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養 老 保 険 の 減 額 払 済 保 険 への 変 更 1. 設 例 会 社 が 役 員 を 被 保 険 者 とし 死 亡 保 険 金 及 び 満 期 保 険 金 のいずれも 会 社 を 受 取 人 とする 養 老 保 険 に 加 入 してい る 場 合 を 解 説 します 資 金 繰 りの 都

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平成16年度

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別 紙 第 号 高 知 県 立 学 校 授 業 料 等 徴 収 条 例 の 一 部 を 改 正 する 条 例 議 案 高 知 県 立 学 校 授 業 料 等 徴 収 条 例 の 一 部 を 改 正 する 条 例 を 次 のように 定 める 平 成 26 年 2 月 日 提 出 高 知 県 知 事 尾

Microsoft PowerPoint - 基金制度

損 益 計 算 書 自. 平 成 26 年 4 月 1 日 至. 平 成 27 年 3 月 31 日 科 目 内 訳 金 額 千 円 千 円 営 業 収 益 6,167,402 委 託 者 報 酬 4,328,295 運 用 受 託 報 酬 1,839,106 営 業 費 用 3,911,389 一

定款

就 業 規 則 ( 福 利 厚 生 ) 第 章 福 利 厚 生 ( 死 亡 弔 慰 金 等 ) 第 条 法 人 が 群 馬 県 社 会 福 祉 協 議 会 民 間 社 会 福 祉 施 設 等 職 員 共 済 規 程 に 基 づき 群 馬 県 社 会 福 祉 協 議 会 との 間 において 締 結 す

市 町 村 税 の 概 況 市 町 村 税 の 概 況 は 平 成 25 年 度 地 方 財 政 状 況 調 査 平 成 26 年 度 市 町 村 税 の 課 税 状 況 等 の 調 及 び 平 成 26 年 度 固 定 資 産 の 価 格 等 の 概 要 調 書 等 報 告 書 等 の 資 料 に

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平成16年年金制度改正 ~年金の昔・今・未来を考える~

は 固 定 流 動 及 び 繰 延 に 区 分 することとし 減 価 償 却 を 行 うべき 固 定 の 取 得 又 は 改 良 に 充 てるための 補 助 金 等 の 交 付 を 受 けた 場 合 にお いては その 交 付 を 受 けた 金 額 に 相 当 する 額 を 長 期 前 受 金 とし

(1) 率 等 一 覧 ( 平 成 26 年 度 ) 目 課 客 体 及 び 納 義 務 者 課 標 準 及 び 率 法 内 に 住 所 を 有 する ( 均 等 割 所 得 割 ) 内 に 事 務 所 事 業 所 又 は 家 屋 敷 を 有 する で 内 に 住 所 を 有 し ないもの( 均 等

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ていることから それに 先 行 する 形 で 下 請 業 者 についても 対 策 を 講 じることとしまし た 本 県 としましては それまでの 間 に 未 加 入 の 建 設 業 者 に 加 入 していただきますよう 28 年 4 月 から 実 施 することとしました 問 6 公 共 工 事 の

国 家 公 務 員 の 年 金 払 い 退 職 給 付 の 創 設 について 検 討 を 進 めるものとする 平 成 19 年 法 案 をベースに 一 元 化 の 具 体 的 内 容 について 検 討 する 関 係 省 庁 間 で 調 整 の 上 平 成 24 年 通 常 国 会 への 法 案 提

Microsoft Word - 【溶け込み】【修正】第2章~第4章

年 金 払 い 退 職 給 付 制 度 における 年 金 財 政 のイメージ 積 立 時 給 付 時 給 付 定 基 (1/2) で 年 金 を 基 準 利 率 で 付 利 給 付 定 基 ( 付 与 利 の ) 有 期 年 金 終 身 年 金 退 職 1 年 2 年 1 月 2 月 ( 終 了 )

【労働保険事務組合事務処理規約】

2 役 員 の 報 酬 等 の 支 給 状 況 平 成 27 年 度 年 間 報 酬 等 の 総 額 就 任 退 任 の 状 況 役 名 報 酬 ( 給 与 ) 賞 与 その 他 ( 内 容 ) 就 任 退 任 2,142 ( 地 域 手 当 ) 17,205 11,580 3,311 4 月 1

平成24年度税制改正要望 公募結果 153. 不動産取得税

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m07 北見工業大学 様式①

資 格 給 付 関 係 ( 問 1) 外 国 人 Aさん(76 歳 )は 在 留 期 間 が3ヶ 月 であることから 長 寿 医 療 の 被 保 険 者 ではない が 在 留 資 格 の 変 更 又 は 在 留 期 間 の 伸 長 により 長 寿 医 療 の 適 用 対 象 となる 場 合 には 国

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公 的 年 金 制 度 について 制 度 の 持 続 可 能 性 を 高 め 将 来 の 世 代 の 給 付 水 準 の 確 保 等 を 図 るため 持 続 可 能 な 社 会 保 障 制 度 の 確 立 を 図 るための 改 革 の 推 進 に 関 する 法 律 に 基 づく 社 会 経 済 情

(5) 給 与 制 度 の 総 合 的 見 直 しの 実 施 状 況 について 概 要 の 給 与 制 度 の 総 合 的 見 直 しにおいては 俸 給 表 の 水 準 の 平 均 2の 引 き 下 げ 及 び 地 域 手 当 の 支 給 割 合 の 見 直 し 等 に 取 り 組 むとされている

平 成 34 年 4 月 1 日 から 平 成 37 年 3 月 31 日 まで 64 歳 第 2 章 労 働 契 約 ( 再 雇 用 希 望 の 申 出 ) 第 3 条 再 雇 用 職 員 として 継 続 して 雇 用 されることを 希 望 する 者 は 定 年 退 職 日 の3か 月 前 まで

平成25年度 独立行政法人日本学生支援機構の役職員の報酬・給与等について

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国立研究開発法人土木研究所の役職員の報酬・給与等について

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( 別 紙 ) 以 下 法 とあるのは 改 正 法 第 5 条 の 規 定 による 改 正 後 の 健 康 保 険 法 を 指 す ( 施 行 期 日 は 平 成 28 年 4 月 1 日 ) 1. 標 準 報 酬 月 額 の 等 級 区 分 の 追 加 について 問 1 法 改 正 により 追 加

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資料2 年金制度等について(山下委員提出資料)

経 常 収 支 差 引 額 等 の 状 況 平 成 26 年 度 予 算 早 期 集 計 平 成 25 年 度 予 算 対 前 年 度 比 較 経 常 収 支 差 引 額 3,689 億 円 4,597 億 円 908 億 円 減 少 赤 字 組 合 数 1,114 組 合 1,180 組 合 66

c. 投 資 口 の 譲 渡 に 係 る 税 務 個 人 投 資 主 が 投 資 口 を 譲 渡 した 際 の 譲 渡 益 は 株 式 等 に 係 る 譲 渡 所 得 等 として 原 則 20%( 所 得 税 15% 住 民 税 5%)の 税 率 による 申 告 分 離 課 税 の 対 象 となりま

社 会 保 障 税 一 体 改 革 ( 年 金 分 野 )の 経 緯 社 会 保 障 税 一 体 改 革 大 綱 (2 月 17 日 閣 議 決 定 ) 国 年 法 等 改 正 法 案 (2 月 10 日 提 出 ) 法 案 を 提 出 する または 法 案 提 出 を 検 討 する と された 事

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Taro-38 H 財形貯蓄事務取

私立大学等研究設備整備費等補助金(私立大学等

目 次 高 山 市 連 結 財 務 諸 表 について 1 連 結 貸 借 対 照 表 2 連 結 行 政 コスト 計 算 書 4 連 結 純 資 産 変 動 計 算 書 6 連 結 資 金 収 支 計 算 書 7

16 日本学生支援機構

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後期高齢者医療制度

税金読本(8-5)特定口座と確定申告

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検 討 検 討 の 進 め 方 検 討 状 況 簡 易 収 支 の 世 帯 からサンプリング 世 帯 名 作 成 事 務 の 廃 止 4 5 必 要 な 世 帯 数 の 確 保 が 可 能 か 簡 易 収 支 を 実 施 している 民 間 事 業 者 との 連 絡 等 に 伴 う 事 務 の 複 雑

事 業 税 の 外 形 標 準 課 税 事 業 税 は 都 道 府 県 が 所 得 ( 利 益 )に 対 して 課 税 します 1. 個 人 事 業 税 業 種 区 分 税 率 ( 標 準 税 率 ) 第 1 種 事 業 ( 物 品 販 売 業 製 造 業 金 銭 貸 付 業 飲 食 店 業 不 動

福 岡 厚 生 年 金 事 案 4486 第 1 委 員 会 の 結 論 申 立 人 の 申 立 期 間 については その 主 張 する 標 準 報 酬 月 額 に 基 づく 厚 生 年 金 保 険 料 を 事 業 主 により 給 与 から 控 除 されていたことが 認 められることから 申 立 期


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入 札 参 加 者 は 入 札 の 執 行 完 了 に 至 るまではいつでも 入 札 を 辞 退 することができ これを 理 由 として 以 降 の 指 名 等 において 不 利 益 な 取 扱 いを 受 けることはない 12 入 札 保 証 金 免 除 13 契 約 保 証 金 免 除 14 入

18 国立高等専門学校機構


第 2 問 問 4 問 5 1ロ 2チ 3ヲ 4ホ ⅰ)Aさんは 今 年 の 誕 生 日 で 40 歳 となるので 公 的 介 護 保 険 の(1 第 2 号 ) 被 保 険 者 資 格 を 取 得 し 介 護 保 険 料 を 負 担 することになる 40 歳 以 上 65 歳 未 満 の 医 療

PowerPoint プレゼンテーション

4. その 他 (1) 期 中 における 重 要 な 子 会 社 の 異 動 ( 連 結 範 囲 の 変 更 を 伴 う 特 定 子 会 社 の 異 動 ) 無 (2) 簡 便 な 会 計 処 理 及 び 四 半 期 連 結 財 務 諸 表 の 作 成 に 特 有 の 会 計 処 理 の 適 用 有

Taro-08国立大学法人宮崎大学授業

第 7 条 職 員 の 給 与 に 関 する 規 程 ( 以 下 給 与 規 程 という ) 第 21 条 第 1 項 に 規 定 す るそれぞれの 基 準 日 に 育 児 休 業 している 職 員 のうち 基 準 日 以 前 6 月 以 内 の 期 間 にお いて 在 職 した 期 間 がある 職

賦課の根拠となった法律及び条例(その2)

要 な 指 示 をさせることができる ( 検 査 ) 第 8 条 甲 は 乙 の 業 務 にかかる 契 約 履 行 状 況 について 作 業 完 了 後 10 日 以 内 に 検 査 を 行 うものとする ( 発 生 した 著 作 権 等 の 帰 属 ) 第 9 条 業 務 によって 甲 が 乙 に

も く じ 1 税 源 移 譲 1 2 何 が 変 わったのか 改 正 の 3 つ の ポイント ポイント1 国 から 地 方 へ 3 兆 円 規 模 の 税 源 が 移 譲 される 2 ポイント2 個 人 住 民 税 の 税 率 構 造 が 一 律 10%に 変 わる 3 ポイント3 個 々の 納

高松市緊急輸送道路沿道建築物耐震改修等事業補助金交付要綱(案)

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(3) 育 児 休 業 (この 号 の 規 定 に 該 当 したことにより 当 該 育 児 休 業 に 係 る 子 について 既 にし たものを 除 く )の 終 了 後 3 月 以 上 の 期 間 を 経 過 した 場 合 ( 当 該 育 児 休 業 をした 教 職 員 が 当 該 育 児 休 業

賦課の根拠となった法律及び条例(その2)

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経 常 収 支 差 引 額 の 状 況 平 成 22 年 度 平 成 21 年 度 対 前 年 度 比 較 経 常 収 支 差 引 額 4,154 億 円 5,234 億 円 1,080 億 円 改 善 赤 字 組 合 の 赤 字 総 額 4,836 億 円 5,636 億 円 800 億 円 減

所 得 税 と 住 民 税 の 税 率 表 所 得 税 と 住 民 税 の 税 率 は 以 下 の 通 りです 退 職 所 得 の 場 合 も この 税 率 表 を 使 います 1. 平 成 19 年 1 月 1 日 以 降 ( 所 法 891) 課 税 所 得 所 得 税 率 控 除 額 ~195

Taro-29職員退職手当支給規程

( 別 途 調 査 様 式 1) 減 損 損 失 を 認 識 するに 至 った 経 緯 等 1 列 2 列 3 列 4 列 5 列 6 列 7 列 8 列 9 列 10 列 11 列 12 列 13 列 14 列 15 列 16 列 17 列 18 列 19 列 20 列 21 列 22 列 固 定

Microsoft Word - 第74号 結婚・子育て資金の一括贈与に係る贈与税の非課税

 


子ども手当見直しによる家計への影響~高所得者層の可処分所得は大幅減少に

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Microsoft Word - H25年度の概要

ような 厚 生 年 金 基 金 関 係 の 法 改 正 がなされており (2)については 平 成 16 年 10 月 1 日 から (1) 及 び(3)については 平 成 17 年 4 月 1 日 から 施 行 されている (1) 免 除 保 険 料 率 の 凍 結 解 除 ( 母 体 企 業 (

個 人 所 得 課 税 ~ 住 宅 ローン 控 除 等 の 適 用 期 限 の 延 長 2 4. 既 存 住 宅 に 係 る 特 定 の 改 修 工 事 をした 場 合 の 所 得 税 額 の 特 別 控 除 居 住 年 省 エネ 改 修 工 事 控 除 限 度 額 バリアフリー 改 修 工 事 平

2 条 ) ア 育 児 休 業 の 対 象 とならない 職 員 ( 法 第 2 条 及 び 条 例 第 2 条 関 係 ) (ア) 臨 時 的 に 任 用 される 職 員 (イ) 育 児 休 業 に 係 る 期 間 を 任 期 と 定 めて 採 用 された 職 員 (ウ) 勤 務 延 長 職 員 (

Transcription:

ISFJ2014 政 策 フォーラム 発 表 論 文 ストック 税 1 貯 蓄 税 と 相 続 税 法 政 大 学 小 黒 研 究 会 2014 年 11 月 木 村 将 紀 石 井 貴 太 郎 千 原 拓 郎 小 倉 裕 太 1 本 稿 は 2014 年 12 月 13 日 12 月 14 日 に 開 催 される ISFJ 日 本 政 策 学 生 会 議 政 策 フォーラム 2014 のために 作 成 したものである 本 稿 の 作 成 にあたっては 多 くの 方 々から 有 益 且 つ 熱 心 なコメントを 頂 戴 した ここに 記 し て 感 謝 の 意 を 表 したい しかしながら 本 稿 にあり 得 る 誤 り 主 張 の 一 切 の 責 任 はいうまでもなく 筆 者 たち 個 人 に 帰 するものである 1

要 約 相 続 税 は 消 費 税 など 他 の 税 金 に 比 べて 国 民 の 関 心 が 向 かない 税 金 である 理 由 とし て 対 象 者 が 少 ないことや 相 続 の 制 度 が 複 雑 であることが 挙 げられる このたびの 改 正 により 相 続 税 とは 無 縁 だった 国 民 も 対 象 となる 可 能 性 がある 相 続 税 の 現 制 度 を 理 解 することが 重 要 であると 考 えた 貯 蓄 税 は 世 間 にその 存 在 が 知 られるようになったのは 大 阪 維 新 の 会 代 表 そして 現 大 阪 市 長 である 橋 下 徹 氏 が 資 産 への 課 税 である 貯 蓄 税 について 持 論 を 展 開 そして 他 にも 欧 州 危 機 の 際 にキプロスがこの 税 金 を 導 入 など 貯 蓄 税 に 関 してまだ 過 去 に 例 はそれ ほどない そこで 日 本 に 貯 蓄 税 を 導 入 した 際 の 試 算 をだすことにした 貯 蓄 問 題 を 税 金 の 面 から 考 察 した 現 在 日 本 では 貯 蓄 税 は 導 入 されていないが 利 子 課 税 が 導 入 されている 日 本 の 利 子 課 税 は 所 得 税 復 興 特 別 所 得 税 15.315% 地 方 税 5%の 一 律 20.315%である 利 子 課 税 は 貯 蓄 税 とは 違 い 普 通 預 金 だけでなく 定 期 預 金 や 国 債 にも 課 されるため 貯 蓄 税 よりも 課 税 対 象 の 種 類 は 多 い そのため 実 質 資 産 課 税 と 変 わらないのではないかという 批 判 もあ る 資 産 課 税 としてはヨーロッパを 中 心 に 富 裕 税 が 導 入 さている 例 えばフランスでは 純 資 産 130 万 ユーロの 人 を 対 象 として 最 高 1.5%の 課 税 となっている 一 見 それほど 高 くない ようにも 見 えるが 課 税 は 毎 年 であるため 長 期 的 には 資 産 が 大 きく 目 減 りする 可 能 性 があ る 所 得 の 再 分 配 としての 役 割 がある 富 裕 税 だが フランスでは 富 裕 層 の 海 外 移 住 が 問 題 となるなど 多 くの 問 題 を 抱 えている ヨーロッパ 中 心 に 導 入 されている 富 裕 税 だが ドイ ツやデンマーク スウェーデンでは 既 に 廃 止 されている 日 本 でも 戦 後 に 導 入 されたが 税 収 が 少 ないことや 資 産 の 把 握 が 難 しいなどの 理 由 で 廃 止 されている 平 成 25 年 3 月 29 日 に 成 立 した 平 成 25 年 度 税 制 改 正 で 相 続 税 制 の 内 容 も 大 幅 な 改 定 が 行 わることとなった 主 な 改 定 内 容 としては 税 額 控 除 として 基 礎 控 除 が(5000 万 + 1000 万 法 定 相 続 人 の 数 )が(3000 万 +600 万 法 定 相 続 人 の 数 )に 大 幅 に 引 き 下 げられ たほか 最 高 税 率 50%~55%に 引 き 上 げられるなどこのたびの 改 正 で 相 続 税 の 対 象 範 囲 は 拡 大 された 日 本 の 相 続 税 は OECD ではドイツと 並 び 高 額 な 税 率 設 定 である 日 本 の メディアが 取 り 上 げるのは 消 費 税 中 心 だが 諸 外 国 は 相 続 税 の 今 後 について 関 心 を 持 っ ている そしてスウェーデンやカナダなどは 既 にストック 税 を 廃 止 している 相 続 税 はむしろ 軽 減 廃 止 されるべきという 国 も 少 なくないのが 現 状 である 相 続 税 を 導 入 している 国 (アメリカフランスドイツイギリス)の 現 行 制 度 について 現 状 分 析 をして いる アメリカの 相 続 税 贈 与 税 一 体 化 フランス 間 接 税 ( 登 録 税 )に 分 類 ドイツ 被 相 続 人 に 近 い 相 続 人 が 低 税 率 になる 税 制 構 造 イギリス 免 税 軽 減 税 により 全 歳 入 の 1%に 満 たないなど 異 なる 国 々の 税 制 構 造 について 研 究 した 貯 蓄 税 の 先 行 研 究 については 白 川 (2011) 櫻 川 昌 哉 研 究 会 (2011) 高 橋 一 郎 研 究 会 (2011)が 試 算 等 を 出 している 白 川 (2011)は 課 税 対 象 を 純 資 産 ではなく 総 資 産 とし 預 貯 金 と 国 債 の 合 計 が 2000 万 円 以 上 を 保 有 する 人 を 対 象 として 2000 万 円 を 超 える 部 分 に 課 税 するとしている その 額 は 約 200 兆 円 あり 税 収 は 1%につき 2 兆 円 とれる 計 算 となる 櫻 川 昌 哉 研 究 会 (2011)では 課 税 対 象 はゆうちょ 銀 行 及 び 市 中 銀 行 に 口 座 をもつ 全 預 金 者 で ある 税 率 は 1%で 預 金 の 月 間 平 均 預 貯 金 残 高 に 対 して 月 に 一 度 課 税 するとしている 全 国 銀 行 協 会 のデータより 平 成 23 年 9 月 末 時 点 で 日 本 の 銀 行 預 金 は 約 580 兆 円 ゆうちょ 銀 行 の 2011 年 3 月 末 時 点 の 預 金 残 高 が 約 175 兆 円 合 わせて 預 貯 金 残 高 の 合 計 を 約 725 兆 円 で 税 率 1%につき 約 7.25 兆 円 とれる 計 算 となる 白 川 (2011)と 櫻 川 昌 哉 研 究 会 (2011) の 共 通 点 としては 税 率 を 実 質 金 利 より 算 出 する 点 である 高 橋 一 郎 研 究 会 (2011)では 基 礎 2

控 除 を 1000 万 円 とし 1000 万 円 を 超 える 部 分 を 課 税 するとしている 2010 年 9 月 時 点 で の 日 本 の 総 貯 蓄 額 は 約 566 兆 円 とし 貯 蓄 残 高 が 1000 万 円 を 超 える 世 帯 の 内 1000 万 円 を 超 える 部 分 が 約 303 兆 円 税 率 は 基 礎 的 財 政 収 支 の 均 衡 黒 字 化 の 水 準 にするよう 提 言 し ている 先 行 研 究 よりスウェーデンは 相 続 税 を 2004 年 12 月 に 廃 止 した そもそも 相 続 税 の 課 税 根 拠 として 富 の 再 分 配 所 得 税 の 補 完 にあるとされた スウェーデンは 19 世 紀 よ り 相 続 による 資 産 所 得 は 所 得 として 課 税 され 二 重 課 税 を 避 けるために 相 続 税 が 廃 止 されるまで 非 課 税 所 得 として 明 記 された その 後 1941 年 に 相 続 税 法 は 改 正 され 課 税 根 拠 は 富 の 再 分 配 にあるとされた 1970 年 代 に 入 ると 最 高 税 率 は 83%に 達 し 経 済 的 非 効 率 と 指 摘 された 1972 年 抜 本 的 税 制 改 革 がロディンに 委 託 されまた 相 続 税 は 廃 止 の 方 向 へ 向 かう と 関 連 が 深 いのが 事 業 承 継 税 と 呼 ばれる 税 制 で 欧 州 委 員 会 が 相 続 税 贈 与 税 はスウェーデンでは 相 続 税 が 占 める 割 合 が 低 く 富 の 再 分 配 というよりは 富 の 一 極 集 中 を 防 ぐ 効 果 しかなかった 欧 州 委 員 会 は 相 続 税 贈 与 税 が 中 小 企 業 の 事 業 承 継 に 際 して 障 害 になるとした 貯 蓄 税 の 導 入 によりどれぐらいの 税 収 を 見 込 めるのか 単 純 なモデルにより 計 算 してみ た 預 金 を 対 象 として 国 民 一 律 課 税 とし 税 率 を 1%とする 市 中 銀 行 とゆうちょ 銀 行 の 預 金 総 額 は 約 809 兆 円 であるので 税 率 1%につき 約 8 兆 円 の 税 収 となる 貯 蓄 税 は 一 見 単 純 かつ 多 くの 税 収 を 得 ることができるとしているが 大 きな 問 題 点 がある それは 日 本 で は 貯 蓄 率 の 低 下 が 問 題 となっている 点 である 70 年 代 には 20%もあった 家 計 貯 蓄 率 は 2011 年 では 約 2%ほどになっている これは 世 界 的 に 見 ても 低 い 水 準 である 家 計 貯 蓄 の 余 剰 分 は 企 業 の 投 資 や 政 府 支 出 に 充 てられるものである 企 業 が 投 資 を 伸 ばすことによっ て 国 の 生 産 力 を 高 めることができるが 今 の 家 計 部 門 の 貯 蓄 投 資 バランスの 水 準 では 企 業 投 資 を 拡 大 することは 難 しい また 企 業 だけでなく 財 政 赤 字 も 貯 蓄 余 剰 で 賄 う 必 要 が あり 現 状 では 企 業 が 投 資 を 控 えることによる 企 業 部 門 の 余 剰 に 支 えられているという 非 常 に 不 安 定 な 状 況 にある こういった 状 況 下 にある 中 で 貯 蓄 税 の 導 入 により 貯 蓄 率 の 低 下 を 促 進 させるのは 経 常 収 支 の 大 幅 な 赤 字 を 招 くこととなり 非 常 に 危 険 なものだと 言 える 相 続 税 の 分 析 では 相 続 税 は 国 税 収 入 のおよそ3% 程 度 であり 消 費 税 の 1%に 満 たない ため 財 源 確 保 という 点 からは 消 費 税 や 所 得 税 に 比 べて 十 分 でないと 分 析 した そして 貯 蓄 率 2 国 ( 日 本 スウェーデン) 比 較 を 行 い 相 続 税 が 税 収 へそして 家 計 貯 蓄 率 低 下 の 影 響 について 分 析 した 貯 蓄 税 は 単 純 かつ 多 くの 税 収 を 得 ることができる 魅 力 的 な 税 に 見 える しかし 日 本 の 家 計 貯 蓄 率 低 下 による 日 本 の 貯 蓄 投 資 バランスが 不 安 定 という 現 状 での 導 入 には 日 本 の 経 済 成 長 さらには 財 政 破 綻 のリスクなど 非 常 に 危 険 なものと 考 えられる 従 って 導 入 はす べきでないと 考 える 3

目 目 はじめに 第 1 章 問 題 意 識 第 2 章 現 状 分 析 第 1 節 (1.1) 貯 蓄 税 第 2 節 (1.2) 相 続 税 第 3 章 先 行 研 究 第 1 節 (1.1) 貯 蓄 税 における 先 行 研 究 第 2 節 (1.2) 相 続 税 における 先 行 研 究 第 4 章 分 析 第 1 節 (1.1) 貯 蓄 税 第 2 節 (1.2) 相 続 税 第 5 章 政 策 提 言 先 行 論 文 参 考 文 献 データ 出 典 4

はじめに 貯 蓄 は 経 済 の 重 要 な 指 標 である この 論 文 はその 貯 蓄 に 課 税 されるストック 課 税 につい て 論 を 展 開 している 現 行 の 制 度 に 既 に 導 入 されている 相 続 税 贈 与 税 のほかに 貯 蓄 税 とい う 預 貯 金 に 課 税 する 案 を 提 示 して 独 自 の 試 算 を 算 出 した ストック 課 税 は 経 済 にメリットをもたらしているのか?それともデメリットをもたらし ているのか? 相 続 税 贈 与 税 そして 貯 蓄 税 の 視 点 からそれぞれ 分 析 した 貯 蓄 税 の 分 析 として 単 純 なモデルを 導 入 して 試 算 した 預 貯 金 を 対 象 とした 国 民 一 律 課 税 で 税 率 1%とした 預 貯 金 総 額 を 求 めるために 市 中 銀 行 とゆうちょ 銀 行 の 預 金 残 高 を 求 めた その 結 果 約 809 兆 円 あることが 分 かり 税 率 1%につき 約 8 兆 円 の 税 収 が 得 ら れることが 分 かった また 貯 蓄 税 導 入 の 問 題 点 として 挙 がっている 家 計 貯 蓄 率 の 低 下 と それによる 問 題 点 について 研 究 し それらを 合 わせたうえで 貯 蓄 税 導 入 が 妥 当 かどうかを 考 えた その 結 果 家 計 貯 蓄 率 の 低 下 は 日 本 経 済 の 維 持 発 展 において 非 常 に 重 要 なものだ と 分 かり 貯 蓄 税 の 導 入 は 貯 蓄 率 低 下 に 追 い 打 ちをかけることとなることがわかった よって 貯 蓄 率 低 下 のデメリットと 比 較 した 上 で 貯 蓄 税 導 入 は 妥 当 ではないという 判 断 を 下 し それを 貯 蓄 税 に 関 する 政 策 提 言 とした 分 析 で 相 続 税 収 そして 課 税 対 象 となる 割 合 の 推 移 を 我 が 国 の 税 制 改 革 の 歴 史 と 照 会 しな がらその 動 向 を 追 った また 日 本 とスウェーデンにおける 家 計 貯 蓄 率 の 推 移 から 相 続 税 と 貯 蓄 率 の 相 関 関 係 について 分 析 した 政 策 提 言 として 相 続 税 の 軽 減 廃 止 を 基 本 的 な 方 向 性 として 提 言 している 5

第 1 章 問 題 意 識 現 在 日 本 のメディアで 日 夜 取 り 上 げられているのは 消 費 税 増 税 である 税 制 改 革 が 実 行 された 際 国 民 の 関 心 が 向 くのは 決 まって 国 民 の 生 活 に 身 近 な 直 接 的 な 税 金 であ る しかし 平 成 25 年 税 制 改 正 により 大 きく 変 わったのは 消 費 課 税 だけではない そ の 一 つがストック 課 税 ( 相 続 税 贈 与 税 )である 消 費 税 と 違 い 国 民 の 興 味 関 心 が 向 かないのにはいくつか 理 由 がある まず 相 続 税 は 条 件 を 満 たす 資 産 を 持 つ 対 象 者 がと ても 少 ないこと そして 制 度 が 複 雑 であるため 理 解 しづらいこと 富 の 再 分 配 所 得 再 分 配 の 機 能 があることなどが 挙 げられる 日 本 でこそあまりメディアが 取 り 上 げな い 相 続 税 だが 諸 外 国 は 寧 ろ 相 続 税 に 非 常 に 敏 感 であると 言 っていい 現 にスイス オーストラリア カナダなど 先 進 国 でも 既 に 廃 止 されている 国 は 多 い そして 相 続 税 の 軽 減 もしくは 廃 止 がグローバル 社 会 においてスタンダードになりつつあるのだ そ の 流 れに 逆 らいなぜ 日 本 は 相 続 税 を 大 幅 に 改 正 したのだろうか この 改 正 により 対 象 者 はおよそ 1.5 倍 になり 税 収 は 増 加 することが 見 込 まれるが 相 続 税 にはいくつか 留 意 すべき 点 がある そして 対 象 となった 国 民 は 相 続 税 の 負 担 を 軽 くするために 贈 与 税 生 前 贈 与 による 節 税 対 策 をする 必 要 性 がある しかし 前 述 でもあったように 日 本 のス トック 税 制 は 複 雑 で 一 体 的 ではないこの 制 度 を 理 解 するのも 国 民 にとって 負 担 であ る 例 えばアメリカでは 贈 与 税 は 相 続 税 の 前 払 いという 扱 いであり 完 全 に 一 体 的 なシ ステムである 言 い 換 えれば 日 本 のように 節 税 対 策 などができないといえるが 国 民 に とって 一 体 化 された 制 度 は 理 解 しやすい 税 金 である そもそもストックは 将 来 の 消 費 を 一 時 的 に 蓄 えておくプールである ストックの 減 少 は 将 来 の 消 費 の 減 少 を 意 味 する つまりストックは 経 済 の 先 行 きを 占 う 重 要 な 指 標 だと 言 える 日 本 は 現 在 深 刻 な 少 子 高 齢 化 社 会 である 高 齢 化 そして 人 口 減 少 により 貯 蓄 率 日 本 全 体 の 貯 蓄 額 は 下 降 線 を 辿 ることが 推 測 される 貯 蓄 率 低 下 が 予 想 される 日 本 において 相 続 税 をはじめとするストック 税 は 本 当 に 必 要 なのだろうか 相 続 税 の ほかに 新 たなストック 税 として 近 年 注 目 を 浴 びたのが 貯 蓄 税 ( 貯 金 税 )である 世 間 に その 存 在 が 知 られるようになったのは 大 阪 維 新 の 会 代 表 そして 現 大 阪 市 長 である 橋 下 徹 氏 が 資 産 への 課 税 である 貯 蓄 税 について 持 論 を 展 開 したのが 記 憶 に 新 しい 他 にも 欧 州 危 機 の 際 にキプロスがこの 税 金 を 導 入 した まだこの 貯 蓄 税 に 関 しては 導 入 した 国 が 少 ないためキプロスの 動 向 が 注 目 されるところである 財 政 赤 字 を 抱 える 日 本 にとって 税 収 による 歳 入 は 最 も 重 要 である しかしこのまま 貯 蓄 が 減 少 する 社 会 に 突 入 すれば 日 本 の 経 済 への 影 響 は 計 り 知 れない 日 本 のストック 税 のあるべき 姿 について 研 究 した 6

第 2 章 現 状 分 析 第 1 節 貯 蓄 税 現 在 貯 蓄 税 を 導 入 している 国 としてキプロスが 挙 げられるが キプロスについては 非 常 に 特 殊 な 事 例 なためここでは 割 愛 させていただく キプロス 以 外 には 貯 蓄 そのものを 対 象 とした 貯 蓄 税 を 導 入 している 国 はないが 富 裕 税 を 導 入 している 国 はフランス オランダ などヨーロッパの 国 々を 中 心 に 存 在 している 富 裕 税 とは 純 資 産 つまり 総 資 産 から 総 負 債 を 引 いたものに 課 す 税 金 のことである 課 税 は 毎 年 行 われるのが 普 通 となっている フ ランスにおいては 純 資 産 80 万 ユーロ 未 満 のものは 非 課 税 とされ 純 資 産 130 万 ユーロ のものが 課 税 対 象 となる 最 高 税 率 は 1.5%である 富 裕 税 の 導 入 は 所 得 の 再 分 配 機 能 があ るためとしているが 富 裕 層 の 国 外 移 住 や 高 い 技 術 を 持 つ 労 働 者 の 流 出 が 起 こるのではな いかという 反 対 論 がある 事 実 フランスでは 富 裕 税 に 加 え 高 い 所 得 税 や 社 会 保 障 費 を 理 由 に 富 裕 層 が 海 外 移 住 するというケースが 発 生 している ヨーロッパを 中 心 に 導 入 され ている 富 裕 税 だが ドイツやデンマーク スウェーデンでは 廃 止 されている 日 本 でも 戦 後 に 富 裕 税 を 導 入 しているが 税 収 が 少 ないことや 資 産 の 把 握 等 が 難 しいなどの 理 由 で 廃 止 されている 日 本 には 貯 蓄 税 や 富 裕 税 はないが 利 子 課 税 がある 日 本 における 利 子 課 税 について 国 税 庁 の 言 葉 を 引 用 すると 利 子 所 得 とは 預 貯 金 や 公 社 債 の 利 子 並 びに 合 同 運 用 信 託 公 社 債 投 資 信 託 及 び 公 募 公 社 債 等 運 用 投 資 信 託 の 収 益 の 分 配 に 係 る 所 得 2 であ る 利 子 課 税 は 他 の 所 得 とは 別 に 計 算 して 課 税 される 源 泉 分 離 課 税 方 式 をとっている 利 子 課 税 率 の 内 訳 は 所 得 税 復 興 特 別 所 得 税 15.315% 地 方 税 5%の 一 律 20.315%であ る 普 通 預 金 だけでなく 定 期 預 金 や 国 債 などにも 利 子 税 が 課 されるため 実 質 資 産 課 税 と 同 じだという 声 があがっている 貯 蓄 税 を 導 入 する 場 合 利 子 課 税 を 廃 止 する などしなければ 二 重 課 税 になる 可 能 性 がある 大 阪 維 新 の 会 が 2012 年 に 出 した 維 新 版 船 中 八 策 において 資 産 課 税 の 強 化 という 構 想 が 物 議 を 醸 した 維 新 の 会 代 表 の 橋 下 徹 氏 は 国 民 総 背 番 号 制 により 国 民 の 金 の 流 れを 把 握 し た 上 で 消 費 して 余 った 部 分 に 課 税 するという 案 を 提 唱 している 貯 蓄 に 課 税 することで 貯 蓄 から 消 費 に 流 れるという 考 えが 前 提 にある しかし 2014 年 現 在 では 資 産 課 税 についての 議 論 は 進 行 していない 第 2 節 相 続 税 ストック 課 税 平 成 25 年 税 制 改 革 により 日 本 の 相 続 税 は 以 下 のように 改 正 された 2 国 税 庁 No.1310 利 息 を 受 け 取 ったとき( 利 子 所 得 ) (https://www.nta.go.jp/taxanswer/shotoku/1310.htm)より 引 用 7

平 成 25 年 3 月 29 日 に 成 立 した 平 成 25 年 税 制 改 正 で 相 続 税 の 内 容 も 平 成 27 年 1 月 より 改 正 施 行 されることが 決 定 した 現 行 の 制 度 としては 法 定 遺 産 方 式 という 制 度 が 採 用 されている これは 遺 産 分 配 の 前 にあらかじめ 税 金 の 総 額 を 決 定 し 遺 産 の 分 配 額 に 応 じ 税 金 も 分 配 される という ものだ この 制 度 は 遺 産 課 税 ( 被 相 続 人 の 遺 産 総 額 に 対 して 課 税 する 方 式 遺 産 合 計 に 課 税 する)や 遺 産 取 得 課 税 制 度 ( 個 々の 相 続 人 が 取 得 した 遺 産 に 応 じて 課 税 する 方 式 遺 産 を 分 配 してから 課 税 する )を 混 合 させた 制 度 である 現 行 の 制 度 では 税 率 設 定 を 最 高 50%として 各 々の 資 産 額 に 応 じて 税 率 負 担 を 6 段 階 に 設 定 している 税 額 控 除 として 基 礎 控 除 が(5000 万 +1000 万 法 定 相 続 人 の 数 ) 未 成 年 控 除 は 20 歳 までの 1 年 につき 6 万 円 障 害 者 控 除 は 85 歳 までの 1 年 につき 6 万 円 この 制 度 内 容 で 平 成 24 年 度 では 約 1.4 兆 円 の 歳 入 で 税 収 全 体 の 約 3.4% 程 度 であ る 最 高 額 であった 平 成 6 年 の 相 続 税 収 を 上 回 る 税 収 が 確 保 できていないのが 現 状 で ある 相 続 税 はこれまで 多 くの 問 題 点 が 指 摘 され 改 定 を 繰 り 返 してきた 税 金 である 例 えば 2008 年 1 月 の 平 成 25 年 度 改 正 されるのは 基 礎 控 除 税 率 税 額 控 除 税 率 は 5% 上 乗 せされて 最 高 55%で 6 億 円 以 上 を 最 高 として 8 段 階 に 改 正 され た 税 額 控 除 も 未 成 年 控 除 は 20 歳 までの 1 年 につき 10 万 円 障 害 者 控 除 は 85 歳 までの 1 年 につき 10 万 円 とされたことなど 改 正 された 点 はいくつかあげられる また 国 立 国 会 図 書 館 (2013)によると 基 礎 控 除 額 が(5000 万 +1000 万 法 定 相 続 人 の 数 から 3000 万 +600 万 法 定 代 理 人 の 数 )に 下 げられた つまり 現 行 制 度 より 基 礎 控 除 額 が 大 幅 に 引 き 下 げられることとなった また 最 高 税 率 が 50%から 55%へ 引 き 上 げられたことによる 課 税 ヘ ースの 拡 大 によっ て 年 間 死 亡 者 数 に 対 する 相 続 税 の 年 間 課 税 件 数 は 1.5 倍 の 約 6%になると 予 想 され ている 相 続 税 の 税 収 の 推 移 を 見 ていくと 平 成 5 年 時 にはおよそ 2.9 兆 円 の 税 収 が ある これは 平 成 4 年 度 の 負 担 割 合 の 改 正 によるもので 課 税 割 合 は 6.3%となってい る 一 方 で 平 成 26 年 度 ではおよそ 半 分 の 1.5 兆 円 にまで 落 ち 込 んでいるこの 時 の 課 税 割 合 を 見 てみると 4.8%である このたびの 改 正 では 課 税 割 合 を 6% 台 に 戻 ることが 推 測 されている また 増 収 額 とし てはこれらの 改 正 によって 税 収 は 仮 に 課 税 価 格 が 5000 万 円 の 場 合 40 万 円 1 億 円 な ら 175 万 円 から 385 万 円 へと 税 収 が 増 える また 基 礎 控 除 額 を 3000 万 円 まで 引 き 下 げたことは 図 からも 分 かるように 高 齢 者 の 総 資 産 は 3000 万 円 4000 万 円 台 が 多 く 税 収 を 増 加 させるには 効 果 的 な 案 だと 考 えられる しかし これによりこ く 一 般 的 なマイホームや 退 職 金 など 老 後 資 金 として 蓄 えた 少 しの 資 産 でも 相 続 税 が 発 生 す る 可 能 性 が 出 てきた 住 宅 資 金 などに 関 しては 昨 年 始 めから 今 年 末 まで 住 宅 等 取 得 資 金 に 関 する 贈 与 税 の 非 課 税 という 制 度 がある この 制 度 が 終 了 した 後 は 同 じ 金 額 を 贈 与 すると 10~55 % 額 にして 数 百 万 円 の 贈 与 税 が 取 られてしまう つまり 一 般 サラリーマンで 都 心 から 少 し 離 れた 郊 外 に 住 んでいたとしても 対 策 をしていないと 自 宅 を 失 ったり 巨 額 の 税 金 が 取 られたりする 可 能 性 が 高 まった そこで 注 目 されているのが 二 世 帯 住 宅 である 土 地 の 評 価 額 を 抑 えることにより 相 8

続 税 を 軽 減 できる 小 規 模 宅 地 等 の 特 例 に 注 目 したい 亡 くなった 親 と 相 続 する 子 がそれぞれ 別 に 住 む 場 合 は 親 の 土 地 だけが 対 象 となるが 二 世 帯 住 宅 なら 同 じ 土 地 に 特 例 が 適 用 され 相 続 税 の 評 価 額 が 最 大 80% 減 額 できるというわけだ さらにこ の 度 の 改 正 で 二 世 帯 住 宅 についての 要 件 が 緩 和 されたことも 注 目 されている 点 であ る 現 行 の 制 度 では 玄 関 が 共 用 であること または 玄 関 が 別 でも 建 物 内 で 行 き 来 で きる 構 造 でなければならなかったが 構 造 に 関 する 要 件 が 基 本 的 に 外 れ すべての 二 世 帯 住 宅 に 特 例 が 適 用 されることになった これらにより 二 世 帯 住 宅 を 建 てること による 相 続 税 への 理 解 が 容 易 になった しかし この 特 例 などにより 税 負 担 軽 減 の 本 来 の 対 象 でない 人 にもその 効 果 が 及 ふ こととなり 公 平 性 が 保 てなくなってしまうと いう 問 題 もある 平 成 25 年 度 に 改 正 した 制 度 に 相 続 時 精 算 課 税 制 度 というものがあり この 制 度 は 生 前 贈 与 の 際 に 暦 年 課 税 の 基 礎 控 除 額 を 大 幅 に 超 える 特 別 控 除 額 を 利 用 して 課 税 を 繰 り 延 べて 相 続 の 際 に 合 わせて 精 算 課 税 する 制 度 である これは 節 税 となり 所 得 の 再 分 配 と なる これによって 贈 与 が 増 えるかつ 若 年 層 の 消 費 が 増 えると 考 えられる また 贈 与 税 の 緩 和 措 置 として 子 や 孫 への 教 育 資 金 は 1500 万 円 以 下 なら 非 課 税 というものがあ る 贈 与 した 財 産 が 教 育 資 金 に 使 われると 若 者 の 成 長 につながりそ れは 将 来 の 経 済 的 な 成 長 へつながると 考 えている また 関 東 地 方 の 一 都 六 県 に 住 む 小 学 生 以 下 の 孫 を 持 つ 祖 父 母 2000 人 に 贈 与 の 移 行 についてアンケートしたところ 贈 与 したい 贈 与 を 検 討 したい と 答 えたのが 45%にのほ った しかし 金 融 広 報 中 央 委 員 会 が 実 施 している 家 計 の 金 融 行 動 に 関 する 世 論 調 査 によると 60 歳 以 上 の 高 齢 層 の 7 割 以 上 が 十 分 な 金 融 資 産 がない 年 金 や 保 険 が 十 分 ではない ことを 理 由 に 老 後 の 生 活 に 不 安 を 覚 えているが この 中 には 長 寿 化 の 進 展 による 長 生 きリスクに 対 す る 過 度 の 不 安 から 将 来 必 要 となる 資 産 を 過 剰 に 捉 えている 人 が 多 く 含 まれている このことから 贈 与 をできるのは 余 裕 のある 限 られた 富 裕 層 に 限 定 され そのため 相 続 をさせやすい 仕 組 みづくりよりも 積 極 的 に 消 費 に 回 して 景 気 を 刺 激 できるような 仕 組 みづくりが 重 要 だと 考 えている 日 本 の 相 続 税 は 最 高 税 率 がドイツと 並 んで 高 いほか 基 礎 控 除 をみてもイギリスまた はフランスは 配 偶 者 が 免 税 である 点 を 考 慮 すると 日 本 は 相 対 的 に 低 いと 言 える 諸 外 国 が 相 続 税 制 縮 小 廃 止 へ 改 正 を 進 めるなか 日 本 は 既 に 税 率 が 高 いストック 税 ( 相 続 税 贈 与 税 )をさらに 引 き 上 げ 課 税 ヘ ースの 拡 大 課 税 強 化 を 進 めている 主 要 国 の 相 続 税 の 現 状 を 調 査 した アメリカはストック 税 を estate tax ( 遺 産 税 )として 遺 産 税 は 死 亡 時 に 資 産 を 移 転 する 際 にかかる 税 金 である 日 本 の 課 税 方 式 とは 異 なる 相 続 税 と 贈 与 税 が 一 体 化 されている つまり 共 通 した 統 一 税 額 控 除 が 生 前 贈 与 および 相 続 において 適 用 され る そのため 日 本 のように 複 雑 なストック 税 体 制 ではないと 言 える 2010 年 に 廃 止 されることになっていたが 一 転 2013 年 以 降 に 復 活 することとされている 認 定 家 族 経 営 事 業 について その 株 式 が 相 続 前 3 年 間 市 場 で 取 引 されていないこと 相 続 人 または 被 相 続 人 の 家 族 が 相 続 前 8 年 間 のうち 合 計 で 5 年 間 実 質 的 に 経 営 してい ること 一 つの 家 族 で 保 有 している 場 合 には 50% 以 上 を 保 有 している 等 の 要 件 を 満 たし たときに 675.000 ドルまで 免 除 されるこれらの 措 置 の 多 くは 事 業 の 継 続 を 前 提 として 行 われている 個 人 資 産 の 運 用 を 目 的 とする 事 業 は 対 象 外 になっている 9

フランスの 相 続 税 は 直 接 税 ではなく 間 接 税 に 分 類 される これはフランスの 相 続 税 が 相 続 または 贈 与 を 原 因 とする 無 償 の 財 産 移 転 に 対 して 課 税 を 行 う 登 録 税 だという 考 え からである 課 税 方 式 は 財 産 所 得 課 税 方 式 が 採 用 されており 特 徴 としては 配 偶 者 及 び PACS パートナーに 対 する 相 続 が 対 象 外 であるという 点 である 企 業 に 対 しては 事 業 用 資 産 株 式 の 相 続 または 贈 与 について 最 大 2 年 間 の 株 主 共 同 保 持 契 約 の 対 象 とす ること 相 続 人 によち 議 決 権 の 34% 以 上 を 保 持 すること 株 主 共 同 保 持 契 約 満 了 後 4 年 間 保 有 すること 相 続 人 等 または 共 同 経 営 者 のうち 1 人 が 3 年 間 経 営 に 従 事 するこ と 等 の 要 件 を 満 たしたとき 75%が 非 課 税 となる ドイツは 日 本 と 並 び 相 続 税 率 が 高 い 国 である フランスと 同 じく 遺 産 所 得 課 税 法 を 採 用 している ドイツの 税 制 は 被 相 続 人 に 近 い 相 続 人 が 低 税 率 になる 税 制 構 造 であ る 企 業 に 対 しては 事 業 用 資 産 非 上 場 株 式 の 相 続 について 取 得 後 5 年 間 の 人 件 費 総 額 を 一 定 額 ( 一 年 間 あたり 80%)に 維 持 すること 取 得 後 5 年 間 の 保 有 等 の 要 件 を 満 たした 場 合 原 則 85%の 評 価 減 が 認 められている ただし 事 業 者 本 人 のみで 従 業 員 のいない 個 人 事 業 や 従 業 員 20 人 以 下 の 事 業 所 には 適 用 されない イギリスの 相 続 税 の 税 収 は 歳 入 の 1%に 満 たない(2009)イギリスの 相 続 税 の 税 収 が 割 合 を 相 続 税 の 免 税 軽 減 税 の 影 響 が 大 きい 日 本 においても 言 えることだが 相 続 税 の 税 収 は 所 得 税 消 費 税 法 人 税 など 他 の 税 金 に 比 べて 割 合 はそれほど 高 くない また 消 費 税 などと 比 較 し 複 雑 で 把 握 しにくい 現 状 がある 課 税 方 式 は 米 国 と 同 じ 遺 産 課 税 方 式 を 採 用 している 特 徴 としては 配 偶 者 全 額 免 税 とされていること そして 諸 外 国 との 最 も 大 きな 違 いは 適 用 税 率 が 相 続 税 率 40%( 贈 与 税 率 は 一 律 20%) 一 律 課 税 が 採 用 さ れている 点 である 企 業 に 対 しては 事 業 用 資 産 および 非 上 場 株 式 の 相 続 または 贈 与 は 移 転 者 が 2 年 間 保 有 していて 資 産 管 理 会 社 株 式 でなく 過 去 2 年 事 業 目 的 で 使 用 されていることの 要 件 を 満 たせば 100% 免 除 となる そもそも 事 業 用 資 産 とは 個 人 が 直 接 保 有 する 場 合 でも また 株 式 を 通 して 所 有 す る 場 合 であっても 個 人 の 財 産 であるため 相 続 税 の 対 象 となる しかし 事 業 用 資 産 は 企 業 経 営 の 資 源 としての 価 値 もあるため 特 別 な 措 置 が 取 られていることが 多 い 日 本 も 事 業 承 継 税 に 関 して 改 正 がなされた 以 下 にそれを 記 述 した 贈 与 税 の 納 税 猶 予 制 度 経 営 の 後 継 者 が 経 営 承 継 円 滑 法 による 経 済 産 業 大 臣 の 認 定 を 受 けた 非 上 場 会 社 を 経 営 していた 親 族 からの 贈 与 により 一 定 以 上 の 株 式 を 取 得 し 経 営 を 続 けていく 場 合 に 一 定 の 条 件 の 下 で 納 税 が 猶 予 される すでに 保 有 していた 株 式 と 合 わせて 議 決 権 株 式 総 数 の3 分 の2に 達 するまでの 部 分 について 課 税 価 格 の 全 額 に 対 応 する 額 となる 贈 与 者 が 死 亡 猶 予 される 相 続 税 に 関 しても 贈 与 税 と 同 じように 経 済 産 業 大 臣 の 認 定 を 受 けた 非 上 場 企 業 を 経 営 していた 親 族 から 今 まで 保 有 していたものと 合 わせて 議 決 権 株 式 が3 分 の2に 達 するまでの 部 分 で 課 税 価 格 80%に 対 応 する 額 となる その 後 一 定 の 条 件 に 該 当 する 場 合 は 納 税 が 猶 予 される 25 年 度 の 改 正 事 項 として1 事 前 確 認 制 度 の 廃 止 2 親 族 外 承 10

継 の 廃 止 3 役 員 退 任 要 件 の 緩 和 4 雇 用 の8 割 維 持 要 件 の 緩 和 5 利 子 率 負 担 の 軽 減 6 延 納 物 納 制 度 の 適 用 7 相 続 税 の 債 務 控 除 方 式 の 変 更 などがある 1については 現 行 制 度 では 贈 与 税 の 納 税 猶 予 を 受 けるためには 経 済 産 業 大 臣 の 事 前 確 認 が 必 要 であったが 廃 止 され 贈 与 した 日 の 翌 年 の1 月 15 日 までに 大 臣 に 所 定 の 書 類 などを 提 出 することで 認 定 申 請 を 行 えるようになった 2は 現 行 制 度 で は 納 税 猶 予 を 受 ける 場 合 には 経 営 を 承 継 する 後 継 者 は 先 代 経 営 者 の 親 族 に 限 定 さ れているが しかし 近 年 では 事 業 承 継 全 体 の 親 族 内 承 継 の 割 合 が6 割 程 度 にまで 減 少 しているなど 後 継 者 を 親 族 内 で 確 保 することが 困 難 になってきている そこで 親 族 内 に 後 継 者 がいない 場 合 には 役 員 や 従 業 員 などの 適 任 者 に 経 営 をゆだねる 親 族 外 承 継 をすることになるが 問 題 としては 株 式 取 得 のための 株 価 算 出 や 資 金 準 備 贈 与 税 の 増 税 などが 負 担 になり 役 員 や 従 業 員 が 承 継 できないケースも 目 立 ってい る 3は 贈 与 税 の 納 税 猶 予 制 度 を 利 用 するためには 先 代 の 経 営 者 は 株 式 などの 贈 与 時 に 役 員 を 退 任 しなければならなかったが 改 正 後 には 贈 与 時 に 会 社 の 代 表 権 を 有 していなければ 有 給 社 員 として 残 留 することも 可 能 となった これは 中 小 企 業 等 にとっては 先 代 経 営 者 の 持 つノウハウなどを 活 用 したりする 事 は 経 営 の 承 継 上 非 常 に 大 切 であるため 会 社 存 続 と 雇 用 維 持 の 観 点 から 規 制 が 緩 和 された 4は 現 行 の 制 度 では 五 年 間 にわたり 毎 年 雇 用 の8 割 以 上 を 確 保 し 続 けることが 必 要 であった が 改 正 後 では 五 年 間 の 平 均 で8 割 以 上 を 雇 用 確 保 できていればよいことになっ た 5については 贈 与 税 の 納 税 猶 予 制 度 の 適 用 条 件 を 満 たさず 取 り 消 されること になった 場 合 猶 予 税 と 合 わせて 利 子 税 を 納 付 する 26 年 1 月 1 日 以 後 の 猶 予 期 間 中 は 年 0.9%に 引 き 下 げられることになった 6は 適 用 要 件 を 満 たさず 猶 予 が 取 り 消 されることになった 場 合 に 延 納 にするか 物 納 にするかを 選 択 できるようになった 7は 相 続 税 の 債 務 控 除 方 式 が 変 更 され 相 続 税 の 猶 予 額 の 計 算 の 際 に 先 代 経 営 者 の 個 人 債 務 葬 式 費 用 を 株 式 以 外 の 相 続 財 産 から 控 除 が 可 能 となった 以 上 相 続 税 の 現 状 分 析 11

第 3 章 先 行 研 究 第 1 節 貯 蓄 税 第 1 項 貯 蓄 税 の 試 算 まず 貯 蓄 税 の 試 算 について 述 べる 白 川 (2011)は 純 資 産 ではなく 総 資 産 を 対 象 とし 預 貯 金 と 国 債 の 合 計 が 2000 万 円 以 上 を 保 有 する 家 計 に 対 して 2000 万 円 を 超 える 部 分 であ る 過 剰 貯 蓄 部 分 を 課 税 対 象 としている つまり 基 礎 控 除 2000 万 円 としているのだが 白 川 はその 根 拠 を 家 計 サーヘ イ 調 査 においてリスク 商 品 や 保 険 商 品 等 を 加 えた 金 融 資 産 総 額 の 目 標 貯 蓄 残 高 が 2000 万 円 となっていることとしている さらに 総 務 省 の 家 計 調 査 に よると 全 金 融 資 産 の 内 預 貯 金 と 国 債 保 有 に 回 している 資 金 比 率 が 65%となっていること から 対 象 家 計 は 3000 万 円 を 金 融 資 産 として 保 有 していることになる 金 融 広 報 中 央 委 員 会 の 家 計 の 金 融 行 動 に 関 する 世 論 調 査 (2010) では 3000 万 円 以 上 保 有 する 家 計 は 1 割 と している 家 計 部 門 が 全 体 で 保 有 する 預 貯 金 と 国 債 の 残 高 合 計 は 2010 年 末 時 点 で 854 兆 円 程 度 としている 約 1 割 の 高 貯 蓄 世 帯 はその 内 の 約 52%を 占 めるということから 450 兆 円 程 度 が 対 象 家 計 の 保 有 預 貯 金 国 債 残 高 としている その 内 課 税 対 象 となるのは 世 帯 当 たり 2000 万 円 を 超 える 部 分 で その 額 を 約 200 兆 円 としている 税 率 はデフレ 率 より 算 出 しようと 考 えている 例 えばその 年 のデフレ 率 が 1%だった 場 合 貯 蓄 税 率 も 1%とな り 税 収 は 2 兆 円 となる 慶 應 義 塾 大 学 櫻 川 昌 哉 研 究 会 (2011)は 課 税 対 象 をゆうちょ 銀 行 及 び 市 中 銀 小 に 口 座 を 持 つ 全 預 金 者 の 預 金 全 額 としている 税 率 は 1%とし 預 金 の 月 間 平 均 預 貯 金 残 高 に 対 して 月 に 一 度 課 税 するとしている 税 率 を 1%としたのは 実 質 金 利 が 1%ということを 根 拠 としている これは 白 川 (2011)と 同 様 デフレ 率 より 算 出 している 全 国 銀 行 協 会 のデー タより 平 成 23 年 9 月 末 時 点 で 日 本 の 銀 行 預 金 は 580 兆 円 ゆうちょ 銀 行 2011 年 3 月 末 時 点 の 預 金 残 高 が 約 175 兆 円 合 わせて 預 貯 金 残 高 の 合 計 を 約 725 兆 円 としている 税 率 は 1%であるから 1%につき 7.25 兆 円 の 税 収 があるとしている 創 価 大 学 高 橋 一 郎 研 究 会 (2011)は 基 礎 控 除 を 1000 万 円 として 1000 万 円 を 超 える 部 分 を 課 税 対 象 としている 日 銀 のデータによると 2010 年 9 月 時 点 での 日 本 の 総 貯 蓄 額 は 約 566 兆 円 としている その 内 統 計 局 のデータにより 貯 蓄 残 高 が 1000 万 円 を 超 える 世 帯 の うち 1000 万 円 を 超 える 部 分 つまり 課 税 対 象 額 は 302 兆 9540 億 円 だとしている 税 率 は 様 々な 値 をシミュレーションしており 基 礎 的 財 政 収 支 の 均 衡 黒 字 化 の 水 準 を 税 率 とし て 設 定 するよう 提 言 している 第 2 項 タンス 預 金 対 策 貯 蓄 税 導 入 の 際 に 問 題 となる 点 としてタンス 預 金 の 増 加 がある 櫻 川 昌 哉 研 究 会 (2011) は タンス 預 金 問 題 点 の 対 策 として 全 預 金 者 の 全 口 座 から 月 に 一 度 課 税 するとしている 年 に 一 度 の 課 税 にすれば 課 税 タイミングを 避 けるという 抜 け 道 が 生 じてしまう それを 防 ぐための 策 である 白 川 (2011)は 非 常 に 大 胆 な 策 を 提 案 している まず スタンプ 紙 幣 というものを 挙 げている ドイツの 実 業 家 であるゲゼルが 考 案 したもので ゲゼル 型 通 貨 とも 呼 ばれる これは 紙 幣 に 有 効 期 限 を 設 けて 期 限 毎 にスタンプを 押 印 することで 期 限 12

を 延 長 するものである その 際 に 印 紙 税 をとることで 現 金 からも 課 税 しようとする 案 であ る 有 効 期 限 を 過 ぎた 紙 幣 つまりスタンプを 押 すことで 更 新 しなかった 紙 幣 の 価 値 は 低 下 していく 他 にはスタンプを 押 すのではなく 毎 年 色 の 異 なった 紙 幣 を 発 行 して 紙 幣 を 交 換 するというものもある 交 換 する 際 に 手 数 料 をとるというもので こちらも 交 換 しな かった 場 合 は 価 値 が 低 下 していく さらには 退 蔵 コストを 増 やすという 考 えも 提 示 してい る 例 えば 1 万 円 札 などの 高 額 紙 幣 を 廃 止 して 最 高 額 紙 幣 を 1000 円 札 にするといったも のである そうすれば 1 万 円 札 に 比 べて 退 蔵 コストが 10 倍 となる 紙 幣 を 廃 止 してしまうという 考 えもある すべてを 電 子 化 してしまえば 現 金 で 持 つことは 不 可 能 となる このように 白 川 (2011)は 様 々な 案 を 提 示 しているが これらの 案 を 実 行 す るには 大 きなコストや 手 間 が 必 要 となるため 導 入 は 難 しいとしており あくまでも 貯 蓄 税 を 導 入 した 際 にタンス 預 金 化 が 止 まらなければ 検 討 するという 程 度 に 留 まっている 第 3 項 その 他 の 問 題 点 について a) 若 年 層 に 対 する 負 担 貯 蓄 税 の 導 入 は 高 齢 者 だけでなく 若 年 富 裕 層 にも 大 きな 負 担 になるのではないかとい う 指 摘 がある 若 年 層 であっても 起 業 などにより 若 くして 財 を 成 した 者 であれば 貯 蓄 税 の 累 進 性 により 高 額 負 担 となるからである 白 川 (2011)は 若 年 富 裕 層 への 課 税 が 彼 らの 成 長 意 欲 低 下 を 招 いたり 海 外 流 出 を 促 すのではないかという 考 えもあるが 貯 蓄 税 の 導 入 は 彼 らにとってメリットとも 成 りうるとしている 現 在 の 日 本 の 財 務 事 情 から 明 らかなよう に 現 状 のままでは 今 後 財 源 を 賄 うために 増 税 は 必 須 であり そうなれば 消 費 税 や 所 得 税 を 上 げざるを 得 なくなる つまり 資 産 課 税 を 引 き 上 げなければ 結 局 フロー 課 税 の 引 き 上 げという 形 で 跳 ね 返 ってくることになるというのだ また フローへの 課 税 は 経 済 を 停 滞 させる 恐 れがあり 国 全 体 の 需 要 量 が 減 少 すれば 売 り 上 げや 所 得 が 減 少 することにな る そこで 貯 蓄 への 課 税 を 行 い 消 費 が 活 性 化 することによりデフレからインフレへと 転 じ それが 安 定 的 になれば 国 にとっても 国 民 にとってもプラスとなるという 考 えである b) 二 重 課 税 について 貯 蓄 税 について 二 重 課 税 ではないかという 意 見 がある だが 消 費 税 やその 他 の 税 も 同 様 に 所 得 税 が 課 せられたものに 再 び 課 すというプロセスを 経 るという 点 で 同 じであり 貯 蓄 税 もまた 然 りである また 白 川 (2011)によると 貯 蓄 税 の 実 効 税 率 をデフレ 率 にそろえれば デフレに よって 増 えた 資 産 の 実 質 価 値 (= 税 負 担 力 )に 一 % 課 税 しているとの 解 釈 が 成 り 立 つ つ まり デフレの 恩 恵 分 を 政 府 に 返 上 するのであり その 意 味 において 二 重 取 りされるわけ ではないのである 3 としている この 場 合 あくまでも 日 本 が 現 状 デフレ 下 であること を 前 提 としている 点 に 注 意 していただきたい だが 現 状 分 析 の 方 で 述 べたように 現 状 では 資 産 課 税 ともいえる 利 子 課 税 がすでに 存 在 している 上 で 貯 蓄 税 を 導 入 してしまえば 資 産 に 対 して 二 重 若 しくは 三 重 課 税 ともなりう る 可 能 性 がある この 点 に 関 しては 先 行 研 究 における 言 及 は 見 られない c) 締 め 出 された 資 金 について 貯 蓄 税 によって 締 め 出 された 資 金 はどこへ 向 かうのか 本 稿 では 消 費 に 回 る 前 提 で 論 を 展 開 してきたが 実 際 導 入 した 際 に 消 費 へ 向 かうかどうかは 未 知 数 である また 税 率 を デフレ 値 より 算 出 して 実 質 金 利 をゼロ 以 下 にする 考 えがあるが その 場 合 資 金 の 向 かう 先 は 金 融 資 産 となることが 予 想 される ただし リスク 資 産 ではなく 国 債 などの 安 定 資 産 3 白 川 浩 道 (2011) 消 費 税 か 貯 蓄 税 か 朝 日 新 聞 出 版 (pp.124-125)(p.126)より 引 用 13

である 櫻 川 昌 哉 研 究 会 (2011)でも 預 貯 金 の 流 出 先 は 主 に 国 債 としている 現 在 日 本 の 国 債 の 9 割 以 上 は 日 本 の 預 貯 金 によって 消 化 されているため 結 局 同 じ 流 れのように 見 える が 国 民 が 自 分 の 意 思 で 国 債 を 保 有 することによって 財 政 監 督 効 果 があるのではないかと している つまり 国 民 自 身 が 国 債 を 保 有 することは 国 民 の 財 政 に 対 する 関 心 を 高 め 日 本 の 財 政 政 策 について 真 剣 に 考 える 機 会 になるのではないかとしている 我 々はそれ 以 外 にもリスク 資 産 の 保 有 割 合 の 増 加 が 国 民 の 金 融 資 産 に 対 する 関 心 を 高 め 金 融 リテラシー の 向 上 が 期 待 できるのではないかと 考 えている 白 川 (2011)は 流 出 した 資 金 が 国 債 へ 向 か うことは 貯 蓄 税 を 回 避 する 抜 け 道 として 使 われるのではないかと 考 えており 預 貯 金 と 国 債 両 方 に 課 税 することを 考 えている d) 資 金 流 出 について 白 川 (2011)はある 程 度 の 流 出 は 仕 方 がないとしている また 櫻 川 昌 哉 研 究 会 (2011)は 海 外 資 産 を 保 有 することに 内 在 するリスクに 注 目 しており 為 替 リスクや 手 数 料 などを 考 慮 すれば 海 外 資 産 を 保 有 するインセンティブは 小 さいとしている e) 法 人 の 預 貯 金 に 課 税 するのか 現 在 日 本 では 個 人 だけでなく 法 人 も 預 貯 金 を 蓄 えていることが 問 題 視 されている そ こで 法 人 の 預 貯 金 に 対 しても 課 税 してはどうかという 考 えもあるのだが 多 くの 法 人 は 預 貯 金 だけでなく 多 額 の 負 債 を 抱 えており 純 貯 蓄 においては 大 半 の 企 業 は 赤 字 であ る さらに 法 人 が 預 貯 金 を 蓄 える 理 由 として 負 債 を 返 済 するためだという 意 見 もある 法 人 の 7 割 は 赤 字 収 支 であるため それらの 企 業 に 課 税 することは 企 業 の 海 外 流 出 など 大 きなリスクが 伴 うため 導 入 は 難 しいと 考 えられる 白 川 (2011)も 企 業 への 課 税 は 難 しいと しながらも そこにメリットもあると 考 えている 流 出 した 貯 蓄 が 人 件 費 や 新 たな 投 資 へ と 振 り 分 けられることにより 短 期 的 には 利 益 は 減 少 するが 長 期 的 にはプラスになる 可 能 性 があるとしている ただ 我 々は 現 状 法 人 への 課 税 は 難 しいと 考 えている また 法 人 へ 課 税 しない 場 合 実 体 のない 起 業 を 行 ってそこへ 資 金 を 移 すといったような 抜 け 道 も 生 じてしまうため 何 らかの 対 策 は 必 要 だと 考 えている 本 稿 においては 貯 蓄 税 導 入 肯 定 派 の 立 場 からだけではなく 否 定 派 の 立 場 からも 貯 蓄 税 について 考 察 し 上 で 導 入 が 妥 当 かどうかを 考 察 した 第 2 節 相 続 税 スウェーデンでは 2004 年 12 月 から 相 続 税 を 廃 止 している 課 税 方 式 は 遺 産 取 得 課 税 方 式 で ある 相 続 税 の 課 税 根 拠 としては 富 の 再 分 配 と 所 得 税 の 補 完 にあると 言 われている 元 々 19 世 紀 のスウェーデンでは 相 続 による 資 産 取 得 は 所 得 として 課 税 されていた しか し 二 重 課 税 を 避 けるために 相 続 などで 得 た 資 産 は 非 課 税 所 得 として 明 記 されるように なった またこの 規 定 は 相 続 税 が 廃 止 されるまでは 財 産 税 や 所 得 税 との 二 重 課 税 を 排 除 す るためにあったものだとも 考 えられる また 税 額 は 相 続 時 の 時 価 によって 計 算 されるため 被 相 続 人 のキャピタルゲインに 対 しては 課 税 されることはなかった 1941 年 には 相 続 税 法 は 改 正 され 課 税 の 根 拠 を 富 の 再 分 配 としている また エルンスト ビークフォッシュは 1920 年 代 に 相 続 税 の 課 税 根 拠 は 相 続 権 の 差 により 生 じる 財 産 の 違 いに 対 する 税 の 調 整 であるとし ている 富 の 再 分 配 という 意 識 が 高 まった 1970 年 代 に 入 ると 所 得 税 の 最 高 税 率 は83%にも 達 し 経 済 的 非 効 率 に 結 びついていると 指 摘 されていた これによって 同 族 会 社 などの 場 合 に 相 続 が 非 常 に 困 難 になっていた そこで 相 続 税 を 減 らす 特 例 が 導 入 された しかしこれによっ て 相 続 税 の 全 体 に 占 める 相 続 割 合 は 減 少 し 富 の 再 分 配 という 課 税 根 拠 は 実 質 的 に 非 常 に 後 退 したといえる 1972 年 には 政 府 税 制 委 員 会 が 設 置 され 抜 本 的 な 税 制 改 革 を ロディンに 委 託 した ロディンは 個 人 の 消 費 支 出 を 課 税 ヘ ースに 累 進 的 に 課 税 する 支 出 税 を 考 案 した ほ 14

かにも 支 出 税 論 者 は 存 在 していたが ロディンの 支 出 税 は 遺 贈 や 贈 与 も 課 税 ヘ ースに 含 まれ る 点 が 他 と 異 なる 点 といえる しかしロディンの 支 出 税 の 下 では 被 相 続 人 が 生 前 受 けた 貯 蓄 や 投 資 の 控 除 は 死 亡 によって 相 続 人 に 引 き 継 がれるため( 支 出 能 力 が 変 化 しないため)に 課 税 は 将 来 に 繰 り 延 べられるだけである 相 続 税 が 廃 止 された 要 因 として 相 続 税 は 被 相 続 人 の 住 所 を 基 準 に 課 税 をしていた 条 件 としては スウェーデン 市 民 と 婚 約 している 者 または 相 続 開 始 前 10 年 以 内 にスウェーデンから 出 国 したものに 対 しては 相 続 人 が 相 続 した 資 産 に 課 税 された しかし 被 相 続 人 が 10 年 を 超 えて 海 外 に 居 住 している 場 合 帰 国 しない 限 り 相 続 人 は 納 税 対 象 者 にはならなかった またもう 一 つの 要 因 として 株 式 評 価 の 問 題 がある 相 続 制 に 関 して 上 場 株 式 は 市 場 価 格 の 75%で 評 価 されるが 非 上 場 株 式 である 場 合 市 場 価 格 の 30%で 評 価 される この 事 から 相 続 に 関 して 非 上 場 株 式 への 転 換 がなされることも 多 かった 廃 止 の 最 大 の 要 因 は 不 動 産 である スウェーデンでは 相 続 税 は 所 得 税 を 補 完 する 機 能 を 持 って いなかったため 不 動 産 税 という 資 産 保 有 税 で 保 管 された その 上 不 動 産 には 富 裕 税 が 課 税 されるため さらに 税 負 担 は 増 加 した 一 方 スウェ-デンでは 相 続 税 が 占 める 税 収 割 合 は 低 く 富 の 再 分 配 というよりは 富 の 集 中 を 防 ぐ 程 度 の 機 能 しか 果 たしておらず 度 重 なる 軽 減 措 置 によって 税 収 割 合 はかなり 減 少 してしまっていた このことから スウェーデンでは 富 の 再 分 配 という 機 能 はあまり 重 要 視 されてはいなかったと 言 える また 政 府 における 廃 止 案 とし ては 中 小 企 業 の 事 業 承 継 による 財 産 の 取 得 に 対 する 相 続 税 および 贈 与 税 についても 批 判 があ り 2000 年 の 株 式 下 落 以 後 株 式 や 有 価 証 券 に 対 する 相 続 税 法 の 改 正 が 要 求 されていた また 経 営 者 関 係 団 体 や スウェーデン 貿 易 産 業 経 営 者 国 家 組 織 不 動 産 所 有 者 連 合 などの 団 体 が 相 続 税 を 廃 止 すべきとの 見 解 を 出 している こうした 中 小 企 業 の 事 業 承 継 の 問 題 は そ もそも EC 条 約 が 財 人 資 本 サービスの 移 動 につき 障 害 を 除 去 することを 目 的 として いることからEUで 議 論 されていた 欧 州 委 員 会 は 相 続 税 贈 与 税 は 中 小 企 業 の 事 業 承 継 に 際 して 障 害 になると 考 え 1994 年 に 勧 告 を 出 していた こういったことからスウェーデン の 相 続 税 は 廃 止 された 15

第 4 章 分 析 第 1 節 貯 蓄 税 第 1 項 貯 蓄 税 の 公 平 性 そもそも 貯 蓄 税 には 公 平 性 があるのか 税 を 導 入 する 際 にはその 税 に 公 平 性 がなければ ならない 公 平 性 があるかどうかを 見 分 けるには 応 能 負 担 原 則 応 益 原 則 機 会 の 平 等 を 満 たしているかどうかを 見 ればよい まず 応 能 負 担 原 則 とは 租 税 は 負 担 能 力 の 高 いものが 大 きな 負 担 を 負 うことが 社 会 的 に 平 等 であるという 考 えである 貯 蓄 税 を 仮 に 国 民 一 律 に 課 したとすれば 貯 蓄 の 多 いものほど 多 くの 金 額 を 納 める 必 要 がでてくる 若 しくは 基 礎 控 除 を 設 ければよりこの 原 則 に 当 てはまることになる よって 貯 蓄 税 は 応 能 負 担 原 則 を 満 たしているといえる 目 に 応 益 原 則 とは 公 共 サービスの 恩 恵 をより 多 く 受 けている 者 がより 多 くの 税 負 担 を 負 うという 原 則 である この 原 則 は 最 も 貯 蓄 税 の 特 徴 に 当 てはまる ここで 白 川 (2011)は 富 裕 層 ほど 投 資 活 動 や 企 業 経 営 を 行 っている 可 能 性 が 高 く 規 制 監 督 警 察 司 法 制 度 教 育 制 度 道 路 湾 口 空 港 などの 社 会 資 本 といったあらゆる 政 府 サー ビスの 恩 恵 を 受 けていると 考 えられるからだ としている また 富 裕 層 は 高 齢 者 を 中 心 としており 高 齢 者 ほど 受 益 が 多 い 一 方 で 若 年 層 ほど 負 担 が 小 さいことはデータにも 表 れている 下 図 を 参 照 してほしい 内 閣 府 平 成 17 年 経 済 財 政 白 書 日 本 経 済 新 聞 2010 年 8 月 6 日 朝 刊 によると 2008 年 時 点 の 60 歳 以 上 の 世 代 は 生 涯 純 受 益 が 4875 万 円 となっている 一 方 で 20 歳 代 は 1500 万 円 以 上 の 負 担 超 過 となっている 20 最 以 下 の 世 代 とこれから 生 まれてくる 世 代 である 将 来 世 代 に 至 っては 4585 万 円 となっている 2008 年 時 点 においては 60 歳 以 上 の 純 受 益 は 減 少 しているものの 将 来 世 代 の 負 担 は 倍 近 くになっ ている よって 最 も 受 益 を 受 けている 高 齢 者 世 代 が 大 きな 課 税 負 担 をするという 応 益 原 則 は 妥 当 といえる ( 出 典 ) 経 済 産 業 省 16

最 後 に 機 会 の 平 等 とは 誰 もが 社 会 参 加 の 機 会 について 平 等 であるべきという 考 えである 社 会 参 加 をするためには 相 応 の 所 得 や 財 産 が 必 要 であり 高 齢 者 を 中 心 とした 富 裕 層 の 資 産 を 低 所 得 者 へ 再 分 配 することによってそれらの 機 会 を 得 ることは 妥 当 であ る 以 上 3 つの 項 目 を 満 たしていることから 貯 蓄 税 は 公 平 性 の 観 点 からは 妥 当 だといえ る 第 2 項 貯 蓄 税 の 試 算 以 下 の 条 件 で 試 算 を 行 う a) 国 民 一 律 課 税 b) 預 金 のみ 対 象 c) 税 率 を 1%とする 課 税 は 全 国 民 を 対 象 とする 対 象 となる 資 産 は 預 金 のみ つまり 白 川 (2011)とは 違 って 国 債 は 対 象 外 とする 税 率 は 分 かり 易 いように 1%とする 預 金 額 を 出 すにはまず 市 中 銀 行 の 預 金 額 とゆうちょ 銀 行 の 預 金 額 を 合 わせる 必 要 があ る 日 銀 データヘ ースによると 国 内 銀 行 預 金 合 計 は 約 644 兆 円 である ゆうちょ 銀 行 の ディスクロージャー 誌 によると 預 金 総 額 は 約 165 兆 円 となっている 市 中 銀 行 とゆうちょ 銀 行 の 預 金 総 額 は 約 809 兆 円 となる よって 税 率 を 1%とすると 約 8 兆 円 の 税 率 となる 消 費 税 増 税 による 税 収 は 1%につき 2.5 兆 円 程 度 とされているので 貯 蓄 税 率 1%につき 消 費 増 税 3% 程 度 の 税 収 が 見 込 めることになる 第 3 項 貯 蓄 税 への 疑 問 ここまで 貯 蓄 税 の 公 平 性 や 単 純 モデルでの 試 算 を 出 したが 貯 蓄 税 の 導 入 に 対 して 大 き な 問 題 点 がある それは 現 在 の 日 本 では 貯 蓄 率 の 低 下 が 不 安 視 されており 貯 蓄 税 の 導 入 によって 貯 蓄 から 消 費 へと 促 すことはその 流 れを 加 速 させることになるのではないかとい うことである これより 日 本 の 貯 蓄 率 低 下 について 分 析 する a) 貯 蓄 率 低 下 日 本 の 家 計 貯 蓄 率 は 現 在 低 下 傾 向 にある 70 年 代 には 約 20%あったが 2011 年 度 には 約 2%となっている 財 務 省 やその 他 金 融 機 関 は 今 後 も 低 下 傾 向 は 続 いていくという 見 通 しを 出 している OECD のデータ( 下 図 参 照 )によると 2011 年 時 点 でフランスが 16.2% ドイツが 10.4% イギリスが 6.5% アメリカが 4.2%となっている これら 主 要 国 と 比 較 すると 日 本 の 貯 蓄 率 が 低 水 準 であることがわかる さらに 貯 蓄 率 の 推 移 を 見 るとフランス やドイツが 比 較 的 安 定 的 に 推 移 しているのに 対 し 日 本 は 急 激 に 低 下 していることがわか る なぜ 日 本 の 貯 蓄 率 がここまで 下 がってしまったのか 家 計 の 貯 蓄 率 について 考 察 するに はライフサイクル 仮 説 が 重 要 となってくる ライフサイクル 仮 説 とは 国 民 の 消 費 の 決 定 要 因 はその 時 点 の 可 処 分 所 得 ではなく 生 涯 の 可 処 分 所 得 総 額 であるというものである その 結 果 自 分 が 死 亡 すると 予 想 される 時 期 までの 消 費 総 額 が 生 涯 可 処 分 所 得 と 合 うよう 17

に 消 費 していくことになる その 為 収 入 のある 勤 労 世 代 の 時 には 貯 蓄 し 引 退 世 代 とな り 収 入 が 年 金 だけとなれば 足 りない 部 分 は 貯 蓄 を 取 り 崩 して 補 填 していく つまり 貯 蓄 を 取 り 崩 す 高 齢 者 世 代 が 多 くなれば 貯 蓄 率 は 下 がるということになる 家 計 の 貯 蓄 率 総 務 省 統 計 局 のデータ(*2)によると 1970 年 時 点 での 高 齢 者 (65 歳 以 上 )は 総 人 口 の 約 7%を 占 めているが 2013 年 においては 約 25%と 3 倍 以 上 となっている この 世 界 に 例 を 見 ない 急 激 な 高 齢 化 が 貯 蓄 率 低 下 の 主 要 因 として 考 えられているのである ( 出 典 )All About 家 計 貯 蓄 率 の 国 際 比 較 (http://allabout.co.jp/gm/gc/423678/)2014/11/4 小 林 大 野 (2010)は 貯 蓄 率 の 要 因 分 析 と 貯 蓄 率 の 将 来 推 計 を 出 している 要 因 分 析 に おいては 要 素 を 金 融 資 産 残 高 利 子 率 従 属 人 口 比 率 及 びその 他 の4つとして 分 析 を 行 っている 金 融 資 産 残 高 が 主 な 要 素 となるのは 個 人 の 消 費 は 所 得 と 資 産 によって 決 定 され 資 産 が 大 きくなるほど 消 費 が 大 きくなり 貯 蓄 率 が 低 下 するためである また 従 属 人 口 とは 14 歳 までの 少 年 人 口 と 65 歳 以 上 の 老 年 人 口 を 足 したものであり これは 生 産 年 齢 人 口 ではない 者 のことを 言 う 小 林 大 野 (2010)は 貯 蓄 率 変 化 の 要 因 分 解 を 各 年 と 期 間 別 で 出 しているが 各 年 においてはその 他 の 要 因 によって 解 釈 が 難 しくなるためここで は 期 間 別 に 焦 点 を 当 てる 期 間 別 においては 期 間 を 80 年 代 90 年 代 2000 年 代 に 分 けて おり それぞれの 時 期 の 特 徴 が 読 み 取 れる なお 要 因 分 解 の 読 み 取 り 方 として 値 は 観 測 値 であり 貯 蓄 率 が 増 加 する 要 因 においてはプラス 低 下 する 要 因 においてはマイナス となる 例 えば 従 属 人 口 の 低 下 金 融 資 産 残 高 の 低 下 及 び 利 子 率 の 増 加 はプラスの 要 因 となり 従 属 人 口 の 増 加 金 融 資 産 残 高 の 増 加 及 び 利 子 率 の 低 下 は 逆 にマイナスの 要 因 となる 期 間 別 の 観 測 値 を 見 ると 80 年 代 においては 金 融 資 産 残 高 の 増 加 が 貯 蓄 率 低 下 に 大 きく 寄 与 している 一 方 で 従 属 人 口 が 減 少 しており こちらは 押 上 げ 要 因 となってい る 90 年 代 においては 利 子 率 の 低 下 が 主 な 要 因 となる この 時 期 の 利 子 率 の 低 下 はバブル 経 済 の 崩 壊 による 影 響 が 大 きいと 考 えられる 2000 年 代 においては 従 属 人 口 の 増 加 が 主 な 要 因 となっている ここで 主 要 因 の 推 移 図 を 見 てもらいたい 他 の 主 要 因 が 緩 やかに 推 移 しているのに 対 し 従 属 人 口 比 率 は 90 年 代 を 境 に 急 激 に 上 昇 しており これが 90 年 代 半 ばから 2000 年 代 における 貯 蓄 率 低 下 の 主 要 因 なのは 言 うまでもない 18

( 出 典 ) 日 本 の 家 計 貯 蓄 率 (https://www.mof.go.jp/pri/research/special_report/f01_2010_04.pdf#search='%e6%97%a5%e6%9c%a C%E3%81%AE%E8%B2%AF%E8%93%84+%E6%8E%A8%E8%A8%88')2014/11/4 ( 出 典 ) 日 本 の 家 計 貯 蓄 率 (https://www.mof.go.jp/pri/research/special_report/f01_2010_04.pdf#search='%e6%97%a5%e6%9c%a C%E3%81%AE%E8%B2%AF%E8%93%84+%E6%8E%A8%E8%A8%88')2014/11/4 19

( 出 典 ) 日 本 の 家 計 貯 蓄 率 (https://www.mof.go.jp/pri/research/special_report/f01_2010_04.pdf#search='%e6%97%a5%e6%9c%a C%E3%81%AE%E8%B2%AF%E8%93%84+%E6%8E%A8%E8%A8%88')2014/11/4 b) 貯 蓄 率 が 下 がることの 問 題 性 貯 蓄 率 が 低 下 していることは 上 述 の 通 りだが 貯 蓄 率 が 低 下 し 貯 蓄 が 減 少 していく ことにどういった 問 題 があるのか 櫨 (2006)は 貯 蓄 投 資 バランスを 用 いて 家 計 貯 蓄 の 重 要 性 を 説 いている 貯 蓄 投 資 バランスとは 貯 蓄 額 と 投 資 額 の 差 である 櫨 (2006)は 経 常 収 支 = 家 計 の 貯 蓄 投 資 バランス+ 企 業 の 貯 蓄 投 資 バランス+ 政 府 の 貯 蓄 投 資 バランスという 関 係 式 を 用 いて 貯 蓄 側 から 経 済 を 見 ている 各 部 門 において 貯 蓄 投 資 バランスが 正 な らば 資 金 余 剰 負 ならば 資 金 不 足 ということを 示 している 櫨 (2006)は 余 剰 資 金 の 重 要 性 について 稲 作 を 例 に 説 明 している 毎 年 稲 を 栽 培 して 米 を 収 穫 するとして 来 年 も 同 じだ けの 収 穫 量 を 得 るためにはそれだけの 収 穫 を 生 み 出 せる 種 もみが 必 要 となる その 為 には すべての 米 を 消 費 せず 必 要 な 分 だけとっておかなければならない それ 以 上 の 収 穫 を 得 るにはさらに 多 くの 種 もみを 残 しておくことが 必 要 である これを 言 い 換 えると 貯 蓄 が 食 べずに 残 しておいた 米 の 量 で 投 資 が 種 もみ 所 得 が 米 の 収 穫 量 消 費 が 食 べる 米 の 量 となる つまり 貯 蓄 を 増 やすことで 投 資 が 可 能 となり その 分 だけ 所 得 が 増 えて 消 費 が 大 きくなるということである 貯 蓄 投 資 バランスに 話 を 戻 そう 日 本 の 経 常 収 支 は 現 在 黒 字 なのだが それは 上 述 の 関 係 式 を 用 いるならば 右 辺 の 合 計 がプラスだったことを 意 味 する 家 計 部 門 はわずかにプラ ス 企 業 部 門 もプラス 政 府 部 門 はマイナスとなっており 政 府 部 門 の 不 足 金 を 家 計 と 企 業 の 余 剰 が 上 回 っているということである しかし この 形 は 異 常 である 下 図 を 参 照 し て 頂 きたい 1990 年 代 前 半 までは 企 業 部 門 はマイナスだったことが 分 かる このように 企 業 部 門 は 通 常 マイナスとなるはずだからである 企 業 は 投 資 を 拡 大 して 供 給 力 を 大 きくし ていくものである 下 図 にあるように 高 度 経 済 期 では 資 本 ストック 量 は 大 きく 増 加 して いる しかし 1990 年 代 以 降 では 資 本 ストックの 伸 びが 鈍 化 している 企 業 が 投 資 を 控 え るようになった 原 因 はバブル 期 に 抱 えた 多 額 の 負 債 であり 毎 年 の 企 業 部 門 の 余 剰 はその 返 済 に 充 てられている 下 図 にあるように 現 在 の 設 備 投 資 で 顕 著 となっているのはその 内 訳 である 新 規 の 投 資 である 純 投 資 が 減 少 して 既 存 の 設 備 の 維 持 更 新 費 が 大 部 分 を 占 めている つまり 日 本 企 業 の 生 産 力 は 停 滞 している 現 在 企 業 は 投 資 を 控 えているが 今 後 もそのままでいるとは 限 らない 企 業 が 投 資 を 拡 大 したいときには 家 計 部 門 の 余 剰 で 賄 わなければならないのだが このままでは 難 しい また 政 府 部 門 の 不 足 分 は 企 業 部 門 の 余 剰 分 に 支 えられているが 上 述 のように 企 業 部 門 が 投 資 を 拡 大 していく 際 は 家 計 部 門 の 余 剰 分 でそれらを 支 えていくのが 望 ましい 20

( 出 典 ) 2025 年 : 高 齢 化 で 変 わる 日 本 経 済 社 会 日 本 の 家 計 貯 蓄 率 の 長 期 的 な 動 向 と 今 後 の 展 望 (http://www.murc.jp/thinktank/rc/quarterly/quarterly_detail/200901_113.pdf)2014/11/4 ( 出 典 ) 櫨 浩 一 (2006) 貯 蓄 率 ゼロ 経 済 日 本 経 済 新 聞 社 (pp.39) ( 出 典 ) 櫨 浩 一 (2006) 貯 蓄 率 ゼロ 経 済 日 本 経 済 新 聞 社 (pp.111) 以 上 より 日 本 の 家 計 貯 蓄 率 低 下 の 現 状 貯 蓄 率 低 下 による 問 題 性 についての 考 察 とす る 貯 蓄 税 を 導 入 することは 家 計 貯 蓄 率 の 低 下 に 拍 車 をかけるため 日 本 の 生 産 力 がさら に 下 がることとなる また 政 府 支 出 を 増 やすことが 難 しくなるため 日 本 の 財 政 破 綻 のリ スクが 高 まる 可 能 性 がある 21

第 2 節 相 続 税 相 続 税 の 税 収 推 移 である 相 続 税 は 平 成 5 年 に 約 3 兆 円 規 模 の 歳 入 をもたらしたが 現 在 はその 半 分 ほどの 規 模 に 縮 小 している 平 成 25 年 度 の 国 税 収 入 における 相 続 税 の 割 合 はおよそ 3% 程 度 でありこれは 消 費 税 1%にも 満 たない 消 費 税 は 対 象 者 が 若 年 層 から 高 齢 者 層 まで 幅 広 く 課 税 対 象 になるため 安 定 した 財 源 確 保 ができる しかし 相 続 税 は 課 税 対 象 者 が 課 税 件 数 / 死 亡 者 数 によって 算 出 されるため 年 ごとに 課 税 件 数 や 死 亡 者 にばらつきが 生 じる 以 下 の 図 を 参 照 すると 相 続 税 収 は 平 成 5 年 を 最 後 に 逓 減 ま たは 横 ばいの 一 途 である この 度 の 改 正 により 課 税 対 象 者 が 増 えたとしてもそれが 必 ずしも 増 収 につながるとは 限 らないのだ なぜなら 昭 和 62 年 ~63 年 税 収 に 変 化 が ないのに 課 税 対 象 者 が 大 幅 に 減 っているその 理 由 として 昭 和 63 年 に 課 税 対 象 者 の 割 合 が 減 少 した 理 由 として 相 続 税 法 の 抜 本 改 正 があったことが 挙 げられる 平 成 25 年 度 税 制 改 正 により 課 税 対 象 者 の 増 加 が 見 込 まれているが 長 期 的 に 見 て 税 収 が 増 加 したと してもその 税 収 は 消 費 税 や 所 得 税 に 比 べて 歳 入 に 占 める 割 合 は 低 いことが 想 定 されま た 税 収 の 安 定 的 な 確 保 は 期 待 できない 相 続 税 の 機 能 に 関 しては 現 状 分 析 に 詳 細 が 書 かれているが 少 なくとも 税 収 といった 観 点 から 見 れば ほかの 税 金 に 比 べて 相 続 税 の 重 要 度 は 低 いと 考 察 した 22

ISFJ 政策フォーラム 2014 発表論文 注1 相続税収は各年度の税収であり 贈与税収を含む 平成 24 年度以前は決算 額 平成 25 年度及び平成 26 年度は予算額 注2 課税件数は 国税庁統計年報書 により 死亡者数は 人口動態統計 厚 生労働省 による 出所<http://www.mof.go.jp/tax_policy/summary/property/141.htm> 相続税以外の税金について考察した 法人税 基盤が弱い 赤字法人割合が高い 国税庁の 平成 24 年度分 会社標本調査 調査結果 について によれば 連結子法人 9,288 社 を除いた 253 万 5,272 社の内 利益計上法 人が 74 万 9,731 社 欠損法人が 177 万 6,253 社で欠損法人割合は 70.3%となっている また 日本の法人税の実効税率は 30%後半とアメリカに目いで世界で 2 番目となってお り 世界的にも高めの設定となっているために海外企業の日本進出の障害 日本企業の海 外流出の要因となっているとの指摘もある 消費税との最大の違いは 全体の企業収益そのものに税を課せるわけではない点であ る 例えば全国の企業の売上金額が 10%下がった場合 税収が 10%下がるわけではない 欠損企業 が増加すれば課税法人税収は激減する可能性がある 消費税 23

ISFJ 政策フォーラム 2014 発表論文 消費税は所得税などの課税所得とは違い 消費金額そのものが課税の対象になるため 法 人税や個人所得よりも税収が安定的である しかし 消費税は逆進的であり 増税が行われれば低所得者層である若年層の実質購買 力を低下させると共に 貯蓄余力も低下させることとなる さらに 消費税負担の主な担 い手は現役世代であり それらの税収が社会保障費に変換されて高齢者世代へ渡るという 所得移転が起き 高齢者層との格差拡大を助長するという問題点がある もう一つの問題点は 長期的には景気悪化へと繋がる恐れがあるという点である 短期的には 消費増税による物価上昇が起きるが 一方でそれに対応する水準で賃金が上昇しなければ実質 所得が目減りする 実質所得の低下は消費の冷え込みとなる為 景気悪化の要因となるという考 えである OECD 加盟国の中で相続税がトップクラスの日本と 2004 年 12 月に相続税を廃止し たスウェーデンの 2 国を例に相続税が経済そして貯蓄にどのような影響を与えている のか研究した 以下の図を参照しながら分析を行う 出所 Excel 家計貯蓄率を基に著者が作成 http://www.oecd.org/economy/outlook/economicoutlookannextables.htm 日本とスウェーデンの家計貯蓄率の推移を見るとスウェーデンは相続税が廃止された 2004 年 12 月より貯蓄率が急激に上昇していることがわかる もちろん相続税が家計 24

貯 蓄 率 上 昇 をもたらしていると 断 言 することはできないが 少 なくとも 一 要 因 であるこ とはこのグラフを 見 てもわかる そもそも 家 計 貯 蓄 率 の 上 昇 が 経 済 にどのようなメリットがあるのか 分 析 した 国 内 の 家 計 企 業 政 府 の 貯 蓄 投 資 バランスを 合 計 すると 経 常 収 支 になる つまり 家 計 貯 蓄 率 の 低 下 によって 家 計 の 貯 蓄 投 資 バランスの 黒 字 が 縮 小 してい けば 日 本 の 経 常 収 支 の 黒 字 は 縮 小 し いずれ 赤 字 化 することが 予 想 される 1970 年 代 半 ばには 名 目 GDPで 10% 程 度 もあった 家 計 部 門 の 貯 蓄 超 過 は 2004 年 度 では 1.8%に 過 ぎない この 先 も 高 齢 化 の 進 展 による 年 金 医 療 介 護 などの 社 会 保 障 支 出 の 増 加 が 予 想 される 主 要 先 進 国 では 財 政 赤 字 が 大 きいほど 長 期 金 利 が 高 くなるという 関 係 が 多 くみられ るが 日 本 では 大 幅 な 財 政 赤 字 があっても そのために 長 期 金 利 が 上 昇 するといった ことはなかった バブル 崩 壊 後 に 財 政 赤 字 が 膨 らみ 政 府 債 務 残 高 の 名 目 GDP 比 も 先 進 工 業 国 中 で 最 悪 という 状 況 に 陥 ったが 物 価 が 下 落 気 味 だったこともあり 長 期 国 債 の 金 利 はむしろ 低 水 準 であった 海 外 の 格 付 け 機 関 は 日 本 国 債 の 格 付 けを 発 展 途 上 国 並 みに 下 げたが それによって 国 債 価 格 が 暴 落 して 長 期 金 利 が 上 昇 するという ことも 起 こらなかった これは 基 本 的 に 国 内 の 貯 蓄 が 豊 富 で 海 外 からの 資 金 に 依 存 しなくても 十 分 国 債 の 消 化 が 可 能 であったからである しかし この 先 高 齢 化 により 家 計 貯 蓄 率 が 大 きく 低 下 していくとこれらのことに 大 きな 影 響 が 出 ていくだろう 25

第 5 章 政 策 提 言 貯 蓄 税 は 単 純 かつ 多 くの 税 収 を 得 ることができる 魅 力 的 な 税 に 見 える しかし 日 本 の 家 計 貯 蓄 率 低 下 による 日 本 の 貯 蓄 投 資 バランスが 不 安 定 という 現 状 での 導 入 には 日 本 の 経 済 成 長 さらには 財 政 破 綻 のリスクなど 非 常 に 危 険 なものと 考 えられる 従 って 導 入 はす べきでないと 考 える 相 続 税 の 軽 減 もしくは 廃 止 へ 方 針 を 転 換 することで 中 小 企 業 や 非 上 場 企 業 に 負 担 のかかる 事 業 承 継 税 制 の 改 革 を 進 めることで 国 内 産 業 を 保 護 する そして 逓 減 し 続 け る 日 本 の 家 計 貯 蓄 率 の 上 昇 を 促 す 26

先 行 研 究 参 考 文 献 データ 出 典 白 川 浩 道 (2011) 消 費 税 か 貯 蓄 税 か 朝 日 新 聞 出 版 櫨 浩 一 (2006) 貯 蓄 率 ゼロ 経 済 日 本 経 済 新 聞 社 加 藤 久 和 (2011) 世 代 間 格 差 ちくま 新 書 慶 應 義 塾 大 学, 櫻 川 昌 哉 研 究 会, 財 政 再 建 分 科 会 (2011) 預 貯 金 税 の 導 入 創 価 大 学, 高 橋 一 郎 研 究 会, 財 政 分 科 会 (2010) 日 本 財 政 の 破 綻 に 関 する 考 察 日 本 の 家 計 貯 蓄 率 小 林 航 大 野 太 郎 (2010) (https://www.mof.go.jp/pri/research/special_report/f01_2010_04.pdf#search='%e6%97%a5%e6%9c%a C%E3%81%AE%E8%B2%AF%E8%93%84+%E6%8E%A8%E8%A8%88')2014/11/4 中 田 一 良 2025 年 : 高 齢 化 で 変 わ る 日 本 経 済 社 会 (http://www.murc.jp/thinktank/rc/quarterly/quarterly_detail/200901_113.pdf)2014/11/4 All About 家 計 貯 蓄 率 の 国 際 比 較 (http://allabout.co.jp/gm/gc/423678/)2014/11/4 自 民 党 HP https://www.jimin.jp/policy/policy_topics/pdf/pdf085_1.pdf (2013.1) 2014/11/4 財 務 省 HP http://www.mof.go.jp/tax_policy/summary/property/144.htm 2011/11/4 財 務 省 HP http://www.mof.go.jp/tax_policy/summary/property/148.htm 2014/11/4 財 務 省 HP http://www.mof.go.jp/tax_policy/summary/property/143.htm 2014/11/4 国 税 庁 HP http://www.nta.go.jp/kohyo/katsudou/report/2012/01.htm 2014/11/4 http://www.oecd.org/economy/outlook/economicoutlookannextables.htm 2014/11/4 Excel OECD Economic Outlook の 付 属 統 計 表 家 計 貯 蓄 率 (Household saving rates) 日 本 総 研 HP 立 岡 健 二 郎 (2013,1) 相 続 税 の 課 税 方 式 に 関 す る 理 論 的 考 察 (http://www.jri.co.jp/file/report/researchreport/pdf/6573.pdf)2011/11/4 データ 所 得 小 林 和 也, 塩 谷 洋 子 (2012.9 ) 諸 外 国 に お け る 事 業 改 正 税 制 (http://www.pwc.com/jp/ja/tax-articles/assets/jtri-165.pdf) 2011/11/4 データ 所 得 柴 由 花 (2006) スウェーデン 相 続 税 および 贈 与 税 法 の 廃 止 (www.lij.jp/html/jli/jli_2006/2006spring_p021.pdf) 2014/11/4 データ 所 得 資 産 課 税 改 革 の 動 向 と 展 望 - 相 続 税 贈 与 税 に 係 る 論 点 を 巡 って- (2013.10) (dl.ndl.go.jp/view/download/digidepo_8328284_po_075302.pdf)2014/11/4 データ 所 得 櫨 浩 一 人 口 減 少 と 貯 蓄 率 ゼロ 社 会 への 警 告 (http://www.heri.or.jp/hyokei/hyokei91/91chochiku.htm)2014/11/4 データ 所 得 ジェトロ http://www.jetro.go.jp/world/europe/fr/invest_04/ 2014/11/4 データ 所 得 利 子 所 得 : 国 税 庁 https://www.nta.go.jp/taxanswer/shotoku/1310.htm 2014/11/4 データ 所 得 日 銀 データベース http://www.stat-search.boj.or.jp/ssi/cgibin/famecgi2?cgi=$nme_a000&lstselection=4 2014/11/4 データ 所 得 27

ゆうちょ 銀 行 :ディスクロージャー 誌 http://www.jp-bank.japanpost.jp/aboutus/financial/pdf/2014_01.pdf2014/11/04 データ 所 得 28