東アジアへの視点2013年9月号



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その 他 事 業 推 進 体 制 平 成 20 年 3 月 26 日 に 石 垣 島 国 営 土 地 改 良 事 業 推 進 協 議 会 を 設 立 し 事 業 を 推 進 ( 構 成 : 石 垣 市 石 垣 市 議 会 石 垣 島 土 地 改 良 区 石 垣 市 農 業 委 員 会 沖 縄 県 農


●電力自由化推進法案


容 積 率 制 限 の 概 要 1 容 積 率 制 限 の 目 的 地 域 で 行 われる 各 種 の 社 会 経 済 活 動 の 総 量 を 誘 導 することにより 建 築 物 と 道 路 等 の 公 共 施 設 とのバランスを 確 保 することを 目 的 として 行 われており 市 街 地 環

平成25年度 独立行政法人日本学生支援機構の役職員の報酬・給与等について

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Microsoft Word - 資料3(用途)

Microsoft PowerPoint - 報告書(概要).ppt

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Microsoft Word - 佐野市生活排水処理構想(案).doc

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39_1

経 常 収 支 差 引 額 等 の 状 況 平 成 26 年 度 予 算 早 期 集 計 平 成 25 年 度 予 算 対 前 年 度 比 較 経 常 収 支 差 引 額 3,689 億 円 4,597 億 円 908 億 円 減 少 赤 字 組 合 数 1,114 組 合 1,180 組 合 66

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った 場 合 など 監 事 の 任 務 懈 怠 の 場 合 は その 程 度 に 応 じて 業 績 勘 案 率 を 減 算 する (8) 役 員 の 法 人 に 対 する 特 段 の 貢 献 が 認 められる 場 合 は その 程 度 に 応 じて 業 績 勘 案 率 を 加 算 することができる

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Ⅰ 人 口 の 現 状 分 析 Ⅰ 人 口 の 現 状 分 析 1 人

2 役 員 の 報 酬 等 の 支 給 状 況 役 名 法 人 の 長 理 事 理 事 ( 非 常 勤 ) 平 成 25 年 度 年 間 報 酬 等 の 総 額 就 任 退 任 の 状 況 報 酬 ( 給 与 ) 賞 与 その 他 ( 内 容 ) 就 任 退 任 16,936 10,654 4,36

私立大学等研究設備整備費等補助金(私立大学等

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第5回法人課税ディスカッショングループ 法D5-4

は し が き

Taro-条文.jtd

平 成 21 年 度 (イ)アジア 地 域 における 中 日 共 同 インフラストラクチャー 投 資 促 進 に 関 する 研 究 中 国 及 びアジアにおける 水 問 題 の 研 究 等 国 際 公 共 政 策 研 究 センター( 中 国 国 際 経 済 交 流 中 心 ) (ロ)21 世 紀 東

18 国立高等専門学校機構

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m07 北見工業大学 様式①

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表紙

小 売 電 気 の 登 録 数 の 推 移 昨 年 8 月 の 前 登 録 申 請 の 受 付 開 始 以 降 小 売 電 気 の 登 録 申 請 は 着 実 に 増 加 しており これまでに310 件 を 登 録 (6 月 30 日 時 点 ) 本 年 4 月 の 全 面 自 由 化 以 降 申

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Microsoft Word - 奨学金相談Q&A.rtf

1 総 合 設 計 一 定 規 模 以 上 の 敷 地 面 積 及 び 一 定 割 合 以 上 の 空 地 を 有 する 建 築 計 画 について 特 定 行 政 庁 の 許 可 により 容 積 率 斜 線 制 限 などの 制 限 を 緩 和 する 制 度 である 建 築 敷 地 の 共 同 化 や

検 討 検 討 の 進 め 方 検 討 状 況 簡 易 収 支 の 世 帯 からサンプリング 世 帯 名 作 成 事 務 の 廃 止 4 5 必 要 な 世 帯 数 の 確 保 が 可 能 か 簡 易 収 支 を 実 施 している 民 間 事 業 者 との 連 絡 等 に 伴 う 事 務 の 複 雑

4 松 山 市 暴 力 団 排 除 条 の 一 部 風 俗 営 業 等 の 規 制 及 び 業 務 の 適 正 化 等 に 関 する 法 律 等 の 改 正 に 伴 い, 公 共 工 事 から 排 除 する 対 象 者 の 拡 大 等 を 図 るものです 第 30 号 H H28.1

課 税 ベ ー ス の 拡 大 等 : - 租 税 特 別 措 置 の 見 直 し ( 後 掲 ) - 減 価 償 却 の 見 直 し ( 建 物 附 属 設 備 構 築 物 の 償 却 方 法 を 定 額 法 に 一 本 化 ) - 欠 損 金 繰 越 控 除 の 更 な る 見 直 し ( 大

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経 常 収 支 差 引 額 の 状 況 平 成 22 年 度 平 成 21 年 度 対 前 年 度 比 較 経 常 収 支 差 引 額 4,154 億 円 5,234 億 円 1,080 億 円 改 善 赤 字 組 合 の 赤 字 総 額 4,836 億 円 5,636 億 円 800 億 円 減

公 的 年 金 制 度 について 制 度 の 持 続 可 能 性 を 高 め 将 来 の 世 代 の 給 付 水 準 の 確 保 等 を 図 るため 持 続 可 能 な 社 会 保 障 制 度 の 確 立 を 図 るための 改 革 の 推 進 に 関 する 法 律 に 基 づく 社 会 経 済 情

2 政 策 目 的 達 成 時 期 我 が 国 皮 革 産 業 及 び 革 靴 産 業 が 構 造 改 善 を 行 い アジア 諸 国 からの 低 価 格 品 及 び 欧 州 からの 高 価 格 品 と 対 抗 しうる 国 際 競 争 力 が 備 わるまで 本 制 度 を 維 持 する 必 要 があ

1 予 算 の 姿 ( 平 成 25 当 初 予 算 ) 長 野 県 財 政 の 状 況 H 現 在 長 野 県 の 予 算 を 歳 入 面 から 見 ると 自 主 財 源 の 根 幹 である 県 税 が 全 体 の5 分 の1 程 度 しかなく 地 方 交 付 税 や 国 庫 支

Microsoft Word - 目次.doc

●幼児教育振興法案

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2. 建 築 基 準 法 に 基 づく 限 着 色 項 目 の 地 区 が 尾 張 旭 市 内 にはあります 関 係 課 で 確 認 してください 項 目 所 管 課 窓 口 市 役 所 内 電 話 備 考 がけに 関 する 限 (がけ 条 例 ) 都 市 計 画 課 建 築 住 宅 係 南 庁 舎

主要生活道路について

3 独 占 禁 止 法 違 反 事 件 の 概 要 (1) 価 格 カルテル 山 形 県 の 庄 内 地 区 に 所 在 する5 農 協 が, 特 定 主 食 用 米 の 販 売 手 数 料 について, 平 成 23 年 1 月 13 日 に 山 形 県 酒 田 市 所 在 の 全 国 農 業 協

市街化区域と市街化調整区域との区分

官報掲載【セット版】

目 次 第 1. 土 区 画 整 理 事 業 の 名 称 等 1 (1) 土 区 画 整 理 事 業 の 名 称 1 (2) 施 行 者 の 名 称 1 第 2. 施 行 区 1 (1) 施 行 区 の 位 置 1 (2) 施 行 区 位 置 図 1 (3) 施 行 区 の 区 域 1 (4) 施

平成22年度

2 一 般 行 政 職 給 料 表 の 状 況 ( 平 成 24 年 4 月 1 日 現 在 ) 1 級 2 級 3 級 4 級 5 級 ( 単 位 : ) 6 級 7 級 8 級 1 号 給 の 給 料 月 額 135,6 185,8 222,9 261,9 289,2 32,6 366,2 41

能勢町市街化調整区域における地区計画のガイドライン

弁護士報酬規定(抜粋)

資料6 国の行政機関等における法曹有資格者の採用状況についての調査結果報告(平成27年10月実施分)(法務省提出資料)

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Microsoft Word - 都市計画法第34条第11号及び第12号

別 表 1 土 地 建 物 提 案 型 の 供 給 計 画 に 関 する 評 価 項 目 と 評 価 点 数 表 項 目 区 分 評 価 内 容 と 点 数 一 般 評 価 項 目 立 地 条 件 (1) 交 通 利 便 性 ( 徒 歩 =80m/1 分 ) 25 (2) 生 活 利 便

セルフメディケーション推進のための一般用医薬品等に関する所得控除制度の創設(個別要望事項:HP掲載用)

は 固 定 流 動 及 び 繰 延 に 区 分 することとし 減 価 償 却 を 行 うべき 固 定 の 取 得 又 は 改 良 に 充 てるための 補 助 金 等 の 交 付 を 受 けた 場 合 にお いては その 交 付 を 受 けた 金 額 に 相 当 する 額 を 長 期 前 受 金 とし

個人住民税徴収対策会議

2 一 般 行 政 職 給 料 表 の 状 況 ( 平 成 24 年 4 月 1 日 現 在 ) ( 単 位 : ) 1 号 給 の 給 料 月 額 最 高 号 給 の 給 料 月 額 1 級 135,6 243,7 2 級 185,8 37,8 3 級 4 級 222,9 354,7 ( 注 )

参 考 改 正 災 害 対 策 基 本 法 1 ( 災 害 時 における 車 両 の 移 動 等 ) 第 七 十 六 条 の 六 道 路 管 理 者 は その 管 理 する 道 路 の 存 する 都 道 府 県 又 はこれに 隣 接 し 若 しくは 近 接 する 都 道 府 県 の 地 域 に 係

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スライド 1

第 1 条 適 用 範 囲 本 業 務 方 法 書 は 以 下 の 性 能 評 価 に 適 用 する (1) 建 築 基 準 法 施 行 令 ( 以 下 令 という ) 第 20 条 の7 第 1 項 第 二 号 表 及 び 令 第 20 条 の 8 第 2 項 の 認 定 に 係 る 性 能 評

佐渡市都市計画区域の見直し

2016年夏のボーナス見通し

Taro-H19退職金(修正版).jtd

技 能 労 務 職 公 務 員 民 間 参 考 区 分 平 均 年 齢 職 員 数 平 均 給 与 月 額 平 均 給 与 月 額 平 均 給 料 月 額 (A) ( 国 ベース) 平 均 年 齢 平 均 給 与 月 額 対 応 する 民 間 の 類 似 職 種 東 庄 町 51.3 歳 18 77

別紙3

資 料 -6 平 成 20 年 度 第 2 回 北 陸 地 方 整 備 局 事 業 評 価 監 視 委 員 会 特 定 構 造 物 改 築 事 業 事 後 評 価 説 明 資 料 平 成 20 年 11 月 北 陸 地 方 整 備 局 -0-

(4) 給 与 制 度 の 総 合 的 見 直 しの 実 施 状 況 について 概 要 国 の 給 与 制 度 の 総 合 的 見 直 しにおいては 俸 給 表 の 水 準 の 平 均 2の 引 下 げ 及 び 地 域 手 当 の 支 給 割 合 の 見 直 し 等 に 取 り 組 むとされている.

預 金 を 確 保 しつつ 資 金 調 達 手 段 も 確 保 する 収 益 性 を 示 す 指 標 として 営 業 利 益 率 を 採 用 し 営 業 利 益 率 の 目 安 となる 数 値 を 公 表 する 株 主 の 皆 様 への 還 元 については 持 続 的 な 成 長 による 配 当 可


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(5) 給 与 改 定 の 状 況 事 委 員 会 の 設 置 なし 1 月 例 給 事 委 員 会 の 勧 告 民 間 給 与 公 務 員 給 与 較 差 勧 告 A B A-B ( 改 定 率 ) 給 与 改 定 率 ( 参 考 ) 国 の 改 定 率 24 年 度 円 円 円 円 ( ) 改


4. 農 業 所 得 減 少 の 要 因 農 産 物 生 産 量 の 減 少 米 の 消 費 量 減 少 輸 入 品 との 競 合 農 家 戸 数 の 減 少 高 齢 化 販 売 価 格 の 低 下 価 格 支 持 政 策 の 縮 小 廃 止 ウルグアイラウンド 輸 入 価 格 の 低 下 円 高

2 職 員 の 平 均 給 与 月 額 初 任 給 等 の 状 況 (1) 職 員 の 平 均 年 齢 平 均 給 料 月 額 及 び 平 均 給 与 月 額 の 状 況 ( 平 成 22 年 4 月 1 日 現 在 ) 1 一 般 行 政 職 平 均 年 齢 平 均 給 料 月 額 平 均 給 与

常 勤 職 員 の 育 児 休 業 の 取 得 率 をみると 5.5% 99.3%となっており 前 年 度 に 比 べ は0.9ポイント は1.2ポイントの 増 加 ( 前 年 度 4.6% 98.1%)となっています 取 得 率 (%) 育 児 休 業 取 得 率 ( 常 勤 職 員 ) 取 得

(Microsoft Word - \221\346\202P\202U\201@\214i\212\317.doc)

法 人 等 に 対 する 課 税 際 課 税 原 則 の 帰 属 主 義 への 見 直 しのポイント 総 合 主 義 から 帰 属 主 義 への 移 行 法 人 及 び 非 居 住 者 ( 法 人 等 )に 対 する 課 税 原 則 について 従 来 のいわゆる 総 合 主 義 を 改 め OECD

(4) ラスパイレス 指 数 の 状 況 ( 各 年 4 月 1 日 現 在 ) ( 例 ) ( 例 ) 15 (H2) (H2) (H24) (H24) (H25.4.1) (H25.4.1) (H24) (H24)

3 圏 域 では 県 北 沿 岸 で2の 傾 向 を 強 く 見 てとることができます 4 近 年 は 分 配 及 び 人 口 が 減 少 している 市 町 村 が 多 くなっているため 所 得 の 増 加 要 因 を 考 える 場 合 は 人 口 減 少 による 影 響 についても 考 慮 する

(3) 調 査 の 進 め 方 2 月 28 日 2 月 28 日 ~6 月 30 日 平 成 25 年 9 月 サウンディング 型 市 場 調 査 について 公 表 松 戸 市 から 基 本 的 な 土 地 情 報 サウンディングの 実 施 活 用 意 向 アイデアのある 民 間 事 業 者 と

- 1 - 総 控 負 傷 疾 病 療 養 産 産 女 性 責 帰 べ 由 試 ~ 8 契 約 契 約 完 了 ほ 契 約 超 締 結 専 門 的 知 識 技 術 験 専 門 的 知 識 高 大 臣 専 門 的 知 識 高 専 門 的 知 識 締 結 契 約 満 歳 締 結 契 約 契 約 係 始

平成24年度 業務概況書

2 一 般 行 政 職 給 料 表 の 状 況 ( 平 成 2 年 月 1 日 現 在 ) 1 号 給 の 給 料 月 額 最 高 号 給 の 給 料 月 額 ( 注 ) 給 料 月 額 は 給 与 抑 制 措 置 を 行 う 前 のものです ( 単 位 : ) 3 職 員 の 平 均 給 与 月

既 存 建 築 物 の 建 替 市 街 化 調 整 区 域 で 許 可 を 不 要 とする 取 扱 いについて 既 存 建 築 物 の 建 替 は 以 下 の1)~3)をすべて 満 たしている 場 合 に 可 能 です 1) 建 替 前 の 建 築 物 ( 以 下 既 存 建 築 物 という )につ

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 三郷市市街化調整区域の整備及び保全の方針(案)

2000 年 12 月 輸 出 の 減 速 によりテンポはやや 鈍 化 しているものの 緩 やかな 回 復 を 続 けている 2001 年 1 月 緩 やかな 回 復 を 続 けているが そのテンポは 輸 出 の 減 速 により 鈍 化 している 2001 年 2 月 緩 やかな 回 復 を 続 け

国 家 公 務 員 の 年 金 払 い 退 職 給 付 の 創 設 について 検 討 を 進 めるものとする 平 成 19 年 法 案 をベースに 一 元 化 の 具 体 的 内 容 について 検 討 する 関 係 省 庁 間 で 調 整 の 上 平 成 24 年 通 常 国 会 への 法 案 提

新 市 建 設 計 画 の 変 更 に 係 る 新 旧 対 照 表 ページ 変 更 後 変 更 前 表 紙 安 中 市 松 井 田 町 合 併 協 議 会 安 中 市 松 井 田 町 合 併 協 議 会 平 成 27 年 3 月 変 更 安 中 市 6 2. 計 画 策 定 の 方 針 (3) 計

Transcription:

投 稿 論 文 中 国 の 地 域 開 発 の 進 展 とその 課 題 長 吉 図 と 北 部 湾 の 比 較 延 辺 大 学 経 済 管 理 学 院 副 教 授 李 聖 華 1.はじめに 中 国 経 済 は 現 在, 集 積 の 経 済 により 著 しく 経 済 発 展 を 遂 げた 沿 海 部 と,それに 比 べ 比 較 的 経 済 発 展 が 遅 れている 中 西 部 が 共 存 するという, 集 積 の 経 済 と 未 開 発 がはっきりと 分 かれる 空 間 構 造 が 形 成 されている このような 経 済 空 間 構 造 の 形 成 は,1980 年 代 からの 中 国 政 府 の 発 展 戦 略 に 基 づいた 政 策 の 結 果 であり, 国 家 戦 略 そのものであった しかし,2007 年 以 降 沿 海 地 域 の 賃 金 と 土 地 価 格 等 生 産 コストの 高 騰 をきっかけに, 沿 海 地 域 から 中 西 部 への 生 産 移 転 が 加 速 化 された 政 策 的 にも 1999 年 の 西 部 大 開 発 を 皮 切 りとする 経 済 発 展 政 策 の 継 続 として, 中 国 政 府 は 2010 年 8 月 に 中 西 部 地 区 承 接 産 業 転 移 指 導 意 見 ( 中 西 部 地 域 の 産 業 移 転 受 け 入 れに 関 する 指 導 意 見 )を 公 布 して, 産 業 構 造 調 整 と 経 済 成 長 方 式 の 転 換 を 図 ろうとしている ( 注 1) このような 経 済 発 展 の 現 状 を 背 景 に, 近 年 になって 頻 繁 に 地 域 間 バランスや 地 域 特 性 を 考 慮 し た 地 域 発 展 計 画 を 公 表 することとなり,このような 政 策 の 策 定 は 中 国 政 府 の 地 域 発 展 に 関 する 思 惑 が, 大 きく 変 化 したことを 意 味 するであろう ( 注 2) ところが, 労 働 集 約 型 製 造 業 は 現 在 に 至 るまで 沿 海 地 域 に 集 積 し, 中 西 部 地 域 では 期 待 され る 大 規 模 の 産 業 移 転 は 行 われていない( 李, 孫,2011) 中 国 経 済 は 現 在 集 積 の 逆 U 字 型 の 曲 線 の 上 り 段 階 に 位 置 し, 産 業 の 地 域 集 積 の 強 化 がまだ 続 いている( 孫, 許,2011) 中 国 経 済 においては, 現 在 特 定 地 域 への 集 積 力 が 分 散 力 より 強 いのが 現 状 である 中 国 経 済 の 減 速 の 兆 しが 明 らかになる 中 で, 新 しい 成 長 極 として 中 西 部 の 経 済 発 展 が 注 目 されるのは 当 然 のことで あろう 2008 年 から 続 々と 公 表 された 中 国 の 地 域 発 展 計 画 の 中 には,2008 年 に 公 表 された 広 西 北 部 湾 経 済 区 発 展 計 画 と 2009 年 に 公 表 された 中 国 図 們 江 区 域 合 作 開 発 計 画 綱 要 といった, 中 西 部 国 境 地 域 の 少 数 民 族 地 域 に 関 する 経 済 開 発 計 画 も 含 まれている また,この 2 つの 地 域 計 画 は,2011 年 に 中 国 国 土 空 間 開 発 戦 略 の 実 施 方 案 として 発 表 された 主 体 機 能 区 計 画 で 定 められた 国 家 重 点 開 発 地 域 における 地 域 開 発 計 画 でもある ( 注 3) 広 西 壮 族 自 治 区 の 北 部 湾 地 域 と 吉 林 省 の 長 吉 図 地 域 は 元 々 中 国 国 内 で 経 済 発 展 が 遅 れている 地 域 であるが, 中 国 西 南 地 域 と 東 北 地 域 から 汎 北 部 湾 地 域 と 図 們 江 地 域 への 国 際 協 力,そして 国 内 地 域 経 済 発 展 を 展 開 しよ うとする,それぞれの 地 域 特 性 を 持 っている 地 域 である ( 注 4) まず, 国 際 経 済 協 力 という 面 に 関 しては,ASEAN と 北 東 アジア 各 国 との 経 済 交 流 を 進 めよ うという 目 標 がある そして 国 内 地 域 開 発 に 関 しては, 広 西 壮 族 自 治 区 の 北 部 湾 地 域 と 吉 林 省 の 長 吉 図 地 域 の 経 済 発 展 を 図 ろうとしている 北 部 湾 地 域 と 長 吉 図 地 域 は それぞれ 汎 北 部 湾 本 稿 は,2012 年 度 日 本 国 際 交 流 基 金 の 助 成 による 研 究 結 果 の 一 部 である 38

東 アジアへの 視 点 地 域 と 図 們 江 地 域 国 際 経 済 協 力 における 中 国 国 内 の 重 点 開 発 地 域 である これらの 国 内 地 域 経 済 に 関 する 新 たな 計 画 の 発 表 は, 従 来 の 特 定 地 域 に 対 する 対 外 開 放 重 視 政 策 が, 現 在 では 国 内 協 力 と 国 際 協 力 の 両 方 を 重 視 する 政 策 に 転 換 したことを 意 味 している 特 に 北 部 湾 と 長 吉 図 と いう 地 域 経 済 発 展 計 画 で 定 められた 国 内 特 定 地 域 に 対 する 経 済 協 力 への 関 心 が 強 く 見 てとれ る そこで 本 稿 は, 広 西 北 部 湾 経 済 区 発 展 計 画 と 中 国 図 們 江 区 域 合 作 開 発 計 画 綱 要 で 定 められた, 中 国 国 内 における 北 部 湾 地 域 と 長 吉 図 地 域 の 国 際 協 力 経 緯 や 地 域 経 済 発 展 現 状 等 方 面 の 比 較 を 通 じて, 新 しい 地 域 発 展 計 画 の 下 での 南 北 国 境 両 地 域 の 経 済 発 展 を 展 望 する 2. 国 際 協 力 の 経 緯 長 吉 図 と 北 部 湾 地 域 の 国 際 協 力 に 関 しては, 中 国 図 們 江 地 域 と 汎 北 部 湾 地 域 の 国 際 協 力 の 範 囲 と 経 緯 から 概 観 できる 2.1 国 際 協 力 の 範 囲 図 1 と 図 2 はそれぞれ 吉 林 省 と 長 吉 図 の 位 置 を 説 明 している 吉 林 省 は 中 国 の 東 北 に 位 置 し, 北 朝 鮮,ロシアと 国 境 を 接 している 長 吉 図 地 域 は 吉 林 省 の 長 春 市, 吉 林 市 の 一 部 地 域 と 延 辺 朝 鮮 族 自 治 州 を 包 括 し, 中 国 図 們 江 区 域 合 作 開 発 計 画 綱 要 で 定 めた 図 們 江 地 域 における 国 内 重 点 開 発 地 域 である 地 理 的 要 因 から 図 們 江 地 域 開 発 の 範 囲 は, 初 めは 中 ロ 北 朝 鮮 国 境 地 域 の 小 三 角 形 ( 中 国 吉 林 省 延 辺 朝 鮮 族 自 治 州 の 琿 春, 北 朝 鮮 の 羅 先,ロシアのポシェット)が 中 心 だったが,その 後, 徐 々 に 大 三 角 形 ( 中 国 吉 林 省 延 辺 朝 鮮 族 自 治 州 の 延 吉 市, 北 朝 鮮 の 清 津 市,ロシアのウラジオスト ク),さらに 大 図 們 江 地 域 ( 中 国 東 北 地 域,モンゴル 国,ロシア 極 東 地 域, 北 朝 鮮 と 韓 国 の 西 海 岸 地 域 )まで 範 囲 を 拡 大 した 39

図 3 と 図 4 はそれぞれ 広 西 壮 族 自 治 区 と 北 部 湾 地 域 の 位 置 を 説 明 している 広 西 壮 族 自 治 区 は 中 国 の 西 南 部 に 位 置 し,ベトナムに 国 境 を 接 している 北 部 湾 地 域 は 広 西 壮 族 自 治 区 の 南 寧 市, 北 海 市, 欽 州 市, 防 城 港 市 の 4 つの 行 政 区 を 包 括 し, 広 西 北 部 湾 経 済 区 発 展 計 画 で 定 めた 汎 北 部 湾 地 域 開 発 での 国 内 重 点 開 発 地 域 である 汎 北 部 湾 経 済 協 力 の 範 囲 は, 経 済 協 力 に 参 加 する ASEAN 諸 国 と 中 国 国 内 の 地 域 が 近 年 徐 々 に 増 える 形 で 拡 大 した 最 初 の 汎 北 部 湾 協 力 の 範 囲 は, 中 国 ( 広 西 壮 族 自 治 区 )とベトナム, マレーシア,シンガポール,インドネシア,フィリピン,ブルネイとなる 6 + 1 の 形 であっ た 2009 年 の 第 4 回 汎 北 部 湾 経 済 合 作 論 壇 では,ASEAN のタイと 中 国 国 内 の 広 東 省 と 海 南 省 を 加 え 7 + 3 と 拡 大 した 将 来 は 香 港,マカオ, 台 湾 とカンボジアを 含 む 8 + 3 を 視 野 に 入 れている しかし, 地 域 国 際 協 力 においては 中 国 という 国 家 が 直 接 参 加 したわけでは なく, 国 内 の 吉 林 省 あるいは 広 西 壮 族 自 治 区 等 特 定 行 政 区 が 主 な 実 施 主 体 となっていた そし て, 国 内 地 域 開 発 では 吉 林 省 の 長 吉 図 地 域 と 広 西 壮 族 自 治 区 の 北 部 湾 地 域 が 注 目 を 浴 びるよう になった 2.2 経 緯 図 們 江 地 域 と 汎 北 部 湾 地 域 の 経 緯 に 関 してみると, 開 発 の 実 施 期 間 が 異 なる 図 們 江 地 域 開 発 は,1980 年 代 から 中 国 国 内 の 学 者 たちが 中 国 東 北 地 域 から 日 本 海 への 出 海 口 ( 海 への 出 口 )を 求 めたことが 発 端 として 議 論 された 長 年 の 論 証 を 経 て,1991 年 10 月 24 日 に 国 連 開 発 計 画 (UNDP)が 図 們 江 地 域 開 発 を 公 布 し,その 時 からこの 地 域 の 国 際 開 発 が 世 界 の 注 目 を 浴 びるようになった しかし, 汎 北 部 湾 地 域 の 開 発 は 中 国 各 地 の 開 発 と 比 べずいぶん 遅 れる 形 となった それはベトナムと 国 境 を 接 している 広 西 壮 族 自 治 区 では 1979 年 の 中 越 戦 争 により, 1991 年 11 月 に 国 交 正 常 化 が 実 現 できるまで 経 済 発 展 に 力 を 注 ぐことができなかったからであ る 1999 年 の 西 部 大 開 発 が 打 ち 出 されてから, 広 西 壮 族 自 治 区 は 開 発 の 対 象 地 域 に 指 定 され,そして 2000 年 以 降, 中 国 と ASEAN の 経 済 連 携 の 強 化 につれ 本 格 的 に 経 済 開 発 の 対 象 となった 40

東 アジアへの 視 点 ただし, 北 部 湾 地 域 の 国 際 協 力 の 実 施 においては 図 們 江 地 域 開 発 での UNDP,あるいは 大 メ コン 圏 開 発 (GMS)でのアジア 開 発 銀 行 (ADB)のように 国 際 協 力 をリードする 組 織 はなかっ た 地 域 開 発 に 関 しては 2006 年 に 広 西 壮 族 自 治 区 が 提 案 し, 現 在 は 汎 北 部 湾 経 済 合 作 論 壇, 汎 北 部 湾 地 域 経 済 合 作 市 長 論 壇 等 の 定 期 的 な 会 合 と 対 話 枠 組 の 形 成 によって 進 められてい る しかし, 両 地 域 の 開 発 においては 現 在 にいたるまで, 決 定 的 影 響 を 及 ぼす 組 織 あるいは 国 はみられず, 強 力 な 地 域 開 発 推 進 枠 組 も 整 っていない ただ, 中 国 国 内 においては 地 域 発 展 計 画 の 一 環 として 2008 年 と 2009 年 に, 北 部 湾 地 域 と 長 吉 図 地 域 に 関 する 地 域 経 済 発 展 計 画 が 国 からの 承 認 を 得 て 発 表 された 3. 地 域 計 画 の 内 容 長 吉 図 と 北 部 湾 地 域 の 経 済 発 展 に 関 する 計 画 は, 主 に 国 内 と 国 際 両 方 面 から 発 展 目 標 を 挙 げ ている 3.1 国 内 協 力 目 標 長 吉 図 地 域 の 国 内 協 力 は 省 内 協 力, 東 北 地 域 内 協 力, 国 内 その 他 地 域 との 協 力 等 の 3 つの 側 面 から 進 めようとしている 省 内 と 東 北 地 域 内 での 協 力 は, 主 にインフラ 整 備,エネルギー 開 発, 水 利 施 設 の 建 設, 地 域 間 分 業 体 制 の 確 立 である 国 内 他 の 地 域 に 関 しては 特 に 沿 海 地 域 との 協 力 を 進 め, 産 業 移 転 を 積 極 的 に 受 け 入 れ 長 吉 図 地 域 の 産 業 高 度 化 を 促 進 すると 同 時 に, 各 種 開 発 区 と 工 業 区 の 建 設 を 推 進 し, 競 争 力 が 強 い 自 動 車, 石 油 化 工, 光 電 子 情 報, 冶 金 建 材, 装 備 製 造, 生 物, 新 材 料, 農 産 物 加 工 業 の 8 つの 新 型 工 業 基 地 を 建 設 しようとする 北 部 湾 地 域 では 汎 珠 江 デルタ 地 域 経 済 協 力 に 積 極 的 に 参 加 し, 広 東 省, 香 港,マカオからの 資 本, 技 術, 産 業 転 移 を 積 極 的 に 受 け 入 れ, 加 工 貿 易 産 業 転 移 の 主 要 受 入 地 域 に 建 設 しようと する また 西 南 出 海 口 を 利 用 して 西 南 地 域 との 更 なる 経 済 協 力 の 拡 大 を 進 め, 緊 密 な 連 携 を 持 つ 南 寧 貴 陽 昆 明 都 市 帯 を 形 成 して, 周 辺 地 域 との 交 通, 物 流, 観 光,エネルギー 開 発, 環 境 保 護 等 領 域 での 協 力 を 強 化 しようとしている そして 目 標 としては 港 の 優 位 性 と 2 つの 市 場, 資 源 を 利 用 して 石 油 化 工, 製 紙, 冶 金, 軽 工 業 品,ハイテク 技 術, 海 洋 等 産 業 の 育 成 を 通 じて 沿 海 石 油 化 工 基 地, 沿 海 鋼 鉄 基 地, 精 細 化 工 基 地,ハイテク 技 術 基 地, 沿 海 海 洋 産 業 基 地, 沿 海 軽 工 業 基 地 を 建 設 しようとする 長 吉 図 と 北 部 湾 地 域 は 中 国 中 西 部 国 境 地 域 開 発 における 代 表 的 な 地 域 であり, 中 西 部 地 域 の 経 済 発 展 が 中 国 経 済 の 新 たな 成 長 極 として 大 いに 期 待 されている 3.2 国 際 協 力 目 標 長 吉 図 地 域 は 北 東 アジア 地 域 経 済 協 力 の 重 要 な 窓 口 と 経 済 技 術 協 力 の 重 要 な 舞 台 である 地 域 国 際 協 力 においては 6 つの 側 面 から 国 際 協 力 を 進 めようとする 第 1 は, 国 際 物 流 ルートの 建 設 である 海 上 ルートでは 琿 春 ザルビノ 束 草 新 潟 の 建 設, 空 港 では 長 春 と 延 吉 空 港 の 国 際 物 流 機 能 を 強 化 する 第 2 は, 経 済 協 力 区 建 設 で, 琿 春 市 における 跨 境 経 済 協 力 区 の 建 設 を 目 指 す 第 3 は, 周 辺 諸 国 の 先 進 技 術 を 活 用 して, 図 們 江 地 域 における 生 態 環 境 と 環 境 保 護 41

等 領 域 での 国 際 協 力 を 進 める 第 4 は, 国 際 産 業 協 力 区 の 建 設 を 加 速 化 する 目 的 で, 長 春, 吉 林, 琿 春 の 開 発 区 を 中 心 に 周 辺 諸 国 との 科 学 技 術 協 力 と 産 業 融 合 を 促 進 し, 新 型 工 業 化 の 進 展 を 促 進 しようとする 第 5 は, 知 識, 文 化, 観 光 等 の 領 域 での 協 力 を 強 化 する 第 6 は, 現 有 の 大 図 們 江 イニシアティブ(GTI)の 枠 組 みを 基 に, 定 期 的 に 北 東 アジア 経 済 協 力 フォーラム 等 を 開 催 し, 図 們 江 地 域 国 際 協 力 の 枠 組 みを 作 る 北 部 湾 地 域 は 中 国 ASEAN 経 済 圏 の 最 前 線 に 位 置 しており,ASEAN との 国 際 協 力 において は 大 メコン 圏 開 発 (GMS)と 汎 北 部 湾 経 済 協 力 を 2 つの 翼 として, 南 寧 シンガポール 経 済 回 廊 を 軸 とする 中 国 ASEAN 一 軸 両 翼 (1 つの 軸 と 2 つの 翼 )という 新 経 済 協 力 局 面 を 形 成 し ようとする ( 注 5) 新 経 済 協 力 局 面 は 3 つの 側 面 から 展 開 しようとする 第 1 は,インフラ 整 備 に 関 する 協 力 である, 両 廊 一 圏 (2 つの 経 済 回 廊 と 1 つの 経 済 圏 )の 枠 組 みの 基 で 南 寧 から 中 南 半 島 への 高 速 道 路 と 鉄 道 の 貫 通,コンテナ 運 送 航 線, 南 寧 から ASEAN 主 要 都 市 間 の 航 空 航 線 な どの 領 域 での 協 力 を 加 速 化 し,ASEAN との 陸 海 空 立 体 交 通 運 送 体 系 を 建 設 する ( 注 6) 第 2 は, 農 業, エネルギー, 観 光 等 産 業 領 域 での 協 力 の 強 化 である 農 業 領 域 では 農 産 品 の 深 加 工 と 海 上 漁 業 等,エネルギー 領 域 では 太 陽, 風 力 と 生 物 エネルギーや, 観 光 領 域 では 汎 北 部 湾 観 光 大 通 路 と ネットワークの 建 設 などである 第 3 は, 金 融 協 力 を 積 極 的 に 進 めることである 北 部 湾 地 域 銀 行 連 合 体 の 形 成 を 目 指 し, 国 際 決 算, 貿 易 融 資, 現 金 管 理,プロジェクト 融 資 等 金 融 サービ スの 提 供 を 促 進 する 4. 経 済 発 展 現 状 近 年 吉 林 省 と 広 西 壮 族 自 治 区 の 経 済 は 2 桁 の 成 長 率 で 全 国 の 平 均 成 長 率 を 上 回 っている 地 域 におけるインフラ 整 備 と 対 外 経 済 の 発 展 から, 両 省 の 経 済 発 展 現 状 を 比 較 してみる 4.1 インフラ 整 備 インフラ 整 備 は 産 業 の 立 地 と 集 積 に 直 接 影 響 を 及 ぼす 要 因 の 1 つである 鉄 道 では, 吉 林 省 は 2015 年 までに 26 件 の 鉄 道 プロジェクトを 実 行 し, 吉 林 省 における 五 縦 三 横 (5 つの 縦 線 と 3 つの 横 線 からなる 鉄 道 )のネットワークの 形 成 を 推 進 している 市 省 レベルでは 高 速 鉄 道, 県 市 レベルでは 鉄 道 の 開 通 を 目 指 している 第 12 次 5 ヵ 年 計 画 時 期 では 長 春 を 中 心 とする 2 時 間 通 勤 経 済 圏 を 目 指 している 広 西 壮 族 自 治 区 では 現 在 南 寧 を 中 心 に, 周 辺 各 省 と ベトナムなど ASEAN 諸 国 間 を 結 ぶ 地 域 間 鉄 道 を 建 設 しようとしている 同 時 に, 南 寧 を 中 心 とする 1,2,3 時 間 都 市 経 済 圏 建 設 が 進 められている 道 路 では, 長 吉 図 と 北 部 湾 ともに 地 域 内 外 道 路 ネットワークの 建 設 を 進 めているが, 特 に 広 西 壮 族 自 治 区 では ASEAN 中 国 高 速 道 路 も 建 設 中 である この 他 にも 空 港, 水 路 等 整 備 も 進 められている しかし, 長 吉 図 と 北 部 湾 地 域 のインフラ 整 備 の 最 大 の 違 いは 港 湾 の 整 備 である 2009 年 3 月, 北 部 湾 経 済 区 内 の 北 海 港, 欽 州 港, 防 城 港 が 合 併 して 北 部 湾 港 となり,ASEAN 向 けの 国 際 航 運 センターを 建 設 する 目 標 があげられた そして 港 湾 建 設 が 積 極 的 に 進 められると 同 時 に, 各 港 間 の 協 力 および 分 業 等 位 置 付 けが 明 確 化 された 現 在 は 世 界 各 地 の 200 以 上 の 港 と 貿 易 輸 送 協 力 が 行 われている 東 北 地 区 の 出 海 口 を 突 破 するのが 1 つの 大 きな 目 標 であった 図 們 江 42

東 アジアへの 視 点 地 域 開 発 では, 日 本 海 進 出 のための 自 国 の 港 がないため, 出 海 口 として 港 は 北 朝 鮮 あるい はロシアの 港 を 利 用 しなければいけない 状 況 である 広 西 北 部 湾 経 済 区 発 展 計 画 と 中 国 図 們 江 区 域 合 作 開 発 計 画 綱 要 では, 両 地 域 ともに 物 流 基 地 を 建 設 する 戦 略 的 目 標 があったが, 港 の 資 源 賦 存 の 違 いが 両 地 域 開 発 の 促 進 に 与 える 影 響 が 大 きく 異 なると 思 われる ( 注 7) 4.2 対 外 経 済 まず, 表 1 の 両 省 の 直 接 投 資 利 用 額 (FDI)から 比 較 してみる 1996 年 時 点 で 吉 林 省 が 受 入 れた 直 接 投 資 は 4.5 億 米 ドル, 広 西 壮 族 自 治 区 は 6.7 億 米 ドルであり,それぞれが 中 国 で 受 入 れた 直 接 投 資 に 占 める 比 重 は 1.1%と 1.6%に 過 ぎなった 2011 年 吉 林 省 が 受 入 れた 直 接 投 資 は 14.8 億 米 ドル, 広 西 壮 族 自 治 区 が 受 入 れた 直 接 投 資 は 10.1 億 米 ドルと,1990 年 代 と 比 べ 増 加 はみられたが, 規 模 は 依 然 として 小 さい 比 重 でみると 吉 林 省 は 1.3%とわずかの 上 昇, 広 西 壮 族 自 治 区 は 逆 に 0.9%に 低 下 した 両 地 域 に 直 接 投 資 による 産 業 の 集 積 が 行 われていない ことを 示 している そして, 直 接 投 資 額 をそれぞれの 近 隣 の 沿 海 地 域 と 比 較 すると, 吉 林 省 と 遼 寧 省 の 格 差 は 1996 年 の 3.7 倍 から,2011 年 の 16.4 倍 まで 拡 大 し, 広 西 壮 族 自 治 区 と 広 東 省 43

の 格 差 は 2011 年 時 点 で 21.5 倍 であった 2010 年 の 遼 寧 省 と 広 東 省 の 直 接 投 資 受 入 額 は 200 億 米 ドルを 超 えている このように 格 差 が 縮 まっていないことは, 生 産 コストの 上 昇 や 国 の 政 策 にもかかわらず, 外 資 の 沿 海 地 域 への 集 積 はまだ 強 く, 沿 海 地 域 から 中 西 部 の 産 業 移 転 が 進 ん でいないことを 示 している 直 接 投 資 の 集 中 からみた 吉 林 省 と 広 西 壮 族 自 治 区 を 取 り 巻 く 大 局 的 な 経 済 環 境 は, 上 述 の 通 りであるが, 中 国 図 們 江 区 域 合 作 開 発 計 画 綱 要 と 広 西 北 部 湾 経 済 区 発 展 計 画 で 定 めら れた 吉 林 省 と 広 西 壮 族 自 治 区 の 重 点 開 発 地 域, 長 吉 図 と 北 部 湾 地 域 が 受 入 れた 直 接 投 資 はそれ ぞれの 省 と 自 治 区 では 大 きな 比 重 を 占 めている 長 吉 図 地 域 が 受 入 れた 直 接 投 資 は 2003 年 に は 吉 林 省 の 85.9%を 占 めたが,2011 年 になっては 68.9%まで 低 下 した 吉 林 省 では 長 吉 図 地 域 以 外 への 直 接 投 資 が 増 えている 状 況 が 看 取 されるが, 長 春 市 が 吉 林 省 で 受 入 れた 直 接 投 資 の 半 分 以 上 を 占 めている 状 況 は 変 わっていない 北 部 湾 地 域 は 長 吉 図 地 域 と 対 照 的 に 近 年 になっ てシェアが 急 速 に 伸 び,2011 年 には 広 西 壮 族 自 治 区 が 受 入 れた 直 接 投 資 の 89.2%を 占 めるよ うになった 特 に 欽 州 市 と 南 寧 市 に 投 資 が 集 中 している 44

東 アジアへの 視 点 次 に, 表 2 の 対 外 貿 易 規 模 で 比 較 してみる 吉 林 省 の 輸 出 入 総 額 は 2000 年 の 25.5 億 米 ド ルから 2011 年 の 220.5 億 米 ドル, 広 西 壮 族 自 治 区 では 2000 年 の 20.3 億 米 ドルから 2011 年 の 233.3 億 米 ドルと 両 省 ともに 10 倍 程 度 拡 大 した しかし, 全 国 輸 出 入 総 額 に 占 める 比 重 は 依 然 として 低 く,0.6%を 占 めるにすぎない 吉 林 省 の 主 要 貿 易 相 手 地 域 は 主 に EU とアジアで, その 中 でドイツと 日 本 との 貿 易 が 目 立 つ 延 辺 朝 鮮 族 自 治 州 は 特 に 北 朝 鮮 と 韓 国 との 経 済 交 流 が 盛 んに 行 われている 広 西 壮 族 自 治 区 の 主 要 貿 易 相 手 地 域 は 主 に ASEAN で, 特 にベトナム と 活 発 に 行 っている また 広 西 壮 族 自 治 区 の 貿 易 収 支 は 黒 字 であるが, 吉 林 省 では 自 動 車 関 連 部 品 の 輸 入 が 多 く, 貿 易 赤 字 は 拡 大 している 長 吉 図 地 域 の 輸 出 入 総 額 は 吉 林 省 輸 出 入 総 額 の 90% 以 上 を 占 めているが,その 中 で 長 春 市 が 70 ~ 80%を 占 めている 北 部 湾 地 域 の 対 外 貿 易 の 比 重 は 近 年 順 調 に 伸 びて,2011 年 には 広 西 壮 族 自 治 区 輸 出 入 総 額 の 48.5%を 占 めるように なった 中 国 は 図 們 江 地 域 開 発 と 汎 北 部 湾 地 域 開 発 を 通 じて, 経 済 発 展 が 遅 れている 吉 林 省 と 広 西 壮 族 自 治 区 の 経 済 発 展,そして 北 東 アジア 諸 国 とASEANとの 国 際 協 力 を 促 進 しようとしている 近 年 発 表 された 地 域 経 済 政 策 では 長 吉 図 と 北 部 湾 地 域 を 吉 林 省 と 広 西 壮 族 自 治 区 の 重 点 開 発 地 域 と 指 定 し,これらの 地 域 を 中 心 に 国 内, 国 際 両 面 から 経 済 発 展 を 促 進 しようとしている 長 吉 図 と 北 部 湾 地 域 の 経 済 規 模 がそれぞれの 省 と 自 治 区 に 占 める 比 重 は 大 きく,これらの 特 定 地 域 の 経 済 発 展 が 吉 林 省 と 広 西 壮 族 自 治 区 の 経 済 発 展,ひいては 図 們 江 地 域 と 汎 北 部 湾 地 域 の 国 際 協 力 に 果 たす 影 響 は 大 いに 展 望 される 4.3 政 策 的 支 持 近 年 発 表 された 地 域 計 画 は 中 央 政 府 と 地 方 政 府 の 地 域 経 済 発 展 に 関 する 方 向 性 を 示 すもので あり, 地 域 経 済 発 展 については 継 続 的 な 政 策 支 持 が 期 待 された 近 年 に 実 施 された 具 体 的 な 動 きをみると, 北 部 湾 地 域 では 2007 年 に 広 西 壮 族 自 治 区 北 部 湾 開 発 投 資 有 限 会 社 と 広 西 北 部 湾 国 際 港 務 グループを 設 立 し, 北 部 湾 地 域 経 済 協 力 を 進 めようとした 2008 年 からは 欽 州 保 税 港 区, 広 西 憑 祥 総 合 保 税 区, 南 寧 保 税 物 流 センターが 相 次 いで 設 立 され, 対 ASEAN の 立 体 化 保 税 物 流 システムが 基 本 的 に 形 成 された 金 融 面 でも 2008 年 には 広 西 北 部 湾 銀 行 が 成 立 し, 2010 年 には 中 国 人 民 銀 行 が 広 西 壮 族 自 治 区 を 中 国 の 辺 境 貿 易 人 民 元 決 済 試 験 地 区 と 発 表 し, 中 国 工 商 銀 行 も 南 寧 に 中 国 ASEAN 人 民 元 跨 境 決 済 センターを 設 立 し, 汎 北 部 湾 地 域 内 金 融 協 力 が 促 進 された また ASEAN 諸 国 からの 領 事 館 誘 致 を 進 め, 現 在 はベトナム,タイ,カン ボジア,ラオス,ミャンマー 等 が 南 寧 に 総 領 事 館 を 設 立 している 長 吉 図 地 域 では 地 方 政 府 の 政 策 として 2006 年 には 延 龍 図 一 体 化 ( 延 龍 図 とは 延 辺 朝 鮮 族 自 治 州 の 延 吉, 龍 井, 図 們 3 つの 市 を 指 す),2010 年 には 長 吉 一 体 化 が 策 定 された 2011 年 12 月 には 吉 林 省 初 の 国 家 レベルの 長 春 興 隆 総 合 保 税 区 が 設 立 した 対 外 開 放 の 窓 口 としての 琿 春 については, 国 からの 政 策 支 持 が 多 く 下 された 琿 春 市 は 1992 年 には 対 外 開 放 辺 境 都 市, 1992 年 には 琿 春 辺 境 経 済 協 力 区,2000 年 には 輸 出 加 工 区,2001 年 には 琿 春 中 ロ 互 市 貿 易 区, 2012 年 には 国 際 協 力 示 範 区 と 資 源 成 熟 型 発 展 都 市 と 認 定 され, 国 の 継 続 した 政 策 的 支 持 が 鮮 明 に 表 れた また 2012 年 9 月 に 琿 春 で 初 の 大 図 們 江 イニシアティブ(GTI) 北 東 アジア 観 光 論 壇 が 開 催 された 長 吉 図 地 域 は 北 部 湾 地 域 と 比 べて 地 域 内 外 の 金 融 協 力 が 進 まないことが, 45

地 域 経 済 発 展 における 1 つの 制 約 として 浮 かび 上 がった 5. 国 際 環 境 北 部 湾 と 長 吉 図 地 域 経 済 開 発 が 直 面 する 国 際 環 境 としては, 主 に 中 国 の ASEAN と 北 東 アジ アとの 国 際 政 治 経 済 関 係 が 浮 かび 上 がる 以 下 では 両 地 域 の 国 際 政 治 経 済 環 境 を 比 較 して 見 る 5.1 北 部 湾 地 域 の 国 際 環 境 北 部 湾 地 域 の 主 要 な 国 際 政 治 関 係 としての 中 国 と ASEAN の 外 交 経 済 関 係 は,1991 年 に なってから 関 係 の 改 善 に 進 み 出 した 順 調 な 発 展 を 経 て 1996 年 7 月, 中 国 は ASEAN の 対 話 国 となった 1997 年 12 月 には, 初 の ASEAN プラス 3 首 脳 会 議 が 開 かれ, 中 国 と ASEAN の 関 係 において 画 期 的 な 出 来 事 であった 面 向 21 世 紀 的 睦 領 互 信 伙 伴 関 係 聯 合 声 明 (21 世 紀 にむけての 善 隣 信 頼 のパートナーシップ 共 同 宣 言 )が 調 印 された 21 世 紀 に 入 ってから 経 済 協 力 関 係 はさらに 一 層 拡 大 された 2002 年 には 中 国 与 東 盟 全 面 経 済 合 作 枠 架 協 意 ( 中 国 と ASEAN の 包 括 的 経 済 協 力 枠 組 み 協 定 ),2003 年 には 中 国 東 盟 面 向 和 平 与 繁 栄 的 戦 略 伙 伴 関 係 聯 合 宣 言 的 行 動 計 画 ( 中 国 と ASEAN 平 和 と 繁 栄 のための 戦 略 的 パートナーシップ 共 同 宣 言 )が 締 結 された 経 済 協 力 の 中 心 として 2010 年 1 月 に 発 効 した 中 国 ASEAN 自 由 貿 易 協 定 (ACFTA)は,2002 年 の 包 括 的 経 済 協 力 枠 組 み 協 定 に 基 づいたものであった 現 在 中 国 は ASEAN の 最 大 の 貿 易 パートナーで,ASEAN は 中 国 の 第 3 番 目 の 貿 易 パートナーである 経 済 協 力 領 域 は 農 業, 投 資,エネルギー, 交 通, 観 光 など 11 重 点 領 域 に 拡 大 した 2004 年 か ら 毎 年 開 催 される 中 国 ASEAN 博 覧 会 は, 中 国 と ASEAN の 経 済 交 流 の 重 要 な 場 となっ ている 2011 年 12 月 には 中 国 ASEAN センターが 設 立 された 中 国 ASEAN 協 力 基 金 と 中 国 ASEAN 公 共 衛 生 協 力 基 金 を 設 立 し, 相 互 の 協 力 を 進 めようとしている 国 際 政 治 安 保 領 域 では 2002 年 には 南 海 各 方 行 為 宣 言 (DOC), 関 于 非 伝 統 安 全 領 域 合 作 聯 合 宣 言 ( 非 伝 統 的 安 全 保 障 分 野 における 協 力 についての 共 同 宣 言 )が 調 印 された 2003 年 には ASEAN 域 外 の 大 国 として 中 国 は 東 南 亜 友 好 合 作 条 約 ( 東 南 アジア 友 好 協 力 条 約 )に 加 入 し,ASEAN と 平 和 と 繁 栄 に 向 けた 戦 略 的 パートナー 関 係 となった また 首 脳 会 議, 部 長 レベル 会 議 等 対 話 体 制 を 整 え,2009 年 には 駐 ASEAN 大 使 も 設 立 した 2011 年 には 南 海 各 方 面 行 動 宣 言 の 実 施 を 巡 る 指 導 方 針 で 合 意 した 5.2 長 吉 図 地 域 の 国 際 環 境 長 吉 図 地 域 における 国 際 環 境 は 北 東 アジアが 中 心 で, 特 に 中 日 韓 関 係 が 中 心 である 経 済 関 係 でみると, 中 国 は 改 革 以 来,30 年 間 日 韓 との 経 済 交 流 が 緊 密 になり, 現 在 日 韓 にとって 中 国 は 最 大 の 貿 易 相 手 国 と 投 資 対 象 国 となっている 国 際 分 業 でみると,すでに 日 韓 が 中 国 に 中 間 財 を 提 供 して 中 国 で 生 産 し, 欧 米 に 輸 出 する 国 際 分 業 が 形 成 されている そして 中 国 産 業 の 高 度 化 にともない, 電 気 機 器 と 一 般 機 器 等 領 域 では 従 来 の 垂 直 分 業 から 水 平 分 業 へと 変 化 が 現 れている 国 際 関 係 で 中 国 と 韓 国 は 1992 年 の 国 交 樹 立 以 来 の 友 好 合 作 関 係 から 合 作 伙 伴 関 係 46

東 アジアへの 視 点 を 経 て,2008 年 には 戦 略 合 作 伙 伴 関 係 ( 戦 略 的 パートナーシップ)に 発 展 した 中 日 関 係 は 1972 年 の 中 日 共 同 声 明,1978 年 の 中 日 和 平 友 好 条 約,1998 年 の 中 日 共 同 宣 言 を 経 て,2006 年 には 中 日 戦 略 互 恵 関 係 を 結 んだ 日 韓 では 1998 年 に 面 向 21 世 紀 日 韓 新 伙 伴 関 係 (21 世 紀 に 向 けた 新 たな 日 韓 パートナーシップ 共 同 宣 言 )を 発 表 した 2008 年 に は 第 1 回 中 日 韓 サミットが 開 催 され, 三 国 伙 伴 関 係 聯 合 声 明 (3 国 間 パートナーシップに 関 する 共 同 声 明 )が 発 表 された その 後,3 国 間 サミットは 毎 年 定 期 的 に 開 かれている 国 際 関 係 が 緊 密 になりつつある 中 で, 地 域 経 済 協 定 面 で 世 界 のほかの 地 域 に 比 べ 比 較 的 遅 れていた 北 東 アジアでも,2002 年 に 初 めて 中 日 韓 自 由 貿 易 区 構 想 が 提 起 された 2007 年 に 3 ヵ 国 は 連 合 研 究 委 員 会 を 成 立 し, 中 日 韓 自 由 貿 易 協 定 の 可 能 性 に 関 して 探 ると 同 時 に,3 ヵ 国 による 投 資 協 定 交 渉 が 始 まった 2009 年 の 第 2 回 中 日 韓 サミットでは, 自 由 貿 易 協 定 関 する 政 府 企 業 学 術 界 による 共 同 研 究 を 早 期 に 開 始 することで 一 致 した 2011 年 のサミットでは, 年 内 に FTA に 関 する 研 究 を 終 わらせ,2012 年 には 交 渉 を 開 始 することで 一 致 した 国 際 政 治 安 保 領 域 で 北 東 アジアの 国 際 関 係 は 複 雑 で 焦 眉 の 問 題 も 多 い まず,この 地 域 で は 朝 鮮 半 島 の 不 安 定 状 況 からみられるように, 冷 戦 構 造 が 残 存 している そして 日 米 同 盟, 韓 米 同 盟 など 米 国 との 軍 事 同 盟 が 北 東 アジア 安 全 保 障 に 対 する 影 響 力 が 強 い 次 に, 中 日 韓 の 間 では 歴 史 問 題, 領 土 問 題, 海 洋 権 益, 政 治 制 度 の 差 異 などの 影 響 で, 相 互 信 頼 関 係 はまだ 脆 弱 である 近 年 では 近 隣 諸 国 間 の 領 土 問 題 が 絶 えず, 特 に 2012 年 の 中 日 釣 魚 島 ( 日 本 では 尖 閣 諸 島 ) 問 題 は 中 日 の 経 済 外 交 等 ほとんどの 領 域 に 悪 影 響 を 及 ぼし, 今 まで 築 いた 協 力 関 係 が 消 える 恐 れもある このように 長 吉 図 地 域 を 取 り 巻 く 国 際 環 境 は 北 部 湾 地 域 より 厳 しく, 中 日 韓 自 由 貿 易 区 の 展 望 が 不 透 明 な 中 で,サブ 地 域 経 済 協 力 としての 図 們 江 地 域 開 発 ひいては 長 吉 図 地 域 の 国 際 協 力 は 先 が 遠 いといわざるを 得 ない 6. 終 わりに 長 吉 図 地 域 と 北 部 湾 地 域 に 関 する 地 域 計 画 は, 近 年 公 布 された 地 域 計 画 の 中 で 中 国 の 東 北 と 西 南 重 点 開 発 地 域 における 代 表 的 地 域 計 画 である これらの 地 域 に 関 する 地 域 計 画 の 実 施 は, 中 西 部 地 域 の 産 業 育 成 と 経 済 発 展 の 促 進 に,そして 辺 境 少 数 民 族 地 域 の 社 会 安 定 に 大 いに 期 待 できる また 中 国 の 周 辺 諸 国 との 国 際 協 力 に 関 しては,ASEAN と 北 東 アジアに 協 力 の 中 心 を 置 く 特 徴 をもっている しかし, 国 内 の 地 域 経 済 発 展 の 現 状 でわかるように 両 地 域 とも 沿 海 部 との 格 差 は 縮 まず, 沿 海 部 のような 集 積 による 経 済 発 展,そして 計 画 で 定 めた 目 標 を 達 成 するにはまだ 道 は 遠 い 地 域 経 済 発 展 を 取 り 巻 く 国 際 環 境 でみると, 長 吉 図 地 域 は 北 部 湾 地 域 より 厳 しい ACFTA の 発 効 により 北 部 湾 地 域 ばかりではなく,メコン 圏 開 発 も 含 めた 中 国 西 南 部 の 国 際 協 力 の 拡 大 は 見 込 まれるが, 図 們 江 地 域 では 中 日 韓 FTA が 難 航 する 中 で 全 体 的 な 地 域 協 力 体 制 も 形 成 し 難 く,さらに 北 朝 鮮 とロシア 極 東 地 域 など 未 開 発 の 地 域 を 開 拓 しなければいけない 大 きな 制 約 が ある また 中 央 あるいは 地 方 政 府 の 政 策 実 施 からみると, 北 部 湾 地 域 は 保 税 物 流, 金 融 面 等 で 長 吉 図 地 域 より 発 展 する 可 能 性 が 高 く, 政 策 実 施 の 方 向 と 地 域 経 済 発 展 の 目 標 が 同 じ 方 向 に 向 47

かっていると 考 えられる 中 国 空 間 経 済 構 造 がまだ 変 わっていない 現 状 で, 両 地 域 経 済 開 発 の 促 進 にあたって 国 際 経 済 協 力 も 重 要 であるが, 地 域 計 画 で 取 り 上 げた 産 業 の 育 成, 国 内 他 地 域 との 連 携 強 化 を 通 じて, 独 自 の 経 済 発 展 を 進 めるのが 最 も 大 事 だと 思 われる 今 まで 築 いた 産 業 蓄 積 を 有 効 に 利 用 する と 同 時 に,もう 一 方 では 自 らの 資 源 や 地 理 的 状 況 によって, 自 ら 強 みをもっている 分 野 に 特 化 し 高 付 加 価 値 製 品 を 生 産 し, 国 内 資 本 の 受 入 れに 十 分 に 注 力 することが 両 地 域 の 経 済 発 展 に とって, 避 けては 通 れない 課 題 であると 思 われる 注 ( 注 1) 労 働 集 約 型 産 業, 加 工 貿 易,エネルギー 鉱 産 物 開 発 加 工 業, 農 産 物 加 工 業, 設 備 製 造 業, 近 代 的 なサー ビス 業,ハイテク 産 業 7 つの 産 業 が 重 点 的 移 転 産 業 と 指 定 されている ( 注 2) 最 近 の 中 国 地 域 発 展 に 関 する 計 画 の 策 定 の 背 景 と 意 図,または 中 央 と 地 方 政 府 の 役 割 等 については, 張 (2012), 穆 (2012), 呉, 馬 (2013)を 参 照 されたい ( 注 3) 新 しい 国 家 戦 略 としての 主 体 功 能 区 は,その 開 発 形 式 では 優 化 開 発 地 域, 重 点 開 発 地 域, 制 限 開 発 地 域 と 禁 止 開 発 地 域 ; 開 発 内 容 では 都 市 化 地 域, 農 産 品 主 要 生 産 地 域 と 重 点 生 態 功 能 区 ;レベルでは 国 家 と 省 レベルに 分 けている ( 注 4) 北 部 湾 地 域 は 広 西 壮 族 自 治 区 の 南 寧 市, 北 海 市, 欽 州 市, 防 城 港 市 の 4 つの 行 政 区 を 包 括 し, 長 吉 図 地 域 は 吉 林 省 の 長 春 市, 吉 林 市 の 部 分 地 域 と 延 辺 朝 鮮 族 自 治 州 を 包 括 している ( 注 5) 南 寧 シンガポール 経 済 回 廊 とは, 南 寧 ハノイ(ベトナム) ビエンチャン(ラオス) プノンペン(カ ンボジア) バンコク(タイ) クアラルンプール(マレーシア) シンガポールと, 鉄 道 と 道 路 によっ て 形 成 された 通 路 経 済 回 廊 を 指 す ( 注 6) 両 廊 一 圏 中 での 両 廊 は, 昆 明 ラオカイ ハノイ ハイフォン ハロン 湾 と, 南 寧 ランソン ハノ イ ハイフォン ハロン 湾 という 2 つの 経 済 回 廊 を 指 す 一 圏 は 汎 北 部 湾 経 済 圏 を 指 す ( 注 7) 延 辺 日 報 2012 年 9 月 10 日 は, 延 辺 海 華 集 団 が 北 朝 鮮 の 清 津 港 の 第 3,4 号 埠 頭 の 30 年 の 使 用 権 を 取 得, 東 海 航 路 進 出 が 本 格 化 する 見 通 しだと 報 じた 2008 年 には 中 国 の 大 連 創 立 グループが 北 朝 鮮 の 羅 津 港 1 号 埠 頭 の 使 用 権 を 取 得,その 後 中 国 側 は 羅 津 港 4 ~ 6 埠 頭 の 建 設 権 と 50 年 の 使 用 権 を 取 得 し ている 中 国 の 借 港 出 海 戦 略 の 兆 しが 見 え 始 めたともいえるが,これが 長 吉 図 地 域 に 産 業 集 積 をも たらすかどうかはまだ 不 透 明 だと 筆 者 は 考 えている 参 考 文 献 呉 昊, 馬 琳 (2013) 中 国 が 大 量 の 地 域 発 展 規 画 を 策 定 する 要 因 と 実 施 上 の 問 題 点 ERINA REPORT NO.109, PP.15 ~ 22 張 可 雲 (2012) 中 国 が 頻 繁 に 地 域 発 展 企 画 を 策 定 する 背 景, 意 図 及 び 展 望 ERINA REPORT NO.103,PP.5 ~ 9 穆 尭 芋 (2012) 中 国 における 地 域 発 展 戦 略 の 実 態 と 課 題 中 国 図 們 江 地 域 協 力 開 発 企 画 要 綱 の 事 例 ERINA REPORT NO.103,PP.38 ~ 50 李 占 国, 孫 久 文 (2011) 我 国 産 業 区 域 転 移 滞 緩 的 空 間 経 済 学 解 釈 及 其 加 速 途 経 研 究 経 済 問 題 第 1 期,PP. 27 ~ 30 孫 晶, 許 崇 正 (2011) 城 市 集 聚 的 空 間 経 済 学 分 析 以 寧 鎮 揚 一 体 化 発 展 為 例 産 経 評 論 第 4 期,PP.153 ~ 159 48