記 者 会 見 開 催 のお 知 らせ 切 らない 手 術 を 実 現 するナノマシンを 開 発 がんの 日 帰 り 治 療 の 実 現 に 向 けて 1. 会 見 日 時 : 2015 年 6 月 10 日 ( 水 )13:30~14:30 2. 会 見 場 所 : ナノ 医 療 イノベーションセンター*1 (iconm)4 階 4001 会 議 室 ) 210-0821 川 崎 市 川 崎 区 殿 町 3-25-14 http://iconm.kawasaki-net.ne.jp/ 3. 発 表 者 : 片 岡 一 則 ( 東 京 大 学 大 学 院 工 学 系 研 究 科 / 医 学 系 研 究 科 教 授 ナノ 医 療 イ ノベーションセンター センター 長 兼 任 ) 西 山 伸 宏 ( 東 京 工 業 大 学 資 源 化 学 研 究 所 教 授 ナノ 医 療 イノベーション センター 主 幹 研 究 員 ) MI PENG(ナノ 医 療 イノベーションセンター 主 任 研 究 員 ) 青 木 伊 知 男 ( 放 射 線 医 学 総 合 研 究 所 分 子 イメージング 研 究 センター チーム リーダー) 4. 発 表 のポイント: ランタン 系 遷 移 金 属 のガドリニウム(Gd)をがん 組 織 に 選 択 的 に 送 達 するナノマシンを 開 発 し がんの 磁 気 共 鳴 画 像 診 断 装 置 (MRI)による 診 断 と 中 性 子 捕 捉 治 療 における 有 用 性 を 実 証 しました ナノマシンによる 切 らない 手 術 (ケミカルサージェリー)の 実 現 によって 患 者 に 負 担 の 少 ないがん 治 療 将 来 は 入 院 不 要 の 日 帰 り 治 療 が 可 能 になると 期 待 されます 5. 発 表 概 要 : 中 性 子 捕 捉 治 療 *2 は 患 者 に 負 担 の 少 ない 低 侵 襲 治 療 法 として 注 目 されています しかし 中 性 子 増 感 分 子 を 送 達 する 技 術 の 開 発 が 大 きな 課 題 となっていました 中 性 子 増 感 分 子 として は 既 に 臨 床 応 用 されているホウ 素 (B)の 66 倍 の 中 性 子 吸 収 断 面 積 を 有 するガドリニウムが 大 きな 可 能 性 を 秘 めています 東 京 大 学 大 学 院 工 学 系 研 究 科 医 学 系 研 究 科 の 片 岡 一 則 教 授 (ナノ 医 療 イノベーションセンター センター 長 兼 任 )らの 研 究 チームは MRI 造 影 剤 とし て 広 く 利 用 されているガドリニウム 錯 体 (Gd-DTPA=マグネビスト)を 患 部 に 運 ぶナノマシン の 開 発 に 成 功 しました 本 研 究 チームは 今 回 開 発 に 成 功 したナノマシンが がん 組 織 に 選 択 的 に 集 積 することに よって 固 形 がんを 選 択 的 に 造 影 できることを 明 らかにしました さらに 本 ナノマシンをが んの 中 性 子 捕 捉 治 療 へと 応 用 したところ 顕 著 な 治 療 効 果 を 確 認 することができました こ のナノマシン 治 療 では イメージングで 確 認 しながら 熱 中 性 子 線 を 照 射 する 治 療 ができるた めに 取 りこぼしの 無 い 確 実 ながん 治 療 へと 繋 がるものと 期 待 されます
ナノマシンによる 切 らない 手 術 (ケミカルサージェリー)の 実 現 によって 患 者 さんに 負 担 の 少 ないがん 治 療 将 来 は 入 院 不 要 の 日 帰 り 治 療 が 可 能 になると 期 待 されます 6. 発 表 内 容 : 研 究 の 背 景 外 科 手 術 はがん 治 療 における 第 一 選 択 肢 ですが 侵 襲 性 が 高 く 術 後 のクオリティ オ ブ ライフ(QOL=Quality of Life)の 低 下 が 大 きな 問 題 となっています また 治 療 効 果 の 面 からは 患 部 の 取 りこぼしによる 再 発 の 可 能 性 も 否 定 できません 加 えて 一 般 的 な 開 腹 手 術 では 1 カ 月 に 及 ぶ 長 期 入 院 が 必 要 であることや 入 院 に 伴 う 経 済 的 負 担 も 大 きな 問 題 とな ります 一 方 生 体 にとって 安 全 な 光 超 音 波 熱 中 性 子 線 を 患 部 にピンポイントで 照 射 し そこ で 特 定 の 化 合 物 を 活 性 化 することによってがん 細 胞 を 死 滅 させる 治 療 は 患 者 に 負 担 の 少 ない 低 侵 襲 治 療 法 として 大 きな 注 目 を 集 めています このような 切 らない 手 術 は ケミカルサージ ェリーと 言 われ この 技 術 が 進 歩 すれば 将 来 は 入 院 不 要 の 日 帰 り 治 療 が 可 能 になると 期 待 され ます このようなケミカルサージェリーのなかで 近 年 中 性 子 捕 捉 治 療 が 注 目 を 集 めています 中 性 子 捕 捉 治 療 では 生 体 に 安 全 な 熱 中 性 子 線 との 核 反 応 によって 細 胞 傷 害 性 の 放 射 線 を 出 す 化 合 物 ( 中 性 子 増 感 元 素 )として ホウ 素 やガドリニウムなどが 利 用 されます ここで 正 常 組 織 に 傷 害 を 与 えることなく 患 部 をピンポイントで 治 療 するために 重 要 となるのが ホウ 素 や ガドリニウムをがん 組 織 に 特 異 的 に 送 達 することができるドラッグデリバリーシステム (DDS *3 )の 開 発 です しかしながら 中 性 子 捕 捉 治 療 に 有 用 な DDS はいまだに 開 発 されて いないのが 現 状 でした 研 究 内 容 成 果 東 京 大 学 大 学 院 工 学 系 研 究 科 医 学 系 研 究 科 の 片 岡 一 則 教 授 (ナノ 医 療 イノベーションセ ンター センター 長 兼 任 )らの 研 究 チームは がんなどの 患 部 に 集 積 し その 微 小 環 境 を 検 知 して 診 断 および 治 療 分 子 を 選 択 的 に 作 用 させることができるナノマシンの 開 発 を 行 ってい ます 本 研 究 チームは MRI 造 影 剤 として 広 く 利 用 されている Gd-DTPA 錯 体 が 安 定 に 内 包 され たリン 酸 カルシウムを 主 成 分 とするナノ 粒 子 を 生 体 適 合 性 に 優 れた 高 分 子 材 料 で 保 護 した ナノマシンを 開 発 しました 今 回 開 発 したナノマシンは Gd-DTPA 錯 体 の MRI 造 影 剤 とし ての 性 能 を 表 す T1 緩 和 能 *4 を Gd-DTPA 錯 体 と 比 べて 5-6 倍 に 増 大 させる 効 果 を 有 するこ とが 確 認 されました さらに 大 腸 がん 細 胞 を 皮 下 に 移 植 したマウスに 本 ナノマシンを 投 与 したところ 本 ナノマ シンは 血 中 を 長 期 滞 留 し がん 組 織 に 選 択 的 に 集 積 することが 明 らかとなり 上 記 の T1 緩 和 能 の 増 大 と 相 まって MRI において 固 形 がんを 選 択 的 に 造 影 できることが 明 らかになりまし た このような 固 形 がんの 造 影 効 果 は Gd-DTPA 錯 体 単 独 では 確 認 されませんでした 一 方 ガドリニウム 錯 体 は 生 体 に 安 全 な 熱 中 性 子 線 との 核 反 応 によって 細 胞 障 害 性 の 放 射 線 (γ 線 やオージェ 電 子 )を 放 出 します そこで 本 研 究 チームは 上 記 の Gd-DTPA 錯 体 を 搭 載 したナノマシンを 中 性 子 捕 捉 治 療 へと 応 用 しました ナノマシンは 生 理 的 ph(~7.4) 環 境 では 極 めて 安 定 ですが 腫 瘍 内 と 同 様 な 低 ph (~6.7) 環 境 では Gd-DTPA を 包 んだリン 酸 カルシウムが 溶 解 することによって Gd-DTPA を 放 出 する 特 性 を 有 しています がん 組 織 への 選 択 的 集 積 効 果 と 相 まって 熱 中 性 子 線 の 照 射 によりがん 組 織 に 特 異 的 な 細 胞 傷 害 作 用 を 示 すことが 期 待 されます
本 研 究 チームが 実 際 に 大 腸 がん 細 胞 を 皮 下 に 移 植 したマウスに 対 する 中 性 子 捕 捉 治 療 を 実 施 したところ Gd-DTPA 錯 体 単 独 による 治 療 を 行 ったグループでは 効 果 が 確 認 されませんで したが ナノマシンによる 治 療 を 行 ったグループでは 顕 著 ながんの 増 殖 抑 制 を 確 認 すること ができました また ナノマシンによる 治 療 においてマウスの 体 重 減 少 などの 毒 性 は 全 く 確 認 されませんでした 研 究 成 果 の 新 規 性 重 要 性 本 研 究 チームは ナノマシンによって MRI によるがんのイメージングが 容 易 となり さ らに 生 体 に 安 全 な 熱 中 性 子 線 の 照 射 によってがん 組 織 をピンポイントで 治 療 できることを 実 証 しました このナノマシン 治 療 では イメージングで 確 認 しながら 熱 中 性 子 線 を 照 射 する 治 療 ができるために 取 りこぼしの 無 い 確 実 ながん 治 療 へと 繋 がるものと 期 待 されます さらに 切 らない 手 術 (ケミカルサージェリー)の 実 現 によって 患 者 さんに 負 担 の 少 な いがん 治 療 将 来 は 入 院 不 要 の 日 帰 り 治 療 が 可 能 になると 期 待 されます 7. 用 語 解 説 : *1 ナノ 医 療 イノベーションセンター(iCONM) 川 崎 市 川 崎 区 殿 町 の 国 際 戦 略 拠 点 (キングスカイフロント)におけるライフサイエン ス 分 野 の 拠 点 形 成 の 核 となる 先 導 的 な 施 設 として 文 部 科 学 省 は 地 域 資 源 等 を 活 用 した 産 学 連 携 による 国 際 科 学 イノベーション 拠 点 整 備 事 業 の 支 援 を 受 け 川 崎 市 公 益 財 団 法 人 川 崎 市 産 業 振 興 財 団 が 整 備 を 進 め 2015 年 4 月 に 完 成 した 研 究 センター です 産 学 官 が 一 つ 屋 根 の 下 に 集 い 異 分 野 融 合 体 制 で 革 新 的 課 題 の 研 究 及 び 研 究 成 果 の 実 用 化 に 取 り 組 みます *2 中 性 子 捕 捉 治 療 生 体 に 安 全 な 熱 中 性 子 線 とがん 組 織 に 取 り 込 まれた 中 性 子 との 反 応 断 面 積 が 大 きい 元 素 との 核 反 応 によって 発 生 する 粒 子 放 射 線 によって 選 択 的 にがん 細 胞 を 殺 傷 する 原 理 に 基 づく 新 規 がん 治 療 法 である この 治 療 法 に 用 いられる 中 性 子 増 感 元 素 として は 10 B 157 Gd 等 が 考 えられているが 現 在 はホウ 素 のみが 臨 床 応 用 されている *3 DDS ドラッグデリバリーシステム(DDS) の 略 称 薬 ( 核 酸 医 薬 を 含 む)の 効 果 を 上 げ 副 作 用 を 減 らすために ターゲットとなる 細 胞 や 組 織 に 効 率 的 に 薬 を 到 達 させ 必 要 量 をタイミングよく 放 出 させるシステム *4 緩 和 能 MRI は 生 体 組 織 中 の 水 の 緩 和 時 間 (T1 T2)を 変 化 ( 主 に 短 縮 )させて 異 なる 組 織 間 のコントラストを 増 強 し 病 変 部 位 を 検 出 するイメージング 手 法 ですが 造 影 剤 の 水 の 緩 和 時 間 を 短 縮 する 能 力 を 緩 和 能 と 言 う 8. 発 表 雑 誌 : 雑 誌 名 :ACS Nano (オンライン 発 行 2015 年 6 月 1 日 )
論 文 タイトル:Hybrid calcium phosphate-polymeric micelles incorporating gadolinium chelates for imaging-guided gadolinium neutron capture tumor therapy 著 者 :Peng Mi, Novriana Dewi, Hironobu Yanagie, Daisuke Kokuryo, Minoru Suzuki, Yoshinori Sakurai, Yanmin Li, Ichio Aoki, Koji Ono, Hiroyuki Takahashi, Horacio Cabral, Nobuhiro Nishiyama*, Kazunori Kataoka* [ACS Nano について] ACS Nanoは 2007 年 に 創 刊 された 米 国 化 学 会 発 行 のナノテクノロジー 専 門 誌 であり インパ クトの 大 きい 論 文 が 数 多 く 発 表 されています ナノサイエンス ナノテクノロジーの 分 野 では 世 界 トップクラスの 学 術 誌 として 高 いインパクト ファクターを 獲 得 しています (IF=12.033) 参 考 URL:ACS Nano(http://pubs.acs.org/journal/ancac3) 9. 問 い 合 わせ 先 : 研 究 内 容 に 関 する 事 項 東 京 大 学 大 学 院 工 学 系 研 究 科 マテリアル 工 学 専 攻 / 大 学 院 医 学 系 研 究 科 疾 患 生 命 工 学 センター 臨 床 医 工 学 部 門 教 授 片 岡 一 則 TEL:03-5841-7138 E-mail:kataoka@bmw.t.u-tokyo.ac.jp 東 京 工 業 大 学 資 源 化 学 研 究 所 教 授 西 山 伸 宏 TEL:045-924-5240 E-mail:nishiyama@res.titech.ac.jp 放 射 線 医 学 総 合 研 究 所 分 子 イメージング 研 究 センター チームリーダー 青 木 伊 知 男 TEL: 043-206-3272 E-mail: aoki@nirs.go.jp その 他 に 関 する 事 項 公 益 財 団 法 人 川 崎 市 産 業 振 興 財 団 COINS 支 援 事 務 局 松 枝 温 子 TEL:044-589-5785 E-mail:jimukyoku-coins@kawasaki-net.ne.jp
10. 添 付 資 料 ブロック 共 重 合 体 Gd-DTPA(MRI 造 影 剤 ) MRI 中 性 子 捕 捉 治 療 ナノマシン 投 与 前 Gd-DTPA 搭 載 ナノマシン 筋 肉 ナノマシン 投 与 後 がん 筋 肉 がん ナノマシン+ 熱 中 性 子 線 Gd-DTPA+ 熱 中 性 子 線 ナノマシン のみ Gd-DTPA のみ 図 :Gd-DTPA 錯 体 を 搭 載 したナノマシンによる 固 形 がんの MRI( 左 下 )と 中 性 子 捕 捉 治 療 ( 右 下 )
11. 会 場 へのアクセス: ナノ 医 療 イノベーションセンター(iCONM) 住 所 : 210-0821 神 奈 川 県 川 崎 市 川 崎 区 殿 町 3-25-14 交 通 : 電 車 の 方 は 京 急 川 崎 駅 から 京 急 大 師 線 小 島 新 田 下 車 乗 車 時 間 約 10 分 徒 歩 約 15 分 バスの 方 は JR 川 崎 駅 東 口 ターミナル 20 番 のりば 川 02 殿 町 行 き 乗 車 ( 臨 港 バス) 乗 車 時 間 約 30 分 殿 町 下 車 徒 歩 約 3 分 急 行 快 速 浮 島 橋 行 き 乗 車 ( 臨 港 バス) 乗 車 時 間 約 20 分 キングスカイフロント 入 口 下 車 徒 歩 約 5 分 16 番 のりば 川 03 浮 島 バスターミナル 行 き 乗 車 ( 臨 港 バス 又 は 川 崎 市 営 バス) 乗 車 時 間 約 30 分 キングスカイフロント 入 口 下 車 徒 歩 約 5 分 川 崎 生 命 科 学 環 境 研 究 センター(LiSE)の 隣 実 験 動 物 中 央 研 究 所 の 斜 め 奥 の 建 物 です