Ⅱ 心の中を見つめてみましょう 差別を生み出すもの 古くからの慣習にとらわれていませんか ひのえうま 丙 午迷信 丙午生まれの女性は 男性を不幸にする と言われることがあります 丙午 は 60年周期でめぐってきますが 1906年 明治39年 と1966 昭和41年 の 出生率の様子を見てみましょう 丙午のことを信じている人はいないと思われ ますが 科学が進歩した近年でも かなりの人がこだわって出産をひかえてい ることがわかります 6
200 万 ( 人 ) 150 1906の 出 生 の 動 200 万 ( 人 ) 150 1966の 出 生 の 動 100 50 100 50 0 1901 1902 1903 1904 1905 1906 1907 1908 1909 1910 ( 年 ) 1906 年 ( 明 治 39 年 ) 家 意 識 憲 法 24 条 には 婚 姻 は 両 性 の 合 意 のみに 基 いて 成 立 し 夫 婦 が 同 等 の 権 利 を 有 することを 基 本 として 相 互 の 協 力 により 維 持 されなければならない と 定 められています 家 庭 内 での 男 女 平 等 について 平 成 21 年 の 人 権 に 関 する 県 民 意 識 調 査 報 告 書 では 実 際 に 男 女 平 等 であると 答 えているのは4 割 ほどです 0 1961 1962 1963 1964 1965 1966 1967 1968 1969 1970 ( 年 ) 男 性 に 不 利 益 0.7 1966 年 ( 昭 和 41 年 ) わからない5.3% ほぼ 実 現 32.0% やや 女 性 に 不 利 益 33.9% 女 性 に 不 利 益 17.7% 男 女 平 等 が 実 現 8.6% やや 男 性 に 不 利 益 1.7 これは 明 治 時 代 に 定 めた 民 法 の 1 家 という 集 団 が 社 会 の 基 本 単 位 2 家 は 血 統 主 義 3 戸 主 が 家 族 の 構 成 員 に 対 して 絶 大 な 権 限 をもつ などの 家 制 度 の 因 習 が なかなかわたしたちの 意 識 から 取 り 除 けないことを 示 しています 戦 後 民 法 の 改 正 があり 家 制 度 はなくなり 男 女 が 平 等 になりましたが 県 民 意 識 調 査 報 告 書 によると 家 庭 は 女 性 が 守 る という 人 が4 割 程 度 女 性 は 仕 事 を 持 つのはよいが 家 事 育 児 はきちんと という 人 は7 割 を 超 えることがわかります ろくよう 六 曜 六 曜 については 現 在 使 われている 暦 と 同 様 に 日 の 順 番 を 表 すものとして 考 えられたといわれていま す 旧 暦 で 各 月 1 日 は 固 定 されており 例 えば1 月 と 7 月 の1 日 は 先 勝 となっています そして 先 勝 の 次 からは 友 引 先 負 仏 滅 大 安 赤 口 先 勝 と 同 じ 順 序 で 繰 り 返 すようになっています この 六 曜 は もともと 日 の 吉 凶 を 示 すものではなく 発 祥 の 地 中 国 では 現 在 全 く 使 われていません 7
わたしたちの身のまわりには さまざまな 慣習があります 多くは 幸福を願い 不幸 をさけようとする意識から生まれ 引き継が れてきたものです この中には 丙午 家柄 血筋など みんな がしているから 昔からしているから などの 理由で こだわっているものがあります さら に このような慣習にしばられない人を見た とき 常識のない人 という見方をすることも あります このような見方が人権侵害へとつ ながっていく場合があるのです 一人ひとりが 昔からしているから という 理由だけで判断するのではなく その根拠な どを絶えず吟味しながら さまざまな人の行 動を認めることが 人権尊重の社会をつくる ことにつながっていくのではないでしょうか ててマルの一口コラム ててマルの一口コラム 家柄 戦国時代までさかのぼると わ たしたちの先祖はどれくらいの人 数になるのでしょうか わたした ちは 父母から生まれ 父母にも それぞれの父母がいます それぞ れの世代が25歳で子どもを生ん だとすると 先祖は26万人以上 になります このように考える と 一人ひとりが多くの人々とつ ながっていることがわかります その中で 自分の都合のよい部 分だけを抜き取り 家柄 として いることはないでしょうか 決めつけた見かたをしていませんか 最近の親はしつけが出来ない 8
わたしたちは 特 定 の 集 団 や 人 に 対 して 単 純 化 されたイメージを 持 ちがちです その 内 容 は 様 々です が 例 えば 都 会 の 人 は 洗 練 され ている といった 肯 定 的 なものから 都 会 の 人 は 冷 たい といった 否 定 的 なものまであります このような 固 定 化 されたイメージをステレオタイ プといいます ステレオタイプは 誤 りに 気 がついたり 多 様 な 角 度 から 事 実 を 知 ったりすることにより 修 正 されていきます しかしながら 修 正 されなかったステレオタイプは 偏 見 へとつながることがあります 偏 見 とは ある 集 団 に 所 属 して いる 人 が 単 にその 集 団 に 所 属 して いるからとか それゆえにまた そ の 集 団 の 持 っている 嫌 な 特 質 をもっ ていると 思 われるとかいう 理 由 だけ で その 人 に 対 して 向 けられる 嫌 悪 の 態 度 ないしは 敵 意 ある 態 度 であ る (G.W.オルポート 偏 見 の 心 理 より)といわれています そし て このような 偏 見 が 現 代 社 会 にお ける 差 別 を 温 存 している1つの 要 因 であると 指 摘 されているのです ててマルの 一 ある 小 学 校 に 一 人 の 女 子 児 童 が 入 学 して きました 入 学 後 この 児 童 は 教 室 の 中 でい じめを 受 けるようになりました 理 由 は 黒 いランドセルを 背 負 って 通 学 していたからで した もちろん 担 任 の 先 生 は 教 室 で 対 応 をし ましたが いじめはおさまりません とうと うその 児 童 は 転 校 することになったのでした この 女 子 児 童 が 黒 いランドセルで 通 学 して いたことには 理 由 がありました 女 子 児 童 に は3 歳 年 上 のお 兄 さんがいました しかし 小 学 校 入 学 時 にはすでに 小 児 がんに 冒 されて いたのです このお 兄 さんは 1 回 しか 自 分 の 黒 いランドセルを 背 負 って 登 校 することが できませんでした 女 子 児 童 の 入 学 に 際 し 家 族 は 新 しいラン ドセルを 買 うことをすすめましたが 女 子 児 童 は 大 好 きだったお 兄 ちゃんと 毎 日 一 緒 に 学 校 に 行 きたいから と 言 うことを 聞 きま せんでした その 強 い 希 望 に 周 囲 も 折 れ 見 守 ることにしたのですが この 女 子 児 童 の 願 いは 無 残 にもつぶされてしまったのでした ( 毎 日 新 聞 2002 年 6 月 28 日 付 大 阪 版 夕 刊 より 要 約 ) わたしたちの 思 い 込 みは 時 として 子 ども にすりこまれ このような 悲 しいできごとを 引 き 起 こすことがあります なお その 後 この 女 子 児 童 は 転 校 先 の 学 校 で 黒 いランドセルを 背 負 って 通 学 すること ができたということです 決 めつけた 見 方 はどこで わたしたちのこのような 決 めつけた 見 方 は 子 どもの 頃 から マスメディア や 家 庭 での 会 話 をとおして 知 らず 知 らずのうちつくりあげられていくと 言 わ れています 9
テレビのホームドラマなどにおい ては 女性が家事をし 男性はくつ ろいでいる姿などが多く見られま す テレビのコマーシャルなどにお いても 男性や女性の固定的な役割 に基づいたものがたくさん見られま す こうした場面を子どものころから 見ていると どのような意識が育つ でしょうか 結果として 一般的に思われているような固定的な役割を果たすことが問題 ではありません さまざまな決めつけが社会において行われることにより 女 性は すべきだ 高齢者は すべきではない などの決めつけた見方が 支配的となり 個人の自由な生き方ができなくなることが問題なのです 世間にとらわれていませんか 人のうわさ 10
みんながしているから など 事 実 を きちんと 確 認 せずに 周 囲 の 人 の 発 言 をうのみにしてしまったり 自 分 だ け 反 対 しても 仕 方 ない と 周 囲 の 人 の 行 動 に 流 されてしまったりすることは ないでしょうか このような 世 間 に 流 されたり 気 にしたりするわたした ちの 生 き 方 が 不 合 理 な 差 別 や 偏 見 を 温 存 助 長 している 一 因 だと 考 えられ ています わたしたちは 誰 もが 幸 せに 暮 ら したい と 人 間 として 当 たり 前 の 願 い を 持 っています 誰 もが 自 分 の 願 いをかなえることが でき 生 まれてきてよかった と 言 える ように 毎 日 の 生 活 を 見 直 していくこ とが 部 落 差 別 をはじめとするあらゆ る 差 別 をなくしていくことにつながる のです ててマルの 一 世 間 とは 人 々が 互 いにかかわりあっ て 生 活 している 場 ( 大 辞 林 )のことで 形 のあるものとないものがあり 同 窓 会 や 会 社 隣 近 所 年 賀 状 を 交 換 する 人 などをさ すと 言 われています 日 本 の 女 性 解 放 運 動 において 大 きな 役 割 を 果 たした 平 塚 らいてうは 心 中 未 遂 事 件 をおこし 出 身 の 女 子 大 学 の 同 窓 会 を 除 名 されました 良 妻 賢 母 を 送 り 出 す 大 学 の 同 窓 会 として 仲 間 に 入 れておくことができ ないと 判 断 したのです その 背 景 には 誰 か 一 人 が 犯 したことについては 全 員 が 共 同 責 任 を 負 うという 考 え 方 があり 同 窓 会 の 名 誉 は 彼 女 を 除 名 すれば 守 られるから でした その 後 らいてうは 有 名 になり 同 窓 会 としては 彼 女 を 会 員 にすることは 名 誉 なことだと 考 えるようになりました け れども 彼 女 の 除 名 が 取 り 消 されたのは 死 後 20 年 以 上 たってからでした 差 別 人 権 侵 害 行 動 偏 見 好 悪 の 感 情 思 い 込 み 固 定 観 念 ス テ レ オ タ イ プ?!? 11