などをあまり 表 立 って 討 議 しないというのが 日 本 文 化 だったのかもしれない 近 年 ファ シリテーションに 注 目 が 集 まっているということは それだけ 日 本 の 社 会 の 意 見 が 多 様 性 を 帯 びているということなのであろう ファシリテーション は 一 般 に 促



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Transcription:

2012/10/19 労 働 組 合 研 究 会 公 益 財 団 法 人 関 西 生 産 性 本 部 労 組 役 員 による 労 組 役 員 のためのファシリテーション 基 礎 講 座 島 津 労 働 組 合 副 組 合 長 井 上 信 治 ⒈ はじめに 私 が 高 校 の 英 語 の 先 生 から 習 ったことに ( 英 単 語 で) 日 本 語 に 訳 しくいものはそもそ も 日 本 文 化 になじみの 少 ないものである というものがある 例 えば identity(アイデン ティティ) 日 本 語 訳 としては 同 一 性 とされているが 主 旨 は その 人 そのもの の ことを 指 す IDカード(identity card) のIDのことで 現 在 は 広 まったが 私 が 高 校 時 代 の 頃 といったら 全 くどう 訳 をしていいか 分 からなかった これは 逆 に 言 えば identity(アイデンティティ) という 概 念 そのものが 日 本 にはあまりなじみがなかったと もいえよう 一 方 アメリカは 国 民 の 一 人 ひとりが 宗 教 民 族 皮 膚 の 色 などのその 人 自 身 のア イデンティティがあり 考 え 方 が 違 い 価 値 観 が 異 なる 人 々が 集 まってコミュニティを 作 っている 国 である この 人 たちがビジネスを 遂 行 し 地 域 社 会 で 行 動 していこうとすれば 各 人 各 様 の 集 まりであるから 意 見 が 一 つにまとまりにくいのは 当 然 である そのときに 出 てくる 言 葉 が facilitation(ファシリテーション) である これは いろいろな 価 値 観 意 見 の 相 違 がある 人 々がコミュニティを 作 るときに 一 つのツールとして 用 いられる 手 法 考 え 方 である この facilitation(ファシリテーション) も identity(アイデンティティ) と 同 様 に 日 本 語 に 訳 しにくい 言 葉 である つまりあまりなじみがなかった これまでは 意 見 の 相 違 - 1 -

などをあまり 表 立 って 討 議 しないというのが 日 本 文 化 だったのかもしれない 近 年 ファ シリテーションに 注 目 が 集 まっているということは それだけ 日 本 の 社 会 の 意 見 が 多 様 性 を 帯 びているということなのであろう ファシリテーション は 一 般 に 促 進 と 訳 されているが その 主 旨 は 言 葉 では 分 かりにくい 今 日 の 講 演 は ファシリテーション とは 何 かというところを 分 かっても らいたいことがひとつ ただ ファシリテーション の 講 義 において 著 名 な 先 生 や 講 演 はたくさんあるが あえて 労 組 役 員 による~ というタイトルをつけさせていただいた ので 労 働 組 合 とってのファシリテーションの 意 義 を 私 見 ではあるが 話 しをしてみたい ⒈ ファシリテーションとは NPO 法 人 日 本 ファシリテーション 協 会 のホームページでは 図 のように4つのシ ーンで ファシリテーション を 説 明 している まず 場 のデザイン では 場 をつくり 人 々をつなげる 役 割 がある まず いろ いろな 価 値 観 のある 人 が 集 まる 場 を 作 る 自 由 に 表 現 や 発 言 できる 場 をつくる 次 の 対 人 関 係 では 受 け 止 め 引 き 出 す 働 きをする 全 員 がそれぞれ 意 見 を 出 し 合 うときに どのように 人 々の 意 見 を 引 き 出 すか また 出 された 意 見 をどう 受 け 止 めるかである みんなから 意 見 が 出 ると それを 構 造 化 すなわち かみ 合 わせ 整 理 する ことになる 全 体 の 意 見 を 見 えるように わ かりやすく 整 理 する ( 構 造 化 ) 全 体 として 何 が 起 こっているかがわかれば 次 はこのような 取 り 組 みをしてみよう とアイデアも 見 つけやすい このような 流 れを ま とめて 分 かち 合 う ことによって 合 意 形 成 が 図 られる - 2 -

このサイクルで4つのシーンをうまく 回 すことによって 多 種 多 様 な 意 見 を 最 終 的 に 合 意 形 成 にまでもっていくことが ファシリテーション である ⒉ 労 働 組 合 におけるファシリテーション 同 協 会 のホームページでは ファシリテーション を 使 う 場 面 の 効 用 としてファ シリテーションが 有 効 な 働 きをする 場 面 を 挙 げている まず 第 一 のがビジネスの 世 界 そ して 次 に 来 るのがなんと 労 働 組 合 である ( 私 は 会 員 であるが 私 が 推 したなどということ はない)ただ ホームページによる 同 協 会 の 労 働 組 合 への 効 用 の 解 説 は 解 説 としては 間 違 っていないが 文 章 を 書 いた 人 は 組 合 活 動 の 経 験 があまりない 人 だと 思 った 私 なりに いろいろ 考 えて 行 き 着 いたファシリテーションの 労 働 組 合 への 意 義 を 説 明 したい ⒉-1 対 立 から WIN-WIN まず 労 働 組 合 をとりまく 今 どき の 状 況 をみてみる 厚 生 労 働 省 から 公 表 されてい る 毎 月 勤 労 労 働 統 計 現 金 給 与 総 額 の 推 移 (2005 年 =100)といって 雇 用 者 の 賃 金 を 全 部 足 したものが 長 期 的 にどう 変 化 しているかをみてみよう 1970 年 から2010 年 の4 0 年 間 を 前 半 の20 年 と 後 半 の20 年 に 分 けると 前 半 の20 年 では( 名 目 ) 賃 金 は5 倍 になっているが 後 半 の20 年 (1990 年 )でほぼ 横 ばい 状 態 である 1 この 後 半 20 年 以 降 を 私 は 今 どき と 呼 んでいる 1970 年 といえば 近 年 定 年 退 職 を 迎 える60 歳 の 人 たちが 就 職 した 時 代 である つまり 今 定 年 を 迎 える 人 たちは 入 社 から20 年 で 賃 金 が 5 倍 になったということ 個 別 というより 全 体 の 賃 金 のパイからしてだいたい5 倍 になっ たイメージである 定 年 を 迎 えるその 人 たちから 現 在 の 労 働 組 合 の 活 動 に 対 して 昔 の 労 組 は 強 かったのに とお 叱 りを 受 けることがある 一 方 今 の 若 手 の 組 合 員 にすれば 先 輩 たちは 賃 金 が5 倍 になっているのに われわれの 賃 金 は 据 え 置 かれたままであるとい 1 鍋 田 周 一 氏 論 文 労 働 と 経 済 1536 号 (2011 年 12 月 10 日 ) 参 照 - 3 -

った 不 満 がある これもまた 労 働 組 合 へお 叱 りを 受 ける しかし これからの 日 本 で 賃 金 の 全 体 のパイが5 倍 になるなんてイメージできるだろうか 少 なくとも 今 の 時 代 の 賃 金 の 原 資 となる パイ は 同 じで 賃 上 げ 要 求 を 実 現 させようとすれば 誰 かの ふところ から 原 資 分 を 奪 うことになる 詩 人 相 田 みつをの 分 け 合 えば の 作 品 にあるように 奪 い 合 えば 足 らぬ 分 け 合 えば 余 る 状 態 である 労 働 組 合 の 立 場 から 考 えると 分 け 合 い 型 の 考 えに 変 換 しなければ 今 後 の 組 合 運 営 はできないと 思 う 処 遇 をよくしようという 議 論 する 場 合 その 原 資 をどこからか 見 つけ 出 してこなければならない 正 社 員 は 派 遣 社 員 から 奪 っているのかもわからない あるい は 外 国 の 子 会 社 の 人 たちから 奪 っているのかもわからない 組 合 としてこのことを 十 分 認 識 する 必 要 がある ただし この 奪 い 合 い から 分 け 合 い への 変 換 はそう 簡 単 で 生 易 しいなものでは ない この 変 換 を 進 めていくためには 今 までの 考 えを 対 立 から WIN-WIN に 変 え る 必 要 がある みんなが 意 見 を 出 し 合 って 背 景 を 探 り 対 立 を 回 避 し WIN-WIN にな るように 考 えなければならない そのツールがまさに ファシリテーション そのもので ある ⒉-2 組 合 員 はお 客 様 か 否 か からたどり 着 いた 答 え 次 に 執 行 部 と 組 合 員 の 関 係 今 日 は 労 組 役 員 のための~ ということなので みな さんが 何 らかの 形 で 労 組 役 員 をされていることをイメージして 話 したい 私 が 執 行 部 に 入 ったときにインパクトを 受 けた 方 として j-union の 西 尾 力 氏 を 挙 げる 西 尾 氏 は 21 世 紀 型 労 働 組 合 の 論 理 と 手 法 として 職 場 を 明 るく 楽 しく 元 気 よく(BEST 主 義 )するため の 新 しい 労 働 組 合 活 動 を 提 唱 している ここでは 会 社 と 共 に 価 値 観 を 作 っていく 労 使 関 係 ( 協 創 的 労 使 関 係 )を 築 く 一 方 マーケティングの 手 法 を 駆 使 し 組 合 員 を お 客 様 - 4 -

とみなした 考 えが 必 要 2としている つまり 組 合 員 に 対 してニーズを 調 査 し 何 が 必 要 か を 執 行 部 が 把 握 し それに 応 える 活 動 をしなければそっぽを 向 かれる 組 合 員 を お 客 様 と 捉 えることによって 新 しい 労 働 組 合 の 価 値 を 高 めていくチャンスであるとする 私 は 共 感 するところ 多 く そのようなことを 意 識 して 活 動 を 続 けてきた しかしながら 少 々 極 端 にいえば 私 も 含 め 執 行 部 は 疲 弊 し 組 合 員 の 御 用 聞 きのようになってしまい 労 働 組 合 活 動 とは 専 従 の 人 が 行 う 活 動 になってしまいつつあった そのときに 国 際 経 済 労 働 研 究 所 八 木 隆 一 郎 氏 に 出 会 い 大 きなお 叱 りを 受 けることになる 八 木 氏 は 心 理 学 者 の 立 場 から 労 働 組 合 の 関 与 をキーワードに 総 合 意 識 調 査 ( on ion2 )を 実 施 され 組 合 活 動 を 評 価 されている 執 行 部 が 考 えた 施 策 を 組 合 員 に 提 供 す る 際 に 組 合 員 はお 客 様 と 捉 えると 悪 循 環 を 引 き 起 こす 例 えば 組 合 執 行 部 が お 客 様 どういうことをさせていただきましょうか と 尋 ねると お 客 様 ( 組 合 員 ) は 年 休 が 取 り 易 くしてもらいたい と 答 える すると 執 行 部 はその 要 求 どおりに 取 り 組 み 会 社 と 交 渉 の 結 果 年 休 が 取 り 易 くなったとする すると 次 は 何 をお 望 みですか といったように 尋 ねていくと 要 求 は 次 々とエスカ レートしていく 組 合 員 は 何 もせず ただただ 執 行 部 が 疲 弊 するのみである このような 悪 循 環 を 生 む 労 組 は 沈 没 していく 組 合 員 はお 客 様 ではなく 同 じメンバーとして 関 与 を 高 めていくべきだと 八 木 氏 は 主 張 される この on i on2 総 合 意 識 調 査 では 組 合 活 動 への 関 心 組 合 員 にとって 役 に 立 ってい る 活 動 などを 調 査 内 容 としている この 調 査 を 関 係 会 社 グループの 単 組 にも 拡 大 して 分 か ったことは 当 労 組 の 組 合 員 は 他 に 比 べ お 客 様 になっていた ただ 労 組 は 役 に 立 っ ているか との 別 の 質 問 に 対 しては そこそこ 役 に 立 っている と 答 えている 執 行 部 は 頑 張 っているが 私 は 活 動 に 関 与 しない というのが 当 組 合 員 の 平 均 の 姿 である 当 労 組 は 執 行 部 が 課 題 解 決 能 力 を 発 揮 して 年 休 取 得 向 上 賃 金 引 上 げ 職 場 改 善 2 J-union 西 尾 力 労 働 組 合 超 活 動 法 -BEST 主 義 のリーダーシップ - 5 -

メンタルヘルスへの 取 組 みなどがある 程 度 は 実 現 しているが その 取 り 組 みをしていくに 従 って 組 合 員 はますます お 客 様 になっていく 一 方 あるグループ 会 社 の 調 査 で 失 礼 ながら 課 題 解 決 能 力 が 乏 しい 労 働 組 合 の 関 与 が 高 い 傾 向 も 見 られた つまり 任 せられない ということであり そうなると 組 合 員 の 関 心 は 高 まっている つまるところ 労 働 組 合 の 執 行 部 が 高 い 課 題 解 決 能 力 を 発 揮 すると 組 合 員 は お 任 せし ます となってしまい 関 与 は 低 くなる 一 方 執 行 部 の 課 題 解 決 能 力 が 乏 しければ 関 与 は 高 まるがそれが 望 ましい 姿 ともいえない 執 行 部 の 課 題 解 決 能 力 と 組 合 員 の 関 与 この2つの 両 立 はいったいどのようにすればいいのだろうか この 問 題 を 両 立 させるためにいろいろと 考 え 私 なりに 帰 着 した 点 は 現 場 の 問 題 は 現 場 の 知 恵 で 解 決 する ということである 執 行 部 は 現 場 の 問 題 を 現 場 の 知 恵 で 解 決 するよ うにしくみを 整 え 知 恵 を 結 集 することに 尽 力 する そうすると 組 合 員 の 関 与 も 高 まり 課 題 も 解 決 することになる ああそうかと これは 日 本 の 企 業 内 労 働 組 合 が 欧 米 から 高 く 評 価 された 所 以 ではなかったか 賃 金 が 低 いと 言 って 騒 ぎ 立 てるのではなく コスト を 下 げるためにわれわれはどうすべきか といったことを 労 組 も 考 えるところが 欧 米 の 労 組 と 異 なるところである 現 場 で 結 集 された 知 恵 で 解 決 される 手 段 はどんなコンサルタン トにも 負 けないだろうし 何 よりも 自 分 達 で 主 体 性 をもって 解 決 に 挑 むので 実 効 性 も 高 い では 現 場 のみんなの 意 見 を 引 き 出 し 課 題 を 整 理 して どうすればいいかという 合 意 形 成 へ 持 っていく ここのツールが そう ファシリテーション である 現 場 の 知 恵 の 結 集 と その 課 題 解 決 のための 実 行 に 重 要 なツールになる 以 上 の 視 点 で 労 働 組 合 における ファシリテーション の 意 義 は 大 変 高 いと 考 えている 3 ファシリテーションの 実 践 ファシリテーションを 体 感 してもらうために - 6 -

場 のデザイン:アイスブレーク 対 人 関 係 :A5フリップ 構 造 化 :ファシリテーショングラフィック そして 合 意 形 成 への 議 論 を 人 事 異 動 をきっかけに 見 えた 職 場 のコミュニケーションの 問 題 ~ 大 阪 支 店 を 救 おう! を 題 材 として 体 感 してもらった 労 働 組 合 役 員 のみなさんらし く 真 摯 で 熱 い 議 論 や 課 題 整 理 に 取 り 組 んでいただいた - 7 -