Ⅴ. 学 生 懸 賞 論 文 実 施 報 告. 応 募 論 文 29 編 のうち 入 賞 論 文 は 以 下 の 5 編 です 大 学 院 生 1 等 ( 賞 金 20 万 円 ) 該 当 論 文 なし 2 等 ( 賞 金 10 万 円 ) 該 当 論 文 なし 3 等 ( 賞 金 6 万 円 ) 該 当 論 文 なし 佳 作 ( 賞 金 2 万 円 ) 該 当 論 文 なし 学 部 生 1 等 ( 賞 金 20 万 円 ) 庄 司 真 人 (4 年 ) 日 本 における 金 融 教 育 の 養 成 と 普 及 に 関 する 考 察 2 等 ( 賞 金 10 万 円 ) 太 田 あすか(4 年 ) 中 心 市 街 地 活 性 化 を 担 う チャレンジショップ 事 業 の 成 功 要 因 - 札 幌 市 タヌたまプラザ と 富 山 市 フリークポケッ ト を 事 例 として- 前 田 容 子 ( 代 表 ) 藤 田 琴 代 稲 船 綾 夏 本 舘 綾 香 (3 年 ) ブライダル 業 界 の 行 方 3 等 ( 賞 金 6 万 円 ) 千 明 哲 郎 ( 代 表 ) 往 蔵 亮 太 藤 澤 仁 志 (3 年 ) サッカーワールドカップビジネス- 国 内 産 業 への 影 響 - 佳 作 ( 賞 金 2 万 円 ) 小 川 亮 ( 代 表 ) 大 澤 翼 高 田 禎 久 吉 田 健 太 朗 (3 年 ) 札 幌 ドームの 経 営 戦 略 37
総 評 小 樽 商 科 大 学 ビジネス 創 造 センター 研 究 部 主 任 ( 平 成 17 年 度 ) 大 津 晶 平 成 17 年 度 の 学 生 懸 賞 論 文 には 19 編 の 応 募 がありました 昨 年 は 26 編 でしたので 応 募 総 数 で は 一 昨 年 以 前 の 水 準 に 戻 ったとも 言 えますが, 大 学 院 生 の 部 への 応 募 が 例 年 1 編 のところ 3 編 に 増 加 しています 応 募 論 文 を 厳 正 に 審 査 した 結 果, 学 部 生 の 部 で 1 等 1 編,2 等 2 編,3 等 1 編, 佳 作 1 編 を 入 選 論 文 として 選 出 し, 大 学 院 生 の 部 では 残 念 ながらすべての 賞 に 該 当 なしという 結 論 を 得 ま した 応 募 者 の 所 属 内 訳 を 見 ますと, 商 学 10 編, 経 済 学 5 編, 企 業 法 学 3 編, 社 会 情 報 学 1 編 となっ ており, 例 年 よりも 商 学 科 への 偏 りが 大 きいように 思 われます したがって 応 募 論 文 の 分 野 も 経 営 や マーケティング, 企 業 戦 略 論 などが 目 立 つ 結 果 となりました また 著 者 が 3 年 生 の 論 文 が 比 較 的 高 い 評 価 を 得 た 点 も 今 年 度 の 特 徴 と 言 えます 応 募 論 文 に 対 する 審 査 員 の 評 価 を 概 観 すると, 着 眼 点 の 良 さやテーマ 設 定 のおもしろさ, 独 自 に 実 施 した 調 査 などを 高 く 評 価 するものが 多 い 一 方 で, 既 往 研 究 のレビュー 不 足 や 結 論 にいたる 論 理 構 成 の 弱 さが 指 摘 され, 分 析 手 法 の 妥 当 性 への 疑 問 が 示 されています ひとことで 言 うならば 著 者 の 信 念 を 熱 く 語 るあまり,やや 独 善 的 になってしまった 論 文 が 多 かったということでしょう また 例 年 指 摘 されていますが, 論 文 の 形 式 上 の 問 題 や 誤 字 脱 字, 規 定 分 量 の 大 幅 な 超 過 など, 応 募 論 文 と しての 完 成 度 が 低 いことにより,せっかく 著 者 独 自 の 視 点 や 主 張 に 光 るものがありながら, 総 合 評 価 を 下 げてしまっている 面 もあるようです 入 選 した 各 論 文 は,いずれも 複 数 の 審 査 員 から 優 れている との 評 価 を 得 たものです 大 学 院 生 の 部 で 入 選 がなかったのは, 審 査 員 全 体 の 考 え 方 として, 原 則 として 1 年 生 でも 応 募 できる 学 部 生 の 部 は,なるべく 良 いところを 評 価 しよう とし, 大 学 院 生 が 書 く 論 文 はやはり 内 容 完 成 度 ともに 一 定 程 度 の 水 準 を 期 待 したい という 暗 黙 の 基 準 があるのかもしれず, 結 果 的 に 厳 しめの 評 価 になった のではないかと 思 われます 今 後 学 生 懸 賞 論 文 に 応 募 しようとする 諸 君 には, 独 創 的 な 着 眼 を 大 事 にしつつも 学 術 論 文 の 作 法 を 守 って, 質 の 高 い 論 文 を 執 筆 していただきたいと 思 います 今 回 応 募 がなかった 2 年 生 以 下 の 学 生 についても, 早 い 段 階 で 懸 賞 論 文 に 応 募 することで 良 い 論 文 の 書 き 方 を 学 ぶことができますの で, 来 年 度 以 降 の 意 欲 的 な 応 募 を 望 みます 最 後 になりましたが, 本 懸 賞 論 文 事 業 の 実 施 にあたり, 株 式 会 社 北 洋 銀 行 様 より 多 大 なる ご 支 援 をいただきました 記 して 謝 意 を 表 します 38
各 論 文 講 評 学 部 生 の 部 1 等 庄 司 真 人 (4 年 ) 日 本 における 金 融 教 育 の 養 成 と 普 及 に 関 する 考 察 本 論 文 は, 近 年 著 しく 変 化 している 金 融 環 境 において, 消 費 者 に 求 められる 金 融 リテラ シーおよびそれを 養 成 する 金 融 教 育 の 普 及 について 論 じたものである 2005 年 は 金 融 教 育 スタートの 年 などと 言 われており, 激 変 する 日 本 の 経 済 金 融 環 境 と 個 人 のライフサイクルにおいて, 時 代 がそれを 求 めている と 考 えられる 金 融 リテ ラシーの 養 成 を 論 文 のテーマとして 設 定 した 点 について 高 く 評 価 することができる また 日 本 の 個 人 金 融 資 産 が 間 接 金 融 部 門 に 偏 在 し 過 ぎているとの 問 題 意 識, 今 後, 急 速 にその 運 用 が 直 接 金 融 部 門 を 通 じて 行 なわれるであろうという 時 代 変 遷 の 意 識 も 的 確 と 認 められ る 具 体 的 な 論 旨 の 展 開 においては, 日 本 と 各 国 の 現 状 比 較 に 基 づき, 金 融 リテラシーの 必 要 性 と 株 主 の 社 会 的 責 任 能 力 について 述 べ, 最 後 に 金 融 教 育 普 及 の 具 体 案 を 述 べている のは, 論 文 形 式,アプローチとして 優 れていると 言 える また 論 理 展 開 が 明 確 であり, 論 文 の 記 述 形 式 も 適 切 な 点 も 評 価 された 敢 えて 改 善 点 を 指 摘 するならば, 全 体 を 通 じて 定 性 的 な 記 述 が 多 く, 提 言 内 容 の 効 果 分 析 や, 現 状 維 持 の 場 合 の 問 題 の 大 きさ 等 に 関 する 定 量 的 分 析 がないため, 読 み 手 を 全 面 的 に 納 得 させ 得 ない 結 果 となっていること, 金 融 教 育 の 主 たる 担 い 手 として 地 方 金 融 機 関 が 最 適 であるとした 提 案 の 妥 当 性 にさらなる 吟 味 が 必 要 であることなどが 挙 げられるが, 本 論 文 により 学 生 の 側 から, 基 礎 教 育 段 階 でも 金 融 に 関 する 教 育 を 義 務 化 すべきとの 提 言 が なされた 事 は 多 とすべきである さらに, 独 自 の 追 加 ヒヤリング 調 査 等 も 行 われれば, 他 人 の 研 究 情 報 と 自 分 の 行 ったことが 区 分 され, 論 文 の 独 自 性 と 付 加 価 値 がより 高 まった 2 等 太 田 あすか(4 年 ) 中 心 市 街 地 活 性 化 を 担 う チャレンジショップ 事 業 の 成 功 要 因 - 札 幌 市 タヌたまプラザ と 富 山 市 フリークポケッ ト を 事 例 として- 本 論 文 は, 大 きな 社 会 問 題 である 地 方 中 心 市 街 地 の 衰 退 を 食 い 止 める 施 策 として 近 年 注 目 されているチャレンジショップを 題 材 とし,チャレンジショップ 事 業 の 成 否 に 影 響 を 及 ぼす 要 因 を 取 り 上 げて, 成 功 事 例 と 苦 戦 している 事 例 を 比 較 検 討 することによって,その 要 因 間 の 関 係 を 明 確 にしようとした 意 欲 的 な 論 文 である 冒 頭 に 示 された チャレンジショップの 成 否 に 影 響 を 及 ぼす 要 因 間 の 関 係 のイメージ 図 は, 厚 みのある 議 論 が 展 開 できる 可 能 性 が 高 い 分 析 フレームワークと 言 える また 実 地 調 査 をして 具 体 的 発 言 を 引 き 出 し,これに 基 づく 事 例 の 検 証 を 行 った 点 は, 一 定 の 新 事 実 発 見 につながっており 高 く 評 価 できる 論 文 形 式 としては, 文 章 や 論 理 構 成 がしっかりし ており 主 張 点 も 明 確 である 一 方 で, 論 題 にあるように 中 心 市 街 地 活 性 化 を 担 う という 点 を 重 要 視 するのであれ ば, チャレンジショップ 事 業 が 空 き 店 舗 対 策 事 業 や 中 心 市 街 地 活 性 化 とどの 39
ような 関 係 があるかについてもっと 整 理 されるべきであったろう また 先 行 する 研 究 や 関 連 文 献 のサーベイが 不 十 分 であるため, 事 例 の 紹 介 にとどまっているように 感 じられる 点 が 残 念 である 空 き 店 舗 対 策 の 一 つとしてのチャレンジショップ 事 業 が 商 店 街 問 題 の 解 消 や 中 心 市 街 地 活 性 化 にどれぐらいの 効 果 があるのかについてさらに 突 っ 込 んでいただけれ ば, 内 容 的 に 充 実 した 論 文 になると 思 われる 2 等 前 田 容 子 ( 代 表 ) 藤 田 琴 代 稲 船 綾 夏 本 舘 綾 香 (3 年 ) ブライダル 業 界 の 行 方 本 論 文 は,マーケティングの 分 野 ではあまり 一 般 的 でなく 先 行 する 学 術 的 研 究 が 少 な いブライダル 業 界 に 注 目 して 分 析 を 行 った 意 欲 作 である まず, 結 婚 式 に 対 するニーズの 変 化 やブライダル 業 界 の 市 場 規 模 の 変 化 を 時 系 列 に 追 いながらきちんと 整 理 している 点, 第 二 に,そういった 現 状 認 識 に 基 づいて 研 究 課 題 を 取 り 出 している 点, 第 三 に, 本 格 的 なケーススタディーに 入 る 準 備 段 階 としてアンケー ト 調 査 を 行 っている 点, 第 四 に,そのアンケート 調 査 の 結 果 から 2 社 を 取 り 出 してイン タビュー 調 査 を 行 っている 点 などは, 研 究 目 的 を 達 成 するための 望 ましい 分 析 プロセス であろう 特 にブライダル 業 界,とりわけ 挙 式 披 露 宴 市 場 の 事 業 形 態 としての ゲス トハウスウエディング 方 式 と ホテルウエディング 方 式 のそれぞれのマーケティン グ 戦 略 を 比 較 分 析 し, 厳 しい 競 争 状 況 の 中 でより 顧 客 ニーズに 対 応 できる 戦 略 を 模 索 し ようとする 気 持 ちは 十 分 伝 わるものとなっている 一 方 で, 本 稿 のテーマと 関 連 する 研 究 蓄 積 が 少 ないことから, 関 連 文 献 を 十 分 検 討 し ていないため, 議 論 が 展 開 されていないように 感 じられる 点 が 気 になる また 分 析 対 象 として 取 り 上 げる 範 囲 が 広 すぎるので,ブライダル 業 界 の 現 状 認 識 に 止 まっていると 受 け 取 られる 可 能 性 が 高 い 比 較 の 範 囲 をマーケティング 戦 略 の 中 の 一 つ, 二 つに 絞 って 構 成 していれば,より 厚 みのある 論 文 になると 思 われる インタビュー 調 査 については, 調 査 結 果 はきちんと 整 理 されてはいるものの,その 後 の 分 析 作 業 が 必 ずしも 十 分 とは 言 えない 顧 客 獲 得 競 争 に 勝 ち 残 るための 新 しい 戦 略 を 提 案 することが 目 的 であろうか ら,それぞれのマーケティング 戦 略 の 評 価 基 準 をきちんと 定 めて 比 較 分 析 を 行 えば, 読 みやすく, 内 容 的 にも 充 実 した 論 文 になると 思 われる 3 等 千 明 哲 郎 ( 代 表 ) 往 蔵 亮 太 藤 澤 仁 志 (3 年 ) サッカーワールドカップビジネス- 国 内 産 業 への 影 響 - 本 論 文 は, 世 界 的 なスポーツイベントであるサッカーワールドカップによって 活 況 が 予 想 される 3 つの 業 界 に 注 目 してそれぞれの 業 界 の 動 向 を 分 析 したものである 本 論 文 が 取 り 上 げたテーマは 話 題 性 のあるものなので, 読 者 は 内 容 に 関 して 想 像 しやす いわけだが, 実 際 に 論 文 もその 想 像 を 違 えないものとなっている 論 述 の 形 式 においても, 40
要 約 からまとめまで 理 解 しやすくまとめられている 点 が 評 価 できる ワールドカップがも たらす 様 々な 経 済 効 果 を 多 面 的 に 分 析 考 察 した 点 が 優 れており,ビール 業 界 内 における 各 社 の 収 益 にシフトが 見 られていることを 示 している 点 は 読 者 の 興 味 を 惹 くものである しかしながら, 日 本 はワールドカップ 開 催 国 も 経 験 し, 既 にビックビジネスとして 成 り 立 っているので 本 テーマがオリジナリティの 高 いテーマとはいえないし,3 業 種 に 絞 り 込 ん だ 理 由 背 景 が 十 分 に 記 述 されていないので,その 背 景 を 説 明 する 必 要 がある 未 開 拓 な 業 種 や 業 種 を 絞 って 掘 り 下 げて 研 究 するとオリジナリティが 高 まると 考 えられる また 分 析 の 方 法 として 文 献 調 査 が 主 となっているが,どこまでが 文 献 の 参 照 で,どこからが 私 見 なのかがわかりにくい 点 が 気 になった 文 献 については 学 術 的 なものを 引 用 すると 内 容 の 深 みが 増 すであろう 佳 作 小 川 亮 ( 代 表 ) 大 澤 翼 高 田 禎 久 吉 田 健 太 朗 (3 年 ) 札 幌 ドームの 経 営 戦 略 本 論 文 は, 札 幌 ドームの 経 営 環 境 の 分 析 と 他 地 域 のドーム 球 場 との 比 較 を 通 じて, 札 幌 ド ームの 長 期 的 な 経 営 戦 略 を 提 言 することを 目 的 にしている まず, 地 元 の 札 幌 ドームの 経 営 改 善 提 案 というテーマを 設 定 し, 現 状 で 黒 字 経 営 ではある ものの, 地 元 の 大 型 ドームを 更 に 活 発 化 すべきという 観 点 はオリジナリティがあるといえる 斬 新 な 提 案 の 中 身 は 学 生 のアイディアとして 高 く 評 価 されて 良 いが, 全 般 にわたり 論 理 的 な 叙 述 が 不 足 しているため,いわゆる 論 文 というよりも, 企 業 経 営 活 発 化 の 為 の 提 案 集 という 体 裁 になってしまっている 具 体 的 には, 問 題 点 の 絞 り 方, 提 案 が 得 られる 過 程, 提 案 の 有 効 性 や 妥 当 性 に 関 するさらなる 検 討 が 必 要 ということになろう 分 析 の 方 法 については, 実 際 の 利 用 者 に 対 するインタビュー,アンケート 等 を 実 施 することで, 提 案 のリアリティが 増 すと 考 えられる また, 利 用 されている 資 料 の 大 部 分 がホームページであるが, 三 セク 経 営, スポーツマネジメント, 顧 客 満 足 度 経 営 など 提 案 を 考 察 する 上 で 有 用 な 文 献 を 利 用 すること が 可 能 であったのではないか 前 述 のように, 学 術 論 文 として 評 価 するといくつかの 問 題 点 を 指 摘 せざるを 得 ないが, 著 者 の 熱 意 が 伝 わる 文 体 で 記 述 されている 点 および 提 案 の 独 創 性 など, 読 者 に 訴 える 点 も 決 し て 少 なくない 論 文 である 審 査 員 ( 五 十 音 順 ) 穴 沢 眞 海 老 名 誠 大 沼 宏 大 矢 繁 夫 小 田 福 男 梶 原 武 久 金 鎔 基 齋 藤 由 起 坂 柳 明 柴 山 千 里 下 川 哲 央 瀬 戸 篤 高 田 聡 高 宮 城 朝 則 寺 坂 崇 宏 遠 山 純 弘 中 川 喜 直 中 浜 隆 中 村 竜 哉 沼 澤 政 信 白 貞 壬 前 田 東 岐 横 田 宏 治 41
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