目 次 1. 初 めて 腎 症 と 伝 えられた 方 へのメッセージ 2. そもそも 糖 尿 病 腎 症 とは 3. 糖 尿 病 腎 症 とは 腎 臓 の 働 き 糖 尿 病 腎 症 になると 生 活 習 慣 と 腎 臓 の 関 係 4. 糖 尿 病 腎 症 の 病 期 分 類 5. こんな 症 状

糖 尿 病 腎 症 と 上 手 につき 合 うために 監 修 : 安 西 慶 三 先 生 ( 佐 賀 大 学 医 学 部 肝 臓 糖 尿 病 内 分 泌 内 科 教 授 ) 2014 年 11 月 作 成

目 次 1. 初 めて 腎 症 と 伝 えられた 方 へのメッセージ 2. そもそも 糖 尿 病 腎 症 とは 3. 糖 尿 病 腎 症 とは 腎 臓 の 働 き 糖 尿 病 腎 症 になると 生 活 習 慣 と 腎 臓 の 関 係 4. 糖 尿 病 腎 症 の 病 期 分 類 5. こんな 症 状 ありませんか? 高 血 糖 ( 血 糖 値 が250mg/dL 以 上 )による 症 状 高 血 圧 による 症 状 減 塩 のポイント 減 量 のポイント 6. 生 活 を 振 り 返 りながらこの 先 の 人 生 を 考 えてみましょう 今 までの 生 活 を 振 り 返 ってみましょう この 先 どのような 人 生 を 歩 んでいきたいですか? (ライフステージに 応 じた 人 生 設 計 ) 7. 病 気 をもつ 自 分 のからだに 目 を 向 けてみましょう 自 分 のからだを 気 にしていますか? (セルフモニタリング) 自 分 の 人 生 を 楽 しむために 今 できることを 考 えましょう ( 病 気 との 生 活 における 目 標 設 定 ) 病 気 との 今 後 の 付 き 合 い 方 について 目 標 を 具 体 的 に 考 えてみて 下 さい 8. 透 析 とともにある 生 活 9. 医 療 費 について ( 身 障 者 手 帳 年 金 自 立 支 援 医 療 介 護 保 険 について ) 付 録 1. 血 糖 コントロール 目 標 付 録 2. 検 査 値 一 覧 3 6 8 8 8 9 10 11 11 12 13 13 14 14 14 16 16 17 18 20 22 22 23 2

1 初 めて 腎 症 と 伝 えられた 方 へのメッセージ 腎 臓 が 悪 いと 伝 えられたあなたへ 糖 尿 病 だと 思 っていたのに 腎 臓 が 悪 くなっています と 言 われてビックリ されているのではないでしょうか? しかし このパンフレットを 手 に 取 って 下 さった 方 の 多 くは 早 期 の 腎 症 の 方 だと 思 います 合 併 症 が 出 現 したことをきっ かけに この 先 どのように 病 気 とともに 歩 んでいくか 考 えてみましょう 腎 症 と 言 われてどのように 感 じましたか? 透 析 になるのではないか? 他 の 合 併 症 も 出 てくるのではないか? と 不 安 になった 方 や 今 までの 不 摂 生 のせいだ と 反 省 された 方 また 反 対 に まだ 早 期 だし 症 状 もないから 大 丈 夫 と 思 われた 方 など いろいろな 気 持 ちを 持 たれたと 思 います 医 療 者 や 他 の 患 者 さんとともに 自 分 が 感 じたことについて 話 してみてください 3

からだに 変 化 を 感 じている 場 所 はありませんか? 下 の 図 に 自 由 に 書 き 込 んでみましょう 例 ) 足 がむくむ 4

あなたの 大 切 にしてきたことを 教 えてください これまで 頑 張 ってきたこと 今 関 心 を 持 っていること 5

2 そもそも 糖 尿 病 とは? からだの 中 で 何 が 起 こっているのでしょうか? 血 糖 値 をもっと 下 げましょう と か 塩 分 をひかえましょう と 言 われたのでは ありませんか? では 正 常 な 場 合 はからだの 中 でどのようなことが 起 こっている のか みてみましょう 糖 尿 病 になると 食 事 や 運 動 が 大 切 と 言 われます では 食 事 をするとどのよ うなことがからだの 中 で 起 こるのでしょうか 糖 尿 病 とからだについて 考 えてみま しょう 糖 尿 病 になると 生 きるためのエネルギー 源 であるブドウ 糖 が 消 費 されにくく なり 血 管 の 中 は ブドウ 糖 の 濃 度 が 高 い 状 態 ( 高 血 糖 )になります では なぜ 高 血 糖 になると 困 るのでしょう 高 血 糖 が 続 くと 血 液 中 のブドウ 糖 が 血 管 細 小 血 管 障 害 の 壁 にはりつき 血 管 が つ まったり 傷 つ い た りします 血 管 が 障 害 さ れ る と 眼 や 腎 臓 や ブドウ 糖 神 経 など 血 管 が 集 中 している 臓 器 ではさまざ まな 問 題 が 起 こります( 糖 尿 病 の3 大 合 併 症 : 網 膜 症 神 経 障 害 腎 症 ) 凡 例 インスリン(Insulin) ブドウ 糖 分 子 を 細 胞 に 運 ぶのが 仕 事 細 胞 インスリンによって 運 ばれたブドウ 糖 を エネルギーとして 利 用 する 細 胞 のドアはインスリンが ないと 開 か ない ブドウ 糖 (グルコース glucose) 細 胞 内 でエネルギーとなる インスリンによって 細 胞 内 に 入 る 仕 分 け 人 ( 腎 臓 ) 腎 は 全 身 から 流 入 する 血 液 を 濾 過 再 吸 収 し 尿 を 生 成 する 高 血 糖 になると 細 胞 の 代 謝 異 常 が 引 き 起 こされる 6

正 常 な 場 合 ブドウ 糖 が 来 たぞ 運 ぼう おかげで 元 気 に 活 動 できるね! ブドウ 糖 は こちらです 血 管 エネルギー いりませんか? ほかの 所 へ 行 くね 正 常 な 血 糖 代 謝 食 事 によりインスリンがすみやかに 分 泌 され ブドウ 糖 は 細 胞 に 取 り 込 まれる 糖 尿 病 の 場 合 インスリン 分 泌 低 下 仲 間 が 少 なくて 運 べないよ 飢 餓 ブドウ 糖 来 ない~ 多 すぎて 仕 分 けできない~ おい 押 すなよ 尿 糖 多 尿 血 管 水 も 連 れて 行 かれた エネルギー いりませんか? 細 胞 に 届 かなかったね なんか 窮 屈 高 血 糖 高 浸 透 圧 脱 水 になって ますます 窮 屈 水 分 を 補 給 してもらおう インスリン 分 泌 能 が 低 下 した 状 態 多 飲 何 らかの 障 害 によりインスリンの 分 泌 が 低 下 し 細 胞 はブドウ 糖 を 取 り 込 めない 開 かない!!みんな~ 手 助 けしてくれ!! インスリン 抵 抗 性 多 勢 でブドウ 糖 を 届 けに 来 るね 多 すぎて 仕 分 けできない~ 尿 糖 多 尿 おい 押 すなよ 血 管 水 も 連 れて 行 かれた エネルギー いりませんか? なんか 窮 屈 高 血 糖 高 浸 透 圧 脱 水 になって ますます 窮 屈 水 分 を 補 給 してもらおう インスリン 抵 抗 性 が 発 現 した 状 態 多 飲 インスリンは 分 泌 されているが その 作 用 が 十 分 ではなく 細 胞 はブドウ 糖 を 取 り 込 めない 糖 尿 病 代 謝 栄 養 疾 患 ビジュアルブック P17~19より 改 変 詳 しくは 糖 尿 病 代 謝 栄 養 疾 患 ビジュアルブック でご 確 認 ください 7

3 糖 尿 病 腎 症 とは? 腎 臓 が 悪 くなると からだの 中 でどのような 変 化 が 起 こるのでしょうか? 正 常 な 腎 臓 の 働 き 体 内 の 老 廃 物 や 毒 素 の 排 泄 (おしっこを 作 る) 血 液 中 の 水 分 や 塩 分 のバランスを 一 定 に 保 つ 赤 血 球 をつくる 働 きを 助 けるホルモンの 分 泌 ( 貧 血 防 止 ) 血 圧 を 適 切 にコントロールする ビタミンDを 活 性 化 し 骨 を 丈 夫 にする 糖 尿 病 腎 症 になると 肝 腎 かなめ というように 腎 臓 はあなたのからだにとって とっても 大 切 な 働 きをしています 腎 臓 の 血 管 障 害 のため 血 液 中 の 老 廃 物 をろ 過 できなく な り 血 液 中 に 老 廃 物 が た まってしまいます 正 常 異 常 : 必 要 な 成 分 : 老 廃 物 老 廃 物 のみ ろ 過 される からだに 必 要 な 成 分 がろ 過 され たり 老 廃 物 が 体 内 に 残 ってし まう はじめは 自 覚 症 状 はありませんが 腎 臓 の 機 能 が 低 下 すると からだにいろ いろな 不 具 合 が 出 てきます 尿 毒 症 ( 全 身 のだるさ 食 欲 の 低 下 頭 痛 ) 足 のむくみ 貧 血 血 圧 が 上 がる 骨 がもろくなる 初 期 は 症 状 がないため 自 分 で 気 づくことはできません 尿 アルブミン 値 尿 蛋 白 値 GFR (egfr) ク レアチニンなどの 検 査 値 から 病 状 の 進 行 を 知 る こ と が で き ま す( P 1 0 2 3 参 照 ) 8

生 活 習 慣 と 腎 臓 の 関 係 肥 満 や 高 血 圧 喫 煙 があると 腎 臓 が 障 害 されます それだけではなく 心 臓 などの 大 きな 血 管 にも 影 響 を 及 ぼします 喫 煙 肥 満 高 血 圧 腎 臓 身 体 への 影 響 食 事 に 気 を つ け 血 圧 の 管 理 禁 煙 肥 満 を 改 善 す る こ と で 腎 臓 を 守 ることができます 食 事 療 法 肥 満 改 善 腎 臓 禁 煙 血 圧 管 理 服 薬 9

4 糖 尿 病 腎 症 の 病 期 分 類 病 期 尿 アルブミン 値 (m g /g C r) GFR(eGFR) あるいは (ml/ 分 /1.73m 2 ) 尿 蛋 白 値 (g /g C r) 自 覚 症 状 あなたの 病 期 は? 第 1 期 正 常 アルブミン 尿 ( 腎 症 前 期 ) (30 未 満 ) 30 以 上 自 覚 症 状 はありません 血 液 検 査 でも 特 に 異 常 は 指 摘 さ れません 第 2 期 微 量 アルブミン 尿 ( 早 期 腎 症 期 )(30~299) 顕 性 アルブミン 尿 第 3 期 (3 0 0 以 上 )あ る ( 顕 性 腎 症 期 ) いは 持 続 性 蛋 白 尿 (0.5 以 上 ) 30 以 上 30 以 上 自 覚 症 状 はありません 血 液 検 査 や 尿 検 査 で 異 常 を 指 摘 さ れることがあります 血 糖 値 血 圧 体 重 を 適 正 に 保 つ 事 で 腎 機 能 が 改 善 する 可 能 性 が あります 夜 間 尿 むくみ 疲 れやすさを 感 じることが あります 血 液 検 査 や 尿 検 査 で 腎 機 能 の 異 常 を 指 摘 されます 血 糖 コント ロ ール や 減 塩 血 圧 コント ロ ー ルのための 生 活 の 見 直 しが 必 要 になります 第 4 期 ( 腎 不 全 期 ) 問 わない 30 未 満 息 切 れ 食 欲 の 低 下 疲 れやすさ な ど の 尿 毒 症 と 呼 ばれる 症 状 が でてきます 第 5 期 ( 透 析 療 法 期 ) 透 析 療 法 中 全 身 がむくみ 食 欲 低 下 吐 き 気 手 足 のしびれなどの 尿 毒 症 症 状 が 強 くなり 日 常 生 活 を 送 ること が 難 しくなります 腎 機 能 を 補 うため 透 析 療 法 が 必 要 になります 10

5 こんな 症 状 ありませんか? 糖 尿 病 腎 症 を 悪 化 させる 高 血 糖 と 高 血 圧 による 症 状 を 紹 介 します まずは 高 血 糖 になるとどんな 症 状 がでるのか 見 てみましょう 高 血 糖 ( 血 糖 値 が250mg/dL 以 上 )に よ る 症 状 のどの 渇 き 高 血 糖 になると からだは 通 常 の 血 糖 値 まで 薄 め ようとします そのために 脳 から 水 分 を 摂 取 する ための 信 号 がでます 多 尿 のどが 渇 くと 多 量 の 水 分 を 取 ります 水 分 を 多 く とるために 尿 の 量 が 増 え 何 度 もトイレへ 行 きた くなります 倦 怠 感 高 血 糖 になると イ ン ス リ ン 不 足 やインスリンの 働 きが 悪 くなることによって からだが 活 動 するエ ネルギーとして 使 用 されるはずの 糖 分 が 細 胞 の 中 に 取 り 込 まれません そのために 食 事 をとって も 活 動 するのに 必 要 なエネルギー が 作 り 出 され ないために か ら だ が き つ く な り ま す 11

では これらの 症 状 があった 場 合 はどうしたらよいでしょうか? 糖 尿 病 の 治 療 の 基 本 である 食 事 運 動 くすりの 調 整 が 非 常 に 大 切 になります 食 事 食 事 の 量 とバランスに 注 意 します 血 糖 値 を 下 げようと 極 端 に 食 事 の 量 を 減 らしたりしないようにしましょう 運 動 日 常 の 生 活 の 中 でもこまめにからだを 動 かし 活 動 量 を 増 やしましょう 病 気 の 状 態 によっては 運 動 が 制 限 され る 場 合 もあります 運 動 を 始 める 前 に 主 治 医 の 先 生 に 相 談 しましょう く す り 血 糖 値 を 下 げるおくすりとして 内 服 薬 と 注 射 薬 があり ます からだの 状 態 に 応 じて 処 方 されます 自 分 に 処 方 されたおくすりの 効 果 を 知 り 医 師 の 指 示 通 りに 服 用 ま たは 注 射 をしましょう 高 血 圧 による 症 状 血 圧 が 高 くなると 腎 臓 へ 運 ばれ る 血 液 量 が 増 え 血 管 への 負 担 が 大 き くなり 腎 臓 の 機 能 を 低 下 させます さらに 腎 臓 の 機 能 が 低 下 すると 血 圧 を 適 正 に 保 つ 機 能 がうまくいか ず 血 圧 が 上 昇 してしまうという 悪 循 環 になってしまいます からだに 水 分 が たまる 腎 機 能 の 悪 化 尿 血 圧 があがる 腎 臓 への 負 担 が ふえる 急 に 血 圧 が 上 昇 すると 頭 痛 肩 こ り め ま い ふ ら つ き 耳 鳴 り 動 悸 吐 き 気 手 足 のしびれなどの 症 状 を 感 じることがありますが 高 い 状 態 に 慣 れてしまうと あま り 症 状 を 感 じないこともあります 血 圧 を 適 正 に 保 つためには 食 事 運 動 体 重 くすりの 服 用 禁 煙 アルコール 摂 取 量 が 重 要 となってきます 12

減 塩 塩 分 を と る と 血 液 中 の 塩 分 濃 度 が あ が り 体 内 の 水 分 が 血 液 中 に 流 れ 込 む た め 血 液 の 量 が 増 え る こ と で 血 圧 が 上 昇 し ま す さ ら に 増 え す ぎ た 塩 分 をからだの 外 に 出 すために 腎 臓 へも 負 担 をかけることになります また 塩 分 をとりすぎると 蛋 白 尿 も 増 えてしまうことがわかっています 運 動 有 酸 素 運 動 をすることで からだは 血 圧 を 調 整 しやすくなります また 血 糖 値 やコレステロール 値 も 改 善 します 減 量 体 重 が 多 い 人 は そ うでない 方 よりも 血 圧 が 高 くなることがわかって い ます 体 重 を 減 らすだけで 血 圧 が 下 がることもあります く す り 血 圧 を 下 げるくすりは 腎 臓 を 保 護 する 作 用 もあります 禁 煙 タバコのニコチンや 一 酸 化 炭 素 は 血 圧 を 上 昇 させ 血 流 を 悪 くします アルコール 過 度 の 飲 酒 は 避 けましょう 減 塩 のポイント だしを 利 用 する お 酢 やレモン わさび しそなどを 利 用 する 新 鮮 な 食 材 や 旬 の 食 材 を 利 用 する 温 かい 食 べ 物 は 温 めて 冷 たい 食 べ 物 はよく 冷 やして 食 べる 醤 油 や 味 噌 は 減 塩 タイプを 利 用 する ただし カリウムが 含 まれているものもあるので 注 意 する 外 食 は 塩 分 が 多 く 含 まれている 場 合 が 多 いので 量 を 少 なめに 食 べる または 前 後 の 食 事 で 調 整 する 塩 分 量 の 記 載 のあるお 惣 菜 を 選 択 する 減 量 のポイント 肥 満 になると 高 血 糖 や 高 血 圧 脂 質 異 常 症 の 原 因 となるだけでなく 腎 機 能 が 低 下 する 事 が 分 かっています 毎 日 体 重 測 定 をしましょう 体 重 をグラフにしてみると 体 重 の 変 化 が 分 かりやすくなります 日 常 生 活 の 中 での 活 動 量 を 増 やしましょう BMI( 肥 満 度 )を 意 識 してみましょう なぜ 腎 臓 が 悪 くなったら 塩 分 をひかえるのか 体 重 を 減 らさないといけない のか 血 糖 をコントロールしなければならないのか 理 解 できましたか? 13

6 生活を振り返りながらこの先の人生を考えてみましょう 今までの生活を振り返ってみましょう では ここで 今までの生活を振り返ってみましょう 生活を振り返るというと 食べ過ぎてたなぁ とか 運動出来ていなかったもんなぁ といったように反省を しがちです それも大切ですが ここでは 食事や運動について反省するだけではな く 今までどんな人生を歩んできたのかについて 振り返ってみて下さい 仕事を 一生懸命やってきた方もいるでしょうし 家族 のために家事に追われていた方も いるでしょう そのように人生を振り返ることで 自分が大切に思っていることが 明らかになってきます 病気とうまく付き合うには 自分が人生で何を大切にしてい るのかを自覚し 大切にしているものを考慮して 療養生活を組み立てることが長 続きするコツになります この先どのような人生を歩んでいきたいですか ライフステージに応じた人生設計 人生のプランを教えて下さい 図を参考に自分の道のりを描いてみましょう 20 30代 14 40 50代 60 80代

ある1型糖尿病患者さんの道のり 過去を振り返る ときのみ 図表に表せる 1型糖尿病 診断 初めての 入院 2度の入院 高校入学 低血糖頻発 10代 祖母の死 20代 さんの道のり 10代 20代 30代 40代 50代 60代 15

7 病 気 をもつ 自 分 のからだに 目 を 向 けてみましょう 自 分 のからだを 気 にしていますか?(セルフモニタリング) からだの 変 化 をうまくキャッチ 出 来 ていますか? 糖 尿 病 のような 慢 性 の 病 気 は 長 い 時 間 をかけてからだが 変 化 してきます そのため 長 い 期 間 で 変 化 してき たものにも 目 を 向 ける 必 要 があります また 日 常 生 活 で 感 じる 変 化 をうまく 捉 え ることも 重 要 です 例 えば 服 のサイズが 変 わったなぁ とか 前 は 歩 いていた 道 のりをバスで 行 くようになった とか 何 気 ない 生 活 上 の 変 化 が からだの 変 化 につながっていることがあります こ の 他 病 院 で 実 施 す る 検 査 デ ー タ も 把 握 し ておくと 良 いでしょう 毎 日 の 変 化 を 捉 える 方 法 として 体 重 測 定 血 圧 測 定 などがあります 毎 日 測 定 するのは 面 倒 だと 思 われる 場 合 は 数 日 おき 血 糖 自 己 測 定 の 測 定 でも 良 いので 実 施 してみましょう これらのデータは 毎 日 積 み 重 ねると 長 い 経 過 をみることが 可 能 になるので 生 活 習 慣 の 改 善 による 効 果 や 処 方 されている 薬 の 効 き 目 などを 把 握 することに 役 立 ちます 体 重 測 定 食 事 のコントロールがきちんとできているのかをチェックできます 急 に 体 重 が 増 加 したり 減 少 した 場 合 には 病 気 が 進 行 している 可 能 性 も 考 え られます 血 圧 測 定 血 液 量 の 増 加 や 血 管 の 硬 さ を チ ェ ッ ク し ま す 血 圧 が 高 く な る と 腎 臓 の 血 管 に 負 担 がかかり 腎 臓 の 機 能 が 低 下 します 血 糖 自 己 測 定 血 糖 のコントロールができているかをチェックできます 高 血 糖 が 続 く と 腎 臓 の 血 管 が 障 害 され 腎 臓 の 働 きが 弱 まります 16

自 分 の 人 生 を 楽 しむために 今 できることを 考 えましょう ( 病 気 との 生 活 における 目 標 設 定 ) ではここで 先 程 の 人 生 プランも 頭 に 入 れながら 病 気 の 管 理 に ついて 実 施 する こ と を 具 体 的 に 考 え て み ま し ょ う 慢 性 の 病 気 を も つ 患 者 さ ん は 日 々 多 く の こ と を 実 施 しなければ ならないと 思 います 次 のようなことが 患 者 さ ん が 実 施 す る (している) 事 柄 だと 言 われています 皆 さんはどうでしょう? 慢 性 の 病 気 をもつ 患 者 さんが 日 常 にしていること 病 気 の 悪 化 予 防 と 管 理 合 併 症 の 出 現 や 進 行 に 対 する 予 防 や 管 理 を 行 うなど 症 状 の 管 理 排 便 コントロール 血 圧 への 配 慮 浮 腫 を 軽 減 させるなど 自 己 管 理 行 動 の 実 践 と 継 続 薬 物 療 法 食 事 療 法 運 動 療 法 の 実 施 など 社 会 的 疎 外 の 予 防 病 気 の 管 理 や 症 状 が 社 会 生 活 に 悪 影 響 を 及 ぼすことがあるた め 糖 尿 病 ではないふりをするなど 病 気 による 生 活 の 変 化 への 適 応 ライフスタイルの 再 編 成 ( 食 事 の 時 間 を 変 える 仕 事 の 内 容 を 変 える など) 参 考 文 献 : 南 裕 子 監 訳 慢 性 疾 患 を 生 きる ケアとクオリティ ライフの 接 点 医 学 書 院 1987 17

病 気 との 今 後 の 付 き 合 い 方 について 目 標 を 具 体 的 に 考 えてみて 1 日 の 過 ごし 方 0 6 12 目 標 1 目 標 具 体 的 行 動 18

下 さい 18 24( 時 ) 目 標 2 目 標 3 19

8 透 析 とともにある 生 活 糖 尿 病 腎 症 が 第 5 期 まで 進 行 すると 腎 臓 の 機 能 を 代 替 する 治 療 が 必 要 にな ります 人 工 透 析 には 血 液 透 析 と 腹 膜 透 析 2つの 種 類 があります 腎 機 能 を 代 替 する 治 療 透 析 療 法 腎 臓 移 植 血 液 透 析 腹 膜 透 析 ❶ 血 液 透 析 ( あ る1 週 間 の 生 活 ) 週 3 回 通 院 して 血 液 をからだの 外 に 取 り 出 し からだにたまった 余 分 な 水 分 や 老 廃 物 を 器 械 で 取 り 除 き 血 液 を きれ い にします 透 析 医 療 機 関 に 通 って 行 う 治 療 法 で 1 回 の 治 療 時 間 は5 時 間 程 度 です 自 宅 で 器 械 を 使 って 行 う 血 液 透 析 も 少 しずつ 増 えてきています 月 火 水 木 金 土 日 AM 透 析 透 析 透 析 PM 家 事 や 仕 事 など 透 析 を 始 めても 仕 事 を 続 ける 事 はできますか? 透 析 をしながら 働 いている 患 者 さんは 全 国 にたくさんいます 一 般 の 就 業 者 の 方 と 同 じように 正 社 員 で 働 いている 人 や パートで 働 いている 人 もいます 血 液 透 析 を 受 けられる 方 は 透 析 のための 時 間 調 整 が 必 要 になります また 夜 間 透 析 の 選 択 などもあります 20

❷ 腹 膜 透 析 (ある1 日 の 生 活 ) 自 分 のからだの 中 の 腹 膜 を 利 用 して 血 液 をきれいにします 在 宅 で 行 う 治 療 法 です 寝 ている 間 に 器 械 を 使 って 行 う 方 法 (APD)と 日 中 4~ 8 時 間 ごとに 行 う(1 回 の 治 療 は30 分 程 度 ) 方 法 (CAPD)があります 通 院 は 月 に1~2 回 です 個 人 差 はありますが 透 析 導 入 後 も 残 っている 腎 機 能 をより 長 く 保 つことがで き 尿 が 出 なくなるのを 遅 らせることができます 透 析 液 交 換 [4 回 目 ] 2 3:0 0 2 2:0 0 器 械 のセット 食 事 就 寝 APD 患 者 さんの 一 日 ( 例 ) 日 中 は 比 較 的 自 由 APD での 治 療 18:0 0 透 析 液 交 換 [3 回 目 ] 7:0 0 取 り 外 し 家 事 や 仕 事 など CAPD 患 者 さんの 一 日 ( 例 ) 7:00 透 析 液 交 換 家 事 や 仕 事 など [1 回 目 ] 12:0 0 12:00 透 析 液 交 換 [2 回 目 ] 透 析 をはじめてからも 食 事 や 水 分 の 管 理 が 必 要 ですが 透 析 をしていても 旅 行 や 出 張 に 行 くこともできますし うまくつき 合 えば 充 実 した 生 活 を 送 ることができます ❸ 腎 移 植 腎 臓 の 機 能 を 代 替 する 治 療 には 人 工 透 析 のほかに 腎 移 植 があります 2つある 腎 臓 の1つを 提 供 してもらう 生 体 腎 移 植 と 亡 くなった 方 からの 提 供 を 受 ける 献 腎 移 植 があります 献 腎 移 植 を 受 けるには 社 団 法 人 日 本 臓 器 移 植 ネットワークへの 登 録 が 必 要 です 移 植 後 拒 絶 反 応 を 防 ぐために 免 疫 抑 制 剤 を 服 用 し 続 けます 21

9 医 療 費 について ( 身 障 者 手 帳 年 金 自 立 支 援 医 療 介 護 保 険 について) 40 歳 以 上 で 病 期 分 類 第 2 期 以 上 と 診 断 された 糖 尿 病 腎 症 のか た は 介 護 保 険 の 利 用 が 可 能 になります 介 護 保 険 を 利 用 することで 様 々 な 介 護 サービスを 受 けることができます 透 析 をしなければならなくなった 場 合 医 療 保 険 自 立 支 援 医 療 障 害 者 医 療 費 助 成 制 度 を 利 用 することができます また 身 体 障 害 者 手 帳 を 取 得 することで さまざまな 福 祉 制 度 が 利 用 できるよ うになります 詳 しくは 担 当 の 医 師 や 看 護 師 医 療 ソーシャルワーカー へご 相 談 ください 付 録 1 血 糖 コントロール 目 標 コントロール 目 標 値 注 4) 目 標 注 1) 血 糖 正 常 化 を 目 指 す 際 の 目 標 注 2) 合 併 症 予 防 のための 目 標 注 3) 治 療 強 化 が 困 難 な 際 の 目 標 HbA1c 6.0 未 満 7.0 未 満 8.0 未 満 治 療 目 標 は 年 齢 罹 病 期 間 臓 器 障 害 低 血 糖 の 危 険 性 サポート 体 制 などを 考 慮 して 個 別 に 設 定 する 注 1 ) 適 切 な 食 事 療 法 や 運 動 療 法 だけで 達 成 可 能 な 場 合 または 薬 物 療 法 中 でも 低 血 糖 などの 副 作 用 なく 達 成 可 能 な 場 合 の 目 標 とする 注 2) 合 併 症 予 防 の 観 点 からHbA1cの 目 標 値 を7% 未 満 とする 対 応 す る 血 糖 値 と し て は 空 腹 時 血 糖 値 130mg/dL 未 満 食 後 2 時 間 血 糖 値 180mg/dL 未 満 をおおよその 目 安 とする 注 3) 低 血 糖 などの 副 作 用 その 他 の 理 由 で 治 療 の 強 化 が 難 しい 場 合 の 目 標 とする 注 4)いずれも 成 人 に 対 しての 目 標 値 であり また 妊 娠 例 は 除 くものとする 日 本 糖 尿 病 学 会 編 : 糖 尿 病 治 療 ガイド2012-2013 血 糖 コントロール 目 標 改 訂 版, P25, 文 光 堂, 2013 22

付 録 2 検 査 値 一 覧 検 査 項 目 目 標 値 腎 臓 が 悪 いと コメント クレアチ 二 ン 男 1.2 mg/dl 以 下 女 1.0 mg/dl 以 下 筋 肉 の 代 謝 物 腎 機 能 が 低 下 すると 排 泄 されず 上 が ります egfr 60mL/min/1.73 以 上 腎 糸 球 体 の 濾 過 (ろか) 量 下 が る と 腎 機 能 の 低 下 を 意 味 します 尿 酸 窒 素 (BUN) 20 mg/dl 以 下 蛋 白 質 の 代 謝 物 腎 機 能 が 低 下 すると 排 泄 されずに 上 がります 食 事 が 大 きく 影 響 します 尿 酸 男 7.0 mg/dl 未 満 腎 機 能 が 低 下 すると 排 泄 されずに 上 がります 高 尿 (UA) 女 6.0 mg/dl 未 満 酸 は 腎 臓 を 傷 め 動 脈 硬 化 を 進 行 させます LDL( 悪 玉 ) HDL( 善 玉 ) 中 性 脂 肪 120 mg/dl 未 満 40 mg/dl 以 上 30~150 mg/dl 悪 玉 コレステロールを 正 常 に 保 つと 腎 機 能 の 低 下 を 予 防 できます ヘモグロビン (Hb) 10~12 g/dl 赤 血 球 の 色 素 全 身 に 酸 素 を 運 ぶ 腎 不 全 では 赤 血 球 を 作 る 機 能 が 低 下 して 貧 血 になります HbA1c 7% 未 満 過 去 1 ~ 2 ヵ 月 の 血 糖 を 反 映 貧 血 が あ る と 実 際 よ りも 低 めに 出 ることがあります グリコアルブ ミン(GA) 17% 未 満 過 去 2 週 間 ~1ヵ 月 の 血 糖 を 反 映 貧 血 の 影 響 が 少 ない 血 糖 空 腹 時 130 mg/dl 未 満 食 後 180 mg/dl 未 満 血 液 中 のブドウ 糖 尿 アルブミン 30m g /g C r 未 満 尿 に 排 泄 される 微 細 な 蛋 白 質 早 朝 の 腎 機 能 の 低 下 から 上 がります 早 期 発 見 治 療 の 目 安 になります 尿 蛋 白 (-) 尿 に 排 泄 される 蛋 白 質 (±)~(+)が 続 くと 腎 症 3 期 に 入 ります 尿 蛋 白 /クレアチニン 0.3g /g C r 未 満 1 回 の 検 尿 から1 日 の 尿 蛋 白 量 を 推 定 するための 検 査 です 血 圧 110~130mmHg /80mmHg 未 満 高 血 圧 は 動 脈 硬 化 を 進 行 させ 腎 機 能 を 低 下 させ ます 23

製 作 : 会 長 : 副 会 長 : 幹 事 : 広 報 : 顧 問 : 九 州 慢 性 看 護 実 践 研 究 会 ( 九 州 慢 性 疾 患 看 護 専 門 看 護 師 会 ) 中 尾 友 美 聖 マリア 学 院 大 学 小 江 奈 美 子 村 上 華 林 堂 病 院 藤 田 君 支 九 州 大 学 大 学 院 古 賀 明 美 佐 賀 大 学 医 学 部 看 護 学 科 横 堀 裕 美 三 菱 重 工 業 株 式 会 社 長 崎 造 船 所 病 院 岡 佳 子 飯 塚 病 院 永 渕 美 樹 佐 賀 大 学 医 学 部 附 属 病 院 島 歌 織 佐 賀 大 学 医 学 部 附 属 病 院 安 西 慶 三 佐 賀 大 学 医 学 部 肝 臓 糖 尿 病 内 分 泌 内 科 教 授 井 川 幸 子 長 崎 大 学 病 院 今 村 亜 由 美 独 立 行 政 法 人 国 立 病 院 機 構 大 牟 田 病 院 小 川 和 美 長 崎 大 学 病 院 武 末 磨 美 佐 賀 大 学 大 学 院 医 学 研 究 科 修 士 課 程 松 本 智 美 佐 賀 大 学 大 学 院 医 学 研 究 科 修 士 課 程 桃 坂 真 由 美 九 州 大 学 病 院 ( 会 計 ) (50 音 順 ) (トウ) JP.GNL.14.10.26(P14-493)