 組 織 職 能 部 門 制 組 織 を 採 用 している 企 業 が, 取 り 扱 う 製 品 や 事 業 を 複 雑 化 した 結 果, 地 域 的 拡 大 を 実 現 させると,その 分 だけ 取 り 巻 く 企 業 環 境 が 多 様 化 複 雑 化 する
経 営 学 入 門 Ⅱ 第 9 講 https://www.tokaigakuen-u.ac.jp/ichiko/nucb/ 2 環 境 の 多 様 化 複 雑 化 に 対 応 する 必 要 がでてくる 分 権 的 で 迅 速 な 意 思 決 定 が 可 能 な 組 織,トップ マネジメントの 負 担 軽 減 を 実 現 するような 組 織 = 事 業 部 制 組 織 製 品 地 域 市 場 別 に 事 業 部 を 作 り, 各 事 業 部 が 1つの 事 業 体 として 独 立 採 算 的 に 管 理 責 任 を 負 う 組 織 (= 小 さな 会 社 が 連 なったような 組 織 ) 職 能 部 門 制 組 織 と 事 業 部 制 組 織 の 比 較 特 徴 職 能 部 門 制 組 織 事 業 部 制 組 織 組 織 の 性 格 集 権 的 分 権 的 適 正 製 品 構 成 の 少 ない 企 業 多 角 化 している 企 業 組 織 の 構 造 職 能 別 の 部 門 編 成 製 品 別, 地 域 別 など 事 業 部 制 組 織 の 長 所 と 短 所
経 営 学 入 門 Ⅱ 第 9 講 https://www.tokaigakuen-u.ac.jp/ichiko/nucb/ 3 3.プロフィット センターとコスト(サービス) センター プロフィット センター = 利 益 責 任 をもつ 分 権 的 管 理 単 位 事 業 部 制 組 織 一 般 に, 購 買, 製 造 販 売 に 至 るまで 一 貫 した 事 業 体 = 独 自 の 売 上 と 費 用 が 計 算 可 能 製 品 についての 全 責 任 を 負 っている= 価 格 の 決 定 権 や 購 入 材 料 の 選 択 権 がある 事 業 部 人 事 部 のようなスタッフ 部 門 がある= 管 理 費 用 を 計 算 可 能 全 般 的 管 理 権 限 をもっている コスト センター = 費 用 責 任 だけしかもたない 分 権 的 管 理 単 位 職 能 部 門 制 組 織 専 門 的 領 域 については 全 社 的 横 断 的 権 限 を 持 つが,それを 越 えた 領 域 については 責 任 を 持 てない 生 産 本 部 は 製 品 コストについては 責 任 を 持 つが, 生 産 した 製 品 について 独 自 に 価 格 を 設 定 することはできない サービス センター = 独 自 の 管 理 コスト 以 外 にコントロールできる 費 用 責 任 売 上 責 任 の ない 組 織 人 事 本 部 など = 他 の 部 門 にサービスを 提 供 している 分 権 的 管 理 単 位 4. 分 社 制 とカンパニー 制 分 社 化 (spin-out) (1) 完 全 に 子 会 社 として 独 立 させる (2) 社 内 に, 会 社 に 似 た 形 式 的 な 独 立 組 織 を 作 る カンパニー 制 = 大 きな 事 業 部 や 複 数 の 事 業 部 をまとめてカンパニーという 名 称 で 独 立 した 事 業 単 位 を 作 るもの カンパニー プレジデントとよばれる 事 業 組 織 の 長 に 包 括 的 な 裁 量 権 を 与 え, 独 立 採 算 的 に 事 業 評 価 を 厳 しくする 狙 いと 背 景 日 本 企 業 が 企 業 組 織 改 革 を 実 施 する 時,その 狙 いは 概 ね 事 業 の 責 任 単 位 を 明 確 に し, 権 限 委 譲 を 進 めて 意 思 決 定 と 行 動 のスピードを 早 める ことにあるとされている この 背 景 には,90 年 代 に 入 ってから 著 しい 復 活 を 遂 げたように 見 える 米 国 企 業 の 経 営 システムへの 関 心 があり,カンパニー 制 もこのような 流 れの 中 で 注 目 されてきた 1994 年 に 導 入 したソニーなどは 草 分 け 的 存 在 であり, 給 与 水 準 や 人 事 制 度 をカンパニーの
経 営 学 入 門 Ⅱ 第 9 講 https://www.tokaigakuen-u.ac.jp/ichiko/nucb/ 4 事 業 内 容 に 応 じた 体 系 に 変 えられるなど 柔 軟 で 迅 速 な 経 営 が 可 能 になるため, 産 業 界 では 大 企 業 を 中 心 に 経 営 改 革 の 手 法 として 採 用 するケースが 相 次 いでいる とくに 家 電 業 界 では,1999 年 に 東 芝, 日 立 製 作 所,2000 年 に NEC,2001 年 には 松 下 電 器 産 業 など 各 社 が 採 用 している 分 権 型 組 織 の 形 態 による 特 徴 従 来 型 事 業 部 制 社 内 カンパニー 制 分 社 / 持 ち 株 会 社 責 任 の 範 囲 限 定 的 な 責 任 範 囲 事 業 に 対 する 包 括 的 責 任 事 業 に 対 する 包 括 的 責 任 主 要 業 績 指 標 損 益 計 算 書 項 目 貸 借 対 照 表 項 目 貸 借 対 照 表 項 目, 事 業 評 価 資 本 金 配 賦 せず 社 内 資 本 制 度 を 採 用 親 会 社 による 出 資 内 部 留 保 内 部 留 保 せず 内 部 留 保 あり 内 部 留 保 あり 配 当 配 当 という 概 念 はない 社 内 金 利 制 度 や 配 当 が ある 配 当 を 実 施 投 資 権 限 基 本 的 には 本 社 が 決 定 利 益 再 投 資 の 色 彩 が 強 独 立 の 法 人 格 としての まる 投 資 権 限 を 持 つ 人 材 の 帰 属 本 社 本 社 グループ 各 社 (?) マネジメントの 仕 組 み ( 人 事 賃 金 制 度 など) 事 業 構 造 改 革 への 取 り 組 み 同 一 基 準 企 業 の 範 囲 内 で 本 社 が 主 導 同 一 基 準 分 権 組 織 の 役 割 が 高 ま るが, 本 社 がグループ 内 で 主 導 企 業 別 マネジメントの 仕 組 み グループ 外 企 業 間 結 合 の 可 能 性 が 高 まる 5.ブランド マネージャー 制 とプロジェクト 組 織 PM BM 制 = プロダクト マネージャー (PM), ブランド マネージャー (BM) ひとつの 製 品 (ブランド)について,その 製 品 群 を 育 成 管 理 する 製 品 別 担 当 組 織
経 営 学 入 門 Ⅱ 第 9 講 https://www.tokaigakuen-u.ac.jp/ichiko/nucb/ 5 PM(BM) 制 の 起 源 は 米 国 プロクター アンド ギャンブル(P&G) 社 が 石 鹸 で アイボリー に 加 えて キャメイ を 発 売 した 時 だとされる 同 社 は,1928 年 に キャメイ を 発 売 したが, 石 鹸 という 同 じカテゴリーで 競 合 品 を 出 すことがカニバリゼーション( 共 食 い)に 繋 がりやすいと 危 惧 した そこで,1931 年 に キャメイ というブランドに 責 任 者 を 決 め, アイボリー 担 当 者 と 区 別 し た その 結 果,( 一 人 の 担 当 者 が 一 つの 製 品 に 一 貫 して 責 任 を 持 つ)ワンマン ワンブランドによっ て 製 品 の 差 別 化 が 実 現 され,さらにブランド 間 の 企 業 内 競 争 によって 相 互 のシェア 拡 大 に 繋 がるこ とを 発 見 した 日 本 では,1967 年 に 花 王 が 導 入 したが, 社 内 での 競 争 よりも, 調 整 役 として 位 置 づけられてお り,1 情 報 管 理,2マーケティング 計 画 の 立 案,3マーケティング 計 画 の 実 行,4マーケティング 活 動 の 評 価 などの 役 割 を 担 っている プロジェクト 組 織 = プロジェクト 単 位 に 編 成 された 組 織,プロジェクトの 企 画 進 行 など について 一 定 の 予 算 や 日 程 ( 納 期 )の 枠 内 で 管 理 責 任 や 権 限 を 持 つ 専 門 家 組 織 タスク フォース = 特 定 の 任 務 や 課 題 解 決 のために 臨 時 に 編 成, 少 人 数 の 専 門 家 によって 構 成 される 混 成 部 隊 匿 名 である
経 営 学 入 門 Ⅱ 第 9 講 https://www.tokaigakuen-u.ac.jp/ichiko/nucb/ 6 構 成 メンバーは, 専 門 的 立 場 から 課 題 に 取 り 組 み, 権 限 や 責 任 の 関 係 では 同 等 の 立 場 に 立 つ 任 務 や 課 題 ごとにメンバーが 変 わり, フルタイムの 人 数 は 少 なく,パートタイムのメンバーも 加 わる プロジェクト チーム = プロジェクトのために 結 成 された 専 門 家 チーム タスク フォースよりも 規 模 が 大 きく, 結 成 期 間 も 長 く 恒 久 的 で ある 場 合 が 多 い 正 式 な 位 置 づけを 組 織 内 で 得 る 場 合 が 多 い プロジェクト マネージャー 制 = プロジェクトの 企 画 や 進 行 について 全 般 的 な 責 任 を 持 つプロジェク ト マネージャーを 中 心 とする 組 織 タスク フォースやプロジェクト チームよりもさらに 恒 久 的 で 正 式 な 組 織 である 場 合 が 多 い これらの 組 織 は, 基 本 的 には 組 織 内 を 横 断 的 に 結 ぶ 専 門 的 組 織 であり,スタッフ 部 門 に 属 する プロジェクト マネージャー 制 などでは,そのプロジェクト の 進 行 のために 専 属 のラインを 持 つ 場 合 がある
経 営 学 入 門 Ⅱ 第 9 講 https://www.tokaigakuen-u.ac.jp/ichiko/nucb/ 7 PM BM 制 やプロジェクト 組 織 の 長 所 と 短 所 6.マトリックス 組 織 = 複 数 の 次 元 からなる 組 織 構 造 を 持 ち, 複 数 の 命 令 系 統 を 格 子 状 に 組 み 合 わ せた 組 織 複 数 の 組 織 の 複 合 体 = マトリックス 組 織 は, 様 々な 組 織 を 統 合 して 1 つにした 組 織 例 1 プロジェクト 組 織 ( 横 断 的 : 横 軸 )+ライン 組 織 ( 縦 軸 ) =マトリックス 組 織 例 2 事 業 部 制 組 織 + 職 能 部 門 制 組 織 =マトリックス 組 織 例 3 製 品 別 事 業 部 制 組 織 + 地 域 別 事 業 部 制 組 織 =マトリックス 組 織 マトリックス 組 織 はファンクショナル 組 織 とライン 組 織 の 両 面 をもつ 多 次 元 組 織 マトリックス 組 織 では, 何 を 軸 ( 縦 横 )にするかが 問 題 となる
経 営 学 入 門 Ⅱ 第 9 講 https://www.tokaigakuen-u.ac.jp/ichiko/nucb/ 8 マトリックス 組 織 の 長 所 と 短 所 7. 戦 略 的 事 業 単 位 (SBU:Strategic Business Unit) = 企 業 が 戦 略 上 設 定 する 組 織 単 位 表 面 的 には 事 業 部 制 組 織 のような 形 態 を とるが, 全 社 的 な 戦 略 基 準 に 基 づいて 位 置 づけられる = 通 常,SBU は 事 業 部 に 重 ね 合 わせるように 設 置 され, 必 要 な 場 合 は 他 の 事 業 部 の 協 力 を 要 請 し, 事 業 部 横 断 的 に 活 動 する また,SBU の 事 業 が 軌 道 に 乗 った 場 合 は 新 規 の 事 業 部 として 独 立 する SBU の 長 所 と 短 所
経 営 学 入 門 Ⅱ 第 9 講 https://www.tokaigakuen-u.ac.jp/ichiko/nucb/ 9 8.フラット 組 織 とネットワーク 組 織 フラット 組 織 = 組 織 階 層 を 少 なくして 意 思 疎 通 を 良 くした 組 織 肥 大 化 した 中 間 管 理 層 を 少 なくして 組 織 をスリムにする インターネットや 社 内 電 子 メールの 普 及 など コミュニケーションの エレクトロニクス 化 によって 促 進 されている = 別 名 文 鎮 型 組 織 メリット = 階 層 が 少 なく 上 司 と 直 接 対 話 できるようになっているため, 情 報 が 速 く 正 確 に 伝 達 される デメリット = 情 報 が 文 鎮 の 頭 の 部 分 に 集 中 するので,コミュニケーションが 良 くなれば 良 くなるほど, 組 織 長 の 負 担 が 増 大 する <デメリット 解 消 > ネットワーク 組 織 = 階 層 を 短 くフラットにするのではなく, 組 織 長 が 他 のフラット 組 織 の 長 と 密 接 に 連 携 をとる 水 平 的 な 広 がりをもった 組 織