(57) 要 約 課 題 同 位 体 標 識 率 がatom% 以 下 の 低 濃 度 に 標 識 されたアミノ 酸 等 の 難 揮 発 性 物 質 の 同 位 体 濃 度 の 決 定 に 有 効 な 安 定 同 位 体 濃 度 の 分 析 方 法 を 提 供 する 解 決 手 段 低 濃 度 標 識 試 料 の 同 位 体 濃 度 を 分 析 する 際 に FAB 法 のマトリックス 溶 液 として 酸 水 溶 液 及 び アルカリ 金 属 イオン 含 有 水 溶 液 を 添 加 したマトリックス 溶 液 を 使 用 し このマトリックス 溶 液 と 試 料 とを 混 合 し て 質 量 分 析 を 行 い 得 られたマススペクトル 中 で 最 も 存 在 確 率 が 高 い 分 子 にアルカリ 金 属 が 付 加 したアルカリ 金 属 イオン 付 加 分 子 イオンの 第 1のピークと その 次 に 存 在 確 率 が 高 いアルカリ 金 属 イオン 付 加 分 子 イオンのピ ークであって かつ 前 記 第 1のピークの1 質 量 数 だけ 高 質 量 数 側 に 出 現 する 第 2のピークとの 強 度 比 から 安 定 同 位 体 濃 度 を 算 出 する 選 択 図 図 1
(2) 特 許 請 求 の 範 囲 請 求 項 1 同 位 体 標 識 率 がatom% 以 下 の 低 濃 度 標 識 試 料 を 質 量 分 析 することによって 試 料 中 の 安 定 同 位 体 濃 度 を 分 析 する 方 法 において 質 量 分 析 する 際 の 試 料 のイオン 化 方 法 とし てFAB 法 を 採 用 するとともに 該 FAB 法 で 使 用 するマトリックスを 溶 媒 に 溶 解 したマ トリックス 溶 液 に 酸 水 溶 液 とアルカリ 金 属 イオン 含 有 水 溶 液 とを 混 合 して 質 量 分 析 を 行 い 該 質 量 分 析 から 得 られたピークの 中 で 最 も 存 在 確 率 が 高 い 分 子 にアルカリ 金 属 が 付 加 したアルカリ 金 属 イオン 付 加 分 子 イオンの 第 1のピークと その 次 に 存 在 確 率 が 高 いアル カリ 金 属 イオン 付 加 分 子 イオンのピークであって かつ 前 記 第 1のピークの1 質 量 数 だ け 高 質 量 数 側 に 出 現 する 第 2のピークとの 強 度 比 から 安 定 同 位 体 濃 度 を 算 出 することを 特 徴 とする 安 定 同 位 体 濃 度 の 分 析 方 法 請 求 項 2 前 記 第 1のピークとの 強 度 比 を 求 める 前 記 第 2のピークは 標 識 が 18 Oのときには 第 1のピークの1 質 量 数 だけ 高 質 量 数 側 に 出 現 するピークに 代 えて 第 1のピークの2 質 量 数 だけ 高 質 量 数 側 に 出 現 するピークを 用 いることを 特 徴 とする 請 求 項 1 記 載 の 安 定 同 位 体 濃 度 の 分 析 方 法 請 求 項 3 前 記 マトリックスは グリセロール チオグリセロール 3-ニトロベンジルアルコー ル ジチオスレイトール ジエタノールアミン トリエタノールアミンの 少 なくともいず れか1 種 を 主 成 分 とするものであることを 特 徴 とする 請 求 項 1 又 は2 記 載 の 安 定 同 位 体 濃 度 の 分 析 方 法 請 求 項 4 前 記 溶 媒 は 純 水 メタノール エタノール ヘキサン ベンゼン N,N -ジメチ ルホルミアミドの 少 なくともいずれか1 種 を 主 成 分 とするものであることを 特 徴 とする 請 求 項 1 乃 至 3のいずれか1 項 記 載 の 安 定 同 位 体 濃 度 の 分 析 方 法 請 求 項 5 前 記 酸 水 溶 液 の 酸 は 塩 酸 硝 酸 硫 酸 の 少 なくともいずれか1 種 であることを 特 徴 と する 請 求 項 4 記 載 の 安 定 同 位 体 濃 度 の 分 析 方 法 請 求 項 6 前 記 アルカリ 金 属 含 有 水 溶 液 のアルカリ 金 属 は リチウム ナトリウム カリウムの 少 なくともいずれか1 種 であることを 特 徴 とする 請 求 項 1 乃 至 5のいずれか1 項 記 載 の 安 定 同 位 体 濃 度 の 分 析 方 法 発 明 の 詳 細 な 説 明 技 術 分 野 0001 本 発 明 は 安 定 同 位 体 濃 度 の 分 析 方 法 に 関 し 詳 しくは 安 定 同 位 体 均 一 標 識 アミノ 酸 等 の 難 揮 発 性 であり かつ 分 子 内 の 炭 素 水 素 窒 素 及 び 酸 素 の 内 一 種 類 の 元 素 が 1 3 C 2 H 15 N 及 び 17 O 又 は 18 Oにてatom% 以 下 の 低 濃 度 に 標 識 され その 標 識 された 元 素 の 同 位 体 濃 度 を 決 定 するための 安 定 同 位 体 濃 度 の 分 析 方 法 に 関 する 背 景 技 術 0002 現 在 化 合 物 中 の 特 定 の 元 素 の 同 位 体 標 識 率 を 求 めるには 質 量 分 析 や 赤 外 分 光 が 利 用 されている 具 体 的 には 質 量 分 析 では 前 処 理 した 試 料 あるいは 未 処 理 のままの 試 料 を GCMS(Gas Chromatography Mass Spectrometry) LCMS (Liquid Chromatography Mass Spectrometry) IRMS (Isotope Ratio Mass Spectrometry) 等 の 質 量 分 析 装 置 で 測 定 し 分 子 イオンピークと 質 量 数 +α(αは 互 いに 同 位 体 である2つの 核 種 の 質 量 数 の 差 )とのピーク 比 あるいは 特 定 のフラグメントイオンと 質 量 数 +αとのピーク 比 が 互 いに 同 位 体 である 核 種 の 存 在 比 に 等 しいことから 同 位 体 濃 度 ( 同 位 体 標 識 率 )が 求 め られる GCあるいはLCと 組 み 合 わせて 質 量 分 析 を 行 うことで 混 合 物 中 の 特 定 の 化 合 物 の 同 位 体 濃 度 を 求 めることもできる
(3) 0003 特 にIRMSの 場 合 は CO 2 N 2 O 2 SO 2といったガスサンプルに 特 化 した 質 量 分 析 を 行 い それぞれの 元 素 の 同 位 体 濃 度 を 求 める サンプルがCO 2 N 2 O 2 SO 2 以 外 の 場 合 は 先 ず CO 2 N 2 O 2 SO 2へのガス 化 が 必 要 である ガ ス 化 の 方 法 は IRMSに 接 続 された 燃 焼 器 での 燃 焼 によりCO 2 NO 2 O 2 SO 2を さらに 還 元 により NO 2からN 2を 得 る 燃 焼 法 や 脱 炭 酸 等 の 化 学 的 な 前 処 理 に よりCO 2 N 2 O 2 SO 2を 得 る 方 法 等 がある IRMSはGCとの 組 み 合 わせが 可 能 であり さらに 前 述 のガス 化 : 燃 焼 法 と 組 み 合 わせた 方 法 は GC-C-IRMS ( GC Combustion Isotope Ratio Mass Spectrometry)と 呼 ばれている 0004 赤 外 分 光 では CO 2 CH 4の 炭 素 同 位 体 の 分 析 についてのみ 既 存 技 術 が 存 在 する 例 えば CO 2の 場 合 12 CO 2 及 び 13 CO 2のそれぞれの 固 有 波 長 の 光 吸 収 の 強 度 比 を 測 定 することで 同 位 体 比 を 分 析 する( 例 えば 特 許 文 献 1 参 照 ) 0005 また 同 位 体 分 析 特 に 水 素 炭 素 窒 素 酸 素 等 の 軽 元 素 の 同 位 体 分 析 では 装 置 内 での 質 量 分 別 効 果 ( 装 置 内 での 質 量 分 別 効 果 を 特 に 質 量 差 別 効 果 という )が 大 きく 同 位 体 組 成 の 絶 対 値 を 決 定 するのが 難 しい このため 同 位 体 比 をある 標 準 物 質 からの 相 対 偏 差 で 議 論 する 場 合 が 多 い( 相 対 法 ) また 安 定 同 位 体 質 量 分 析 法 では 質 量 分 析 時 だ けでなく 試 料 処 理 及 び 分 析 元 素 の 抽 出 さらには 妨 害 元 素 の 除 去 の 際 に 分 析 元 素 が 同 位 体 分 別 を 受 ける したがって 未 知 試 料 と 標 準 物 質 とを 可 能 な 限 り 同 じ 条 件 下 で 分 析 する ことが 重 要 となる 未 知 試 料 と 同 位 体 標 準 との 分 析 条 件 をできるだけそろえるために 同 一 形 状 同 一 サイズの 試 料 導 入 系 が 二 対 備 わった 装 置 いわゆるデュアルインレット 方 式 が 用 いられ また 試 料 と 標 準 試 料 は 交 互 に 測 定 される( 例 えば 非 特 許 文 献 1 参 照 ) 軽 元 素 の 高 精 度 同 位 体 分 析 は このデュアルインレット 方 式 での 相 対 法 と 前 述 のIRMS との 組 み 合 わせで 行 うことが 多 く 特 に 試 料 がアミノ 酸 等 の 難 揮 発 性 物 質 の 場 合 には 前 処 理 として 燃 焼 法 を 併 用 したIRMSが 利 用 されている 0006 一 方 アミノ 酸 等 の 熱 分 解 性 難 揮 発 性 物 質 の 質 量 分 析 として イオン 化 方 法 にFAB 法 (Fast Atom Bombardment= 高 速 原 子 衝 撃 法 )を 使 用 する 方 法 が 知 られている FAB 法 では 試 料 をグリセロール 等 の 粘 性 のある 有 機 化 合 物 (マトリックス)と 混 合 し その 溶 液 にキセノンやアルゴン 等 の 原 子 を 衝 突 させてイオン 化 を 行 う マトリックスとしは グ リセロール チオグリセリン 3-ニトロベンジルアルコール 等 が 実 用 的 なマトリックス として 知 られており 試 料 の 性 質 に 合 わせてマトリックスを 選 定 することが 質 の 高 いマス スペクトルを 得 る 上 で 非 常 に 重 要 な 要 因 であると 言 える( 例 えば 非 特 許 文 献 2 参 照 ) 0007 しかし いずれのマトリックスも 非 常 に 粘 性 の 高 い 物 質 であり 試 料 が 固 体 試 料 の 場 合 それを 直 接 マトリックスと 混 合 しても 均 一 な 試 料 溶 液 を 得 ることは 困 難 であるため 通 常 試 料 とマトリックスとの 混 合 は 両 者 が 溶 解 する 溶 媒 を 介 して 行 われることが 多 い ( 以 下 試 料 及 びマトリックスが 溶 解 する 溶 媒 とマトリックスを 混 合 したものをマトリッ クス 溶 液 という ) また FAB 法 は 最 も 一 般 的 なイオン 化 方 法 であるEI 法 (Elect ron Ionization)と 比 較 するとイオン 化 の 機 構 がソフトであり 分 子 イオン( 正 確 にはプ ロトン 化 分 子 イオン:[M+H] + や 脱 プロトン 化 分 子 イオン:[M-H] - 以 下 同 様 )が 出 現 しやすいといった 特 徴 がある イオン 化 により 生 成 するイオンの 内 フラグメン トイオンは 分 子 内 の 特 定 の 部 位 に 関 する 情 報 のみを 与 える 一 方 分 子 イオンは 分 子 全 体 にわたる 情 報 を 与 えてくれる つまり 分 子 イオンでは 分 子 内 のどの 部 分 の 元 素 を 特 定 の 同 位 体 に 標 識 しても その 情 報 が 反 映 される このためFAB 法 は 同 位 体 標 識 率 が 不 明 な 物 質 に 対 し その 同 位 体 標 識 率 を 求 めるための 手 段 としては 汎 用 性 があり 優 れた 方 法 であるといえる 0008
(4) また FAB 法 では マトリックス 溶 液 中 にNa + やK + といったアルカリ 金 属 のイオ ンが 存 在 すると 分 子 イオンだけでなく アルカリ 金 属 イオンが 付 加 したナトリウムイオ ン 付 加 分 子 イオン:[M+Na] + やカリウムイオン 付 加 分 子 イオン:[M+K] + が 出 現 する( 試 料 の 分 子 量 +23や+の 質 量 数 にピークが 出 現 する )ことが 知 られてい る 0009 このように アミノ 酸 等 の 難 揮 発 性 物 質 の 同 位 体 分 析 では 燃 焼 法 を 併 用 したIRMS が 用 いられることが 一 般 的 ではあるものの IRMSでは 以 下 のような 問 題 点 も 存 在 し ていた 00 (1) 質 量 分 析 の 前 段 に 燃 焼 や 還 元 装 置 を 組 み 込 むために 装 置 が 複 雑 化 する 0011 (2) 最 終 的 に 酸 素 ガス 窒 素 ガス 及 び 炭 酸 ガス 等 の 環 境 大 気 中 に 存 在 する 物 質 に 変 換 して 質 量 分 析 を 行 うため 環 境 大 気 からの 汚 染 による 分 析 誤 差 を 生 じる 可 能 性 が 高 い 特 に 環 境 大 気 中 では 極 めて 僅 かしか 存 在 しない 13 C 15 N 17 O 及 び 18 Oにて 同 位 体 標 識 された 試 料 の 測 定 においては この 汚 染 による 悪 影 響 が 顕 著 である 0012 (3) 試 料 中 に 化 学 不 純 物 が 存 在 すると 前 処 理 として 発 生 させるCO 2 SO 2 O 2 及 びN 2は 試 料 と 化 学 不 純 物 とを 合 わせたものに 由 来 するものとなり その 結 果 正 確 な 目 的 物 のみの 同 位 体 比 を 反 映 しづらい 0013 (4)CO 2 N 2 O 2 SO 2に 特 化 した 質 量 分 析 であるため 水 素 の 同 位 体 濃 度 の 測 定 ができない 0014 また 高 精 度 な 軽 元 素 同 位 体 分 析 においては 質 量 差 別 効 果 の 影 響 を 除 くため 標 準 物 質 と 試 料 との 相 対 比 較 法 が 実 施 されているものの これにおいても 以 下 のような 問 題 がある 0015 (5) 同 位 体 存 在 比 が 略 天 然 存 在 比 と 等 しい 試 料 に 対 する 標 準 物 質 は 国 際 的 にも 整 備 さ れてはいるものの 同 位 体 濃 度 が 天 然 存 在 比 から 乖 離 した 試 料 に 対 する 標 準 物 質 は 国 際 的 にも 整 備 されておらず 入 手 することができない 0016 さらに 相 対 法 で 利 用 されているデュアルインレット 方 式 にも 同 位 体 濃 度 が 天 然 存 在 比 から 乖 離 した 試 料 に 対 する 標 準 物 質 は 国 際 的 にも 整 備 されていない 現 状 を 踏 まえると 以 下 のような 問 題 がある 0017 (6) 標 準 物 質 と 試 料 との 同 位 体 組 成 が 僅 かしか 異 ならない 場 合 は 高 精 度 の 同 位 体 分 析 において 非 常 に 優 れた 方 式 であるものの 標 準 物 質 と 試 料 との 同 位 体 組 成 が 乖 離 した 場 合 には 装 置 の 共 用 する 部 分 ( 質 量 分 析 にデュアルインレット 方 式 を 採 用 する 場 合 試 料 導 入 系 は 標 準 物 質 と 試 料 とでそれぞれ 独 立 しているものの イオン 源 以 降 の 部 分 は 共 用 とな る )へのメモリー 効 果 (イオン 源 以 降 への 他 方 の 残 留 )により 高 精 度 な 同 位 体 分 析 がで きない 0018 そして 上 記 の 問 題 を 解 決 する 可 能 性 を 有 するFABMSにおいても (7) 分 子 イオンピークは 出 現 するものの 試 料 及 びマトリックス 中 の 微 量 不 純 物 装 置 由 来 のノイズピーク 等 が 多 く( 前 記 非 特 許 文 献 2 参 照 ) 互 いに 同 位 体 である 核 種 の 濃 度 が 同 等 でなく 一 方 のピークが 他 方 のピークより 非 常 に 小 さなケースにおいては そのピ ークが 前 述 のノイズピークに 埋 もれてしまうため 高 精 度 な 同 位 体 濃 度 の 決 定 に 要 求 され る 質 の 高 い つまりは 目 的 とする 分 子 イオンピークのみの 強 度 が 非 常 に 大 きく 他 の 不 要 なピークが 極 力 抑 制 されたマススペクトルを 得 ることが 困 難 であるという 問 題 があった
(5) 0019 さらに 分 子 イオンピークの 強 度 のみを 増 大 させ 他 の 不 要 なピークが 極 力 抑 制 された マススペクトルを 得 るための 手 段 として 新 規 なマトリックスを 用 いてFABMSを 測 定 する 方 法 も 提 案 されている( 例 えば 特 許 文 献 2 参 照 ) ただし この 方 法 を 利 用 する と 分 子 イオンピークの 増 大 化 は 見 られるものの (8)そのピークより 高 精 度 に 同 位 体 濃 度 を 算 出 することに 耐 えうるまでの 効 果 は 得 られ てはいない 00 最 後 に 上 記 のFABMS 測 定 において マトリックスの 種 類 濃 度 やマトリックスへ の 添 加 剤 を 適 切 に 選 定 することで FABMS 測 定 において 得 られる 分 子 イオンピークの みの 強 度 の 増 大 化 を 図 り そのピークから 高 精 度 な 同 位 体 濃 度 の 算 出 を 可 能 とする 方 法 も 提 案 されている( 例 えば 特 許 文 献 3 参 照 ) 0021 ただし この 方 法 は 一 種 類 の 元 素 が 13 C 2 H 15 N 及 び 17 O 又 は 18 Oにて 高 濃 度 に 標 識 された 化 合 物 に 対 する 方 法 つまりは 分 子 イオンピークの 中 で 最 も 強 度 の 強 いピーク(メインピーク)とその 次 に 強 度 の 強 いピークであるメインピークより1MA SSだけ 低 質 量 数 のピークの 強 度 比 を 使 って 同 位 体 濃 度 を 算 出 する 方 法 である 0022 一 方 一 種 類 の 元 素 が 13 C 2 H 15 N 及 び 17 O 又 は 18 Oにてatom% 以 下 の 低 濃 度 に 標 識 された 化 合 物 では 2 番 目 に 強 度 が 強 いピークは 最 も 強 度 が 強 いピ ークの1MASS( 18 O 標 識 では2MASS)だけ 高 質 量 数 のピークとなり これらの 強 度 比 を 使 って 同 位 体 濃 度 を 計 算 することになる したがって (9)メインピークの 高 質 量 数 側 ( 特 に1MASS 又 は2MASSだけ 高 質 量 数 側 )に 不 要 なピークが 出 現 しても 一 種 類 の 元 素 が 13 C 2 H 15 N 及 び 17 O 又 は 18 Oに て 高 濃 度 に 標 識 された 化 合 物 の 分 析 では 影 響 を 受 けないのに 対 し 一 種 類 の 元 素 が 13 C 2 H 15 N 及 び 17 O 又 は 18 Oにてatom% 以 下 の 低 濃 度 に 標 識 された 化 合 物 の 分 析 では 同 位 体 分 析 の 精 度 への 影 響 が 大 きく 高 精 度 な 分 析 の 妨 げとなっていた 0023 以 上 のようにアミノ 酸 等 の 難 揮 発 性 物 質 であり かつ その 同 位 体 組 成 が 天 然 存 在 比 か ら 乖 離 し しかも その 濃 度 がatom% 以 下 である 物 質 に 対 しては その 同 位 体 濃 度 を 正 確 に 求 めるにあたって 数 々の 問 題 があり これまでは その 前 駆 体 中 間 体 あるい は 原 料 の 分 析 を 行 い これらの 同 位 体 濃 度 をもって アミノ 酸 等 の 同 位 体 濃 度 とすること が しばしば 行 われているのが 現 状 であった 特 許 文 献 1 特 開 05-816 号 公 報 特 許 文 献 2 特 開 平 9-113485 号 公 報 特 許 文 献 3 特 願 06-316545 号 公 報 非 特 許 文 献 1 平 田 同 位 体 比 を 測 るための 分 析 法 ぶんせき 02 年 第 4 号 1 52~160 頁 非 特 許 文 献 2 YOKUDEL-FAB-Matrix[FAB 測 定 用 マトリックス] ~FAB 測 定 のノウハウ 日 本 電 子 データム 株 式 会 社 04 年 7 月 1 日 ( 第 2 版 ) 発 明 の 開 示 発 明 が 解 決 しようとする 課 題 0024 そこで 本 発 明 者 は 多 くの 問 題 を 抱 えるIRMSを 使 用 することなく また 標 準 物 質 との 比 較 分 析 も 実 施 することなく 難 揮 発 性 を 有 する 試 料 を 質 量 分 析 する 際 のイオン 化 方 法 としてFAB 法 を 採 用 したFABMSによって 安 定 同 位 体 濃 度 の 分 析 を 行 うにあたり 試 料 中 の 目 的 物 由 来 であり かつ 同 位 体 濃 度 の 計 算 に 必 要 なピークのみを 格 段 に 増 大 さ せ かつ 不 要 ピークの 出 現 を 極 力 抑 制 することで 得 られるマススペクトルの 質 を 向 上 させ 高 精 度 な 同 位 体 濃 度 の 決 定 に 有 効 なものとすることが 低 濃 度 に 標 識 されたアミノ
(6) 酸 等 の 難 揮 発 性 物 質 の 同 位 体 濃 度 の 決 定 に 非 常 に 有 効 であることを 見 出 し 本 発 明 を 完 成 するに 至 った 課 題 を 解 決 するための 手 段 0025 すなわち 本 発 明 の 安 定 同 位 体 濃 度 の 分 析 方 法 は 同 位 体 標 識 率 がatom% 以 下 の 低 濃 度 標 識 試 料 を 質 量 分 析 することによって 試 料 中 の 安 定 同 位 体 濃 度 を 分 析 する 方 法 に おいて 質 量 分 析 する 際 の 試 料 のイオン 化 方 法 としてFAB 法 を 採 用 するとともに 該 F AB 法 で 使 用 するマトリックスを 溶 媒 に 溶 解 したマトリックス 溶 液 に 酸 水 溶 液 とアルカリ 金 属 イオン 含 有 水 溶 液 とを 混 合 して 質 量 分 析 を 行 い 該 質 量 分 析 から 得 られたピークの 中 で 最 も 存 在 確 率 が 高 い 分 子 にアルカリ 金 属 が 付 加 したアルカリ 金 属 イオン 付 加 分 子 イオ ンの 第 1のピークと その 次 に 存 在 確 率 が 高 いアルカリ 金 属 イオン 付 加 分 子 イオンのピー クであって かつ 前 記 第 1のピークの1 質 量 数 (1MASS)だけ 高 質 量 数 側 に 出 現 す る 第 2のピークとの 強 度 比 から 安 定 同 位 体 濃 度 を 算 出 することを 特 徴 とするものであって 標 識 が 18 Oのときには 第 1のピークの1 質 量 数 だけ 高 質 量 数 側 に 出 現 するピークに 代 えて 第 1のピークの2 質 量 数 (2MASS)だけ 高 質 量 数 側 に 出 現 するピークを 用 いる ことを 特 徴 としている 0026 本 発 明 の 安 定 同 位 体 濃 度 の 分 析 方 法 において 前 記 マトリックスは グリセロール チ オグリセロール 3-ニトロベンジルアルコール ジチオスレイトール ジエタノールア ミン トリエタノールアミンの 少 なくともいずれか1 種 を 主 成 分 とするものを 使 用 するこ とが 好 ましく 前 記 溶 媒 は 純 水 メタノール エタノール ヘキサン ベンゼン N, N -ジメチルホルミアミドの 少 なくともいずれか1 種 を 主 成 分 とするものを 使 用 するこ とが 好 ましい さらに 前 記 酸 水 溶 液 は 塩 酸 硝 酸 硫 酸 の 少 なくともいずれか1 種 の 水 溶 液 を 使 用 することが 好 ましく 前 記 アルカリ 金 属 含 有 水 溶 液 のアルカリ 金 属 は リチ ウム ナトリウム カリウムの 少 なくともいずれか1 種 であることが 好 ましい 0027 特 に 前 記 マトリックス 溶 液 は5~ 体 積 %のグリセロール 水 溶 液 を 使 用 することが 好 ましい マトリックス 溶 液 に 対 する 酸 水 溶 液 の 混 合 量 は 酸 水 溶 液 が1Nの 塩 酸 水 溶 液 の 場 合 体 積 比 でマトリックス 溶 液 の6に 対 して 塩 酸 水 溶 液 が0.5~2.5の 範 囲 に 設 定 することが 好 ましい また マトリックス 溶 液 に 対 するアルカリ 金 属 イオン 含 有 水 溶 液 の 混 合 量 は アルカリ 金 属 イオン 含 有 水 溶 液 が1Nの 塩 化 ナトリウム 水 溶 液 の 場 合 体 積 比 でマトリックス 溶 液 の6に 対 して 塩 化 ナトリウム 水 溶 液 を0.5~2.5の 範 囲 に 設 定 することが 好 ましい 発 明 の 効 果 0028 本 発 明 の 安 定 同 位 体 濃 度 の 分 析 方 法 によれば 燃 焼 装 置 や 還 元 装 置 を 質 量 分 析 計 の 前 段 に 組 み 込 む 必 要 がなく 装 置 の 簡 略 化 を 図 ることができる また 標 識 アミノ 酸 等 を 酸 素 窒 素 炭 酸 ガスへ 変 換 しないので これらが 環 境 大 気 から 混 入 することによる 分 析 誤 差 が 生 じる 可 能 性 もない さらに 試 料 中 に 化 学 不 純 物 が 存 在 していても 質 量 分 離 によっ て 化 学 不 純 物 と 試 料 ( 目 的 物 )との 分 離 が 可 能 であるため 化 学 不 純 物 の 影 響 を 受 けるこ ともない 加 えて 分 子 にプロトンやナトリウムイオン 等 のアルカリ 金 属 イオンを 付 加 し ただけの 分 子 情 報 を 含 むプロトン 付 加 分 子 イオンピークやアルカリ 金 属 イオン 付 加 分 子 イ オンピークを 用 いた 同 位 体 濃 度 の 決 定 であるため 2 H 濃 度 の 情 報 を 得 ることができ 水 素 の 同 位 体 分 析 も 可 能 である 0029 しかも サンプルのみの 測 定 で 濃 度 を 算 出 できるので デュアルインレット 方 式 のよう なメモリー 効 果 による 分 析 精 度 の 低 下 のおそれもない 加 えて 一 方 のピークが 他 方 のピ ークより 非 常 に 小 さなケースであっても 試 料 及 びマトリックス 中 の 不 純 物 装 置 由 来 の ノイズピーク 等 に 小 さなピークが 埋 もれてしまうことがなく 高 精 度 な 同 位 体 濃 度 の 決 定 に 十 分 に 利 用 可 能 なマススペクトルの 取 得 が 可 能 である
(7) 00 さらに FABMS 測 定 において アルカリ 金 属 イオンを 添 加 する 場 合 においては ア ルカリ 金 属 イオンが 分 子 に 付 加 したイオンであって 分 子 の 中 で 最 も 存 在 確 率 が 高 いものに 由 来 するピークの 高 質 量 数 側 に 出 現 する 不 要 ピークの 抑 制 効 果 が 非 常 に 顕 著 であるため 分 子 イオンをM + Hとして 検 出 する 方 法 に 比 べ 特 に 低 濃 度 標 識 化 合 物 に 対 するより 正 確 な 同 位 体 濃 度 の 決 定 が 可 能 となる 0031 なお 本 発 明 は 1つの 元 素 の 同 位 体 濃 度 が 不 明 な 場 合 に 利 用 されるものではある し かし 複 数 の 元 素 の 同 位 体 濃 度 が 不 明 な 場 合 であっても その 濃 度 を 別 の 手 段 例 えばI RMSやIR (Infrared Spectroscopy: 赤 外 分 光 ) NMR (Nuclear Magnetic Resona nce: 核 磁 気 共 鳴 ) 等 を 用 いて 決 定 し 同 位 体 濃 度 が 不 明 な 元 素 を1つとした 状 態 で 本 発 明 を 利 用 することにより 複 数 の 元 素 の 同 位 体 濃 度 が 不 明 な 場 合 であっても それらをす べて 決 定 することが 可 能 である 発 明 を 実 施 するための 最 良 の 形 態 0032 まず 本 発 明 方 法 を 実 施 するためには 例 えばアミノ 酸 等 の 難 揮 発 性 物 質 の 同 位 体 濃 度 をFABMS 分 析 する 際 には マトリックス 溶 液 を 適 切 に 調 合 することが 非 常 に 重 要 とな る 具 体 的 には マトリックスを 溶 媒 に 溶 解 し マトリックス 溶 液 とする 際 マトリック ス 濃 度 を 適 切 に 設 定 する 必 要 がある マトリックス 濃 度 は マトリックス 及 び 溶 媒 の 種 類 に 応 じて 調 製 可 能 であるが 通 常 は マトリックス 濃 度 が7~25 体 積 %の 範 囲 になるよ うに 調 整 することが 好 ましい このマトリックス 濃 度 が 高 すぎると 試 料 よりマトリック スのピークが 強 く 出 現 し 同 位 体 濃 度 の 算 出 に 使 用 する 試 料 ピークが 相 対 的 に 小 さくなり 分 析 精 度 が 低 下 してしまう 一 方 マトリックスは 試 料 を 分 子 のままイオン 化 するた めに 必 要 な 物 質 であるから マトリックス 濃 度 が 低 すぎると 試 料 の 分 子 イオンのピーク 強 度 が 低 下 し 分 析 精 度 が 低 下 したり 分 析 が 不 可 能 となることがある これらのことを 考 慮 すると 体 積 %となるように 調 製 することが 最 も 望 ましい 0033 本 発 明 で 用 いるマトリックスとしては 一 般 的 に 使 用 されているものを 用 いることが 可 能 であり 具 体 的 には グリセリン(グリセロール) チオグリセリン ジエタノールア ミン トリエタノールアミン 等 が 使 用 可 能 である これらのマトリックスの 中 では グリ セロールが 最 適 である 0034 前 記 溶 媒 には 前 述 のマトリックスと 測 定 対 象 となる 試 料 とが 共 に 溶 解 するものであ れば 任 意 の 物 質 を 選 定 することができ 具 体 的 には 純 水 メタノール エタノール ヘ キサン ベンゼン N,N -ジメチルホルミアミド 等 を 使 用 することが 可 能 であるが グリセロールと 純 水 との 組 み 合 わせが 最 適 である 0035 さらに 上 述 のように 調 製 したマトリックス 溶 液 に 適 量 の 酸 水 溶 液 を 添 加 することによ り その 効 果 を 飛 躍 的 に 向 上 させることができる 酸 水 溶 液 としては 塩 酸 硝 酸 硫 酸 の 少 なくともいずれか1 種 の 水 溶 液 を 使 用 することができる 酸 水 溶 液 の 濃 度 は 前 記 マ トリックス 溶 液 の 成 分 や 濃 度 酸 の 種 類 によっても 異 なるが 濃 度 が 低 すぎるとマトリッ クス 溶 液 に 加 える 酸 水 溶 液 の 量 が 多 くなり マトリックス 溶 液 を 調 製 する 際 に 酸 水 溶 液 の 混 合 量 を 考 慮 してマトリックス 濃 度 を 高 くしなければならず マトリックスを 溶 媒 に 十 分 に 溶 解 させるために 長 時 間 を 要 するなどの 不 都 合 が 生 じる また 酸 水 溶 液 の 濃 度 が 高 い と 酸 水 溶 液 の 取 り 扱 いに 注 意 を 要 することになるため 酸 水 溶 液 の 酸 濃 度 は0.5~2. 5Nの 範 囲 が 適 当 であり 添 加 混 合 時 の 操 作 性 等 を 考 慮 すると 1N 程 度 に 設 定 すること が 好 ましい 0036 マトリックス 溶 液 への 酸 水 溶 液 の 混 合 量 は マトリックス 溶 液 の 成 分 や 濃 度 酸 水 溶 液 の 成 分 や 濃 度 によって 異 なるが 例 えば 酸 水 溶 液 として1Nの 塩 酸 水 溶 液 を 使 用 する 場
(8) 合 は 体 積 比 でマトリックス 溶 液 : 塩 酸 水 溶 液 =6:0.5~2.5の 範 囲 が 好 ましく 特 に マトリックス 溶 液 : 塩 酸 水 溶 液 =6:1 程 度 に 設 定 することが 好 ましい このとき 塩 酸 水 溶 液 の 量 が 少 なすぎると 酸 水 溶 液 を 添 加 した 効 果 が 十 分 に 得 られず 多 すぎると マトリックス 溶 液 を 希 釈 することになり ピーク 強 度 の 低 下 を 招 くことになる 0037 加 えて 上 述 のように 調 製 したマトリックス 溶 液 に 微 量 のアルカリ 金 属 イオンを 添 加 す ることにより その 効 果 を 更 に 飛 躍 的 に 向 上 させることができる アルカリ 金 属 イオンの 添 加 は 通 常 リチウム ナトリウム カリウムの 少 なくともいずれか1 種 を 含 むアルカ リ 金 属 イオン 含 有 水 溶 液 具 体 的 には 塩 化 ナトリウム 水 溶 液 等 を 添 加 することによって 行 われる このアルカリ 金 属 イオン 含 有 水 溶 液 中 のアルカリ 金 属 イオンの 濃 度 は マトリッ クス 溶 液 の 成 分 や 濃 度 酸 水 溶 液 の 成 分 や 濃 度 両 者 の 混 合 割 合 アルカリ 金 属 イオンの 種 類 といった 条 件 に 応 じて 任 意 に 設 定 することができるが 前 記 酸 水 溶 液 と 同 様 に 調 製 時 の 操 作 性 や 測 定 時 のピーク 強 度 を 考 慮 すると 0.5~2.5Nの 範 囲 が 適 当 であり 特 に0.1N 程 度 とすることが 望 ましい 0038 マトリックス 溶 液 へのアルカリ 金 属 イオン 含 有 水 溶 液 の 混 合 量 は マトリックス 溶 液 の 成 分 や 濃 度 酸 水 溶 液 の 成 分 や 濃 度 両 者 の 混 合 割 合 アルカリ 金 属 イオンの 種 類 や 濃 度 によって 異 なるが 通 常 は 例 えばアルカリ 金 属 イオン 含 有 水 溶 液 が1Nの 塩 化 ナトリウ ム 水 溶 液 の 場 合 は 前 記 マトリックス 溶 液 に 体 積 比 でマトリックス 溶 液 : 塩 化 ナトリウ ム 水 溶 液 =6:0.5~2.5の 範 囲 特 にマトリックス 溶 液 : 塩 化 ナトリウム 水 溶 液 = 6:1 程 度 に 設 定 することが 好 ましい 0039 このように 酸 水 溶 液 及 びアルカリ 金 属 イオン 含 有 水 溶 液 を 添 加 混 合 したマトリックス 溶 液 に 試 料 を 溶 解 させて 質 量 分 析 を 行 うことにより 低 濃 度 標 識 試 料 中 の 安 定 同 位 体 濃 度 の 分 析 を 効 率 よく 高 精 度 で 行 うことができる 実 施 例 00 比 較 例 1 まず マトリックスとして 高 純 度 のグリセロールを 使 用 するとともに 溶 媒 として 超 純 水 製 造 装 置 にて 製 造 した 超 純 水 使 用 し 室 温 にて 体 積 比 がグリセロール: 超 純 水 =1:9 となるように 混 合 した 後 良 く 撹 拌 して 均 一 なマトリックス 溶 液 とした 試 料 には グリ シン セリン ヒスチジン 及 びトリプトファンの4 種 のアミノ 酸 を 使 用 した これらのア ミノ 酸 は いずれも 分 子 内 の 窒 素 原 子 を 約 4atom% 程 度 15 Nにて 標 識 したもので ある これらの 試 料 は 分 子 内 の 窒 素 原 子 をすべて 高 純 度 に 15 Nにて 標 識 したものを 非 標 識 のもので 希 釈 して 調 製 したものであり 希 釈 率 標 識 品 の 純 度 及 び 非 標 識 品 の 15 N 濃 度 から 厳 密 に 算 出 した 各 試 料 の 正 確 な 15 N 濃 度 は グリシン:4.03atom% セリン:4.07atom% ヒスチジン:4.03atom% トリプトファン:4. 11atom%である 0041 各 試 料 1mgと 前 記 マトリックス 溶 液 μlとをそれぞれ 混 合 したものを 対 象 として 質 量 分 析 を 行 い マススペクトルを 取 得 した 質 量 分 析 におけるスペクトル 取 得 条 件 は 衝 突 ガスはキセノン 加 速 電 圧 は1kV 質 量 走 査 範 囲 は~2 質 量 分 解 能 は 低 分 解 能 測 定 (M/δM=0)とした( 以 下 の 各 実 施 例 も 同 じ 条 件 としている ) 0042 その 結 果 得 られたマススペクトルから 最 も 存 在 確 率 の 高 い 分 子 に 由 来 するピーク(メ インピーク: 第 1のピーク( 以 下 同 様 ))と その 次 に 存 在 確 率 の 高 い 分 子 ( 複 数 個 存 在 する( 以 下 同 様 ) )に 由 来 するピーク(メインピークの1MASS 高 質 量 数 側 に 出 現 す る 第 2のピーク( 以 下 同 様 ) )との 強 度 比 から 15 Nの 濃 度 を 求 めると グリシン:4.08atom% セリン:4.15atom% ヒスチジン:4.98atom% ト リプトファン:4.76atom%となった
(9) 0043 希 釈 率 等 から 算 出 した 濃 度 とこの 結 果 とを 比 較 すると グリシン 及 びセリンの 両 者 は 非 常 に 良 い 一 致 を 示 していることが 分 かる 一 方 ヒスチジン 及 びトリプトファンでは 測 定 値 から 算 出 した 15 N 濃 度 は 希 釈 率 等 から 厳 密 に 計 算 したものと 比 較 すると 高 濃 度 側 にずれていることがわかる 0044 比 較 例 2 マトリックスとして 高 純 度 のグリセロールを 溶 媒 として 超 純 水 製 造 装 置 にて 製 造 した 超 純 水 をそれぞれ 使 用 し 室 温 にて 体 積 比 がグリセロール: 超 純 水 =1:7とした 溶 液 A と グリセロール: 超 純 水 =1:11とした 溶 液 Bとをマトリックス 溶 液 として 使 用 した 試 料 には 比 較 例 1で 使 用 した 内 のセリン 及 びヒスチジンの2 種 のアミノ 酸 を 使 用 した 0045 次 に 存 在 確 率 の 高 い 分 子 に 由 来 する 第 2のピークとの 強 度 比 から 15 Nの 濃 度 をそれぞれ 求 めると 溶 液 Aでは セリン:4.14atom% ヒスチジン:4.96atom% となり 溶 液 Bでは セリン:4.16atom% ヒスチジン:4.97atom%と なった この 結 果 から マトリックス 溶 液 の 濃 度 は 厳 密 に%でなくても 同 様 の 結 果 が 得 られることが 分 かる 0046 比 較 例 3 マトリックスとして 高 純 度 のグリセロールを 溶 媒 としてエタノールを 使 用 し 室 温 に て 体 積 比 がグリセロール:エタノール=1:9となるように 混 合 してマトリックス 溶 液 と した 試 料 には 比 較 例 1で 使 用 した 内 のグリシン 及 びトリプトファンの2 種 のアミノ 酸 を 使 用 した 0047 次 に 存 在 確 率 の 高 い 分 子 に 由 来 する 第 2のピークとの 強 度 比 から 15 Nの 濃 度 を 求 めると グリシン:4.07atom% トリプトファン:4.74atom%となり 比 較 例 1と 同 様 の 結 果 となった この 結 果 から マトリックス 溶 液 に 使 用 する 溶 媒 は 純 水 でなく てもよいことが 分 かる 0048 比 較 例 4 比 較 例 1で 作 成 したマトリックス 溶 液 ( 溶 液 C)に 1N 塩 酸 水 溶 液 を 体 積 比 で 溶 液 C : 塩 酸 水 溶 液 =6:1となるように 添 加 してマトリックス 溶 液 とした 試 料 には 比 較 例 1で 使 用 した 内 のセリン 及 びヒスチジンの2 種 のアミノ 酸 を 使 用 した 0049 次 に 存 在 確 率 の 高 い 分 子 に 由 来 する 第 2のピークとの 強 度 比 から 15 Nの 濃 度 を 求 めると セリン:4.09atom% ヒスチジン:4.81atom%となった この 結 果 を 比 較 例 1の 結 果 と 比 較 すると 本 実 施 例 の 結 果 の 方 が 希 釈 率 等 から 厳 密 に 算 出 した 計 算 値 に より 近 い 値 となっていることが 分 かる すなわち 酸 を 少 量 添 加 することによって 測 定 の 正 確 性 を 向 上 させる 効 果 が 得 られることが 分 かる 00 比 較 例 5 前 記 溶 液 Cに2N 塩 酸 水 溶 液 を 体 積 比 が 溶 液 C: 塩 酸 水 溶 液 =6:1となるように 添 加 したマトリックス 溶 液 と 前 記 溶 液 Cに1N 硝 酸 水 溶 液 を 体 積 比 が 溶 液 C: 硝 酸 水 溶 液 = 6:1となるように 添 加 したマトリックス 溶 液 とを 使 用 した 試 料 には 比 較 例 1で 使 用 した 内 のセリン 及 びヒスチジンの2 種 のアミノ 酸 を 使 用 した 0051
() 次 に 存 在 確 率 の 高 い 分 子 に 由 来 する 第 2のピークとの 強 度 比 から 15 Nの 濃 度 を 求 めると 2N 塩 酸 水 溶 液 を 添 加 した 場 合 は セリン:4.08atom% ヒスチジン:4.8 3atom%となり 1N 硝 酸 水 溶 液 を 添 加 した 場 合 は セリン:4.atom% ヒスチジン:4.80atom%となり 比 較 例 4と 略 同 じ 結 果 となった この 結 果 から 添 加 する 酸 の 量 は 厳 密 ではなく かつ その 種 類 も 塩 酸 に 限 られるものではないことが 分 かる 0052 実 施 例 1 前 記 溶 液 Cに1N 塩 酸 水 溶 液 及 び1N 塩 化 ナトリウム 水 溶 液 を 体 積 比 が 溶 液 C: 塩 酸 水 溶 液 : 塩 化 ナトリウム 水 溶 液 =6:1:1となるように 添 加 してマトリックス 溶 液 とした 試 料 には 比 較 例 1で 使 用 した 内 のセリン ヒスチジン 及 びトリプトファンの3 種 のア ミノ 酸 を 使 用 した 0053 得 られたマススペクトルから 最 も 存 在 確 率 の 高 い 分 子 に 由 来 する 第 1のピーク(アルカ リ 金 属 イオンとしてナトリウムイオンを 添 加 したことから 分 子 量 +23の 質 量 数 に 出 現 す るピーク)と その 次 に 存 在 確 率 の 高 い 分 子 に 由 来 する 第 2のピーク( 第 1のピークの1 MASS 高 質 量 数 側 )との 強 度 比 から 15 Nの 濃 度 を 求 めると セリン:4.09ato m% ヒスチジン:4.09atom% トリプトファン:4.18atom%となった また ヒスチジンについてのマススペクトルを 図 1に 示 す 0054 この 結 果 を 比 較 例 1の 結 果 と 比 較 すると 本 実 施 例 の 結 果 の 方 が 希 釈 率 等 から 厳 密 に 算 出 した 計 算 値 に より 近 い 値 となっていることが 分 かる 特 に ヒスチジン 及 びトリプト ファンでは その 効 果 は 顕 著 となっている すなわち 少 量 のアルカリ 金 属 イオンを 添 加 し その 結 果 得 られるアルカリ 金 属 イオン 付 加 分 子 として 検 出 されるピークの 強 度 を 用 い て 同 位 体 濃 度 を 算 出 することにより 特 に 高 分 子 量 のアミノ 酸 に 対 して より 正 確 な 測 定 を 行 えることが 分 かる 0055 実 施 例 2 前 記 溶 液 Cに1N 塩 酸 水 溶 液 と2N 塩 化 ナトリウム 水 溶 液 とを 体 積 比 が 溶 液 C: 塩 酸 水 溶 液 : 塩 化 ナトリウム 水 溶 液 =6:1:1となるように 添 加 したマトリックス 溶 液 と 前 記 溶 液 Cに1N 塩 酸 水 溶 液 と1N 塩 化 カリウム 水 溶 液 とを 体 積 比 が 溶 液 C: 塩 酸 水 溶 液 : 塩 化 カリウム 水 溶 液 =6:1:1となるように 添 加 したマトリックス 溶 液 とを 使 用 した 試 料 には 比 較 例 1で 使 用 した 内 のセリン 及 びヒスチジンの2 種 のアミノ 酸 を 使 用 した 0056 得 られたマススペクトルから 最 も 存 在 確 率 の 高 い 分 子 に 由 来 する 第 1のピーク( 塩 化 ナ トリウム 添 加 では 分 子 量 +23 塩 化 カリウム 添 加 では 分 子 量 +の 質 量 数 にそれぞれ 出 現 する )と その 次 に 存 在 確 率 の 高 い 分 子 に 由 来 する 第 2のピークの 強 度 比 から 15 Nの 濃 度 を 求 めると 2N 塩 化 ナトリウム 水 溶 液 を 添 加 した 場 合 は セリン:4.08a tom% ヒスチジン:4.13atom%となり 1N 塩 化 カリウム 水 溶 液 を 添 加 した 場 合 は セリン:4.atom% ヒスチジン:4.atom%となり 実 施 例 1と 同 様 の 結 果 となった この 結 果 から 添 加 するアルカリ 金 属 イオンの 量 は 厳 密 ではな く かつ その 種 類 もナトリウムイオンに 限 定 されるものではないことが 分 かる 0057 実 施 例 3 実 施 例 1と 同 じマトリックス 溶 液 を 使 用 し 試 料 には 分 子 内 の 炭 素 原 子 を 約 3ato m% 程 度 13 Cにてそれぞれ 標 識 したグリシン セリン ヒスチジン 及 びトリプトファ ンの4 種 のアミノ 酸 を 使 用 した これらの 試 料 は 分 子 内 の 炭 素 原 子 をすべて 高 純 度 に 1 3 Cにて 標 識 したものを 非 標 識 のもので 希 釈 して 調 製 したものであり 希 釈 率 標 識 品 の 純 度 及 び 非 標 識 品 の 13 C 濃 度 から 厳 密 に 算 出 した 各 試 料 の 正 確 な 13 C 濃 度 は グリシ
(11) ン:3.02atom% セリン:3.08atom% ヒスチジン:3.04atom % トリプトファン:3.08atom%である 0058 各 試 料 1mgとマトリックス 溶 液 μlとをそれぞれ 混 合 したものを 対 象 として 質 量 分 析 を 行 い マススペクトルを 取 得 した 質 量 分 析 におけるスペクトル 取 得 条 件 は 比 較 例 1と 同 じとした 得 られたマススペクトルから 最 も 存 在 確 率 の 高 い 分 子 に 由 来 する 第 1 のピーク( 分 子 量 +23)と その 次 に 存 在 確 率 の 高 い 分 子 に 由 来 する 第 2のピーク( 第 1のピークの1MASS 高 質 量 数 側 )との 強 度 比 から 13 Cの 濃 度 を 求 めると グリシン :3.05atom% セリン:3.12atom% ヒスチジン:3.11atom% トリプトファン:3.12atom%となった 0059 実 施 例 4 試 料 として 分 子 内 の 水 素 原 子 を 約 5atom% 程 度 2 Hにて 標 識 したグリシン 及 び ヒスチジンの2 種 のアミノ 酸 を 使 用 した これらの 試 料 は 分 子 内 の 水 素 原 子 をすべて 高 純 度 に 2 Hにて 標 識 したものを 非 標 識 のもので 希 釈 して 調 製 したものであり 希 釈 率 標 識 品 の 純 度 及 び 非 標 識 品 の 2 H 濃 度 から 厳 密 に 算 出 した 各 試 料 の 正 確 な 2 H 濃 度 は グリ シン:5.05atom% ヒスチジン:5.01atom%である 0060 実 施 例 1と 同 じマトリックス 溶 液 を 使 用 し 各 試 料 1mgとマトリックス 溶 液 μl とをそれぞれ 混 合 したものを 対 象 として 比 較 例 1と 同 じ 条 件 で 質 量 分 析 を 行 い マススペ クトルを 取 得 した 0061 次 に 存 在 確 率 の 高 い 分 子 に 由 来 する 第 2のピークとの 強 度 比 から 2 Hの 濃 度 を 求 めると グリシン:5.09atom% ヒスチジン:5.09atom%となった 0062 実 施 例 5 試 料 として 分 子 内 の 酸 素 原 子 を 約 2atom% 程 度 17 Oにて 標 識 したセリン 及 び トリプトファンの2 種 のアミノ 酸 を 使 用 した これらの 試 料 は 分 子 内 の 酸 素 原 子 をすべ て 高 純 度 に 17 Oにて 標 識 したものを 非 標 識 のもので 希 釈 して 調 製 したものであり 希 釈 率 標 識 品 の 純 度 及 び 非 標 識 品 の 17 O 濃 度 から 厳 密 に 算 出 した 各 試 料 の 正 確 な 17 O 濃 度 は セリン:2.13atom% トリプトファン:2.35atom%である 0063 実 施 例 1と 同 じマトリックス 溶 液 を 使 用 し 各 試 料 1mgとマトリックス 溶 液 μl とをそれぞれ 混 合 したものを 対 象 として 比 較 例 1と 同 じ 条 件 で 質 量 分 析 を 行 い マススペ クトルを 取 得 した 0064 次 に 存 在 確 率 の 高 い 分 子 に 由 来 する 第 2のピークとの 強 度 比 から 17 Oの 濃 度 を 求 めると セリン:2.18atom% トリプトファン:2.42atom%となった 0065 実 施 例 6 試 料 として 分 子 内 の 酸 素 原 子 を 約 atom% 程 度 18 Oにて 標 識 したヒスチジ ン 及 びトリプトファンの2 種 のアミノ 酸 を 使 用 した これらの 試 料 は 分 子 内 の 酸 素 原 子 をすべて 高 純 度 に 18 Oにて 標 識 したものを 非 標 識 のもので 希 釈 して 調 製 したものであり 希 釈 率 標 識 品 の 純 度 及 び 非 標 識 品 の 18 O 濃 度 から 厳 密 に 算 出 した 各 試 料 の 正 確 な 1 8 O 濃 度 は ヒスチジン:.31atom% トリプトファン:9.85atom% である 0066 実 施 例 1と 同 じマトリックス 溶 液 を 使 用 し 各 試 料 1mgとマトリックス 溶 液 μl
(12) とをそれぞれ 混 合 したものを 対 象 として 比 較 例 1と 同 じ 条 件 で 質 量 分 析 を 行 い マススペ クトルを 取 得 した 0067 次 に 存 在 確 率 の 高 い 分 子 に 由 来 する 第 2のピーク( 第 1のピークの2MASS 高 質 量 数 側 に 出 現 するピーク)との 強 度 比 から 18 Oの 濃 度 を 求 めると グリシン:.45at om% ヒスチジン:9.98atom%となった 0068 実 施 例 3~6において 希 釈 率 等 から 算 出 した 各 濃 度 と 各 測 定 結 果 とを 比 較 すると 実 施 例 1と 同 様 に 各 アミノ 酸 に 対 して 両 者 は 非 常 に 良 い 一 致 を 示 していることが 分 かる すなわち 標 識 核 種 の 種 類 に 関 わらず 非 常 に 有 効 であることが 分 かる 0069 実 施 例 7 マトリックスとしてチオグリセロールを 溶 媒 として 純 水 を 使 用 し これらを 体 積 比 で 1:9に 混 合 した 溶 液 に 1N 塩 酸 水 溶 液 及 び1N 塩 化 ナトリウム 水 溶 液 を 実 施 例 1と 同 じ 体 積 比 で 添 加 混 合 してマトリックス 溶 液 とした 試 料 には 比 較 例 1で 使 用 した 内 のセ リン 及 びヒスチジンの2 種 のアミノ 酸 を 使 用 した 0070 次 に 存 在 確 率 の 高 い 分 子 に 由 来 する 第 2のピークとの 強 度 比 から 15 Nの 濃 度 をそれぞれ 求 めると セリン:4.08atom% ヒスチジン:4.16atom%となった こ の 結 果 から マトリックスとしてチオグリセロールを 使 用 しても 同 様 の 結 果 が 得 られるこ とが 分 かる 図 面 の 簡 単 な 説 明 0071 図 1 実 施 例 1において 試 料 がヒスチジンの 場 合 のマススペクトルである
(13) 図 1
(14) ---------------------------------------------------- フロントページの 続 き (72) 発 明 者 福 田 健 治 東 京 都 品 川 区 小 山 一 丁 目 3 番 26 号 大 陽 日 酸 株 式 会 社 内 Fターム( 参 考 ) 2G041 CA01 FA07 FA22 FA23 FA24 FA25 JA08