溜池通信 vol. 590 April 22, 2015 Biweekly Newsletter



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2 役 員 の 報 酬 等 の 支 給 状 況 平 成 27 年 度 年 間 報 酬 等 の 総 額 就 任 退 任 の 状 況 役 名 報 酬 ( 給 与 ) 賞 与 その 他 ( 内 容 ) 就 任 退 任 2,142 ( 地 域 手 当 ) 17,205 11,580 3,311 4 月 1


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答申第585号

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為 が 行 われるおそれがある 場 合 に 都 道 府 県 公 安 委 員 会 がその 指 定 暴 力 団 等 を 特 定 抗 争 指 定 暴 力 団 等 として 指 定 し その 所 属 する 指 定 暴 力 団 員 が 警 戒 区 域 内 において 暴 力 団 の 事 務 所 を 新 たに 設

は 固 定 流 動 及 び 繰 延 に 区 分 することとし 減 価 償 却 を 行 うべき 固 定 の 取 得 又 は 改 良 に 充 てるための 補 助 金 等 の 交 付 を 受 けた 場 合 にお いては その 交 付 を 受 けた 金 額 に 相 当 する 額 を 長 期 前 受 金 とし

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Ⅶ 東 海 地 震 に 関 して 注 意 情 報 発 表 時 及 び 警 戒 宣 言 発 令 時 の 対 応 大 規 模 地 震 対 策 特 別 措 置 法 第 6 条 の 規 定 に 基 づき 本 県 の 東 海 地 震 に 係 る 地 震 防 災 対 策 強 化 地 域 において 東 海 地 震

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入 札 参 加 者 は 入 札 の 執 行 完 了 に 至 るまではいつでも 入 札 を 辞 退 することができ これを 理 由 として 以 降 の 指 名 等 において 不 利 益 な 取 扱 いを 受 けることはない 12 入 札 保 証 金 免 除 13 契 約 保 証 金 免 除 14 入

弁護士報酬規定(抜粋)

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第 3 四 半 期 運 用 状 況 の 概 要 第 3 四 半 期 末 の 運 用 資 産 額 は 2,976 億 円 となりました 第 3 四 半 期 の 修 正 総 合 収 益 率 ( 期 間 率 )は +1.79%となりました なお 実 現 収 益 率 は +0.67%です 第 3 四 半 期

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CONTENTS TOPICS 1 TOPICS

( 別 途 調 査 様 式 1) 減 損 損 失 を 認 識 するに 至 った 経 緯 等 1 列 2 列 3 列 4 列 5 列 6 列 7 列 8 列 9 列 10 列 11 列 12 列 13 列 14 列 15 列 16 列 17 列 18 列 19 列 20 列 21 列 22 列 固 定

公 的 年 金 制 度 について 制 度 の 持 続 可 能 性 を 高 め 将 来 の 世 代 の 給 付 水 準 の 確 保 等 を 図 るため 持 続 可 能 な 社 会 保 障 制 度 の 確 立 を 図 るための 改 革 の 推 進 に 関 する 法 律 に 基 づく 社 会 経 済 情

 

損 益 計 算 書 ( 自 平 成 23 年 4 月 1 日 至 平 成 24 年 3 月 31 日 ) 金 額 ( 単 位 : 百 万 円 ) 売 上 高 99,163 売 上 原 価 90,815 売 上 総 利 益 8,347 販 売 費 及 び 一 般 管 理 費 4,661 営 業 利 益

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1 予 算 の 姿 ( 平 成 25 当 初 予 算 ) 長 野 県 財 政 の 状 況 H 現 在 長 野 県 の 予 算 を 歳 入 面 から 見 ると 自 主 財 源 の 根 幹 である 県 税 が 全 体 の5 分 の1 程 度 しかなく 地 方 交 付 税 や 国 庫 支

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通 知 カード と 個 人 番 号 カード の 違 い 2 通 知 カード ( 紙 )/H27.10 個 人 番 号 カード (ICカード)/H28.1 様 式 (おもて) (うら) 作 成 交 付 主 な 記 載 事 項 全 国 ( 外 国 人 含 む)に 郵 送 で 配 布 希 望 者 に 交

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2 職 員 の 平 均 給 与 月 額 初 任 給 等 の 状 況 (1) 職 員 の 平 均 年 齢 平 均 給 料 月 額 及 び 平 均 給 与 月 額 の 状 況 ( 平 成 25 年 4 月 1 日 現 在 ) 1) 一 般 行 政 職 福 島 県 国 類 似 団 体 平 均 年 齢 平

40 総 論 41 法 人 課 税 01 租 税 法 概 論 ( 4001 ) 02 税 制 の 動 向 ( 4002 ) 91 事 例 研 究 ( 4091 ) 99 その 他 ( 4099 ) 01 法 人 税 ( 4101 ) 3. 税 務 官 庁 の 組 織 4. 不 服 申 立 て 税 務

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はファクシミリ 装 置 を 用 いて 送 信 し 又 は 訪 問 する 方 法 により 当 該 債 務 を 弁 済 す ることを 要 求 し これに 対 し 債 務 者 等 から 直 接 要 求 しないよう 求 められたにもかか わらず 更 にこれらの 方 法 で 当 該 債 務 を 弁 済 するこ

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(2) 単 身 者 向 け 以 外 の 賃 貸 共 同 住 宅 等 当 該 建 物 に 対 して 新 たに 固 定 資 産 税 等 が 課 税 される 年 から 起 算 して5 年 間 とする ( 交 付 申 請 及 び 決 定 ) 第 5 条 補 助 金 の 交 付 を 受 けようとする 者 は

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平 成 27 年 度 第 3 四 半 期 運 用 状 況 の 概 要 第 3 四 半 期 の 運 用 資 産 額 は 2 兆 4,339 億 円 となりました 第 3 四 半 期 の 修 正 総 合 収 益 率 ( 期 間 率 )は +2.05%となりました 実 現 収 益 率 は +1.19%です


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所令要綱

別紙3

Transcription:

溜 池 通 信 vol.590 Biweekly Newsletter April 22, 2016 双 日 総 合 研 究 所 吉 崎 達 彦 Contents ************************************************************************ 特 集 :G7 伊 勢 志 摩 サミットへの 道 1p < 今 週 の The Economist 誌 から> Two rights, wrong policy 2 つの 権 利 間 違 ったポリシー 8p <From the Editor> 熊 本 地 震 の 影 響 は? 9p ********************************************************************************** 特 集 :G7 伊 勢 志 摩 サミットへの 道 5 月 56-57 日 に 予 定 されている 伊 勢 志 摩 サミットまで いよいよ 残 り 1 か 月 尐 々となり ました この 政 治 イベントに 併 せて 消 費 増 税 の 延 期 や 解 散 総 選 挙 の 可 能 性 が 語 られて きましたが ここへきて 2 つのワイルドカードが 飛 び 込 んで 内 外 の 情 勢 はますます 視 界 不 良 になってきた 感 があります ひとつは 4 月 3 日 に 公 表 された パナマ 文 書 で 既 にアイスランドの 首 相 が 辞 任 に 追 い 込 まれています もうひとつは 4 月 14 日 と 16 日 に 連 続 して 九 州 を 襲 った 熊 本 地 震 で 日 本 経 済 への 影 響 が 懸 念 されるのみならず 政 治 動 向 も 左 右 されそうです 今 回 の 伊 勢 志 摩 サミットでは 何 がテーマとなり 何 が 成 功 のカギを 握 るのか そして 安 倍 首 相 は 何 を 考 えているのかを 探 ってみました 世 界 経 済 見 通 しはまたも 下 方 修 正 4 月 12 日 IMF の 世 界 経 済 見 通 し (World Economic Outlook)の 最 新 版 が 公 表 され た WEO はもともと 4 月 と 10 月 に 改 訂 されていたが 近 年 は 状 況 の 変 化 が 激 しいた めに 1 月 と 7 月 も 併 せて 年 4 回 改 訂 されている 最 近 は 改 訂 のたびに 見 通 しは 下 方 修 正 を 繰 り 返 している 今 回 も 世 界 経 済 のベースラ イン 見 通 しは 前 回 1 月 に 比 べて 0.2%の 下 方 修 正 となり 2016 年 は 3.2% 成 長 2017 年 は 3.5% 成 長 となった ちなみに 今 年 2 月 に 発 表 された OECD の 世 界 経 済 見 通 しは 前 回 の 3.3%から 下 方 修 正 されて 3.0%であった 3%は 文 字 通 り 景 気 失 速 スレスレの 水 準 であり IMF と OECD は 揃 って 今 年 の 世 界 経 済 は 黄 色 信 号 と 見 なしていることになる 1

ということで 最 新 号 の WEO は Too Slow for Too Long という 表 題 がついてしまった 意 訳 すれば かくも 長 き 停 滞 といったところだろうか なにしろ 2012 年 以 来 連 続 して 3% 台 前 半 の 成 長 が 続 いている こんな 風 に 低 成 長 が 続 くと その 結 果 として 消 費 と 投 資 が 減 尐 し 世 界 全 体 の 潜 在 成 長 力 が 低 下 してしまう 最 近 の 貿 易 量 の 低 迷 と 資 源 価 格 の 下 落 は そのことを 雄 弁 に 物 語 っているように 見 える 1 World Economic Outlook 最 新 版 ( 単 位 :%) 2014 2015 2016 2017 全 世 界 3.4 3.1 3.2 3.5 先 進 国 1.8 1.9 1.9 2.0 アメリカ 2.4 2.4 2.4 2.5 ユーロ 圏 0.9 1.6 1.5 1.6 日 本 0.0 0.5 0.5-0.1 新 興 国 4.6 4.0 4.1 4.6 中 国 7.3 6.9 6.5 6.2 インド 7.2 7.3 7.5 7.5 ブラジル 0.1-3.8-3.8 0.0 ロシア 0.7-3.7-1.8 0.8 ASEAN5 4.6 4.7 4.8 5.1 世 界 貿 易 量 3.5 2.8 3.1 3.8 石 油 価 格 -7.5-47.2-31.6 17.9 非 燃 料 -4.0-17.5-9.4-0.7 今 回 の WEO について 日 本 国 内 では 日 本 経 済 の 2017 年 見 通 しがマイナス 成 長 になっ た( 前 回 に 比 べて 0.5% 引 き 下 げ) ことが 話 題 になっている だって 予 定 通 り 消 費 増 税 をやるんでしょ と 言 われているような 気 がするが これは 今 の 世 界 経 済 が 抱 えている 問 題 とはやや 文 脈 が 異 なっている 今 回 の WEO が 警 戒 しているのは 中 国 経 済 の 減 速 商 品 市 況 の 下 落 投 資 と 貿 易 の 減 速 新 興 国 への 資 金 フローの 不 足 地 政 学 的 リスク 英 国 の EU 離 脱 など である が 日 本 経 済 はこれらの 問 題 に 対 して 特 に 脆 弱 というわけではない 対 中 貿 易 依 存 度 はそれほど 高 くはなく 商 品 市 況 の 下 落 はむしろ 受 益 者 の 側 である 地 政 学 的 リス クも 他 国 ほど 切 実 ではなく Brexit の 風 圧 を 受 ける 度 合 いも 低 そうだ むしろ 日 本 は 安 全 だと 思 われている ゆえにこれらのリスクが 実 現 した 場 合 には と りあえず 円 を 買 っておけ というリスクオフの 円 高 が 生 じる 恐 れがある しかるに 日 本 政 府 が 円 高 は 困 る とアピールしても 他 の 先 進 国 が 素 直 に 受 け 止 めてくれるとは 思 えな い もう 3 年 間 も 円 安 を 許 容 してきたじゃないか その 間 にお 宅 はいったい 何 をしてき たんだ と 怒 られそうである しかも 今 年 に 入 って 月 次 の 貿 易 収 支 は 完 全 に 黒 字 に 転 じ ている いよいよ 金 融 政 策 では ごまかせなくなっているのではないだろうか 1 http://www.imf.org/external/pubs/ft/weo/2016/01/ 2

オフレコ 破 り から 見 えてきたもの それでは 今 の 世 界 経 済 が 共 有 している 問 題 と 解 決 策 は 何 か 安 倍 首 相 は 先 月 以 来 海 外 の 著 名 有 識 者 を 官 邸 に 呼 んで 勉 強 会 を 開 催 している 以 下 の 通 り ノーベル 経 済 学 賞 受 賞 者 が 3 人 もいるという 豪 華 な 講 師 陣 である 国 際 金 融 経 済 分 析 会 合 (* 印 はノーベル 賞 受 賞 者 ) 第 1 回 (3/16)ジョセフ スティグリッツ(コロンビア 大 教 授 )* 第 2 回 (3/17)デール ジョルゲンソン(ハーバード 大 教 授 )/ 岩 田 一 政 ( 日 経 センター 理 事 長 ) 第 3 回 (3/22)ポール クルーグマン(NY 市 立 大 教 授 )* 第 4 回 (4/7)ジャン ティロール( 仏 トゥールーズ 第 一 大 教 授 )* 第 5 回 (4/13)アンヘル グリア(OECD 事 務 局 長 )/シャンジン ウェイ= 魏 尚 进 (ADB チー フエコノミスト) 第 6 回 (4/21)ファティ ビロル(IEA 事 務 局 長 )/ポール スティーブンス(チャタムハウス 名 誉 フェロー)/ウィム トーマス(ロイヤル ダッチ シェル チーフエナジーアドバイザー) となると これらの 会 合 でどんな 意 見 交 換 が 行 われているかが 気 になるが あいにく 非 公 開 であり 配 布 資 料 だけがネットで 公 開 されることになっている 2 ところがこの 会 合 でのやり 取 りを 完 全 に 暴 露 してしまった 人 物 がいる 毎 度 お 騒 がせ のクルーグマン 教 授 で なんと 45 分 間 のやり 取 りを 英 文 のフルテキストに 起 こし 僕 が 東 京 で 言 ったこと と 題 してツイッターで 公 開 してしまったのである 3 会 合 は 全 体 で 45 分 間 クルーグマン 教 授 の 冒 頭 プレゼンは 10 分 だけで その 後 はじっ くり 質 疑 応 答 が 行 われている なかでも 安 倍 首 相 が 行 った 都 合 4 回 の 質 問 は 経 済 の 現 状 に 対 する 考 え 方 がよく 表 れていてまことに 興 味 深 い 冒 頭 の 質 問 はこんな 風 に 始 まる (PM Abe) About two years ago, I had a pleasure meeting with you, Professor Krugman. At that time, Japan was able to be going out of the deflation then we have set for ourselves the 2% inflation goal. We were talking during that time that a rocket has to go out of the atmospheric region, which means that an escape velocity has to be earned in order to lift the Japanese economy out of deflation and we were looking for a good speed to do that. 2 年 前 つまり 2014 年 秋 に 消 費 増 税 の 延 期 を 決 めたときの 会 合 のことを 言 っているのだ が デフレからの 脱 出 速 度 (Escape Velocity)が 大 事 と 言 っている どうもこの 二 人 は 日 本 経 済 の 処 方 箋 についてほとんど 意 見 が 一 致 している もっと 言 えば 2014 年 春 の 消 費 増 税 で 脱 出 速 度 を 損 なった と 反 省 しているのではないか 2 https://www.kantei.go.jp/jp/singi/kokusaikinyu/ 3 https://www.gc.cuny.edu/cuny_gc/media/liscenter/pkrugman/meeting-minutes-krugman.pdf 3

安 倍 首 相 は 経 済 政 策 では リベラル 派 4 回 の 質 問 で 安 倍 首 相 が 提 起 した 論 点 は 下 記 の 通 りである 1. 財 政 出 動 をすべきだと 思 うが 日 本 には 累 積 債 務 の 問 題 がある これをどう 思 うか? 2. 欧 州 では VAT の 引 き 上 げは 大 きな 影 響 がないが 日 本 はなぜこれほど 大 きいのか? 3. EU におけるギリシャ 財 政 問 題 をどう 見 ているか? 4. 国 際 社 会 は 財 政 余 力 (Fiscal Space)について 協 調 すべきだが もっとも 大 きな 余 地 の あるドイツをどうやったら 説 得 できるか? 1~3 の 問 いに 対 するクルーグマン 教 授 の 回 答 は いずれもキレのない 平 凡 なものばかり でここでは 省 略 する 問 題 は 4 で 安 倍 首 相 は これはオフレコだが これから 私 はドイ ツを 訪 問 する 予 定 だが 説 得 するアイデアはないだろうか と 尋 ねている これに 対 し クルーグマン 教 授 は メルケル 首 相 は 困 難 な 状 況 にある 温 暖 化 対 策 であれば 合 意 可 能 かもしれない ただし 外 交 は 私 の 専 門 ではないので と 言 葉 を 濁 している サミットの 議 長 役 に 賭 ける 安 倍 首 相 の 熱 意 が 伝 わってくるやり 取 りだが こんな 風 に 天 下 に 公 表 されてしまうと 日 独 関 係 にとってはマイナスになってしまう 尐 なくとも こ の 後 に 行 われるメルケル 首 相 との 会 談 は 非 常 に 気 まずいものになるだろう 4 一 連 のやり 取 りから 浮 かび 上 がってくるのは 安 倍 首 相 はクルーグマン 教 授 との 間 で 認 識 が 一 致 していて サマーズ 教 授 の 長 期 停 滞 論 のような 経 済 観 を 共 有 しているという ことだ すなわち 財 政 出 動 の 必 要 性 を 痛 感 していて G7 サミットの 場 でどうしたら 他 国 に 支 出 を 促 すことができるかを 考 えている さらに 言 えば これ 以 上 の 金 融 政 策 はさす がに 限 界 との 認 識 も 有 しているように 見 える 外 交 安 保 政 策 では 保 守 派 で ときには 国 家 主 義 的 とも 呼 ばれる 安 倍 首 相 だが 経 済 観 はかくもリベラルで 財 政 節 度 などは 気 にかけていない 思 えば 企 業 に 賃 上 げや 女 性 登 用 を 求 める 姿 勢 もいかにも 介 入 主 義 的 で 普 通 の 小 さな 政 府 路 線 の 政 治 家 ではない 今 回 の G7 でも 財 政 出 動 の 国 際 協 調 に 賭 ける 意 気 込 みはいかにも 深 そうだ しかし 現 実 問 題 として 米 国 では 議 会 共 和 党 が 財 政 支 出 に 反 対 するだろう ドイツは 健 全 財 政 を 目 指 す 強 い 意 思 があり 英 国 はキャメロン 首 相 がパナマ 文 書 で 逆 風 を 受 けている 財 政 出 動 に 同 調 できるのは 日 本 とカナダくらいではないだろうか 国 際 協 調 は 口 で 言 う 程 簡 単 ではないのである 4 なぜクルーグマン 教 授 はこんな オフレコ 破 り をしたのか 怖 いものなしの 同 教 授 だが おそらくは リベラル 派 の 友 人 たちから アベは 危 険 な 保 守 タカ 派 政 治 家 だぞ と 警 告 されるのが 嫌 で 内 容 を 全 部 ぶちまけてしまったのではないかと 想 像 する 同 教 授 は 1990 年 代 から 日 本 はリフレ 政 策 を 採 るべきだ と 主 張 していて それを 実 行 したアベノミクスを 一 貫 して 高 く 評 価 している ともあれ 安 倍 首 相 の 考 え 方 がよく 分 かったという 点 で 同 教 授 の オフレコ 破 り には 深 く 感 謝 しなければならない 4

G7 サミットの 傾 向 と 対 策 あらためて 近 年 のサミットを 振 り 返 ってみると 2014 年 に クリミア 併 合 問 題 でロシ アが 排 除 され G8 から G7 へ の 移 行 が 一 段 落 したところである 2016 年 は G7 に 戻 っ て 3 度 目 の 会 合 となり ロシアの 復 帰 は 当 分 ないだろう そんな 中 で 安 倍 首 相 は G7 と ロシアの 間 に 立 つことでプーチン 大 統 領 に 恩 を 売 る 狙 いがあるようだ 過 去 のパターンを 振 り 返 ってみると 英 国 の 税 制 ドイツの 気 候 変 動 など 議 長 国 は 自 国 内 で 受 けのいいテーマを 取 り 上 げる 傾 向 がある 2016 年 の 場 合 は 日 本 が 消 費 増 税 を 控 えていることもあり やはり 財 政 支 出 と 租 税 回 避 問 題 が 焦 点 となるのであろう G7 サミットの 傾 向 (*は 議 長 国 ) 回 42 41 40 39 日 時 2016 2015 2014 2013 5/27-28 6/7-8 6/4-5 6/17-18 開 催 場 所 伊 勢 志 摩 日 本 エルマウ 独 ブラッセル EU ロックアーン 英 日 安 倍 首 相 (*) 安 倍 首 相 安 倍 首 相 安 倍 首 相 米 オバマ 大 統 領 オバマ 大 統 領 オバマ 大 統 領 オバマ 大 統 領 英 キャメロン 首 相 キャメロン 首 相 キャメロン 首 相 キャメロン 首 相 (*) 仏 オランド 大 統 領 オランド 大 統 領 オランド 大 統 領 オランド 大 統 領 独 メルケル 首 相 メルケル 首 相 (*) メルケル 首 相 メルケル 首 相 伊 レンツィ 首 相 レンツィ 首 相 レンツィ 首 相 レッタ 首 相 加 トルードー 首 相 ハーパー 首 相 ハーパー 首 相 ハーパー 首 相 露 - - - プーチン 大 統 領 EU ユンケル/トゥスク ユンケル/トゥスク ファンロンパイ/バローゾ(*) ファンロンパイ/バローゾ 経 済 問 題 経 済 の 長 期 低 迷 気 候 変 動 エネルギー 世 界 経 済 貿 易 Trade/Tax/Transparency 貿 易 自 由 化 G7 価 値 観 貿 易 エネルギー 気 候 変 動 税 マネロン 対 策 租 税 回 避 問 題 質 の 高 いインフラ オープンデータ 憲 章 政 治 問 題 シリア イラク ISIL ウクライナ 問 題 ウクライナ 問 題 シリア テロ 対 策 イラン 核 交 渉 東 アジア 航 行 の 自 由 北 朝 鮮 北 朝 鮮 シリア イラク ISIL 国 際 情 勢 石 油 価 格 の 低 迷 AIIB と TPP ロシアのクリミア 併 合 アルジェリア テロ 事 件 難 民 問 題 石 油 価 格 下 落 特 記 事 項 オバマ 広 島 訪 問? 開 発 女 性 保 健 分 野 ソチ G8 をボイコット アベノミクス 始 まる パナマ 文 書 ハーグでも G7(3/24) こうしてみると 伊 勢 志 摩 サミットには 以 下 の 3 つのポイントがあると 言 える 1. 経 済 問 題 : 財 政 出 動 の 国 際 協 調 を 実 現 できるかどうか 他 国 の 同 調 がない 中 で 本 来 は Fiscal Space が 乏 しいはずの 日 本 が 先 行 するようではいかにも 危 うい 2. 政 治 問 題 : 難 民 やテロ 対 策 など 欧 州 が 苦 しんでいる 問 題 で 実 効 性 のある 解 決 策 を 日 本 が 議 長 国 としてまとめられるか 3. 特 記 事 項 :オバマ 大 統 領 の 広 島 訪 問 が 実 現 するか 最 後 の G7 サミットに 出 席 するオ バマ 大 統 領 としては 自 らのレガシーづくりを 考 えているだろう 5

最 後 の 点 については いろんな 偶 然 が 重 なってチャンスの 窓 が 開 いた 印 象 がある 大 統 領 選 挙 の 年 に 去 りゆく 大 統 領 が 歴 史 問 題 で 物 議 を 醸 すことは 普 通 なら 考 えられない ところが 4 月 19 日 の NY 州 予 備 選 挙 が 終 わった 後 は 6 月 7 日 のカリフォルニア 州 予 備 選 挙 まで 大 統 領 選 挙 に 一 種 の 空 白 期 間 ができるのだ しかもこの 間 共 和 党 のフロントランナーはドナルド トランプ 氏 である オバマ 大 統 領 としては 彼 に 広 島 訪 問 を 非 難 されるのなら あんまり 痛 くない と 割 り 切 っている のではないだろうか ちなみにトランプ 候 補 は この 問 題 には 今 のところ 触 れていない 政 治 日 程 を 揺 るがすワイルドカード さて 最 後 に 今 後 の 政 治 日 程 を 見 ておこう G7 サミットへのワイルドカードとなりそうなのが ここへきて 飛 び 出 した パナマ 文 書 である 国 際 調 査 情 報 ジャーナリスト 連 合 (ICIJ)は 5 月 上 旬 に 租 税 回 避 に 関 わった 21 万 4000 社 のリストを 公 表 する 予 定 有 名 企 業 の 名 前 が 出 たり 大 物 政 治 家 の 不 正 蓄 財 が 明 るみに 出 たりするようなら 当 然 大 騒 ぎになるだろう 本 来 タックスヘイブンは 存 在 そのものが 悪 というわけではない 5 汚 職 があるからタッ クスヘイブンが 使 われるわけであって その 逆 は 真 ではない 本 号 P8 の The Economist 誌 記 事 のように 税 については 透 明 性 よりもプライバシーの 方 が 大 事 と 達 観 できれば 良 いのだが 格 差 問 題 に 対 して 世 界 的 な 怒 りが 蓄 積 されている 現 状 では 何 かあれば 簡 単 に 魔 女 狩 り が 起 きてしまいそうである もうひとつ 読 み 切 れないのが 熊 本 地 震 の 影 響 である 普 通 に 考 えて こんな 天 災 が 訪 れているときに 解 散 総 選 挙 はないだろう 年 初 から 円 高 株 安 が 進 み 4 月 24 日 の 補 欠 選 挙 では 注 目 の 北 海 道 第 5 区 が 接 戦 になるなど 当 初 の 想 定 に 比 べてダブル 選 挙 がやり にくくなっていたことは 否 めない これで 5 月 の 大 型 連 休 に 衆 議 院 議 員 が 一 斉 に 選 挙 活 動 に 走 り 出 したら いよいよ 止 められなくなるところであった 安 倍 首 相 にとっては 伝 家 の 宝 刀 を 静 かに 納 める 良 いきっかけになったかもしれない 他 方 消 費 増 税 の 延 期 については 新 たな 理 由 づけが 加 わったようなものである それ よりも 熊 本 地 震 の 日 本 経 済 への 影 響 を 見 定 めることが 先 決 であろう これで 景 気 が 腰 折 れするようでは 目 も 当 てられない とりあえず 5 月 18 日 に 公 表 される 1-3 月 期 GDP の 速 報 値 などは もはやどうでもいい 話 になってしまった 相 場 用 語 では 震 災 に 売 りなし という 果 たしてどうだろうか 5 OECD の 推 計 (2015 年 10 月 )によれば BEPS(Base Erosion and Profit Shifting= 税 源 の 浸 食 と 利 益 移 転 )による 税 収 の 損 失 は 1000~2400 億 ドル 世 界 全 体 の 法 人 税 収 の 4~10%に 達 するとのこと 確 かに 大 きな 金 額 ではあるが 逆 に 言 えば 法 人 税 の 9 割 以 上 は 既 に 捕 捉 されていることになる 6

当 面 の 主 要 政 治 外 交 日 程 ( 国 内 政 治 : 赤 米 大 統 領 選 : 青 金 融 政 策 : 紫 不 確 定 リスク: 緑 ) 4 月 ICIJ が パナマ 文 書 を 一 部 公 表 (4/3) G20 財 務 相 中 央 銀 行 総 裁 会 議 (ワシントン 4/14-15) 熊 本 大 分 地 震 (4/14&16) 世 銀 IMF 春 季 会 合 (ワシントン 4/16) ニューヨーク 州 予 備 選 挙 (4/19)=95 人 ECB 理 事 会 (4/21) 衆 院 補 欠 選 挙 = 北 海 道 第 5 区 京 都 3 区 (4/24) ペンシルバニア 州 予 備 選 挙 (4/26)=71 人 ほか CT(18) DE(28) MD(38) RI(19) FOMC(4/26-27) 日 銀 MPM(4/27-28) 5 月 安 倍 首 相 が 欧 州 ロシアを 歴 訪 ( 大 型 連 休 ) インディアナ 州 予 備 選 挙 (5/3)=57 人 北 朝 鮮 労 働 党 が 36 年 ぶりの 党 大 会 (5/7 日 頃?) ICIJ が 法 人 個 人 情 報 を 公 表 ( 上 旬?) 内 閣 府 が 1-3 月 期 GDP 速 報 値 を 公 表 (5/18) 台 湾 新 総 統 の 就 任 式 (5/20) G7 財 務 相 中 央 銀 行 総 裁 会 議 ( 仙 台 5/20-21) G7 伊 勢 志 摩 サミット(5/26-27) オバマ 大 統 領 の 広 島 訪 問?(5/28) 政 府 が 一 億 総 活 躍 プランを 発 表 (5 月 下 旬 ) 補 正 予 算 骨 太 方 針 新 たな 成 長 戦 略 など(5 月 末?) 6 月 通 常 国 会 閉 会 (6/1) OPEC 総 会 (6/2) ECB 理 事 会 (6/2) シャングリラ 会 議 (シンガポール 6/4-5) カリフォルニア 州 など 5 州 で 予 備 選 挙 (6/7)=172 人 FOMC(6/14-15) 日 銀 MPM(6/15-16) 上 海 ディズニーランドが 開 業 (6/16) 改 正 公 職 選 挙 法 が 施 行 投 票 年 齢 が 18 歳 以 上 に(6/19) 英 国 が EU 離 脱 に 関 する 国 民 投 票 (6/23) 7 月 日 銀 短 観 (1 日 ) 参 議 院 選 挙 (10 日?) W 選 挙 説? 共 和 党 大 会 (クリーブランド 7/18-21) ECB 総 会 (7/21) 民 主 党 大 会 (フィラデルフィア 7/25-28) FOMC(7/26-27) 日 銀 MPM(7/28-29) 8 月 IOC 総 会 (リオデジャネイロ 8/1-2) 夏 季 五 輪 (リオデジャネイロ 8/5-21) TICAD Ⅵ(ナイロビ 8/27-28) 9 月 G20 首 脳 会 議 ( 杭 州 9/4-5) パラリンピック(リオデジャネイロ 9/7-18) 7

< 今 週 の The Economist 誌 から> Two rights, wrong policy Leaders 2 つの 権 利 間 違 ったポリシー April 16 th 2016 * 世 上 騒 然 の パナマ 文 書 問 題 ですが 透 明 性 よりもプライバシーが 大 事 とスパッ と 言 えてしまう The Economist 誌 は 本 当 に 尊 敬 に 値 するメディアだと 思 います < 抄 訳 > 富 裕 層 による 租 税 回 避 地 の 使 用 を 示 す 巨 大 データ パナマ 文 書 は 既 にアイスランド の 首 相 を 辞 任 させ 今 は 英 国 首 相 を 苦 しめている デイビッド キャメロンは その 家 族 がオフショア 税 制 を 使 ったことを 暴 露 されても 職 を 失 わないだろうし 失 うべきでもな い だが 政 治 家 は 納 税 記 録 を 公 表 すべきしとの 声 が 高 まるだろう キャメロン 氏 は 4/10 に 6 年 分 の 納 税 データを 公 表 したが これは 英 国 首 相 として 初 めての 行 為 である 個 人 の 納 税 情 報 の 開 示 は 英 国 のみの 問 題 ではない 米 国 では 大 統 領 候 補 が 納 税 記 録 を 公 表 するのが 通 例 だ(ドナルド トランプはその 要 請 に 抗 している) ノルウェー スウェ ーデン フィンランドでは すべての 人 の 納 税 記 録 がネットで 開 示 されている この 問 題 で 線 引 きは 簡 単 ではない 透 明 性 とプライバシーという 2 つの 原 則 が 衝 突 するからだ 北 欧 式 の 過 激 な 透 明 性 を 是 とする 理 由 は 2 つある ひとつは 悪 事 を 減 らすということで 友 人 や 同 僚 たちが 自 分 の 書 類 に 目 を 注 ぐと 思 えば 節 税 のために 極 端 な 手 法 を 使 うことを ためらうだろう ノルウェーが 2001 年 からネット 公 開 を 始 めたときは 企 業 経 営 者 の 申 告 が 3% 増 えている もうひとつは 情 報 が 増 えれば 良 い 選 択 ができるというもので 個 人 は 職 業 選 択 の 材 料 とできるし 政 府 は 同 一 賃 金 などの 問 題 を 検 証 することができる 反 論 も 何 通 りかある 悪 事 は 形 を 変 えるだけで なくならないだろう 例 えば 北 欧 の 善 良 な 人 たちも しばしば 会 社 を 財 団 保 有 にして 税 金 を 減 らしている そして 透 明 性 はむし ろ 騒 ぎの 種 を 撒 きそうだ ノルウェーではこの 習 慣 は 単 に 税 金 覗 き を 満 足 させるだ けだとの 不 満 が 多 い 収 入 分 布 や 男 女 格 差 のデータは 他 の 手 法 でも 入 手 可 能 である プライバシーを 重 視 すべきなのは それ 自 体 が 重 要 な 権 利 だからだ 万 人 の 税 情 報 を 公 有 とするなら それが 最 善 の 道 であることを 立 証 すべきだが その 論 拠 は 弱 い 税 逃 れを なくすには 恥 の 意 識 に 訴 えるよりも 税 制 を 単 純 化 し 税 当 局 に 力 を 与 えるべきである それではもう 尐 し 絞 って 政 治 家 や 権 威 あるポストにのみ 情 報 開 示 を 求 めるのはどうか しかるに 公 職 にある 人 たちはもともとプライバシーが 尐 ない 法 律 を 作 る 人 たちは 利 益 相 反 がないことを 示 すべきであり もし 現 行 システムが 機 能 していないなら それを 直 すこ とが 先 決 であろう 公 人 のみが 税 金 は 丸 見 えというのであれば 多 くの 有 能 な 人 たちが 入 ってこなくなる ネット 世 論 調 査 によれば 68%もの 英 国 人 が 政 治 家 は 税 申 告 を 公 開 すべ しと 述 べている そうする 人 は 増 えているけれども 義 務 ではなく 選 択 制 とすべきである 透 明 性 がプライバシーに 優 先 すべしという 議 論 は 十 分 に 説 得 的 ではない 8

<From the Editor> 熊 本 地 震 の 影 響 は? 5 年 前 の 記 憶 が 蘇 ってきます 東 日 本 大 震 災 の 直 後 これで 経 済 が 受 ける 影 響 は? と 考 えると データがまったく 見 当 たらなくて 途 方 に 暮 れたものです なにしろ 発 災 以 前 の 予 測 は 無 効 になっていて 以 後 のデータが 入 手 できるのは 1 か 月 以 上 先 のことになる これでどうやって 経 済 予 測 をすればいいのか 今 回 の 熊 本 地 震 では 九 州 の 産 業 集 積 地 が 被 害 を 受 けている だとすれば 相 当 なサプ ライチェーン 問 題 が 生 じるように 思 える 他 方 企 業 は 5 年 前 の 経 験 に 懲 りてさまざまな 防 衛 策 を 用 意 しているはず それがどういう 結 果 をもたらすか つまるところまたまた 手 探 りで 情 報 を 集 めていくしかないわけです せめてもの 基 礎 知 識 として 九 州 経 済 産 業 局 が 出 している 九 州 経 済 の 現 状 (2016 年 冬 バージョン)をチェックしてみました * 面 積 は 4 万 2231 平 方 キロで 全 国 の 11.2% 人 口 は 1302 万 人 で 全 国 の 10.2% * 事 業 所 数 は 約 60 万 で 全 国 の 10.4% * 域 内 総 生 産 は 43 兆 6765 億 円 で 全 国 の 8.7% * 製 造 品 出 荷 額 は 22.2 兆 円 で 全 国 シェアは 7.3% * 商 業 販 売 額 は 34.4 兆 円 で 全 国 シェアは 7.2% * 農 業 産 出 額 は 1.7 兆 円 で 全 国 シェアは 20.2% 関 東 に 次 いで 高 い * 貿 易 (2015 年 )は 輸 出 が 5.96 兆 円 輸 入 が 5.68 兆 円 で 収 支 は 2765 億 円 の 黒 字 ざっくり 言 って 九 州 は 全 国 の 1 割 経 済 です ただし 鋼 船 竣 工 実 績 では 全 国 の 31.7% IC の 生 産 金 額 で 27.0% 自 動 車 生 産 台 数 では 14.6%を 占 めている 特 に 裾 野 が 広 い 自 動 車 産 業 と 電 機 産 業 の 影 響 度 は 大 ということになります 続 いて 熊 本 県 について カッコ 内 の 数 字 は 九 州 における 熊 本 県 のシェアを 示 します * 面 積 :7409 平 方 キロ(17.5%) * 人 口 :179 万 人 (13.7%) * 県 内 総 生 産 :5.6 兆 円 (12.9%) * 製 造 品 出 荷 額 :2.5 兆 円 (11.1%) * 卸 売 販 売 額 :2.1 兆 円 (9.2%) * 小 売 販 売 額 1.6 兆 円 (13.4%) 思 ったほど 大 きくはないようです 九 州 経 済 はやはり 福 岡 県 のプレゼンスが 大 きく 人 口 でも 域 内 総 生 産 でも 小 売 販 売 額 でも 4 割 程 度 を 占 めているのですね それでも 熊 本 県 経 済 にはハイテク 産 業 が 立 地 しており 今 後 の 自 動 車 部 品 や 半 導 体 の 供 給 が 気 がかりです 農 業 県 なので トマト 1 位 (411 億 円 ) 肉 用 牛 4 位 (337 億 円 ) 生 乳 3 位 (251 億 円 ) いちご 4 位 (102 億 円 )などの 出 荷 も 影 響 しそう 好 調 な 観 光 産 業 は 消 費 額 が 年 間 2918 億 円 堅 調 なインバウンドに 支 えられ 外 国 人 客 48.4 万 人 の 92.2% はアジアから 来 ていますが それもさすがに 減 尐 しそうです 9

九 州 を 襲 った 2 回 連 続 の 震 度 7 の 揺 れから 1 週 間 がたち なおも 9 万 人 が 避 難 して いるとのこと 幸 いなことに 津 波 や 原 子 力 災 害 とは 無 縁 でしたが 今 度 の 震 災 では 家 屋 倒 壊 や 高 齢 化 の 影 響 が 大 きくなりそうです 人 手 不 足 も 気 になるところで 状 況 が 安 定 した らボランティアの 参 加 が 待 たれるところです それにしてもこれだけリスクの 高 い 地 震 列 島 に 1 億 2000 万 人 もが 住 んでいて 年 間 500 兆 円 の 付 加 価 値 を 生 み 出 し かなり 高 いレベルの 生 活 を 送 っているわけですから つ くづく 日 本 人 はたいしたものだと 思 います これから 先 もいろんな 自 然 災 害 に 出 くわすことでしょうが きっと 乗 り 越 えていけるは ず なにしろ 今 までだって ずっとそうだったわけですから * 次 号 は 連 休 を 挟 んで 2016 年 5 月 13 日 ( 金 )にお 送 りします 編 集 者 敬 白 本 レポートの 内 容 は 担 当 者 個 人 の 見 解 に 基 づいており 双 日 株 式 会 社 および 株 式 会 社 双 日 総 合 研 究 所 の 見 解 を 示 すものではありません ご 要 望 問 合 わせ 等 は 下 記 あてにお 願 します 100-8691 東 京 都 千 代 田 区 内 幸 町 2-1-1 飯 野 ビル http://www.sojitz-soken.com/ 双 日 総 合 研 究 所 吉 崎 達 彦 TEL:(03)6871-2195 FAX:(03)6871-4945 E-MAIL: yoshizaki.tatsuhiko@sojitz.com 10