日 本 地 球 惑 星 科 学 連 合 2013 年 秋 の 公 開 講 演 会 地 球 温 暖 化 と 近 年 の 異 常 気 象 講 師 : 東 京 大 学 大 気 海 洋 研 究 所 渡 部 雅 浩 先 生 慶 應 義 塾 女 子 高 校 1 年 堀 江 美 音
目 次 はじめに 1 地 球 温 暖 化 は 本 当 に 進 んでいるのか (1) 地 球 は 温 暖 化 している エルニーニョ 現 象 とラニーニャ 現 象 (2) 地 球 温 暖 化 の 停 滞? Hiatus の 発 生 1 海 洋 熱 吸 収 の 活 発 化 について 2 気 候 モデルにおける Hiatus 3まとめ 1 2 今 年 の 異 常 気 象 は 温 暖 化 が 原 因 なのか 1 新 しい 視 点 イベントアトリビューション(EA) 2 異 常 気 象 の 変 化 の 性 質 3イベントアトリビューション 分 析 の 実 例 イベントアトリビューションについて 4Hiatus と 近 年 の 日 本 の 異 常 気 象 5まとめ2 感 想
はじめに 私 は 2013 年 10 月 に 東 京 大 学 理 学 部 小 柴 ホールで 行 われた 日 本 地 球 惑 星 科 学 連 合 2013 年 秋 の 公 開 講 演 会 に 参 加 してきました 自 分 は 今 まで 気 象 環 境 関 係 の 分 野 にあまり 深 く 興 味 を 持 ったことがなかったのです が 近 年 の 異 常 気 象 や 盛 んに 行 われている 地 球 温 暖 化 についての 報 道 を 通 して 自 然 環 境 や 気 象 の 現 象 も 私 たちの 身 近 にあって 生 きてゆくうえで 不 可 欠 な 要 素 であることを 再 認 識 し もっと 知 りたいと 思 うようになりました そこで 2013 年 11 月 2 日 に 東 京 大 学 本 郷 キャンパス 小 柴 ホールで 開 催 されたこの 講 演 会 に 参 加 することにしました 講 演 会 のテーマは 深 海 の 底 から 宇 宙 の 果 てまで~ 限 界 からこの 世 界 を 知 る~ で それに 基 づいたご 講 演 を 3 人 の 先 生 方 がして 下 さいました その 中 で 私 は 東 京 大 学 大 気 海 洋 研 究 所 准 教 授 の 渡 部 雅 浩 先 生 によるご 講 義 がとても 印 象 に 残 りました 先 生 は イベントアトリビューション(EA)という 新 しい 手 法 を 使 って 異 常 気 象 の 分 析 を なさっています 私 は この EA に 興 味 を 持 ち また 身 近 な 気 象 現 象 についてもより 深 く 学 びたいと 思 い ご 講 演 の 内 容 と それに 関 連 して 自 分 が 調 べたことをまとめたレポートを 作 成 しました
1. 地 球 温 暖 化 は 本 当 に 進 んでいるのか? 異 常 気 象 分 析 検 討 委 員 会 による 報 道 発 表 2013 年 猛 暑 はなぜ 起 こったか 7 月 から 8 月 にかけて 太 平 洋 高 気 圧 とチベット 高 気 圧 が 共 に 平 年 よりも 強 くなったこ と そして 海 面 水 温 がインドネシアやフィリピン 周 辺 で 平 年 よりも 高 かった( 積 雲 活 発 = 台 風 が 発 生 しやすい)ことでアジアモンスーンが 広 い 範 囲 で 平 年 と 比 べて 非 常 に 活 発 にな ったこと が 挙 げられる 2013 年 夏 は 日 本 での 猛 暑 日 が 記 録 上 2 番 目 に 多 かった また 日 本 だけでなく 北 半 球 全 体 で 非 常 に 暑 い 夏 だった (1), 地 球 は 温 暖 化 している 根 拠 1 1998 年 以 外 の 平 均 気 温 Top10 は 全 て 21 世 紀 になってからの 記 録 22000 年 以 降 は 1961-1990 年 それまでの 30 年 に 比 べ 平 均 して 約 0.5 気 温 が 高 い 1998 年 は 非 常 に 強 いエルニーニョ 現 象 が 起 こった 翌 年 だった エルニーニョ 現 象 とラニーニャ 現 象 エルニーニョ 現 象 そして ラニーニャ 現 象 これらは 気 象 現 象 の 中 でも 特 に よく 耳 にし また 私 たちが 住 む 日 本 の 天 候 にも 非 常 に 大 きな 影 響 を 及 ぼしています 私 は このレポートを 書 く 中 で 改 めてその 重 要 性 を 感 じ 詳 しく 知 りたいと 思 いまし た cf. 通 常 の 状 態 太 平 洋 の 熱 帯 域 では 東 風 ( 貿 易 風 )が 季 節 を 問 わず 吹 いているため 海 面 付 近 の 暖 かい 海 水 は 太 平 洋 の 西 側 に 吹 き 寄 せられている 故 に 西 部 (インドネシア 近 海 )では 海 面 下 数 百 メートルまでの 表 層 に 温 かい 海 水 が 蓄 積 している 一 方 東 部 ( 南 米 沖 )では 貿 易 風 と 地 球 の 自 転 の 影 響 で 海 の 深 いところから 冷 たい 海 水 が 海 面 近 くに 湧 き 上 がっている 以 上 の 理 由 により 海 面 水 温 は 太 平 洋 赤 道 域 の 西 部 で 高 く 東 部 で 低 くなっており 海 面 水 温 の 高 い 太 平 洋 西 部 では 海 面 からの 蒸 発 が 盛 んで 大 気 中 に 大 量 の 水 蒸 気 が 供 給 され るため 上 空 で 積 乱 雲 が 盛 んに 発 生 することとなる 1エルニーニョ 現 象 エルニーニョ 現 象 とは 太 平 洋 赤 道 域 の 日 付 変 更 線 付 近 から 南 米 のペルー 沿 岸 にかけて の 広 い 海 域 で 海 面 水 温 が 平 年 に 比 べて 高 くなり その 状 態 が1 年 程 度 続 く 現 象 のことであ
る エルニーニョ 現 象 が 発 生 すると 貿 易 風 が 平 常 時 よりも 弱 くなるため 太 平 洋 西 部 に 蓄 積 されていた 暖 かい 海 水 が 東 へ 広 がり また 太 平 洋 東 部 では 冷 たい 海 水 の 沸 き 上 がりが 弱 まっている 故 に 太 平 洋 赤 道 息 の 中 部 から 東 部 では 海 面 の 水 温 が 平 常 時 よりも 高 く なっており 積 乱 雲 が 発 生 しやすい 以 上 の 理 由 より エルニーニョ 現 象 が 発 生 している 時 は 積 乱 雲 が 盛 んに 発 生 する 海 域 が 平 常 時 よりも 東 に 移 る このため 日 本 付 近 では 夏 季 は 太 平 洋 高 気 圧 の 張 り 出 しが 弱 くなり 以 下 のような 傾 向 が 現 れることが 多 い 低 温 多 雨 寡 照 冬 季 は 西 高 東 低 の 気 圧 配 置 が 弱 まり 暖 冬 となる 2ラニーニャ 現 象 ラニーニャ 現 象 は 太 平 洋 赤 道 域 の 日 付 変 更 線 付 近 から 南 米 のペルー 沿 岸 にかけての 広 い 海 域 で 海 面 水 温 が 平 年 より 低 い 状 態 が 1 年 程 度 続 く 現 象 のことである ラニーニャ 現 象 が 発 生 すると 貿 易 風 が 平 常 時 よりも 強 くなるため 太 平 洋 西 部 に 暖 か い 海 水 がより 厚 く 蓄 積 し また 太 平 洋 東 部 では 冷 たい 水 の 吹 き 上 がりが 強 くなる 故 に 太 平 洋 赤 道 域 の 中 部 から 東 部 では 海 面 の 水 温 が 平 常 時 よりも 低 くなっている 以 上 の 理 由 より ラニーニャ 現 象 が 発 生 している 時 は 太 平 洋 西 部 インドネシア 近 海 の 海 上 で 積 乱 雲 がより 盛 んに 発 生 する このため 日 本 付 近 では 夏 季 は 太 平 洋 高 気 圧 が 北 に 張 り 出 しやすくなり 西 日 本 沖 縄 奄 美 では 南 から 暖 かく 湿 った 気 流 の 影 響 を 受 けやすくなる 故 に 以 下 のような 傾 向 が 現 れることが 多 い 北 日 本 を 中 心 に 気 温 が 高 く 日 照 時 間 が 多 くなる 西 日 本 の 太 平 洋 側 を 中 心 に 雨 が 多 くなる 冬 季 は 西 高 東 低 の 気 圧 配 置 が 強 まり 気 温 が 低 くなる (2), 地 球 温 暖 化 の 停 滞? hiatus の 発 生 A Sensitive Matter
人 為 起 源 の 温 室 効 果 ガス 増 加 に 対 して 気 候 は 思 ったほど 温 暖 化 していないか もしれない しかし これは 問 題 が 消 えたことを 意 味 するわけではない 2000 年 ごろから 地 球 全 体 の 地 表 気 温 は 10 年 間 で 0.03 の 昇 温 であり ほぼ 一 定 高 止 まりの 状 態 だと 言 える これは 基 本 的 に 温 暖 化 は 一 方 向 に 進 行 するものであるとする 従 来 の 予 測 とは 異 なって おり 以 下 のような 疑 問 点 が 挙 げられている 気 候 モデルは 最 近 10 年 の 全 休 平 均 気 温 変 化 を 上 手 く 再 現 できていない? IPCC( 気 候 変 動 に 関 する 政 府 間 パネル)の 温 暖 化 予 測 とは 違 い 現 実 には 温 暖 化 が 鈍 っ ていることを 意 味 するのか? 地 球 温 暖 化 の 停 滞 の 原 因 ( 仮 説 ) 成 層 圏 で 温 室 効 果 を 持 つ 水 蒸 気 が 減 少 していること 11 年 周 期 の 太 陽 活 動 が 不 活 発 な 時 期 だから 海 洋 の 熱 吸 収 が 活 発 化 していること 太 平 洋 十 年 規 模 変 動 (PDO)に 伴 う 自 然 の 変 動 1 海 洋 熱 吸 収 の 活 発 化 について 観 測 的 事 実 として 大 気 上 端 の 正 味 放 射 収 支 は 依 然 として 負 であり 大 気 - 地 表 面 系 を 加 熱 している このことは 温 室 効 果 が 弱 まっていないことを 示 している そして 海 面 水 位 は 上 昇 を 続 けている 海 面 水 位 は 主 に 海 水 の 熱 膨 張 による 生 じるので 海 面 が 温 暖 化 していなくとも 海 洋 全 体 は 水 温 が 上 がっていることを 意 味 する 実 際 海 面 よりも 遅 れて 暖 まる 水 深 700~2000m の 深 層 の 平 均 水 温 に 比 例 する 蓄 熱 量 が 増 加 している 2 気 候 モデルにおける hiatus 地 球 温 暖 化 の 停 滞 のことを hiatus( 英 語 で 隙 間 ひび 割 れ という 意 味 ) と 呼 ぶ 気 候 モデルにおいては 基 本 的 に 温 暖 化 は 一 方 向 に 進 行 していく ものであり ( 平 均 としては)hiatus を 上 手 く 表 現 できていない しかし 初 期 値 のアンサンブルを 調 べると 太 平 洋 十 年 規 模 変 動 自 然 の 変 動 として hiatus が 表 現 されているものもある なお 気 候 モデル 感 度 実 験 から 気 候 モデルが 熱 帯 太 平 洋 の 寒 冷 化 を 再 現 できていたら hiatus が 現 れることがわかっている
近 未 来 気 候 変 動 予 測 実 験 から 近 い 将 来 (2020 年 頃 まで)の 予 測 は 下 方 に 修 正 されるが hiatus はやがて 終 わり 温 暖 化 が 再 び 加 速 される と 考 えられている Hiatus 終 了 のタイミングはそれぞれのモデルにより 異 なる ちなみに 2011 年 の 数 値 を 初 期 値 として 組 み 込 んでシミュレーションすると 始 めは hiatus 早 い 時 期 にもとの 予 測 に 戻 っていく そして hiatus が 終 わるタイミングで 急 激 に 温 度 上 昇 ( 温 暖 化 )が 加 速 される 3まとめ 1 地 表 気 温 は 過 去 10~15 年 間 高 止 まりの 状 態 にあるが 地 球 温 暖 化 自 体 が 止 まったわけ ではない 地 表 の 温 暖 化 停 滞 期 は 太 平 洋 の 十 年 規 模 気 候 変 動 (PDO)に 同 期 しており やがては 温 暖 化 の 加 速 期 に 戻 ると 予 想 されている
2. 今 年 の 異 常 気 象 は 温 暖 化 が 原 因 なのか? 文 部 科 学 省 気 候 変 動 リスク 情 報 創 生 プログラム テーマ A(ⅰ) 直 面 する 気 候 変 動 に 関 する 要 因 の 特 定 とメカニズムの 解 明 1 新 しい 視 点 イベントアトリビューション(EA) イベントアトリビューションとは 直 近 の 過 去 を 対 象 とした 異 常 天 候 等 の 気 候 変 動 要 因 分 析 のことで 特 定 の 異 常 気 象 について 地 球 温 暖 化 の 影 響 を 定 量 的 に 評 価 し 温 暖 化 が 異 常 気 象 にどう 影 響 するのかのメカニズムを 解 明 する EA と 従 来 の 分 析 方 法 との 違 い 従 来 の 方 法 : タバコを 吸 う 日 本 人 男 性 は ガンの 発 生 確 率 が 何 パーセント 上 がるのか EA: タバコを 吸 うある 特 定 の 人 物 が 将 来 ガンを 発 症 するのかどうか いろいろな 要 因 が 個 別 の 要 素 として 入 っていて 難 しい 評 価 になる 2 異 常 気 象 の 変 化 の 性 質 *イベントアトリビューションの 手 法 のイメージ ある 異 常 気 象 が 発 生 したシチュエーションの そっくりさん を 何 百 人 も 用 意 して 大 きな 集 団 をつくり その 集 団 全 体 で 確 率 としてどのくらい 異 常 気 象 が 起 こっていたか を 調 べ る 異 常 気 象 の 変 化 は 確 率 的 であると 言 える 温 暖 化 海 水 温 の 上 昇 から 気 象 現 象 へと 繋 がるのは たまたまかもしれない 3イベントアトリビューション 分 析 の 実 例 Ex,2010 年 7-8 月 のロシア 猛 暑 を 分 析 すると まずは 観 測 された 地 表 の 気 温 を 気 候 モデルで 再 現 し 様 々な 要 素 を 考 慮 してたくさん のモデルを 作 り 計 算 をする ここで 求 めるのは その 時 にロシアで 猛 暑 が 起 こった 確 率 である そしてこの 集 団 を 確 率 的 にとらえ モデルから 推 計 される 確 率 の 分 布 図 を 作 成 * 異 常 気 象 の 直 接 的 な 原 因 は 海 の 表 面 の 水 温 であると 言 えるので 過 去 に 温 暖 化 によって どのくらい 温 度 が 上 がったのかを 計 算 することで もし 温 暖 化 が 起 こっていなかったら どうなっていたか ということがわかる
そして 温 暖 化 の 影 響 を 受 けている 実 際 の 状 況 と 温 暖 化 の 影 響 を 排 除 したシミュレー ションを 比 較 すると 確 率 的 に 見 て 猛 暑 がどのくらいおきやすくなっていたか という 面 に 違 いがあることがわかる 分 析 結 果 温 暖 化 の 影 響 を 受 けたシチュエーションだと 100 回 計 算 して 3 回 発 生 もし 温 暖 化 していなかったら 0.6 回 発 生 確 率 は 5 倍 になっている ほとんどは 自 然 の 変 動 であるが 確 率 的 には 温 暖 化 していなかったらほとんど 発 生 して いなかった ということがわかる イベントアトリビューションについて 私 が 渡 部 先 生 のご 講 演 の 内 容 の 中 で 最 も 印 象 に 残 っているのは イベントアトリビュー ション についてです 私 自 身 が 今 まで 抱 いてきた 気 象 現 象 の 研 究 のイメージとはかなり 異 なる 新 しい 研 究 方 法 であり とても 興 味 深 いものでした そこで この 項 では EA について その 発 達 過 程 や 実 施 例 問 題 点 将 来 性 などについ て 学 びたいと 思 います 1イベントアトリビューションが 誕 生 した 理 由 近 年 温 室 効 果 ガスの 排 出 を 始 めとする 人 間 の 活 動 が 地 球 全 体 の 気 候 変 動 に 影 響 を 及 ぼしていることがはっきりと 認 識 されるようになってきた そんな 中 で 地 球 温 暖 化 が 与 える 様 々な 地 域 の 気 候 や 顕 著 な 気 象 現 象 への 影 響 も 広 く 調 べられてはいるが,それらは 温 暖 化 の 進 んだ 今 世 紀 後 半 に 平 均 統 計 としてどうなるか といった 議 論 であり ある 年 に 起 きた 特 定 の 異 常 な 気 象 現 象 ( 熱 波 や 干 ばつなど)に 地 球 温 暖 化 がどこまで 関 わっているのか という 疑 問 に 直 接 答 えるものではない その 一 方 で 2010 年 の 猛 暑 や 2012 年 の 九 州 の 大 雨 などの 異 常 気 象 が 起 こり 研 究 者 以 外 の 一 般 社 会 から これは 地 球 温 暖 化 のせいなのか? という 問 いが 一 般 社 会 から 出 てく ることも 多 くなった. 故 に こうした 疑 問 に 対 して 科 学 的 根 拠 を 持 つ 回 答 を 提 供 することが 必 要 になってきて いる 2イベントアトリビューションとは 具 体 的 に 何 なのか?
気 候 システムに 対 する 外 力 は 太 陽 活 動 や 火 山 噴 火 などの 自 然 強 制 ( 太 陽 活 動 や 火 山 噴 火 など) そして 人 間 活 動 に 起 因 する 人 為 強 制 ( 大 気 中 の 温 室 効 果 気 体 やエアロゾルの 変 化 など の)に 分 けることができる 現 在 の 地 球 温 暖 化 研 究 の 中 では Detection and Attribution(D&A) 観 測 データから 気 候 の 変 動 を 同 定 しそれに 対 する 人 為 強 制 の 影 響 を 定 量 的 に 評 価 する 試 み が 一 定 の 割 合 を 占 めている 人 為 強 制 に 対 する 自 然 の 応 答 を 特 定 するための D&A は 以 下 の 用 途 に 使 われてきた 気 候 平 均 状 態 の 変 化 や 長 期 の 変 化 傾 向 について 全 球 平 均 値 や 帯 状 平 均 値 などの 時 空 間 スケールについて 一 方 の Event Attribution(EA)は ある 年 に 起 きた 特 定 の 異 常 天 候 や 極 端 現 象 などの 地 域 的 気 象 イベントに 関 して 人 間 活 動 の 影 響 を 評 価 する 試 みのことである 異 常 天 候 や 極 端 な 気 象 現 象 は 人 為 的 な 影 響 の 有 無 に 関 わらず 気 候 システムの 中 で 自 然 に 生 じ 得 るため ある 特 定 のイベントの 発 生 が 決 定 論 的 に 人 間 活 動 に 起 因 すると 判 断 する ことはできない しかしながら イベントの 発 生 確 率 は 外 力 の 変 化 によって 変 調 を 受 ける ことが 予 想 され 人 為 強 制 によってイベントの 発 生 確 率 がどの 程 度 変 化 したのか を 評 価 することは 可 能 である 2 イベントアトリビューションの 実 施 例 EA の 最 初 の 例 として ヨーロッパにおける 夏 の 平 均 気 温 がある 閾 値 を 超 えるリスクが, 人 間 活 動 によってどのように 変 化 しているのか を 見 積 ったことが 挙 げられる この 試 み では 大 気 海 洋 結 合 モデルを 用 いた 2 種 類 の 実 験 全 ての 外 力 で 強 制 された 20 世 紀 気 候 変 化 の 再 現 実 験 と 自 然 強 制 のみで 駆 動 された 自 然 強 制 実 験 を 比 較 し 2003 年 にヨーロ ッパで 観 測 された 熱 波 を 超 える 異 常 気 象 が 発 生 するリスクが 人 間 活 動 が 原 因 で 少 なくと も 2 倍 になっている という 推 定 を 発 表 した また その 後 同 様 の 実 験 が 観 測 された 海 面 水 温 海 氷 被 覆 ならびにその 時 の 外 力 を 与 えた 大 気 大 循 環 モデル(AGCM)で 行 われた この 時 の 自 然 強 制 実 験 では 人 為 起 源 の 温 室 効 果 気 体 を 除 いた 外 力 そして 温 室 効 果 気 体 の 影 響 を 取 り 除 いた 海 面 水 温 と 海 氷 被 覆 の 境 界 条 件 を AGCM に 与 えている 研 究 の 結 果 2000 以 上 のアンサンブルメンバから 作 成 された 確 率 密 度 関 数 を 比 較 し イ ギリスのウェールズで 2000 年 の 秋 に 発 生 した 洪 水 のリスクが 温 室 効 果 気 体 の 増 加 によっ て 増 大 した と 結 論 付 けられた 3D&A と EA の 違 い D&A では 気 候 モデルを 用 いたアンサンブル 実 験 で 人 間 活 動 に 起 因 する 変 化 と 自 然 変
動 に 起 因 する 変 化 の 切 り 分 けを 行 う 一 方 EA は D&A の 新 たな 展 開 であり その 手 法 は D&A に 倣 ったものではあるが あ る 特 定 の 年 に 発 生 し 気 象 現 象 に 注 目 する という 相 違 点 がある 故 に EA では 対 象 とする 顕 著 な 気 象 現 象 が 気 象 モデルの 中 である 程 度 再 現 されること が 前 提 となり 観 測 された 海 面 水 温 海 氷 被 覆 を 与 えた AGCM が 用 いられることが 多 い そして 顕 著 な 気 象 現 象 の 発 生 リスクを 評 価 するため 大 量 のアンサンブルメンバ 数 で 実 験 が 行 われることも 従 来 の D&A との 相 違 点 の 一 つである なお EA では 自 然 強 制 実 験 の 設 定 が 重 要 となっており その 分 析 結 果 が 事 前 に 推 定 し た 人 為 的 な 影 響 を 取 り 除 いた 海 面 水 温 や 海 氷 被 覆 に 大 きく 依 存 してしまう 場 合 がある 4EA の 問 題 点 改 善 策 EA においては 人 為 影 響 がない 場 合 の 設 定 は 仮 想 的 であるため, 自 然 強 制 実 験 の 結 果 の 妥 当 性 を 検 証 することができない そこで それによる 不 確 実 性 を 低 減 するため 以 下 のような 試 行 が 行 われている 複 数 のモデルを 用 いる 海 面 水 温 海 氷 被 覆 の 温 暖 化 成 分 を 異 なる 手 法 で 推 定 する また このような 研 究 は 統 計 的 な 議 論 に 偏 ってしまうことも 多 く 人 為 的 な 強 制 によっ て どのように 顕 著 な 気 象 現 象 の 発 生 確 率 が 変 化 したのか という 疑 問 に 十 分 には 答 え られていない 場 合 もある より 信 頼 性 の 高 い 気 候 評 価 情 報 を 生 み 出 すためには 次 のようなことが 必 要 だと 言 われ ている 数 値 モデルのさらなる 改 良 を 行 う イベントの 力 学 的 熱 力 学 的 な 要 因 分 析 を 基 礎 とした EA 研 究 を 行 う 過 去 に 生 じた 顕 著 な 気 象 現 象 を 分 析 し その 発 生 理 由 等 についての 科 学 的 根 拠 をもつ 回 答 を 提 供 することだけでなく 将 来 起 こりうる 自 然 災 害 のリスクに 対 してどのような 対 応 をとるべきか という 方 向 性 を 与 えられることなどが 期 待 されている 4Hiatus と 近 年 の 日 本 の 異 常 気 象 温 暖 化 の 停 滞 と 負 の PDO がセットになると 以 下 のような 傾 向 が 現 れる 西 大 西 洋 の 高 い 海 面 水 温 が 強 い 太 平 洋 高 気 圧 を 維 持 しやすい 中 緯 度 太 平 洋 の 高 い 海 面 水 温 が 暑 い 夏 による 水 温 上 昇 を 助 長 する PDO の 位 相 は やがて 逆 転 する( 時 期 を 正 確 に 予 測 するのは 難 しい) そうすると 地 球 全 体 では 気 温 は 上 がる 傾 向 となるが 日 本 付 近 では 今 年 の 猛 暑 のよう
なことは 起 こりにくい 5まとめ 2 異 常 気 象 の 第 一 の 要 因 は 自 然 のゆらぎ( 内 部 変 動 )であり 温 暖 化 による 気 象 変 化 は 異 常 気 象 の 発 生 確 率 を 増 やす 原 因 となる * 現 在 2013 年 の 猛 暑 など 個 別 の 異 常 気 象 を 対 象 とするイベントアトリビューションの 研 究 が 進 行 している
感 想 私 は 今 回 このレポートを 作 成 する 中 で 自 分 の 中 にそれまであった 環 境 問 題 や 異 常 気 象 に 対 する 漠 然 としたイメージが より 論 理 的 で 具 体 的 なものに 変 わっていくことを 実 感 しました 近 年 環 境 問 題 は 国 境 を 越 えた 地 球 全 体 の 課 題 として 広 く 認 識 され 私 たちは 様 々 なメディアを 通 してたくさんの 情 報 に 触 れることができます 私 は 小 学 生 の 頃 から 主 に 新 聞 の 記 事 を 読 むことによって 地 球 温 暖 化 環 境 問 題 異 常 気 象 というものにつ いて 知 ってきました 先 生 のご 講 義 の 動 画 を 何 度 も 見 て 自 分 でも 資 料 を 探 して 読 み 学 ぶ 中 で 新 しいアプ ローチ 方 法 であるイベントアトリビューションは 将 来 に 向 けて 様 々な 可 能 性 を 秘 めてい るのだと 改 めて 思 いました イベントアトリビューションの 研 究 は 一 つの 現 象 を 多 角 的 に 見 ることを 可 能 にし 様 々 な 異 常 気 象 の 解 析 に 対 応 できるような 情 報 の 蓄 積 にも 役 立 つのだ ということを 学 びまし た また この 方 法 は 様 々な 異 常 気 象 を 地 球 温 暖 化 しているからだ という 一 言 で 片 付 けてしまいがちだった 私 の 意 識 を 変 えるきっかけともなったように 思 います 温 暖 化 が 全 ての 異 常 気 象 を 引 き 起 こしている などという 単 純 な 思 考 から 脱 し 本 当 の 意 味 で 科 学 的 に 今 の 地 球 の 現 状 そして 今 や 私 たち 身 近 なものとなっている 異 常 気 象 について 考 え 知 る 貴 重 なステップとすることができたと 思 います
参 考 文 献 気 象 庁 アジアモンスーンと 日 本 の 気 候 https://www.jamstec.go.jp/frsgc/jp/report/2004/jan/yasunari.html 閲 覧 日 :2013 年 12 月 23 日 気 象 庁 日 本 の 天 候 に 影 響 をおよぼすメカニズム http://www.data.jma.go.jp/gmd/cpd/data/elnino/learning/faq/whatiselnino3.html 閲 覧 日 :2013 年 12 月 24 日 気 象 庁 エルニーニョ/ラニーニャ 現 象 とは http://www.data.jma.go.jp/gmd/cpd/data/elnino/learning/faq/whatiselnino.html 閲 覧 日 :2013 年 12 月 24 日 イベントアトリビューション http://www.metsoc.jp/tenki/pdf/2013/2013_05_0057.pdf 閲 覧 日 :2013 年 12 月 21 日 気 象 庁 報 道 発 表 資 料 2013 年 夏 の 日 本 の 極 端 な 天 候 について http://www.jma.go.jp/jma/press/1309/02d/extreme20130902.html 閲 覧 日 :2013 年 12 月 23 日 気 候 変 動 リスク 情 報 創 生 プログラム http://www.jamstec.go.jp/sousei/index.html 閲 覧 日 :2013 年 12 月 22 日