WHITE PAPER FEBRUARY 2015 グローバルビジネスに 本 気 で 挑 戦 するために 第 2 回 グローバル 化 のチャンスを 結 果 に 変 えるために BY DHR INTERNATIONAL TOKYO OFFICE 0
Ⅰ. はじめに グローバル 化 を 進 めるには 郷 に 入 れば 郷 に 従 わなければならない ただ 郷 が 世 界 中 ということになると 相 手 は 非 常 に 多 様 で 常 に 変 容 している 存 在 である グローバル 企 業 は 多 様 性 をどのように 取 り 込 んでいるのか DHR International (DHR) の グローバルビジネスに 本 気 で 挑 戦 するために のシリーズ 第 1 回 リーダー 人 材 確 保 に 待 ったなし ではグローバル 化 のためのリーダー 人 材 の 育 成 確 保 に 関 するインタビューを 通 してさまざまなことが 確 認 できた たとえば 経 営 のグローバ ル 化 を 最 優 先 事 項 として 取 り 組 んでいる 企 業 が 多 く 存 在 していること そしてリーダー 人 材 育 成 確 保 の 面 で 柔 軟 に 対 応 する 企 業 が 増 えていること などである 多 くの 日 本 企 業 では その 海 外 事 業 の 経 営 陣 には 古 くから 日 本 の 本 社 から 生 え 抜 きの 人 材 を 駐 在 員 として 派 遣 してきた だが 最 近 は 必 ずしもそうでなく 必 要 に 応 じて 現 地 のローカ ル 人 材 を 社 外 から 採 用 したり 本 社 でグローバル 人 材 をグローバルビジネスの 責 任 者 として 中 途 採 用 したり あるいは 現 地 に 派 遣 したりするケースが 多 くなっている これはグローバ ル 化 を 図 る 企 業 にとっては 最 初 の 一 手 であり 今 後 海 外 ビジネスのギアアップはこれらリー ダー 人 材 の 活 用 にかかっているといえるだろう リーダー 人 材 の 確 保 が 海 外 戦 略 の 入 り 口 だとすると このチャンスを 生 かすために 次 に 打 つ べき 一 手 は 何 か グローバル 化 は 多 様 化 と 背 中 合 わせであるとして これをどうやって 原 動 力 に 変 えていくのか ダイバーシティ インクルージョンなどをキーワードに グローバル 化 を 見 据 えた 経 営 の 心 構 えや 工 夫 に 関 するDHRのインタビューも 織 り 交 ぜて 考 察 してみたい 1
II. 乗 り 越 えるべき 日 本 的 なメンタリティ まず 日 本 企 業 のメンタリティを 多 国 籍 企 業 のそれと 比 べてみましょう DHRのインタビューの 際 に 元 外 資 系 金 融 会 社 の 人 事 部 長 で 現 在 人 事 系 のコンサルタントであ るE 氏 は 日 本 企 業 がグローバル 化 でなぜ 苦 労 するか という 説 明 のために 以 下 のような 表 を 書 いてくださった 日 本 企 業 と 多 国 籍 企 業 のアプローチの 違 いはかなりあります 日 本 の ように 同 じ 文 化 同 じ 言 語 で 仕 事 をすると チームでそれなりのものが 出 揃 う しっかり 調 査 して 緻 密 に 計 画 して 万 全 の 製 造 体 制 も 準 備 する こうやってグローバル 仕 様 に 対 応 して いるつもりであっても 精 査 しているうちに 最 初 の 突 き 抜 けた 考 えがなくなって 丸 くなって しまい 製 品 に 魅 力 がなくなってしまったり 市 場 では 的 外 れだったりしてしまう こんな ことを 繰 り 返 しているのはなぜか 日 本 人 はグローバルな 競 争 環 境 において メンタリティ という 点 で 不 利 なんだと 私 は 思 うのです メンタリティーのギャップ 2
E 氏 は 続 ける 日 本 企 業 は ルールが 利 く 範 囲 では 平 均 以 上 の 結 果 を 継 続 的 に 出 すことが 得 意 です しかし 今 の 世 の 中 は 変 化 が 早 い 新 しい 技 術 アプローチでゲームの 成 り 行 きが どんどん 変 わる 昨 今 は 日 本 的 にやっていたら 置 いてきぼりをくった という 状 況 が 多 々が あります こんな 状 況 に 失 望 してせっかくの 人 材 も 日 本 企 業 から 離 れていきますよね 今 日 変 革 を 促 す 原 動 力 は 多 様 性 にあると 言 われている 実 際 世 界 の 多 くの 多 国 籍 企 業 がダ イバーシティ( 多 様 性 )を 戦 略 の 一 部 として 活 動 しているが 性 別 人 種 などの 背 景 に 関 係 な く 実 力 本 位 でチームを 編 成 する 多 国 籍 企 業 についてE 氏 は 以 下 のように 説 明 してくださった 欧 米 企 業 は 多 様 化 をパワーに 変 えることができているところが 多 いが そもそも 自 国 のメ ンタリティや 文 化 背 景 が 多 様 内 需 に 対 応 する 段 階 から おのずと 異 文 化 の 人 材 を 集 めて その 混 合 チームでいろいろ 作 業 をすることになった チームフォーメーションを 作 るのは 実 際 には 結 構 大 変 なのだが うまくいけば 今 度 は 多 方 面 からさまざまな 矢 が 飛 んできてもシ ョックを 吸 収 したり 跳 ね 返 したりできる 実 力 主 義 の 文 化 が 浸 透 しているからできるので しょう 米 国 の 大 学 を 卒 業 後 外 資 系 日 系 の 金 融 機 関 数 社 で20 年 近 く 人 事 を 経 験 されている 外 資 系 金 融 日 本 法 人 の 人 事 本 部 長 F 氏 も E 氏 と 同 様 の 考 え 方 だが 多 様 性 に 対 する 苦 手 意 識 を 克 服 するためには 実 際 に 行 動 し 始 めてみることを 提 案 している 日 本 の 会 社 で 面 白 いのは グローバル 人 材 の 定 義 を 求 め マニュアル 化 しようとする 例 えばTOEIC 何 点 以 上 とか 海 外 経 験 何 年 以 上 とか 研 究 熱 心 なので 新 しい 戦 略 やアプローチ にも 詳 しい だた 実 際 に 新 しいことを 提 案 されたとき 検 証 するに 終 わっていないだろうか また 自 分 の 経 験 値 から 判 断 して それができない 理 由 を 一 生 懸 命 になって 探 していないだろ うか 完 璧 なものを 作 ろうとする 間 にゲームはまったく 次 元 が 違 うステージに 移 ってしまう ことも 日 本 人 的 なメンタリティにとらわれないこと 慣 習 や 言 語 を 乗 り 越 えなければなら ない 内 向 的 な 思 考 を 切 り 替 えなければならないが 言 うは 易 し 行 いは 難 し と 立 ち 往 生 して いないだろうか 次 章 では 多 国 籍 企 業 としての 価 値 観 を 根 幹 に 据 えて そこからぶれないこ とで 日 本 的 メンタリティを 克 服 している 企 業 の 事 例 を2つ 紹 介 したい 3
III. グローバル 化 のチャンスを 結 果 に 変 えるために 事 例 1: LIXILグループの 行 動 力 が 可 能 にする 日 本 的 メンタリティの 克 服 術 LIXILグループの 執 行 役 副 社 長 で 人 事 総 務 担 当 の 八 木 洋 介 氏 にお 話 を 伺 う 機 会 があった ちょうど 海 外 での 夏 休 みから 帰 ってきたばかりのタ イミングで ご 家 族 で 楽 しくすごされたという 八 木 氏 は 日 本 企 業 が 日 本 的 メンタリティーを 乗 り 越 えるために 実 践 されていることとし て 自 ら 行 動 すること を 強 調 された 課 題 の 一 つに 有 給 休 暇 の 取 得 率 の 低 さがあった LIXIL の 社 員 は 皆 勤 勉 で 仕 事 のプロであり 責 任 感 と 社 に 対 する 忠 誠 心 が 強 い この 同 質 的 な 社 風 は 日 本 的 組 織 の 中 で 培 われたものであり 日 本 市 場 にお いて 成 長 するには 重 要 な 財 産 だった ただし その 勤 勉 ぶりを 示 す 指 標 の 一 つが 有 給 休 暇 取 得 率 が30% 台 であったことにある これを 是 正 するにはどうしたらいいか 方 策 は 意 外 に 単 純 である 社 長 の 藤 森 義 明 氏 と 八 木 氏 をはじめとする 経 営 陣 は 自 ら 率 先 して 有 給 休 暇 を 取 得 している こうすることで 社 員 全 員 が 休 暇 をとりやすい 雰 囲 気 を 作 ろうとい うものだ ちなみにこの2 年 間 で 有 給 休 暇 取 得 率 は 相 当 改 善 しているそうだ 八 木 氏 は 休 みの 日 つまり 会 社 以 外 の 場 に 身 をおくことでできるさまざま 効 果 をこう 語 る 親 しい 人 と 憩 いのひと 時 を 過 ごして 憩 うことができる 上 に たとえば 旅 行 先 で 流 行 してい るものに 接 したり 趣 味 や 勉 強 をしてすごすなど 自 分 を 充 電 するいい 機 会 になるのです 新 しい 言 語 を 習 うもよし 新 しい 友 人 や 趣 味 を 作 るもよし こういった 自 己 開 発 は 今 後 のキャ リア 開 発 につながるものですし 仕 事 にもプラスに 作 用 する 日 本 の 同 質 的 な 社 内 の 環 境 か らくる 自 分 の 視 点 だけでは 世 界 市 場 に 対 応 するには 限 界 があります 全 社 員 に 休 みをしっか りとって 自 己 開 発 をしてもらいたいです LIXILが 日 本 的 な 組 織 メンタリティを 乗 り 越 えるためのもう 一 つの 原 動 力 に ダイバーシティ があるという 八 木 氏 は LIXILが 提 供 するプロダクトは 家 庭 で 誰 もが 使 うもの それな のに それらの 開 発 デザイン マーケティング 販 売 するリー ダーが 男 性 中 心 というのはいかがなものか 今 年 LIXILグループ は なでしこ 銘 柄 に 選 定 されました 女 性 の 観 点 も 取 り 入 れてお 客 様 の 好 みや 使 い 勝 手 を より 反 映 させた 商 品 開 発 のためにも 女 性 リーダーをより 積 極 的 に 活 用 していく 方 針 です 休 暇 の 取 得 とダイバーシティは 一 見 異 なるトピックではあるが 個 人 の 中 に 多 様 性 を 身 につ ける 組 織 として 多 様 性 を 身 につけるという 点 では 共 通 である これらが 変 革 を 起 こす 原 動 力 となり グローバル 化 に 必 要 な 力 をつけていくことができるということだろう 4
事 例 2:イケアジャパンの マインドセット が 可 能 にする 日 本 的 メンタリティの 克 服 術 ここで 外 資 系 のグローバル 人 事 制 度 とその 成 果 を 取 り 上 げたい 全 国 8 店 舗 でデザイン 家 具 ホームウエアを 販 売 するイケアジャパンは 経 済 産 業 省 が 主 催 する 2013 年 ダイバーシテ ィ 経 営 企 業 100 選 に 選 ばれた 同 企 画 はダイバーシティ 経 営 によって 企 業 価 値 向 上 を 果 たした 企 業 を 表 彰 するもの イケア ジャパンでは 女 性 の 管 理 職 比 率 は 約 43% 世 界 21カ 国 の 人 材 が 勤 務 しており さらに 韓 国 など に 日 本 で 育 成 された 人 材 の 海 外 輸 出 を 実 施 しているなど 多 様 な 人 材 の 積 極 的 活 用 が 評 価 の 対 象 となった DHRはグローバル 企 業 人 事 の 成 功 の 秘 訣 ということで 同 社 人 事 本 部 長 の 泉 川 玲 香 氏 にお 話 を 伺 った 同 氏 が 強 調 す るのは インクルージョン 組 織 の 中 にさまざまな 人 の 多 様 性 を 生 み 出 し さらに 組 織 がその 多 様 性 を 受 け 容 れて 活 かすことを 指 すが インクルージョンというコンセプト で イケアジャパンはダイバーシティのその 一 歩 先 を 行 く 形 だ 泉 川 氏 はインクルージョンを 実 現 させるために 一 番 大 切 なことは 経 営 者 層 の 日 々の マイン ドセット である と 強 調 する 組 織 の 中 で 誰 にでもビジネスに 参 加 して 貢 献 する 機 会 が あること それぞれの 経 験 やスキルや 考 え 方 が 適 材 適 所 であることが 優 先 さらに 出 る 杭 は 打 たない これらの 考 え 方 を 率 先 して 実 現 しているかどうかが イケアのリーダーとして 求 められる 資 質 また 評 価 基 準 でもあります イケアでは もともとのカルチャーとして 多 様 な 人 材 の 活 用 が 深 く 浸 透 している その 事 もあり 全 世 界 のイケア 社 員 が 見 ることができる Open IKEA という 社 内 公 募 制 度 が 早 くから 根 付 いている 例 えば 最 近 の 例 の 一 つとして 日 本 のストアマネ ージャーのポジションを Open IKEA で 公 募 をしたところ 世 界 中 から 約 30 人 が 名 乗 りを 上 げ 全 員 が 日 本 でのインタビューに 臨 んだ ダイバーシティ&インクルージョンを 真 のものとして 推 進 するためには タイトルやポジションなどに 関 係 なく 対 等 に 考 えや 意 見 を 述 べ 合 えるかが 重 要 そのためには 本 意 を もって 信 頼 しあうことが 大 切 で そこから 個 人 個 人 のもつ 力 や 能 力 が 見 えてくるはず その 能 力 をお 互 いに 活 用 し 合 える 環 境 が 生 まれたならこそ それこそが インクルージョンへ の 実 現 の 1 歩 だと 思 います と 結 んだ 5
まとめ 人 材 のダイバーシティ 対 応 を 意 識 しているが 取 り 組 まざるを 得 ない という 社 会 的 要 請 があるから 応 じて 形 式 的 にそうしている という 企 業 は 少 なからずある そのような 視 点 で 外 部 からの 登 用 女 性 幹 部 の 取 り 込 みなどを 進 めても ビジネスの 目 的 達 成 のためのロード マップもなく 結 果 も 出 せない したがって 社 員 をうまく 巻 き 込 めず 経 営 者 みずから ダイバーシティなんて 面 倒 なこと という 感 覚 に 陥 ってしまう ダイバーシティを 導 入 することは 最 初 は 心 地 よいものではないかもしれない しかし 構 えす ぎる 前 に まずは 本 気 でやってみること これこそが 多 様 性 の 受 容 の 第 一 歩 だろう 最 初 の ヤマを 乗 り 越 えれば 互 いに 受 容 の 気 持 ちが 生 まれる 気 持 ちを 共 有 できればそこは 同 じ 土 俵 の 上 すると 日 本 企 業 のいいところが 活 きてくる グローバルビジネスの 目 標 も 達 成 にも 大 きく 前 進 できるだろう ダイバーシティがすべてではない ただ 間 違 いなくグローバ ル 化 のための 原 動 力 となりえる 経 営 戦 略 の 一 環 として 継 続 的 に 推 進 することで 新 たな 競 争 力 を 生 み 出 していけるはずである 今 回 はグローバル 経 営 上 の 日 本 的 なメンタリティ 対 する 企 業 における 多 様 性 (Diversity: ダイバーシティ)の 果 たす 役 割 などを 考 察 したが 次 回 以 降 では グローバルのリーダーの 資 質 とは 外 部 から 採 用 した 人 材 の 企 業 側 の 受 け 入 れ 態 勢 (On Boarding: オンボーディング) などをテーマに 更 なる 考 察 提 言 を 行 っていきたい 6
About us: DHRインターナショナルは1989 年 にシカゴにて 創 業 以 来 2004 年 に 香 港 にアジア 地 域 本 社 アムス テルダムに 欧 州 地 域 本 社 を 設 置 2010 年 に 南 米 地 域 本 社 をサンパウロに 設 置 し 現 在 では 世 界 の50 都 市 以 上 でエグゼクティブサーチのコンサルティングを 展 開 クライアントの 経 営 課 題 を 解 決 しうるエ グゼクティブ 人 材 選 定 のサポートを 行 っています 東 京 を 含 むアジアパシフィック 地 域 では 現 在 10 都 市 ( 東 京 香 港 上 海 北 京 台 湾 ソウル シ ンガポール ムンバイ デリ ドバイ)にオフィスがあり DHR one office の 概 念 に 基 づき 緊 密 な 協 力 関 係 を 保 ちながらクライアントサービスを 提 供 しています 常 に 候 補 者 となりうるエグゼクティブと 信 頼 される 関 係 を 構 築 しており 候 補 者 が 積 極 的 に 転 職 の 意 思 のない 場 合 でも ビジネスチャンスがキャリアチャンス ということを 理 解 してもらえるようなア プローチをすることができます ヘッドハントしたエグゼクティブが 成 功 することで 企 業 も 成 功 すること が 私 たちの 情 熱 の 源 であり 成 功 にほかなりません Contact us: DHR International Japan 株 式 会 社 105-0001 東 京 都 港 区 虎 ノ 門 4-3-20 神 谷 町 MTビル16F 代 表 :03-6758-5700 橘 奈 緒 美 (ライフサイエンス ハイテク 製 造 業 ) マネージング ディレクター ntachibana@dhrinternational.com 永 田 道 雄 (ライフサイエンス 化 学 製 造 業 ) エグゼクティブ バイス プレジデント mnagata@dhrinternational.com 森 計 彦 ( 金 融 ハイテク プロフェッショナルサービス 人 事 ) エグゼクティブ バイス プレジデント kmori@dhrinternationaol.com 秦 一 成 (ハイテク 製 造 業 商 社 ) エグゼクティブ バイス プレジデント khata@dhrinternational.com 小 松 崎 涼 子 * 編 集 責 任 ( 消 費 財 小 売 プロフェッショナルサービス) エグゼクティブ バイス プレジデント rkomatsuzaki@dhrinternational.com 7