投 稿 論 文 中 国 の 地 域 開 発 の 進 展 とその 課 題 長 吉 図 と 北 部 湾 の 比 較 延 辺 大 学 経 済 管 理 学 院 副 教 授 李 聖 華 1.はじめに 中 国 経 済 は 現 在, 集 積 の 経 済 により 著 しく 経 済 発 展 を 遂 げた 沿 海 部 と,それに 比 べ 比 較 的 経 済 発 展 が 遅 れている 中 西 部 が 共 存 するという, 集 積 の 経 済 と 未 開 発 がはっきりと 分 かれる 空 間 構 造 が 形 成 されている このような 経 済 空 間 構 造 の 形 成 は,1980 年 代 からの 中 国 政 府 の 発 展 戦 略 に 基 づいた 政 策 の 結 果 であり, 国 家 戦 略 そのものであった しかし,2007 年 以 降 沿 海 地 域 の 賃 金 と 土 地 価 格 等 生 産 コストの 高 騰 をきっかけに, 沿 海 地 域 から 中 西 部 への 生 産 移 転 が 加 速 化 された 政 策 的 にも 1999 年 の 西 部 大 開 発 を 皮 切 りとする 経 済 発 展 政 策 の 継 続 として, 中 国 政 府 は 2010 年 8 月 に 中 西 部 地 区 承 接 産 業 転 移 指 導 意 見 ( 中 西 部 地 域 の 産 業 移 転 受 け 入 れに 関 する 指 導 意 見 )を 公 布 して, 産 業 構 造 調 整 と 経 済 成 長 方 式 の 転 換 を 図 ろうとしている ( 注 1) このような 経 済 発 展 の 現 状 を 背 景 に, 近 年 になって 頻 繁 に 地 域 間 バランスや 地 域 特 性 を 考 慮 し た 地 域 発 展 計 画 を 公 表 することとなり,このような 政 策 の 策 定 は 中 国 政 府 の 地 域 発 展 に 関 する 思 惑 が, 大 きく 変 化 したことを 意 味 するであろう ( 注 2) ところが, 労 働 集 約 型 製 造 業 は 現 在 に 至 るまで 沿 海 地 域 に 集 積 し, 中 西 部 地 域 では 期 待 され る 大 規 模 の 産 業 移 転 は 行 われていない( 李, 孫,2011) 中 国 経 済 は 現 在 集 積 の 逆 U 字 型 の 曲 線 の 上 り 段 階 に 位 置 し, 産 業 の 地 域 集 積 の 強 化 がまだ 続 いている( 孫, 許,2011) 中 国 経 済 においては, 現 在 特 定 地 域 への 集 積 力 が 分 散 力 より 強 いのが 現 状 である 中 国 経 済 の 減 速 の 兆 しが 明 らかになる 中 で, 新 しい 成 長 極 として 中 西 部 の 経 済 発 展 が 注 目 されるのは 当 然 のことで あろう 2008 年 から 続 々と 公 表 された 中 国 の 地 域 発 展 計 画 の 中 には,2008 年 に 公 表 された 広 西 北 部 湾 経 済 区 発 展 計 画 と 2009 年 に 公 表 された 中 国 図 們 江 区 域 合 作 開 発 計 画 綱 要 といった, 中 西 部 国 境 地 域 の 少 数 民 族 地 域 に 関 する 経 済 開 発 計 画 も 含 まれている また,この 2 つの 地 域 計 画 は,2011 年 に 中 国 国 土 空 間 開 発 戦 略 の 実 施 方 案 として 発 表 された 主 体 機 能 区 計 画 で 定 められた 国 家 重 点 開 発 地 域 における 地 域 開 発 計 画 でもある ( 注 3) 広 西 壮 族 自 治 区 の 北 部 湾 地 域 と 吉 林 省 の 長 吉 図 地 域 は 元 々 中 国 国 内 で 経 済 発 展 が 遅 れている 地 域 であるが, 中 国 西 南 地 域 と 東 北 地 域 から 汎 北 部 湾 地 域 と 図 們 江 地 域 への 国 際 協 力,そして 国 内 地 域 経 済 発 展 を 展 開 しよ うとする,それぞれの 地 域 特 性 を 持 っている 地 域 である ( 注 4) まず, 国 際 経 済 協 力 という 面 に 関 しては,ASEAN と 北 東 アジア 各 国 との 経 済 交 流 を 進 めよ うという 目 標 がある そして 国 内 地 域 開 発 に 関 しては, 広 西 壮 族 自 治 区 の 北 部 湾 地 域 と 吉 林 省 の 長 吉 図 地 域 の 経 済 発 展 を 図 ろうとしている 北 部 湾 地 域 と 長 吉 図 地 域 は それぞれ 汎 北 部 湾 本 稿 は,2012 年 度 日 本 国 際 交 流 基 金 の 助 成 による 研 究 結 果 の 一 部 である 38
東 アジアへの 視 点 地 域 と 図 們 江 地 域 国 際 経 済 協 力 における 中 国 国 内 の 重 点 開 発 地 域 である これらの 国 内 地 域 経 済 に 関 する 新 たな 計 画 の 発 表 は, 従 来 の 特 定 地 域 に 対 する 対 外 開 放 重 視 政 策 が, 現 在 では 国 内 協 力 と 国 際 協 力 の 両 方 を 重 視 する 政 策 に 転 換 したことを 意 味 している 特 に 北 部 湾 と 長 吉 図 と いう 地 域 経 済 発 展 計 画 で 定 められた 国 内 特 定 地 域 に 対 する 経 済 協 力 への 関 心 が 強 く 見 てとれ る そこで 本 稿 は, 広 西 北 部 湾 経 済 区 発 展 計 画 と 中 国 図 們 江 区 域 合 作 開 発 計 画 綱 要 で 定 められた, 中 国 国 内 における 北 部 湾 地 域 と 長 吉 図 地 域 の 国 際 協 力 経 緯 や 地 域 経 済 発 展 現 状 等 方 面 の 比 較 を 通 じて, 新 しい 地 域 発 展 計 画 の 下 での 南 北 国 境 両 地 域 の 経 済 発 展 を 展 望 する 2. 国 際 協 力 の 経 緯 長 吉 図 と 北 部 湾 地 域 の 国 際 協 力 に 関 しては, 中 国 図 們 江 地 域 と 汎 北 部 湾 地 域 の 国 際 協 力 の 範 囲 と 経 緯 から 概 観 できる 2.1 国 際 協 力 の 範 囲 図 1 と 図 2 はそれぞれ 吉 林 省 と 長 吉 図 の 位 置 を 説 明 している 吉 林 省 は 中 国 の 東 北 に 位 置 し, 北 朝 鮮,ロシアと 国 境 を 接 している 長 吉 図 地 域 は 吉 林 省 の 長 春 市, 吉 林 市 の 一 部 地 域 と 延 辺 朝 鮮 族 自 治 州 を 包 括 し, 中 国 図 們 江 区 域 合 作 開 発 計 画 綱 要 で 定 めた 図 們 江 地 域 における 国 内 重 点 開 発 地 域 である 地 理 的 要 因 から 図 們 江 地 域 開 発 の 範 囲 は, 初 めは 中 ロ 北 朝 鮮 国 境 地 域 の 小 三 角 形 ( 中 国 吉 林 省 延 辺 朝 鮮 族 自 治 州 の 琿 春, 北 朝 鮮 の 羅 先,ロシアのポシェット)が 中 心 だったが,その 後, 徐 々 に 大 三 角 形 ( 中 国 吉 林 省 延 辺 朝 鮮 族 自 治 州 の 延 吉 市, 北 朝 鮮 の 清 津 市,ロシアのウラジオスト ク),さらに 大 図 們 江 地 域 ( 中 国 東 北 地 域,モンゴル 国,ロシア 極 東 地 域, 北 朝 鮮 と 韓 国 の 西 海 岸 地 域 )まで 範 囲 を 拡 大 した 39
図 3 と 図 4 はそれぞれ 広 西 壮 族 自 治 区 と 北 部 湾 地 域 の 位 置 を 説 明 している 広 西 壮 族 自 治 区 は 中 国 の 西 南 部 に 位 置 し,ベトナムに 国 境 を 接 している 北 部 湾 地 域 は 広 西 壮 族 自 治 区 の 南 寧 市, 北 海 市, 欽 州 市, 防 城 港 市 の 4 つの 行 政 区 を 包 括 し, 広 西 北 部 湾 経 済 区 発 展 計 画 で 定 めた 汎 北 部 湾 地 域 開 発 での 国 内 重 点 開 発 地 域 である 汎 北 部 湾 経 済 協 力 の 範 囲 は, 経 済 協 力 に 参 加 する ASEAN 諸 国 と 中 国 国 内 の 地 域 が 近 年 徐 々 に 増 える 形 で 拡 大 した 最 初 の 汎 北 部 湾 協 力 の 範 囲 は, 中 国 ( 広 西 壮 族 自 治 区 )とベトナム, マレーシア,シンガポール,インドネシア,フィリピン,ブルネイとなる 6 + 1 の 形 であっ た 2009 年 の 第 4 回 汎 北 部 湾 経 済 合 作 論 壇 では,ASEAN のタイと 中 国 国 内 の 広 東 省 と 海 南 省 を 加 え 7 + 3 と 拡 大 した 将 来 は 香 港,マカオ, 台 湾 とカンボジアを 含 む 8 + 3 を 視 野 に 入 れている しかし, 地 域 国 際 協 力 においては 中 国 という 国 家 が 直 接 参 加 したわけでは なく, 国 内 の 吉 林 省 あるいは 広 西 壮 族 自 治 区 等 特 定 行 政 区 が 主 な 実 施 主 体 となっていた そし て, 国 内 地 域 開 発 では 吉 林 省 の 長 吉 図 地 域 と 広 西 壮 族 自 治 区 の 北 部 湾 地 域 が 注 目 を 浴 びるよう になった 2.2 経 緯 図 們 江 地 域 と 汎 北 部 湾 地 域 の 経 緯 に 関 してみると, 開 発 の 実 施 期 間 が 異 なる 図 們 江 地 域 開 発 は,1980 年 代 から 中 国 国 内 の 学 者 たちが 中 国 東 北 地 域 から 日 本 海 への 出 海 口 ( 海 への 出 口 )を 求 めたことが 発 端 として 議 論 された 長 年 の 論 証 を 経 て,1991 年 10 月 24 日 に 国 連 開 発 計 画 (UNDP)が 図 們 江 地 域 開 発 を 公 布 し,その 時 からこの 地 域 の 国 際 開 発 が 世 界 の 注 目 を 浴 びるようになった しかし, 汎 北 部 湾 地 域 の 開 発 は 中 国 各 地 の 開 発 と 比 べずいぶん 遅 れる 形 となった それはベトナムと 国 境 を 接 している 広 西 壮 族 自 治 区 では 1979 年 の 中 越 戦 争 により, 1991 年 11 月 に 国 交 正 常 化 が 実 現 できるまで 経 済 発 展 に 力 を 注 ぐことができなかったからであ る 1999 年 の 西 部 大 開 発 が 打 ち 出 されてから, 広 西 壮 族 自 治 区 は 開 発 の 対 象 地 域 に 指 定 され,そして 2000 年 以 降, 中 国 と ASEAN の 経 済 連 携 の 強 化 につれ 本 格 的 に 経 済 開 発 の 対 象 となった 40
東 アジアへの 視 点 ただし, 北 部 湾 地 域 の 国 際 協 力 の 実 施 においては 図 們 江 地 域 開 発 での UNDP,あるいは 大 メ コン 圏 開 発 (GMS)でのアジア 開 発 銀 行 (ADB)のように 国 際 協 力 をリードする 組 織 はなかっ た 地 域 開 発 に 関 しては 2006 年 に 広 西 壮 族 自 治 区 が 提 案 し, 現 在 は 汎 北 部 湾 経 済 合 作 論 壇, 汎 北 部 湾 地 域 経 済 合 作 市 長 論 壇 等 の 定 期 的 な 会 合 と 対 話 枠 組 の 形 成 によって 進 められてい る しかし, 両 地 域 の 開 発 においては 現 在 にいたるまで, 決 定 的 影 響 を 及 ぼす 組 織 あるいは 国 はみられず, 強 力 な 地 域 開 発 推 進 枠 組 も 整 っていない ただ, 中 国 国 内 においては 地 域 発 展 計 画 の 一 環 として 2008 年 と 2009 年 に, 北 部 湾 地 域 と 長 吉 図 地 域 に 関 する 地 域 経 済 発 展 計 画 が 国 からの 承 認 を 得 て 発 表 された 3. 地 域 計 画 の 内 容 長 吉 図 と 北 部 湾 地 域 の 経 済 発 展 に 関 する 計 画 は, 主 に 国 内 と 国 際 両 方 面 から 発 展 目 標 を 挙 げ ている 3.1 国 内 協 力 目 標 長 吉 図 地 域 の 国 内 協 力 は 省 内 協 力, 東 北 地 域 内 協 力, 国 内 その 他 地 域 との 協 力 等 の 3 つの 側 面 から 進 めようとしている 省 内 と 東 北 地 域 内 での 協 力 は, 主 にインフラ 整 備,エネルギー 開 発, 水 利 施 設 の 建 設, 地 域 間 分 業 体 制 の 確 立 である 国 内 他 の 地 域 に 関 しては 特 に 沿 海 地 域 との 協 力 を 進 め, 産 業 移 転 を 積 極 的 に 受 け 入 れ 長 吉 図 地 域 の 産 業 高 度 化 を 促 進 すると 同 時 に, 各 種 開 発 区 と 工 業 区 の 建 設 を 推 進 し, 競 争 力 が 強 い 自 動 車, 石 油 化 工, 光 電 子 情 報, 冶 金 建 材, 装 備 製 造, 生 物, 新 材 料, 農 産 物 加 工 業 の 8 つの 新 型 工 業 基 地 を 建 設 しようとする 北 部 湾 地 域 では 汎 珠 江 デルタ 地 域 経 済 協 力 に 積 極 的 に 参 加 し, 広 東 省, 香 港,マカオからの 資 本, 技 術, 産 業 転 移 を 積 極 的 に 受 け 入 れ, 加 工 貿 易 産 業 転 移 の 主 要 受 入 地 域 に 建 設 しようと する また 西 南 出 海 口 を 利 用 して 西 南 地 域 との 更 なる 経 済 協 力 の 拡 大 を 進 め, 緊 密 な 連 携 を 持 つ 南 寧 貴 陽 昆 明 都 市 帯 を 形 成 して, 周 辺 地 域 との 交 通, 物 流, 観 光,エネルギー 開 発, 環 境 保 護 等 領 域 での 協 力 を 強 化 しようとしている そして 目 標 としては 港 の 優 位 性 と 2 つの 市 場, 資 源 を 利 用 して 石 油 化 工, 製 紙, 冶 金, 軽 工 業 品,ハイテク 技 術, 海 洋 等 産 業 の 育 成 を 通 じて 沿 海 石 油 化 工 基 地, 沿 海 鋼 鉄 基 地, 精 細 化 工 基 地,ハイテク 技 術 基 地, 沿 海 海 洋 産 業 基 地, 沿 海 軽 工 業 基 地 を 建 設 しようとする 長 吉 図 と 北 部 湾 地 域 は 中 国 中 西 部 国 境 地 域 開 発 における 代 表 的 な 地 域 であり, 中 西 部 地 域 の 経 済 発 展 が 中 国 経 済 の 新 たな 成 長 極 として 大 いに 期 待 されている 3.2 国 際 協 力 目 標 長 吉 図 地 域 は 北 東 アジア 地 域 経 済 協 力 の 重 要 な 窓 口 と 経 済 技 術 協 力 の 重 要 な 舞 台 である 地 域 国 際 協 力 においては 6 つの 側 面 から 国 際 協 力 を 進 めようとする 第 1 は, 国 際 物 流 ルートの 建 設 である 海 上 ルートでは 琿 春 ザルビノ 束 草 新 潟 の 建 設, 空 港 では 長 春 と 延 吉 空 港 の 国 際 物 流 機 能 を 強 化 する 第 2 は, 経 済 協 力 区 建 設 で, 琿 春 市 における 跨 境 経 済 協 力 区 の 建 設 を 目 指 す 第 3 は, 周 辺 諸 国 の 先 進 技 術 を 活 用 して, 図 們 江 地 域 における 生 態 環 境 と 環 境 保 護 41
等 領 域 での 国 際 協 力 を 進 める 第 4 は, 国 際 産 業 協 力 区 の 建 設 を 加 速 化 する 目 的 で, 長 春, 吉 林, 琿 春 の 開 発 区 を 中 心 に 周 辺 諸 国 との 科 学 技 術 協 力 と 産 業 融 合 を 促 進 し, 新 型 工 業 化 の 進 展 を 促 進 しようとする 第 5 は, 知 識, 文 化, 観 光 等 の 領 域 での 協 力 を 強 化 する 第 6 は, 現 有 の 大 図 們 江 イニシアティブ(GTI)の 枠 組 みを 基 に, 定 期 的 に 北 東 アジア 経 済 協 力 フォーラム 等 を 開 催 し, 図 們 江 地 域 国 際 協 力 の 枠 組 みを 作 る 北 部 湾 地 域 は 中 国 ASEAN 経 済 圏 の 最 前 線 に 位 置 しており,ASEAN との 国 際 協 力 において は 大 メコン 圏 開 発 (GMS)と 汎 北 部 湾 経 済 協 力 を 2 つの 翼 として, 南 寧 シンガポール 経 済 回 廊 を 軸 とする 中 国 ASEAN 一 軸 両 翼 (1 つの 軸 と 2 つの 翼 )という 新 経 済 協 力 局 面 を 形 成 し ようとする ( 注 5) 新 経 済 協 力 局 面 は 3 つの 側 面 から 展 開 しようとする 第 1 は,インフラ 整 備 に 関 する 協 力 である, 両 廊 一 圏 (2 つの 経 済 回 廊 と 1 つの 経 済 圏 )の 枠 組 みの 基 で 南 寧 から 中 南 半 島 への 高 速 道 路 と 鉄 道 の 貫 通,コンテナ 運 送 航 線, 南 寧 から ASEAN 主 要 都 市 間 の 航 空 航 線 な どの 領 域 での 協 力 を 加 速 化 し,ASEAN との 陸 海 空 立 体 交 通 運 送 体 系 を 建 設 する ( 注 6) 第 2 は, 農 業, エネルギー, 観 光 等 産 業 領 域 での 協 力 の 強 化 である 農 業 領 域 では 農 産 品 の 深 加 工 と 海 上 漁 業 等,エネルギー 領 域 では 太 陽, 風 力 と 生 物 エネルギーや, 観 光 領 域 では 汎 北 部 湾 観 光 大 通 路 と ネットワークの 建 設 などである 第 3 は, 金 融 協 力 を 積 極 的 に 進 めることである 北 部 湾 地 域 銀 行 連 合 体 の 形 成 を 目 指 し, 国 際 決 算, 貿 易 融 資, 現 金 管 理,プロジェクト 融 資 等 金 融 サービ スの 提 供 を 促 進 する 4. 経 済 発 展 現 状 近 年 吉 林 省 と 広 西 壮 族 自 治 区 の 経 済 は 2 桁 の 成 長 率 で 全 国 の 平 均 成 長 率 を 上 回 っている 地 域 におけるインフラ 整 備 と 対 外 経 済 の 発 展 から, 両 省 の 経 済 発 展 現 状 を 比 較 してみる 4.1 インフラ 整 備 インフラ 整 備 は 産 業 の 立 地 と 集 積 に 直 接 影 響 を 及 ぼす 要 因 の 1 つである 鉄 道 では, 吉 林 省 は 2015 年 までに 26 件 の 鉄 道 プロジェクトを 実 行 し, 吉 林 省 における 五 縦 三 横 (5 つの 縦 線 と 3 つの 横 線 からなる 鉄 道 )のネットワークの 形 成 を 推 進 している 市 省 レベルでは 高 速 鉄 道, 県 市 レベルでは 鉄 道 の 開 通 を 目 指 している 第 12 次 5 ヵ 年 計 画 時 期 では 長 春 を 中 心 とする 2 時 間 通 勤 経 済 圏 を 目 指 している 広 西 壮 族 自 治 区 では 現 在 南 寧 を 中 心 に, 周 辺 各 省 と ベトナムなど ASEAN 諸 国 間 を 結 ぶ 地 域 間 鉄 道 を 建 設 しようとしている 同 時 に, 南 寧 を 中 心 とする 1,2,3 時 間 都 市 経 済 圏 建 設 が 進 められている 道 路 では, 長 吉 図 と 北 部 湾 ともに 地 域 内 外 道 路 ネットワークの 建 設 を 進 めているが, 特 に 広 西 壮 族 自 治 区 では ASEAN 中 国 高 速 道 路 も 建 設 中 である この 他 にも 空 港, 水 路 等 整 備 も 進 められている しかし, 長 吉 図 と 北 部 湾 地 域 のインフラ 整 備 の 最 大 の 違 いは 港 湾 の 整 備 である 2009 年 3 月, 北 部 湾 経 済 区 内 の 北 海 港, 欽 州 港, 防 城 港 が 合 併 して 北 部 湾 港 となり,ASEAN 向 けの 国 際 航 運 センターを 建 設 する 目 標 があげられた そして 港 湾 建 設 が 積 極 的 に 進 められると 同 時 に, 各 港 間 の 協 力 および 分 業 等 位 置 付 けが 明 確 化 された 現 在 は 世 界 各 地 の 200 以 上 の 港 と 貿 易 輸 送 協 力 が 行 われている 東 北 地 区 の 出 海 口 を 突 破 するのが 1 つの 大 きな 目 標 であった 図 們 江 42
東 アジアへの 視 点 地 域 開 発 では, 日 本 海 進 出 のための 自 国 の 港 がないため, 出 海 口 として 港 は 北 朝 鮮 あるい はロシアの 港 を 利 用 しなければいけない 状 況 である 広 西 北 部 湾 経 済 区 発 展 計 画 と 中 国 図 們 江 区 域 合 作 開 発 計 画 綱 要 では, 両 地 域 ともに 物 流 基 地 を 建 設 する 戦 略 的 目 標 があったが, 港 の 資 源 賦 存 の 違 いが 両 地 域 開 発 の 促 進 に 与 える 影 響 が 大 きく 異 なると 思 われる ( 注 7) 4.2 対 外 経 済 まず, 表 1 の 両 省 の 直 接 投 資 利 用 額 (FDI)から 比 較 してみる 1996 年 時 点 で 吉 林 省 が 受 入 れた 直 接 投 資 は 4.5 億 米 ドル, 広 西 壮 族 自 治 区 は 6.7 億 米 ドルであり,それぞれが 中 国 で 受 入 れた 直 接 投 資 に 占 める 比 重 は 1.1%と 1.6%に 過 ぎなった 2011 年 吉 林 省 が 受 入 れた 直 接 投 資 は 14.8 億 米 ドル, 広 西 壮 族 自 治 区 が 受 入 れた 直 接 投 資 は 10.1 億 米 ドルと,1990 年 代 と 比 べ 増 加 はみられたが, 規 模 は 依 然 として 小 さい 比 重 でみると 吉 林 省 は 1.3%とわずかの 上 昇, 広 西 壮 族 自 治 区 は 逆 に 0.9%に 低 下 した 両 地 域 に 直 接 投 資 による 産 業 の 集 積 が 行 われていない ことを 示 している そして, 直 接 投 資 額 をそれぞれの 近 隣 の 沿 海 地 域 と 比 較 すると, 吉 林 省 と 遼 寧 省 の 格 差 は 1996 年 の 3.7 倍 から,2011 年 の 16.4 倍 まで 拡 大 し, 広 西 壮 族 自 治 区 と 広 東 省 43
の 格 差 は 2011 年 時 点 で 21.5 倍 であった 2010 年 の 遼 寧 省 と 広 東 省 の 直 接 投 資 受 入 額 は 200 億 米 ドルを 超 えている このように 格 差 が 縮 まっていないことは, 生 産 コストの 上 昇 や 国 の 政 策 にもかかわらず, 外 資 の 沿 海 地 域 への 集 積 はまだ 強 く, 沿 海 地 域 から 中 西 部 の 産 業 移 転 が 進 ん でいないことを 示 している 直 接 投 資 の 集 中 からみた 吉 林 省 と 広 西 壮 族 自 治 区 を 取 り 巻 く 大 局 的 な 経 済 環 境 は, 上 述 の 通 りであるが, 中 国 図 們 江 区 域 合 作 開 発 計 画 綱 要 と 広 西 北 部 湾 経 済 区 発 展 計 画 で 定 めら れた 吉 林 省 と 広 西 壮 族 自 治 区 の 重 点 開 発 地 域, 長 吉 図 と 北 部 湾 地 域 が 受 入 れた 直 接 投 資 はそれ ぞれの 省 と 自 治 区 では 大 きな 比 重 を 占 めている 長 吉 図 地 域 が 受 入 れた 直 接 投 資 は 2003 年 に は 吉 林 省 の 85.9%を 占 めたが,2011 年 になっては 68.9%まで 低 下 した 吉 林 省 では 長 吉 図 地 域 以 外 への 直 接 投 資 が 増 えている 状 況 が 看 取 されるが, 長 春 市 が 吉 林 省 で 受 入 れた 直 接 投 資 の 半 分 以 上 を 占 めている 状 況 は 変 わっていない 北 部 湾 地 域 は 長 吉 図 地 域 と 対 照 的 に 近 年 になっ てシェアが 急 速 に 伸 び,2011 年 には 広 西 壮 族 自 治 区 が 受 入 れた 直 接 投 資 の 89.2%を 占 めるよ うになった 特 に 欽 州 市 と 南 寧 市 に 投 資 が 集 中 している 44
東 アジアへの 視 点 次 に, 表 2 の 対 外 貿 易 規 模 で 比 較 してみる 吉 林 省 の 輸 出 入 総 額 は 2000 年 の 25.5 億 米 ド ルから 2011 年 の 220.5 億 米 ドル, 広 西 壮 族 自 治 区 では 2000 年 の 20.3 億 米 ドルから 2011 年 の 233.3 億 米 ドルと 両 省 ともに 10 倍 程 度 拡 大 した しかし, 全 国 輸 出 入 総 額 に 占 める 比 重 は 依 然 として 低 く,0.6%を 占 めるにすぎない 吉 林 省 の 主 要 貿 易 相 手 地 域 は 主 に EU とアジアで, その 中 でドイツと 日 本 との 貿 易 が 目 立 つ 延 辺 朝 鮮 族 自 治 州 は 特 に 北 朝 鮮 と 韓 国 との 経 済 交 流 が 盛 んに 行 われている 広 西 壮 族 自 治 区 の 主 要 貿 易 相 手 地 域 は 主 に ASEAN で, 特 にベトナム と 活 発 に 行 っている また 広 西 壮 族 自 治 区 の 貿 易 収 支 は 黒 字 であるが, 吉 林 省 では 自 動 車 関 連 部 品 の 輸 入 が 多 く, 貿 易 赤 字 は 拡 大 している 長 吉 図 地 域 の 輸 出 入 総 額 は 吉 林 省 輸 出 入 総 額 の 90% 以 上 を 占 めているが,その 中 で 長 春 市 が 70 ~ 80%を 占 めている 北 部 湾 地 域 の 対 外 貿 易 の 比 重 は 近 年 順 調 に 伸 びて,2011 年 には 広 西 壮 族 自 治 区 輸 出 入 総 額 の 48.5%を 占 めるように なった 中 国 は 図 們 江 地 域 開 発 と 汎 北 部 湾 地 域 開 発 を 通 じて, 経 済 発 展 が 遅 れている 吉 林 省 と 広 西 壮 族 自 治 区 の 経 済 発 展,そして 北 東 アジア 諸 国 とASEANとの 国 際 協 力 を 促 進 しようとしている 近 年 発 表 された 地 域 経 済 政 策 では 長 吉 図 と 北 部 湾 地 域 を 吉 林 省 と 広 西 壮 族 自 治 区 の 重 点 開 発 地 域 と 指 定 し,これらの 地 域 を 中 心 に 国 内, 国 際 両 面 から 経 済 発 展 を 促 進 しようとしている 長 吉 図 と 北 部 湾 地 域 の 経 済 規 模 がそれぞれの 省 と 自 治 区 に 占 める 比 重 は 大 きく,これらの 特 定 地 域 の 経 済 発 展 が 吉 林 省 と 広 西 壮 族 自 治 区 の 経 済 発 展,ひいては 図 們 江 地 域 と 汎 北 部 湾 地 域 の 国 際 協 力 に 果 たす 影 響 は 大 いに 展 望 される 4.3 政 策 的 支 持 近 年 発 表 された 地 域 計 画 は 中 央 政 府 と 地 方 政 府 の 地 域 経 済 発 展 に 関 する 方 向 性 を 示 すもので あり, 地 域 経 済 発 展 については 継 続 的 な 政 策 支 持 が 期 待 された 近 年 に 実 施 された 具 体 的 な 動 きをみると, 北 部 湾 地 域 では 2007 年 に 広 西 壮 族 自 治 区 北 部 湾 開 発 投 資 有 限 会 社 と 広 西 北 部 湾 国 際 港 務 グループを 設 立 し, 北 部 湾 地 域 経 済 協 力 を 進 めようとした 2008 年 からは 欽 州 保 税 港 区, 広 西 憑 祥 総 合 保 税 区, 南 寧 保 税 物 流 センターが 相 次 いで 設 立 され, 対 ASEAN の 立 体 化 保 税 物 流 システムが 基 本 的 に 形 成 された 金 融 面 でも 2008 年 には 広 西 北 部 湾 銀 行 が 成 立 し, 2010 年 には 中 国 人 民 銀 行 が 広 西 壮 族 自 治 区 を 中 国 の 辺 境 貿 易 人 民 元 決 済 試 験 地 区 と 発 表 し, 中 国 工 商 銀 行 も 南 寧 に 中 国 ASEAN 人 民 元 跨 境 決 済 センターを 設 立 し, 汎 北 部 湾 地 域 内 金 融 協 力 が 促 進 された また ASEAN 諸 国 からの 領 事 館 誘 致 を 進 め, 現 在 はベトナム,タイ,カン ボジア,ラオス,ミャンマー 等 が 南 寧 に 総 領 事 館 を 設 立 している 長 吉 図 地 域 では 地 方 政 府 の 政 策 として 2006 年 には 延 龍 図 一 体 化 ( 延 龍 図 とは 延 辺 朝 鮮 族 自 治 州 の 延 吉, 龍 井, 図 們 3 つの 市 を 指 す),2010 年 には 長 吉 一 体 化 が 策 定 された 2011 年 12 月 には 吉 林 省 初 の 国 家 レベルの 長 春 興 隆 総 合 保 税 区 が 設 立 した 対 外 開 放 の 窓 口 としての 琿 春 については, 国 からの 政 策 支 持 が 多 く 下 された 琿 春 市 は 1992 年 には 対 外 開 放 辺 境 都 市, 1992 年 には 琿 春 辺 境 経 済 協 力 区,2000 年 には 輸 出 加 工 区,2001 年 には 琿 春 中 ロ 互 市 貿 易 区, 2012 年 には 国 際 協 力 示 範 区 と 資 源 成 熟 型 発 展 都 市 と 認 定 され, 国 の 継 続 した 政 策 的 支 持 が 鮮 明 に 表 れた また 2012 年 9 月 に 琿 春 で 初 の 大 図 們 江 イニシアティブ(GTI) 北 東 アジア 観 光 論 壇 が 開 催 された 長 吉 図 地 域 は 北 部 湾 地 域 と 比 べて 地 域 内 外 の 金 融 協 力 が 進 まないことが, 45
地 域 経 済 発 展 における 1 つの 制 約 として 浮 かび 上 がった 5. 国 際 環 境 北 部 湾 と 長 吉 図 地 域 経 済 開 発 が 直 面 する 国 際 環 境 としては, 主 に 中 国 の ASEAN と 北 東 アジ アとの 国 際 政 治 経 済 関 係 が 浮 かび 上 がる 以 下 では 両 地 域 の 国 際 政 治 経 済 環 境 を 比 較 して 見 る 5.1 北 部 湾 地 域 の 国 際 環 境 北 部 湾 地 域 の 主 要 な 国 際 政 治 関 係 としての 中 国 と ASEAN の 外 交 経 済 関 係 は,1991 年 に なってから 関 係 の 改 善 に 進 み 出 した 順 調 な 発 展 を 経 て 1996 年 7 月, 中 国 は ASEAN の 対 話 国 となった 1997 年 12 月 には, 初 の ASEAN プラス 3 首 脳 会 議 が 開 かれ, 中 国 と ASEAN の 関 係 において 画 期 的 な 出 来 事 であった 面 向 21 世 紀 的 睦 領 互 信 伙 伴 関 係 聯 合 声 明 (21 世 紀 にむけての 善 隣 信 頼 のパートナーシップ 共 同 宣 言 )が 調 印 された 21 世 紀 に 入 ってから 経 済 協 力 関 係 はさらに 一 層 拡 大 された 2002 年 には 中 国 与 東 盟 全 面 経 済 合 作 枠 架 協 意 ( 中 国 と ASEAN の 包 括 的 経 済 協 力 枠 組 み 協 定 ),2003 年 には 中 国 東 盟 面 向 和 平 与 繁 栄 的 戦 略 伙 伴 関 係 聯 合 宣 言 的 行 動 計 画 ( 中 国 と ASEAN 平 和 と 繁 栄 のための 戦 略 的 パートナーシップ 共 同 宣 言 )が 締 結 された 経 済 協 力 の 中 心 として 2010 年 1 月 に 発 効 した 中 国 ASEAN 自 由 貿 易 協 定 (ACFTA)は,2002 年 の 包 括 的 経 済 協 力 枠 組 み 協 定 に 基 づいたものであった 現 在 中 国 は ASEAN の 最 大 の 貿 易 パートナーで,ASEAN は 中 国 の 第 3 番 目 の 貿 易 パートナーである 経 済 協 力 領 域 は 農 業, 投 資,エネルギー, 交 通, 観 光 など 11 重 点 領 域 に 拡 大 した 2004 年 か ら 毎 年 開 催 される 中 国 ASEAN 博 覧 会 は, 中 国 と ASEAN の 経 済 交 流 の 重 要 な 場 となっ ている 2011 年 12 月 には 中 国 ASEAN センターが 設 立 された 中 国 ASEAN 協 力 基 金 と 中 国 ASEAN 公 共 衛 生 協 力 基 金 を 設 立 し, 相 互 の 協 力 を 進 めようとしている 国 際 政 治 安 保 領 域 では 2002 年 には 南 海 各 方 行 為 宣 言 (DOC), 関 于 非 伝 統 安 全 領 域 合 作 聯 合 宣 言 ( 非 伝 統 的 安 全 保 障 分 野 における 協 力 についての 共 同 宣 言 )が 調 印 された 2003 年 には ASEAN 域 外 の 大 国 として 中 国 は 東 南 亜 友 好 合 作 条 約 ( 東 南 アジア 友 好 協 力 条 約 )に 加 入 し,ASEAN と 平 和 と 繁 栄 に 向 けた 戦 略 的 パートナー 関 係 となった また 首 脳 会 議, 部 長 レベル 会 議 等 対 話 体 制 を 整 え,2009 年 には 駐 ASEAN 大 使 も 設 立 した 2011 年 には 南 海 各 方 面 行 動 宣 言 の 実 施 を 巡 る 指 導 方 針 で 合 意 した 5.2 長 吉 図 地 域 の 国 際 環 境 長 吉 図 地 域 における 国 際 環 境 は 北 東 アジアが 中 心 で, 特 に 中 日 韓 関 係 が 中 心 である 経 済 関 係 でみると, 中 国 は 改 革 以 来,30 年 間 日 韓 との 経 済 交 流 が 緊 密 になり, 現 在 日 韓 にとって 中 国 は 最 大 の 貿 易 相 手 国 と 投 資 対 象 国 となっている 国 際 分 業 でみると,すでに 日 韓 が 中 国 に 中 間 財 を 提 供 して 中 国 で 生 産 し, 欧 米 に 輸 出 する 国 際 分 業 が 形 成 されている そして 中 国 産 業 の 高 度 化 にともない, 電 気 機 器 と 一 般 機 器 等 領 域 では 従 来 の 垂 直 分 業 から 水 平 分 業 へと 変 化 が 現 れている 国 際 関 係 で 中 国 と 韓 国 は 1992 年 の 国 交 樹 立 以 来 の 友 好 合 作 関 係 から 合 作 伙 伴 関 係 46
東 アジアへの 視 点 を 経 て,2008 年 には 戦 略 合 作 伙 伴 関 係 ( 戦 略 的 パートナーシップ)に 発 展 した 中 日 関 係 は 1972 年 の 中 日 共 同 声 明,1978 年 の 中 日 和 平 友 好 条 約,1998 年 の 中 日 共 同 宣 言 を 経 て,2006 年 には 中 日 戦 略 互 恵 関 係 を 結 んだ 日 韓 では 1998 年 に 面 向 21 世 紀 日 韓 新 伙 伴 関 係 (21 世 紀 に 向 けた 新 たな 日 韓 パートナーシップ 共 同 宣 言 )を 発 表 した 2008 年 に は 第 1 回 中 日 韓 サミットが 開 催 され, 三 国 伙 伴 関 係 聯 合 声 明 (3 国 間 パートナーシップに 関 する 共 同 声 明 )が 発 表 された その 後,3 国 間 サミットは 毎 年 定 期 的 に 開 かれている 国 際 関 係 が 緊 密 になりつつある 中 で, 地 域 経 済 協 定 面 で 世 界 のほかの 地 域 に 比 べ 比 較 的 遅 れていた 北 東 アジアでも,2002 年 に 初 めて 中 日 韓 自 由 貿 易 区 構 想 が 提 起 された 2007 年 に 3 ヵ 国 は 連 合 研 究 委 員 会 を 成 立 し, 中 日 韓 自 由 貿 易 協 定 の 可 能 性 に 関 して 探 ると 同 時 に,3 ヵ 国 による 投 資 協 定 交 渉 が 始 まった 2009 年 の 第 2 回 中 日 韓 サミットでは, 自 由 貿 易 協 定 関 する 政 府 企 業 学 術 界 による 共 同 研 究 を 早 期 に 開 始 することで 一 致 した 2011 年 のサミットでは, 年 内 に FTA に 関 する 研 究 を 終 わらせ,2012 年 には 交 渉 を 開 始 することで 一 致 した 国 際 政 治 安 保 領 域 で 北 東 アジアの 国 際 関 係 は 複 雑 で 焦 眉 の 問 題 も 多 い まず,この 地 域 で は 朝 鮮 半 島 の 不 安 定 状 況 からみられるように, 冷 戦 構 造 が 残 存 している そして 日 米 同 盟, 韓 米 同 盟 など 米 国 との 軍 事 同 盟 が 北 東 アジア 安 全 保 障 に 対 する 影 響 力 が 強 い 次 に, 中 日 韓 の 間 では 歴 史 問 題, 領 土 問 題, 海 洋 権 益, 政 治 制 度 の 差 異 などの 影 響 で, 相 互 信 頼 関 係 はまだ 脆 弱 である 近 年 では 近 隣 諸 国 間 の 領 土 問 題 が 絶 えず, 特 に 2012 年 の 中 日 釣 魚 島 ( 日 本 では 尖 閣 諸 島 ) 問 題 は 中 日 の 経 済 外 交 等 ほとんどの 領 域 に 悪 影 響 を 及 ぼし, 今 まで 築 いた 協 力 関 係 が 消 える 恐 れもある このように 長 吉 図 地 域 を 取 り 巻 く 国 際 環 境 は 北 部 湾 地 域 より 厳 しく, 中 日 韓 自 由 貿 易 区 の 展 望 が 不 透 明 な 中 で,サブ 地 域 経 済 協 力 としての 図 們 江 地 域 開 発 ひいては 長 吉 図 地 域 の 国 際 協 力 は 先 が 遠 いといわざるを 得 ない 6. 終 わりに 長 吉 図 地 域 と 北 部 湾 地 域 に 関 する 地 域 計 画 は, 近 年 公 布 された 地 域 計 画 の 中 で 中 国 の 東 北 と 西 南 重 点 開 発 地 域 における 代 表 的 地 域 計 画 である これらの 地 域 に 関 する 地 域 計 画 の 実 施 は, 中 西 部 地 域 の 産 業 育 成 と 経 済 発 展 の 促 進 に,そして 辺 境 少 数 民 族 地 域 の 社 会 安 定 に 大 いに 期 待 できる また 中 国 の 周 辺 諸 国 との 国 際 協 力 に 関 しては,ASEAN と 北 東 アジアに 協 力 の 中 心 を 置 く 特 徴 をもっている しかし, 国 内 の 地 域 経 済 発 展 の 現 状 でわかるように 両 地 域 とも 沿 海 部 との 格 差 は 縮 まず, 沿 海 部 のような 集 積 による 経 済 発 展,そして 計 画 で 定 めた 目 標 を 達 成 するにはまだ 道 は 遠 い 地 域 経 済 発 展 を 取 り 巻 く 国 際 環 境 でみると, 長 吉 図 地 域 は 北 部 湾 地 域 より 厳 しい ACFTA の 発 効 により 北 部 湾 地 域 ばかりではなく,メコン 圏 開 発 も 含 めた 中 国 西 南 部 の 国 際 協 力 の 拡 大 は 見 込 まれるが, 図 們 江 地 域 では 中 日 韓 FTA が 難 航 する 中 で 全 体 的 な 地 域 協 力 体 制 も 形 成 し 難 く,さらに 北 朝 鮮 とロシア 極 東 地 域 など 未 開 発 の 地 域 を 開 拓 しなければいけない 大 きな 制 約 が ある また 中 央 あるいは 地 方 政 府 の 政 策 実 施 からみると, 北 部 湾 地 域 は 保 税 物 流, 金 融 面 等 で 長 吉 図 地 域 より 発 展 する 可 能 性 が 高 く, 政 策 実 施 の 方 向 と 地 域 経 済 発 展 の 目 標 が 同 じ 方 向 に 向 47
かっていると 考 えられる 中 国 空 間 経 済 構 造 がまだ 変 わっていない 現 状 で, 両 地 域 経 済 開 発 の 促 進 にあたって 国 際 経 済 協 力 も 重 要 であるが, 地 域 計 画 で 取 り 上 げた 産 業 の 育 成, 国 内 他 地 域 との 連 携 強 化 を 通 じて, 独 自 の 経 済 発 展 を 進 めるのが 最 も 大 事 だと 思 われる 今 まで 築 いた 産 業 蓄 積 を 有 効 に 利 用 する と 同 時 に,もう 一 方 では 自 らの 資 源 や 地 理 的 状 況 によって, 自 ら 強 みをもっている 分 野 に 特 化 し 高 付 加 価 値 製 品 を 生 産 し, 国 内 資 本 の 受 入 れに 十 分 に 注 力 することが 両 地 域 の 経 済 発 展 に とって, 避 けては 通 れない 課 題 であると 思 われる 注 ( 注 1) 労 働 集 約 型 産 業, 加 工 貿 易,エネルギー 鉱 産 物 開 発 加 工 業, 農 産 物 加 工 業, 設 備 製 造 業, 近 代 的 なサー ビス 業,ハイテク 産 業 7 つの 産 業 が 重 点 的 移 転 産 業 と 指 定 されている ( 注 2) 最 近 の 中 国 地 域 発 展 に 関 する 計 画 の 策 定 の 背 景 と 意 図,または 中 央 と 地 方 政 府 の 役 割 等 については, 張 (2012), 穆 (2012), 呉, 馬 (2013)を 参 照 されたい ( 注 3) 新 しい 国 家 戦 略 としての 主 体 功 能 区 は,その 開 発 形 式 では 優 化 開 発 地 域, 重 点 開 発 地 域, 制 限 開 発 地 域 と 禁 止 開 発 地 域 ; 開 発 内 容 では 都 市 化 地 域, 農 産 品 主 要 生 産 地 域 と 重 点 生 態 功 能 区 ;レベルでは 国 家 と 省 レベルに 分 けている ( 注 4) 北 部 湾 地 域 は 広 西 壮 族 自 治 区 の 南 寧 市, 北 海 市, 欽 州 市, 防 城 港 市 の 4 つの 行 政 区 を 包 括 し, 長 吉 図 地 域 は 吉 林 省 の 長 春 市, 吉 林 市 の 部 分 地 域 と 延 辺 朝 鮮 族 自 治 州 を 包 括 している ( 注 5) 南 寧 シンガポール 経 済 回 廊 とは, 南 寧 ハノイ(ベトナム) ビエンチャン(ラオス) プノンペン(カ ンボジア) バンコク(タイ) クアラルンプール(マレーシア) シンガポールと, 鉄 道 と 道 路 によっ て 形 成 された 通 路 経 済 回 廊 を 指 す ( 注 6) 両 廊 一 圏 中 での 両 廊 は, 昆 明 ラオカイ ハノイ ハイフォン ハロン 湾 と, 南 寧 ランソン ハノ イ ハイフォン ハロン 湾 という 2 つの 経 済 回 廊 を 指 す 一 圏 は 汎 北 部 湾 経 済 圏 を 指 す ( 注 7) 延 辺 日 報 2012 年 9 月 10 日 は, 延 辺 海 華 集 団 が 北 朝 鮮 の 清 津 港 の 第 3,4 号 埠 頭 の 30 年 の 使 用 権 を 取 得, 東 海 航 路 進 出 が 本 格 化 する 見 通 しだと 報 じた 2008 年 には 中 国 の 大 連 創 立 グループが 北 朝 鮮 の 羅 津 港 1 号 埠 頭 の 使 用 権 を 取 得,その 後 中 国 側 は 羅 津 港 4 ~ 6 埠 頭 の 建 設 権 と 50 年 の 使 用 権 を 取 得 し ている 中 国 の 借 港 出 海 戦 略 の 兆 しが 見 え 始 めたともいえるが,これが 長 吉 図 地 域 に 産 業 集 積 をも たらすかどうかはまだ 不 透 明 だと 筆 者 は 考 えている 参 考 文 献 呉 昊, 馬 琳 (2013) 中 国 が 大 量 の 地 域 発 展 規 画 を 策 定 する 要 因 と 実 施 上 の 問 題 点 ERINA REPORT NO.109, PP.15 ~ 22 張 可 雲 (2012) 中 国 が 頻 繁 に 地 域 発 展 企 画 を 策 定 する 背 景, 意 図 及 び 展 望 ERINA REPORT NO.103,PP.5 ~ 9 穆 尭 芋 (2012) 中 国 における 地 域 発 展 戦 略 の 実 態 と 課 題 中 国 図 們 江 地 域 協 力 開 発 企 画 要 綱 の 事 例 ERINA REPORT NO.103,PP.38 ~ 50 李 占 国, 孫 久 文 (2011) 我 国 産 業 区 域 転 移 滞 緩 的 空 間 経 済 学 解 釈 及 其 加 速 途 経 研 究 経 済 問 題 第 1 期,PP. 27 ~ 30 孫 晶, 許 崇 正 (2011) 城 市 集 聚 的 空 間 経 済 学 分 析 以 寧 鎮 揚 一 体 化 発 展 為 例 産 経 評 論 第 4 期,PP.153 ~ 159 48