はじめに 我 が 国 においては 様 々な 構 造 変 化 によって 水 産 物 の 需 給 状 況 も 大 きく 変 化 してきております 特 に 近 年 は 海 外 に 依 存 していた 水 産 物 については 現 地 での 買 い 負 けが 起 こる 一 方 国 内 の 水 産 物 の 中 に

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平成25年度 独立行政法人日本学生支援機構の役職員の報酬・給与等について


2 役 員 の 報 酬 等 の 支 給 状 況 平 成 27 年 度 年 間 報 酬 等 の 総 額 就 任 退 任 の 状 況 役 名 報 酬 ( 給 与 ) 賞 与 その 他 ( 内 容 ) 就 任 退 任 2,142 ( 地 域 手 当 ) 17,205 11,580 3,311 4 月 1

公表表紙

m07 北見工業大学 様式①


(4) 給 与 制 度 の 総 合 的 見 直 しの 実 施 状 況 について 概 要 国 の 給 与 制 度 の 総 合 的 見 直 しにおいては 俸 給 表 の 水 準 の 平 均 2の 引 下 げ 及 び 地 域 手 当 の 支 給 割 合 の 見 直 し 等 に 取 り 組 むとされている.

(5) 給 与 制 度 の 総 合 的 見 直 しの 実 施 状 況 について 概 要 の 給 与 制 度 の 総 合 的 見 直 しにおいては 俸 給 表 の 水 準 の 平 均 2の 引 き 下 げ 及 び 地 域 手 当 の 支 給 割 合 の 見 直 し 等 に 取 り 組 むとされている

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国立研究開発法人土木研究所の役職員の報酬・給与等について

130117_『高齢社会をむかえた東京23区の将来 人口と建物の関係から見て

為 が 行 われるおそれがある 場 合 に 都 道 府 県 公 安 委 員 会 がその 指 定 暴 力 団 等 を 特 定 抗 争 指 定 暴 力 団 等 として 指 定 し その 所 属 する 指 定 暴 力 団 員 が 警 戒 区 域 内 において 暴 力 団 の 事 務 所 を 新 たに 設

< DB8CAF97BF97A6955C2E786C73>

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質 問 票 ( 様 式 3) 質 問 番 号 62-1 質 問 内 容 鑑 定 評 価 依 頼 先 は 千 葉 県 などは 入 札 制 度 にしているが 神 奈 川 県 は 入 札 なのか?または 随 契 なのか?その 理 由 は? 地 価 調 査 業 務 は 単 にそれぞれの 地 点 の 鑑 定

Microsoft PowerPoint - 報告書(概要).ppt

2 役 員 の 報 酬 等 の 支 給 状 況 役 名 法 人 の 長 理 事 理 事 ( 非 常 勤 ) 平 成 25 年 度 年 間 報 酬 等 の 総 額 就 任 退 任 の 状 況 報 酬 ( 給 与 ) 賞 与 その 他 ( 内 容 ) 就 任 退 任 16,936 10,654 4,36

●幼児教育振興法案

1 平 成 27 年 度 土 地 評 価 の 概 要 について 1 固 定 資 産 税 の 評 価 替 えとは 地 価 等 の 変 動 に 伴 う 固 定 資 産 の 資 産 価 値 の 変 動 に 応 じ その 価 格 を 適 正 で 均 衡 のとれたものに 見 直 す 制 度 である 3 年 ご

その 他 事 業 推 進 体 制 平 成 20 年 3 月 26 日 に 石 垣 島 国 営 土 地 改 良 事 業 推 進 協 議 会 を 設 立 し 事 業 を 推 進 ( 構 成 : 石 垣 市 石 垣 市 議 会 石 垣 島 土 地 改 良 区 石 垣 市 農 業 委 員 会 沖 縄 県 農

職 員 の 平 均 給 与 月 額 初 任 給 等 の 状 況 (1) 職 員 の 平 均 年 齢 平 均 給 料 月 額 及 び 平 均 給 与 月 額 の 状 況 ( 平 成 年 月 1 日 現 在 ) 1 一 般 行 政 職 福 岡 県 技 能 労 務 職 歳 1,19,98 9,9 歳 8,

18 国立高等専門学校機構

平成16年年金制度改正 ~年金の昔・今・未来を考える~

別紙3

検 討 検 討 の 進 め 方 検 討 状 況 簡 易 収 支 の 世 帯 からサンプリング 世 帯 名 作 成 事 務 の 廃 止 4 5 必 要 な 世 帯 数 の 確 保 が 可 能 か 簡 易 収 支 を 実 施 している 民 間 事 業 者 との 連 絡 等 に 伴 う 事 務 の 複 雑

Ⅰ 平成14年度の状況

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Ⅰ 人 口 の 現 状 分 析 Ⅰ 人 口 の 現 状 分 析 1 人

(5) 給 与 改 定 の 状 況 事 委 員 会 の 設 置 なし 1 月 例 給 事 委 員 会 の 勧 告 民 間 給 与 公 務 員 給 与 較 差 勧 告 A B A-B ( 改 定 率 ) 給 与 改 定 率 ( 参 考 ) 国 の 改 定 率 24 年 度 円 円 円 円 ( ) 改

Taro-H19退職金(修正版).jtd

●電力自由化推進法案

Ⅰ 平成14年度の状況

Microsoft Word - 佐野市生活排水処理構想(案).doc

2 一 般 行 政 職 給 料 表 の 状 況 ( 平 成 24 年 4 月 1 日 現 在 ) 1 級 2 級 3 級 4 級 5 級 ( 単 位 : ) 6 級 7 級 8 級 1 号 給 の 給 料 月 額 135,6 185,8 222,9 261,9 289,2 32,6 366,2 41

は 固 定 流 動 及 び 繰 延 に 区 分 することとし 減 価 償 却 を 行 うべき 固 定 の 取 得 又 は 改 良 に 充 てるための 補 助 金 等 の 交 付 を 受 けた 場 合 にお いては その 交 付 を 受 けた 金 額 に 相 当 する 額 を 長 期 前 受 金 とし

2 一 般 行 政 職 給 料 表 の 状 況 ( 平 成 23 年 4 月 1 日 現 在 ) ( 単 位 : ) 1 級 2 級 3 級 4 級 5 級 6 級 7 級 8 級 1 号 給 の 給 料 月 額 135,6 161,7 222,9 261,9 289,2 32,6 366,2 41

2 一 般 行 政 職 給 料 表 の 状 況 ( 平 成 23 年 4 月 1 日 現 在 ) 1 号 給 の 給 料 月 額 最 高 号 給 の 給 料 月 額 1 級 2 級 3 級 4 級 5 級 ( 単 位 : ) 6 級 7 級 8 級 135, , ,900 2

1 < 目 次 > 第 1 部 中 国 進 出 ( 進 出 方 式 の 選 定 現 地 法 人 駐 在 員 事 務 所 の 開 設 ) 4 Ⅰ. 中 国 進 出 に 際 しての 組 織 選 定 4 1. 進 出 形 態 ( 駐 在 員 事 務 所 現 地 法 人 支 店 ) 2. 各 種 形 態 の

経 常 収 支 差 引 額 等 の 状 況 平 成 26 年 度 予 算 早 期 集 計 平 成 25 年 度 予 算 対 前 年 度 比 較 経 常 収 支 差 引 額 3,689 億 円 4,597 億 円 908 億 円 減 少 赤 字 組 合 数 1,114 組 合 1,180 組 合 66



入 札 参 加 者 は 入 札 の 執 行 完 了 に 至 るまではいつでも 入 札 を 辞 退 することができ これを 理 由 として 以 降 の 指 名 等 において 不 利 益 な 取 扱 いを 受 けることはない 12 入 札 保 証 金 免 除 13 契 約 保 証 金 免 除 14 入

小 売 電 気 の 登 録 数 の 推 移 昨 年 8 月 の 前 登 録 申 請 の 受 付 開 始 以 降 小 売 電 気 の 登 録 申 請 は 着 実 に 増 加 しており これまでに310 件 を 登 録 (6 月 30 日 時 点 ) 本 年 4 月 の 全 面 自 由 化 以 降 申

2 一 般 行 政 職 給 料 表 の 状 況 (24 年 4 月 1 日 現 在 ) 1 号 級 の 給 料 月 額 最 高 号 級 の 給 料 月 額 1 級 ( 単 位 : ) 2 級 3 級 4 級 5 級 6 級 7 級 8 級 9 級 1 級 135,6 185,8 222,9 261,

波佐見町の給与・定員管理等について

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2 一 般 行 政 職 給 料 表 の 状 況 ( 平 成 24 年 4 月 1 日 現 在 ) 1 号 給 の 給 料 月 額 最 高 号 給 の 給 料 月 額 1 級 135,6 2 級 185,8 ( 注 ) 給 料 月 額 は 給 与 抑 制 措 置 を 行 う 前 のものである 3 級

技 能 労 務 職 公 務 員 民 間 参 考 区 分 平 均 年 齢 職 員 数 平 均 給 与 月 額 平 均 給 与 月 額 平 均 給 料 月 額 (A) ( 国 ベース) 平 均 年 齢 平 均 給 与 月 額 対 応 する 民 間 の 類 似 職 種 東 庄 町 51.3 歳 18 77

別 紙 第 号 高 知 県 立 学 校 授 業 料 等 徴 収 条 例 の 一 部 を 改 正 する 条 例 議 案 高 知 県 立 学 校 授 業 料 等 徴 収 条 例 の 一 部 を 改 正 する 条 例 を 次 のように 定 める 平 成 26 年 2 月 日 提 出 高 知 県 知 事 尾

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3 職 員 の 平 均 給 与 月 額 初 任 給 等 の 状 況 (1) 職 員 の 平 均 年 齢 平 均 給 料 月 額 及 び 平 均 給 与 月 額 の 状 況 (23 年 4 月 1 日 現 在 ) 1 一 般 行 政 職 平 均 年 齢 平 均 給 料 月 額 平 均 給 与 月 額

16 日本学生支援機構

根 本 確 根 本 確 民 主 率 運 民 主 率 運 確 施 保 障 確 施 保 障 自 治 本 旨 現 資 自 治 本 旨 現 資 挙 管 挙 管 代 表 監 査 教 育 代 表 監 査 教 育 警 視 総 監 道 府 県 警 察 本 部 市 町 村 警 視 総 監 道 府 県 警 察 本 部

個人住民税徴収対策会議

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学校教育法等の一部を改正する法律の施行に伴う文部科学省関係省令の整備に関する省令等について(通知)

4. その 他 (1) 期 中 における 重 要 な 子 会 社 の 異 動 ( 連 結 範 囲 の 変 更 を 伴 う 特 定 子 会 社 の 異 動 ) 無 (2) 簡 便 な 会 計 処 理 及 び 四 半 期 連 結 財 務 諸 表 の 作 成 に 特 有 の 会 計 処 理 の 適 用 有

2 一 般 行 政 職 給 料 表 の 現 況 ( 平 成 22 1 号 給 の 給 料 月 額 137,9 188,9 226,7 266,4 294,3 最 高 号 給 の 給 料 月 額 247,9 314,9 362,8 399,9 415,1 ( 注 ) 給 料 月 額 は 給 与 抑 制

一 般 行 政 職 給 料 表 の 状 況 ( 平 成 年 月 1 日 ) ( 単 位 : ) 1 級 級 級 級 5 級 級 1 号 給 の 給 料 月 額 15, 185,8,9 1,9 89,, 最 高 号 給 の 給 料 月 額,7 9, 5, 9,1,5, ( 注 ) 給 料 月 額 は

Microsoft PowerPoint - 経営事項審査.ppt

1 予 算 の 姿 ( 平 成 25 当 初 予 算 ) 長 野 県 財 政 の 状 況 H 現 在 長 野 県 の 予 算 を 歳 入 面 から 見 ると 自 主 財 源 の 根 幹 である 県 税 が 全 体 の5 分 の1 程 度 しかなく 地 方 交 付 税 や 国 庫 支

一 般 行 政 職 給 料 表 の 状 況 ( 平 成 3 年 4 月 1 日 現 在 ) 1 級 級 3 級 4 級 5 級 6 級 単 位 : ( ) 7 級 1 号 給 の 給 料 月 額 137, 163,7 4,9 31,4 71, 33,3 359,7 最 高 号 給 の 給 料 月 額

目 標 を 達 成 するための 指 標 第 4 章 計 画 における 環 境 施 策 世 界 遺 産 への 登 録 早 期 登 録 の 実 現 史 跡 の 公 有 地 化 平 成 27 年 度 (2015 年 度 )までに 235,022.30m 2 施 策 の 体 系 1 歴 史 的 遺 産 とこ

(4) ラスパイレス 指 数 の 状 況 H H H5.4.1 ( 参 考 値 ) 97.1 H H H H5.4.1 H H5.4.1 ( 参 考

<4D F736F F F696E74202D208CE38AFA8D8297EE8ED288E397C390A CC8A AE98EBA8DEC90AC816A2E707074>


参 考 改 正 災 害 対 策 基 本 法 1 ( 災 害 時 における 車 両 の 移 動 等 ) 第 七 十 六 条 の 六 道 路 管 理 者 は その 管 理 する 道 路 の 存 する 都 道 府 県 又 はこれに 隣 接 し 若 しくは 近 接 する 都 道 府 県 の 地 域 に 係

(4) ラスパイレス 指 数 の 状 況 ( 各 年 4 月 1 日 現 在 ) ( 例 ) ( 例 ) 15 (H2) (H2) (H24) (H24) (H25.4.1) (H25.4.1) (H24) (H24)

2 職 員 の 平 均 給 与 月 額 初 任 給 等 の 状 況 (1) 職 員 の 平 均 年 齢 平 均 給 料 月 額 及 び 平 均 給 与 月 額 の 状 況 ( 平 成 25 年 4 月 1 日 現 在 ) 1) 一 般 行 政 職 福 島 県 国 類 似 団 体 平 均 年 齢 平

国 家 公 務 員 の 年 金 払 い 退 職 給 付 の 創 設 について 検 討 を 進 めるものとする 平 成 19 年 法 案 をベースに 一 元 化 の 具 体 的 内 容 について 検 討 する 関 係 省 庁 間 で 調 整 の 上 平 成 24 年 通 常 国 会 への 法 案 提

Microsoft Word - 目次.doc

文化政策情報システムの運用等

公 的 年 金 制 度 について 制 度 の 持 続 可 能 性 を 高 め 将 来 の 世 代 の 給 付 水 準 の 確 保 等 を 図 るため 持 続 可 能 な 社 会 保 障 制 度 の 確 立 を 図 るための 改 革 の 推 進 に 関 する 法 律 に 基 づく 社 会 経 済 情

(5) 給 与 改 定 の 状 況 事 委 員 会 が 無 い た め 記 載 し て お り ま せ ん 1 月 例 給 事 委 員 会 の 勧 告 ( 参 考 ) 区 分 民 間 給 与 A 公 務 員 給 与 B 較 差 A - B 勧 告 ( 改 定 率 ) 給 与 改 定 率 国 の 改

経 常 収 支 差 引 額 の 状 況 平 成 22 年 度 平 成 21 年 度 対 前 年 度 比 較 経 常 収 支 差 引 額 4,154 億 円 5,234 億 円 1,080 億 円 改 善 赤 字 組 合 の 赤 字 総 額 4,836 億 円 5,636 億 円 800 億 円 減

第316回取締役会議案

3. 選 任 固 定 資 産 評 価 員 は 固 定 資 産 の 評 価 に 関 する 知 識 及 び 経 験 を 有 する 者 のうちから 市 町 村 長 が 当 該 市 町 村 の 議 会 の 同 意 を 得 て 選 任 する 二 以 上 の 市 町 村 の 長 は 当 該 市 町 村 の 議

4. その 他 (1) 期 中 における 重 要 な 子 会 社 の 異 動 ( 連 結 範 囲 の 変 更 を 伴 う 特 定 子 会 社 の 異 動 ) 無 新 規 社 ( 社 名 ) 除 外 社 ( 社 名 ) (2) 簡 便 な 会 計 処 理 及 び 四 半 期 連 結 財 務 諸 表 の

スライド 1

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1. 本 市 の 保 育 所 運 営 費 と 保 育 料 の 現 状 2 (1) 前 回 (5/29 5/29) 児 童 福 祉 専 門 分 科 会 資 料 国 基 準 に 対 する 本 市 の 保 育 料 階 層 区 分 別 軽 減 率 国 基 準 に 対 する 本 市 の 保 育 料 階 層 区


Microsoft Word - 国民年金の加入納付状況H25

能勢町市街化調整区域における地区計画のガイドライン

Microsoft Word - H24様式(那珂市版).doc

Taro-条文.jtd

主要生活道路について

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定款  変更

 

目 次 第 1 土 地 区 画 整 理 事 業 の 名 称 等 1 1. 土 地 区 画 整 理 事 業 の 名 称 1 2. 施 行 者 の 名 称 1 第 2 施 行 地 区 1 1. 施 行 地 区 の 位 置 1 2. 施 行 地 区 位 置 図 1 3. 施 行 地 区 の 区 域 1 4

別 表 1 土 地 建 物 提 案 型 の 供 給 計 画 に 関 する 評 価 項 目 と 評 価 点 数 表 項 目 区 分 評 価 内 容 と 点 数 一 般 評 価 項 目 立 地 条 件 (1) 交 通 利 便 性 ( 徒 歩 =80m/1 分 ) 25 (2) 生 活 利 便

職 員 の 平 均 給 与 月 額 初 任 給 等 の 状 況 (1) 職 員 の 平 均 年 齢 平 均 給 料 月 額 及 び 平 均 給 与 月 額 の 状 況 (5 年 4 月 1 日 現 在 ) 1 一 般 行 政 職 区 類 団 府 分 似 体 平 均 年 齢

2 一 般 行 政 職 給 料 表 の 状 況 ( 平 成 22 年 4 月 1 日 現 在 ) ( 単 位 : ) 1 級 2 級 3 級 4 級 5 級 6 級 7 級 1 号 給 の 給 料 月 額 最 高 号 給 の 給 料 月 額 135,6 243,7 185,8 222,9 261,9

災害時の賃貸住宅居住者の居住の安定確保について

3 独 占 禁 止 法 違 反 事 件 の 概 要 (1) 価 格 カルテル 山 形 県 の 庄 内 地 区 に 所 在 する5 農 協 が, 特 定 主 食 用 米 の 販 売 手 数 料 について, 平 成 23 年 1 月 13 日 に 山 形 県 酒 田 市 所 在 の 全 国 農 業 協

(Microsoft Word - \221\346\202P\202U\201@\214i\212\317.doc)

Transcription:

水 産 物 流 通 構 造 改 革 事 業 支 援 事 業 報 告 書 ( 平 成 20 年 度 ) 平 成 21 年 3 月 財 団 法 人 魚 価 安 定 基 金

はじめに 我 が 国 においては 様 々な 構 造 変 化 によって 水 産 物 の 需 給 状 況 も 大 きく 変 化 してきております 特 に 近 年 は 海 外 に 依 存 していた 水 産 物 については 現 地 での 買 い 負 けが 起 こる 一 方 国 内 の 水 産 物 の 中 には 旺 盛 な 海 外 の 需 要 を 反 映 して 輸 出 が 伸 長 し 始 めるなど グローバル 化 が 進 捗 してきています また 漁 業 を 取 り 巻 く 地 域 の 環 境 が 著 しく 悪 化 し 漁 業 を 支 える 基 盤 も 脆 弱 化 してきており 水 揚 げの 減 少 下 漁 業 者 の 経 営 はさらに 厳 しい 状 況 が 続 いて います 一 方 流 通 消 費 面 についても 水 産 業 を 取 り 巻 く 構 造 の 変 化 に 十 分 対 応 で きているとは 言 えず 消 費 者 のニーズに 十 分 応 えた 供 給 体 制 ができていないの が 現 状 であり このことが 更 なる 水 産 物 の 消 費 の 低 迷 を 招 いております 今 後 とも 我 が 国 の 水 産 業 が 新 鮮 な 国 産 水 産 物 を 消 費 者 に 安 く 安 定 的 に 供 給 し 併 せてグローバル 化 する 水 産 物 流 通 において 国 際 的 な 競 争 力 商 品 力 を 有 し 産 業 として 健 全 な 発 展 を 果 たしていくためには 水 産 物 の 流 通 構 造 を 根 本 から 見 直 していくことが 喫 緊 の 課 題 であります こうした 課 題 解 決 には 多 様 化 する 消 費 ニーズを 的 確 に 把 握 し 国 産 水 産 物 ならではの 品 質 特 性 を 活 かした 新 たな 需 要 創 出 に 向 けた 生 産 流 通 体 制 に 改 革 していくことが 重 要 となっています このような 水 産 物 の 流 通 構 造 の 改 革 の 支 援 のために 国 は 平 成 19 年 度 より 水 産 物 流 通 構 造 改 革 事 業 を 実 施 し 水 産 業 協 同 組 合 等 が 行 う 加 工 流 通 における 改 革 の 支 援 を 行 っております 当 基 金 は その 一 環 として 平 成 20 年 度 において 水 産 物 流 通 構 造 改 革 事 業 支 援 事 業 を 行 いました このたび その 事 業 結 果 がまとまりましたので 関 係 各 位 に 配 布 することに 致 しました 各 位 におかれましては 本 報 告 書 を 参 考 とし ていただき 今 後 の 新 たな 流 通 構 造 改 革 の 一 助 としていただければ 幸 甚 に 存 じ ます 平 成 21 年 3 月 31 日 財 団 法 人 魚 価 安 定 基 金 理 事 長 嶌 田 道 夫

評 価 分 析 委 員 名 簿 ( 産 地 市 場 改 革 型 ) 委 員 長 廣 吉 勝 治 ( 国 立 大 学 校 法 人 北 海 道 大 学 大 学 院 教 授 ) 委 員 赤 井 雄 次 ( 水 産 経 営 技 術 研 究 所 所 長 ) 加 瀬 和 俊 ( 国 立 大 学 校 法 人 東 京 大 学 社 会 科 学 研 究 所 教 授 ) 馬 場 治 ( 国 立 大 学 校 法 人 東 京 海 洋 大 学 教 授 ) 佐 野 雅 昭 ( 国 立 大 学 校 法 人 鹿 児 島 大 学 教 授 ) 評 価 分 析 委 員 名 簿 (ビジネスモデル 型 ) 委 員 長 廣 吉 勝 治 ( 国 立 大 学 校 法 人 北 海 道 大 学 大 学 院 教 授 ) 委 員 馬 場 治 ( 国 立 大 学 校 法 人 東 京 海 洋 大 学 教 授 ) 佐 藤 重 郎 (キューピー 株 式 会 社 取 締 役 ) 沢 田 哲 治 ( 沢 田 水 産 株 式 会 社 代 表 取 締 役 社 長 ) 杉 生 繁 ( 東 武 ストア 株 式 会 社 商 品 本 部 長 ) 寺 山 尋 道 ( 株 式 会 社 ジューキ 食 品 専 務 取 締 役 ) 久 保 田 淳 ( 前 株 式 会 社 食 文 化 企 画 担 当 ) 市 場 市 場 外 流 通 機 能 強 化 事 例 調 査 事 業 委 員 名 簿 委 員 長 廣 吉 勝 治 ( 国 立 大 学 校 法 人 北 海 道 大 学 大 学 院 教 授 ) 委 員 馬 場 治 ( 国 立 大 学 校 法 人 東 京 海 洋 大 学 教 授 ) 佐 野 雅 昭 ( 国 立 大 学 校 法 人 鹿 児 島 大 学 教 授 ) 甫 喜 本 憲 ( 独 立 行 政 法 人 水 産 大 学 校 講 師 ) 佐 々 木 貴 文 ( 函 館 短 期 大 学 専 任 講 師 ) 佃 朋 紀 ( 財 団 法 人 魚 価 安 定 基 金 業 務 部 部 長 ) 地 域 ブランド 創 出 事 例 調 査 事 業 委 員 名 簿 委 員 長 宮 澤 晴 彦 ( 国 立 大 学 校 法 人 北 海 道 大 学 大 学 院 准 教 授 ) 委 員 三 木 奈 都 子 ( 独 立 行 政 法 人 水 産 大 学 校 准 教 授 ) 副 島 久 実 ( 独 立 行 政 法 人 水 産 大 学 校 助 教 ) 佃 朋 紀 ( 財 団 法 人 魚 価 安 定 基 金 業 務 部 部 長 ) 空 白 ページ

目 次 まえがき 委 員 名 簿 第 1 章 市 場 流 通 市 場 外 流 通 機 能 強 化 事 例 について 3 Ⅰ. 韓 国 における 日 本 の 主 要 水 産 物 の 需 給 と 市 場 動 向 3 1. 課 題 と 背 景 3 2. 韓 国 における 水 産 物 需 給 と 水 産 物 貿 易 の 動 向 5 3. 韓 国 から 見 た 主 要 水 産 物 の 需 給 と 市 場 動 向 12 4. 結 論 29 Ⅱ. 和 歌 山 県 勝 浦 漁 業 協 同 組 合 における 生 鮮 マグロ 販 売 強 化 の 実 態 とその 意 義 31 1. 調 査 の 目 的 31 2. 勝 浦 漁 協 の 概 要 とその 特 徴 31 3. 勝 浦 漁 協 における 生 鮮 マグロ 販 売 への 新 たな 取 り 組 み 36 4. 勝 浦 漁 協 における 取 り 組 みの 意 義 ~ 産 地 市 場 機 能 向 上 の 視 点 から 38 Ⅲ. 福 井 県 の 産 地 市 場 統 合 による 水 産 物 流 通 構 造 の 変 化 40 1. はじめに 40 2. 福 井 県 の 漁 業 41 3. 敦 賀 市 場 と 早 瀬 市 場 の 統 合 44 4. 統 合 をひかえた 敦 賀 市 場 ならびに 早 瀬 市 場 の 現 状 46 5. 統 合 による 美 浜 町 漁 協 への 影 響 47 6. 統 合 による 若 狭 三 方 漁 協 への 影 響 51 7. 京 都 府 漁 連 舞 鶴 市 場 との 関 係 でみる 福 井 県 の 市 場 統 合 53 8. まとめ 55 Ⅳ.O 社 における 養 殖 魚 の 流 通 について 57 1. O 社 の 歴 史 と 会 社 概 要 57 2. O 社 の 特 徴 60 3. まとめ 61 Ⅴ. 浜 松 市 中 央 卸 売 市 場 の 現 状 について 64 1. 浜 松 市 中 央 卸 売 市 場 の 概 要 64 2. 市 場 取 扱 状 況 67 3. 卸 売 市 場 の 概 要 68 4. まとめ 73 Ⅵ. 郡 山 市 地 方 卸 売 市 場 の 現 状 について 76 1. 市 場 の 沿 革 76 2. 市 場 の 概 要 77 3. 市 場 取 扱 動 向 78

4. 卸 売 業 者 の 概 況 80 5. 郡 山 市 場 の 評 価 と 今 後 の 課 題 83 Ⅶ. 水 戸 市 公 設 地 方 卸 売 市 場 の 現 状 と 課 題 85 1. 水 戸 市 公 設 地 方 卸 売 市 場 の 概 要 85 2. 卸 売 業 者 の 動 向 88 3. 仲 卸 売 業 者 の 動 向 90 第 2 章 地 域 ブランド 創 出 事 例 について 91 Ⅰ. 宮 崎 県 及 び 高 知 県 における 水 産 物 地 域 ブランド 創 出 の 取 り 組 み 事 例 93 1. はじめに 93 2. 金 華 さば 金 華 ぎん 金 華 かつお 石 巻 魚 市 場 の 取 り 組 み 93 3. 伊 達 のぎん 97 4. 清 水 サバ 100 Ⅱ.フグの 地 域 ブランド 化 の 取 り 組 み 105 1. はじめに 105 2. フグの 供 給 と 流 通 の 変 化 と 現 状 105 3. フグの 地 域 ブランド 化 の 取 り 組 み 地 域 団 体 商 標 認 証 制 度 107 4. 東 海 地 区 における 天 然 トラフグの 地 産 地 消 ブランド 遠 州 灘 とらふぐ の 取 り 組 み 109 5. 福 岡 県 宗 像 市 鐘 崎 漁 協 の 玄 海 とらふぐ 113 6. 地 域 団 体 商 標 下 関 ふく 115 7. 考 察 119 Ⅲ. 漁 協 合 併 と 地 域 ブランドのその 後 について 大 分 県 の 事 例 121 1. 地 域 ブランドに 関 するこれまでの 県 漁 協 の 動 き 121 2. ブランドにかかわる 行 政 の 動 き 123 3. 関 ブランドをめぐる 新 たな 動 き 125 4. 最 後 に 128 Ⅳ. 馬 路 村 の 地 域 おこしの 事 例 129 1. はじめに 129 2. 地 域 ブランドの 取 り 組 み 129 3. まとめ 134 Ⅴ.アンコウのブランド 化 の 現 状 と 課 題 茨 城 県 と 山 口 県 下 関 市 を 事 例 として 135 1. はじめに 135 2. 茨 城 県 におけるアンコウのブランド 化 の 取 り 組 み 135 3. 山 口 県 下 関 におけるアンコウのブランド 化 の 取 り 組 み 141 4. おわりに どこに 価 値 を 見 出 すか 145

第 3 章 知 的 財 産 保 護 活 用 事 例 について 147 Ⅰ. 金 属 タグ 標 識 アバロン タグ の 取 り 組 みについて 149 1. はじめに 149 2. 知 的 財 産 の 概 要 149 3. アバロン タグの 活 用 実 態 151 4. まとめ 155 Ⅱ.F 社 の 鮮 度 保 持 氷 感 技 術 の 取 組 について 157 1. はじめに 157 2. 知 的 財 産 の 概 要 157 3. 知 的 財 産 の 活 用 実 態 159 4. 今 後 の 課 題 161 Ⅲ. 県 における 知 的 財 産 保 護 活 用 の 取 組 みについて 162 1. はじめに 162 2. 神 奈 川 県 の 知 的 財 産 に 関 する 取 組 み 162 3. 知 的 財 産 権 の 取 扱 い 業 務 163 4. 知 的 財 産 の 管 理 等 164 5. 水 産 における 実 例 と 課 題 165 6. まとめ 166 Ⅳ. 水 産 物 加 工 メーカーにおける 知 的 財 産 の 保 護 活 用 事 例 について 168 1. はじめに 168 2. T 社 の 事 例 168 3. K 社 の 事 例 170 4. まとめ 173 第 4 章 その 他 事 業 について 175 Ⅰ. 第 3 回 全 国 漁 村 女 性 加 工 サミット 177 1. 第 Ⅰ 部 試 食 会 と 情 報 交 換 会 の 集 い 177 2. 第 Ⅱ 部 情 報 交 換 会 ( 懇 親 会 ) 187 3. 第 Ⅲ 部 シンポジウム 191 Ⅱ. 第 2 回 系 統 子 会 社 情 報 交 換 会 200 1. 事 業 概 要 について 200 2. 第 2 回 系 統 子 会 社 情 報 交 換 会 の 内 容 について 200

第 1 章 市 場 流 通 市 場 外 流 通 機 能 強 化 事 例 について テスト 1

Ⅰ. 韓 国 における 日 本 の 主 要 水 産 物 の 需 給 と 市 場 動 向 スケトウダラ タチウオ 養 殖 マダイ( 活 魚 )の 中 心 に KMI 韓 国 海 洋 水 産 開 発 院 責 任 研 究 員 張 弘 碩 北 海 道 大 学 大 学 院 教 授 廣 吉 勝 治 1. 課 題 と 背 景 (1) 課 題 近 年 我 が 国 の 水 産 物 の 重 要 な 輸 出 先 として 韓 国 市 場 が 注 目 をされるところとなった その ため 韓 国 内 の 水 産 物 の 需 給 や 交 易 の 一 般 動 向 についてレビューすると 共 に 韓 国 において 近 年 輸 入 が 著 しい 日 本 産 のスケトウダラ タチウオ 養 殖 マダイ 等 を 実 例 としてその 需 給 や 消 費 流 通 動 向 を 把 握 し 今 後 を 展 望 することは 国 内 の 需 給 関 係 の 動 向 把 握 と 併 せ 重 要 な 調 査 課 題 となったと 言 える 本 稿 は 日 本 の 水 研 センターに 該 当 する 韓 国 海 洋 水 産 開 発 院 (KMI:Korea Maritime Institute) 責 任 研 究 員 張 弘 碩 の 調 査 員 報 告 を 踏 まえ 本 事 例 調 査 に 参 画 した 当 該 委 員 が 全 体 として 取 り 纏 めたものである 内 容 は 韓 国 内 の 水 産 物 需 給 や 交 易 の 一 般 動 向 近 年 輸 入 が 著 しい 日 本 産 のスケトウダラ タチウオ 養 殖 マダイ 等 の 需 給 や 消 費 流 通 動 向 並 びに 若 干 の 考 察 と 展 望 となっている (2) 背 景 と 状 況 変 化 1) 周 知 のように 韓 国 経 済 は 1997 年 のアジア 金 融 危 機 IMF 支 援 移 行 そして 2000 年 に 入 ってからの FTA 等 の 開 放 政 策 の 動 向 を 背 景 として 大 きな 変 化 を 見 せる 水 産 物 についても 輸 入 水 産 物 は 高 関 税 かつ 主 要 水 産 物 ( 国 内 生 産 の 供 給 比 重 が 高 い 水 産 物 )には 調 整 関 税 という 保 護 措 置 が 下 されていたのだが これが 完 全 開 放 の 政 策 により 韓 国 は 輸 入 国 に 移 行 した 1997 年 から 5 年 後 になる 2002 年 においては 韓 国 の 水 産 物 交 易 收 支 は 赤 字 に 転 化 した 図 1-1 に 見 るように 米 国 との FTA 交 渉 (2007.6.30 署 名 )は 2008 年 内 には 国 会 の 批 准 を 得 て 発 効 される 予 定 であるし いままでチリ(2004.4.1 発 効 )をはじめシンガポール(2006.3.2 発 効 ) EFTA(2006.9.1 発 効 ) 1 ASEAN( 商 品 及 びサービス 2007.12.21 署 名 )との FTA が 相 次 いで 妥 結 さ れた 現 在 交 渉 中 である FTA は 6 か 国 あり その 条 件 つくりを 始 めた FTA は5つある この ように 韓 国 の 経 済 政 策 において 国 際 化 は 主 要 な 路 線 となったのである 1.EFTA : (European Free Trade Association: 自 由 貿 易 連 合 ):ノルウェー スイス アイス ランド リヒテンシュタイン 公 国 などの4カ 国 が 会 員 国 の 間 に 交 易 障 壁 をなくすために 結 成 した 団 体 3

2) 高 度 成 長 を 続 けた 韓 国 経 済 は アジアの 軌 跡 と 賞 賛 され 1996 年 には OECD 加 盟 を 果 たし 先 進 諸 国 の 仲 間 入 りをした 一 方 1985 年 プラザ 合 意 ( 円 高 政 策 ) 以 降 における 半 導 体 を 中 心 とする 輸 出 不 振 ( 輸 出 産 業 の 対 日 競 争 力 の 縮 減 ) 中 国 の 市 場 進 出 等 を 遠 因 とし 多 額 の 資 本 流 出 を 契 機 として 通 貨 金 融 危 機 に 巻 き 込 まれ IMF 支 援 を 受 けることとなった その 後 の 経 済 の 回 復 においても 若 者 の 失 業 率 の 高 さ 経 済 格 差 拡 大 の 問 題 そして 今 回 の 金 融 危 機 におい て 国 民 消 費 のダメージは 大 きかった しかしながら 韓 国 における 水 産 物 消 費 は 増 加 及 び 維 持 の 基 調 を 続 けている 韓 国 の 水 産 物 需 給 は 水 産 物 供 給 の 大 国 として 成 長 している 隣 国 中 国 の 影 響 がすこぶる 大 きいことは 無 論 である 中 国 の 比 較 優 位 は 高 い しかし 水 産 物 の 交 易 は 教 科 書 通 りには 行 かない 問 題 がある 第 1に 生 産 の 季 節 性 という 問 題 サバを 事 例 に 揚 げると かつてはサバは 日 本 の 需 要 により 韓 国 から 日 本 へ 一 方 的 に 輸 出 されたが 2000 年 以 後 には 韓 国 の 夏 のサバ 漁 獲 が 乏 しくなり この 時 期 逆 に 日 本 から 輸 入 される 状 況 が 見 られた 第 2に い わゆる 国 の 食 文 化 を 背 景 にした 資 源 確 保 的 交 易 がある かつて 韓 国 はスケトウダラを 年 間 約 50 万 トン 以 上 の 需 要 を 背 景 に 国 内 の 沿 近 海 ( 主 に 東 海 : 日 本 海 )と 遠 洋 (ベーリング 海 )から 生 産 し ていたが 東 海 のスケトウダラ 資 源 はほぼ 全 滅 したし ベーリング 海 におけるロシアのクオー タも 2 万 5 千 トン 前 後 に 激 減 してしまった 特 に 鮮 魚 スケトウは 全 量 東 海 の 沿 近 海 に 依 存 して いたので その 代 用 として 1990 年 代 末 ごろから 北 海 道 から 鮮 魚 スケトウを 輸 入 し 今 日 に 至 る タチウオについても 状 況 はやや 似 ている 韓 日 漁 業 協 定 (1999)の 前 まで タチウオ 消 費 の 大 きい 韓 国 は 西 日 本 海 域 でタチウオ 資 源 を 大 量 に 捕 っていたが 韓 日 漁 業 協 定 によりタチウオ 狙 いの 漁 場 利 用 は 出 来 なくなった 他 方 日 本 市 場 ではタチウオは 高 く 評 価 されていないので 日 4

本 の 漁 業 者 は 元 々タチウオに 関 心 が 低 かったが タチウオの 相 場 があがっていた 韓 国 市 場 向 け にタチウオ 漁 業 に 転 向 する 漁 協 と 漁 業 者 が 西 日 本 では 増 えたのである 第 3に 技 術 的 な 要 因 を 含 んだ 生 産 の 棲 み 分 けという 状 況 韓 国 と 日 本 の 代 表 的 な 養 殖 魚 類 はヒラメ( 韓 国 )とマダイ ( 日 本 )である かつて 日 本 はヒラメの 養 殖 が 多 かったが 韓 国 からの 養 殖 ヒラメの 進 出 により 日 本 はヒラメをあきらめ 技 術 的 に 優 位 なマダイ 養 殖 へ 専 念 することになった 結 果 韓 国 の 市 場 では 国 内 産 ヒラメが 支 配 し( 日 本 も 国 内 産 の 倍 くらいの 輸 入 活 がある) 他 方 マダイは 日 本 産 が 支 配 し 韓 国 市 場 を 席 巻 している このような 要 因 からみると 韓 日 の 水 産 物 交 易 は 自 然 的 な 資 源 状 況 と 需 給 の 関 係 季 節 性 技 術 的 な 要 因 など 深 く 関 係 していると 思 われる この 側 面 の 検 討 が 重 要 である ここでは 代 表 的 な 魚 種 であるスケトウダラ タチウオ マダイを 取 り 上 げて 具 体 的 に 韓 日 水 産 物 交 易 の 特 徴 や 意 味 を 明 らかにする 3) 韓 国 経 済 は 昨 年 のリーマン B.の 破 綻 など 世 界 金 融 恐 慌 の 影 響 によって 再 びウオン 安 に 動 き 内 需 と 輸 出 の 不 振 雇 用 不 安 等 に 直 面 しているが 国 際 化 における 変 化 を 見 逃 すべきではない 例 えば 貿 易 貨 物 取 扱 におけるコンテナ 取 扱 ハブ 港 としての 地 位 についてであるが 1980 年 頃 は 世 界 のコンテナ 取 扱 数 ベスト10 位 に 入 る 港 は 韓 国 にはなかったが 2005 年 段 階 では 釜 山 が5 位 に 食 い 込 んでいる( 図 1-2) 中 国 がベスト10 位 に 香 港 上 海 深 セン 高 雄 ( 台 湾 )が 入 ってきている 動 きに 併 せた 動 向 である 日 本 は 1980 年 では 神 戸 が4 位 に 入 ってい たが 2005 年 では 神 戸 東 京 横 浜 いずれも20 位 以 下 であ る 日 本 はもはや 国 際 ハブとし ての 地 位 を 築 くことは 不 可 能 であろう これに 対 して 韓 国 は ハブ 港 としての 意 識 的 取 組 を 続 けた 結 果 港 湾 では 釜 山 空 港 貨 物 では 仁 川 がそれぞれ 台 頭 している 訳 である また 昨 年 9 月 釜 山 港 に 中 国 ロシア 日 本 等 との 水 産 物 取 引 を 専 門 的 に 引 き 受 けるための 釜 山 国 際 水 産 物 卸 売 市 場 が 釜 山 岩 南 洞 甘 川 港 にオープンした( 敷 地 11 万 1600 m2 2010 年 目 標 年 間 50 万 トン) 韓 国 における 水 産 物 の 物 流 拠 点 整 備 は 国 内 の 水 産 物 市 場 の 動 向 を 占 う 要 素 として 無 視 できないものである 2. 韓 国 における 水 産 物 需 給 と 水 産 物 貿 易 の 動 向 2-1. 水 産 物 需 給 2000 年 代 に 入 り 韓 国 の 水 産 物 需 給 をめぐる 大 きな 変 化 は 輸 入 が 増 え 2000 年 前 まで 黒 字 で あった 水 産 物 貿 易 収 支 が 赤 字 に 変 わった これにより 韓 国 の 水 産 物 自 給 率 も 右 下 がりとなって 5

いる ここでは 韓 国 における 水 産 物 の 需 給 関 係 を 調 べると 同 時 に 水 産 物 の 交 易 の 動 向 をみる このため 韓 国 農 林 水 産 食 品 部 の 漁 業 生 産 統 計 や 韓 国 貿 易 協 会 の 貿 易 統 計 を 利 用 する 表 2-1を 参 照 されたい これは 韓 国 における 水 産 物 の 需 給 関 係 の 長 期 統 計 であり 国 民 年 間 一 人 当 たり 消 費 量 ( 供 給 量 ) 及 び 自 給 率 計 算 の 元 資 料 である 輸 出 入 量 は 原 魚 に 換 算 して いる これから 見 られる 特 徴 は 以 下 の 通 り 第 1に 近 年 の 動 向 を 一 見 すると 輸 出 の 停 滞 輸 入 の 増 加 国 内 消 費 仕 向 けの 増 加 ( 国 民 消 費 の 増 加 ) 水 産 物 自 給 率 の 低 下 等 の 傾 向 がうかがえるが 国 内 生 産 量 の 動 向 においてさほ どの 落 ち 込 みのないことが 注 目 される 韓 国 は 漁 業 国 として 成 長 し 国 内 生 産 は 1986 年 に 366 万 トンでヒ ークを 迎 えるが 1998 年 に 300 万 トンを 割 り 込 み 後 退 期 に 入 る しかし 約 250 万 トンに 減 退 してからは 2005 年 から 再 び 上 昇 に 転 じ 2006 年 は 300 万 トン 台 に 回 復 している 漁 業 生 産 の 部 門 別 内 容 を 長 期 にレビューすると( 図 2-1) 遠 洋 漁 業 の 縮 減 (1992 がヒ ークで 102 万 トン) と それに 継 ぐ 一 般 海 面 漁 業 ( 沿 岸 沖 合 )の 減 少 (1996 がヒ ークで 162 万 トン)に 見 舞 われたが 浅 海 養 殖 の 発 展 がこれ 表 2-1. 韓 国 における 水 産 物 の 需 給 関 係 ( 千 トン) らの 動 きを 相 殺 した 供 給 消 費 消 費 量 自 給 率 年 度 合 計 生 産 輸 入 在 庫 国 内 輸 出 繰 越 (kg/ 人 ) (%) 養 殖 生 産 は 2000 年 の 65 1965 637 - - 637 534 103-18 119.3 万 トンから 2007 年 の 1970 935 - - 935 776 159-17.3 120.5 1975 2,135 - - 2,135 1,562 573-29.9 136.7 139 万 トンまで 2 倍 強 の 1980 2,410 - - 2,519 1,746 696-27 138 生 産 増 加 を 見 た 1985 3,103 91 93 3,287 2,318 867 110 37.2 133.9 1990 3,275 380 276 3,931 2,583 1,058 290 36.2 126.8 第 2に 水 産 物 輸 出 1995 3,348 948 460 4,756 3,215 1,170 371 45.1 104.1 入 の 動 向 を 見 ると 量 1996 3,244 1,205 371 4,820 3,202 1,191 427 43.7 101.3 1997 3,244 1,189 427 4,860 3,187 1,193 480 43.6 101.8 的 には 1996 年 に 輸 入 が 1998 2,835 753 480 4,086 2,395 1,354 319 34.7 118.4 輸 出 を 凌 駕 する 輸 出 1999 2,911 1,332 319 4,562 2,748 1,232 582 38.3 105.9 2000 2,514 1,420 582 4,516 2,699 1,338 510 36.8 93.1 量 は 1998 年 をヒ ークにそ 2001 2,665 1,806 510 4,981 3,260 1,080 640 42.2 81.7 の 後 横 バイで 推 移 し 2002 2,476 2,226 641 5,343 3,433 1,140 700 44.7 72.1 2003 2,486 2,268 769 5,523 3,578 1,202 743 44.9 69.5 輸 入 量 は 2000 年 前 後 か 2004 2,519 2,478 573 5,569 3,922 1,116 531 49 64.2 ら 急 角 度 の 上 昇 を 示 す 2005 2,714 2,557 531 5,802 4,169 1,121 512 48.1 65.1 2006 3,032 2,646 512 6,160 4,568 1,047 575 66.4 金 額 的 には 2001 年 から 注 : 自 給 率 = 国 内 生 産 国 内 消 費 100 輸 出 入 のサヤが 交 差 し 資 料 : 農 林 水 産 食 品 部 漁 業 生 産 統 計 韓 国 貿 易 協 会 貿 易 統 計 農 村 経 済 研 究 院 食 品 需 給 表 輸 入 拡 大 傾 向 がより 明 確 になる( 図 2-2) 2001 年 以 降 韓 国 の 水 産 物 交 易 は 赤 字 基 調 となるのであ る 図 2-1. 韓 国 における 漁 業 別 生 産 量 の 年 度 別 推 移 第 3に かくして 物 量 ベースで 見 た 水 産 物 の 自 給 率 は 2000 年 に 100% を 割 り 込 んでからは 減 少 傾 向 をたどっている 現 状 では40%を 輸 入 に 依 存 しなければならな 資 料 : 韓 国 農 林 水 産 食 品 部 漁 業 生 産 統 計 6

い しかしながら このような 供 給 側 の 変 化 の 中 で 国 民 1 人 当 たり 水 産 物 の 消 費 量 (1 人 当 たり 供 給 量 )は 1998 年 ~1999 年 の 韓 国 金 融 危 機 を 除 いて 増 加 し 2005 年 には 1 人 当 たり 水 産 物 消 費 量 が 48.1 kgとなった 国 民 消 費 の 構 造 変 化 を 伴 った 輸 入 増 加 ( 自 給 率 減 少 ) ということである 2-2. 韓 国 から 見 た 水 産 物 貿 易 の 動 向 (1) 韓 日 の 水 産 物 貿 易 の 概 要 ここでは 韓 日 の 水 産 物 交 易 に 関 する 全 体 的 な 状 況 を 見 ることが 目 的 である 韓 国 側 を 基 準 と して 韓 国 の 水 産 物 交 易 の 中 での 日 本 の 位 置 付 けと 動 向 について 概 括 的 に レビューする まず 韓 日 における 水 産 物 の 貿 易 は 図 2-3に 見 るように 現 在 のところ 韓 国 が 黒 字 収 支 となっ ている しかし その 流 れとしては 韓 国 から 日 本 への 水 産 物 輸 出 は 1997 年 の 10 億 ドル 強 から 10 年 後 の 2007 年 には 5 億 7 千 万 ドル 強 と 44%も 減 少 し ており なお 縮 減 の 傾 向 は 続 いている これに 比 べ 日 本 から 韓 国 に 輸 入 され る 水 産 物 は 1997 年 の 7200 万 ドルから 2007 年 には 3.8 倍 強 も 増 え 2 億 7 千 万 ドル 強 となった その 結 果 韓 日 の 水 産 物 貿 易 収 支 は 韓 国 側 の 黒 字 状 況 が 続 くものの その 幅 は 大 幅 に% 減 少 し ているのである かつて 韓 国 は 水 産 物 を 日 本 に 一 方 的 に 輸 出 するもっぱら 外 貨 獲 得 の 相 手 国 であったが 2000 年 以 後 の 動 向 は 水 産 物 の 相 互 交 易 が 特 徴 となりつつあると 言 える (2) 日 本 からの 輸 入 動 向 日 本 から 韓 国 へ 輸 出 された 水 産 物 ( 韓 国 側 では 輸 入 水 産 物 )の 交 易 動 向 は 表 2-2のようであ る 輸 入 の 増 加 傾 向 に 沿 うようにして 日 本 からの 水 産 物 輸 入 も 増 加 している 量 的 には 1997 年 から 2007 年 の 10 年 間 に 27,235 トンから 126,316 トンまで 4.7 倍 増 えた とくに 2000 年 以 降 の 増 加 が 著 しい 7

表 2-2. 日 本 から 韓 国 への 水 産 物 の 輸 入 量 と 輸 入 額 ( 単 位 : 千 ドル トン ドル/kg) 輸 入 額 ( 千 ドル) 輸 入 量 (トン) 単 価 年 度 比 重 比 重 単 価 差 全 体 日 本 産 全 体 日 本 産 全 体 日 本 産 (%) (%) (%) 1997 1,045,474 71,650 6.9 522,381 27,235 5.2 2 2.6 30 1998 587,481 37,637 6.4 375,224 18,482 4.9 1.6 2 25 1999 1,178,968 107,206 9.1 746,327 52,085 7 1.6 2.1 31.3 2000 1,410,598 185,109 13.1 749,191 67,741 9 1.9 2.7 42.1 2001 1,648,372 139,129 8.4 1,056,252 69,679 6.6 1.6 2 25 2002 1,884,417 146,497 7.8 1,186,400 74,536 6.3 1.6 2 25 2003 1,961,145 148,699 7.6 1,238,603 69,257 5.6 1.6 2.1 31.3 2004 2,261,356 180,620 8 1,280,915 104,536 8.2 1.8 1.7-5.6 2005 2,383,574 173,140 7.3 1,256,142 81,332 6.5 1.9 2.1 10.5 2006 2,769,348 224,311 8.1 1,377,101 108,702 7.9 2 2.1 5 2007 3,056,368 273,477 8.9 1,391,506 126,316 9.1 2.2 2.2 0 資 料 : 韓 国 貿 易 協 会 貿 易 統 計 このことは 輸 入 額 についても 同 様 であるが 表 から 判 るように 日 本 から 韓 国 へ 輸 出 される 水 産 物 は 相 対 的 に 高 い 単 価 ( 市 場 で 評 価 の 高 い 水 産 物 )であることが 基 本 的 特 徴 であったが 2004 年 からはこのような 状 況 が 変 わり 始 め 最 近 では 韓 国 の 水 産 物 輸 入 市 場 で 日 本 産 は 高 い 単 価 を 実 現 してはいない 水 産 物 輸 入 の 構 造 消 費 市 場 の 分 化 差 別 化 の 態 様 及 び 水 産 物 商 品 生 産 の 分 業 化 の 内 容 等 に 一 定 の 変 化 が 起 こっていることの 反 映 であろうと 思 われる このような 相 対 価 格 水 準 の 変 化 を もたらした 明 確 な 要 因 は 水 産 物 貿 易 における 中 国 や ロシアの 台 頭 であ る 表 2-3に 示 したように 韓 国 に おける 最 大 の 輸 入 先 は 中 国 であり 次 いでロシアであ る 2007 年 におい て 中 国 とロシア 両 国 が 韓 国 の 全 水 産 物 輸 入 に 占 める 割 合 は 全 体 輸 入 数 量 :139 万 トンの 58% 全 体 輸 入 金 額 :31 億 ト ルの 49%である 日 本 のシェアは 数 量 でも 金 額 でも 約 9% 程 度 であり 中 国 やロシアには 及 ばない 漁 業 も 養 殖 も 資 源 生 産 コスト 面 で 競 争 力 ある 両 国 の 輸 出 攻 勢 には 叶 わない 表 2-3. 韓 国 における 国 別 水 産 物 輸 入 (2007 年 ) 輸 入 額 ( 千 ドル) 輸 入 量 (トン) 順 位 国 家 ( 順 位 国 家 ( 順 位 金 額 比 重 (%) 別 ) 別 ) 数 量 比 重 (%) 1 PR.CHNA 1,070,862 35 PR.CHNA 532,593 38.3 2 RUSSIAN 423,392 13.9 RUSSIAN 273,884 19.7 3 JAPAN 273,477 8.9 JAPAN 126,316 9.1 4 VIETNAM 267,964 8.8 VIETNAM 92,021 6.6 5 THAILND 149,270 4.9 U.S.A 55,811 4 6 U.S.A 144,242 4.7 TAIWAN 45,169 3.2 7 TAIWAN 83,342 2.7 CHILE 42,386 3 8 CHILE 80,050 2.6 THAILND 37,332 2.7 9 NORWAY 61,615 2 INDNSIA 25,221 1.8 10 INDNSIA 55,280 1.8 NORWAY 15,166 1.1 etc 446,874 14.6 etc 145,607 10.5 合 計 3,056,368 100 合 計 1,391,506 100 資 料 : 韓 国 貿 易 協 会 貿 易 統 計 いずれにせよ 韓 国 の 水 産 物 輸 入 は 中 国 ロシア 日 本 の 3 カ 国 がメインであるが 日 本 の 場 合 は 図 2-3に 見 たように 韓 国 からの 水 産 物 輸 入 ( 韓 国 にとっては 輸 出 )がなお 大 宗 として ありつつ 水 産 物 輸 出 の 増 加 傾 向 を 示 しているという 点 が 特 徴 的 である 次 に HS-CODE 別 品 目 別 に 韓 国 の 対 日 水 産 物 輸 入 の 特 徴 をいちべつする( 表 2-4) 第 1に 韓 国 にとって 日 本 は 生 鮮 / 冷 蔵 スケトウダラの 主 なる 輸 入 先 である 韓 国 は 1990 年 代 末 から 東 海 ( 日 本 海 )でのスケトウダラ 漁 獲 がほぼなくなった それで 年 間 40 万 トン 8

に 及 ぶスケトウダラ 国 内 需 給 に 問 題 が 生 じ 日 本 からの 生 産 / 冷 蔵 スケトウダラ 供 給 は 2000 年 代 において 構 造 化 された 第 2に 日 本 からの 水 産 物 輸 入 商 品 は 品 目 にこだわりがある 2003 年 対 日 輸 入 水 産 物 の 上 位 10 品 目 の 集 中 率 は 70.2%( 輸 入 量 基 準 )と 63.6%( 輸 入 額 基 準 )であった しかし 2007 年 には これが 各 々82.1%と 69.1%と 上 昇 している 2007 年 スケトウを 筆 頭 にサバ タチウオ サン マの4 魚 種 5 品 目 で 数 量 の 65%を 占 めた 表 2-4.HS-Code 品 目 名 でみた 日 本 産 水 産 物 の 輸 入 動 向 (2003 年 と2007 年 ) 2003 年 HS-CODE HS 品 目 名 輸 入 量 (トン) 比 重 (%) 輸 入 額 ( 千 ドル) 比 重 (%) 302691000 新 鮮 冷 蔵 スケトウダラ 18,208 26.1 37,980 25.5 301994090 タイ(その 他 ) 1,993 2.9 12,842 8.6 302693000 新 鮮 冷 蔵 タチウオ 1,958 2.8 8,197 5.5 303799099 冷 凍 その 他 (アンコウ アナゴ ガ ンギエイ エイ Milkfishを 除 い 11,940 17.1 7,860 5.3 た 冷 凍 した 魚 類 ) 307911200 アワビ( 活 新 鮮 / 冷 蔵 ) 94 0.1 5,389 3.6 302699090 その 他 の 魚 類 ( 新 鮮 / 冷 蔵 ) 2,570 3.7 5,190 3.5 303791000 冷 蔵 スケトウダラ 6,623 9.5 5,175 3.5 303802010 タラコ 535 0.8 4,641 3.1 301997000 アナゴ( 活 ) 603 0.9 4,016 2.7 307911990 その 他 の 軟 体 動 物 ( 活 新 鮮 / 冷 蔵 ) 4,391 6.3 3,492 2.3 その 他 20,751 29.8 53,917 36.4 合 計 69,666 100 148,699 100 2007 年 HS-CODE HS 品 目 名 輸 入 量 (トン) 比 重 (%) 輸 入 額 ( 千 ドル) 比 重 (%) 302691000 新 鮮 冷 蔵 スケトウダラ 20,490 16.1 48,325 17.7 302693000 新 鮮 冷 蔵 タチウオ 7,599 6 37,171 13.6 303740000 冷 凍 サバ 33,210 26.3 30,819 11.3 301994090 タイ( 活 その 他 ) 3,401 2.7 27,103 9.9 307919039 ホヤ( 活 新 鮮 / 冷 蔵 ) 6,484 5.1 9,466 3.5 303791000 冷 蔵 スケトウダラ 10,807 8.6 8,588 3.1 302699090 その 他 の 軟 体 動 物 ( 活 新 鮮 / 冷 蔵 ) 3,156 2.5 8,236 3 303798000 冷 凍 サンマ(サヨリ 含 み) 9,582 7.6 7,112 2.6 303799099 冷 凍 その 他 (アンコウ アナゴ ガ ンギエイ エイ Milkfishを 除 い 8,800 7 6,178 2.3 た 冷 凍 した 魚 類 ) 301999059 スズキ(( 活 ) 959 0.8 6,125 2.2 その 他 合 計 21,828 17.3 84,354 30.8 126,316 100 273,477 100 注 :HS 品 目 の 順 位 は 輸 入 額 を 基 準 とした 資 料 : 韓 国 貿 易 協 会 貿 易 統 計 第 3に 韓 国 は 伝 統 的 国 内 生 鮮 生 食 需 要 を 満 たすために 日 本 の 水 産 物 を 輸 入 し ていることだ スケ トウ サバ タチウ オである サバは 韓 国 と 日 本 のサバ 漁 期 の 差 異 端 境 期 によ る タチウオはかつ て 韓 国 では 高 い 魚 種 表 2-5. 韓 国 の 国 別 水 産 物 輸 出 (2007 年 ) 輸 出 額 ( 千 ドル) 輸 出 量 (トン) 順 位 国 家 ( 順 位 国 家 ( 順 位 金 額 比 重 (%) 別 ) 別 ) 数 量 比 重 (%) 1 JAPAN 572,908 46.7 PR.CHNA 142,169 26.5 2 PR.CHNA 156,565 12.8 JAPAN 102,189 19.1 3 U.S.A 98,876 8.1 THAILND 69,253 12.9 4 THAILND 87,678 7.2 NEWZLND 40,942 7.6 5 NEWZLND 68,293 5.6 SPAIN 29,179 5.4 6 SPAIN 58,655 4.8 U.S.A 20,857 3.9 7 ITALY 25,346 2.1 PHIL.R 16,081 3 8 TAIWAN 17,540 1.4 CUBA 15,733 2.9 9 PHIL.R 12,594 1 VIETNAM 13,400 2.5 10 HGKONG 11,331 0.9 INDONESIA 11,754 2.2 その 他 116,046 9.5 その 他 74,452 13.9 合 計 1,225,832 100 合 計 536,009 100 資 料 : 韓 国 貿 易 協 会 貿 易 統 計 9

ではなかったが 漁 場 を 失 ったことにより 評 価 が 高 まり 近 年 はジェジュ 島 近 海 で 銀 タチウ オ と 呼 ばれる 高 価 ブランドも 現 れ 稀 少 資 源 として 日 本 からも 輸 入 している (3) 日 本 への 輸 出 動 向 日 本 は 韓 国 にとって 主 な 水 産 物 の 輸 出 市 場 であったし 現 在 でもそうである 表 2-5に 見 るように 2007 年 を 基 準 としてみると 韓 国 の 輸 出 のなかで 日 本 は 量 の 19% 金 額 の 47%である 韓 国 が 日 本 へ 輸 出 した 水 産 物 は 2003 年 には 232 品 目 (HS-CODE 基 準 )であったが 2007 年 には 200 品 目 となった 同 じ 期 間 に 輸 出 量 は 15 万 トンから 10 万 トンになり 500%の 減 少 輸 出 額 は 741 百 万 ドルから 573 百 万 ドルになり 23% 減 少 した 国 内 生 産 の 減 少 と 国 内 消 費 の 発 展 で 日 本 への 消 費 が 減 退 し 調 整 されたとはいえ 水 産 物 輸 出 において 日 本 の 存 在 は 欠 かせない 数 量 で は 中 国 が 第 1 位 であるが これは 日 本 への 輸 出 が 最 終 消 費 或 いは 中 高 級 水 産 物 である 反 面 中 国 への 輸 出 は 加 工 原 料 中 心 であるからだ 中 国 との 交 易 は 物 量 では 輸 入 も 輸 出 も 第 1 位 であ る これは 北 東 アジアに 共 通 した 特 徴 として 注 目 をしておく 必 要 がある 輸 出 水 産 物 の 内 容 を 見 ると さほど 大 きな 変 化 はなく 品 目 の 多 様 性 が 進 んでいるわけでも ないが 品 目 の 特 性 には 注 目 しなければならない( 表 2-6) 2007 年 の 量 的 金 額 的 には 冷 凍 のメバチとキハダという 赤 身 マグロが 数 量 金 額 とも 全 体 の 約 20%を 占 め 相 変 わらずトップ である 勿 論 数 量 は 2003 年 と 比 べても 半 減 であ 活 ヒラメ 活 アナゴの 取 扱 も 特 徴 的 で 金 額 的 に 10% 程 度 を 占 める 伝 統 的 に 対 日 輸 出 へ 強 かったカキなどの 実 績 は 著 しく 減 少 している 代 わりにアワビなどは 対 日 輸 出 は 増 えている 韓 国 水 産 物 の 輸 出 の 減 退 が 生 じているマクロ 的 要 因 としては 2007 年 までのウォン 高 傾 向 沿 岸 資 源 国 の 資 源 自 国 化 (これによりマグロ 漁 業 の 競 争 深 化 ) 韓 国 以 外 の 国 からの 日 本 市 場 攻 略 日 本 の 食 品 安 全 性 の 強 化 日 本 消 費 者 の Life-style の 変 化 などがある 韓 国 内 の 事 情 と しては 水 産 物 市 場 の 成 長 資 源 減 少 による 余 裕 分 の 減 少 養 殖 環 境 の 悪 化 と 養 殖 水 産 物 の 品 質 低 下 (サイズ 目 減 りなど)などがある 10

表 2-6.HS-Code 品 目 名 でみた 日 本 への 水 産 物 輸 出 動 向 (2003 年 と2007 年 ) 2003 年 HS-CODE HS 品 目 名 輸 出 量 (トン) 比 重 (%) 輸 出 額 ( 千 ドル) 比 重 (%) 303440000 冷 凍 メバチ 18,794 12.5 104,198 14.1 303420000 冷 凍 キハダ 22,984 15.3 60,823 8.2 1604302000 魚 卵 で 製 造 したCaviar 代 用 物 3,046 2 48,350 6.5 301998000 ヒラメ( 活 ) 4,012 2.7 46,700 6.3 304299000 冷 凍 その 他 4,912 3.3 36,322 4.9 1212203010 乾 燥 させたヒジキ 4,503 3 34,949 4.7 1605101090 その 他 のかに 肉 ( 製 造 又 は 貯 蔵 処 理 し たもの) 2,685 1.8 28,666 3.9 304191010 新 鮮 冷 蔵 アナゴヒレー 3,249 2.2 26,865 3.6 307911590 その 他 アカガイ( 活 新 鮮 冷 蔵 ) 2,808 1.9 24,467 3.3 307102000 冷 凍 カキ 5,087 3.4 20,098 2.7 その 他 合 計 73,082 52 431,438 41.8 150,275 100 740,860 100 2007 年 HS-CODE HS 品 目 名 輸 出 量 (トン) 比 重 (%) 輸 出 額 ( 千 ドル) 比 重 (%) 303440000 冷 凍 メバチ 12,490 12.2 87,141 15.2 304299000 冷 凍 その 他 7,898 7.7 70,691 12.3 301998000 ヒラメ( 活 ) 3,046 3 41,419 7.2 1605101090 その 他 のかに 肉 ( 製 造 又 は 貯 蔵 処 理 し たもの) 2,993 2.9 25,718 4.5 1212203010 乾 燥 させたヒジキ 2,964 2.9 23,300 4.1 303420000 冷 凍 キハダ 7,047 6.9 21,868 3.8 304191010 新 鮮 冷 蔵 アナゴヒレー 2,128 2.1 18,194 3.2 303490000 その 他 のマグロ( 冷 凍 ) 3,093 3 17,336 3 307911200 アワビ( 活 新 鮮 / 冷 蔵 ) 376 0.4 14,973 2.6 301995000 活 アナゴ 1,935 1.9 14,316 2.5 その 他 58,217 57 237,952 41.5 合 計 102,189 100 572,908 100 注 :HS 品 目 の 順 位 は 輸 入 額 を 基 準 とした : 韓 国 貿 易 協 会 貿 易 統 計 2-3.これからの 展 望 今 韓 国 の 水 産 物 需 給 は 輸 入 水 産 物 なしでは 混 乱 の 道 になるのは 当 然 である 他 方 政 府 は 農 水 産 の1 次 産 業 に 対 して2 3 次 産 業 化 を 意 図 している この 達 成 手 段 として 韓 国 は 水 産 物 の 輸 出 に 集 中 しようとしている しかし かつても 今 も 韓 国 にとって 世 界 最 大 の 水 産 物 市 場 で ある 日 本 への 輸 出 は 年 々 減 少 している さらに 2004~5 年 に 推 進 された 韓 日 FTA は 決 裂 状 況 に あってモタついている 今 後 の 韓 日 水 産 物 貿 易 について その 影 響 を 及 ぼす 要 因 と 環 境 に 鑑 み て 以 下 のように 展 望 する 第 1に 流 動 化 グローバル 化 する 世 界 の 水 産 物 の 変 化 にどう 対 応 するかである 韓 日 水 産 物 貿 易 の 流 れは 趨 勢 的 に 韓 国 側 の 黒 字 幅 が 減 っている 逆 に 日 本 側 の 赤 字 幅 が 縮 小 している 筈 である もし この 状 況 が 変 わらないまま 続 くとすれば 韓 日 水 産 物 の 貿 易 収 支 幅 は 次 第 に 狭 くなってくる その 場 合 水 産 物 或 いは 水 産 業 をめぐる 動 きが 環 境 Food-miles Food-system 等 の 強 化 などの 問 題 にどう 対 応 していくか 両 国 の 水 産 物 貿 易 はどういう 影 響 を 受 けるだろう か 第 2に 韓 日 の 水 産 物 貿 易 は これから 双 方 の 市 場 を 水 産 業 が 競 合 と 棲 み 分 けにより 共 有 す る 状 況 において 展 開 する 部 分 も 出 てくることは 間 違 いない かつて 韓 国 の 水 産 物 を 日 本 が 輸 入 する 構 造 から 同 じ 水 産 物 でも 資 源 の 特 性 季 節 性 品 質 食 文 化 などにより 相 互 移 動 する 構 造 に 変 化 することである これは 中 国 台 湾 を 含 め 北 東 アジア 地 域 における 水 産 物 貿 易 の 水 11

平 分 業 的 展 開 を 担 う 存 在 として 位 置 づけておくべきであろうと 思 われる 第 3に これからの 水 産 業 に 対 する 各 国 の 産 業 政 策 に 係 わる 展 望 である 両 国 の 政 府 は 強 い 水 産 業 づくり 攻 めの 農 政 づくりの 幕 をあげた つまり 両 国 の 水 産 業 は 特 に 漁 業 は 零 細 性 という 点 で 非 常 に 似 ている この 克 服 のために 果 たして 誰 がどのように 物 を 海 外 に 出 し て 売 ることができるか 両 国 の 垣 根 が 低 くなったところで どのように 産 業 調 整 を 図 るか ど のように 合 理 的 な 政 策 を 開 くのかが 重 要 である 3. 韓 国 から 見 た 主 要 水 産 物 の 需 給 と 市 場 動 向 3-1.スケトウダラ (1) 需 給 の 全 体 状 況 韓 国 においてスケトウダラ 資 源 は 非 常 に 重 要 なものであり また 長 く 消 費 の 伝 統 を 有 する 民 族 的 食 材 といえる 水 産 物 である かつては 主 に 韓 国 の 東 海 ( 日 本 海 )で 底 曳 網 漁 業 と 延 縄 漁 業 により 多 くとれたが 今 は 資 源 がほぼ 枯 渇 したといわれ 漁 獲 量 も 少 ない 表 3-1に 見 るように 韓 国 においてスケトウダラの 需 要 (2000 年 以 後 )は 偏 差 はあるものの 年 間 約 37トンぐらいである 自 給 率 計 算 ( 国 内 生 産 / 国 内 消 費 )で 見 ると 1990 年 の87.4%か ら2005 年 には6.8%まで 下 がった 遠 洋 漁 業 生 産 の 急 落 が 主 要 因 である しかし スケトウに 対 する 根 強 い 消 費 者 により1 人 当 たり 消 費 量 は 落 ちていない 表 3-1.スケトウダラの 需 給 動 向 (トン) 需 要 供 給 1 人 当 り 自 給 率 国 内 消 費 輸 出 次 年 繰 越 合 計 生 産 前 年 在 庫 消 費 量 (%) 輸 入 小 計 沿 近 海 遠 洋 (kg) 1990 298,745 161,093 42,081 501,919 261,229 9,798 251,431 204,867 35,823 11.1 87.4 1995 479,091 19,553 45,722 544,366 371,848 6,903 364,945 131,121 41,397 10.23 77.6 1997 502,412 19,226 60,000 581,638 338,751 6,373 332,378 187,465 55,422 8.52 67.4 1998 322,989 62,756 36,703 422,448 236,375 6,232 230,143 126,073 60,000 7.06 73.2 1999 305,222 13,917 73,501 392,640 147,112 1,392 145,720 208,825 36,703 6.61 48.2 2000 289,645 7,355 51,938 348,938 86,832 766 86,066 188,605 73,501 6.44 30 2001 442,243 8,800 43,225 494,268 199,330 207 199,123 243,000 51,938 9.22 45.1 2002 332,097 7,714 46,250 386,061 25,040 215 24,825 317,796 43,225 7.08 7.5 2003 374,344 12,487 95,470 482,301 22,132 242 21,890 413,919 46,250 7.94 5.9 2004 412,714 14,391 78,960 506,065 20,061 64 19,997 390,532 95,472 8.71 4.9 2005 382,937 8,137 55,151 446,225 26,029 26,004 341,236 78,960 6.8 注 : 輸 入 と 輸 出 にはスケトウダラの 加 工 品 をラウンド 状 態 に 換 算 している 資 料 : 農 林 水 産 食 品 部 ( 旧 海 洋 水 産 部 ) 水 産 物 需 給 及 び 価 格 便 覧 2006.9. スケトウは1990 年 に 約 16 万 トンを 海 外 に 輸 出 した 経 緯 もある しかし その 以 後 の 国 内 の 生 産 減 少 により ほぼ 全 量 を 海 外 からの 輸 入 に 依 存 するに 至 るのである 12

(2)スケトウダラの 国 内 生 産 1)スケトウダラは 東 北 アジアの 代 表 的 な 寒 流 性 の 魚 種 として 北 太 平 洋 ベリング 海 韓 国 の 東 海 ( 日 本 海 )などに 分 布 している 産 卵 期 は 12 月 から 翌 年 3 月 である 韓 国 では 従 来 延 縄 底 曳 き 網 刺 網 定 置 網 などの 漁 法 でスケトウを 獲 って 来 た 図 3-1. 韓 国 からみたスケトウダラの 回 遊 図 2) 図 3-2を 参 照 されたい 韓 国 にお けるスケトウの 国 内 生 産 量 は 1995 年 の 34 万 トンをピークとして 急 減 する これ を 沿 近 海 と 遠 洋 漁 業 に 分 けてみると 遠 洋 漁 業 の 生 産 が 国 内 生 産 の 95% 以 上 を 占 めている 特 に 2000 年 に 入 ってからは 99% 以 上 が 遠 洋 漁 業 に 依 存 している 沿 近 海 の 生 産 量 は 1991 年 の 1 万 トンから 2007 年 の 35 トンまで 急 落 の 一 路 であ った これは 韓 国 の 東 海 の 水 温 の 変 化 乱 獲 による 資 源 減 少 が 原 因 であると 推 測 されている 遠 洋 の 生 産 はスケトウダ 千 トン 図 3-2 韓 国 におけるスケトウダラの 国 内 生 産 の 推 移 資 料 : 統 計 庁 漁 業 生 産 統 計 遠 沿 ラの 資 源 国 であるロシアや 米 国 の 資 源 保 護 政 策 を 要 因 とした 変 動 である 2002 年 以 後 米 国 が 全 面 的 な 自 国 EEZ 内 の 外 国 漁 船 の 操 業 を 禁 止 したことで 急 減 し 生 産 が 2 万 トンぐらいで 留 ま っているのは ロシアが 韓 国 への 入 漁 割 当 を 許 可 しているからだ 3) 一 方 表 3-2よりみて 沿 近 海 スケトウの 主 な 操 業 は 沿 岸 刺 網 によるものである 2003 年 ~2007 年 の 平 均 生 産 量 を 操 業 方 式 別 に 分 けて 見 ると 沿 岸 刺 網 が 全 体 ( 85.2 ト ン ) の 72.3% に 当 たる 61.6 トンを 獲 った ほかには 小 型 巻 網 が 10.6 トンで 12.4% を 占 め て い る 沿 近 海 で 沿 岸 刺 網 や 小 型 巻 網 で 獲 れたスケトウは 新 鮮 冷 蔵 スケト ウダラとして 鮮 魚 流 通 に 回 される 表 3-2. 韓 国 における 沿 近 海 スケトウダラの 操 業 方 式 別 年 平 均 生 産 量 (2003~2007 年 の 平 均 ) 生 産 量 生 産 金 額 生 産 価 格 トン 比 重 (%) 千 ウォン 比 重 (%) (ウォン/kg) 合 計 85.2 100 502,777 100 5,901 東 海 区 汽 船 底 曳 網 0 0 442 0.1-1 隻 曳 西 南 海 区 汽 船 底 曳 0 0 2,637 0.5 - 東 海 区 トロ-ル 0 0 102 0 - 小 型 巻 網 10.6 12.4 14,430 2.9 1,361 沖 合 刺 網 0.2 0.2 1,347 0.3 6,737 沿 岸 刺 網 61.6 72.3 439,066 87.3 7,128 沿 岸 複 合 0.6 0.7 4,388 0.9 7,314 定 置 網 3.4 4 23,592 4.7 6,939 その 他 の 区 画 0.2 0.2 1,496 0.3 7,479 その 他 の 漁 業 8.6 10.1 15,277 3 1,776 資 料 : 統 計 庁 漁 業 生 産 統 計 13

したがって kgあたり 単 価 も 5,901 ウォンとなり 遠 洋 の 冷 凍 スケトウダラに 比 べ 著 しく 高 い 値 がつく 4)ロシア 水 域 での 割 当 により 獲 れるスケトウは 全 て 冷 凍 スケトウダラである 表 3-3は 遠 洋 漁 業 の 操 業 方 式 による 冷 凍 スケトウダラの 2003 年 から 2007 年 の 平 均 生 産 量 及 び 平 均 価 格 を 示 したものだ 平 均 生 産 量 は 22,856 トンで 北 洋 トロ-ル 漁 業 が 74.1%に 当 たる 16,942 トン 次 いで 遠 洋 トロ-ル(4,234 トン 18.5%) 海 外 トロ-ル(1,680 トン 7.3%)である これらは ほぼロシアからの 割 当 量 の 範 囲 でのスケトウダラであり 価 格 はkgあたり 1,073 ウォン( 約 90 円 )で 先 の 沿 近 海 の 新 鮮 冷 蔵 スケトウダラ 平 均 価 格 である 5,901 ウォン( 約 480 円 )/kgの 18% 程 度 の 価 格 形 成 である 表 3-3. 韓 国 における 遠 洋 スケトウダラの 操 業 方 式 による 年 平 均 生 産 量 と 価 格 (2003~2007 年 平 均 ) 生 産 量 生 産 金 額 生 産 価 格 トン 比 重 (%) 千 ウォン 比 重 (%) (ウォン/kg) 合 計 22,856 100 24,530,885 100 1,073 北 洋 トロ-ル 16,942 74.1 17,814,461 72.6 1,051 海 外 トロ-ル 1,680 7.3 1,971,380 8 1,174 遠 洋 トロ-ル 4,234 18.5 4,745,044 19.3 1,121 資 料 : 統 計 庁 漁 業 生 産 統 計 5) 沿 近 海 スケトウダラ( 鮮 魚 生 産 )の 月 別 生 産 についてみると 表 3-4(2003 年 から 2007 年 の 月 別 平 均 数 値 )で 示 した 沿 近 海 スケトウ 漁 業 は 東 海 ( 日 本 海 )が 主 魚 場 である 年 間 にお いてスケトウの 盛 漁 期 は 1 月 から 3 月 である 表 においては1~3 月 において 年 間 漁 獲 量 の 8 2%が 獲 れた この ような 状 況 は 生 産 金 額 にも 反 映 され ている 産 地 での kgあたり 価 格 は1 ~3 月 ごろでは 6,000~7,000 ウォ ン(480~57 0 円 )/kg ぐらいの 値 がつく 生 産 量 が 減 る5~7 月 の 夏 場 端 境 期 では 盛 漁 期 の 2 倍 以 上 の 値 がつく 表 3-4. 韓 国 における 沿 近 海 新 鮮 / 冷 蔵 スケトウダラの 生 産 動 向 月 生 産 量 生 産 金 額 産 地 価 格 生 産 量 (トン) 比 重 (%) 金 額 ( 千 ウォン) 比 重 (%) (ウォン/kg) 1 27.8 32.6 173,036 34.4 6,224 2 30.6 35.9 198,718 39.5 6,494 3 11.2 13.1 79,525 15.8 7,100 4 1 1.2 7,497 1.5 7,497 5 0.2 0.2 2,279 0.5 11,394 6 0.1 0.1 839 0.2 16,784 7 0.1 0.1 1,100 0.2 22,004 8 0.2 0.2 1,812 0.4 9,062 9 11.4 13.4 21,080 4.2 1,849 10 0.4 0.5 1,685 0.3 4,213 11 0.2 0.2 1,465 0.3 7,325 12 2.2 2.6 13,740 2.7 6,245 合 計 85.2 100 502,777 100 5,901 資 料 : 統 計 庁 漁 業 生 産 統 計 6) 他 方 同 様 の 方 法 により 遠 洋 漁 業 生 産 におけるスケトウダラの 月 別 生 産 動 向 を 表 3-5 に 示 した この 表 に 示 された 数 値 は 遠 洋 漁 業 が 月 別 に 漁 獲 した 水 揚 を 一 旦 冷 凍 保 管 した 後 に 卸 売 業 者 に 販 売 したものである 即 ち 遠 洋 漁 業 から 供 給 された 冷 凍 スケトウダラは 沿 近 海 で 獲 った 新 鮮 / 冷 蔵 スケトウダラと 違 って 市 場 相 場 を 見 ながらある 程 度 は 出 荷 の 調 整 的 な 対 応 が 可 能 な 販 売 をしている 従 って 量 的 な 取 扱 いがある 月 の 単 価 は 1000~1200 ウォン(80 ~98 円 )/kg の 水 準 でほとんど 安 定 的 に 推 移 する 場 合 が 多 い 14

遠 洋 の 抵 当 スケト ウダラは 主 に 6 月 から 翌 年 3 月 にか けて 売 れている 特 に 8 月 から 12 月 に 売 れる 年 間 比 重 は 91%に 達 する こ れは 供 給 と 需 要 が 盛 んになる 冬 場 を 敬 遠 し 端 境 期 を 狙 った 棲 み 分 けと しての 供 給 を 示 し たものといえる 表 3-5. 韓 国 における 遠 洋 冷 凍 スケトウダラの 生 産 動 向 月 生 産 量 生 産 金 額 販 売 価 格 数 量 (トン) 比 重 (%) 金 額 ( 千 ウォン) 比 重 (%) (ウォン/kg) 1 5 0-0 - 2 612 2.5 620,568 2.4 1,014 3 513 2.1 581,742 2.3 1,134 4-0 - 0-5 82 0.3-0 - 6 1,054 4.4 515,345 2 489 7 1,358 5.6 678,956 2.7 500 8 3,708 15.3 3,807,307 14.9 1,027 9 5,762 23.8 6,709,848 26.3 1,164 10 4,635 19.2 5,765,784 22.6 1,244 11 3,301 13.7 3,823,541 15 1,158 12 3,147 13 3,050,623 11.9 969 合 計 24,177 100 25,553,712 100 1,057 資 料 : 統 計 庁 漁 業 生 産 統 計 (3)スケトウダラの 輸 入 動 向 1) 年 間 40 万 トンの 需 要 に 対 応 する 輸 入 を 中 心 的 に 取 り 上 げたい 韓 国 のスケトウダラの 輸 入 が 本 格 的 となるのは 1990 年 代 末 からだ 前 掲 表 3-1からわかるように 1990 年 に 韓 国 は 16 万 トンのスケトウダラを 輸 出 したこともあるが 他 方 で 輸 入 量 は 10 万 トン 以 上 を 超 えてい た そして 1999 年 :20 万 トン 2001 年 :24 万 トン 2003 年 :41 万 トンというように 国 内 需 要 40 万 ~50 万 トンのほとんどを 輸 入 に 依 存 する 状 況 となったのである しかし スケトウ ダラと 言 っても 新 鮮 ( 鮮 魚 )と 冷 凍 の 用 度 の 違 いは 大 きい 韓 国 の 場 合 新 鮮 スケトウダラを どこから 入 手 するかが 問 題 であった 2) 輸 入 動 向 をいちべつする 表 3-6を 参 照 されたい 冷 凍 スケトウダラはロシアに 合 弁 を 作 ったり ロシアや 米 国 から 買 付 輸 入 すれば 可 能 となるものであった 2007 年 においてラウン ド 形 態 のスケトウダラは 23 万 トンが 輸 入 されたが 91%は 冷 凍 スケトウダラが 占 めている しか し 新 鮮 スケトウダラの 値 段 は 高 いので 輸 入 額 では 約 20%を 新 鮮 が 占 めている 2007 年 の 冷 凍 と 新 鮮 の 輸 入 単 価 差 は 冷 凍 :0.95 ドル/kgに 比 べ 新 鮮 :2.36 ドルであり 新 鮮 は 冷 凍 の 2.5 倍 の 1.41 ドルも 高 かった ラウンドベースで 輸 入 されるスケトウダラは 2003 年 の 約 25 万 ト ンをピークに 減 少 するが 2007 年 には 2003 年 の 92%まで 回 復 している 2003 年 から 2006 年 ま での 状 況 は 為 替 世 界 的 な 資 源 減 少 スケトウ ダラを 原 料 にする 韓 国 の 加 工 工 場 の 中 国 進 出 及 びロシ 表 3-6. 韓 国 における 冷 凍 スケトウダラと 新 鮮 ( 鮮 魚 )スケトウダラの 輸 入 年 度 輸 入 量 輸 入 額 輸 入 単 価 合 計 冷 凍 新 鮮 合 計 冷 凍 新 鮮 全 体 冷 凍 新 鮮 1998 21,239 21,130 109 10,729 10,490 239 0.51 0.5 2.2 1999 73,373 67,654 5,720 46,549 36,838 9,711 0.63 0.54 1.7 2000 65,140 53,265 11,875 51,468 27,678 23,790 0.79 0.52 2 2001 56,890 41,663 15,227 56,283 27,684 28,599 0.99 0.66 1.88 2002 157,241 139,987 17,254 123,324 89,492 33,832 0.78 0.64 1.96 2003 248,856 230,628 18,228 218,135 180,129 38,006 0.88 0.78 2.09 2004 180,688 161,973 18,715 174,019 135,533 38,486 0.96 0.84 2.06 2005 181,576 163,594 17,982 180,200 141,603 38,597 0.99 0.87 2.15 2006 177,622 158,105 19,518 196,450 154,661 41,789 1.11 0.98 2.14 2007 229,063 208,573 20,490 246,426 198,101 48,325 1.08 0.95 2.36 注 : 新 鮮 と 冷 凍 スケトウだけの 輸 入 状 況 であり スケトウを 利 用 した 加 工 品 などは 除 いた 資 料 : 韓 国 貿 易 協 会 貿 易 統 計 15

アからの 密 輸 出 に 関 する 報 告 要 請 等 が 原 因 で 減 少 したと 言 われる 輸 入 価 格 も 上 昇 している この 中 で 単 価 の 高 い 新 鮮 スケトウ 輸 入 はおおむね 増 え 続 けたのである 3) 冷 凍 スケトウはロシアが 最 大 の 供 給 国 であり 新 鮮 スケトウは 日 本 が 殆 ど 全 ての 供 給 国 と なっている 冷 凍 スケトウと 新 鮮 スケトウの 輸 入 相 手 国 別 状 況 について 見 たものが 表 3-7 表 3-8である 冷 凍 スケトウの 輸 入 先 は 殆 どがロシアであり 95%を 占 めている(2007 年 ) 次 いで 日 本 であるが5% 程 度 である 単 価 は1ドル/kg 内 外 である 次 に 新 鮮 スケトウの 輸 入 相 手 国 別 状 況 であるが 韓 国 は 新 鮮 スケトウを 2007 年 に 総 20,490 トン 4,833 万 ドルを 全 部 日 本 から 輸 入 した 新 鮮 スケトウは 北 海 道 から 輸 入 され 単 価 は 2.36 ドル /kg 実 際 の 輸 入 量 は 冷 凍 スケトウが 圧 倒 的 に 多 い が 韓 日 の 水 産 物 交 易 の 関 係 から 見 ると 新 鮮 スケト ウの 輸 出 は 北 海 道 にとって 画 期 的 な 事 件 だった いまや 北 海 道 は 韓 国 の 新 鮮 スケトウ 市 場 を 維 持 するための 生 産 地 の 位 置 付 けとなっているのだ 表 3-7. 冷 凍 スケトウダラにおける 国 家 別 輸 入 状 況 (2007 年 基 準 ) 国 家 輸 入 量 輸 入 額 輸 入 単 価 数 量 (トン) 比 重 (%) 金 額 ( 千 ドル) 比 重 (%) (ドル/kg) 合 計 208,573 100 198,101 100 0.9 ロシア 197,514 94.7 189,073 95.4 1 日 本 10,809 5.2 8,588 4.3 0.8 米 国 124 0.1 187 0.1 1.5 中 国 94 0 213 0.1 2.3 カナダ 32 0 40 0 1.2 資 料 : 韓 国 貿 易 協 会 貿 易 統 計 表 3-8. 新 鮮 スケトウダラにおける 国 家 別 輸 入 状 況 (2007 年 基 準 ) 国 家 輸 入 量 輸 入 額 輸 入 単 価 数 量 (トン) 比 重 (%) 金 額 ( 千 ドル) 比 重 (%) (ドル/kg) 合 計 20,490 100 48,325 100 2.36 日 本 20,490 100 48,325 100 2.36 資 料 : 韓 国 貿 易 協 会 貿 易 統 計 (4)スケトウダラの 流 通 と 消 費 スケトウはラウンドベースで 大 きく 冷 凍 と 新 鮮 ( 鮮 魚 )とに 分 けられる 従 って この 二 つ は 各 々にその 用 途 が 異 なり かつ 流 通 経 路 も 異 なる 1)まず 冷 凍 スケトウについてみると 供 給 は 韓 国 の 遠 洋 漁 業 がロシアから 割 り 当 てられた 生 産 量 とロシアから 直 接 輸 入 されるものが 主 な 搬 入 経 路 となる 特 に 韓 国 の 遠 洋 漁 業 からの 冷 凍 スケトウは 韓 国 まで 運 ばれ 冷 凍 冷 蔵 倉 庫 に 保 管 される 取 引 については 漁 業 者 が 小 さい 単 位 で 販 売 することを 避 けているため 入 札 取 引 で 一 次 卸 売 業 者 に 渡 る 一 次 卸 売 業 者 には 一 般 の 卸 売 業 者 大 手 加 工 業 者 等 が 含 まれる また 遠 洋 業 者 が 自 社 加 工 工 場 を 持 っている 場 合 に は 直 接 加 工 工 場 にも 搬 入 される 次 いで 一 次 卸 売 業 者 の 中 で 落 札 した 数 量 が 多 い 場 合 は 二 次 卸 売 業 者 に 相 対 取 引 で 渡 す この 場 合 1 次 入 札 に 参 加 した 卸 売 業 者 が 再 び 2 次 取 引 に 参 加 す る 場 合 もある また このような 搬 入 段 階 での 入 札 取 引 が 3 次 まで 行 われる 場 合 もある この 冷 凍 スケトウの 取 引 過 程 において 搬 入 段 階 で 加 工 原 料 向 けと 一 般 消 費 ( 業 務 用 と 家 庭 用 ) 向 け に 分 けられ 流 通 する 加 工 仕 向 けの 原 料 は 韓 国 の 東 海 ( 日 本 海 ) 地 域 である 江 原 道 に 干 物 加 工 のために 運 ばれる 韓 国 はスケトウを 多 様 に 使 っており 干 物 にしても 需 要 が 大 きい この 場 合 値 段 的 に 見 てスケトウはスリミなどには 仕 向 けられない 干 物 となった 商 品 ( 黄 太 など)は 地 域 販 売 直 販 ( 宅 配 ) 市 場 外 流 通 業 者 ( 類 似 消 費 地 卸 売 業 者 ) 制 度 圏 内 の 消 費 地 卸 売 市 場 に 流 通 する( 図 3-3) 16

図 3-3. 韓 国 における 冷 凍 スケトウダラの 流 通 経 路 加 工 小 売 遠 洋 漁 業 輸 入 業 者 1 次 卸 売 2 次 卸 売 3 次 卸 売 1 次 卸 売 消 費 地 卸 売 市 場 - 制 度 圏 - 類 似 など - 専 門 店 - 外 食 - 量 販 店 など 消 費 者 加 工 これに 対 し 輸 入 業 者 による 冷 凍 スケトウは 遠 洋 漁 業 の 場 合 に 比 べ 搬 入 の 段 階 で 若 干 の 差 がある 輸 入 業 者 は 国 内 の 需 要 にこだわって 輸 入 をしているので 遠 洋 漁 業 よりは 搬 入 する 単 位 ( 量 的 な 規 模 )が 小 さい 一 部 2~3 社 を 除 き 多 くの 遠 洋 漁 業 者 は 流 通 加 工 経 費 ( 保 管 包 装 ラヘ リンク など)のかかる 売 り 方 が 出 来 ないほどの 資 本 力 であるが 故 にロット 販 売 にこだわる 一 方 輸 入 業 者 の 場 合 は 需 給 動 向 に 反 応 してより 小 さいロットでの 多 頻 度 搬 入 により 在 庫 コ スト 回 避 を 図 ろうとしている 2) 新 鮮 ( 鮮 魚 )スケトウについては 図 3-4に 示 した 日 本 の 水 域 周 辺 水 域 で 韓 国 船 の 操 業 は 出 来 ないため 鮮 魚 は 輸 入 業 者 による 搬 入 である 日 本 におけるスケトウの 主 用 途 は 韓 国 と 違 いタラコ(タマゴ)が 目 的 である タマゴをとられたスケトウはすり 身 などの 原 料 として 使 われる 韓 国 が 輸 入 を 開 始 するまではスケトウは 30~50 円 /kgという 低 価 格 状 態 であった しかし 韓 国 への 輸 出 が 活 発 な 動 きとなり 日 本 の 産 地 価 格 は 3 倍 ~5 倍 に 上 がった これが 流 通 の 力 だと 言 いたい 商 品 は それを 一 番 高 く 評 価 してくれる 需 要 者 に 渡 すことで 流 通 経 路 が 形 成 される 冷 凍 スケトウが 加 工 原 料 ラウンド 向 き(チゲなど)の 使 い 道 がある 反 面 新 鮮 ( 鮮 魚 )スケトウはラウンドで 仕 向 けられる 勿 論 輸 入 の 段 階 では 一 般 の 輸 入 業 者 によって 取 り 扱 われるのだが 流 通 経 路 は 卸 売 市 場 ( 類 似 卸 売 市 場 を 含 む) 及 び 直 売 などである 最 近 の 食 文 化 の 変 化 により 家 庭 用 よりは 業 務 用 ( 外 食 )が 多 い 図 3-4. 韓 国 における 新 鮮 スケトウダラの 流 通 経 路 輸 入 業 者 流 通 業 者 地 域 流 通 業 者 ベンダーなど 消 費 地 卸 売 市 場 制 度 圏 卸 売 市 場 類 似 卸 売 市 場 小 売 - 制 度 圏 卸 売 市 場 - 量 販 店 - 外 食 産 業 消 費 者 3) 次 に 韓 国 でスケトウは 如 何 なる 形 で 消 費 されているのかを 見 てみたい スケトウは 刺 身 以 外 の 食 材 として 何 でもよく 使 われている 主 には 新 鮮 ( 鮮 魚 )によるチゲ 1) とタン 2) 及 び 冷 凍 のものを 原 料 にした 干 物 などがある 17

新 鮮 スケトウダラは 韓 国 でセンテタン(センテというのは 生 太 の 発 音 太 は 明 太 の 太 )の 主 な 食 材 として 使 われる センテタンは 大 きく 分 けて 辛 いタンと 辛 くないタンがある 尤 も 冷 凍 物 もタンの 食 材 としてはよく 使 われている しかし 新 鮮 のセンテタンに 比 べ 価 格 が 低 い 冷 凍 のものはハンテやブゴという 物 に 加 工 されハンテタン 或 いはブゴクックとして 主 に 消 費 され る( 図 3-5) 図 3-5.スケトウダラの 消 費 形 態 等 の 実 例 < 辛 いセンテタン> <ハンテ 加 工 > <ハンテクック> (5)まとめ 韓 国 においてスケトウダラは 年 間 40 万 トン( 加 工 含 む)ぐらいの 市 場 を 持 つ 重 要 魚 種 であ る しかし かなり 昔 からスケトウは 需 給 をあわせるためには 海 外 からの 供 給 を 受 けないとバ ランスはとれなくなっていた もちろん 遠 洋 漁 業 を 除 いた 沿 近 海 漁 業 だけの 国 内 生 産 では 供 給 不 足 であった しかし 海 外 の 資 源 自 国 化 (EEZ など) 前 までは 遠 洋 漁 業 をメインとして 韓 国 内 で 需 給 を 合 わせることが 可 能 であったが 遠 洋 の 魚 場 喪 失 や 沿 近 海 資 源 の 枯 渇 などにより 輸 入 依 存 度 を 高 めざるを 得 ない 食 文 化 に 支 えられ 韓 国 のスケトウ 輸 入 の 構 造 はタイトである 実 際 鮮 魚 ( 新 鮮 )は 日 本 から 冷 凍 はロシアからという 構 造 が 固 まっている この 状 況 で 最 近 では 冷 凍 スケトウダラ( 原 料 )の 韓 国 搬 入 をする 実 需 要 者 である 加 工 業 者 が 中 国 移 転 を 軸 に 再 編 を 図 っており 韓 国 から の 遺 脱 が 図 られている 図 3-6. 韓 国 におけるタチウオの 回 遊 図 一 方 鮮 魚 ( 新 鮮 )スケトウは 輸 入 の 値 段 が 多 少 高 くなっていて 輸 入 量 は 逆 に 増 える 傾 向 もあり 日 本 から 韓 国 への 輸 出 は 活 気 を 失 っていない 最 近 の 円 高 ウォン 安 により 韓 国 の 輸 入 量 は 減 っているかも 知 れないが こ の 問 題 を 除 ければ 日 本 からの 鮮 魚 輸 入 は 構 造 化 されたといってよい 3-2.タチウオ (1) 韓 国 におけるタチウオの 需 給 タチウオは 韓 国 の 西 海 と 南 海 東 中 国 海 西 日 本 海 域 などで 棲 息 している 韓 国 ではタチウオを 近 海 鮟 鱇 網 汽 船 18

底 曳 網 釣 り 延 縄 などでとっている タチウオ 資 源 の 韓 国 回 遊 と 漁 場 は 図 3-6のように 大 きく 分 けて 三 つに 区 分 される 表 3-9. 韓 国 におけるタチウオの 需 給 動 向 (トン) 需 要 1 人 当 り 自 給 率 消 費 量 (%) 国 内 消 費 輸 出 次 年 繰 越 合 計 生 産 前 年 在 庫 輸 入 小 計 沿 近 海 遠 洋 (kg) 1990 62,520 218 2,636 65,374 62,756 42,981 19,775 668 1,950 1.42 100.3 1995 78,363 1,078 6,003 85,444 76,456 45,198 31,258 1,099 7,889 1.66 97.6 1997 52,438 32 9,265 61,735 47,345 34,947 12,402 8,804 5,582 1.18 90.3 1998 46,246 381 10,515 57,142 28,695 27,454 1,241 19,182 9,265 1.35 58.7 1999 77,564 203 23,704 100,841 36,045 27,990 8,055 54,281 10,515 2.22 46.5 2000 83,596 134 29,644 113,374 30,895 26,735 4,160 58,770 23,704 2.44 37 2001 83,858 84 28,524 112,461 12,554 10,924 1,630 70,263 29,644 2.37 15 2002 70,632 225 26,694 97,551 16,235 14,181 2,054 52,792 28,524 2.01 22.9 2003 69,294 472 26,290 96,056 13,155 9,452 3,703 56,207 26,694 1.96 19 2004 87,434 439 17,845 105,718 25,520 20,013 5,507 53,908 26,290 2.46 29.2 2005 83,049 501 18,314 101,864 24,691 18,707 5,984 59,328 17,845 29.7 注 : 輸 入 と 輸 出 にはタチウオの 加 工 品 をラウンド 状 態 に 換 算 している 資 料 : 農 林 水 産 食 品 部 ( 旧 海 洋 水 産 部 ) 水 産 物 需 給 及 び 価 格 便 覧 2006.9. 表 3-9は 韓 国 におけるタチウオの 需 給 関 係 を 年 度 別 に 示 したものである 数 値 は 全 てラウ ンド 換 算 である 韓 国 は 年 間 でタチウオを 7~9 万 トンぐらい 消 費 している 1990 年 代 まではある 程 度 国 内 生 産 遠 洋 生 産 で 国 内 需 給 をあわせたが 1990 年 代 末 ごろいわゆる 韓 日 漁 業 協 定 からは 韓 国 のタ チウオ 需 給 で 国 内 生 産 の 割 合 が 急 減 し 始 め 最 近 では 30% 以 下 となっている 韓 国 におけるタ チウオ 供 給 は 輸 入 に 依 存 する 状 態 である 輸 入 の 増 加 により 供 給 量 消 費 量 も 増 えて 国 民 1 人 当 たり 消 費 量 は 1990 年 以 後 年 々 伸 び てきた 2000 年 以 降 やや 落 ち 込 む 場 面 も 見 られたが 2005 年 には 一 人 当 たり 2.46 kg/ 年 の 数 値 となり これまでのピークを 記 録 した 自 給 率 も 最 近 では 沿 近 海 の 漁 獲 量 がもりかえす 場 面 供 給 もあり 2001 年 に 15%まで 下 がったのが 2005 年 には 29.7%まであがった (2)タチウオの 国 内 生 産 韓 国 におけるタチウオの 国 内 生 産 は 沿 近 海 と 遠 洋 と 分 けられる( 表 3-10) 全 体 的 なタ チウオの 生 産 量 の 流 れは1990 年 の11 万 2 千 トンをピークとして 若 干 の 変 化 を 見 せながらも 減 少 傾 向 である そして 国 内 生 産 は2002 年 からは 相 対 的 安 定 時 代 にはいる でもこの 時 期 の 生 産 量 は10 年 前 の1992 年 から1997 年 までの 平 均 生 産 量 である8 万 8,500トンの75% 程 度 に 該 当 する6 万 6 千 トンぐらいで 留 まっている 同 じ 期 間 についての 標 準 偏 差 は1992 年 ~1997 年 が1 万 6,778 トンであったのに 比 べ2002 年 ~2007 年 には2,757トンしかならなかった 19

これを 沿 近 海 と 遠 洋 で 分 けてみると 沿 近 海 の 生 産 量 の 比 率 は 高 く 全 体 の 動 向 に 反 映 してい る 即 ち 遠 洋 漁 業 の 生 産 量 が 多 少 多 かった 1997 年 ~2000 年 までを 除 いてタチウオの 国 内 生 産 の 中 で 沿 近 海 の 比 重 は 全 て 90% 以 上 を 占 めている 今 後 とも 遠 洋 からの 生 産 量 に 期 待 するこ とは 無 理 であるし 韓 日 漁 業 協 定 でタチウオの 漁 場 が 失 われたことから 沿 近 海 生 産 において も 生 産 は 6~7 万 トンぐらいと 思 われる 産 地 価 格 も 結 局 沿 近 海 の 供 給 量 により 決 定 されるよ うになり 2007 年 には 全 体 産 地 価 格 が 3.375 ウォン/kgで 10 年 前 である 1997 年 の 2,330 ウォ ン/kgに 比 べ 44.8%ぐらい 上 がっている 韓 国 におけるタチウオの 生 産 は 先 述 したとおり 近 海 鮟 鱇 網 釣 り 及 び 延 縄 底 曳 網 などが 中 心 である これを 示 したのが 表 3-11 である 一 番 生 産 比 重 が 高 いのは 底 曳 網 で 全 体 生 産 量 の 中 で 25.4%に 該 当 する 16,863 トンをとっている この 後 を 続 くのは 近 海 延 縄 (15.6%) 鮟 鱇 網 (12.7%) 沿 岸 複 合 (12.1%) トロ-ル (11.0%)となっている 遠 洋 は 全 部 で 3.8%でそ の 比 重 は 高 くない 各 漁 業 種 類 において それぞれ 漁 場 が 違 えば 品 質 用 途 等 が 異 なっ てくる まず 底 曳 きの 場 合 タチウオ 生 産 比 重 が 高 いのは 2 隻 曳 漁 業 で 韓 国 の 東 南 漁 場 で 操 業 をする これらは 冷 凍 タチウオ 生 産 であ り 品 質 は 非 常 に 低 い 表 3-10. 韓 国 におけるタチウオの 国 内 生 産 動 向 ( 単 位 : 千 トン 百 万 ウォン ウォン/kg) 一 般 海 面 遠 洋 合 計 生 産 量 生 産 額 産 地 単 価 生 産 量 生 産 額 産 地 単 価 生 産 量 生 産 額 産 地 単 価 `90 104 123,689 1,192 8 3,066 364 112 126,755 1,130 `91 95 136,743 1,432 10 4,687 462 106 141,431 1,339 `92 87 147,522 1,692 7 3,012 462 94 150,534 1,607 `93 58 136,915 2,359 6 4,165 719 64 141,080 2,210 `94 101 185,157 1,832 9 3,877 412 110 189,034 1,711 `95 95 220,684 2,333 7 2,816 379 102 223,500 2,191 `96 74 228,878 3,074 8 3,577 459 82 232,455 2,826 `97 67 174,620 2,600 12 8,835 764 79 183,455 2,330 `98 75 160,490 2,144 10 11,555 1,206 84 172,045 2,038 `99 64 154,441 2,397 13 17,095 1,329 77 171,536 2,219 `00 81 203,707 2,513 12 13,370 1,102 93 217,077 2,330 `01 80 244,675 3,062 4 3,183 909 83 247,858 2,972 `02 60 203,283 3,378 4 3,371 874 64 206,654 3,228 `03 63 200,408 3,188 3 2,324 712 66 202,732 3,066 `04 66 194,639 2,936 3 2,823 1,008 69 197,462 2,858 `05 60 225,004 3,745 2 1,946 942 62 226,950 3,652 `06 64 198,611 3,116 2 2,900 1,415 66 201,511 3,063 `07 66 228,330 3,458 2 2,888 1,165 69 231,218 3,375 資 料 : 統 計 庁 漁 業 生 産 統 計 表 3-11. 韓 国 におけるタチウオの 漁 法 別 生 産 動 向 生 産 量 生 産 金 額 産 地 価 格 数 量 比 重 金 額 比 重 価 格 価 格 対 比 (トン) (%) ( 千 ウォン) (%) (ウォン/kg) (%) 合 計 66,333 100 211,974,534 100 3,196 100 小 計 63,801 96.2 209,398,437 98.8 3,282 102.7 底 引 き 16,863 25.4 21,048,208 9.9 1,248 38 トロ-ル 7,304 11 6,419,377 3 879 70.4 巻 網 6,558 9.9 6,764,491 3.2 1,032 117.4 近 海 釣 り 2,186 3.3 13,269,577 6.3 6,070 588.5 沿 近 海 刺 網 829 1.2 3,381,106 1.6 4,080 67.2 鮟 鱇 網 8,410 12.7 14,899,296 7 1,772 43.4 近 海 延 縄 10,347 15.6 84,992,326 40.1 8,214 463.7 沿 岸 複 合 8,015 12.1 54,949,404 25.9 6,856 83.5 定 置 網 1,131 1.7 1,083,566 0.5 958 14 その 他 2,159 3.3 2,591,085 1.2 1,200 125.3 小 計 2,532 3.8 2,576,097 1.2 1,017 84.8 遠 洋 海 外 トロ -ル 2,085 3.1 1,965,536 0.9 943 92.6 遠 洋 トロ -ル 447 0.7 610,561 0.3 1,367 145 資 料 : 統 計 庁 漁 業 生 産 統 計 (2003 年 から200 20

最 近 では 小 タチウオが 多 く カマボコの 原 料 で 使 われる 近 海 延 縄 は 沿 岸 と 近 海 でタチウオを 捕 っている 主 にはタチウオの 表 面 に 銀 色 がきれいに 現 れる 銀 タチウオ を 狙 っている ぼ ぼ 生 鮮 仕 向 けで 主 な 漁 場 はジェジュ 島 の 東 と 南 の 沿 近 海 である 韓 国 では ジェジュ 銀 タチウ オ という 名 で 商 品 ブランド 力 が 高 い これは 産 地 価 格 が 8,214 ウォン/kgで 他 のタチウオと 区 別 されている 鮟 鱇 網 は 韓 国 の 西 海 からタチウオの 回 遊 を 追 って 東 中 国 海 まで 漁 場 は 広 がる 主 なタチウオは 韓 国 語 で モックタチウオ というものである 沿 岸 で 捕 る 場 合 は 新 鮮 ( 鮮 魚 ) タチウオになり 値 が 高 くなるが 東 中 国 海 まで 行 けばいくほど 冷 凍 物 となり 値 がつかない 産 地 価 格 は 歩 留 まりもあり 底 曳 きほどではないが 平 均 1,772 ウォン/kgとなっている 以 上 の 通 り 韓 国 のタチウオは 漁 場 や 漁 獲 方 法 によりその 値 打 ち 用 途 等 が 全 然 異 なってく る また 冷 凍 を 中 心 とした 網 物 は 値 が 低 く 原 料 で 使 われる 反 面 釣 り 物 は 新 鮮 物 として 市 場 での 評 価 が 非 常 に 高 い タチウオは 季 節 性 を 持 ち 年 中 生 産 が 異 なってくる また 評 価 も 違 ってくる これを 示 し たものが 表 3-12である タ チウオの 漁 期 は 7 月 に 始 まり 翌 年 1~2 月 までである 勿 論 この 時 期 以 外 にもある 程 度 生 産 はしているがその 量 は 少 な い 主 な 盛 魚 期 は 8 月 から 12 月 までで この 期 間 だけで 年 間 タチウオ 生 産 量 の 70%を 占 め ている この 時 期 になると 供 給 量 が 増 えて 値 段 は 年 平 均 であ る 3,282 ウォン/kg 以 下 となる が 全 体 的 な 生 産 金 額 が 増 える タチウオの 盛 漁 期 となる 表 3-12. 韓 国 における 沿 近 海 タチウオの 月 別 生 産 動 向 (2003 年 ~2007 年 の 平 均 ) 生 産 量 生 産 金 額 産 地 価 格 月 平 均 (トン) 比 重 (%) 平 均 ( 千 ウォン) 比 重 (%) 価 格 (ウォン/kg) 価 格 対 比 (%) 1 4,405 6.9 16,758,412 8 3,805 115.9 2 3,121 4.9 8,594,923 4.1 2,754 83.9 3 1,651 2.6 8,423,252 4 5,103 155.5 4 1,296 2 9,873,352 4.7 7,620 232.2 5 1,719 2.7 10,070,217 4.8 5,860 178.5 6 2,711 4.2 12,679,662 6.1 4,677 142.5 7 4,035 6.3 18,004,712 8.6 4,462 135.9 8 9,243 14.5 27,017,701 12.9 2,923 89.1 9 9,344 14.6 27,009,456 12.9 2,891 88.1 10 10,187 16 23,253,257 11.1 2,283 69.6 11 10,160 15.9 27,843,202 13.3 2,740 83.5 12 5,930 9.3 19,870,290 9.5 3,351 102.1 合 計 63,801 100 209,398,437 100 3,282 100 資 料 : 統 計 庁 漁 業 生 産 統 計 (3)タチウオの 輸 入 前 掲 表 3-9によれば タチウオの 輸 入 は 1999 年 からは 5 万 台 から 7 万 トンまで 及 ぶ こ れは 韓 日 漁 業 協 定 による 影 響 もあるが この 量 は 韓 国 におけるタチウオ 需 要 の 約 5 割 以 上 ( 近 年 は7 割 以 上 )を 占 めている ここでは 需 給 統 計 ではなく 貿 易 統 計 を 使 って 韓 国 におけるタ チウオ 輸 入 動 向 を 明 らかにする ただし このタチウオ 輸 入 統 計 には 新 鮮 ( 鮮 魚 ) 冷 凍 以 外 の 加 工 されたタチウオを 原 魚 ベースに 換 算 した 量 も 入 っているが この 数 量 ( 韓 国 政 府 の 内 部 資 料 )を 峻 別 して 調 べるのは 難 しい 韓 国 貿 易 統 計 上 での HS-CODE( 韓 国 は 10 ケタ)における 新 鮮 と 冷 凍 のタチウオに 絞 って 分 析 する 表 3-13のように 原 魚 ベースで 韓 国 へ 輸 入 されたタチウオは 1997 年 の 12,882 トンから 2007 年 も 41,294 トンまで 約 28,412 トン(2.2 倍 ) 増 えた これを 新 鮮 ( 鮮 魚 )と 冷 凍 に 分 けて みると 新 鮮 の 場 合 には 1997 年 に 916 トンで 全 体 の 輸 入 量 (12,882 トン)の 約 7%に 過 ぎない ものの 2007 年 には 7,858 トンで 全 体 (41,294 トン)の 約 19%を 占 めるようになった( 約 7.6 倍 21

増 えた) 冷 凍 の 場 合 には 1997 年 に 11,966 トンが 輸 入 され 全 体 の 92.9%をしめしたが 2007 年 には 33,435 トンが 輸 入 され 全 体 の 81.0%を 占 め この 間 で 約 1.8 倍 増 えた つまり 韓 国 におけるタチウオの 輸 入 は 韓 日 漁 業 協 定 から 急 速 に 増 えて 近 年 5 万 トン 前 後 で 動 くようになっ た しかし その 内 容 をよくみると 近 年 は 冷 凍 のものが 2002 年 の 4 万 6 千 トンをピークと して 減 少 し 始 め 2007 年 には 2002 年 に 比 べ 約 28% 減 少 している 逆 に 新 鮮 タチウオは 1997 年 から 増 える 一 方 である つまり 韓 国 のタチウオ 輸 入 は 安 い 冷 凍 から 高 い 新 鮮 の 方 に 移 転 し ているのである このような 韓 国 におけるタチウオの 輸 入 を 国 別 に 見 たのが 表 3-14である この 表 は 新 鮮 ( 鮮 魚 )と 冷 凍 とに 分 けて 2004 年 と 2007 年 を 比 較 したものである まず 新 鮮 タチウオの 輸 入 に 関 して 国 別 状 況 をみると 2004 年 から 2007 年 にかけ 輸 入 量 は 増 えている その 中 2004 年 と 2007 年 全 て 日 本 からの 輸 入 が 各 々4,581 トン( 全 体 対 比 73%)と 7,599 トン( 同 97%)とな り 日 本 からの 輸 入 が 韓 国 の 新 鮮 タチウオ 輸 入 を 左 右 している 特 に 日 本 以 外 からの 輸 入 は 減 少 している 次 いで 冷 凍 タチウオについて 見 ると 同 じ 時 期 に 45,429 トンから 33,435 トンまで 26% 強 の 減 少 を 見 せている 国 別 内 訳 を 見 ると 2004 年 と 2007 年 全 て 中 国 からの 輸 入 がトップであ り 2004 年 は 全 体 の 48%に 当 たる 21,950 トンを 輸 入 したが 2007 年 には 2004 年 と 比 べ 13% 減 少 し 19,193 トン となった( 但 し この 数 値 は 全 輸 入 量 の 57%にあ たる) 中 国 以 外 の 主 要 輸 入 相 手 国 にはインド パキスタン イ ンドネシアなど がある 日 本 か らの 冷 凍 タチウ オ 輸 入 はまだ 少 ないが 2007 年 /2004 年 では 約 87% 増 加 となっ ている 表 3-13. 韓 国 におけるタチウオ 輸 入 の 動 向 ( 単 位 : 千 ドル トン ドル/kg) 年 新 鮮 タチウオ 冷 凍 タチウオ 新 鮮 + 冷 凍 金 額 輸 入 量 輸 入 単 価 金 額 輸 入 量 輸 入 単 価 金 額 輸 入 量 輸 入 単 価 1997 6,127 916 6.69 32,645 11,966 2.73 38,772 12,882 3.01 1998 6,955 2,066 3.37 29,448 14,181 2.08 36,403 16,248 2.24 1999 22,623 7,029 3.22 33,912 16,556 2.05 56,535 23,585 2.4 2000 26,401 6,649 3.97 44,778 20,967 2.14 71,179 27,616 2.58 2001 12,461 3,521 3.54 66,589 44,654 1.49 79,050 48,175 1.64 2002 19,601 5,797 3.38 81,070 46,384 1.75 100,671 52,181 1.93 2003 16,663 5,092 3.27 66,216 42,655 1.55 82,879 47,747 1.74 2004 20,921 6,155 3.4 80,982 45,429 1.78 101,903 51,585 1.98 2005 22,742 5,826 3.9 77,564 39,288 1.97 100,306 45,114 2.22 2006 28,365 6,876 4.13 74,527 39,331 1.89 102,892 46,208 2.23 2007 38,076 7,858 4.85 71,685 33,435 2.14 109,761 41,294 2.66 注 : 新 鮮 タチウオ(0302693000) 冷 凍 タチウオ(0303793000)を 利 用 した 加 工 品 関 連 は 除 く 表 3-14. 韓 国 におけるタチウオの 国 別 輸 入 動 向 ( 単 位 : 千 ト ル トン ト ル/kg) 新 鮮 タチウオ 2004 2007 金 額 輸 入 量 輸 入 単 価 金 額 輸 入 量 輸 入 単 価 合 計 20,921 6,155 3.4 38,076 7,858 4.85 日 本 17,641 4,518 3.9 37,171 7,599 4.89 中 国 3,247 1,626 2 60 37 1.62 その 他 33 12 2.85 845 222 3.8 冷 凍 タチウオ 2004 2007 金 額 輸 入 量 輸 入 単 価 金 額 輸 入 量 輸 入 単 価 合 計 80,982 45,429 1.78 71,685 33,435 2.14 中 国 52,765 21,950 2.4 49,848 19,193 2.6 インド 8,881 9,488 0.94 7,444 5,790 1.29 パキスタン 4,812 4,655 1.03 5,520 3,972 1.39 インドネシア 6,536 4,497 1.45 4,089 2,574 1.59 日 本 681 246 2.77 1,685 460 3.66 その 他 7,307 4,593 1.59 3,099 1,445 2.14 資 料 : 韓 国 貿 易 協 会 貿 易 統 計 22

また 輸 入 単 価 の 状 況 を 見 ると 鮮 魚 物 は 日 本 産 のタチウオの 単 価 が 2004 年 と 2007 年 いず れも 他 国 より 高 く 評 価 されている(とくに 中 国 との 差 は 明 らかで 2007 年 にはこの 差 は 更 に 開 いている) 他 方 冷 凍 の 場 合 には 中 国 産 が 他 の 国 に 比 べ 高 く 評 価 されていることを 平 均 単 価 より 確 認 できるが 中 国 産 と 日 本 産 を 比 べると ここでも 日 本 産 の 冷 凍 タチウオが 高 い この ように 日 本 産 が 高 く 評 価 されている 理 由 は 次 のようである 第 1に 日 本 産 は 韓 日 漁 業 協 定 以 前 には 韓 国 漁 船 が 獲 ってきた 漁 場 から 獲 ったものである からだ したがって 日 本 は 韓 国 において 一 番 評 価 か 高 い 銀 タチウオ を 輸 出 したわけである 第 2に 日 本 の 魚 に 対 する 取 扱 方 が 評 価 されていること これは タチウオ 以 外 の 水 産 物 輸 入 でも 同 様 の 評 価 である 第 3に 韓 国 と 日 本 の 間 では 水 産 物 貿 易 のための 物 流 とルートが 出 来 上 がっていることである これは 韓 国 のブサン( 釜 山 )から 下 関 までの 釜 関 FERRY などがお 互 い の 水 産 物 貿 易 ルートを 培 い 活 性 化 させてきたことを 意 味 する 加 えて 日 本 でタチウオ 漁 場 は 西 日 本 に 形 成 されてきたことも 韓 国 への 輸 入 が 円 滑 となる 要 素 であった 第 4に 西 日 本 に おける 漁 業 者 において この 間 韓 国 市 場 に 焦 点 を 当 て タチウオ 狙 いの 操 業 に 専 念 するなどの 団 体 指 導 が 行 われてきたことも 一 つの 要 因 である( 例 えば ヨコワ( 小 マグロ) 狙 いから 韓 国 向 きタチウオに 操 業 を 変 更 する 漁 業 地 区 も 現 われた) (4)タチウオの 流 通 と 消 費 1) 韓 国 でタチウオの 流 通 は 主 に 原 魚 ベースで 行 われている 即 ち 消 費 者 或 いは 小 売 の 段 階 で 切 り 身 などの 流 通 加 工 (Procesing)が 行 われている 事 を 除 けば 少 なくとも 小 売 の 前 段 階 ま ではほぼ 原 魚 (ラウンド)の 状 態 で 流 通 する これは 国 内 産 や 輸 入 産 に 限 らない しかし 銀 タチウオ の 場 合 には 水 揚 げ 以 後 に 産 地 で 一 匹 ずつ 真 空 パックされ 百 貨 店 などで 高 く 売 れる 場 合 もある この 場 合 には 消 費 地 卸 売 市 場 に 上 場 しないまま 直 接 小 売 店 に 流 通 する しかし 一 般 的 には 消 費 地 卸 売 市 場 や 類 似 卸 売 市 場 などを 通 るか それでなければ 大 型 量 販 店 に 直 接 通 る かの 経 路 となる( 図 3-7) 沿 近 海 を 中 心 とする 国 内 物 漁 獲 は おおむね 産 地 の 水 産 業 協 同 組 合 が 開 設 した 市 場 ( 産 地 委 託 販 売 場 )に 水 揚 げされる 2005 年 の 場 合 国 内 生 産 量 は 遠 洋 を 除 いて 66,029 万 トンであっ た この 中 で 約 98%に 当 たる 64,866 トンがこの 水 産 業 協 同 組 合 を 通 して 出 荷 された そし て 輸 入 物 は 全 量 非 係 通 ( 非 系 統 : 商 人 など)を 通 して 流 通 した 図 3-7. 韓 国 におけるタチウオの 流 通 経 路 (2005 年 基 準 ) 24.2% 国 内 生 産 58.2% 輸 入 17.6% 沿 近 海 の 生 産 者 遠 洋 業 者 輸 入 業 者 23.8% 0.1% 0.3% 58.2% 産 地 水 協 委 販 場 ( 系 通 ) 産 地 収 集 商 ( 非 系 通 ) 1 次 卸 売 業 者 ( 入 札 ) 2 次 卸 売 業 者 ( 非 系 通 ) 卸 売 業 者 ( 非 系 通 ) 消 費 地 卸 売 消 費 地 卸 売 市 場 ( 法 定 ) 類 似 卸 売 市 場 給 食 供 給 業 者 小 売 量 販 店 外 食 専 門 店 一 般 給 食 等 最 終 消 費 者 前 年 在 庫 と 輸 出 23

2) 消 費 地 の 段 階 では 多 様 な 流 通 形 態 が 存 在 しているが その 各 々の 配 分 割 合 はわからない 但 し 輸 入 物 は 最 近 になって 給 食 のような 大 口 需 要 のほうに 流 れている また 量 販 店 は 消 費 地 卸 売 市 場 からの 搬 入 をやめて 独 自 の 仕 入 れ 行 動 (MD 活 動 )をしている 例 えば 銀 タチウオ の 主 産 地 であるジェジュ 島 のある 生 産 者 団 体 ( 水 産 業 協 同 組 合 など)から 直 接 購 買 をしている 場 合 が 多 い しかし 相 当 数 は 消 費 地 の 卸 売 市 場 を 中 心 として 流 通 していると 予 測 される ま た 最 近 の 流 れの 中 で 注 目 されることは 外 食 産 業 への 流 通 も 含 まれる 給 食 業 者 のような 大 量 購 買 処 が 増 えていることである これらは 国 内 産 のタチウオよりは 輸 入 産 ( 特 に 中 国 産 の 冷 凍 タチウオ)が 主 要 食 材 となっている 状 況 だ これから 韓 国 におけるタチウオの 流 通 は 消 費 地 の 卸 売 市 場 を 経 由 する 割 合 が 減 りながら 量 販 店 による 産 地 MD 活 動 輸 入 業 者 による 大 量 購 買 処 への 対 応 が 増 えると 予 想 し 得 る 日 本 産 について 言 うと 新 鮮 ( 鮮 魚 )ラウンド( 原 魚 ベース)の 形 として 輸 入 され 消 費 される 流 通 経 路 が 優 先 されよう 従 って 日 本 産 は 大 量 購 買 処 では 扱 われない つまり 日 本 産 は 伝 統 的 な 原 魚 市 場 で 韓 国 産 ( 例 えば ジェジュ 島 産 )と 直 接 競 争 することとなりこれから 韓 日 水 産 物 貿 易 で 重 要 な 関 税 競 争 が 起 きるかも 知 れない 3) 韓 国 でのタチウオの 消 費 は 主 に 原 魚 をベースである 所 謂 干 物 塩 辛 塩 漬 などの 加 工 もほとんどない 勿 論 韓 国 では 蒲 鉾 などの 練 製 品 にも 使 用 しない 但 し 底 曳 きから 獲 った 小 タチウオは 蒲 鉾 (おでんネタ)として 利 用 されているが 普 通 のタチウオの 消 費 とは 考 えられ ない 最 終 消 費 は 原 魚 を3 段 切 りや4 段 切 りにして 焼 き 魚 煮 込 みのような 惣 菜 の 形 態 が 大 勢 である( 図 3-8) 図 3-8. 煮 込 んだタチウオと 焼 きタチウオ 煮 込 んだタチウオ 焼 きタチウオ 24

(5)まとめ 韓 国 においてタチウオは 年 間 約 8 万 トンから9 万 トンぐらいまでの 消 費 がある その 中 タ チウオの 自 給 率 は 最 近 30% 以 下 となり 輸 入 に 依 存 している 状 況 である 輸 入 タチウオはまだ 冷 凍 タチウオがメインであるが 新 鮮 ( 鮮 魚 )タチウオの 輸 入 市 場 が 増 えている 状 況 である 特 に 冷 凍 は 中 国 新 鮮 ( 鮮 魚 )は 日 本 という 構 造 が 形 成 されている そして 日 本 産 は 主 に 新 鮮 物 として 韓 国 産 との 直 截 な 競 合 関 係 が 成 立 しており 韓 日 FTA の 再 協 議 の 中 で 激 しい 競 争 関 係 が 生 じるかも 知 れない 末 端 流 通 では 大 量 購 買 と 伝 統 的 な 流 通 に 分 けられている 大 量 購 買 は 中 国 産 を 中 心 として 給 食 外 食 産 業 市 場 に 対 応 し 中 国 産 が 市 場 を 席 巻 している 一 方 伝 統 的 な 消 費 は 韓 国 産 (ジ ェジュ 産 の 銀 タチウオ))と 日 本 産 との 激 しい 競 争 流 通 が 進 行 中 である 但 し 伝 統 的 なタチ ウオ 市 場 では 真 空 パックなどの 新 たなる 加 工 ( 流 通 加 工 :Processing)が 始 まり これとの 関 係 で 新 鮮 切 り 身 市 場 がこれから 注 目 される 可 能 性 が 高 い つまり 新 鮮 タチウオ 市 場 で 誰 がこの 流 通 加 工 市 場 を 先 占 するのかがこれから 注 目 していくタチウオ 市 場 の 動 きである 3-3.マダイ (1) 韓 国 におけるマダイ( 養 殖 )の 需 給 関 係 マダイは 漁 船 漁 業 や 獲 る 漁 業 では 供 給 量 が 少 なく その 代 替 として 養 殖 されている 従 って 韓 国 におけるマダイの 需 給 関 係 は 養 殖 マダイを 中 心 として 分 析 を 行 う 韓 国 の 養 殖 マダイは 主 に 活 魚 として 刺 身 向 けである つまり 活 魚 ( 刺 身 向 )としての 需 給 関 係 を 検 討 するというこ とである( 表 3-15) 表 3-15. 韓 国 における 養 殖 マダイの 需 給 関 係 韓 国 におけるマダイの 単 位 :トン kg/ 年 /1 人 % 需 要 供 給 1 人 当 供 給 量 自 給 率 養 殖 は 2003 年 から 急 激 国 内 消 費 輸 出 合 計 小 計 養 殖 輸 入 ( 消 費 量 ) (%) 1997 1,422 2 1,424 1,424 115 1,309 0.03 8.1 に 伸 び 2007 年 の 現 在 1998 531 5 536 536 146 390 0.01 27.2 まで 増 えている 注 目 1999 1,910 1 1,911 1,911 176 1,735 0.04 9.2 2000 3,233 106 3,339 3,339 412 2,927 0.07 12.3 されるのは これに 伴 2001 3,110 125 3,235 3,235 641 2,594 0.07 19.8 い 輸 入 量 も 増 えている 2002 4,133 12 4,145 4,145 960 3,185 0.09 23.2 2003 7,637 27 7,664 7,664 4,417 3,247 0.16 57.6 ことだ 国 内 産 と 輸 入 2004 8,178 3 8,181 8,181 3,988 4,193 0.17 48.7 産 ともに 増 えているこ 2005 10,020 0 10,020 10,020 5,816 4,204 0.21 58 2006 11,232 27 11,259 11,259 4,386 6,873 0.23 39 とから 国 民 1 人 当 た 2007 13,318 0.1 13,318 13,318 7,213 6,105 0.27 54.2 り 年 間 消 費 量 ( 供 給 量 ) も 増 えている( 輸 出 の 注 : 輸 入 量 にはマダイの 稚 魚 も 含 む 資 料 : 韓 国 貿 易 協 会 貿 易 統 計 ; 統 計 庁 漁 業 生 産 統 計 ; 統 計 庁 人 口 推 移 実 績 は 殆 どない) ただ 自 給 率 は 2003 年 からの 国 内 産 の 増 加 により 2003 年 から 上 昇 している 最 近 で は 過 半 分 が 国 内 産 である 従 って 韓 国 市 場 におい ては 韓 国 産 と 輸 入 もの( 日 本 産 中 国 差 )との 競 合 が 激 しいという 状 況 が 見 られる (2) 養 殖 マダイの 国 内 生 産 既 に 見 たように 韓 国 における 養 殖 マダイ 生 産 は 2002 年 までは 1,000 トンも 超 えなかったが 2003 年 25 表 3-16. 韓 国 における 養 殖 マダイの 月 別 生 産 推 移 (2004 年 ~2007 年 )の 平 均 月 別 生 産 量 比 重 生 産 金 額 生 産 単 価 1 370 6.9 3,300,491 8,920 2 338 6.3 2,938,041 8,699 3 389 7.3 3,182,471 8,181 4 386 7.2 3,134,401 8,115 5 491 9.2 3,967,231 8,076 6 522 9.7 4,869,531 9,338 7 568 10.6 4,933,065 8,681 8 422 7.9 3,405,103 8,074 9 419 7.8 3,447,250 8,227 10 407 7.6 3,474,358 8,537 11 369 6.9 3,068,118 8,326 12 671 12.5 5,633,122 8,401 合 計 5,351 100 45,353,181 8,476 資 料 : 統 計 庁 漁 業 生 産 統 計

からは 急 激 な 増 加 を 示 した 2007 年 には 10 年 前 の 62 倍 も 増 加 し 7,123 トンとなった この ような 増 産 動 向 は 1997 年 から 増 えてくる 輸 入 ものの 数 量 を 凌 駕 するに 至 る 2007 年 輸 入 が 6,105 トンでこれは 国 内 産 より 1,108 トン(15.4%)も 低 い 2002 年 までは 韓 国 で 刺 身 向 けの マダイと 言 えば 日 本 産 マダイだったが 今 はそうではなく 韓 国 産 がむしろ 多 い このような 韓 国 での 養 殖 マダイの 月 別 生 産 が 表 3-16に 示 す 毎 月 300 トン 以 上 を 生 産 す る 実 績 があることがわかる また 6~7 月 と12 月 に 比 較 的 に 生 産 が 増 える 特 徴 が 見 られる 韓 国 における 養 殖 マダイの 地 域 別 生 産 を 2007 年 で 見 ると 釜 山 特 別 市 がある 慶 尚 南 道 が 6,897 トンで 全 体 の 95.6%を 占 めている 次 は 全 羅 南 道 が 246 トン(3.4%)である 慶 尚 南 道 は 元 々イケス 養 殖 が 活 発 な 地 域 であり 主 にクロソイ 養 殖 産 地 として 盛 行 した し かし 中 国 から 養 殖 クロソイが 大 量 に 輸 入 され その 対 応 としてマダイ 養 殖 産 地 へと 再 編 され たのである また 韓 国 では 養 殖 の 魚 種 を 変 えるには 中 央 政 府 ではなく 地 方 自 治 体 の 許 可 だけ で 出 来 ることも 慶 尚 南 道 がマダイ 養 殖 産 地 として 転 換 できた 要 因 のひとつである 図 3-9. 韓 国 における 養 殖 マダイの 産 地 (2007 年 ) 2007 年 韓 国 の 養 殖 マダイの 生 産 量 =7,213 トン ` 慶 尚 北 道 :25 トン (0.3%) 忠 清 南 道 :2 トン 全 羅 南 道 :246 ト ジェジュ 特 別 自 治 道 :43 慶 尚 南 道 :6,897 ト 資 料 : 統 計 庁 漁 業 生 産 統 計 (3) 養 殖 マダイの 輸 入 関 係 養 殖 マダイの 輸 入 は 表 3-15で 見 たように 1998 年 ( 韓 国 の 金 融 危 機 影 響 )を 除 いて 増 加 している 1997 年 と 2007 年 を 比 べれば 年 平 均 21.6%ずつ 伸 びた 勘 定 になる 2002 年 までは 消 費 の8 割 以 上 を 輸 入 の 養 殖 マダイに 依 存 していた しかし 2003 年 から 韓 国 の 養 殖 マダイの 生 産 量 が 急 増 し 始 め 2007 年 には 自 給 率 が 54.2%となった ここでは 韓 国 における 輸 入 養 殖 マダイの 国 別 動 向 や 価 格 を 調 べ その 国 産 との 競 合 関 係 を 明 らかにしたい( 表 3-17) 2004 年 から 2007 年 までを 見 ると 韓 国 に 養 殖 マダイを 輸 出 している 主 要 国 は 日 本 と 中 国 で ある 2007 年 の 養 殖 マダイ 輸 入 量 割 合 は 日 本 が 55.7% 中 国 が 44.3%となっている しかし その 流 れを 見 ると 両 方 とも 韓 国 への 養 殖 マダイの 輸 出 は 増 えているものの 日 本 産 の 割 合 が 2005 年 に 68.0%であったが 翌 年 から 低 下 し 始 め 2007 年 には 55.7%となった 反 対 に 中 国 は 26

2005 年 に 32.0%であった が 増 え る 傾 向 を 続 け 2007 年 には 44.3%となっ た つまり かつて 養 殖 マ ダイと 言 えば 韓 国 の 活 魚 市 場 で 日 本 産 マダイであ ったのが 今 は 中 国 産 に 市 場 を 奪 われる 状 況 となっ ている このような 理 由 と しては 日 本 産 と 中 国 産 の 輸 入 単 価 にあると 思 われ る 2004 年 から 2007 年 ま で 日 本 産 の 輸 入 単 価 に 比 べ 中 国 産 は 10% 以 上 の 価 格 差 で 韓 国 へ 輸 出 してい 表 3-17. 韓 国 への 養 殖 マダイ 供 給 先 別 価 格 比 較 単 位 :トン % ウォン/kg 供 給 先 項 目 2004 2005 2006 2007 韓 国 産 生 産 量 3,988 5,816 4,386 7,213 産 地 価 格 8,911 9,059 8,163 7,956 輸 入 量 4,193 4,204 6,873 6,108 合 計 輸 入 比 重 100 100 100 100 輸 入 単 価 6,918 6,672 6,372 6,845 輸 入 量 2,516 2,856 4,426 3,401 日 本 産 輸 入 比 重 60 68 64.4 55.7 輸 入 輸 入 単 価 7,421 6,923 6,657 7,404 輸 入 量 1,666 1,347 2,447 2,707 中 国 産 輸 入 比 重 39.7 32 35.6 44.3 輸 入 単 価 6,160 6,138 5,857 6,141 輸 入 量 12 0 0 0 その 他 輸 入 比 重 0.3 - - - 輸 入 単 価 6,960 0 0 0 注 : 単 価 はウォン 換 算 韓 国 貿 易 協 会 の 貿 易 統 計 では 輸 入 金 額 をドルで 表 記 しているので 当 該 年 度 の 平 均 為 替 率 をかけて 換 算 した 即 ち 2004 年 は1ド ル=1,144.67ウォン 2005 年 は1,024.31ウォン 2006 年 は955,51ウォン 2007 年 は929.20ウォンを 輸 入 単 価 に 乗 じた 資 料 : 韓 国 貿 易 協 会 統 計 統 計 ; 統 計 庁 漁 業 生 産 統 計 ; 韓 国 銀 行 為 替 統 計 る 2004 年 から 2006 年 までは 中 国 産 の 価 格 も 高 くなり 日 本 産 の 90%ぐらいの 価 格 水 準 まで 上 がったが 2007 年 には 再 び 価 格 差 が 広 がった 養 殖 マダイに 関 しては 日 本 産 はその 品 質 の 高 さが 認 知 されていると 思 うが 今 後 中 国 の 生 産 が 品 質 面 でキャッチアップして かつ 充 分 な 価 格 優 位 性 を 持 つことになると 韓 国 市 場 での 日 本 産 マダイの 位 置 付 けはさらに 低 下 する 可 能 性 もある これらの 輸 入 ものに 比 べ 韓 国 産 は 輸 入 平 均 価 格 より 2004 年 には 28.8% 2005 年 には 35.8% 2006 年 には 21.9% 2007 年 には 16.2% 高 目 であった このような 価 格 の 劣 位 性 にも 関 わらず 2007 年 に 韓 国 産 が 50% 以 上 の 市 場 シェアを 占 めた 訳 は ひとつには 関 税 の 存 在 であると 思 う 韓 国 における 輸 入 活 魚 の 関 税 は 10%であり これを 輸 入 産 につけると 韓 国 産 が 2007 年 基 準 で 輸 入 ものよりも 6.2%ぐらい 高 くなる この 6.2%というのは 韓 国 の 関 税 以 外 のコスト( 衛 生 管 理 流 通 慣 行 など)を 勘 案 すれば 殆 ど 意 味 のない 価 格 差 となる ここで 流 通 慣 行 というのは 韓 国 で 活 魚 ( 養 殖 物 )は 99% 係 通 販 売 ( 系 統 共 販 市 場 )ではなく 非 係 通 ( 一 般 商 人 )で 流 通 する ことである この 場 合 商 業 資 本 が 産 業 資 本 を 支 配 している 状 況 が 残 っているとも 評 価 される 具 体 的 に 言 うと 10 kgのマダイを 2007 年 の 産 地 価 格 で 買 おうとすると 79,560 ウォンを 払 わな ければならない しかし 商 人 は 生 産 者 にこの 価 格 で 10 kg 以 上 の 込 み を 求 める 従 って 生 産 者 は 10 kg 以 上 のマダイをその 価 格 で 売 る ここでお 互 いの 帳 簿 には 10 kgのマダイを 79,560 ウォンで 取 引 したと 記 録 される 統 計 では 帳 簿 を 認 めているから 込 み による 取 引 量 は 統 計 には 残 らない 従 って 韓 国 産 の 実 際 の 価 格 は 統 計 上 の 価 格 よりも 低 くなると 思 う この 込 み の 比 率 は 多 い 場 合 は 30%までにもなると 言 われる このような 実 際 の 流 通 慣 行 ( 取 引 慣 行 )により 市 場 では 韓 国 産 の 占 有 率 が 高 まるという 訳 だ (4) 養 殖 マダイの 流 通 と 消 費 養 殖 マダイの 流 通 は 韓 国 の 他 の 養 殖 物 と 同 じく 産 地 の 水 産 業 協 同 組 合 を 通 して 流 通 するよ りも 一 般 の 商 人 ( 産 地 収 集 商 人 )を 通 して 流 通 する 非 係 通 流 通 が 発 達 している その 量 は 殆 ど 100%にも 及 ぶとみてよい 一 般 の 水 産 物 とは 異 なって 活 魚 である 養 殖 マダイは 図 3-10 27

のような 流 通 経 路 である 図 3-10. 韓 国 における 活 魚 の 一 般 的 な 流 通 経 路 生 産 者 近 隣 消 10% 以 産 地 水 協 の 委 販 場 消 費 地 卸 売 市 場 ( 系 通 ) ( 法 廷 ) 90% 産 地 収 集 商 ( 非 系 通 ) 類 似 卸 売 市 場 小 売 量 販 店 刺 身 や 最 終 消 輸 入 費 者 業 者 韓 国 の 活 魚 流 通 においては 産 地 の 水 産 業 協 同 組 合 ( 系 通 ; 共 販 市 場 )と 消 費 地 卸 売 市 場 ( 制 度 圏 市 場 ; 農 水 産 物 の 流 通 と 価 格 安 定 に 関 する 法 律 により 作 られた 卸 売 市 場 )を 通 す 物 量 は 少 なく 産 地 収 集 商 人 ( 非 系 通 )と 類 似 卸 売 市 場 ( 民 間 で 自 由 に 生 み 出 された 卸 売 機 能 を 持 つ 市 場 ) 及 び 地 域 卸 売 業 者 による 非 制 度 圏 市 場 或 いは 関 係 者 による 流 通 が 大 勢 である 特 に 類 似 卸 売 市 場 は 二 つの 巨 大 な 市 場 を 生 み 出 して 民 間 により 運 営 されている これが 図 3-11に 示 したインチョン 活 魚 市 場 とハナム 活 魚 卸 売 市 場 である これらは 全 て 韓 国 の 首 都 圏 市 場 を 商 圏 として 位 置 づけており 韓 国 の 活 魚 物 流 の 中 心 拠 点 となっている 最 近 韓 国 の 活 魚 流 通 においては 伝 統 的 な 規 模 のある 地 域 の 卸 売 業 者 が 崩 壊 し 小 規 模 な 流 通 業 者 が 乱 立 競 争 する 傾 向 である かつての 伝 統 的 な 地 域 活 魚 卸 売 業 者 は 主 産 地 或 いは 主 要 輸 入 業 者 から 活 魚 を 仕 入 れそれを 自 分 のエリアで 卸 す 機 能 を 持 っていたが 今 は 韓 国 内 の 高 速 道 路 整 備 により 誰 でも 活 魚 流 通 に 参 入 する 条 件 ができた インチョンやハナムのような 活 魚 流 通 基 地 整 備 は 中 小 規 模 の 活 魚 流 通 業 者 参 入 の 条 件 整 備 となると 共 に 伝 統 的 な 地 域 独 占 的 な 活 魚 卸 売 業 者 の 機 能 を 弱 める 役 割 を 果 たしたと 言 える 韓 国 における 養 殖 マダイの 末 端 消 費 形 態 は 主 消 費 と 従 消 費 とに 分 けられる 主 消 費 は 刺 身 である これ は 日 本 とほぼ 同 じ 形 で 消 費 されているから 説 明 は 省 略 する しかし 韓 国 の 特 徴 は 従 消 費 にある 刺 身 を 取 った 副 産 物 を 韓 国 で インチョン( 仁 川 ) はうまく 使 っている 韓 国 活 魚 市 場 料 理 のチゲ クック タン のような 原 材 料 としてマ ダイの 副 産 物 が 使 われて いる その 中 で 主 な 料 理 は 28 図 3-11. 韓 国 における 主 要 活 魚 卸 売 市 場 商 圏 ( 分 配 ) ハナム( 河 南 ) 活 ` 集 集 集 魚 市 場

マダイの 頭 をいれて 煮 たものだ これは 辛 くしたものとそのままの 汁 のものと 二 つに 分 けられ る それ 以 外 にもマダイは 焼 き 魚 煮 込 みなどにも 食 材 としてよく 使 用 されている 図 3-12. 韓 国 におけるマダイの 主 な 消 費 形 態 <マダイの 頭 を 使 ったタン- 辛 いもの> <マダイの 頭 を 使 ったタン- 辛 いもの> (5)まとめ 養 殖 マダイの 需 給 は 活 魚 消 費 のためであり 2000 年 代 初 までは 日 本 からの 輸 入 に 依 存 してき た しかしながら 中 国 の 養 殖 マダイや 韓 国 内 での 養 殖 マダイの 生 産 増 加 により 韓 国 における 養 殖 マダイ 市 場 は 以 前 までの 日 本 養 殖 マダイの 独 占 市 場 から 韓 国 中 国 日 本 の 3 カ 国 による 競 争 関 係 が 強 まったのである 価 格 面 では 中 国 産 < 日 本 産 < 韓 国 産 の 順 位 であるものの 韓 国 の 関 税 衛 生 検 査 韓 国 産 の 流 通 慣 行 ( 込 み )などを 要 因 として 現 実 的 結 果 的 には 韓 国 産 の 占 有 率 が 高 まっている 実 際 養 殖 マダイにおいて 一 番 大 きな 市 場 は 日 本 であるが 日 本 産 が 韓 国 のマダイ 市 場 まで 流 れて 来 る 事 となったのは 多 分 に 日 本 のマダイ 需 要 以 上 に 日 本 の 生 産 量 がオーバーフローした からだと 推 察 される 逆 にいうと マダイに 関 する 養 殖 技 術 と 生 産 力 が 普 及 拡 大 することに よって 過 剰 化 した 反 面 日 本 のマダイ 養 殖 の 技 術 と 市 場 が 日 本 だけではなく 北 東 アジア 韓 国 中 国 までも 広 がっていくことを 意 味 した 従 って 韓 国 と 中 国 の 生 産 量 拡 大 が 進 んでいくと 日 本 産 の 競 争 力 は 調 整 されていくと 考 えら れる 同 時 に 韓 国 市 場 では 拡 大 する 生 産 量 と 共 に 流 通 業 者 の 流 通 支 配 力 が 高 くなり 生 産 者 に 対 する 流 通 慣 行 ( 込 み )を 高 め 結 果 として 韓 国 産 や 中 国 産 の 生 産 量 拡 大 のアクセルをかけ ることになった 日 本 の 養 殖 マダイをめぐる 動 向 は 以 上 のような 状 況 にある 4. 結 論 以 上 韓 国 におけるスケトウダラ タチウオ 養 殖 マダイの 需 給 関 係 を 調 べてきた この 3 種 の 品 目 は 実 際 に 2000 年 代 以 後 に 韓 日 の 水 産 物 貿 易 で 新 たなる 動 きを 見 せたものであった 韓 日 貿 易 は 韓 日 水 産 物 貿 易 がかつての 韓 国 から 日 本 への 一 方 的 な 輸 出 の 時 代 から 変 化 し 逆 に 日 本 から 韓 国 への 水 産 物 輸 出 が 増 える 方 向 にあり 現 在 は 双 方 向 の 貿 易 構 造 へと 転 換 する 状 況 となったが この3 種 の 水 産 物 はその 先 触 れの 決 定 的 な 指 標 的 水 産 物 となったといえる このような 貿 易 関 係 の 展 開 が 新 古 典 学 派 が 諭 しているような 比 較 優 位 性 によるものとは 説 明 できない その 理 由 としては スケトウダラやタチウオの 場 合 には 資 源 自 体 が 韓 国 からは 29

無 くなってしまったことをあげておきたい それが 乱 獲 資 源 枯 渇 や 韓 日 漁 業 協 定 が 背 景 とし てあったが 漁 場 が 失 われ 供 給 が 無 くなったことが 交 易 関 係 変 化 の 要 因 である 他 方 養 殖 マダイの 場 合 は 養 殖 ということでこれらとは 若 干 異 なる 即 ち 養 殖 マダイは ある 程 度 の 自 然 環 境 さえあればとこでも 養 殖 が 出 来 る 日 本 で 養 殖 マダイの 技 術 移 転 の 広 がり と 国 際 化 が 及 ぼした 影 響 は 大 きく また 消 費 市 場 の 国 際 化 と 拡 散 がより 早 く 進 行 して 需 給 関 係 は 錯 綜 している 韓 国 と 中 国 は 養 殖 クロソイに 関 して 韓 国 市 場 で 激 しい 競 争 を 続 けてきて 韓 国 はクロソイの 養 殖 展 開 をあきらめざるを 得 なくなり 新 しい 魚 種 転 換 として 養 殖 マダイへの 変 換 を 余 儀 なくされたという 関 係 があった 従 って 養 殖 マダイについては 生 産 3 カ 国 が 主 要 市 場 である 韓 国 日 本 そして 中 国 を 含 め 今 後 は 競 争 は 激 しくなるであろう 韓 国 は 養 殖 マダイを 輸 出 する 実 績 がほぼなかった 日 本 へも 企 んでいく 可 能 性 もある その 中 で 果 たして 日 本 の 養 殖 マダイは 価 格 以 外 に 何 を 競 争 力 とし てアピールするのか これからの 課 題 となると 思 う 30

Ⅱ. 和 歌 山 県 勝 浦 漁 業 協 同 組 合 における 生 鮮 マグロ 販 売 強 化 の 実 態 とその 意 義 鹿 児 島 大 学 水 産 学 部 教 授 佐 野 雅 昭 1. 調 査 の 目 的 : 勝 浦 漁 業 協 同 組 合 ( 以 下 勝 浦 漁 協 と 称 する) 産 地 卸 売 市 場 は 生 鮮 マグロの 水 揚 げ 港 として 全 国 的 にも 有 力 な 存 在 である 当 漁 協 ではそうした 産 地 市 場 の 性 徴 をより 生 かすため 産 地 卸 売 市 場 が 主 体 となった 生 鮮 マグロの 付 加 価 値 向 上 努 力 を 行 っている 本 報 告 はその 取 り 組 みの 実 態 を 明 らかにし 産 地 卸 売 市 場 が 主 体 となった 水 産 物 販 売 のあり 方 について その 意 義 や 問 題 点 などの 知 見 を 得 ることを 目 的 とする 2. 勝 浦 漁 協 の 概 要 とその 特 徴 (1) 漁 協 の 概 要 調 査 対 象 である 勝 浦 漁 協 は 和 歌 山 県 東 牟 婁 郡 那 智 勝 浦 町 に 所 在 する 紀 伊 半 島 の 南 東 部 三 重 県 との 県 境 近 くに 位 置 し 大 阪 名 古 屋 からほぼ 同 等 の 時 間 距 離 にある 近 隣 地 域 の 拠 点 的 水 揚 げ 港 である 第 3 種 漁 港 を 擁 し 和 歌 山 県 を 代 表 する 有 力 な 漁 業 協 同 組 合 である 2008 年 2 月 時 点 における 正 組 合 員 数 は 157 名 一 本 釣 (110 隻 )や 刺 網 (47 隻 ) 敷 網 (32 隻 )などの 沿 岸 漁 船 漁 業 魚 類 養 殖 業 に 加 え 近 海 マグロ 延 縄 漁 業 (2カ 統 )が 所 属 している( 表 1 参 照 ) 表 1 組 合 員 所 有 漁 船 のトン 数 階 層 別 隻 数 分 布 1トン 未 満 1トン 以 上 3トン 以 上 5トン 以 上 20トン 以 上 3トン 未 満 5トン 未 満 20トン 未 満 合 計 刺 網 36 12 48 一 本 釣 54 40 8 8 110 敷 網 2 17 13 32 マグロ 延 縄 7 2 9 養 殖 3 2 5 合 計 90 54 28 30 2 204 ( 資 料 : 勝 浦 漁 業 協 同 組 合 業 務 報 告 書 平 成 19 年 度 版 より 作 成 ) 組 合 員 による 水 揚 げ 金 額 のうち 約 2/3は 近 海 マグロ 延 縄 によるものである( 表 2 参 照 ) 2カ 統 しかない 近 海 マグロ 延 縄 漁 業 が 水 揚 げの 過 半 (2007 年 度 において 合 計 約 19 億 円 にもな る)を 占 めており 漁 業 地 区 としてはこれらを 中 心 とした 漁 業 生 産 構 造 となっている しかし 一 方 で 沿 岸 漁 業 経 営 体 も 多 数 存 在 し また 1 経 営 体 当 たりの 漁 獲 金 額 も 600 万 円 を 超 えている 沿 岸 漁 業 に 着 業 している 個 別 経 営 体 の 経 営 もそこそこ 順 調 に 推 移 しているように 思 える 31

表 2. 勝 浦 漁 協 における 受 託 販 売 実 績 マグロ 延 縄 漁 業 沿 岸 漁 船 漁 業 沿 岸 採 貝 藻 組 合 員 による 水 揚 県 内 船 による 水 揚 県 外 船 による 水 揚 合 計 数 量 金 額 数 量 金 額 数 量 金 額 数 量 金 額 272,711 192,596 476,610 317,101 9,667,479 6,074,717 10,416,800 6,584,414 423,513 103,363 13,708 18,933 22,581 26,129 459,802 148,424 7,019 5,662 242 961 290 869 7,550 7,492 合 計 703,243 301,621 490,560 336,995 9,690,350 6,101,714 10,884,153 6,740,303 ( 資 料 : 勝 浦 漁 業 協 同 組 合 業 務 報 告 書 平 成 19 年 度 版 より 作 成 ) 当 漁 協 の 最 大 の 特 徴 は 生 鮮 マグロの 大 量 水 揚 げにある 上 記 組 合 員 による 水 揚 げにおいても 近 海 マグロ 延 縄 漁 業 が 重 要 であることは 明 らかであるが その 水 揚 げの 割 合 は 実 は 漁 協 全 体 の 水 揚 げ 全 体 から 見 ればごく 小 さい 近 海 マグロ 延 縄 漁 業 を 営 む 員 外 船 の 水 揚 げが 圧 倒 的 に 大 き く むしろこちらが 当 漁 協 産 地 市 場 の 経 営 を 支 え 勝 浦 漁 協 の 産 地 としての 特 徴 を 形 成 してい る こうした 員 外 近 海 マグロ 延 縄 漁 船 の 誘 致 により 当 漁 協 の 生 鮮 マグの 水 揚 げ 金 額 は 全 国 の 漁 協 の 中 で 首 位 となっているのである 勝 浦 漁 協 は 日 本 を 代 表 する 生 鮮 マグロの 水 揚 げ 港 を 擁 していることに 特 徴 があり 地 域 の 漁 業 よりも 近 海 マグロ 延 縄 漁 業 の 水 揚 げに 特 化 した 漁 協 であると 言 えよう (2) 勝 浦 産 地 卸 売 市 場 の 概 要 勝 浦 漁 協 の 産 地 卸 売 市 場 ( 以 下 勝 浦 市 場 と 略 す)すなわち 漁 協 販 売 事 業 を 見 てみると( 表 2 参 照 ) 2007 年 度 における 水 揚 げ 量 は 約 10,884 トン 販 売 金 額 は 約 67 億 4 千 万 円 となって いる また 当 漁 協 市 場 に 水 揚 げされる 漁 獲 物 は 近 海 マグロ 延 縄 漁 業 によるものが 中 心 であり その 金 額 は 約 65 億 8 千 万 円 と 金 額 ベースで 95%を 超 える 生 鮮 マグロの 水 揚 げに 特 徴 がある 産 地 卸 売 市 場 であることは 一 目 瞭 然 であろう 勝 浦 市 場 の 買 受 人 は 50 名 程 度 その 多 くは 消 費 地 市 場 への 出 荷 を 主 業 とする 産 地 仲 買 人 ( 出 荷 業 者 )である こうした 出 荷 業 者 は 商 社 や 消 費 地 卸 売 市 場 の 荷 受 け 量 販 店 あるいは 周 辺 の 串 本 や 新 宮 等 に 拠 点 を 持 つ 大 手 出 荷 業 者 から 注 文 を 受 け 勝 浦 市 場 でマグロを 買 い 付 けて 発 注 元 に 出 荷 している 業 態 がほとんどである 当 市 場 の 売 買 参 加 権 は 広 くオープンにされているが 現 実 には 新 規 参 入 は 見 られない むしろ 口 銭 を 払 ってでもマグロの 扱 いに 熟 達 した 地 元 の 業 者 を 経 由 して 調 達 するケースが 多 いようである 当 市 場 出 荷 業 者 においては 勝 浦 産 という 点 に 差 別 性 を 持 たせようという 主 体 的 な 行 動 が 見 られず 単 純 に 消 費 地 市 場 に 出 荷 したり 量 販 店 に 販 売 したりしているという 流 通 末 端 では おそらく 単 なる 生 鮮 マグロ 一 般 として 扱 われており 勝 浦 産 というブランドが 削 り 取 られた 商 品 となっている 出 荷 業 者 の 流 通 末 端 への 展 開 が 弱 く むしろ 流 通 末 端 が 主 導 権 を 持 った 流 通 が 形 成 されているのである マグロを 扱 って 長 い 業 者 が 多 いことからマグロの 評 価 や 扱 い 方 には 熟 練 が 見 られ 近 年 では 裁 割 したからデリバリーするなどのサービスも 行 ってはい るが 一 方 で 旧 態 依 然 とした 扱 い 方 を 漫 然 と 繰 り 返 している 状 況 が 見 られ 衛 生 管 理 意 識 や 品 温 管 理 に 対 する 意 識 も 低 い こうした 点 には 改 善 の 余 地 が 大 きいものと 考 えられ 後 述 するよ 32

うな 新 たな 取 り 組 みが 開 始 されている さて 生 鮮 マグロの 水 揚 げは 重 要 な 観 光 資 源 にもなっており 勝 浦 漁 港 には 年 間 160 万 人 を 超 える 観 光 客 が 訪 れるという こうした 観 光 客 に 対 して 産 地 卸 売 市 場 が 軸 となってマグロを 直 販 することで 販 売 価 格 の 向 上 や 消 費 者 に 対 する 勝 浦 産 マグロのブランド 意 識 向 上 を 図 って いる 具 体 的 には まぐろ 祭 り や 朝 市 等 において 小 売 販 売 を 展 開 し 販 売 促 進 を 図 って いる (3) 水 揚 げされる 漁 獲 物 とその 特 徴 当 漁 協 市 場 に 水 揚 げされる 漁 獲 物 は 近 海 マグロ 延 縄 漁 業 によるものが 中 心 であることは 明 らかであるが 図 1はその 水 揚 げ 数 量 と 金 額 の 季 節 的 変 化 を 示 している 9~10 月 をボトム 3~4 月 をピークとする 明 らかな 季 節 性 があり これは 勝 浦 地 先 における 近 海 マグロ 延 縄 漁 業 の 漁 場 形 成 における 季 節 性 を 反 映 している 数 量 (トン) 1600 1400 1200 1000 800 600 400 200 0 数 量 金 額 4 5 6 7 8 9 10 11 12 1 2 3 月 金 額 ( 百 万 円 ) 図 1. 月 別 水 揚 げ 実 績 (2007 年 度 ) ( 資 料 : 勝 浦 漁 業 協 同 組 合 平 成 19 年 度 業 務 報 告 書 より 作 成 ) 1200 1000 800 600 400 200 0 生 鮮 マグロの 水 揚 げは 周 年 見 られ 全 国 各 所 から 延 縄 漁 船 が 入 港 するが 特 に 冬 から 春 にかけ て 紀 州 勝 浦 沖 合 にクロマグロ 及 びビンチョウの 好 漁 場 が 形 成 されるため この 時 期 には 全 国 の 延 縄 漁 船 がこの 漁 場 に 集 結 する そしてその 漁 獲 物 を 迅 速 に 水 揚 げし 操 業 効 率 を 高 めるために 員 外 船 の 入 港 が 拡 大 する その 結 果 こうした 明 らかな 水 揚 げの 季 節 性 が 発 生 するのである ま た この 時 期 に 水 揚 げされるクロマグロとビンチョウは 脂 が 乗 って 品 質 が 高 いため 全 国 的 に も 評 価 が 高 い 特 にクロマグロに 対 する 評 価 は 高 く 勝 浦 の 強 みとなっている( 一 方 メバチ は 塩 竃 や 銚 子 の 方 が 平 均 的 価 格 が 高 いが これはメバチに 脂 の 乗 る 時 期 にそれら 地 先 において 漁 場 形 成 が 見 られる 結 果 である) こうした 漁 獲 物 の 品 質 に 依 拠 した 価 格 形 成 の 強 さもあり 生 鮮 マグロ 水 揚 げにおいて 勝 浦 漁 協 は 数 量 的 には 気 仙 沼 漁 協 等 に 劣 るが 金 額 的 には 最 大 の 水 揚 げ 港 となっている そしてその 価 格 がさらに 員 外 船 の 入 港 を 誘 引 するという 好 循 環 があり 現 在 の 活 況 に 繋 がっている 勝 浦 に 水 揚 げされる 生 鮮 マグロの 品 質 は 一 般 に 高 いと 言 われている その 理 由 は 近 海 延 縄 漁 業 で1 本 1 本 丁 寧 に 漁 獲 され 手 間 をかけて 活 け 締 め 処 理 されたマグロが 船 内 で 氷 温 冷 水 で 保 存 され 1 週 間 程 度 の 航 海 の 後 に 鮮 度 良 く 水 揚 げされるからである 消 費 地 店 頭 においては 冷 凍 物 では 輸 入 品 遠 洋 まぐろ 延 縄 漁 獲 物 海 外 旋 網 漁 獲 物 などが 生 鮮 品 では 日 本 近 海 にお ける 大 中 型 旋 網 漁 獲 物 養 殖 ものなどが 氾 濫 している そうした 中 で 勝 浦 に 水 揚 げされるマ 33

金 額 数 量 ( 千 円 トン) グロは 水 産 物 としての 本 来 的 価 値 ( 鮮 度 )が 高 く 魚 種 とサイズ 脂 の 乗 りが 同 じであれば 差 別 的 価 格 を 実 現 できて 当 然 であろう そうした 強 みを 遺 憾 なく 発 揮 できるような 流 通 チャネル の 構 築 が 期 待 される 図 2 及 び 図 3は 2007 年 度 において 勝 浦 市 場 に 水 揚 げされた 魚 種 の 種 類 別 販 売 実 績 である 数 量 的 にも 金 額 的 にも 最 も 大 きなシェアを 占 めているのはビンチョウである ただしビンチョ ウは 価 格 が 安 いために 数 量 ほどには 金 額 のシェアが 高 くはなく 全 体 の 34%となっている 次 いで 数 量 的 に 大 きなシェアを 占 めているのがキハダ 金 額 的 にはメバチである キハダはメ バチより 価 格 が 低 いため こうした 逆 転 現 象 が 生 じているのである また クロマグロは 金 額 に 占 めるシェアが 約 10%と 低 いが 数 量 ではさらに 小 さなシェアしかない 勝 浦 市 場 において 最 も 重 要 な 魚 種 はマグロ 類 であることは 自 明 であるがその 中 でもビンチョウの 地 位 は 高 く こ の 取 り 扱 いが 漁 協 経 営 においても 非 常 に 重 要 であることが 理 解 できる その 他 カジキ 類 金 額 数 量 ビンチョウ キハダ メバチ クロマグロ 0 1,000 2,000 3,000 4,000 5,000 6,000 7,000 魚 種 名 図 2. 魚 種 別 水 揚 げ 実 績 (2007 年 度 ) ( 資 料 : 勝 浦 漁 業 協 同 組 合 平 成 19 年 度 業 務 報 告 書 より 作 成 ) ビンチョウは7 月 ~11 月 の 夏 ~ 秋 にか けては 水 揚 げが 減 少 し 価 格 が 高 騰 する しかし 12 月 から 翌 5 月 の 冬 ~ 春 にかけて は 水 揚 げが 多 く 価 格 形 成 が 弱 くなり 安 値 で 安 定 してしまう 傾 向 にある しかしこの 時 期 には 最 も 脂 が 乗 り 美 味 くなる こうした 旬 の 時 期 の 価 格 を 少 しでも 上 げることが できれば 生 産 者 の 収 入 拡 大 に 直 結 し 勝 浦 漁 協 の 経 営 上 もメリットが 大 きい 7% 34% 9% 10% 19% 21% クロマグロ メバチ キハダ ビンチョウ カジキ 類 その 他 図 3. 魚 種 別 水 揚 げ 金 額 内 訳 (2007 年 度 ) ( 資 料 : 勝 浦 漁 業 協 同 組 合 平 成 19 年 度 業 務 報 告 書 より 作 成 ) 図 4は 漁 船 の 所 属 地 区 別 水 揚 げ 実 績 である 高 知 県 大 分 県 宮 崎 県 に 所 属 するマグロ 船 の 水 揚 げが 大 きく 地 元 所 属 船 による 水 揚 げはごく 僅 かであることが 明 らかである 紀 州 沖 に 漁 場 形 成 が 行 われている 時 期 に 水 揚 げ 港 として 競 合 する 有 力 なライバル 漁 港 は 鹿 児 島 港 および 銚 子 港 である これらの 漁 港 と 競 い 合 い こうした 員 外 船 の 誘 致 を 図 ることが 重 要 となる 員 外 船 の 誘 致 ( 他 港 水 揚 げ 船 の 奪 取 ) 及 びその 確 実 な 保 全 は 勝 浦 市 場 そして 勝 浦 漁 協 の 経 営 にとって 死 活 的 に 重 要 な 課 題 であるが そのためには 勝 浦 市 場 においてより 良 い 価 格 形 成 を 図 34

ることが 最 大 の 手 段 と なる そこで 現 在 の 流 通 のあり 方 市 場 関 係 者 の 意 識 を 改 革 し 少 しでも 高 い 価 格 を 実 現 することが 市 場 開 設 者 である 勝 浦 漁 協 に 期 待 されている 高 知 県 大 分 県 宮 崎 県 三 重 県 徳 島 県 和 歌 山 県 ( 勝 浦 除 く) 勝 浦 漁 協 沖 縄 県 その 他 0 500 1000 1500 2000 図 4. 生 鮮 マグロ 水 揚 げ 金 額 の 所 属 地 区 別 内 訳 (2007 年 度 ) ( 資 料 : 勝 浦 漁 業 協 同 組 合 平 成 19 年 度 業 務 報 告 書 より 作 成 ) 百 万 円 図 5 及 び 図 6は 勝 浦 市 場 におけるマグロ 類 の 価 格 推 移 である 価 格 帯 はほぼ 安 定 しているが 近 年 キハダの 価 格 が 上 昇 しておりメバチに 並 んでいることが 注 目 される これは 近 年 脂 の 乗 り がよいキハダが 多 く 漁 獲 されることによる 漁 獲 されたマグロはほ ぼ 全 てが 刺 身 市 場 で 消 費 されると 考 えてよい 販 路 は 京 阪 神 地 区 を 中 核 とし 次 いで 名 古 屋 等 の 中 京 地 区 そして 関 東 地 区 の 都 市 部 が 中 心 である 京 阪 神 地 区 では 紀 州 勝 浦 は 生 マ グロの 産 地 として 著 名 で あり 有 力 なブランドとな ってきたが 関 東 地 区 では 生 マグロ 産 地 といえば 気 仙 沼 塩 竃 などが 著 名 であり 勝 浦 は 依 然 として 知 名 度 が 低 い 今 後 は 関 東 築 地 市 場 においても 生 マグロ 産 地 と しての 評 価 を 高 め 有 利 な 価 格 形 成 を 実 現 していくこと が 期 待 される 平 均 価 格 ( 円 /k g) 6,000 5,000 4,000 3,000 2,000 1,000 0 2004 2005 2006 2007 2008 平 均 価 格 ( 円 /kg) 1,200 図 5.クロマグロの 産 地 価 格 推 移 ( 資 料 : 勝 浦 漁 業 協 同 組 合 業 務 報 告 書 平 成 16~20 年 度 版 より 作 成 ) 1,000 800 600 400 200 0 メバチ キハダ ビンチョウ 2004 2005 2006 2007 2008 図 6.マグロ 類 (クロマグロ 除 く)の 産 地 価 格 推 移 ( 資 料 : 勝 浦 漁 業 協 同 組 合 業 務 報 告 書 平 成 16~20 年 度 版 より 作 成 ) 35

3. 勝 浦 漁 協 における 生 鮮 マグロ 販 売 への 新 たな 取 り 組 み 勝 浦 漁 協 は 魚 価 安 定 基 金 などの 補 助 金 を 利 用 し 水 揚 げされるマグロの 価 格 向 上 に 向 けて 以 下 のような 様 々な 局 面 において 新 たな 取 り 組 みを 行 っている 漁 協 がここまで 踏 み 込 んだ 販 売 促 進 努 力 を 行 うことは 先 進 的 であり その 効 果 が 注 目 される (1) 鮮 度 の 向 上 さらなる 鮮 度 の 向 上 を 目 指 し 競 売 が 実 施 される 市 場 の 低 温 化 が 進 められている しかし 広 大 で 開 放 的 な 売 り 場 全 体 を 低 温 化 することは 非 現 実 的 であり 部 分 的 なものだとしても 固 定 的 設 備 の 建 設 には 大 きなコストがかかる また そうした 設 備 はランニングコストも 大 きい そ こでアルミニウム 製 の 冷 却 容 器 や 冷 気 を 逃 がさない 移 動 式 カーテンなど 低 温 保 持 機 材 の 導 入 により 氷 を 上 手 く 使 った 低 コストで 簡 便 な 鮮 度 保 持 技 術 を 開 発 実 験 中 である さらに 再 利 用 可 能 な 輸 送 用 保 冷 剤 入 り 段 ボール 箱 を 開 発 し 鮮 度 維 持 と 物 流 面 におけるコストダウンを 図 ろうと 計 画 している (2) 業 務 の 効 率 化 水 揚 げ 業 務 の 時 間 短 縮 を 図 り 鮮 度 の 劣 化 を 防 ぐため 機 動 性 の 高 いクレーン 車 の 導 入 や 選 別 作 業 における 担 当 職 員 の 熟 練 化 入 札 業 務 の 機 械 化 など 荷 捌 き 業 務 の 改 善 に 取 り 組 んでいる (3)ブランド 力 の 獲 得 ブランド 力 獲 得 のため 一 定 以 上 の 品 質 であると 認 められたものについて 紀 州 勝 浦 産 生 ま ぐろ という 認 証 ラベル( 後 述 の QR コードが 付 いたもの)をマグロ 本 体 や 出 荷 用 の 発 泡 ケー スに 貼 付 し 他 市 場 産 のものとの 差 別 化 を 図 っている また 紀 州 勝 浦 産 生 まぐろ を 中 心 に 据 えた 販 促 パンフレットの 作 成 メディアへのパブリシティ 戦 略 の 構 築 小 売 店 店 頭 に 掲 げ る 幟 の 作 成 とレンタル 朝 市 での 販 促 キャンペーン 展 開 なども 同 時 に 並 行 して 行 ってきた 幟 は 紀 州 勝 浦 産 生 まぐろ を 販 売 する 小 売 店 ( 県 内 だけではなく 県 外 も 含 む)に 対 してレン タルされるが その 際 には 貸 し 出 し 簿 が 作 られる これは 勝 浦 漁 協 にとっては 顧 客 名 簿 となり 販 促 活 動 を 行 う 上 で 貴 重 な 資 料 となっているようである さらに 紀 州 勝 浦 産 生 まぐろ の 地 域 団 体 商 標 登 録 化 を 進 めている それがもたらす 具 体 的 な 効 果 は 定 かではないが 市 場 関 連 業 者 全 体 の 意 識 改 革 には 一 定 の 意 味 があろう (4) 取 扱 業 者 の 意 識 改 革 勝 浦 市 場 は 伝 統 的 な 生 鮮 マグロの 集 散 地 であり マグロの 取 り 扱 いに 長 い 経 験 を 有 する 業 者 が 多 い しかしそのことは 旧 態 依 然 とした 取 り 扱 い 方 式 を 固 定 化 させることに 繋 がっており 現 代 的 な 品 質 管 理 手 法 に 対 する 意 識 の 低 さに 結 びついている そこで 流 通 先 進 地 及 び 消 費 地 の 視 察 や 末 端 流 通 の 専 門 家 による 講 習 会 を 開 催 し 意 識 改 革 を 図 る 取 り 組 みを 行 っている ま た そのための 活 動 主 体 として 既 存 の 勝 浦 漁 協 市 場 運 営 協 議 会 を 利 用 するだけではなく 新 たに 紀 州 勝 浦 産 生 まぐろ 推 進 協 議 会 を 設 立 し 全 市 場 関 係 者 をそこに 組 織 化 することで 勝 浦 市 場 全 体 としての 意 識 統 一 を 図 っている 勝 浦 市 場 はその 中 核 として 機 能 している (5) 販 売 促 進 活 動 消 費 地 においてアンテナショップを 開 設 し それらをネットワーク 化 することで 勝 浦 市 場 36

の 情 報 ( 生 マグロに 関 する 水 揚 げ 情 報 や 勝 浦 市 場 における 鮮 度 管 理 への 取 り 組 み 内 容 など)を 消 費 地 に 的 確 に 伝 達 すると 同 時 に 消 費 地 の 情 報 を 勝 浦 市 場 に 収 集 している この 事 業 におい ては 既 存 の 特 定 非 営 利 法 人 紀 州 熊 野 応 援 団 ( 南 紀 熊 野 地 方 出 身 者 による 非 営 利 法 人 であり 構 成 員 の 大 半 が 東 京 や 大 阪 の 大 都 市 に 在 住 している)を 利 用 し 消 費 地 における 情 報 収 集 やア ンテナショップネットワークの 構 築 を 図 ることを 計 画 している 東 京 には 和 歌 山 県 の 物 産 特 産 品 を 販 売 するアンテナショップ 紀 州 館 が 存 在 するが そうした 施 設 の 利 用 も 考 慮 される べきであろう また 地 場 流 通 においても 既 存 組 織 である 那 智 勝 浦 町 水 産 振 興 会 および 那 智 勝 浦 町 魅 力 アップ 推 進 委 員 会 の 協 力 を 得 て 地 元 飲 食 店 や 朝 市 などとの 連 携 を 深 め 販 売 促 進 を 図 っている ここでも 勝 浦 市 場 がその 主 体 となっており マーケティング 活 動 の 中 核 となってい る (6) 産 地 情 報 開 示 システムの 導 入 QR コードのついたステッカーを 作 成 し マグロに 産 地 情 報 を 貼 付 して 発 信 する 取 り 組 みを 開 始 した 消 費 地 ではこのシステムによって 当 該 生 マグロの 生 産 と 水 揚 げに 関 する 情 報 ( 船 名 所 属 県 魚 種 重 量 水 揚 日 時 操 業 場 所 の 緯 度 経 度 )が 入 手 でき 商 品 履 歴 に 関 する 透 明 性 が 高 まることが 期 待 される ただし 全 てのマグロに 貼 付 するわけではなく クロマグロについ ては 全 て メバチ キハダについては 40~50kg より 大 型 サイズの 最 上 級 品 のみを 貼 付 の 対 象 としている これは 品 質 の 高 いものだけを 差 別 化 し 勝 浦 産 生 マグロのブランド 力 を 高 めるた めである 築 地 などの 出 荷 先 でもこうした 取 り 組 みは 高 評 価 を 得 ており 徐 々に 浸 透 しつつある また 生 産 者 においても 評 価 が 高 い QR コードによって 船 名 までトレースできるので 船 別 評 価 の 醸 成 に 繋 がり 品 質 管 理 への 意 欲 が 高 まっているのである またステッカーをもらえる 良 品 を 数 多 く 生 産 しようという 意 欲 も 高 まっており 生 産 者 に 良 い 刺 激 を 与 えている このステッカーは 員 外 船 の 水 揚 げ 品 にも 平 等 に 利 用 されているが こうした 目 に 見 える 形 での 差 別 化 アイテムは 員 外 船 の 誘 致 においても 有 効 であると 思 われる 問 題 はこのステッカーが 消 費 地 市 場 の 仲 卸 までしか 届 かないことである 多 くの 場 合 仲 卸 が 裁 割 し ブロックやサクまで 小 分 けした 状 態 で 小 売 業 者 や 業 務 筋 に 販 売 する その 際 仲 卸 業 者 の 段 階 でステッカーが 剥 がされ 捨 てられてしまうのである 本 来 QR コードは 消 費 者 まで 情 報 を 発 信 するために 作 られたものであり 仲 卸 段 階 で 情 報 発 信 が 止 まってしまうのは 望 まし いことではない せめて 小 売 店 や 業 務 筋 まで 産 地 情 報 が 届 けられ 売 り 場 マネジャーや 調 理 者 などユーザーの 紀 州 勝 浦 産 生 まぐろ に 対 する 評 価 が 向 上 することで 反 復 購 買 が 促 進 され ディマンドプル 的 な 需 要 の 拡 大 を 産 み 出 したいのである そのためにはその 段 階 で 紀 州 勝 浦 産 生 まぐろ であるという 個 体 識 別 が 可 能 な 状 態 でなければならない どうしたらもっと 末 端 まで QR コード 付 きのステッカーを 届 けることができるのか その 方 策 を 見 つけ 出 すことが 今 後 の 課 題 である また 現 在 は 良 品 のみにこのステッカーを 貼 付 し 差 別 性 を 与 えているが このことは 資 金 力 があり 良 品 だけを 選 んで 扱 うような 大 手 仲 買 業 者 に 大 きなメリットを 与 えている 彼 らは 差 別 化 されていることを 武 器 として 末 端 に 高 く 売 ろうとしているのである 一 方 で 安 価 なスソも のマグロを 扱 う 業 者 においては 逆 にステッカーがないことで 買 い 叩 かれ 価 格 低 下 のデメリッ 37

トが 発 生 しているという 状 況 もある 全 てのマグロに 何 らかの 目 印 を 付 けて 欲 しいという 意 向 も 存 在 し 今 後 の 検 討 事 項 となっている (7) 凍 結 保 存 方 法 の 開 発 生 産 の 集 中 による 価 格 暴 落 を 回 避 し 安 定 的 な 供 給 と 価 格 形 成 を 図 るため 凍 結 保 存 技 術 の 開 発 を 進 めている 特 に 旬 の 時 期 に 価 格 が 下 落 するビンチョウをこの 取 り 組 みの 主 対 象 として 想 定 している 旬 の 美 味 い 時 期 に 凍 結 したビンチョウを 夏 場 の 品 薄 の 時 期 に 出 荷 できれば 価 格 形 成 上 有 利 な 販 売 が 可 能 となる 既 に 確 立 している 生 マグロ 産 地 としてのブランド 力 だけで はなく 保 存 状 態 の 良 い 冷 凍 マグロ 供 給 地 としても 勝 浦 の 地 位 を 確 立 し 価 格 安 定 と 漁 業 者 の 所 得 向 上 に 結 びつけていくことが 期 待 されている また これまでマグロの 凍 結 品 はラウンド 中 心 であったが より 凍 結 時 間 を 短 縮 化 しさらに は 解 凍 しやすい 形 態 として 4 分 割 あるいは8 分 割 してから 真 空 パック 化 に 封 入 し 凍 結 する 方 式 を 開 発 中 である このサイズであれば 通 販 も 可 能 であろう (8)ビンチョウの 販 売 促 進 と 価 格 向 上 魚 種 では 特 にビンチョウの 販 売 に 力 点 が 置 かれている ビンチョウは 現 時 点 においては 評 価 が 低 く 他 のマグロと 比 較 して 価 格 は 低 い しかしビンチョウは 漁 獲 量 が 圧 倒 的 に 多 く 水 揚 げ 金 額 においても 約 6 割 を 占 めている 産 業 上 最 も 重 要 な 魚 種 なのである 従 って ビンチ ョウの 価 格 を 少 しでも 向 上 させることができれば 漁 家 経 営 に 大 きな 貢 献 となるし 漁 協 経 営 上 もメリットが 大 きい ビンチョウの 価 格 向 上 は 勝 浦 市 場 全 体 にとって 大 きな 意 味 を 持 つので ある そこで 漁 協 は 下 記 のような 取 り 組 みを 進 め ビンチョウの 価 格 向 上 に 努 めている 短 期 間 に 大 量 に 漁 獲 されるビンチョウは 産 地 卸 売 市 場 における 日 々の 需 給 バランスの 崩 れ によって 価 格 が 極 端 に 乱 高 下 しやすい 勝 浦 漁 協 はこの 価 格 を 下 支 えするために 産 地 卸 売 市 場 の 売 買 参 加 権 を 持 ち 価 格 が 大 きく 落 ちてきた 際 には 缶 詰 原 料 として 一 定 価 格 で 買 い 付 けて いる 従 って 刺 身 用 として 高 く 販 売 できる 良 品 や 品 薄 の 際 には 高 値 で 仲 買 人 に 買 ってもらい スソものや 大 漁 価 格 暴 落 時 には 漁 協 が 買 い 支 えるのである しかし 大 漁 時 において 少 しで も 多 くの 割 合 を 缶 詰 用 から 生 食 用 にシフトできれば 価 格 はそれだけ 向 上 する そこで 漁 協 は 上 記 の 凍 結 保 存 方 法 を 開 発 し 水 揚 げが 少 ない 時 期 に 解 凍 品 を 刺 身 用 として 市 場 に 供 給 するこ とで より 良 い 価 格 形 成 の 実 現 を 目 指 しているのである またこれらは 通 販 市 場 においても 販 売 が 可 能 であろう また 脂 が 乗 った 白 い 身 のビンチョウは 美 味 いが 輸 送 中 に 身 割 れしやすく マグロとして の 色 彩 にも 欠 けるために 商 品 化 がしづらい 一 方 ピンク 色 の 身 のビンチョウは 脂 の 乗 りが 悪 く 旨 味 は 少 ないが マグロとしての 色 彩 が 評 価 され 長 距 離 輸 送 時 にも 身 割 れしにくく 商 品 化 しやすい メバチやキハダの 価 格 が 上 昇 している 状 況 においては ビンチョウの 発 色 をよく して 赤 味 マグロ 市 場 に 参 入 することが 有 望 であると 考 えられ 漁 協 でもそうした 市 場 への 参 入 を 図 ろうとしている 特 にマグロ 消 費 の 強 い 関 東 地 区 の 居 酒 屋 等 外 食 チェーンにおいて 安 く てボリュームのある 赤 味 マグロとしての 展 開 を 目 指 している 4. 勝 浦 漁 協 における 取 り 組 みの 意 義 ~ 産 地 市 場 機 能 向 上 の 視 点 から 上 記 の 様 々な 取 り 組 みはいずれも 勝 浦 漁 協 が 主 体 となって 計 画 を 作 り 資 金 を 獲 得 あるいは 38

造 成 し 実 行 している 単 なる 集 荷 と 分 荷 の 場 競 売 による 第 一 次 価 格 形 成 の 場 としてだけで はなく 流 通 機 能 の 高 度 化 によって 新 しい 付 加 価 値 を 創 造 していく 取 り 組 みに 漁 協 産 地 市 場 が 積 極 的 に 参 画 していることは 高 く 評 価 できよう 結 果 としての 価 格 上 昇 や 員 外 船 誘 致 拡 大 はまだ 先 のことであり こうした 取 り 組 みに 早 急 な 結 論 を 下 すことは 妥 当 ではないが 少 なくとも 漁 協 系 統 がこのような 多 面 的 な 市 場 機 能 向 上 努 力 を 行 い 販 売 促 進 活 動 を 展 開 している 事 例 は 希 である 貴 重 なモデル 的 事 例 であり その 成 否 は 他 地 区 漁 協 産 地 卸 売 市 場 にとっても 大 きな 関 心 事 である 以 下 事 項 ごとに 検 討 を 加 えた い まず 漁 協 が 産 地 市 場 の 売 買 参 加 権 を 取 得 し 価 格 形 成 に 積 極 的 に 参 加 することは 仲 買 人 の 購 買 力 が 低 下 している 産 地 市 場 の 一 般 的 現 状 において 重 要 な 試 みであろう 現 時 点 における 価 格 形 成 への 介 入 としては 缶 詰 加 工 用 原 料 として 大 漁 時 のビンチョウを 買 い 支 え 価 格 の 下 支 えを 行 っている また 今 後 供 給 過 剰 期 におけるビンチョウの 冷 凍 保 管 と 生 鮮 品 市 場 への 安 定 的 供 給 が 技 術 的 に 確 立 し 産 地 市 場 が 在 庫 機 能 を 発 揮 することができれば 価 格 形 成 面 に さらに 有 効 に 作 用 することが 強 く 期 待 される またそのユーザーとしては 大 手 外 食 チェーンな どが 想 定 されるが こうした 価 格 形 成 上 の 効 果 が 発 揮 されるためにはこれらユーザーとの 安 定 的 統 合 的 な 取 引 関 係 を 構 築 し 高 度 な 物 流 機 能 を 発 揮 することが 必 要 となろう また 生 鮮 品 についても 様 々な 保 冷 手 段 を 開 発 し また 物 流 速 度 を 速 めることで 鮮 度 保 持 機 能 を 高 める 努 力 を 行 っている さらに 勝 浦 市 場 では 仲 買 人 の 処 理 配 分 機 能 特 に 価 値 評 価 機 能 が 高 く 評 価 されている 現 在 のユーザーである 量 販 店 やマグロ 問 屋 は 彼 らの 目 利 きの 技 能 を 流 通 チャネルから 排 除 するこ とができず 口 銭 を 払 って 仲 買 人 達 をチャネルメンバーに 加 えている 特 にマグロのような 魚 種 は1 尾 1 尾 で 品 質 が 異 なるため 評 価 機 能 が 損 なわれると 価 格 形 成 が 適 正 に 行 い 得 ず 適 正 な 用 途 配 分 も 実 現 できない 勝 浦 市 場 の 強 みの 一 つはマグロに 関 するこうした 職 人 的 専 門 的 な 評 価 機 能 を 持 つことであり それを 生 かした 商 品 化 の 取 り 組 みが 期 待 される ステッカー 及 び QR コードの 貼 付 は 流 通 組 織 が 果 たすべき 情 報 交 換 機 能 を 産 地 市 場 主 導 で 実 現 支 援 し その 付 加 価 値 を 産 地 にもたらそうとするものである 上 手 く 実 現 できているとは 現 段 階 では 判 断 できないが 今 後 の 展 開 が 期 待 される 現 状 のチャネルでは 消 費 地 市 場 仲 卸 段 階 で 情 報 流 が 遮 断 され 秘 匿 化 される そこを 突 破 しうるチャネルの 再 構 築 が 必 要 であり 産 地 と 消 費 地 仲 卸 とのパートナーシップが 期 待 される また 情 報 交 換 機 能 の 点 ではさらに 地 域 出 身 者 のネットワークを 利 用 した 消 費 地 における 情 報 収 集 やアンテナショップネットワーク の 構 築 を 図 ろうとしている こうしたネットワークが 機 能 し 消 費 地 との 情 報 交 換 が 活 発 化 すれ ば 水 産 物 に 新 しい 付 加 価 値 をつけ 加 えて 販 売 することが 可 能 となろう 上 記 の 漁 協 による 様 々な 取 り 組 みは いずれも 価 格 形 成 機 能 の 向 上 が 最 終 的 な 目 的 となる そのことは 漁 業 生 産 者 の 収 入 拡 大 を 意 味 するが 同 時 に 員 外 船 の 誘 致 が 進 めば 漁 協 経 営 にも 大 きなメリットをもたらすであろう 漁 協 産 地 市 場 が 主 体 となり 様 々な 局 面 で 流 通 機 能 を 高 め つつ 新 しい 流 通 構 造 を 作 りだしていること それが 勝 浦 漁 協 の 取 り 組 みの 最 大 の 意 義 であろう 克 服 すべき 課 題 は 多 いが この 方 向 性 がさらに 強 化 され 実 質 を 伴 う 効 果 を 発 揮 していくこと が 強 く 期 待 される 参 考 文 献 : 勝 浦 漁 業 協 同 組 合 平 成 19 年 度 業 務 報 告 書 2008.6 39

Ⅲ. 福 井 県 の 産 地 市 場 統 合 による 水 産 物 流 通 構 造 の 変 化 - 敦 賀 市 場 と 早 瀬 市 場 の 統 合 を 事 例 にして 函 館 短 期 大 学 専 任 講 師 佐 々 木 貴 文 1.はじめに 本 報 告 は 市 場 流 通 機 能 強 化 事 例 調 査 事 業 及 び 市 場 外 流 通 機 能 強 化 事 例 調 査 として 実 施 された 福 井 県 における 産 地 市 場 統 合 にかかわる 現 状 把 握 と 課 題 表 出 を 目 的 とした 調 査 をまと めたものである 詳 細 は 後 述 するとして 本 調 査 の 対 象 となった 福 井 県 漁 連 敦 賀 地 方 卸 売 市 場 ( 以 下 敦 賀 市 場 )と 福 井 県 漁 連 早 瀬 地 方 卸 売 市 場 ( 以 下 早 瀬 市 場 )はともに その 名 の 通 り 福 井 県 漁 業 協 同 組 合 連 合 が 開 設 者 となっている 地 方 卸 売 市 場 で 平 成 21 年 4 月 をもって 敦 賀 市 場 に 一 本 化 されることが 決 まっている 福 井 県 では 産 地 市 場 の 大 半 を 県 漁 連 が 開 設 する という 設 置 形 態 をとっており 統 合 そのものは 県 漁 連 の 組 織 改 組 の 一 環 といえる しかしな がら 漁 業 者 や 仲 買 人 などにとっては 相 応 の 変 化 に 直 面 することになるため 県 漁 連 や 当 該 地 域 の 単 協 には 混 乱 を 回 避 し 安 定 的 な 漁 業 生 産 とスムーズな 生 産 物 流 通 を 維 持 するための 準 備 が 求 められた 確 認 するまでもなく 現 今 の 地 方 市 場 は 水 揚 量 の 減 少 や 市 場 価 格 の 伸 び 悩 みなどにより 手 数 料 収 入 に 頼 った 運 営 ができず 赤 字 体 質 に 陥 りやすくなっている そのため 全 国 的 に 統 合 再 編 のながれにあり 福 井 県 も 福 井 県 水 産 産 地 市 場 再 編 整 備 計 画 を 平 成 14 年 3 月 に 公 表 ( 平 成 18 年 4 月 一 部 改 正 )し 平 成 13 年 3 月 時 点 で 11 あった 産 地 市 場 を 平 成 22 年 まで に 4 まで 減 少 させることを 目 指 している ただ 平 成 19 年 3 月 までに 統 合 された 市 場 は 2 つ となっており その 実 現 は 困 難 をともなうことが 予 想 される 全 国 の 状 況 もほぼ 同 様 で 水 産 物 産 地 市 場 再 編 整 備 計 画 をまとめた 39 都 道 府 県 の 922( 平 成 13 年 3 月 時 点 )の 産 地 市 場 は 平 成 19 年 3 月 現 在 で 803 あり 平 成 22 年 度 の 目 標 達 成 年 度 までの 進 捗 率 は 約 28%となっている 本 調 査 では かかる 状 況 をふまえて 敦 賀 市 場 早 瀬 市 場 に 加 えて 福 井 県 の 嶺 南 地 域 と りわけ 敦 賀 市 美 浜 町 若 狭 町 の 3 市 町 における 各 漁 協 ( 下 図 参 照 : 美 浜 町 漁 協 235と 若 狭 三 方 漁 協 6)について 水 産 物 流 通 の 実 態 を 概 観 した また 福 井 県 に 隣 接 する 京 都 府 の 舞 鶴 市 場 についても 調 査 を 実 施 した これについては 後 述 するように 現 状 において 若 狭 三 方 漁 協 か ら 舞 鶴 市 場 に 水 産 物 が 一 定 量 出 荷 されていることの 背 景 を 把 握 する 目 的 があった 以 上 の 各 調 査 から 敦 賀 市 場 と 早 瀬 市 場 の 統 合 がもたらす 影 響 について 把 握 し 同 地 におい ていかなる 流 通 体 系 が 構 築 されようとしているのかを 明 らかにしたいと 考 えた 2 6 4 5 3 1 40 1 敦 賀 市 場 2 丹 生 支 所 3 菅 浜 支 所 4 早 瀬 市 場 5 日 向 本 所 6 小 川 本 所

2. 福 井 県 の 漁 業 2 1. 調 査 対 象 地 の 概 要 日 本 海 沿 岸 のほぼ 中 央 に 位 置 する 福 井 県 は 合 併 特 例 法 による 広 域 合 併 が 進 んだ 結 果 9 市 8 町 の 17 市 町 で 構 成 ( 平 成 18 年 3 月 末 )されている 人 口 は 812,310 人 ( 平 成 20 年 12 月 ) となっている 福 井 県 は 福 井 平 野 を 中 心 に 繊 維 や 眼 鏡 一 般 機 械 ( 自 動 車 関 連 部 品 など)を 主 要 産 品 としている 県 内 総 生 産 額 ( 平 成 15 年 度 )は 3 兆 2,900 億 円 で 第 一 次 産 業 は 1.2% 第 二 次 産 業 は 27.8% 第 三 次 産 業 は 71.0%となっている 漁 業 は 北 東 から 南 西 にかけて 370km にわたる 海 岸 線 でおこなわれており 後 述 するように スルメイカ サワラ 類 マアジ ブリ 類 カレイ 類 ズワイガニなどを 中 心 に 水 揚 されている ところで 福 井 県 は 二 つの 文 化 圏 を 有 している すなわち 敦 賀 市 東 方 の 木 の 芽 峠 以 北 の 嶺 北 地 方 以 南 西 の 嶺 南 地 方 の 2 地 域 である 本 調 査 の 対 象 地 である 敦 賀 市 美 浜 町 若 狭 町 の 3 市 町 は 嶺 南 地 方 にある 若 狭 は 廃 藩 置 県 後 の 混 乱 期 において 滋 賀 県 の 一 部 ( 明 治 9 年 )であったこともあり 文 化 的 には 近 畿 関 西 一 円 とのつながりが 強 いといえる かかる 福 井 県 には 沿 海 漁 協 が 12 組 合 業 種 別 漁 協 が 5 組 合 生 産 組 合 が 1 組 合 連 合 会 が 2 組 合 存 立 している 海 面 漁 業 養 殖 漁 業 の 生 産 量 は ここ 数 年 1 万 5,000 トン 前 後 で 推 移 している 漁 業 種 類 別 でみると 大 型 定 置 網 が 水 揚 の 4 割 ほどを 占 める 小 型 定 置 網 を 加 える と 定 置 網 での 水 揚 げが 5 割 を 超 える 年 もみられる( 平 成 19 年 では 50.8%) 定 置 網 の 他 沖 合 ならびに 小 型 の 底 びき 網 も 主 要 な 位 置 を 占 めており あわせると 2 割 から 3 割 ほどの 水 揚 げ を 担 っている( 平 成 19 年 では 23.6%) この 他 近 海 沿 岸 イカ 釣 で 2,000 トンから 多 い 年 で 3,000 トンの 水 揚 げがある 養 殖 業 の 内 訳 では フグやマダイ 養 殖 が 大 きな 位 置 を 占 めている 主 な 魚 種 別 漁 獲 量 であるが マ アジ ブリ 類 カレイ 類 サワ ラ 類 スルメイカの 5 魚 種 が 概 ね 1,000 トン 以 上 の 規 模 で 水 揚 げされている しかし 魚 種 によっ ては 漁 獲 量 に 変 動 が 大 きく 1,000 トンを 割 った 2 年 後 には 2,000 トン を 超 えるようなケースもみられる 平 成 16 年 17 年 に 1,000 トンを 割 っていたサワラ 類 が 平 成 19 年 には 2,000 トンを 超 える 水 揚 げがあった 海 面 漁 業 養 殖 業 生 産 量 の 推 移 (トン) 平 成 16 年 平 成 17 年 平 成 18 年 平 成 19 年 海 面 漁 業 養 殖 業 16,649 13,228 15,798 16,074 海 面 漁 業 16,116 12,785 15,501 15,718 養 殖 業 533 443 297 356 注 ) 北 陸 農 政 局 福 井 農 政 事 務 所 資 料 より 作 成 漁 業 種 類 別 漁 獲 量 の 推 移 (トン) 平 成 16 年 平 成 17 年 平 成 18 年 平 成 19 年 大 型 定 置 網 6,356 4,028 5,759 6,937 小 型 定 置 網 1,562 1,038 1,314 1,228 沖 合 底 びき 網 1,299 1,180 1,296 1,350 小 型 底 びき 網 2,203 1,774 2,497 2,446 近 海 イカ 釣 920 643 762 802 沿 岸 イカ 釣 1,426 2,231 1,811 1,005 フグ 類 養 殖 - 141 121 143 マダイ 養 殖 89 92 88 96 注 ) 北 陸 農 政 局 福 井 農 政 事 務 所 資 料 より 作 成 主 な 魚 種 別 漁 獲 量 の 推 移 (トン) 平 成 16 年 平 成 17 年 平 成 18 年 平 成 19 年 マアジ 2,085 1,141 2,115 2,212 ブリ 類 3,497 1,163 1,331 2,011 カレイ 類 1,075 867 1,167 1,343 サワラ 類 918 790 1,343 2,172 スルメイカ 2,061 2,697 2,437 1,672 マダイ 187 204 261 195 ズワイガニ 544 464 631 588 サザエ 250 187 213 262 注 ) 北 陸 農 政 局 福 井 農 政 事 務 所 資 料 より 作 成 41

2 2. 福 井 県 漁 業 協 同 組 合 連 合 会 が 運 営 する 敦 賀 早 瀬 の 両 市 場 現 在 福 井 県 には 実 質 的 に 稼 動 している 産 地 市 場 が 三 国 市 場 敦 賀 市 場 早 瀬 市 場 小 浜 市 場 越 廼 市 場 高 浜 市 場 越 前 市 場 の 7 つある そのうち 若 狭 高 浜 漁 協 が 運 営 する 高 浜 市 場 ( 現 在 小 浜 市 場 との 統 合 が 議 論 されている)と 越 前 町 漁 協 が 運 営 する 越 前 市 場 ( 資 材 燃 油 については 県 漁 連 が 供 給 )を 除 く 5 市 場 は 福 井 県 漁 連 が 開 設 者 となっている ただし 越 廼 市 場 は 漁 連 名 で 出 荷 業 務 はおこなっているものの 県 漁 連 越 前 支 所 の 出 張 所 というあつ かいとなっている いずれの 市 場 も 県 漁 連 の 支 所 機 能 は 有 しており 製 氷 工 場 ( 三 国 小 浜 ) や 冷 蔵 工 場 ( 三 国 早 瀬 小 浜 ) 販 売 事 業 所 ( 三 国 敦 賀 早 瀬 小 浜 ) 給 油 所 ( 三 国 敦 賀 早 瀬 小 浜 )などを 併 設 している この 漁 連 運 営 の 5 市 場 で 最 も 取 扱 数 量 ならびに 金 額 が 大 きいのは 敦 賀 市 場 であり 平 成 19 年 度 でみると 数 量 で 5 市 場 全 体 の 42.8%となる 4,200 トン 金 額 で 42.8%となる 24.6 億 円 と 共 に 4 割 ほどを 占 める 次 いで 大 きいのが 小 浜 市 場 であり 数 量 金 額 がそれぞれ 2,500 トン 12.9 億 円 で 双 方 とも 全 体 の 2 割 強 を 占 める 小 浜 市 場 に 金 額 で 並 ぶのが 三 国 市 場 となる 三 国 市 場 は 数 量 では 全 体 の 7.9%を 占 めるにすぎず 今 回 統 合 の 対 象 となっている 早 瀬 市 場 の 18.6% の 半 分 にも 満 たない にもかかわらず 金 額 が 大 きいのは ひとえに 単 価 の 高 い 赤 エビとズワイ ガニの 取 扱 が 極 めて 大 きな 位 置 を 占 めるからにほかならない 平 成 19 年 度 では 三 国 市 場 の 取 扱 数 量 783.3 トンのうち 324.2 トンが 赤 エビ 76.2 トンがズワイガニとなっている 金 額 も 11.1 億 円 のうち 赤 エビが 3.7 億 円 ズワイガニが 4.3 億 円 に 達 する 早 瀬 市 場 は 取 扱 数 量 がこ の 2 3 年 で 回 復 傾 向 にあるが 金 額 が 依 然 として 全 体 の 1 割 ほどしかない このうち 本 報 告 書 で 取 り 扱 うのが 敦 賀 市 美 浜 町 若 狭 町 にある 各 漁 協 が 主 要 な 出 荷 先 ( 陸 送 先 )とする 敦 賀 市 場 と 早 瀬 市 場 である 後 述 するように 一 部 の 漁 協 では 小 浜 市 場 や 京 都 府 舞 鶴 市 場 に 出 荷 するケースもみられるが おおむね 敦 賀 早 瀬 のいずれかの 市 場 に 出 荷 さ れている 敦 賀 市 場 には 現 在 冷 蔵 庫 担 当 の 10 名 をはじめ 29 名 の 職 員 が 配 置 されている セリは 正 月 を 除 いて 毎 日 実 施 されている 早 瀬 市 場 には 現 在 9 名 の 職 員 ( 購 買 資 材 3 名 販 売 5 名 製 氷 1 名 )と 1 名 のパート 従 業 員 が 配 置 されている 早 瀬 市 場 を 運 営 する 漁 連 早 瀬 支 所 は 平 成 9 年 に 早 瀬 漁 協 と 業 務 統 合 を 実 施 し 現 在 の 体 制 となっている 福 井 県 漁 連 運 営 の 各 市 場 における 取 扱 割 合 (%) 合 計 敦 賀 市 場 早 瀬 市 場 三 国 市 場 小 浜 市 場 越 廼 市 場 数 量 (kg) 金 額 ( 千 円 ) 数 量 金 額 数 量 金 額 数 量 金 額 数 量 金 額 数 量 金 額 平 成 17 年 度 7,369,712 4,939,757 40.3 41.6 16.8 10.8 10.5 19.9 27.1 24.5 5.3 3.2 平 成 18 年 度 9,380,283 5,690,662 42.8 42.0 17.2 10.9 8.8 20.2 24.0 23.2 7.2 3.7 平 成 19 年 度 9,928,264 5,756,573 42.8 42.8 18.6 12.5 7.9 19.2 25.4 22.4 5.4 3.1 注 ) 福 井 県 漁 連 資 料 より 作 成 2 3. 敦 賀 早 瀬 の 両 市 場 における 取 扱 実 績 魚 種 別 に 敦 賀 市 場 ならびに 早 瀬 市 場 の 取 扱 実 績 をみる 全 体 の 傾 向 として 敦 賀 市 場 では 比 較 的 単 価 の 高 い 魚 種 を 扱 うのに 対 して 早 瀬 市 場 はアジやハマチなど 単 価 の 低 い 魚 種 を 扱 う すなわち 敦 賀 市 場 では 取 扱 金 額 の 上 位 に 単 価 が 3,000 円 を 超 えるズワイガニや 2,000 円 前 後 する 養 殖 フグがならぶ この 他 やはり 単 価 が 高 い 船 冷 赤 エビやセイコガニも 例 年 取 扱 金 額 の 上 位 10 位 以 内 に 入 る しかしながら 早 瀬 市 場 では 確 かにヒラメといった 比 較 的 単 価 の 高 い 魚 種 も 扱 ってはいるものの その 数 量 は 少 なく 数 量 ベースでみると 単 価 の 低 いアジやハマ チの 占 める 位 置 が 相 対 的 に 大 きくなる 結 果 漁 連 からみると 手 間 ばかりかかり 儲 からな 42

い 市 場 になっている それは 敦 賀 市 場 の 全 魚 種 単 価 が 600 円 前 後 で 推 移 しているのに 対 し て 早 瀬 市 場 では 400 円 を 挟 んだ 値 動 きとなっていることからもわかる 早 瀬 市 場 が 規 模 の 過 小 による 経 費 負 担 と 単 価 安 の 両 面 から 苦 しんでいることがうかがえる ただし 敦 賀 市 場 も 早 瀬 市 場 と 同 様 に 取 扱 数 量 は 増 加 傾 向 にあるものの 金 額 の 伸 びはそ れに 追 いついておらず 単 価 は 低 迷 する 傾 向 にある 敦 賀 市 場 では この 5 年 ほどで 単 価 が 200 円 下 がっており 早 瀬 市 場 における 下 落 幅 の 150 円 を 上 回 っている これが 統 合 によってどの ように 変 化 するかは 仲 買 人 の 動 向 などと 関 係 して 興 味 深 い 平 成 19 年 度 敦 賀 市 場 取 扱 金 額 上 位 10 魚 種 (kg 千 円 円 ) 平 成 19 年 度 早 瀬 市 場 取 扱 金 額 上 位 10 魚 種 (kg 千 円 円 ) 数 量 金 額 kg 単 価 数 量 金 額 kg 単 価 ズワイガニ 103,310 321,746 3114.4 ハマチ 583,919 167,722 287.2 養 殖 フグ 111,516 244,663 2194.0 サワラ 392,130 111,373 284.0 ハマチ 509,948 160,327 314.4 ブリ 58,570 65,197 1113.1 サワラ 562,927 146,690 260.6 タコ 62,130 47,212 759.9 船 冷 イカ 705,661 136,225 193.0 その 他 魚 類 44,640 37,437 838.6 船 冷 赤 エビ 49,887 89,773 1799.5 アジ 219,422 29,569 134.8 養 殖 マダイ 89,704 86,322 962.3 サザエ 42,927 25,896 603.3 セイコガニ 37,060 85,188 2298.7 その 他 イカ 27,990 20,323 726.1 アジ 671,239 80,633 120.1 ズワイガニ 5,390 16,099 2986.8 その 他 魚 類 78,929 77,203 978.1 ヒラメ 7,289 14,533 1993.8 注 ) 福 井 県 漁 連 資 料 より 作 成 注 ) 福 井 県 漁 連 資 料 より 作 成 平 成 18 年 度 敦 賀 市 場 取 扱 金 額 上 位 10 魚 種 (kg 千 円 円 ) 平 成 18 年 度 早 瀬 市 場 取 扱 金 額 上 位 10 魚 種 (kg 千 円 円 ) 数 量 金 額 kg 単 価 数 量 金 額 kg 単 価 ズワイガニ 96,702 299,599 3098.2 サワラ 319,895 145,261 454.1 養 殖 フグ 105,568 195,010 1847.2 タコ 56,122 48,167 858.3 船 冷 イカ 671,311 155,649 231.9 その 他 魚 類 48,356 31,809 657.8 サワラ 417,267 150,068 359.6 ハマチ 157,997 31,674 200.5 養 殖 マダイ 93,945 92,826 988.1 アジ 365,617 28,912 79.1 アジ 770,633 92,022 119.4 その 他 イカ 37,331 28,628 766.9 船 冷 赤 エビ 53,343 84,816 1590.0 サザエ 38,601 25,472 659.9 その 他 魚 類 89,273 84,713 948.9 ヒラマサ 22,559 23,520 1042.6 セイコガニ 34,205 80,756 2360.9 ブリ 52,791 20,689 391.9 ヒラマサ 78,938 80,269 1016.9 ヒラメ 8,456 16,937 2003.0 注 ) 福 井 県 漁 連 資 料 より 作 成 注 ) 福 井 県 漁 連 資 料 より 作 成 平 成 17 年 度 敦 賀 市 場 取 扱 金 額 上 位 10 魚 種 (kg 千 円 円 ) 平 成 17 年 度 早 瀬 市 場 取 扱 金 額 上 位 10 魚 種 (kg 千 円 円 ) 数 量 金 額 kg 単 価 数 量 金 額 kg 単 価 ズワイガニ 89,801 257,210 2864.2 サワラ 206,684 64,594 312.5 養 殖 フグ 129,957 239,855 1845.6 タコ 58,312 56,610 970.8 船 冷 赤 エビ 57,986 95,388 1645.0 ワラサ 81,489 35,917 440.8 サワラ 280,098 80,859 288.7 アジ 125,143 31,323 250.3 その 他 魚 類 119,354 80,126 671.3 その 他 魚 類 42,479 30,738 723.6 養 殖 マダイ 85,532 69,996 818.4 サザエ 34,186 23,328 682.4 ヒラマサ 69,671 69,866 1002.8 ハマチ 125,567 22,641 180.3 アジ 373,786 67,917 181.7 その 他 イカ 19,324 18,542 959.5 セイコガニ 24,460 64,131 2621.9 ズワイガニ 6,738 16,352 2426.8 船 冷 イカ 242,639 61,458 253.3 ヒラメ 8,375 15,341 1831.8 注 ) 福 井 県 漁 連 資 料 より 作 成 注 ) 福 井 県 漁 連 資 料 より 作 成 43

敦 賀 市 場 と 早 瀬 市 場 の 取 扱 実 績 の 推 移 (kg 千 円 円 ) 敦 賀 市 場 早 瀬 市 場 取 扱 数 量 取 扱 金 額 全 魚 種 単 価 取 扱 数 量 取 扱 金 額 全 魚 種 単 価 平 成 14 年 度 3,072,400 2,338,981 761.3 1,132,978 608,372 537.0 平 成 15 年 度 3,246,868 2,295,499 707.0 1,370,140 686,020 500.7 平 成 16 年 度 3,698,828 2,206,258 596.5 1,622,035 641,498 395.5 平 成 17 年 度 2,968,607 2,056,127 692.6 1,241,269 534,319 430.5 平 成 18 年 度 4,017,981 2,387,480 594.2 1,610,585 620,785 385.4 平 成 19 年 度 4,252,521 2,462,413 579.0 1,842,452 719,551 390.5 注 ) 福 井 県 漁 連 資 料 より 作 成 3. 敦 賀 市 場 と 早 瀬 市 場 の 統 合 3-1. 統 合 にいたる 経 緯 統 合 は 福 井 県 漁 連 の 財 務 体 質 の 向 上 を 主 要 な 目 的 とされている 上 でみてきたように 早 瀬 市 場 の 取 扱 実 績 は ここ 最 近 はやや 回 復 傾 向 にあるものの 他 の 市 場 との 比 較 において 低 位 で 推 移 しており 手 数 料 収 入 では 運 営 経 費 が 賄 えないような 状 況 にある 魚 価 の 低 迷 漁 業 者 の 高 齢 化 減 少 による 生 産 量 と 取 扱 金 額 の 減 少 が 直 撃 した 形 となっている また 取 扱 金 額 が 三 国 支 所 や 小 浜 支 所 の 2 倍 ほどと 堅 調 な 敦 賀 市 場 も 施 設 の 老 朽 化 や 衛 生 管 理 体 制 の 強 化 が 求 められる 時 勢 下 において 新 規 投 資 が 求 められた このような 状 況 において 比 較 的 近 距 離 にあ る 両 市 場 を 敦 賀 市 場 として 集 約 統 合 し 経 費 節 減 をはじめ 取 引 の 活 性 化 や 流 通 の 効 率 化 を 目 指 す 構 造 改 革 が 目 指 されることとなった このように 現 在 福 井 県 漁 連 が 市 場 運 営 の 当 事 者 として 構 造 改 革 に 着 手 しているが 敦 賀 市 場 においては 安 定 した 生 鮮 食 料 品 の 供 給 をはかるため 昭 和 51 年 から 55 年 頃 にかけて 敦 賀 市 による 市 場 公 設 化 が 議 論 された 施 設 の 老 朽 化 が 進 むなかで 漁 業 関 係 者 からの 新 施 設 建 設 の 要 望 もでていた しかし 敦 賀 市 は 青 果 市 場 との 共 同 開 設 を 目 指 したため 新 市 場 は 内 陸 部 に 建 設 されることとなった その 結 果 漁 業 関 係 者 の 利 便 性 が 確 保 できないという 意 見 が だされ 青 果 のみが 公 設 化 された しかし 今 回 福 井 県 の 産 地 市 場 再 編 整 備 計 画 がだされたため 敦 賀 市 もその 推 進 に 参 画 する こととした 総 事 業 費 9 億 2,040 万 円 の 内 敦 賀 市 の 補 助 額 は 県 の 補 助 1 億 5,829 万 円 (17.2%) を 上 回 る 1 億 9,755 万 円 (21.5%)となっている 用 地 確 保 のための 埋 め 立 て 工 事 などに 使 われ ているという 敦 賀 市 が 事 業 者 負 担 額 をこえる 補 助 をおこなう 理 由 としては 水 産 に 力 を 入 れる 街 として 魚 への 関 心 を 高 め 消 費 量 を 拡 大 したいという 想 いがある 平 成 20 年 2 月 には 敦 賀 市 漁 村 活 性 化 計 画 が 策 定 され 漁 業 への 関 心 を 高 める 方 策 が 実 行 に 移 されつつ ある こうした 市 の 姿 勢 が 反 映 された 新 市 場 には 見 学 者 コーナーや 常 設 展 示 コーナーがつく られ 市 内 はもとより 県 内 外 からの 来 客 を 見 込 んでいる そして 新 市 場 を 地 元 水 産 業 の 情 報 発 信 基 地 と 位 置 づけ 体 験 漁 業 や 民 宿 の PR の 場 として 利 用 し 漁 村 の 活 性 化 や 後 継 者 の 確 保 につなげたいとの 思 惑 がある 当 該 事 業 は 敦 賀 市 の 中 心 市 街 地 活 性 化 戦 略 にも 位 置 づけ られている 敦 賀 水 産 卸 売 市 場 事 業 費 分 担 表 ( 千 円 ) 内 訳 総 事 業 費 国 補 助 県 補 助 市 補 助 事 業 者 負 担 920,398 395,732 158,292 197,552 168,822 注 ) 敦 賀 市 役 所 資 料 より 作 成 44

3-2. 統 合 にかかわる 施 設 設 備 の 整 備 新 市 場 の 土 地 と 建 物 は 敦 賀 市 漁 協 の 所 有 となる 運 営 は 従 来 どおり 福 井 県 漁 連 がおこない 市 場 使 用 料 を 敦 賀 市 漁 協 に 支 払 う また 売 上 高 に 対 しても 手 数 料 を 支 払 う 新 市 場 の 規 模 および 構 造 は 下 の 表 のようになっている 敦 賀 市 が 水 産 に 関 する 情 報 発 信 基 地 として 期 待 しているだけ に 見 学 者 コーナーも 整 備 され ている この 見 学 者 コーナーは 衛 生 状 態 を 保 持 するため 2 階 に 設 置 され 荷 捌 き 施 設 とは 隔 離 されている 見 学 者 コーナー の 他 共 用 のホールや 休 憩 室 に も 一 定 の 面 積 が 割 かれている 規 模 および 構 造 からみる 卸 売 市 場 計 画 (A) 施 設 の 種 類 : 水 産 物 荷 捌 き 施 設 (B) 構 造 : 鉄 骨 造 2 階 建 ペントハウス 付 き (C) 規 模 : 延 べ 床 面 積 3,330.79m2( 屋 内 面 積 2,907m2 庇 下 423.02m2) 荷 捌 き 場 698.71 仕 分 けゾーン 263.29 資 材 搬 入 スペース 266.37 容 器 置 場 容 器 洗 浄 コーナー 61.75 冷 蔵 庫 1(-5 ) 33.25 冷 蔵 庫 2(-5 ) 33.25 貯 水 庫 (-10 ) 57.00 1 階 機 械 室 84.06 水 産 物 荷 捌 き 施 設 1 階 空 箱 倉 庫 31.32 作 業 着 置 場 8.00 休 憩 室 44.42 サニテーション 室 通 路 24.49 2 階 空 箱 倉 庫 347.99 機 械 置 場 42.04 砕 氷 機 置 場 13.30 記 帳 場 9.56 書 庫 24.39 2 階 休 憩 室 53.20 小 計 2,096.39 蓄 養 施 設 イケス 置 場 205.87 見 学 者 コーナー 見 学 者 コーナー 98.65 屋 内 消 火 栓 ポンプ 室 7.01 1 階 風 除 室 便 所 等 126.54 共 用 スペース 2 階 機 械 室 29.86 2 階 ホール 便 所 等 102.37 PH 階 段 室 28.75 小 計 294.53 2 階 事 務 室 等 143.53 その 他 更 衣 室 シャワー 等 32.80 食 堂 休 憩 室 36.00 小 計 212.33 小 計 2,907.77 注 ) 敦 賀 市 役 所 資 料 より 作 成 建 設 中 の 新 敦 賀 市 場 45

ところで 新 市 場 建 設 で 最 優 先 とされるのは 衛 生 管 理 の 徹 底 であることは 言 うまでもない その 意 志 が 明 確 にみられるのが サニテーション 室 の 設 置 であろう サニテーション 室 は 漁 獲 物 の 衛 生 状 態 を 良 好 のままに 保 持 するため 荷 捌 き 業 務 にかかわる 漁 業 者 漁 連 職 員 出 荷 業 者 などの 入 場 に 際 して 手 洗 い 長 靴 洗 い エアシャワーによる 除 塵 を 徹 底 する 設 備 を 整 え た 部 屋 で 入 場 の 際 には 原 則 として 同 室 を 通 過 することが 求 められる また 運 搬 車 などの 入 場 に 対 しても 衛 生 的 な 配 慮 がされており タイヤ 洗 浄 スペースが 確 保 されている セリ 場 と 売 り 場 も 別 々とする これら 施 設 設 備 をおさめるための 庇 下 面 積 は 実 測 で 708.16 m2となるが 建 築 基 準 法 上 庇 端 より 2m は 面 積 として 換 算 しないという 規 定 があるので 423.02 m2となって いる この 他 統 合 にともなって 新 たに 販 売 促 進 車 や 大 型 保 冷 車 も 整 備 する 大 型 保 冷 車 は 早 瀬 市 場 付 近 の 水 揚 港 などから 鮮 魚 の 集 出 荷 体 制 整 備 の 一 環 として 配 備 される また 衛 生 管 理 の ためソフト 面 でも 設 備 投 資 が 実 施 される 遠 隔 地 からの 陸 送 に 備 えて 鮮 度 を 保 持 するための 蓋 付 きのコンテナが 整 備 される さらにはセリもパレットを 敷 設 した 上 での 実 施 に 転 換 される 加 えて 使 用 後 に 洗 浄 することでリユースできるセリ 箱 も 整 備 され コスト 削 減 と 衛 生 管 理 体 制 の 向 上 が 図 られる 4. 統 合 をひかえた 敦 賀 市 場 ならびに 早 瀬 市 場 の 現 状 敦 賀 市 場 と 早 瀬 市 場 の 性 格 は 先 にみた 両 市 場 における 取 扱 実 績 から 理 解 できる すなわち 敦 賀 市 場 は 福 井 県 内 で 最 大 の 産 地 市 場 であり 単 価 の 高 い 魚 種 を 扱 いうる 力 を 有 している こ れには 消 費 地 市 場 としての 性 格 が 付 帯 されていることと 関 係 があろう 一 方 の 早 瀬 市 場 は 単 価 の 低 い 魚 種 を 一 定 量 扱 うことで 市 場 の 取 扱 実 績 を 積 み 重 ねている ここではヒアリング をもとに もう 一 歩 踏 み 込 んで 各 市 場 の 現 状 を 概 観 する 4-1. 敦 賀 市 場 今 回 の 統 合 で 早 瀬 市 場 を 吸 収 することになる 敦 賀 市 場 は 今 後 地 域 拠 点 型 と 位 置 づけら れる 平 成 19 年 度 の 実 績 をもとにすると 早 瀬 市 場 の 実 績 を 加 えた 新 敦 賀 市 場 は 年 間 取 扱 金 額 が 30 億 円 数 量 が 6,000 トンに 達 する 規 模 の 拡 大 によって 経 費 の 節 減 と 価 格 形 成 力 の 向 上 が 目 指 されている しかしながら ここ 数 年 魚 価 単 価 の 低 迷 が 続 いている 現 在 敦 賀 市 場 には 仲 買 人 が 44 名 登 録 しており 大 口 の 出 荷 業 者 2 名 ( 平 成 19 年 度 の 市 場 取 扱 額 24 億 円 のうち 10 億 円 を 占 める)と 加 工 業 者 4 名 を 除 くと ほとんどが 小 口 の 小 売 業 者 だという その 小 売 業 者 や かつては 多 くいた 棒 手 振 (ぼてふり)と 呼 ばれる 行 商 人 も 高 齢 化 やス ーパーに 押 されて 3 分 の 1 程 度 に 減 少 している 市 場 の 価 格 形 成 力 に 影 響 を 及 ぼす 仲 買 人 の 減 少 は 単 価 の 低 迷 と 無 関 係 ではないだろう 取 り 扱 う 物 も 変 化 してきている ズワイガニや 船 冷 イカなどは 陸 送 品 が 多 くなってきてい る ズワイガニは 輸 入 品 が 大 量 に 流 通 している 他 兵 庫 県 産 や 京 都 府 産 などが 敦 賀 市 場 に 出 回 っている 船 冷 イカも かつては 敦 賀 で 水 揚 されたものが 今 では 旅 船 が 入 港 しなくなり 陸 送 品 として 敦 賀 市 場 に 入 ってきている 取 扱 数 量 ならびに 金 額 の 大 きい 養 殖 フグ( 養 殖 トラ フグ)は 輸 入 品 などの 影 響 で 一 時 期 よりも 価 格 が 下 落 しており かつては 6,000 円 ほどあっ た 単 価 が 今 では 2,000 円 ほどに 下 がっている 地 元 敦 賀 では 生 産 者 への 影 響 が 大 きくこのと ころ 廃 業 が 続 いている フグ 養 殖 の 餌 は 福 井 県 漁 連 が 製 造 していることから 多 少 の 影 響 がある 46

陸 送 品 が 多 くなり 消 費 地 市 場 化 しているとも 言 える 敦 賀 市 場 であるが 県 外 仲 卸 業 者 の 動 向 もそれを 物 語 っている すなわち 金 沢 などから 仲 卸 業 者 が 出 荷 者 として 直 接 市 場 に 品 を 持 ち 込 んでいる 漁 連 は 漁 業 者 の+2%となる 6%の 手 数 料 で 上 場 を 許 可 している また 漁 連 は カニやサバなどの 冷 凍 品 や 塩 干 品 をこれら 仲 卸 業 者 から 購 入 し 販 売 している 4-2. 早 瀬 市 場 早 瀬 市 場 における 買 受 人 は 52 名 が 登 録 している 実 際 に 入 札 に 参 加 することがあるのは 39 名 であり うち 13 名 が 今 回 の 市 場 統 合 で 廃 業 を 決 めている 他 にも 廃 業 を 検 討 している 仲 買 人 が 少 なくないという 買 受 人 の 減 少 が 価 格 形 成 力 の 低 下 につながるといわれているだけに 統 合 にかかわる 不 安 要 素 の 一 つと 認 識 されていた 早 瀬 市 場 における 仲 買 人 の 区 分 と 内 訳 であ るが 1 魚 商 出 荷 組 合 として 主 に 陸 送 を 手 がける 規 模 の 比 較 的 大 きな 仲 買 人 が 7 名 2 小 売 商 として 町 内 のスーパーなどへの 対 応 や 自 家 加 工 を 手 がける 仲 買 人 が 28 名 3 漁 業 との 兼 業 で 民 宿 を 手 がけている 仲 買 人 11 名 ( 早 瀬 では 歴 史 的 に 漁 師 も 買 受 人 に 登 録 することが 認 められ ている) 4 釣 堀 経 営 を 手 がけている 仲 買 人 6 名 となる この 52 名 で 年 間 の 買 上 高 が 1 億 円 を 超 えるのは 3 名 1,000 万 円 を 超 えるのは 11 名 にとどまる(いずれも 平 成 19 年 度 実 績 ) ボリ ュームゾーンは 100 万 円 から 500 万 円 の 層 であり 総 じて 小 規 模 零 細 の 仲 買 人 によって 市 場 が 維 持 されていることがうかがえる 早 瀬 市 場 における 仲 買 人 の 買 受 額 動 向 ( 人 千 円 ) 平 成 17 年 度 ( 最 高 額 - 最 低 額 ) 平 成 18 年 度 ( 最 高 額 - 最 低 額 ) 平 成 19 年 度 ( 最 高 額 - 最 低 額 ) 1 億 円 以 上 2 106,768 103,033 2 137,131 128,388 3 171,847 130,642 5,000 万 円 ~1 億 円 1 59,592 59,592 1 64,040 64,040 1 64,193 64,193 1,000~5,000 万 円 10 41,265 10,161 9 45,171 11,332 7 49,729 11,113 500~1,000 万 円 7 8,635 5,280 8 9,375 5,184 8 9,939 5,783 100~500 万 円 16 4,578 1,002 18 4,343 1,146 18 4,397 1,050 100 万 円 未 満 13 978 4 12 668 2 13 748 8 注 ) 福 井 県 漁 連 早 瀬 支 所 資 料 より 作 成 早 瀬 市 場 における 主 な 取 扱 魚 種 がハマチ サワラ アジ ブリ(ワラサを 含 む)などとなっ ていることは 先 に 記 した これらは 4 月 から 12 月 までの 間 大 型 定 置 網 によって 漁 獲 されて いる 単 価 は 概 ね 安 い 一 方 比 較 的 単 価 の 高 いのが タコやヒラメ アナゴ ヌタウナギな どの 活 魚 である 競 争 力 のある 活 魚 は 敦 賀 市 場 との 統 合 後 も 地 元 日 向 でのセリを 実 施 する 近 年 活 魚 で 単 価 が 著 しく 向 上 しているのがヌタウナギである 価 格 向 上 の 背 景 は 韓 国 への 出 荷 が 平 成 14 年 から 開 始 されたことに 始 まる 韓 国 輸 出 が 開 始 されるまでの 単 価 は 250 円 ほ どであったが 平 成 14 年 度 には 倍 の 500 円 に 跳 ね 上 がった その 後 も 漸 次 単 価 は 上 がり 平 成 19 年 度 実 績 で 単 価 は 1102 円 と 1,000 円 を 超 えた しかしこの 間 数 量 は 減 少 傾 向 にあり 平 成 14 年 度 の 29.9 トンをピークに 減 少 し 平 成 19 年 度 では 14.8 トンとなった なお 漁 期 は 3 月 から 6 月 の4ヵ 月 間 で 水 揚 されたほぼ 全 量 が 韓 国 に 活 で 出 荷 される 当 地 では 身 を 食 材 に そして 表 皮 を 財 布 などに 加 工 している 5. 統 合 による 美 浜 町 漁 協 への 影 響 統 合 によって 最 も 大 きな 影 響 を 受 けるだろう 漁 協 の 一 つに 美 浜 町 漁 協 がある 美 浜 町 漁 協 は 平 成 18 年 12 月 1 日 をもって 丹 生 漁 協 菅 浜 漁 協 美 浜 漁 協 日 向 漁 協 の 4 単 協 が 合 併 して 誕 生 している 全 国 的 にも 漁 協 合 併 が 進 められるなかで 福 井 県 漁 連 の 会 長 であり 美 浜 漁 47

協 の 組 合 長 であった 高 橋 治 氏 が 合 併 を 主 導 した 合 併 により 新 生 美 浜 町 漁 協 は 組 合 員 の 最 も 多 い 日 向 を 本 所 とし 丹 生 と 菅 浜 を 支 所 として 始 動 した 美 浜 は 漁 連 の 早 瀬 支 所 ならびに 福 井 信 漁 連 の 若 狭 支 店 が 同 地 域 に 並 存 していることから 廃 止 となった さて 先 に 美 浜 町 漁 協 が 合 併 による 影 響 を 最 も 受 ける 漁 協 の 一 つとしたが より 詳 細 に 調 査 を 進 めると 最 も 影 響 を 受 けるのは 日 向 支 所 であることがわかる すなわち 以 下 で 記 すよう に 丹 生 支 所 ならびに 菅 浜 支 所 は 組 合 員 数 の 減 少 により 水 揚 量 が 低 迷 していることと 特 徴 的 な 出 荷 形 態 を 採 っていることがある 以 下 丹 生 支 所 菅 浜 支 所 日 向 本 所 と 順 にみていく 5-1. 丹 生 支 所 丹 生 支 所 管 内 では 現 在 66 名 の 組 合 員 が 漁 業 を 営 んでいる 一 戸 一 人 制 を 採 っており 正 組 合 員 のみで 準 組 合 員 はいない この 66 には 漁 業 を 営 む 法 人 として 福 井 県 漁 連 が 全 発 行 株 式 (6,000 株 )を 所 有 する( 株 )ふくいぎょれんの 1 を 含 んでいる 職 員 は 合 併 前 の 5 名 から 男 性 2 名 女 性 2 名 の 計 4 名 となった この 内 男 性 は 一 日 づつ 交 互 で 日 向 本 所 に 出 向 き 荷 捌 き 業 務 などに 携 わっている 女 性 の 内 1 名 は 支 所 に 併 設 されている 直 営 スーパー( 日 用 品 や 雑 貨 が 中 心 )にパートとして 雇 用 されている 丹 生 地 区 における 漁 業 種 類 別 経 営 体 数 は 主 とする 経 営 体 数 でみると 半 数 以 上 となる 23 経 営 体 が 着 業 する 刺 網 延 縄 となる 次 いで 採 介 藻 が 11 とつづく 全 体 の 傾 向 としては 刺 網 延 縄 といった 漁 船 漁 業 から 採 介 藻 へのシフトが 見 られる 前 年 との 比 較 でしかないので この 傾 向 が 継 続 しているものなのかや 要 因 は 不 明 であるけれども 高 齢 化 も 一 つの 背 景 としてあ るのかもしれない 数 量 と 金 額 は 1.5 億 円 ちかくを 水 揚 げする 定 置 網 の 占 める 割 合 が 圧 倒 的 となる 割 合 では 数 量 で 87.2% 金 額 で 68.1%となる これに 刺 網 延 縄 ( 数 量 7.1% 金 額 11.6%) が 続 き 採 介 藻 と 養 殖 がほぼ 同 じ 割 合 でつづいている ただ 金 額 ベース( 単 価 )でみると 刺 網 延 縄 より 養 殖 ( 数 量 2.9% 金 額 14.7%)が 上 位 となる なお 聞 き 取 りによると 夏 季 のスルメイカや 冬 季 のアオリイカ ハマチ(4~6 月 )などを 一 本 釣 りで 漁 獲 している 組 合 員 が 20 名 ほど ヒラメ(6~8 月 )やサザエの 刺 網 が 12 名 ほど 小 型 定 置 網 でハマチやブリを 漁 獲 している 経 営 体 が 4 となっている 丹 生 地 区 における 漁 業 種 類 別 経 営 体 数 定 置 網 刺 網 延 縄 採 介 藻 その 他 合 計 平 成 19 年 度 9 31 21 3 64 営 んだ 延 べ 経 営 体 数 平 成 18 年 度 13 33 13 3 62 増 減 -4-2 8 0 2 平 成 19 年 度 5 23 11 2 41 主 とする 経 営 体 数 平 成 18 年 度 4 26 7 3 40 増 減 1-3 4-1 1 注 ) 美 浜 町 漁 業 協 同 組 合 第 2 年 度 通 常 総 代 会 資 料 より 作 成 丹 生 地 区 における 漁 業 種 類 別 水 揚 数 量 および 金 額 ( 平 成 19 年 度 kg 千 円 ) 定 置 刺 網 延 縄 採 介 藻 養 殖 合 計 数 量 金 額 数 量 金 額 数 量 金 額 数 量 金 額 数 量 金 額 490,285 153,376 39,762 26,017 16,015 12,752 16,044 33,088 562,106 225,233 注 ) 美 浜 町 漁 業 協 同 組 合 第 2 年 度 通 常 総 代 会 資 料 より 作 成 上 述 の 通 り 丹 生 における 漁 獲 生 産 の 主 力 は 大 型 定 置 網 である 平 成 19 年 度 で 小 型 定 置 を 含 む 数 量 金 額 ではあるが 490,285kg 153,376 千 円 を 水 揚 げしている 丹 生 大 敷 網 組 合 がつくられており ハマチを 中 心 に 生 産 がおこなわれている 大 敷 網 組 合 では 作 業 員 を 10 名 48

雇 用 して 操 業 している 利 益 はプールして 出 資 者 に 配 分 している 漁 獲 物 の 一 部 は ( 株 )ふ くいぎょれんにも 出 荷 され 同 社 が 管 理 している 生 簀 に 移 され 育 成 されている 丹 生 支 所 で 水 揚 された 漁 獲 物 は 敦 賀 市 場 と 早 瀬 市 場 に 送 られる 日 向 の 項 目 であげる 表 の ように 大 半 が 敦 賀 市 場 に 出 荷 される 金 額 ベースでは 98.7%が 敦 賀 市 場 となっている 数 量 ベースでは 99.3%になる 定 置 網 で 水 揚 される 漁 獲 物 が 中 心 であり 地 元 の 運 送 業 者 が 毎 日 敦 賀 市 場 まで 運 搬 している この N 運 送 は 漁 獲 物 の 仕 分 けから 荷 造 りまで 一 手 に 引 き 受 けており 出 荷 者 は 業 務 のほとんどをこの 業 者 に 依 存 している 氷 も この 業 者 が 県 漁 連 の 敦 賀 支 所 から 運 搬 している ただ 出 荷 コストは 割 高 となっている 丹 生 では 出 荷 コストとし て 10%を 徴 収 している この 10%には 漁 連 の 手 数 料 4%と 美 浜 町 漁 協 の 賦 課 金 0.5%が 含 まれ ている なお 鮮 魚 については 近 年 水 揚 量 が 減 少 しているが 価 格 形 成 力 のある 早 瀬 市 場 に 出 荷 され るケースもある 早 瀬 市 場 に 出 荷 する 場 合 手 数 料 はプラス 1%となる 出 荷 は 6:00 にトラ ックが 出 発 するため 漁 業 者 はそれまでに 水 揚 げする 大 型 定 置 網 で 漁 獲 されるものについて は 支 所 が 管 理 しているトラック(1 台 )で 出 荷 している 水 揚 げが 多 い 場 合 は 漁 連 のトラ ックを 依 頼 する さらに 多 い 場 合 は 船 で 直 接 敦 賀 市 場 に 運 搬 する 5-2. 菅 浜 支 所 菅 浜 支 所 では 59 名 の 組 合 員 が 漁 業 を 営 んでいる 丹 生 支 所 と 同 様 に 一 戸 一 人 制 を 採 ってい る 59 名 のうち 実 際 に 操 業 しているのは 3 分 の 1 ほどであり その 平 均 年 齢 はおよそ 65 歳 となる 20 代 は 大 型 定 置 網 の 乗 組 員 をしている 1 名 30 代 はいない 40 代 も 大 型 定 置 網 の 乗 組 員 の 1 名 で 50 代 は 一 本 釣 りと 遊 漁 を 営 む 1 名 60 代 は 一 本 釣 り 刺 網 採 介 藻 を 営 む 10 名 70 代 も 同 様 の 操 業 形 態 で 8 名 となっている 18 名 ほどが 営 んでいる 一 本 釣 りでは ハマ チやサワラが 漁 獲 されている ウニの 直 販 をしている 漁 業 者 も 少 数 いるが 自 家 加 工 などはお こなっていないという 本 所 がまとめている 資 料 から 菅 浜 地 区 における 漁 業 種 類 別 経 営 体 数 を 主 とする 経 営 体 数 で 把 握 してみても 経 営 体 数 の 少 なさが 目 につく 菅 浜 にも 大 型 定 置 網 があるが 丹 生 と 比 較 す ると やはり 数 量 ならびに 金 額 の 少 なさがわかる 数 量 金 額 ともに 丹 生 の 3~4 割 りほどに とどまる 数 量 金 額 の 減 少 により 6 年 前 までは 丹 生 のように 生 産 者 組 合 がつくられプール 制 で 利 益 配 分 が 為 されていたが 現 在 は 解 散 して 日 向 の 漁 業 者 に 経 営 が 譲 渡 されている 出 荷 は 土 日 以 外 の 日 におこなわれ 支 所 が 管 理 するトラックでほぼ 全 量 が 敦 賀 市 場 に 運 ば れている タコ( 鮮 魚 )だけは 早 瀬 市 場 に 出 荷 される タコは 漁 業 者 個 人 が 直 接 運 搬 してい る 出 荷 経 費 は 仕 切 り 金 として 5%を 徴 収 している なお 出 荷 に 用 いる 氷 は 丹 生 と 同 じで N 運 送 に 依 頼 して 敦 賀 から 運 搬 している 菅 浜 地 区 における 漁 業 種 類 別 経 営 体 数 定 置 網 刺 網 延 縄 採 介 藻 その 他 合 計 平 成 19 年 度 2 23 5 9 39 営 んだ 延 べ 経 営 体 数 平 成 18 年 度 2 23 5 9 39 増 減 0 0 0 0 0 平 成 19 年 度 2 11 2 3 18 主 とする 経 営 体 数 平 成 18 年 度 2 11 2 2 17 増 減 0 0 0 1 1 注 ) 美 浜 町 漁 業 協 同 組 合 第 2 年 度 通 常 総 代 会 資 料 より 作 成 49

菅 浜 地 区 における 漁 業 種 類 別 水 揚 数 量 および 金 額 ( 平 成 19 年 度 kg 千 円 ) 定 置 刺 網 延 縄 採 介 藻 養 殖 合 計 数 量 金 額 数 量 金 額 数 量 金 額 数 量 金 額 数 量 金 額 173,112 62,592 7,721 5,127 9,672 8,260 0 0 190,505 75,979 注 ) 美 浜 町 漁 業 協 同 組 合 第 2 年 度 通 常 総 代 会 資 料 より 作 成 5-3. 日 向 本 所 早 瀬 市 場 から 車 で 3 分 ほどの 場 所 に 位 置 する 日 向 本 所 は 今 回 の 早 瀬 市 場 の 廃 止 による 影 響 を 最 もうける 丹 生 支 所 や 菅 浜 支 所 が 漁 獲 物 のほとんどを 敦 賀 市 場 へ 出 荷 しているのとは 対 照 的 に 大 半 を 地 元 早 瀬 市 場 に 出 荷 してきた 当 然 出 荷 コストも 手 数 料 以 外 は 必 要 なく 漁 協 の 職 員 も 荷 捌 き 業 務 に 追 われることもなかった しかし 今 回 の 市 場 統 合 で 地 元 漁 業 者 の 出 荷 コストが 増 加 することや 荷 受 体 制 の 見 直 しなど 種 々の 課 題 に 直 面 している 日 向 市 場 が 受 ける 影 響 は 水 揚 金 額 と 出 荷 先 について 丹 生 との 比 較 で 見 るとよくわかる 丹 生 では 敦 賀 市 場 に 金 額 ベースで 98.7% 数 量 ベースで 99.3%が 敦 賀 市 場 に 出 荷 されている とりわけ 定 置 で 水 揚 される 漁 獲 物 については 全 数 が 敦 賀 市 場 に 送 られているし その 他 刺 網 や 延 縄 での 漁 獲 物 も 9 割 がた 敦 賀 市 場 に 送 られている 一 方 日 向 では 敦 賀 市 場 と 早 瀬 市 場 の 割 合 がおよそ 1:4 と 廃 止 される 早 瀬 市 場 が 主 な 出 荷 先 となっていた 数 量 ベースでは 金 額 ベースの 77.7%を 上 回 る 87.8%が 早 瀬 市 場 となりその 比 重 はさらに 重 くなる なお 丹 生 は 小 浜 市 場 に 出 荷 はしていないものの 日 向 では 若 干 ではあるが 小 浜 市 場 に 出 荷 している た だし その 数 量 金 額 は 233kg 161 千 円 でしかなく 早 瀬 市 場 のもつ 重 要 性 に 変 化 はない 漁 業 種 類 別 水 揚 金 額 と 出 荷 先 ( 平 成 19 年 度 千 円 ) 敦 賀 市 場 早 瀬 支 所 定 置 刺 網 延 縄 採 介 藻 養 殖 合 計 定 置 刺 網 延 縄 採 介 藻 合 計 合 計 日 向 103,594 41,390 34,007 0 103,594 242,612 89,289 29,953 361,854 465,448 丹 生 153,376 23,492 12,275 33,088 222,231 0 2,525 477 3,002 225,233 注 ) 美 浜 町 漁 協 資 料 より 作 成 そもそも 日 向 本 所 は 前 身 の 日 向 漁 協 時 代 となる 平 成 9 年 まで 自 前 で 産 地 市 場 を 運 営 して いた それが 早 瀬 市 場 との 統 合 で 影 響 を 受 けるということで 漁 業 者 の 間 である 種 の 不 満 があ るのは 確 かであろう もちろん 出 荷 体 制 が 二 転 三 転 することへの 不 満 である しかし 聞 き 取 りによると 不 満 の 背 景 には 早 瀬 市 場 と 統 合 後 も 魚 価 が 上 昇 したということがなかったため に 今 回 の 敦 賀 市 場 への 一 本 化 についても 魚 価 へのプラスの 影 響 がないのではないかという 漁 業 者 の 認 識 が 伏 在 しているようである 地 元 の 漁 業 者 も 早 瀬 市 場 の 廃 止 にともなって 仲 買 人 が 廃 業 するという 話 を 耳 にしており 市 場 統 合 の 効 果 へ 疑 問 をもっている 現 在 こうした 漁 業 者 の 懸 念 に 対 して 美 浜 町 漁 協 は 県 漁 連 と 連 携 して 対 策 を 講 じようとし ている すなわち 1 鮮 魚 の 荷 受 業 務 の 改 善 2 出 荷 体 制 の 改 善 3 一 部 鮮 魚 の 現 地 入 札 の 実 施 の 3 点 が 検 討 されている 鮮 魚 の 荷 受 業 務 は 現 在 早 瀬 市 場 で 勤 務 している 漁 連 の 職 員 を 配 置 することで 2~3 名 の 増 員 を 検 討 している 出 荷 体 制 は 大 型 保 冷 車 を 配 備 し 第 一 便 の 他 状 況 に 応 じて 第 二 便 まで 配 車 する タコ アナゴ ヌタウナギ アマダイなどの 活 魚 について は これまでの 早 瀬 市 場 での 価 格 形 成 力 が 評 価 されているため 日 向 本 所 で 入 札 することを 予 定 している 入 札 は 台 売 り ( 地 元 の 者 が 先 に 入 札 できる)でなく 平 売 り を 基 本 とする しかしながら こうした 体 制 整 備 にともなって 人 員 の 新 たな 配 置 や 輸 送 コストの 増 加 などに より 漁 業 者 から 徴 収 する 手 数 料 はプラス 1%を 予 定 している 50

なお 日 向 本 所 では 歴 史 的 に 村 のアイデンティティともなっている 大 敷 網 事 業 が 漁 業 の 中 軸 となっている 日 向 定 置 網 漁 業 組 合 がつくられており 25 人 の 乗 組 員 (30 代 1 名 40 代 2 名 50 代 17 人 60 代 5 名 )を 雇 用 して 事 業 が 展 開 されている 業 務 報 告 書 によると 平 成 19 年 度 の 事 業 収 益 は 約 1 億 6,400 万 円 に 達 する 人 件 費 や 施 設 管 理 費 等 の 経 費 を 差 し 引 いて 残 る 余 剰 金 も 毎 年 2,000 万 円 を 超 える( 平 成 19 年 度 は 約 2,400 万 円 ) 実 際 定 置 網 は 水 揚 げも 大 き なウエートを 占 めており 数 量 で 日 向 全 体 の 78.1% 金 額 では 58.2%にのぼる もちろん 美 浜 町 漁 協 としてみても 好 調 な 定 置 網 を 擁 する 日 向 の 占 める 位 置 は 大 きい 美 浜 町 漁 協 の 平 成 19 年 度 の 水 揚 数 量 が 2,084,535kg 金 額 が 868,313 千 円 であるので 日 向 がおよそ 半 分 を 占 めてい ることになる しかし 定 置 網 の 好 調 な 日 向 ではあるが 最 近 は 漁 業 者 の 減 少 がつづいている という 漁 協 がまとめている 資 料 でも 明 らかなように 刺 網 延 縄 の 漁 船 漁 業 だけでなく 採 介 藻 でも 経 営 体 数 が 減 少 してきている 日 向 地 区 における 漁 業 種 類 別 水 揚 数 量 および 金 額 ( 平 成 19 年 度 kg 千 円 ) 定 置 刺 網 延 縄 採 介 藻 養 殖 合 計 数 量 金 額 数 量 金 額 数 量 金 額 数 量 金 額 数 量 金 額 809,439 270,809 151,570 130,840 74,999 63,960 0 0 1,036,008 465,609 注 ) 美 浜 町 漁 業 協 同 組 合 第 2 年 度 通 常 総 代 会 資 料 より 作 成 日 向 地 区 における 漁 業 種 類 別 経 営 体 数 定 置 網 刺 網 延 縄 採 介 藻 その 他 合 計 平 成 19 年 度 30 52 24 31 137 営 んだ 延 べ 経 営 体 数 平 成 18 年 度 36 59 25 42 162 増 減 -6-7 -1-11 -25 平 成 19 年 度 15 28 20 15 78 主 とする 経 営 体 数 平 成 18 年 度 15 35 23 19 92 増 減 0-7 -3-4 -14 注 ) 美 浜 町 漁 業 協 同 組 合 第 2 年 度 通 常 総 代 会 資 料 より 作 成 6. 統 合 による 若 狭 三 方 漁 協 への 影 響 美 浜 町 漁 協 に 加 え 統 合 によって 影 響 を 受 けることが 予 想 される 漁 協 に 若 狭 三 方 漁 協 がある 若 狭 三 方 漁 協 は 三 方 漁 協 であったのが 平 成 17 年 3 月 に 三 方 町 と 上 中 町 の 合 併 を 機 に 現 在 の 名 称 となった なお この 三 方 漁 協 は 昭 和 58 年 2 月 に 現 在 それぞれが 本 所 支 所 とな っている 4 つの 漁 協 が 合 併 してつくられた 今 は 小 川 に 本 所 を 置 き 常 神 神 子 世 久 美 の 3 支 所 をもつ 本 所 には 9 名 の 職 員 がおり 購 買 事 業 に 4 名 共 済 事 業 に 4 名 その 他 に 1 名 が 配 置 されている 神 子 と 常 神 には 常 勤 の 職 員 がいないため 両 支 所 の 事 務 作 業 は 本 所 がおこ なっている 世 久 見 は 常 勤 の 職 員 1 名 とパートの 職 員 が 1 名 の 2 名 体 制 となっている 若 狭 三 方 漁 協 全 体 としては 2008 年 12 月 現 在 211 人 の 組 合 員 ( 正 組 合 員 のみ)が 所 属 して いる 組 合 員 の 多 くは 自 営 漁 業 の 他 大 型 定 置 網 の 乗 組 員 として 雇 用 され 給 与 を 得 ている 本 所 には 現 在 53 名 の 組 合 員 が 所 属 しているが 20 人 は 会 社 員 などの 第 二 種 兼 業 であり 実 質 は 30 名 ほどの 組 合 員 によって 産 地 としての 機 能 が 維 持 されている この 30 人 のうち 19 人 (30 代 2 人 40 代 3 人 50 代 10 人 60 代 4 人 )が 後 述 するように 主 たる 漁 業 種 となる 大 型 定 置 の 乗 組 員 をしている 世 久 見 支 所 では 一 定 割 合 の 漁 家 が 民 宿 を 営 んでおり 大 型 定 置 と 民 宿 の 二 つの 軸 で 生 計 を 維 持 している 44 名 の 組 合 員 ( 実 際 に 漁 業 を 営 んでいるのは 29 人 ) が 所 属 している 世 久 見 支 所 では 大 型 定 置 の 乗 組 員 をしている 23 名 のうち 民 宿 を 経 営 してい るのは 18 人 にのぼる 小 川 本 所 でも 53 人 の 組 合 員 のうち 12 人 が 民 宿 を 経 営 している 神 子 と 常 神 にはそれぞれ 40 人 ほどの 組 合 員 が 所 属 しており やはりその 大 半 が 大 型 定 置 の 乗 組 員 51

( 神 子 で 22 人 常 神 で 15 人 )として 働 いている 2003 年 の 漁 業 センサスによると 三 方 地 区 にある 135 の 経 営 体 の 小 型 定 置 を 含 む 定 置 網 と 採 貝 その 他 漁 業 などを 中 心 に 操 業 していることがわかる 1 経 営 体 の 平 均 漁 獲 金 額 は 245 万 円 であり 自 営 漁 業 だけでなく 大 型 定 置 の 乗 組 員 や 民 宿 経 営 を 生 業 としなければならないこ とがうかがえる なお 大 型 定 置 網 の 2007 年 の 水 揚 額 は 小 川 本 所 が 約 7,800 万 円 神 子 が 約 1 億 1,100 万 円 常 神 が 約 7,100 万 円 世 久 見 が 約 7,000 万 円 (2008 年 は 1 億 円 を 超 えた)など となっている 若 狭 三 方 漁 協 ならびに 所 属 組 合 員 の 生 活 を 支 えているのが 大 型 定 置 網 であることは すべて の 支 所 に 大 敷 網 組 合 がつくられ 各 支 所 の 判 断 で 運 営 から 販 売 までが 執 り 行 われていることか らもわかる その 結 果 若 狭 三 方 漁 協 では 支 所 別 に 主 な 出 荷 先 となる 市 場 が 異 なっている 常 神 支 所 では 早 瀬 市 場 と 小 浜 市 場 が 半 々で 残 りを 敦 賀 市 場 と 舞 鶴 市 場 で 分 けるような 割 合 となっている 神 子 支 所 では 敦 賀 市 場 に 半 分 残 りを 早 瀬 市 場 に 出 荷 している 小 川 本 所 で は ほとんどを 舞 鶴 市 場 に 出 荷 している 世 久 見 支 所 でもやはり 舞 鶴 市 場 に 多 くを 出 荷 するが 割 合 としては 49%で 残 りを 早 瀬 市 場 と 小 浜 市 場 に 二 分 している この 出 荷 先 で 特 徴 的 なのは 1 柔 軟 な 出 荷 先 の 選 定 がおこなわれていることと 2 京 都 府 の 舞 鶴 市 場 の 位 置 が 大 変 な 大 きさとなっていることであろう 柔 軟 な 出 荷 先 の 選 定 を 可 能 として いるのは 支 所 で 毎 日 の 市 場 動 向 を 把 握 分 析 したうえでその 都 度 出 荷 先 を 変 更 する 体 制 を 整 備 していることによる 例 えば 世 久 見 では 組 合 員 から 販 売 担 当 の 責 任 者 を 選 挙 で 選 出 し 情 報 の 収 集 と 分 析 を 一 元 化 している 出 荷 用 のトラックも 各 支 所 が 1 台 づつ 保 有 し 専 属 の 運 転 士 を 雇 用 している 二 つ 目 の 舞 鶴 市 場 の 地 位 の 大 きさは 近 年 の 丹 後 半 島 での 水 揚 が 不 調 で 市 場 として 県 外 産 漁 獲 物 の 誘 致 活 動 を 展 開 していることがある 同 じ 北 陸 石 川 県 の 蛸 島 などでも それに 呼 応 して 出 荷 を 増 やしているという もちろん 舞 鶴 市 場 が 若 狭 三 方 漁 協 における 主 要 な 漁 獲 物 の 一 つであるサワラについて 岡 山 という 大 きな 消 費 地 を 抱 えていることが 大 きい なお 舞 鶴 市 場 への 出 荷 の 増 加 は ここ 10 年 ほどで 顕 在 化 してきた 傾 向 といえる この 結 果 今 回 の 早 瀬 市 場 と 敦 賀 市 場 の 統 合 に 関 しては 影 響 を 受 ける 支 所 とそうでない 支 所 がでてくる すなわち 若 狭 三 方 漁 協 において 相 対 的 に 大 きな 影 響 を 受 けるのが 水 揚 の 40% ほどを 早 瀬 市 場 へと 出 荷 している 常 神 と 神 子 の 両 支 所 となる 本 所 へのヒアリングでは 早 瀬 市 場 の 廃 止 以 後 は 価 格 形 成 力 や 距 離 的 なことを 考 慮 して 舞 鶴 市 場 への 陸 送 が 増 加 する 可 能 性 が 指 摘 された 三 方 地 区 における 漁 業 経 営 体 の 動 向 主 とする 漁 業 種 類 その 他 の 刺 網 大 型 定 置 網 小 型 定 置 網 沿 岸 いか 釣 その 他 の 釣 採 貝 採 藻 その 他 の 漁 業 まだい 養 殖 その 他 の 魚 類 養 殖 わかめ 類 養 殖 計 注 )2003 年 漁 業 センサスより 作 成 平 成 19 年 度 若 狭 三 方 漁 協 各 支 所 における 出 荷 額 動 向 (%) 敦 賀 市 場 早 瀬 市 場 小 浜 市 場 舞 鶴 市 場 12 常 神 8 42 42 8 4 神 子 2 43 5 50 23 小 川 6 6 1 87 9 世 久 見 1 25 25 49 12 注 ) 若 狭 三 方 漁 協 への 聞 き 取 り 調 査 の 結 果 から 作 成 23 7 32 1 2 10 135 52

7. 京 都 府 漁 連 舞 鶴 市 場 との 関 係 でみる 福 井 県 の 市 場 統 合 福 井 県 における 市 場 統 合 の 影 響 は 隣 接 する 京 都 府 の 舞 鶴 市 場 ( 京 都 府 漁 連 舞 鶴 市 場 )にも 及 ぶ 可 能 性 がある 上 述 したように 若 狭 三 方 漁 協 は 現 状 でも 相 当 程 度 (5 割 から 8 割 )の 漁 獲 物 を 舞 鶴 市 場 へと 陸 送 出 荷 していることが 明 らかとなっている この 傾 向 が 早 瀬 市 場 の 廃 止 によっていかに 変 化 するかは 現 段 階 では 判 然 としない しかし 現 状 の 出 荷 構 造 は 舞 鶴 市 場 の 価 格 形 成 力 等 に 関 する 要 因 が 変 化 しない 限 り 早 瀬 市 場 の 廃 止 後 も 温 存 される そ こで ここでは 舞 鶴 市 場 に 生 産 物 が 流 れる 背 景 をヒアリング 調 査 の 結 果 から 概 観 したい 福 井 県 の 嶺 南 地 方 に 接 する 京 都 府 には およそ 315km の 海 岸 線 に 6 つの 漁 業 協 同 組 合 ( 湊 網 野 町 丹 後 町 伊 根 町 宮 津 市 舞 鶴 市 )があり 沿 岸 漁 業 を 中 心 とした 漁 獲 活 動 が 展 開 さ れている 京 都 府 内 で 稼 動 している 水 産 物 市 場 は 4 つ( 舞 鶴 宮 津 間 人 網 野 )あり すべ て 京 都 府 漁 連 が 運 営 している 伊 根 町 漁 協 が 市 場 開 設 者 の 免 許 を 有 してはいるが 当 地 で 取 引 はおこなわれていない 京 都 府 漁 連 全 体 で 4 万 トン 106 億 円 ほどとなっている 販 売 品 取 扱 量 と 金 額 は 舞 鶴 市 場 を 中 心 に 扱 われている 平 成 成 20 年 でみると 数 量 の 7 割 金 額 の 6 割 を 超 えている 次 いで 宮 津 市 場 となり 数 量 金 額 ともに 2 割 ほどを 占 める すなわち この 2 市 場 で 漁 連 が 取 り 扱 う 販 売 品 の 9 割 を 扱 っていることになる 販 売 品 の 魚 種 上 位 は アジ ブリ イワシ サバ イカとなる この 5 種 で 数 量 の 64.9% 金 額 の 44.7%を 占 める 一 方 京 都 府 におけるここ 数 年 の 漁 獲 量 は 1 万 5 千 トン 前 後 で 金 額 は 45 億 円 前 後 となっ ている 平 成 19 年 は 13,600 トン 43.1 億 円 の 水 揚 げがあった 舞 鶴 地 区 ( 漁 獲 量 の 34.2% 漁 獲 金 額 の 32.3%) 宮 津 地 区 (24.1% 18.9%) 与 謝 地 区 (25.7% 25.1%)の 3 地 区 が 多 少 の 差 はあるものの 概 ね 均 等 に 水 揚 げしている 主 要 な 水 揚 げ 魚 種 は マアジ カタクチイワシ サワラ 類 サバ 類 ブリ 類 などとなっている 主 要 な 漁 業 種 類 は 大 型 定 置 網 小 型 定 置 網 底 曳 網 採 介 採 藻 イカ 釣 釣 延 縄 などとなる 京 都 府 漁 連 運 営 の 市 場 別 取 扱 実 績 数 量 (kg) 金 額 ( 千 円 ) 構 成 比 (%) 構 成 比 (%) 舞 鶴 29,149,224 72.6 6,873,027 64.6 宮 津 8,741,961 21.8 2,666,072 25.0 間 人 1,218,347 3.0 636,712 6.0 網 野 1,053,918 2.6 466,824 4.4 合 計 40,163,450 100.0 10,642,635 100.0 注 ) 京 都 府 漁 業 協 同 組 合 業 務 報 告 書 ( 平 成 19 年 度 ) 印 行 年 不 明 33 頁 より 作 成 京 都 府 漁 連 販 売 品 の 魚 種 別 取 扱 実 績 ( 上 位 5 種 ) 数 量 (kg) 金 額 ( 千 円 ) 単 価 構 成 比 (%) 構 成 比 (%) ( 円 /kg) アジ 7,622,251 19.0 838,666 7.9 110.0 ブリ 6,295,879 15.7 2,062,151 19.4 327.5 イワシ 4,801,810 12.0 255,437 2.4 53.2 サバ 4,702,220 11.7 557,567 5.2 118.6 イカ 2,599,903 6.5 1,040,803 9.8 400.3 5 種 合 計 26,022,063 64.9 4,754,624 44.7 182.7 注 ) 京 都 府 漁 業 協 同 組 合 業 務 報 告 書 ( 平 成 19 年 度 ) 印 行 年 不 明 33 頁 より 作 成 京 都 府 の 漁 獲 量 および 漁 獲 金 額 ( 平 成 19 年 ) 舞 鶴 地 区 宮 津 地 区 与 謝 地 区 北 丹 地 区 舞 鶴 市 宮 津 市 伊 根 町 丹 後 町 網 野 町 湊 合 計 漁 獲 量 (トン) 4649.7 2919.8 3491.0 377.0 1239.2 924.0 13600.7 漁 獲 金 額 ( 千 円 ) 1394226 814093 1084325 392114 387262 241498 4313518 注 ) 京 都 府 漁 業 協 同 組 合 連 合 会 京 都 府 沿 岸 の 漁 業 と 漁 協 ( 平 成 19 年 度 版 ) 印 行 年 不 明 5 頁 より 作 成 53

主 要 な 魚 種 別 の 水 揚 げ 割 合 ( 平 成 18 年 ) マアジ カタクチイワシ サワラ 類 サバ 類 ブリ 類 その 他 合 計 数 量 ベース(%) 19.1 16.3 10.6 9.0 6.3 38.7 16412トン 金 額 ベース(%) 7.4 2.2 13.4 3.2 4.8 50.4 49.4 億 円 注 ) 京 都 府 水 産 事 務 所 京 都 の 水 産 ( 平 成 20 年 ) 印 行 年 不 明 4 頁 より 作 成 主 要 な 漁 業 種 類 別 の 水 揚 げ 割 合 ( 平 成 18 年 ) 大 型 定 置 小 型 定 置 底 曳 網 採 介 採 藻 釣 延 縄 その 他 ( 養 殖 含 ) 合 計 数 量 ベース(%) 73.8 7.5 6.0 4.8 1.9 6.0 16412トン 金 額 ベース(%) 50.8 5.9 15.1 12.5 3.9 11.8 49.4 億 円 注 ) 京 都 府 水 産 事 務 所 京 都 の 水 産 ( 平 成 20 年 ) 印 行 年 不 明 4 頁 より 作 成 漁 獲 のピークは マイワシ 豊 漁 による 昭 和 63 年 の 10 万 6 千 トンであった マイワシは 巻 網 と 定 置 網 により 漁 獲 されていたが 平 成 3 年 を 最 後 にほとんど 水 揚 げされなくなった 前 年 の 平 成 2 年 には 京 都 府 の 漁 獲 量 5 万 2 千 トンのうち 実 に 4 万 トンがマイワシ( 金 額 ベースで は 70 億 円 のうち 9 億 円 ほど)であったにもかかわらず 一 年 で 急 減 した マイワシの 漁 獲 が 困 難 となったこともあり 漁 連 が 自 営 するという 全 国 でも 唯 一 の 操 業 形 態 を 採 っていた 京 都 府 漁 連 の 巻 網 船 団 (1 ヵ 統 )が 平 成 8 年 を 最 後 に 出 漁 を 取 り 止 めている 巻 網 船 団 の 廃 止 は 京 都 府 漁 連 が 採 るべき 方 策 に 小 さくない 影 響 を 及 ぼした すなわち 取 扱 量 ならびに 取 扱 額 の 減 少 によって 手 数 料 収 入 も 不 安 定 になることが 考 えられた そればか りか 冷 凍 冷 蔵 庫 の 稼 働 率 も 低 下 することが 予 想 された 京 都 府 漁 連 は 取 扱 量 の 安 定 的 な 確 保 が 必 要 となった 京 都 府 漁 連 は 自 らの 強 みを 活 かすことを 求 められた 現 在 につづく 京 都 府 漁 連 の 強 みは 少 なくない 一 つは 比 較 的 規 模 の 大 きな 仲 買 人 が 札 を 入 れていることがあげられる 102 名 の 登 録 のうち 大 口 とされる 5 億 円 以 上 を 取 り 扱 う 業 者 が 3 名 登 録 されている うち 1 業 者 は 毎 年 12 億 円 前 後 の 取 扱 額 をほこる 北 海 道 から 沖 縄 まで 全 国 を 商 圏 として 商 品 発 送 をしている 2 億 円 以 上 の 中 堅 業 者 も 6 名 登 録 されており 京 都 府 をはじめ 関 西 圏 の 量 販 店 対 応 をおこなっている 加 工 業 者 や 小 売 店 対 応 の 1,000 万 円 以 上 の 小 口 仲 買 人 も 20 名 ほどおり 廃 止 される 早 瀬 市 場 や 隣 接 する 福 井 県 漁 連 小 浜 市 場 (45 名 の 登 録 で 1 億 円 以 上 を 取 り 扱 う 仲 買 人 は 2 名 )と 比 較 しても 仲 買 人 の 層 の 厚 さは 顕 著 といえる 価 格 形 成 力 に 影 響 する 要 素 に 強 みがあることが まず 舞 鶴 市 場 の 特 徴 とになっている 二 つは 加 工 業 者 の 集 積 がみられることがあげられる カタクチイワシを 煮 干 (ジャコ)に 加 工 する 業 者 が 3 社 蒲 鉾 業 者 が 4 社 その 他 開 きや 缶 詰 を 製 造 する 加 工 業 者 が 大 口 1 社 小 口 5 社 ほど 市 場 周 辺 に 集 積 している 煮 干 に 加 工 するためには 蒸 す 工 程 と 乾 燥 させる 工 程 が 必 要 であり やや 事 業 規 模 が 大 きくなる このため こうした 加 工 場 を 擁 しない 地 域 からカタ クチイワシが 舞 鶴 市 場 に 流 入 するようである 小 浜 がこの 典 型 であり 加 工 場 が 無 いためにカ タクチイワシはほぼ 全 量 が 舞 鶴 市 場 に 陸 送 されている 加 工 業 者 の 集 積 とも 関 係 するが 冷 蔵 施 設 の 完 備 も 集 荷 にはプラスに 働 いている 石 川 県 の 蛸 島 や 輪 島 から 陸 送 されてくるのは この 点 も 無 関 係 ではないという 三 つは 漁 連 の 財 務 体 質 が 比 較 的 良 好 な 状 態 を 維 持 していることが 指 摘 できる 京 都 府 漁 連 は 毎 年 余 剰 金 を 積 み 上 げ 内 部 留 保 を 厚 くすとともに 出 資 者 に 配 当 金 として 還 元 するなど 各 指 標 で 全 国 的 にも 安 定 した 経 営 がおこなわれている このため 漁 獲 物 の 流 入 過 多 となった 場 合 でも 漁 連 が 買 い 支 えることが 可 能 となっている 実 際 京 都 府 漁 連 の 買 取 販 売 は 受 託 販 売 と 比 肩 している 業 務 報 告 書 によると 平 成 20 年 度 実 績 は 受 託 販 売 が 22,949 トンで 59.5 億 円 ( 単 純 単 価 は 259 円 /kg)であったのに 対 して 買 取 販 売 は 17,214 トンで 46.9 億 円 ( 単 54

純 単 価 は 272 円 /kg)となっている 京 都 府 漁 連 の 販 売 事 業 は 間 人 出 張 所 の 直 販 部 門 ( 実 績 249 万 円 )と 1 トン 水 槽 (ダンベ) 等 の 魚 箱 供 給 事 業 ( 実 績 3.4 億 円 )を 加 えた 109.8 億 円 であ ることから 買 取 販 売 の 割 合 は 42.7%と 4 割 を 超 える 強 気 ともとれる 積 極 的 な 買 取 は 良 好 な 財 務 体 質 だけでなく 在 庫 の 適 正 管 理 に 関 するノウハウと 販 売 ネットワークを 有 しているこ とが 可 能 にしている 以 上 の 各 要 素 を 有 する 舞 鶴 市 場 は マグロを 除 いて 鮮 魚 から 加 工 原 料 までいかなる 魚 も 出 荷 できる 市 場 として 認 知 されており 域 外 からの 商 品 流 入 が 続 いている 京 都 府 漁 連 そのもの は 巻 網 事 業 から 撤 退 したけれど 現 在 でも 域 外 船 が 舞 鶴 漁 港 に 寄 港 しており 石 川 県 の 2 ヵ 統 鳥 取 県 の 2 ヵ 統 東 京 都 の 1 ヵ 統 の 巻 網 船 団 がアジ サバ ブリなどの 青 物 を 水 揚 げしている ( 漁 場 が 若 狭 湾 沖 にあることも 要 因 にある) 結 果 として 域 外 からの 商 品 流 入 は 舞 鶴 市 場 の 取 扱 金 額 の 4 割 (うち 半 分 が 上 記 巻 網 船 団 による)を 占 めるにいたっている こうした 漁 連 の 財 務 体 質 と 仲 買 人 の 規 模 を 背 景 とした 高 い 価 格 形 成 力 ならびに 加 工 業 者 の 集 積 をかんがみ ると 積 極 的 理 由 消 極 的 理 由 を 問 わず 若 狭 三 方 漁 協 に 顕 著 な 福 井 県 からの 商 品 流 入 が 今 後 も 継 続 することが 予 想 される 8.まとめ 福 井 県 漁 連 が 水 産 庁 に 提 出 した 水 産 物 流 通 構 造 改 革 事 業 に 係 る 課 題 提 案 書 には 敦 賀 市 場 と 早 瀬 市 場 の 統 合 により 統 合 前 との 比 較 で 取 扱 量 の 5% 向 上 魚 価 の 3% 向 上 を 目 指 すこと が 謳 われている 言 い 換 えれば 新 市 場 は いわゆる 地 域 拠 点 型 市 場 として 確 かな 地 位 を 築 くことが 求 められているといえる 地 域 拠 点 型 のイメージは 取 扱 金 額 が 20 億 円 以 上 取 扱 数 量 が 5,000 トン 以 上 であるので 平 成 19 年 度 の 実 績 を 単 純 に 当 てはめると 年 間 取 扱 金 額 が 30 億 円 数 量 が 6,000 トンに 達 する 新 敦 賀 市 場 は 地 域 拠 点 型 といってなんら 問 題 のない 市 場 としてその 地 位 を 確 立 できることになる しかし 平 成 19 年 度 の 実 績 を 単 純 に 当 てはめ ることは 拙 速 といえる 本 調 査 でも 指 摘 したように 早 瀬 市 場 の 廃 止 がおよぼすだろう 新 市 場 への 影 響 はいくつか 考 えられる すなわち 1 早 瀬 市 場 における 仲 買 人 の 廃 業 2 価 格 形 成 力 のある 一 部 鮮 魚 の 日 向 市 場 での 入 札 3 日 向 市 場 への 職 員 の 配 置 による 人 件 費 負 担 4 早 瀬 市 場 への 出 荷 されていた 漁 獲 物 の 舞 鶴 市 場 への 流 出 などが 指 摘 できる 早 瀬 市 場 の 仲 買 人 は 現 在 でも 39 名 ほどで このうち 少 なくとも 13 名 が 今 回 の 市 場 統 合 で 廃 業 を 決 めている 規 模 を 拡 大 する 新 市 場 において 安 定 的 な 価 格 形 成 を 実 現 するためには 一 定 数 の 買 受 人 が 必 要 となるが 敦 賀 市 場 の 仲 買 人 がそのまま 新 市 場 に 移 らないという 点 では 不 安 定 要 素 といえるだろう さらに 残 った 26 人 が 敦 賀 市 場 に 仲 買 人 登 録 をするわけだが もともと 早 瀬 市 場 の 仲 買 人 は 年 間 買 受 額 が 1,000 万 円 前 後 であり 新 市 場 に 移 った 仲 買 人 が どれほど 価 格 形 成 に 寄 与 するかは 未 知 数 といえる 加 えて これまで 早 瀬 市 場 に 上 場 されてい た 単 価 の 高 い 活 魚 が 新 市 場 には 出 荷 されず 日 向 市 場 でセリにかけられることになるのも 新 市 場 側 からみると 不 安 定 要 素 となりうる これにともなって 県 漁 連 は 早 瀬 市 場 の 職 員 を 日 向 に 振 り 向 けることなり 早 瀬 市 場 廃 止 による 人 件 費 の 抑 制 効 果 は 薄 れた 格 好 となる 早 瀬 市 場 の 廃 止 を 受 けた 各 漁 協 の 動 きとしては 若 狭 三 方 漁 協 の 一 部 支 所 の 出 荷 動 向 が 注 目 される 現 状 でも 地 元 の 早 瀬 市 場 に 出 荷 する 割 合 は 高 いとは 言 えないが 水 揚 げの 4 割 ほど を 出 荷 していた 常 神 神 子 が 取 りうる 方 策 は 今 後 の 新 市 場 の 実 勢 をみる 一 つの 指 標 となりう 55

る なぜなら 神 子 や 小 川 世 久 見 が 5 割 から 9 割 ちかくを 仕 向 けている 舞 鶴 市 場 との 力 関 係 ( 価 格 形 成 力 の 有 無 )がより 分 かりやすい 形 で 表 出 するためである また 新 市 場 は 早 瀬 市 場 という 緩 衝 地 帯 を 失 うことで 県 外 市 場 との 競 合 の 矢 面 に 立 たされる 可 能 性 がでてきたことに なる なお 現 地 での 聞 き 取 りでは 瀬 戸 内 の 消 費 地 を 抱 えている 舞 鶴 有 利 の 声 が 聞 かれた 合 後 の 動 向 に 注 意 したい こうした 早 瀬 市 場 廃 止 にともなう 課 題 からは 価 格 形 成 力 が 低 下 傾 向 にある 敦 賀 市 場 の 存 在 感 向 上 を 統 合 によっていかに 実 現 するのかが 鋭 く 問 われていることがわかる 買 受 人 ならび に 加 工 業 者 の 誘 致 などの 方 策 があげられているが 上 述 した 課 題 とのかかわりで 見 ると 厳 しい 現 実 があるように 思 う 衛 生 管 理 の 高 度 化 も 過 剰 投 資 となって 効 率 悪 化 を 招 くリスクがある 以 上 に 概 観 した 福 井 県 における 市 場 統 合 からみえてくる 現 実 は 生 産 者 の 出 荷 に 対 する 意 識 の 変 化 と 市 場 運 営 者 の 体 力 仲 買 人 加 工 業 者 の 集 合 に 起 因 する 価 格 形 成 力 の 高 低 が 水 産 物 の 流 通 構 造 に 速 度 の 早 い 変 化 を 与 えている 事 実 であった すなわち 県 境 や 系 統 に 影 響 されな い 水 産 物 流 通 構 造 の 柔 軟 な 形 成 が 促 されている 現 実 であり 産 地 市 場 とはいえ すでに 地 場 の 魚 が 当 たり 前 のこととして 出 荷 される 状 況 になくなっていることを 伝 えている 県 境 を 越 えた 集 荷 の 努 力 や 市 場 開 設 者 同 士 の 競 合 は 避 けられないといえる 市 場 外 流 通 の 増 大 や 消 費 地 市 場 の 産 地 市 場 化 など 新 たな 流 通 構 造 の 形 成 もみられるように なっているなかで 産 地 市 場 が 維 持 存 続 されるためには 消 費 地 市 場 としての 性 格 を 有 してい くことも 採 るべき 一 つの 方 策 となろう 舞 鶴 市 場 でも 現 在 大 阪 の 卸 売 業 者 仲 卸 業 者 が 4 社 出 荷 者 として 参 入 している 鶴 賀 市 場 でも 福 井 中 央 魚 市 が 出 荷 者 として 市 場 内 に 場 所 を 借 り 全 量 を 仲 買 人 に 相 対 取 引 で 販 売 している 金 沢 からも 発 送 業 者 として 販 売 事 業 を 展 開 してい る 業 者 が 1 社 きている かかる 動 きは 産 地 や 消 費 地 といった 従 来 の 概 念 を 弱 める 方 向 に 作 用 する 一 方 で 産 地 市 場 を 流 通 ネットワークのなかに 位 置 づける 存 在 感 を 堅 持 してい く 助 力 にはなる 今 後 鶴 賀 新 市 場 の 動 向 や 嶺 南 の 各 漁 協 と 舞 鶴 市 場 との 新 たな 関 係 性 の 構 築 などとならび この 点 は 注 目 していきたい 56

Ⅳ.O 社 における 養 殖 魚 の 流 通 について 財 団 法 人 魚 価 安 定 基 金 業 務 部 長 佃 朋 紀 1.O 社 の 歴 史 と 会 社 概 要 (1) 歴 史 O 社 のルーツは 三 重 県 の 某 市 にある 主 婦 の 店 の 塩 干 部 門 であった O 社 がある 某 市 では 地 元 で 小 魚 が 多 く 水 揚 げされ 塩 干 物 を 加 工 する 業 者 もいたことから 昭 和 33 年 頃 塩 干 部 門 が 独 自 に 加 工 場 から 仕 入 れ 販 売 を 行 っていた こうした 中 で 中 部 地 区 の 主 婦 の 店 のオーナーによる 勉 強 会 があり 他 の 店 舗 のオーナー からトレーパックに 干 物 を 入 れ シールを 貼 って 納 入 して 欲 しいとの 依 頼 があり 塩 干 品 の 扱 いを 開 始 した この 塩 干 品 の 販 売 からO 社 はスタートしたと 言 われている いわゆる 店 舗 の 仕 入 れ 機 能 として 市 場 外 流 通 からスタートしたのである そのことが 関 係 者 が 指 摘 するところの もともとマーケット インという 思 想 が 流 れている と 言 われる 所 以 である その 後 塩 干 部 門 の 売 り 上 げが 1 億 円 程 度 になった 時 O 市 の 商 工 会 議 所 に 物 産 振 興 を 目 的 として 会 社 を 設 立 できないかどうかを 相 談 したところ 賛 同 が 得 られたことから 昭 和 47 年 にO 社 を 設 立 した 当 時 は 養 殖 漁 業 が 普 及 し 始 めていたことから ある 名 古 屋 のスー パーから 年 末 用 のセミドレスの 加 工 を 依 頼 され 養 殖 魚 についても 取 り 扱 い 始 めている た だ 設 立 当 時 にあっては 加 工 施 設 もなかったことから 県 漁 連 の 加 工 場 に 加 工 を 委 託 して いた その 後 自 前 では 昭 和 61 年 当 時 においては 加 工 センターも 建 設 し もっぱら 甘 エビの 皮 むきとか イカのむき 身 など スーパー 向 けの 簡 易 加 工 を 行 っていた そして 平 成 4 年 に 松 本 工 場 が 竣 工 稼 働 を 開 始 し 自 ら 加 工 を 始 めることとなり 本 格 的 に 養 殖 魚 の 自 社 加 工 に 乗 り 出 した とはいえ 松 本 の 加 工 場 では 養 殖 魚 については 季 節 的 な 加 工 量 の 偏 りが あることから 主 力 の 加 工 は 甘 エビのむき 身 であったようである ただ 当 時 O 社 が 養 殖 魚 の 加 工 を 行 ってはいたとはいえ その 中 心 的 な 事 業 は 餌 + 出 荷 魚 + 稚 魚 の 扱 いが 中 心 であったようである また その 販 売 先 も 漁 業 者 への 直 接 販 売 ではなく 商 系 の 問 屋 (Y 社 等 )への 販 売 であったという しかし 平 成 8 年 9 年 にかけて 一 大 方 針 転 換 を 行 うこととなり 平 成 11 年 以 降 は 餌 の 販 売 を 取 りやめ 同 業 者 への 原 料 販 売 もとりやめることとなった 当 時 加 工 割 合 が 48% 程 度 であり 58%がブローカー 的 な 取 扱 であったことから 加 工 の 割 合 を 70~80%に 高 めること となったのである 方 針 転 換 の 理 由 としては 量 的 な 扱 いと 価 格 競 争 の 展 開 に 嫌 気 をさし 付 加 価 値 の 付 けられる 加 工 品 に 注 目 することにしたからだという O 社 における 加 工 は 当 初 はセミドレス フィレーの 加 工 だったが 次 第 に 九 州 四 国 の 産 地 における 加 工 が 始 まってきたことから 次 第 に 競 争 が 激 しいものとなり 同 質 化 競 争 の 中 で O 社 における 競 争 力 が 喪 失 することとなったという この 結 果 大 阪 からの 撤 退 が 余 儀 なくされた 平 成 14 年 前 後 M 社 の HP でのマーケットを 消 費 者 においている 視 点 に 共 感 し 連 携 する こととなる そして M 社 が 撤 退 した 平 成 20 年 まで M 社 の 大 分 養 殖 場 からブリ 等 を 仕 入 れるとともに またM 社 のサーモンについても 加 工 を 行 うようになった これまでの 甘 エ ビのむき 身 から 加 工 場 のラインに 新 たにサーモンのラインが 追 加 されることとなり 主 力 の 57

ラインと 位 置 づけされるようになったのである 平 成 17 年 には 松 本 工 場 の 老 朽 化 もあり 林 町 工 場 が 竣 工 し 現 在 に 至 っている この 林 町 加 工 場 の 竣 工 は 新 たにピッキングの 機 能 を 併 せ 持 つようになり 新 たなO 社 のビジネス モデルとして 重 要 な 役 割 を 果 たすようになったことは 言 うまでもない 併 せて マーケッ ト インの 発 想 から ブリの 部 位 別 マーケティングの 展 開 へと 新 たなビジネスモデルの 構 築 へと 進 んだのである (2) 会 社 概 要 1 取 扱 額 の 推 移 O 社 における 取 扱 額 の 推 移 を 見 たのが 表 1 である これをみるとわかるように 平 成 11 年 以 降 平 成 14 年 まで 取 扱 額 が 減 少 し 平 成 15 16 年 と 一 次 は 盛 り 返 したものの 平 成 17 年 には 過 去 10 年 間 で 最 も 低 い 約 74 億 円 の 売 り 上 げとなった その 後 回 復 し 平 成 20 年 には 約 92 億 円 とこれまでの 最 高 を 記 録 している 平 成 11 年 以 降 14 年 までの 減 少 は 前 述 のようにブローカー 的 な 仕 事 から 加 工 中 心 のビジネス へと 方 針 転 換 したことによる 売 り 上 げの 低 下 とみられる その 後 平 表 1 O 社 における 取 扱 額 の 推 移 年 取 扱 額 年 取 扱 額 平 成 11 年 8,628 百 万 円 平 成 16 年 8,445 百 万 円 平 成 12 年 8,485 百 万 円 平 成 17 年 7,398 百 万 円 平 成 13 年 8,267 百 万 円 平 成 18 年 8,678 百 万 円 平 成 14 年 7,818 百 万 円 平 成 19 年 8,850 百 万 円 平 成 15 年 7,975 百 万 円 平 成 20 年 9,230 百 万 円 資 料 :O 社 ヒアリング 以 下 断 りがない 限 り 出 展 は 同 じ 成 18 年 から 再 度 上 昇 に 転 じ 平 成 20 年 は 92.3 億 円 の 売 り 上 げを 記 録 している 2 年 間 の 加 工 実 績 と 特 徴 O 社 の 主 な 製 品 の 加 工 実 績 をみると 下 記 の 表 のとおりとなっている 表 2 O 社 の 加 工 実 績 ( 平 成 20 年 ) 魚 種 名 加 工 実 績 尾 数 かんぱち 1,400トン 43 万 尾 まだい 600トン 40 万 尾 ぶり はまち 3,500トン 78 万 尾 サーモン 800トン 20 万 尾 この 他 に 今 後 は 前 浜 ものや 自 ら 養 殖 まぐろに 取 り 組 むなど 新 た に 1000 トン 程 度 の 生 産 の 増 加 を 計 画 している 1 日 当 たりの 生 産 量 は MAX で1 万 数 千 尾 と 言 われており 時 間 当 たりの 生 産 能 力 は フィレーで 900~1,000 尾 / 時 間 ロイン 加 工 で 500~600 尾 / 時 間 の 能 力 を 有 してい ると 言 われている なお 1 日 当 たりの 通 常 時 の 加 工 尾 数 は ブリが 4000~5000 尾 マ ダイが 1000 尾 カンパチ 700~800 尾 となっている 季 節 的 には 加 工 の 度 合 い 魚 種 も 異 なり 11 月 ~4 月 はブリの 加 工 が 中 心 で 5 月 ~ 10 月 はカンパチのフィレー 加 工 が 中 心 となる このうち 11 月 ~4 月 にかけてのブリ 加 工 については ロイン 等 までの 加 工 を 行 っている マダイについては 周 年 フィレー 等 に 加 工 さている この 他 に 加 工 品 としては スライスや 酢 〆 等 も 行 っている こうした 多 種 類 にわたる 加 工 実 績 を 考 えると 当 然 ながらO 社 の 取 引 は 単 品 の 販 売 と いうよりは 詰 め 合 わせ による 販 売 を 伺 わせるわけで そのことがO 社 の 大 きな 特 徴 の 一 つと 言 えそうである 58

3 販 売 先 実 績 と 販 売 の 特 徴 表 3は O 社 の 販 売 先 業 種 別 の 販 売 金 額 を 見 たものである 表 3 O 社 の 販 売 先 業 種 別 販 売 金 額 販 売 先 金 額 販 売 先 金 額 量 販 店 鮮 魚 部 門 43 億 円 海 外 市 場 1 億 円 デリカ 部 門 10 億 円 中 央 卸 売 市 場 3 億 円 回 転 寿 司 14 億 円 その 他 ( 餌 稚 魚 等 ) 19 億 円 外 食 居 酒 屋 1 億 円 コンビニ 1 億 円 表 3に 見 られるように 出 荷 先 としては 中 央 卸 売 市 場 の 出 荷 割 合 が 少 なく 文 字 通 り 末 端 への 直 接 販 売 となっている そして その 中 心 は 量 販 店 であり 次 いで 回 転 寿 司 と なっていることが 判 る この 二 つ 販 売 先 がO 社 の 主 要 な 取 引 先 であり 取 引 の 特 徴 と 言 える また 量 販 店 でも 鮮 魚 部 門 とデリカ 部 門 があり デリカ 部 門 においてはいわゆ る 寿 司 ダネ 用 としてのものである また 回 転 寿 司 は もちろん 寿 司 ダネとしての 販 売 であるが その 取 引 先 のほと んどがチェーン 店 となっているという しかも 取 引 に 関 しては 一 般 的 なセンター 納 品 ではなく 直 接 店 舗 との 受 発 注 配 送 伝 票 の 発 行 業 務 を 行 っているということから チェーン 店 の 本 社 を 通 さず 行 っている 取 引 であり O 社 の 取 引 における 大 きな 特 徴 と 言 える 4 物 流 の 状 況 と 特 徴 O 社 の 物 流 については 産 地 からは 下 記 のように 活 魚 船 での 集 荷 を 行 い 産 地 からO 市 までのマス 物 流 の 構 築 により 流 通 コストの 削 減 を 図 っている なお これに 伴 う 集 荷 コストは 原 魚 価 格 の 7~8% 程 度 を 占 めているといわれている 現 在 は 活 魚 選 を 2 隻 有 しており その 輸 送 容 量 は 下 記 のとおりとなっている 活 魚 船 350 トン(60 トン 冬 場 ) 1 隻 200 トン(40 トン 冬 場 ) 1 隻 また 物 流 の 頻 度 は 最 盛 期 には 週 2~3 便 となっているようである 一 方 消 費 地 に 対 する 流 通 は O 社 では チャーターによる 配 送 宅 配 による 配 送 の 二 つの 手 法 が 採 られている チャーターについては センター 配 送 が 中 心 で 物 量 がま とまるものについて 行 われており 一 部 活 魚 輸 送 についても 同 様 である 現 行 におい ては チャーター 便 は 北 陸 新 潟 方 面 1 台 名 古 屋 2 台 大 阪 1 台 関 東 1 台 となって いる また 活 魚 として 出 荷 している 蓄 養 サバについては 週 2 3 回 活 魚 車 を<10t 車 15t 車 >を 仕 立 てて 配 送 している これに 対 して 直 接 店 舗 への 配 送 に 関 しては 宅 配 便 を 利 用 した 物 流 となっている 時 間 的 には 夕 方 17 時 までに 加 工 場 から 出 荷 し 同 じ 県 内 の 宅 配 便 のセンターに 22 時 に 到 着 すれば 福 島 県 までは 翌 日 午 前 10 時 に 配 送 することができるとのことである ただ 宅 配 便 の 利 用 は 物 流 経 費 のアップを 強 いられるというのは 一 般 的 見 方 であるが O 社 の 場 合 は おかれている 地 域 の 物 流 シェアーもあり 宅 配 業 者 の 支 店 との 一 定 の 価 格 交 渉 力 を 有 していることから 中 央 市 場 経 由 の 横 モチ 料 含 む 経 費 より 割 安 な 価 格 を 実 現 して いるという この 点 も O 社 における 大 きな 特 徴 と 言 える 2.O 社 の 特 徴 59

養 殖 にかかわるいわゆる 商 系 と 呼 ばれる 企 業 について 整 理 してみると その 歴 史 的 経 緯 もあ り 資 材 餌 稚 魚 の 販 売 成 魚 の 購 入 というものがパッケージ 化 された 中 で 構 築 されてきた ビジネスモデルというのが 一 般 的 な 見 方 であろう このパッケージの 中 で 商 系 の 企 業 の 採 算 が 保 たれ これまで 企 業 の 経 営 が 維 持 されてきたわけである 当 然 ながら こうした 中 でも ニーズに 即 した 形 でラウンドの 流 通 から ラウンドを 主 体 にしつつも 次 第 にフィレーへの 加 工 へと 転 換 してきたわけである ただ その 取 引 先 のほとんどが 市 場 流 通 もしくは 中 央 卸 売 市 場 の 荷 受 帳 合 いとなっていることに 変 わりはない しかし 現 状 の 中 央 卸 売 市 場 における 流 通 能 力 を 考 えると 脆 弱 化 していることは その 取 扱 量 の 減 少 からみて 明 らかである そうした 中 で 依 然 として 商 系 は 市 場 流 通 が 主 体 であること を 考 えると どうしても 価 格 競 争 にさらされていることは 間 違 いのないことであろう このた め 単 なる 養 殖 魚 の 販 売 ではなく パッケージ 化 されたビジネスとせざるを 得 ない 背 景 がそこ に 存 在 しているわけである つまり 市 場 での 販 売 価 格 よりも 餌 の 販 売 や 稚 魚 の 販 売 等 がメ インであることが 判 る ここに 養 殖 魚 の 価 格 低 迷 の 構 造 的 な 要 因 があることは 誰 が 見 ても 明 らかなことであろう とはいっても 価 格 競 争 の 熾 烈 化 は 商 系 の 企 業 の 収 支 を 悪 化 させることは 当 然 であり 今 や そのツケが 生 産 者 へと 回 されているという 養 殖 業 の 現 状 が 垣 間 見 えてくる かつてのO 社 も 餌 や 稚 魚 の 扱 量 の 増 大 へとかき 立 てられた 時 期 もあったようだが 価 格 競 争 の 熾 烈 化 と 収 益 性 の 悪 化 は O 社 をして 新 たなビジネスモデルの 構 築 へと 方 針 転 換 をさせたわけである その 結 果 O 社 におけるビジネスの 特 徴 をみると 次 のような 点 がある 1 仕 入 の 特 徴 一 般 的 な 商 系 のビジネスモデル( 餌 稚 魚 の 販 売 成 魚 の 購 入 )ではなく 成 魚 の 購 入 を 基 本 としていることから 価 格 変 動 を 志 向 する 個 人 養 殖 業 者 との 取 引 よりは 企 業 養 殖 を 取 引 先 として 中 心 に 据 えているのである 2 販 売 の 特 徴 卸 売 市 場 への 販 売 は 養 殖 サバとごく 一 部 の 活 魚 を 除 いては 行 っておらず スーパー 回 転 寿 司 等 に 直 接 販 売 を 実 施 している しかも 回 転 寿 司 の 場 合 は 店 舗 直 接 であり 一 般 的 な 本 社 経 由 のセンター 納 入 というシステムとは 異 なる 商 流 となっている しかも 各 店 舗 の 売 り 上 げも 含 め 把 握 できる 体 制 にあるのである 3 マーケティング 戦 略 の 特 徴 ブリについては 11 月 ~4 月 の 間 背 身 腹 身 ロインなど 部 位 別 に 販 売 先 を 考 えな がら 販 売 している このうち 腹 身 は 回 転 寿 司 に 背 身 はスーパー 中 心 に 販 路 を 開 拓 して いる 当 然 ながら 部 位 ごとに 価 格 設 定 も 異 なる その 他 に これまで 廃 棄 されていたカ マ 骨 身 などについても 商 品 化 を 行 い 1 尾 当 たりの 部 位 別 の 価 格 ミックスによって 相 対 的 な 付 加 価 値 の 向 上 につなげるような 取 組 みが 行 われている つまり 部 位 別 のマーケテ ィング 戦 略 をとっているということである 4 ピッキング O 社 が 販 売 している 魚 種 は 1 魚 種 の 取 り 扱 いではなく 複 数 魚 種 (マダイ ブリ カ ンパチ シマアジ サーモン 他 )であり その 製 品 についてもフィレーなど 多 種 類 に 及 ん でいる こうした 中 で 寿 司 チェーンなどにおいては 個 別 の 受 発 注 納 品 が 要 望 されてい 60

るわけで 当 然 ながらそれに 対 応 したシステムの 構 築 が 必 要 となる このため O 社 にお いてはピッキング 機 能 を 構 築 することとなったのである その 結 果 二 つのメリットが 仕 入 れサイドに 生 ずることになる 一 つ 目 のメリットとしては 店 舗 サイドからすれば 発 注 にかかわる 面 倒 くささもなく なりその 分 利 便 性 も 高 くなるというメリットがある 二 つ 目 のメリットとして 本 社 にお ける 仕 入 れ 機 能 を 内 部 に 抱 えるよりは 外 部 の 機 関 に 依 存 することにより 経 費 の 削 減 も 図 ることが 可 能 となるという 本 社 サイドのメリットを 有 していることになる その 一 方 で 納 入 するサイドのピッキングのメリットとしては 仕 入 れサイドと 安 定 的 な 取 引 の 構 築 が 可 能 となることがあり さらに 別 のサービスの 提 供 も 可 能 となってくると いうメリットも 生 じている この 点 新 たな 高 付 加 価 値 化 の 実 現 につながるものと 想 定 さ れる 5 物 流 市 場 を 経 由 した 物 流 ではなく チャーター 便 でほとんどがセンターへ 直 納 するか 若 し くは 宅 配 便 を 使 って 各 店 舗 に 配 送 している 特 に 宅 配 便 に 関 しては 価 格 交 渉 に 際 しては 各 営 業 所 に 価 格 の 決 定 権 を 委 譲 されていることから 個 別 に 営 業 所 と 交 渉 することになっ ているが O 社 は 所 属 する 地 域 の 営 業 所 にとっての 取 扱 量 が 高 まれば 高 まるほど O 社 の 価 格 交 渉 力 も 高 まることになり 割 引 率 も 高 まることとなる その 結 果 市 場 と 横 持 ち 経 費 を 加 えた 物 流 費 よりも メリットのある 物 流 コストを 実 現 したのである しかも O 社 が 所 在 する 地 域 が 意 外 にも 交 通 の 利 便 性 を 有 しているのである つまり 配 送 時 間 を 考 えるとまさに 中 間 地 点 に 位 置 しているのである こうした 点 のほかに 前 述 のように そもそものO 社 の 起 源 を 考 えると プロダクト アウ ト 型 のものではなく もともとマーケット イン 型 の 考 え 方 があった 点 も 特 徴 の 一 つである さて これまで 挙 げてきた 特 徴 を 踏 まえて 既 存 の 商 系 の 流 通 と 比 較 すると 一 見 しては 養 殖 魚 の 取 り 扱 いということでは 共 通 しているものの 前 掲 のようにマーケットのとらえ 方 が 異 なっており まったく 異 なるビジネスとみてよいようである 3.まとめ 前 項 で 触 れたように 商 系 と 言 われる 養 殖 魚 を 扱 う 企 業 においては 一 般 的 にいわゆるプロ ダクト アウト 型 のマーケティングの 展 開 となっている しかも その 基 盤 となっているもの は 餌 の 販 売 の 収 益 稚 魚 の 販 売 の 収 益 であり 成 魚 の 販 路 である 市 場 においては 損 をせず に 売 りぬくというビジネスモデルであることは 論 をまたないところであろう しかも 餌 を 売 り 始 めると 次 々にボリュームを 志 向 しがちになり 結 果 として 成 魚 については 恒 常 的 な 安 売 りへとつながってしまう 傾 向 がみられる しかも 肝 心 の 市 場 流 通 は 様 々な 顧 客 からの 要 望 を 踏 まえた 戦 略 戦 術 が 採 られているわけでもなく 単 なる 物 流 機 関 として 水 産 物 を 流 している に 過 ぎないことから そのことが 養 殖 魚 の 安 売 り 構 造 を 定 着 させたと 言 っても 過 言 ではなかろ う このことは 現 実 を 見 れば 明 らかであろう その 一 方 で 養 殖 魚 についても 技 術 の 改 良 もあり 生 産 も 安 定 し 品 質 についても 大 きな 差 も 見 られなくなったこと 需 要 の 低 迷 もあって 供 給 は 需 要 を 越 えてしまっていることから どうしても 価 格 競 争 に 陥 りがちとなってしまっているのである 61

そうした 中 で 今 後 の 養 殖 魚 の 販 売 手 法 としては 高 付 加 価 値 化 ということが 最 も 重 要 な こととなっているのである ただ 高 付 加 価 値 化 と 言 っても 単 なるフィレーなどの 高 次 加 工 だけでは 実 現 できないものである それは 現 在 のフィレー 製 品 の 販 売 状 況 を 見 ても 明 ら かであり それを 打 破 するには まったく 異 なるビジネスの 中 でしか 実 現 が 難 しいのではない だろうか 歴 史 的 には これまでは 外 食 店 量 販 店 においてはチェーン 化 したことによって 首 都 圏 に 近 いところでの 物 流 拠 点 ( 蓄 養 場 )を 構 築 したり フィレーまでの 加 工 を 行 ったりという 形 で それなりの 営 業 努 力 も 払 われてきたことは 周 知 のとおりである しかし それもプロダク ト アウト 型 のマーケティングでしかなかったのである また 量 販 店 や 外 食 店 においても フィレーの 扱 いについては 鮮 度 管 理 上 の 問 題 オペレーション 上 の 問 題 ( 調 理 技 術 や 商 品 化 等 の 問 題 ) 消 費 量 の 問 題 もあり 単 に 扱 いやさ を 評 価 しての 需 要 が 伸 びてきたわけであ る その 一 方 店 舗 ではランドで 扱 うことによる 魚 1 尾 当 たりの 付 加 価 値 化 を 効 率 化 を 進 め る 中 で 犠 牲 にしてきたのである とはいえ 現 実 は 養 殖 魚 の 均 質 化 がさらに 進 められ 格 差 が 縮 小 していく 中 では 量 販 店 等 においてはどうしても 価 格 差 を 志 向 することとなったのである しかし 実 際 の 店 舗 には 特 定 部 位 の 販 売 例 えば 量 販 店 においては 背 側 の 需 要 が 強 く 回 転 寿 司 にとっては 腹 側 の 需 要 が 強 いということで 実 際 には 細 かな 部 位 別 の 需 要 が 生 まれてきているのである ところが こ うした 需 要 は フィレーから 更 なる 部 位 別 の 販 売 へと 進 むことになり 現 状 の 流 通 においては どうしてもコストの 増 大 を 招 くこととなる しかも 細 かなマーケティングをしていないため に 一 部 の 商 品 は 売 れるものの 一 部 の 商 品 では 売 れ 残 りが 生 ずることとなり 現 状 の 養 殖 魚 の 流 通 にあっては 結 果 的 にはビジネスになりにくい 現 状 となっているのである また 量 販 店 や 外 食 チェーンにとって 見 ると 部 位 ごとの 仕 入 れでは 現 在 の 太 宗 を 占 める 市 場 流 通 からで は 極 めて 割 高 な 仕 入 れとならざるを 得 ず 仕 入 れをあきらめざるを 得 ないという 側 面 も 存 在 し ているのである このことを 考 えると 現 在 の 養 殖 魚 にあっては 同 質 化 による 低 価 格 競 争 に 陥 り そこから 脱 却 できない 養 殖 業 者 は 必 然 的 に 厳 しい 経 営 に 迫 られるという 現 実 の 必 然 性 が 存 在 している したがって 養 殖 魚 の 生 産 流 通 は 一 つのターニングポイントを 迎 えていると 言 えるのだが それを 変 えるための 構 造 改 革 がいずれの 商 系 と 言 われる 業 者 の 戦 略 には 見 られてこないの である しかし O 社 における 部 位 別 のマーケティング 及 びピッキングによる 詰 め 合 わせは それまでの 同 質 化 競 争 を 排 除 し サービスの 提 供 による 顧 客 囲 い 込 みと 新 規 ニーズ< 詰 め 合 わ せ>の 掘 り 起 こしを 実 施 している 点 で 新 たな 養 殖 魚 にかかわる 流 通 スタイルとして 注 目 する に 値 することではないかと 考 える しかも それを 実 現 する 前 提 条 件 の 一 つに 業 者 からの 養 殖 魚 の 購 入 は 安 定 的 な 仕 入 れ( 量 及 び 価 格 )での 取 引 を 上 げていることから 新 たな 養 殖 業 のあり 方 を 問 うているように 思 われる とかく 現 在 の 養 殖 業 者 は 安 い 時 は 目 一 杯 頼 ってくるが 一 旦 相 場 が 高 くなると 逃 げて いく と 言 われている この 点 を 考 えると O 社 の 取 引 先 として 不 安 定 な 養 殖 業 者 との 直 接 取 引 は 断 念 せざるを 得 ず むしろ 企 業 との 取 引 が 志 向 されることとなる 如 何 に 商 系 と 言 わ れる 業 者 が 相 場 を 作 ろうが また それが 末 端 での 特 売 の 価 格 を 決 定 しようが その 時 点 でビ ジネスとは 言 い 難 いものとなるわけである ところが O 社 においては 安 定 を 志 向 したわけで 取 引 先 が 企 業 養 殖 に 絞 られるのは 当 然 の 話 である その 結 果 が 商 系 と 言 われる 業 者 の 扱 いが 62

最 盛 期 に 比 べ 30% 減 少 してきていることに 示 されている こうした 状 況 からの 脱 出 は 養 殖 魚 の 生 産 流 通 の 構 造 の 改 革 であり いわゆる 新 た な 理 屈 が 必 要 となる それは どうしても 養 殖 魚 の 中 間 流 通 業 者 につきつけられている 課 題 である その 課 題 を O 社 においては 部 位 別 のマーケティング ピッキング 定 時 配 送 定 価 格 によって 解 決 しようとしているのである しかも 末 端 への 直 接 販 売 という 手 法 を 使 って 実 現 しているのである ただ 当 然 ながら 販 路 の 拡 大 ということになると 価 格 競 争 ではない 形 での 競 合 他 社 との 明 確 な 違 いを 作 る 必 要 があるが O 社 の 場 合 は チェーン 店 におけるオペーレーション 面 での 低 コスト 化 廃 棄 ロスの 減 少 ( 小 口 発 注 ) 高 鮮 度 化 ( 小 口 多 頻 度 配 送 )なのである それ を 実 現 するのが 部 位 別 のマーケティングであり ピッキング( 詰 め 合 わせ)そして 定 時 配 送 定 価 格 という 4 本 の 事 業 の 柱 になるのである この 4 本 柱 は いずれもが 市 場 流 通 においては 実 現 できないことなのである しかも この 4 本 柱 は 新 たな 企 業 のニーズを 生 みつつあるのである 例 えば 本 部 機 能 の 圧 縮 と 外 部 機 能 への 依 存 強 化 を 図 る 外 食 チェーン 等 にとっては まさに 仕 入 れ 等 に 関 して 外 部 化 のための 重 要 な 機 能 となるわけである もちろん こうした 4 本 の 柱 は O 社 にとっての 高 付 加 価 値 化 に つながるサービスの 提 供 の 一 環 としてなされるものであり 市 場 流 通 では 到 底 なしえない 業 で あろう もちろん この 4 本 柱 を 実 現 するためには 非 常 に 細 かなノウハウ つまり 営 業 力 加 工 技 術 製 品 管 理 等 に 係 る 技 術 等 が 必 要 となるわけで O 社 においては 既 にそのノウハウを 蓄 積 してい るようなのである その 結 果 が フィレーを 売 るよりは 背 を 売 る 方 が 安 く 売 れる 仕 組 みを 作 る ことにつながってきたのである いずれにしても こうした 市 場 外 流 通 の 動 きは 養 殖 業 のスタイルを 変 えることにつながる 可 能 性 は 高 いものと 思 われる 63

Ⅴ. 浜 松 市 中 央 卸 売 市 場 の 現 状 について 財 団 法 人 魚 価 安 定 基 金 業 務 部 赤 嶺 貴 史 佃 朋 紀 1. 浜 松 市 中 央 卸 売 市 場 の 概 要 (1) 市 場 の 成 り 立 ち 魚 市 場 は 徳 川 家 康 が 浜 松 城 主 だった 江 戸 時 代 浜 松 市 内 中 央 部 の 肴 町 に 許 可 を 得 て 魚 河 岸 が 設 けられたことに 始 まり 江 戸 幕 府 から 明 治 政 府 に 移 るとともに 近 代 的 な 機 能 が 求 められ る 中 で 明 治 14 年 には 株 式 会 社 組 織 による 委 託 販 売 が 開 始 され 魚 市 場 としての 機 能 が 確 立 されていった 青 果 市 場 は 慶 応 以 前 にルーツがあると 考 えられている 時 代 が 進 んでも 代 金 決 済 機 能 等 に ついて 近 代 的 な 機 能 を 持 つまでには 時 間 を 要 した 明 治 時 代 に 入 り 近 代 的 な 思 考 が 次 々と 取 り 入 れられる 中 で 固 定 的 な 青 果 市 場 が 求 められるようになり 明 治 35 年 には 浜 松 地 区 の 馬 込 橋 左 岸 に 固 定 市 場 が 設 立 された これら 自 然 発 生 的 に 誕 生 した 青 果 市 場 と 城 下 町 としての 武 家 社 会 に 保 護 されながら 栄 えて きた 魚 市 場 は 第 2 次 世 界 大 戦 朝 鮮 戦 争 などを 経 て 発 展 し 経 営 と 設 備 をメインとした 近 代 化 を 目 的 とした 発 展 的 整 理 統 合 が 図 られ 浜 松 市 内 に 青 果 5 卸 売 市 場 水 産 物 3 卸 売 市 場 が 整 備 されていくこととなる その 後 時 代 が 進 んでいくなかで 食 生 活 が 多 様 化 高 度 化 し 生 鮮 食 料 品 の 流 通 形 態 が 急 速 に 変 化 していった これらの 時 代 変 化 に 対 応 するため 中 央 卸 売 市 場 の 設 立 による 安 定 が 求 められるようになり 昭 和 35 年 には 中 央 卸 売 市 場 開 設 についての 検 討 と 基 礎 的 調 査 研 究 が 始 まり 浜 松 市 中 央 卸 売 市 場 が 開 設 されることとなる (2) 市 場 の 歴 史 浜 松 市 中 央 卸 売 市 場 は 生 産 サイドの 出 荷 組 織 の 大 型 化 や 専 門 化 また 消 費 サイドの 食 生 活 の 多 様 化 交 通 機 関 の 発 達 等 生 鮮 食 品 流 通 をめぐる 諸 条 件 の 急 速 な 変 化 に 対 応 するため ま た 市 勢 の 将 来 の 発 展 のため 中 央 卸 売 市 場 化 の 気 運 が 高 まったことにより 昭 和 54 年 3 月 に 開 設 された 静 岡 県 西 部 地 域 140 万 人 の 食 を 支 える 中 核 拠 点 市 場 である 市 場 の 歴 史 は 以 下 の 通 りとなっている < 歴 史 > 1 昭 和 54 年 3 月 浜 松 市 中 央 卸 売 市 場 開 設 認 可 2 昭 和 54 年 4 月 水 産 部 業 務 開 始 3 昭 和 54 年 5 月 青 果 部 業 務 開 始 4 昭 和 62 年 水 産 仲 卸 買 荷 保 管 所 及 び 業 者 事 務 所 新 築 5 平 成 10 年 水 産 SF 級 冷 蔵 庫 新 築 6 平 成 21 年 市 場 開 設 30 周 年 を 迎 える (3) 市 場 の 概 要 < 施 設 > 水 産 部 に 関 しては 卸 売 場 7,418 m2 中 卸 売 場 5,718 m2などとなっており 5,000 ト ン 級 の 冷 蔵 庫 等 がある ( 図 1) 64

図 1 市 場 概 要 図 番 号 施 設 別 面 積 (m 2 ) 構 造 卸 売 場 仲 卸 売 場 青 果 12,422 鉄 筋 鉄 骨 コンクリート 造 平 屋 建 水 産 7,418 青 果 3,980 鉄 筋 コンクリート 造 2 階 建 (1 階 部 分 ) 水 産 5,781 水 産 第 1 945 鉄 骨 造 2 階 建 (1 階 部 分 ) 買 荷 保 管 積 込 所 水 産 第 2 1,847 鉄 骨 造 平 屋 建 2 棟 12 区 画 低 温 倉 庫 青 果 1,520 鉄 筋 コンクリート 造 平 屋 建 冷 蔵 庫 水 産 6,124 鉄 筋 コンクリート 造 地 下 1 階 地 上 3 階 建 約 5,000t 管 理 棟 関 係 業 者 事 務 所 加 工 所 遊 水 池 ( 駐 車 場 ) 水 産 第 2 加 工 所 駐 車 場 超 低 温 冷 蔵 庫 2,347 鉄 筋 コンクリート 造 地 下 1 階 地 上 4 階 建 中 央 棟 6,797 鉄 筋 コンクリート 造 2 階 建 (2 階 部 分 ) 水 産 仲 卸 769 鉄 骨 造 2 階 建 (2 階 部 分 ) 青 果 水 産 452 鉄 骨 造 一 部 2 階 建 415 鉄 筋 コンクリート 造 一 部 鉄 骨 造 平 屋 建 5,040 アスファルト 舗 装 約 10,000t(200 台 ) 636 鉄 骨 造 2 階 建 63,700 アスファルト 舗 装 約 2,200 台 1,057 鉄 骨 造 平 屋 建 一 部 2 階 建 < 平 成 19 年 度 市 場 概 況 > 浜 松 市 中 央 卸 売 市 場 は 青 果 部 と 水 産 部 の 2 部 で 構 成 され 青 果 部 は 浜 松 青 果 株 式 会 社 と 株 式 会 社 浜 中 の 2 卸 売 業 者 水 産 部 は 株 式 会 社 浜 松 魚 市 と 浜 松 魚 類 株 式 会 社 の 2 卸 売 業 者 から なる 市 場 の 経 営 状 態 は 良 好 であり これまでに 溜 まっている 資 金 を 使 って 施 設 の 耐 震 補 強 を 行 うことが 検 討 されている 仲 卸 業 者 は 青 果 部 が 11 社 水 産 部 9 社 となっており 水 産 部 については 平 成 19 年 に 16 社 から 9 社 へと 統 廃 合 が 図 られ 現 在 に 至 っている この 統 廃 合 により 経 営 状 態 の 悪 い 仲 卸 業 者 が 整 理 され 平 成 19 年 以 降 は 仲 卸 9 社 体 制 を 維 持 しているとのことである また 仲 卸 業 者 の 概 況 としては 9 社 の 内 の 4 社 が 特 に 元 気 で それぞれが 50 億 円 前 後 の 年 商 を 誇 る これら 浜 松 の 仲 卸 業 者 は それぞれが 小 売 店 等 への 運 搬 用 のトラックを 保 有 するなど 充 実 し たデリバリー 機 能 を 有 しており これが 商 圏 の 拡 大 につながっている また 一 部 仲 卸 にあ っては 自 ら 鮪 専 門 の 飲 食 店 を 経 営 するなど 多 角 的 な 経 営 を 行 っている 業 者 もある 65

その 他 市 場 の 概 要 は 以 下 の 通 り 取 扱 品 目 : 青 果 部 水 産 物 部 (19 年 度 水 産 部 取 扱 高 331 億 円 ) 供 給 圏 : 8 市 2 町 約 140 万 人 開 場 時 間 : 午 前 零 時 から 午 後 12 時 まで セリ 開 始 時 間 : 青 果 部 ( 午 前 6 時 30 分 ) 水 産 物 部 ( 午 前 5 時 30 分 ) 卸 売 業 者 : 青 果 部 2 社 水 産 物 部 2 社 仲 卸 業 者 : 青 果 部 11 社 水 産 物 部 9 社 売 買 参 加 者 : 青 果 部 264 人 水 産 物 部 301 人 買 出 人 : 青 果 部 159 人 水 産 物 部 445 人 関 連 事 業 者 : 60 社 < 供 給 圏 > 静 岡 県 内 には 浜 松 市 中 央 卸 売 市 場 と 静 岡 市 中 央 卸 売 市 場 の 二 つの 中 央 卸 売 市 場 があり 浜 松 市 中 央 卸 売 市 場 は 図 2のとおり 静 岡 県 西 部 地 域 8 市 2 町 を 供 給 圏 として およそ 140 万 人 の 食 生 活 を 支 えている また 近 年 は 仲 卸 業 者 のデリバリー 機 能 が 充 実 してきたことによって 愛 知 県 内 や 静 岡 県 東 部 地 域 への 供 給 も 行 われるようになり 商 圏 のボーダレス 化 が 起 こっている 図 2 供 給 圏 A 供 給 圏 浜 松 市 811,002 人 B 供 給 圏 磐 田 市 袋 井 市 湖 西 市 新 居 町 319,611 人 C 供 給 圏 掛 川 市 菊 川 市 御 前 崎 市 牧 之 原 市 森 町 270,893 人 ( 平 成 20 年 4 月 ) ( 資 料 : 浜 松 市 ) < 浜 松 市 中 央 卸 売 市 場 水 産 物 精 算 株 式 会 社 > 浜 松 市 中 央 卸 売 市 場 水 産 物 精 算 株 式 会 社 は 昭 和 54 年 4 月 5 日 浜 松 魚 類 株 式 会 社 と 株 式 会 社 浜 松 魚 市 により 設 立 された 水 産 代 金 の 精 算 業 務 を 担 っている 精 算 会 社 であり 浜 松 魚 類 と 浜 松 魚 市 の 両 社 長 が 交 代 で 代 表 取 締 役 を 務 めることとなっている 精 算 会 社 の 運 営 費 66

は 卸 業 者 から 支 払 われる 完 納 奨 励 金 等 を 充 当 しているとのことで 通 常 卸 売 業 者 から 仲 卸 へ 支 払 われる 完 納 奨 励 金 は 一 度 卸 売 業 者 から 精 算 会 社 に 入 り そこから 先 の 仲 卸 業 者 へ の 支 払 いは 精 算 会 社 の 判 断 に 任 されている 2. 市 場 取 扱 状 況 浜 松 中 央 卸 売 市 場 の 19 年 度 の 取 扱 数 量 は 表 1にあるように 生 鮮 魚 18,090 トン 冷 凍 魚 12,640 トン 塩 蔵 加 工 品 14,203 トン 合 計 約 44,800 トンとなっており その 割 合 は 図 3のと おり 生 鮮 魚 が 40%と 最 も 多 くなっている また 取 扱 金 額 としては 生 鮮 魚 約 118 億 円 冷 凍 魚 約 122 億 円 塩 蔵 加 工 品 約 90 億 円 合 計 約 331 億 円 となっており 金 額 割 合 では 図 4のと おり 平 均 単 価 が 高 い 冷 凍 魚 が 36.9%と 最 も 多 く 生 鮮 魚 が 僅 かな 差 で 追 っている 年 間 の 取 扱 金 額 は 図 5 のとおり 平 成 4 年 の 約 479 億 円 をピー クとして 減 少 を 続 け 平 成 17 年 には 約 321 億 円 にまで 落 ち 込 んでい る しかし 平 成 17 年 に 321 億 円 となって 以 降 は 微 増 を 続 けてお り 取 扱 金 額 は 下 げ 止 まったと 見 受 けら れる 取 扱 数 量 としては 図 6 のとおり 平 成 13 年 まで 微 減 微 増 を 繰 り 返 していたが 平 成 13 年 以 降 は 18 年 まで 断 続 的 に 減 少 が 続 き 平 成 19 年 には 表 1 平 成 19 年 度 種 別 取 扱 高 項 目 / 種 別 数 量 再 び 増 加 に 転 じている 図 5 及 び 図 6 を 見 る 限 り 特 に 冷 凍 品 の 変 化 の 幅 が 大 きく 冷 凍 品 が 全 体 の 取 扱 高 に 大 きな 影 響 を 与 えていると 考 えられる 19 年 度 取 扱 高 数 量 =kg/ 金 額 = 円 ( 税 込 ) 金 額 平 均 単 価 生 鮮 魚 18,090,926.17 40.30% 11,856,631,942 35.70% 655 冷 凍 魚 12,640,404.79 28.10% 12,257,974,329 36.90% 970 塩 加 品 14,103,251.89 31.60% 9,052,887,031 27.40% 642 合 計 44,834,582.85 100% 33,167,493,302 100% 740 項 目 / 18 年 度 取 扱 高 及 び 対 比 種 別 生 鮮 魚 数 量 18,550,393.17 97.50% 金 額 11,958,116,989 99.20% 冷 凍 魚 11,892,414.56 106.30% 11,372,324,377 107.80% 塩 加 品 11,251,571.35 125.30% 9,259,601,273 97.80% 合 計 41,694,379.08 107.50% 32,590,042,639 101.80% 資 料 : 浜 松 市 67

品 目 別 の 取 扱 数 量 について 見 ると 表 2 のとおり 生 鮮 魚 では 1 位 カツ オ 2 位 サバ 3 位 サンマ 冷 凍 魚 で は 1 位 メバチ 2 位 その 他 エビ 3 位 サバとなってお り それぞれカツ 表 2 品 目 別 取 扱 数 量 順 位 オとメバチの 数 量 が 他 を 大 きく 生 鮮 魚 冷 凍 魚 順 位 品 目 数 量 % 順 位 品 目 数 量 % 離 している また 取 扱 数 量 で 生 1 かつお 2,285,044.93 12.6 1 めばち 4,800,205.16 37.9 鮮 魚 の 7 位 に 位 置 していたメバ 2 さば 1,699,239.60 9.3 2 その 他 えび 829,901.87 6.5 3 さんま 1,276,542.98 7 3 さば 509,414.88 4 チが 取 扱 金 額 ではカツオに 次 ぐ 2 4 ぶり 1,086,352.53 6 4 ぎんざけ 491,343.33 3.8 位 に 入 っている このデータから 5 するめいか 1,012,976.00 5.5 5 ずわいがに 489,747.96 3.8 6 あじ 834,551.41 4.6 6 まだこ 413,745.00 3.2 浜 松 におけるカツオとメバチの 7 めばち 787,111.61 4.3 7 かつお 398,496.30 3.1 消 費 量 の 多 さが 読 み 取 れる 特 に 8 あさり 765,928.14 4.2 8 ほたてがい 363,673.05 2.8 カツオについては 根 強 い 需 要 が あり 中 央 卸 売 市 場 を 通 して 流 れ ていくもの 以 外 に 地 元 の 舞 浜 に 水 揚 げされてそのまま 流 通 する ものもあり 実 際 には 数 字 以 上 の ものが 浜 松 近 郊 に 流 通 している とみられている 地 元 のウナギやフグは 場 外 流 通 されるものが 多 く 中 央 卸 売 市 場 ではほとんど 取 り 扱 われてい ない 9 びんなが 647,582.40 3.5 9 その 他 まぐろ 358,800.82 2.8 10 まだい 487,340.85 2.6 10 ブラックタイガー 354,760.58 2.8 資 料 : 浜 松 市 表 3 品 目 別 取 扱 金 額 順 位 生 鮮 魚 冷 凍 魚 順 位 品 目 金 額 % 順 位 品 目 金 額 % 1 かつお 1,213,393,759 10.2 1 めばち 3,925,993,055 32 2 めばち 907,258,037 7.6 2 その 他 えび 1,391,722,182 11.3 3 ぶり 783,646,933 6.6 3 ずわいがに 809,571,484 6.6 4 まだい 493,035,661 4.1 4 まだこ 502,667,204 4.1 5 さば 444,808,848 3.7 5 ブラックタイガー 430,907,106 3.5 6 かんぱち 441,901,428 3.7 6 その 他 まぐろ 425,528,558 3.4 7 さんま 402,969,822 3.3 7 うなぎ 395,809,184 3.2 8 あさり 396,219,631 3.3 8 かつお 348,967,747 2.8 9 かき 394,191,209 3.3 9 ほたてがい 346,967,034 2.8 10 するめいか 389,914,342 3.2 10 いんどまぐろ 295,186,161 2.4 資 料 : 浜 松 市 3. 卸 売 業 者 の 概 要 本 章 では 浜 松 魚 市 と 浜 松 魚 類 の 卸 売 業 者 2 社 からの 聞 き 取 りをもとに 2 社 がどのような 方 向 性 を 持 って 事 業 を 行 なっているのか 明 らかにして 市 場 の 取 扱 量 の 回 復 との 関 係 を 探 る < 浜 松 魚 類 株 式 会 社 > 1 会 社 概 要 浜 松 魚 類 株 式 会 社 は 中 央 卸 売 市 場 開 設 前 にあった 浜 松 市 内 3 卸 売 市 場 のうちの 浜 松 三 星 魚 68

市 場 浜 松 水 産 市 場 の 2 社 が 統 合 して 昭 和 54 年 1 月 22 日 に 設 立 された 資 本 金 9000 万 円 の 卸 売 業 者 である マルハや 日 本 水 産 との 系 統 関 係 はなく 従 業 員 は 男 子 57 名 女 子 16 名 の 73 名 平 成 19 年 度 の 売 上 高 は 183 億 円 などとな っている 委 託 手 数 料 は 5.5% 完 納 奨 励 金 1000 分 の 4 完 納 奨 励 金 は 仲 卸 業 者 ではなく 精 算 会 社 に 払 っており 仲 卸 業 者 へは 精 算 会 社 の 判 断 で 支 払 うこととされている 関 連 会 社 としては 子 会 社 である 株 式 会 社 浜 松 三 星 と 浜 松 食 品 事 業 協 同 組 合 の 2 社 があり 浜 松 三 星 は 冷 蔵 庫 の 出 し 入 れ 等 の 管 理 をしている 一 方 浜 松 食 品 事 業 協 同 組 合 は 農 地 を 取 得 して 冷 蔵 庫 を 立 てる 際 に 事 業 組 合 でなければ 農 地 の 取 得 ができないという 課 題 を 解 決 するた め 荷 受 と 仲 卸 の 合 計 4 社 で 便 宜 的 に 設 立 された 組 合 であるが 現 在 ここを 実 際 に 倉 庫 とし て 活 用 しているのは 青 果 部 のみとなっている 浜 松 水 産 市 場 図 7 浜 松 魚 類 株 式 会 社 ( 昭 和 54 年 ) 浜 松 三 星 魚 市 場 設 立 : 昭 和 54 年 1 月 22 日 資 本 金 : 9,000 万 円 従 業 員 : 73 名 19 年 度 実 績 : 183 億 円 関 連 会 社 : 株 式 会 社 浜 松 三 星 浜 松 食 品 事 業 協 同 組 合 委 託 手 数 料 5.5% 完 納 奨 励 金 1000 分 の 4 2 現 状 浜 松 魚 市 の 近 年 の 売 上 高 は 183 億 円 ( 平 成 15 年 度 ) 181 億 円 ( 平 成 16 年 ) 171 億 円 ( 平 成 17 年 ) 177 億 円 ( 平 成 16 年 ) 183 億 円 ( 平 成 19 年 )となっており 平 成 17 年 度 に 大 きな 落 ち 込 みが 見 られたものの ここ 2 年 は 回 復 傾 向 にある 図 8 平 成 18 年 より 東 京 に 事 務 所 を 構 え 職 員 を 1 名 配 置 して 事 業 を 進 めている この 営 業 所 の 設 置 によって 集 荷 力 が 上 が り 末 端 の 幅 広 いニーズに 応 え られるようになったことが 売 上 回 復 の 要 因 となっていると 資 料 : 浜 松 魚 類 HP のことである 新 たに 供 給 先 が 増 えたのではなく 集 荷 力 が 上 がり 価 格 品 質 の 面 で 幅 広 い 品 揃 えを 実 現 したことで 売 上 が 伸 びたということになる なお 築 地 からの 仕 入 れは 生 鮮 品 を 仲 卸 経 由 で 仕 入 れており その 際 は 供 給 先 からのオーダーではなく ある 程 度 の 見 込 みで 動 くという また これら 生 鮮 品 の 取 引 に 関 しては バブル 崩 壊 後 の 低 価 69

格 志 向 の 中 においては 市 場 間 取 引 だとロスが 出 てしまうので 需 要 を 見 ながらスポット 的 に 取 り 組 んでいるとのことであった しかし 築 地 以 外 の 名 古 屋 や 大 阪 などの 市 場 から 荷 を 引 いてくることはほとんどなく 築 地 から 引 いてくる 分 についても 浜 松 魚 類 全 体 の 取 扱 量 のほんの 数 %にすぎないようである 内 容 的 には 北 日 本 の 水 産 物 及 び 西 からは 以 西 のまき 網 で 大 量 に 揚 がって 築 地 で 対 応 できなくなっ たものが 流 れてきており それがここ 2~3 年 のトレンドとなっているようである 一 方 産 地 からの 集 荷 については 九 州 から 八 戸 までのすべての 地 域 から 翌 日 の 売 りに 間 に 合 うよう 流 通 体 制 が 構 築 されている しかも 交 通 網 が 整 備 されたことで これまで 難 しい とされた 枕 崎 からでも 翌 日 の 売 りには 間 に 合 うようになっている なお 荷 の 運 搬 には 築 地 に 向 かう 混 載 便 を 利 用 しているとのことである 浜 松 市 中 央 卸 売 市 場 の 特 徴 の 一 つに 他 の 市 場 に 比 べて 競 りの 割 合 が 高 いことが 挙 げられる 浜 松 魚 類 においても 生 鮮 の 場 合 は 相 対 とセリが 3 対 7 となっており セリの 割 合 が 高 くなって おり 市 場 の 評 価 機 能 は 維 持 されているように 思 われる ただ 実 態 的 には セリが 多 くなっ ているのは 鮮 魚 のマグロの 扱 いが 多 いことによる なお 取 り 扱 うマグロの 9 割 が 買 付 によ るものであり それをセリで 売 るということは 逆 ザヤに 陥 るリスクも 高 く なお 且 つ ヤケ のリスクもあり 他 の 市 場 ではなかなか 真 似 できないことである それを 可 能 としているのは 浜 松 で 扱 うマグロが 30 kg 以 下 の 小 型 のものが 中 心 で ヤケが 少 なく いわゆる 事 故 品 となる 率 が 低 いというところにある また マグロはラウンドだけでなく ロインでの 販 売 もしてい る 特 にスーパー 等 の 小 売 店 向 けのビンチョウでロインの 割 合 が 多 く そのほとんどが 相 対 で 取 り 引 きされるとのこと カツオの 流 通 は 地 元 舞 阪 で 水 揚 げされるものはモチカツオとして 評 価 され ある 種 ブラン ド 化 されていることから 浜 松 市 場 を 通 らず ほとんどが 場 外 流 通 となっている このため 中 央 市 場 で 扱 うカツオは 他 地 域 からの 送 り 物 が 大 多 数 を 占 めている 中 央 市 場 において 一 番 高 いものが 500 円 /kg 前 後 であるが 地 元 の 舞 阪 市 場 でのセリではそれよりも 大 幅 に 高 い 1,500 円 /kg することもある カツオのように 地 元 で 水 揚 げされて 地 元 での 消 費 が 強 いものは 買 い 手 が 直 接 産 地 市 場 へ 買 いにいくため 中 央 卸 売 市 場 に 流 れることがなく 中 央 卸 売 市 場 にお いてはスーパーの 売 り 場 を 埋 めるために 他 地 域 からの 送 り 物 を 扱 うというような 状 況 になっ ている 市 場 においてここ 数 年 取 り 扱 いの 増 加 した 魚 種 はなく 単 一 魚 種 みるとほとんどが 減 少 して いる 状 況 にある そうした 中 で 市 場 取 扱 金 額 量 ともに 1 位 はカツオであり 浜 松 市 場 の 特 徴 となっているが そのカツオにおいてすらその 傾 向 は 同 じである そうした 原 因 を 関 係 者 は スーパーの 刺 身 は 5 点 盛 等 の 盛 り 合 わせが 主 流 になったことから カツオだけで 一 つのパ ックを 構 成 できていた 時 代 からすると 消 費 量 は 確 実 に 落 ちてきているのは 当 然 とみている また 量 販 店 に 対 しては デリバリー 機 能 を 持 った 仲 卸 業 者 を 通 じて 流 れていくということ で デリバリー 機 能 を 持 たずに 全 国 から 広 く 荷 を 集 める 卸 売 業 者 とデリバリー 機 能 が 発 達 した 仲 卸 業 者 が 上 手 く 役 割 分 担 している 様 子 がうかがえる 3 今 後 の 戦 略 140 万 人 の 商 圏 をもっているが 今 後 高 齢 化 が 進 む 中 で 消 費 が 減 退 していくことは 確 実 であ り 量 販 店 が 衰 退 した 時 に 荷 受 けとしてどう 対 応 していくのかということが 最 大 の 課 題 となっ 70

ている 今 後 販 路 開 拓 を 図 るためには スーパーマーケット 等 との 取 引 が 不 可 欠 であり その 取 引 を 維 持 していくためには どうしてもデリバリー 機 能 が 市 場 としても 必 要 とされてきているわ けで 当 市 場 においては 卸 売 業 者 がデリバリー 機 能 を 有 していないために デリバリー 機 能 を 有 している 仲 卸 と 協 力 しながら 販 路 を 維 持 拡 大 を 進 めていくことが 重 要 になってきているよ うだ 一 方 集 荷 という 面 に 関 しては どう 強 化 していくかが 取 扱 の 維 持 発 展 に 重 要 になるが 現 状 においては 1 社 での 集 荷 にも 限 界 がみられるとの 認 識 が 強 くある このため 将 来 的 には 卸 売 業 者 間 の 連 携 が 想 定 されており 卸 業 者 にも 得 手 不 得 手 があるので 卸 売 業 者 2~3 社 と 手 を 組 んでお 互 いの 不 得 手 の 部 分 を 補 い 合 うような 形 での 展 開 が 考 えられているようである 量 販 店 での 冷 凍 塩 干 品 の 本 部 調 達 化 が 進 む 中 で 荷 受 自 身 のデリバリー 機 能 を 充 実 させて 量 販 店 対 応 型 になるのか はたまた 輸 出 に 目 を 向 けて 海 外 に 販 路 を 求 めていくのか 荷 受 の 今 後 の 対 策 が 問 われている そのような 中 で 浜 松 魚 類 は カントリーリスク 等 の 諸 々のリスク を 抱 えることになる 輸 出 には 手 を 出 さず 地 元 のスーパーとの 取 引 を 大 事 にしたいとしており 地 域 密 着 型 の 卸 売 業 者 を 目 指 している < 株 式 会 社 浜 松 魚 市 > 1 会 社 概 要 浜 松 魚 市 の 母 体 である 浜 松 水 産 ( 明 治 44 年 設 立 )と 浜 松 魚 業 ( 大 正 10 年 設 立 )は 第 二 次 世 界 大 戦 中 の 経 済 統 制 によって 魚 市 場 機 能 の 強 制 統 廃 合 が 行 われ 配 給 制 の 履 行 が 進 む 中 で 浜 松 魚 介 統 制 組 合 として 機 能 してきた 戦 後 市 場 機 能 が 復 元 され 昭 和 22 年 には 浜 松 魚 介 統 制 組 合 が 母 体 とする 市 場 機 能 を 備 えた 浜 松 魚 市 場 が 発 足 し た 昭 和 54 年 の 浜 松 市 中 央 卸 売 市 場 の 開 設 に 合 わ せ 昭 和 53 年 に 株 主 構 成 と 社 内 組 織 を 一 新 して 社 名 を 浜 松 魚 市 と 改 名 している 浜 松 水 産 ( 明 治 44 年 ) 浜 松 魚 介 小 売 統 制 組 合 ( 第 2 次 大 戦 中 ) 浜 松 魚 市 場 ( 昭 和 22 年 ) 浜 松 魚 業 ( 大 正 10 年 ) マルハや 日 本 水 産 との 系 統 関 係 はなく 従 業 員 は 男 子 64 名 女 子 21 名 の 合 計 85 名 平 成 19 年 度 の 売 上 高 は 178 億 円 取 扱 数 量 4 万 1 千 トン 経 常 利 益 は 48 百 万 円 などとなっている 資 本 金 は 9000 万 円 である 関 連 会 社 としては 浜 松 ユニゾン 株 式 会 社 貿 易 業 務 を 専 門 とする 株 式 会 社 海 龍 ( 平 成 16 年 設 立 ) 蒸 しダコの 加 工 を 行 う 株 式 会 社 浜 松 魚 市 加 工 ( 平 成 20 年 設 立 )の 3 社 がある 図 9 浜 松 魚 市 ( 昭 和 53 年 ) 資 料 : 浜 松 魚 市 30 年 史 より 設 立 : 昭 和 53 年 7 月 1 日 資 本 金 : 9,000 万 円 従 業 員 : 85 名 19 年 度 実 績 : 売 上 高 178 億 円 取 扱 数 量 4 万 1 千 トン 経 常 利 益 48 百 万 円 関 連 会 社 : 浜 松 ユニゾン 株 式 会 社 株 式 会 社 海 龍 ( 輸 出 入 ) 71

株 式 会 社 浜 松 魚 市 加 工 (ゆでダコ) < 歴 史 > 昭 和 22 年 3 月 ( 株 ) 浜 松 魚 市 場 浜 松 市 新 町 において 設 立 昭 和 53 年 7 月 1 日 ( 株 ) 浜 松 魚 市 設 立 昭 和 54 年 4 月 27 日 浜 松 市 中 央 卸 売 市 場 入 場 営 業 を 開 始 平 成 11 年 貿 易 業 務 を 開 始 平 成 12 年 4 月 特 販 部 を 新 設 平 成 14 年 4 月 直 営 蒸 しだこ 生 産 設 備 を 設 置 し 稼 動 平 成 14 年 8 月 中 国 青 島 市 青 島 事 務 所 を 設 置 平 成 16 年 11 月 名 古 屋 市 西 区 に 主 として 貿 易 業 務 を 行 うため( 株 ) 海 龍 を 共 同 出 資 し 設 立 平 成 16 年 10 月 大 阪 市 北 区 に 大 阪 営 業 所 を 開 設 平 成 17 年 豪 州 産 アトランティックサーモンの 輸 入 販 売 を 開 始 平 成 20 年 4 月 ( 株 ) 浜 松 魚 市 加 工 設 立 2 現 状 セリと 相 対 の 割 合 は 3 対 7 で 相 対 の 方 が 多 くなっているが セリの 割 合 が 3 割 ということは 最 低 限 の 市 場 における 評 価 機 能 としての 役 割 を 果 たしていると 考 えられなくもないが 相 対 が 70%を 占 めるということは 地 元 買 受 人 に 対 するサービス 的 な 要 素 も 多 分 に 含 まってのセリの 存 在 と 言 えなくもない 基 本 的 に 養 殖 は 全 て 相 対 で 販 売 し 地 場 の 水 産 物 については 100%セリを 行 っている 特 にカツオについては 相 対 で 売 りたい 部 分 もあるが 無 理 をしてでもセリにかけるとのことで あり その 背 景 には 価 格 形 成 力 を 保 つことが 市 場 としての 使 命 だという 考 えがあるからであ る 浜 松 魚 市 は 1999 年 に 貿 易 業 務 を 始 めて 以 来 貿 易 業 務 に 力 を 入 れ 取 扱 量 を 伸 ばしてきた 貿 易 業 務 開 始 当 初 は 輸 入 だけを 目 的 としていたが 現 在 では 韓 国 中 国 台 湾 東 南 アジア 等 への 加 工 原 料 (サバ サンマ)の 輸 出 も 行 なっている 平 成 16 年 に 設 立 した 株 式 会 社 海 龍 が 貿 易 業 務 を 専 門 としているものの その 業 務 は 輸 入 に 限 っており 輸 出 も 含 めた 商 事 機 能 は 魚 市 本 体 の 特 販 部 が 担 当 している こうした 当 社 が 輸 出 の 促 進 を 図 る 理 由 は 少 子 高 齢 化 の 中 で 日 本 のマーケットは 縮 小 し ていくと 考 えて 海 外 に 新 たな 販 路 を 求 める 必 要 が 生 じているという 認 識 が 強 く 存 在 している からである 浜 松 市 中 央 市 場 の 供 給 圏 は 前 述 の 通 りであるが 仲 卸 業 者 は 供 給 圏 を 愛 知 を 含 めた 県 東 部 中 部 まで 設 定 しているとのことであり これは 仲 卸 業 者 の 持 つデリバリー 機 能 が 充 実 し ていることを 裏 付 けている カツオの 集 荷 については 南 は 鹿 児 島 から 東 は 千 葉 まで 広 く 集 荷 しており 宮 崎 からカツオ 船 が 直 接 入 ってくることもあったが その 数 はだんだん 減 少 し 現 在 では ほとんどが 産 地 市 場 の 仲 買 人 から 集 荷 していおり その 割 合 は 90%にも 及 ぶ これは 品 質 の 問 題 に 因 るところが 大 きく 品 質 評 価 機 能 を 有 する 産 地 市 場 を 通 して 集 荷 することでリスクを 軽 減 する 狙 いが 働 い ているからである 72

なお カツオの 集 荷 における 委 託 と 買 取 の 割 合 は 4 対 6 で 買 取 が 多 く 大 手 量 販 店 へカツオ を 卸 している 強 力 な 問 屋 に 対 抗 するため 逆 ザヤのリスクを 抱 えながらも 買 取 をせざるを 得 な い 状 況 にあるとしている カツオ 以 外 の 水 産 物 の 集 荷 に 関 しては 基 本 的 には 築 地 や 名 古 屋 大 阪 市 場 から 荷 を 引 く ことはせず 産 地 市 場 から 直 接 荷 を 引 いてきているが その 背 景 には それぐらいでなければ 荷 受 けとして 力 が 向 上 しないとの 認 識 を 持 っているからである 物 流 については 名 古 屋 と 大 阪 が 中 継 基 地 的 な 役 割 をしており 西 日 本 からの 荷 は 中 継 地 点 を 経 ずに 直 接 来 るものもあるが 名 古 屋 着 4 時 ~4 時 半 で 名 古 屋 を 経 由 するものが 多 く 長 崎 からの 荷 はどうしても 一 日 遅 れになってしまうとのことである 所 要 時 間 は 宮 崎 15 時 間 鹿 児 島 11 時 間 などとなっている 3 今 後 の 戦 略 水 産 物 流 通 における 全 体 的 な 流 れとして 市 場 外 流 通 がかなり 幅 を 効 かせ 始 めた 中 で 市 場 流 通 の 割 合 を 高 める 手 法 として 1 国 内 消 費 を 喚 起 する 2 魚 のプロフェッショナルを 育 てて 販 路 開 拓 の 切 り 札 とする 3インターネット 販 売 等 の 細 かいところは 仲 卸 に 任 せるなど 仲 卸 業 者 と 機 能 分 担 して 卸 売 業 者 としてはもっと 大 きなステージで 仕 事 をしていく 4 仕 入 れの 品 行 方 正 ( 産 地 からの 集 荷 力 の 向 上 を 図 る ) 以 上 の4 点 を 示 している また 高 齢 化 による 将 来 の 消 費 量 減 少 に 対 応 するため 海 外 の 需 要 に 目 を 付 けており 今 後 も 貿 易 業 務 を 促 進 していくという 方 針 を 示 している 中 国 での 加 工 に 関 しては 人 件 費 の 上 昇 という 課 題 を 抱 えてはいるものの インフラ 加 工 施 設 の 整 備 状 況 は 他 の 東 アジア 地 区 と 比 べ て 群 を 抜 いていることから 今 後 も 中 国 での 加 工 を 続 けていく 意 向 としている 一 方 で カン トリーリスクの 分 散 の 意 味 も 込 めて より 人 件 費 の 低 いベトナム 等 での 加 工 にも 取 り 組 んでい るが ベトナムはインフラ 面 でまだまだ 不 安 要 素 があるとみている また 販 売 先 に 関 しては 東 アジアを 中 心 に 販 路 の 拡 大 を 図 っていくとのことであった 以 上 のように 浜 松 魚 市 においては 他 の 消 費 地 市 場 に 頼 らず 直 接 産 地 から 荷 を 引 くこと で 自 らの 集 荷 力 を 向 上 させて 会 社 の 基 盤 を 強 化 し 仲 卸 業 者 との 連 携 のもとで 国 内 での 販 売 力 強 化 を 図 るとともに 高 齢 化 に 伴 う 消 費 減 退 に 備 えて 海 外 への 積 極 的 な 展 開 を 図 るとしており 国 内 国 外 双 方 に 目 を 向 けたグローバルな 卸 売 業 者 を 目 指 していると 見 受 けられる 4.まとめ 浜 松 魚 類 と 浜 松 魚 市 は 卸 売 場 の 面 積 も 同 じでセリも 同 じ 時 間 に 行 われ しかも 売 上 高 や 扱 う 魚 種 まで 似 通 っているという 点 では 他 の 中 央 卸 売 市 場 と 大 きな 違 いはないように 思 われる しかし その 戦 略 の 実 態 をみると それぞれに 特 徴 がうかがえる この 2 社 の 特 徴 をあえて 一 言 で 現 わすならば 浜 松 魚 類 が 地 元 密 着 型 の 販 売 体 制 を 構 築 しているということ 浜 松 魚 市 は 海 外 への 販 路 を 開 拓 するという 海 外 志 向 型 ということで 整 理 が 可 能 であろう つまり 浜 松 魚 類 においては 築 地 からも 荷 を 引 くことで 集 荷 能 力 の 弱 さを 補 完 し 地 元 量 販 店 の 幅 広 いニ ーズに 応 えられるような 体 制 を 構 築 しているわけである このことは 農 産 物 に 見 られるように 産 地 サイドが 出 荷 先 の 市 場 を 選 別 するような 形 で 卸 売 市 場 が 機 能 や 役 割 が 大 きく 変 化 させてきたことと 同 様 に 水 産 物 においても 農 産 物 ほどで はないが 産 地 においては 拠 点 的 な 市 場 への 出 荷 絞 り 込 みという 形 で 進 んできたことによって 73

中 央 卸 売 市 場 といえども 集 荷 に 格 差 が 生 まれてきたために 集 荷 に 際 してはどうしても 有 力 な 市 場 に 依 存 せざるを 得 ないという 状 況 が 垣 間 見 られるようになってきたことを 示 している も ちろん 浜 松 魚 類 にとっても 同 様 の 状 況 であり しかもそれが 近 隣 の 名 古 屋 市 場 ではなく 築 地 市 場 に 量 的 な 割 合 としてはわずかとしても 依 存 しつつある 現 状 は 中 央 卸 売 市 場 間 におけ る 格 差 の 存 在 が 市 場 流 通 の 新 たな 流 れ すなわち 市 場 間 流 通 を 作 っているように 思 われる こうした 動 きは 古 くは 魚 種 別 に 存 在 していた 建 値 市 場 と 言 われる 市 場 を 経 由 した 流 通 と 同 様 なものなのかもしれないが それが 一 部 魚 種 においては 強 まりつつあり なおかつ 一 極 集 中 型 になっている 状 況 を 考 えると 異 種 のようにも 思 われる 例 えば 高 級 な 生 鮮 まぐろ 等 の 流 通 をみると 明 らかに 築 地 一 極 集 中 型 となっており 一 旦 築 地 市 場 に 上 場 されたのちに 各 市 場 へ 必 要 量 が 細 分 化 されて 出 荷 されていく 形 が 採 られている これは 高 級 品 のマーケットを 有 している 首 都 圏 だからこそ 可 能 な 流 通 形 態 であり 当 然 ながら 出 荷 業 者 においても 築 地 市 場 が 高 値 の 出 る 可 能 性 が 高 いという 思 惑 を 有 しているからに 他 ならない その 一 方 大 阪 市 中 央 卸 売 市 場 でさえ 高 級 品 のまぐろについては 1 尾 すら 販 売 に 苦 しむ 状 況 にあり 実 態 的 には 半 ば 注 文 による 取 扱 となっている このことは 築 地 市 場 を 除 くと 仕 入 れのリスクを 考 え どうしても 築 地 市 場 に 集 荷 を 依 存 した 方 が 無 難 との 見 方 が 強 いからであ る しかも 当 の 築 地 市 場 ですら セリ 残 の 問 題 を 抱 えており その 処 理 についても 課 題 とな っているわけで 両 者 の 思 惑 が 需 要 と 供 給 を 生 んでいるように 思 われる 結 果 として 自 らリ スクをもって 産 地 から 仕 入 れるよりは リスクの 少 ない 割 安 な 商 材 を 仕 入 れることが 可 能 な っているのである こうしたことを 考 えるとき 市 場 流 通 というのが 拠 点 市 場 を 中 心 にした 市 場 間 流 通 という しかもこれまでのそれとは 異 なる 形 の すなわち 品 揃 えの 機 能 として 拠 点 市 場 に 依 存 し 始 めて きているという 形 に 変 えながら 必 死 に 市 場 流 通 体 制 の 維 持 を 図 る 努 力 が 中 央 卸 売 市 場 の 中 で もなされているということではなかろうか また その 一 方 で どうしても 中 央 卸 売 市 場 が 抱 える 商 圏 が 様 々な 要 因 によって しかも 自 ら 解 決 できない 状 況 の 中 で 縮 小 せざるを 得 ないという 現 実 を 考 えていくと 今 後 卸 売 業 者 と いうよりは 会 社 としての 活 路 をどこに 求 めていくかという 点 では 大 きな 問 題 となっている ことは 明 らかである このため 圏 外 の 新 たなマーケットに 活 路 を 求 めようとすることは 当 然 であり それが 結 果 として 海 外 を 志 向 することとなるのもまた 当 然 の 帰 結 であろう もちろん 圏 外 の 新 たなマーケットの 開 拓 は 周 辺 の 中 央 卸 売 市 場 とのシエア 争 いを 誘 発 し 結 果 として 勝 ち 組 の 市 場 と 負 け 組 の 市 場 が 存 在 してくることになるわけで 従 来 のようなマーケットの 棲 み 分 けでは 維 持 できない 状 況 になってきている そして さらに 新 たなマーケットの 拡 大 を 進 めていくとすれば やはり 輸 出 ということに 目 を 向 けざるを 得 ないわけである そこに 新 たな 活 路 を 見 出 しているのが 浜 松 魚 市 ということになる 輸 出 については 韓 国 中 国 の 需 要 の 増 加 が 後 押 しをしており 取 扱 量 が 拡 大 してきている が 見 逃 してはならないこととして 特 に 重 要 なことは 日 本 と 韓 国 との 物 流 の 利 便 性 の 拡 大 で はないかと 考 える 特 に 韓 国 における 釜 山 の 国 際 ハブ 港 化 の 中 で 日 本 がイニシアチブをと るというよりは 韓 国 によって フェリーの 定 期 便 化 便 数 の 拡 大 などがもたらされ 一 挙 に 利 便 性 が 拡 大 し 物 流 が 確 立 したのである しかも それが 国 内 の 流 通 の 経 費 よりも 安 く 実 現 さ れることになったために その 恩 恵 に 預 かる 形 で 輸 出 の 拡 大 が 可 能 となり 日 本 の 水 産 物 の 74

マーケットの 一 つとして 韓 国 などが 新 たに 認 識 されるようになり その 波 に 乗 って 浜 松 魚 市 の 商 事 部 門 も 拡 大 してきたのである いずれにせよこのように 卸 売 業 者 2 社 がそれぞれに 独 自 性 をもって 事 業 を 展 開 してきてい るわけであるが 一 方 では 浜 松 市 中 央 卸 売 市 場 の 機 能 を 考 えるとき 仲 卸 の 機 能 も 評 価 して おく 必 要 がある 今 回 は 直 接 仲 卸 にヒアリングする 機 会 はなかったが 卸 売 業 者 によれば 市 場 外 流 通 が 増 加 していく 中 で 場 外 流 通 の 流 れに 負 けないよう 独 自 にデリバリー 機 能 を 持 つ 必 要 性 に 迫 られ 仲 卸 自 身 がデリバリー 機 能 を 強 化 してきたことによって 現 在 では 商 圏 が 卸 売 市 場 の 想 定 している 範 囲 を 超 え 西 は 愛 知 県 内 から 東 は 静 岡 沼 津 まで 広 く 供 給 できる 体 制 が 構 築 されてきたという しかも 隣 の 静 岡 市 中 央 卸 売 市 場 の 商 圏 をも 奪 う 勢 いにあるといわ れており 仲 卸 業 者 のこうした 取 り 組 みが 今 の 浜 松 市 場 を 支 えているといっても 過 言 ではな いように 思 われる ただ 前 述 のように デリバリー 機 能 の 充 実 により 供 給 圏 のボーダレス 化 が 進 むことは 確 実 に 周 辺 市 場 との 間 で 商 圏 の 奪 い 合 いが 生 じてきているのである 現 時 点 では 勝 ち 組 に 近 い 形 にある 浜 松 市 中 央 卸 売 市 場 ではあるようだが 中 央 卸 売 市 場 とし て 今 後 の 活 路 を 考 える 時 その 先 行 きは 必 ずしも 明 るいものとはいえない やはり 末 端 の 実 需 者 に 対 して 直 接 的 に 新 たなサービスの 付 与 を 考 えない 限 り 価 格 競 争 が 展 開 されてくるわ けで 結 果 として 市 場 流 通 における 低 価 格 競 争 や 生 産 者 の 市 場 不 信 感 の 増 大 に 伴 う 市 場 外 流 通 への 切 り 替 えという 流 れが 加 速 こそすれ とどめることはできないことは 現 状 が 示 すとおり である この 現 状 認 識 を 踏 まえると 多 くの 市 場 と 同 様 に 残 念 ながら 浜 松 市 中 央 卸 売 市 場 が 実 需 者 に 与 えられる サービス とは 何 か 明 確 に 位 置 づけられていなことも 事 実 である ただ 浜 松 魚 類 のように 品 揃 え という 形 でのサービスの 付 与 や 仲 卸 業 者 が 行 っているデリバリー 機 能 の 充 実 は サービスとして 評 価 はできるものの かといって 依 然 として 実 需 者 の 中 心 をな す 量 販 店 や 外 食 店 においては 更 なるサービスの 付 与 を 貪 欲 に 求 めていることには 変 わりがな い ところで このサービスという 課 題 は 総 論 的 にはリテールサポートといわれるサービスの 範 疇 としてとらえるべきである 今 後 このリテールサポートというサービスの 展 開 をどのよ うにしていくのか 市 場 の 抱 える 共 通 の 課 題 であり 少 なくとも 現 状 では 十 分 なサービスが 行 き 届 いているとはいえない 状 況 であるといっても 過 言 ではない したがって 国 内 の 流 通 を 考 えるに 際 しては 卸 売 市 場 で 提 供 できるリテールサポートサービスの 本 質 を 見 極 め 実 施 して いくことが 必 要 になっているのである 以 前 は 品 揃 え 集 荷 分 荷 決 済 機 能 というような ことが 市 場 の 最 大 のサービスであり 機 能 であったわけであるが それだけでは 市 場 を 維 持 し ていくことは 難 しいものとなっている この 点 におけるサービスの 付 与 次 第 で 市 場 流 通 市 場 外 流 通 が 実 需 者 生 産 者 サイドから 評 価 されることになるはずである 75

Ⅵ. 郡 山 市 総 合 地 方 卸 売 市 場 の 現 状 について 東 京 海 洋 大 学 教 授 馬 場 治 1. 市 場 の 沿 革 福 島 県 内 の 各 地 方 都 市 はその 地 理 的 な 配 置 から 大 きく 中 通 り 浜 通 り 会 津 という 呼 び 名 で 区 別 されて 異 なる 文 化 経 済 圏 を 築 いている さらに 商 圏 としては 県 北 ( 福 島 市 を 中 心 ) 県 中 ( 郡 山 市 を 中 心 ) 県 南 ( 白 河 市 を 中 心 ) 相 双 ( 相 馬 市 原 町 市 を 中 心 ) いわき(いわき 市 ) 会 津 ( 会 津 若 松 市 を 中 心 )の 6 地 域 に 分 かれるとされている( 後 掲 地 図 参 照 ) 流 通 圏 も 当 然 この 商 圏 に 対 応 して 形 成 されており 県 内 には 福 島 市 といわき 市 の 2 カ 所 に 中 央 卸 売 市 場 が 開 設 さ れている しかし 上 述 の 6 つの 商 圏 の 人 口 を 見 ると 郡 山 市 を 中 心 とする 県 中 地 域 の 人 口 が 最 も 多 く 後 述 するように 当 初 は 郡 山 市 にも 中 央 卸 売 市 場 の 設 置 が 検 討 された 経 緯 がある いずれにせよ 福 島 県 内 では かつてより 流 通 の 中 心 地 は 福 島 市 であり 県 内 の 各 市 町 村 へは 福 島 市 を 経 由 して 荷 が 回 ってくるという 状 況 で 市 場 流 通 では 福 島 市 が 先 行 して 発 展 した 郡 山 市 には 1970 年 に 郡 山 市 を 開 設 者 とする 地 方 卸 売 市 場 が 開 設 された この 市 場 は 地 方 卸 売 市 場 であるが 当 時 郡 山 市 中 央 市 場 ( 通 称 冨 久 山 市 場 )と 呼 ばれていた その 後 1972 年 に 郡 山 市 地 方 卸 売 市 場 と 改 称 された この 市 場 はその 後 施 設 の 老 朽 化 狭 隘 化 が 進 み また 市 街 地 に 立 地 していたこともあって 周 辺 道 路 の 交 通 渋 滞 を 招 くなどの 問 題 が 発 生 するよ うになった (1) さらに 公 設 の 地 方 卸 売 市 場 開 設 後 も 郡 山 市 内 には 民 営 3 市 場 また 隣 接 する 須 賀 川 市 内 に も 民 営 2 市 場 があるなど 小 規 模 経 営 市 場 が 乱 立 し 施 設 機 能 の 近 代 化 が 遅 れていた その ため 郡 山 市 は 生 鮮 食 料 品 の 集 中 的 効 率 的 な 集 荷 分 荷 を 目 的 として 郡 山 市 内 須 賀 川 市 内 の 卸 売 市 場 を 統 合 整 備 し 新 たな 市 場 を 開 設 することとした (1) 新 市 場 開 設 までの 経 緯 を 76

年 表 で 示 すと 以 下 のとおりである 1991 年 : 郡 山 市 市 場 整 備 促 進 検 討 委 員 会 を 設 置 し 新 市 場 の 検 討 を 開 始 した 1992 年 : 郡 山 市 内 9 卸 売 業 者 が 郡 山 市 新 総 合 卸 売 市 場 整 備 促 進 協 議 会 を 設 立 した 1993 年 : 上 記 協 議 会 を 解 消 し 新 たに 須 賀 川 市 内 5 卸 売 業 者 を 加 えた 県 中 地 区 新 総 合 卸 売 市 場 整 備 促 進 協 議 会 を 設 立 した 1996 年 : 第 6 次 福 島 県 卸 売 市 場 整 備 計 画 に 新 市 場 を 地 域 拠 点 市 場 として 整 備 することが 組 み 込 まれた 2001 年 : 郡 山 市 総 合 地 方 卸 売 市 場 条 例 が 可 決 された 2002 年 : 新 市 場 ( 郡 山 市 総 合 地 方 卸 売 市 場 )が 開 場 された 開 設 に 当 たっては 中 央 卸 売 市 場 として 設 置 することも 検 討 されたが より 厳 しい 制 約 を 科 せられることから 制 約 が 相 対 的 に 緩 やかな 地 方 卸 売 市 場 として 設 置 することとなったと 言 わ れる 2. 市 場 の 概 要 当 卸 売 市 場 の 概 要 は 以 下 のとおりである 開 設 者 : 郡 山 市 部 門 : 青 果 部 水 産 物 部 花 き 部 施 設 規 模 : 敷 地 面 積 (196,442 m2) 延 べ 床 面 積 (41,312 m2 うち 水 産 棟 18,794 m2 青 果 棟 14,048 m2) 全 国 公 設 地 方 卸 売 市 場 協 議 会 加 盟 中 で 最 大 の 敷 地 面 積 とされている 卸 売 業 者 : 水 産 2 社 :( 株 ) 郡 山 水 産 ( 株 ) 丸 中 青 果 3 社 :( 株 ) 山 一 中 央 青 果 卸 売 市 場 ( 株 )マルケイ 青 果 市 場 ( 株 ) 郡 山 大 新 青 果 花 き 1 社 : 郡 山 花 き( 株 ) 仲 卸 業 者 : 水 産 6 社 青 果 6 社 花 き 1 社 当 市 場 では 水 産 物 部 門 においては 卸 売 業 者 と 仲 卸 業 者 の 間 には 系 列 関 係 はない 仲 卸 業 者 の 規 模 としては 30~40 億 円 がトップレベルの 業 者 であり 仲 卸 業 者 6 社 中 3 社 がこのレベルとされる 買 受 人 : 水 産 419 名 ( 市 部 342 町 部 54 村 部 19 県 外 4) 青 果 507 名 ( 市 部 413 町 部 68 村 部 24 県 外 2) 花 き 163 名 ( 市 部 129 町 部 25 村 部 6 県 外 3) 関 連 事 業 者 :15 社 開 場 時 間 : 午 前 5 時 ~ 午 後 3 時 せり 開 始 時 刻 : 水 産 ( 午 前 6 時 ) 青 果 ( 午 前 7 時 ) 花 き(9 時 ) 委 託 手 数 料 : 水 産 (5.5%) 青 果 ( 野 菜 8.5% 果 実 7.0%) 花 き(9.5%) 市 場 使 用 料 : 卸 売 業 者 : 当 該 月 の 卸 売 金 額 ( 税 込 み)の 1000 分 の 3 相 当 額 仲 卸 業 者 : 当 該 月 の 販 売 金 額 の 1000 分 の 3 相 当 額 期 限 条 例 による 市 場 使 用 料 の 減 免 措 置 として 開 場 1 年 目 ( 平 成 14 年 ):4 分 の 1 77

2~4 年 目 ( 平 成 15~17 年 ):3 分 の 1 5~9 年 目 ( 平 成 18~22 年 ):2 分 の 1 平 成 23 年 ~: 満 額 施 設 使 用 料 ( 水 産 物 部 ) 卸 売 場 :178 円 /m2 月 仲 卸 売 場 :2,262 円 /m2 月 冷 蔵 庫 :1,257 円 /m2 月 など 決 済 : 精 算 会 社 : 決 済 は 郡 山 市 総 合 地 方 卸 売 市 場 精 算 株 式 会 社 を 通 じて 行 う 事 となっている この 精 算 会 社 は 水 産 と 青 果 の 双 方 の 決 済 を 行 う 会 社 である 決 済 : 月 3 回 (10 日 〆 15 日 払 い 20 日 〆 25 日 払 い 月 末 〆 翌 5 日 払 い) 保 証 金 : 保 証 金 は 精 算 会 社 に 入 れる 各 仲 卸 業 者 の 1 日 平 均 の 買 付 額 ( 年 回 買 付 額 を 開 場 日 数 で 除 した 額 )を 保 証 金 額 とする 精 算 手 数 料 :1000 分 の 2.4 完 納 奨 励 金 :1000 分 の 1.16 出 荷 奨 励 金 はない 決 算 の 例 外 として マグロだけは 翌 日 決 済 となっている 当 市 場 でのマグロの 取 引 は 当 初 はせりであったが 近 年 では 多 くが 相 対 となっている 都 市 部 の 消 費 地 市 場 と 異 な り 地 方 市 場 ではマグロの 上 値 は 期 待 できないことがその 背 景 にあると 考 えられる 開 設 が 新 しいことから 当 初 から 合 理 的 な 市 場 流 通 を 実 現 するために 物 流 面 での 配 慮 がなさ れ 市 場 に 隣 接 して 各 種 の 物 流 関 連 施 設 が 設 けられている 具 体 的 には 量 販 店 向 けの 加 工 や 配 送 を 担 う 施 設 であり ヨークベニマル 郡 山 配 送 センター( 量 販 店 ヨークベニマルのチルド 水 産 品 の 配 送 センター) あさかのフレッシュ( 株 )( 市 場 内 の 青 果 の 卸 売 会 社 である( 株 ) 郡 山 大 新 青 果 の 子 会 社 で 青 果 のカットや 分 荷 業 務 を 担 う) ( 株 )フレッシュシステム 郡 山 センター( 主 にヨークベニマルを 相 手 とするカットフルーツ 加 工 を 担 う)などが 市 場 に 隣 接 して 建 てられて いる 当 市 場 の 流 通 圏 は 22 市 町 村 65 万 2 千 人 に 及 ぶとされ その 内 訳 は 以 下 のとおりである 県 中 部 :12( 郡 山 市 須 賀 川 市 田 村 市 岩 瀬 郡 田 村 郡 石 川 郡 ) 県 西 部 :1( 猪 苗 代 町 ) 県 南 部 :8( 白 河 市 西 郷 村 を 除 く 西 白 河 郡 東 白 川 郡 ) 県 北 部 :1( 本 宮 市 ) 3. 市 場 取 扱 動 向 郡 山 市 総 合 地 方 卸 売 市 場 の 水 産 物 取 扱 高 推 移 を 図 1( 数 量 ) 図 2( 金 額 )に 示 す 平 成 14 年 以 降 についてその 推 移 を 示 してあるが 図 から 分 かるとおり 数 量 の 減 少 傾 向 は 顕 著 であり この 5 年 間 に 水 産 物 総 計 で 4 万 8 千 トンから 3 万 トンへと 実 に 40% 弱 の 減 少 を 示 している 他 方 金 額 では 数 量 ほどの 落 ち 込 みは 見 られず この 5 年 間 では 約 10% 程 度 の 減 少 に 止 まっている これを 取 扱 品 目 別 に 見 てみると 数 量 では 鮮 魚 で 9%の 減 少 冷 凍 魚 では 26%の 減 少 塩 干 78

加 工 品 では 49%の 減 少 となっており 金 額 では 鮮 魚 で 6%の 減 少 冷 凍 魚 で 15%の 減 少 塩 干 加 工 品 で 15%の 減 少 となっている 当 市 場 では 塩 干 加 工 品 の 取 扱 比 率 が 他 の 地 域 の 多 くの 卸 売 市 場 に 比 して 異 例 に 高 いという 特 徴 があり 平 成 14 年 時 点 の 品 目 別 取 扱 比 率 は 数 量 では 鮮 魚 : 冷 凍 魚 : 塩 干 加 工 品 =24:13: 63 金 額 では 鮮 魚 : 冷 凍 魚 : 塩 干 加 工 品 =39:18:43 であった この 構 成 比 率 が 塩 干 加 工 品 の 取 扱 減 少 に 伴 い こ の 5 年 間 に 大 きく 変 化 し 平 成 19 年 に は 数 量 で 鮮 魚 : 冷 凍 魚 : 塩 干 加 工 品 =34:15:51 金 額 で 鮮 魚 : 冷 凍 魚 : 塩 干 加 工 品 =41:17:42 へと 変 化 して いる すなわち 従 来 高 い 比 率 を 占 めて 数 量 (トン) 50,000 塩 干 加 工 品 冷 凍 魚 40,000 鮮 魚 30,000 20,000 10,000 0 平 成 14 15 16 17 18 19 図 1 市 場 取 扱 量 の 推 移 いた 塩 干 加 工 品 の 取 扱 量 が 大 幅 に 減 30,000 塩 干 加 工 品 少 した 結 果 相 対 的 に 鮮 魚 の 取 扱 比 率 が 高 まってきたのである( 図 3 図 4) 実 際 には 鮮 魚 の 取 扱 高 は 数 量 金 額 と もに 比 較 的 安 定 して 推 移 している この 地 域 での 取 扱 いが 大 きい 塩 干 金 額 ( 百 万 円 ) 20,000 10,000 冷 凍 魚 鮮 魚 加 工 品 の 中 でも 特 に 特 徴 的 なのは 鮭 鱒 類 魚 卵 (スジコ タラコ)の 扱 いの 多 さである 0 平 成 14 15 16 17 18 19 図 2 市 場 取 扱 額 の 推 移 また 当 市 場 で 塩 干 加 工 品 の 取 扱 いの 多 さの 背 景 として 入 場 している 仲 卸 業 者 の 営 業 上 の 特 性 があると 言 われる 当 市 場 で 営 業 する 仲 卸 業 者 の 中 には 総 合 食 品 問 屋 的 機 能 を 持 った 仲 卸 が 多 く そこへの 食 品 供 給 を 市 場 が 担 っているという 事 情 がある この ような 事 情 の 中 でビン 類 缶 詰 類 をは じめとする 食 料 品 全 般 にわたる 多 様 な 品 揃 え 要 求 に 市 場 として 応 えてお り これらの 商 品 が 加 工 品 として 分 類 されているのである しかし 量 販 店 を 中 心 とする 小 売 店 が これらの 加 工 品 を 卸 売 市 場 経 由 ではなく 場 外 問 屋 等 から 仕 入 れるようになり 市 場 での 取 扱 量 が 大 幅 に 減 少 してきた 加 工 品 や 冷 凍 品 の 市 場 経 由 率 の 低 下 は 近 年 多 くの 市 場 で 指 摘 される 現 象 である 79

が 特 に 加 工 品 の 取 扱 量 がもともときわめて 大 きかった 当 市 場 では その 影 響 が 顕 著 に 見 て 取 れるということであろう 4. 卸 売 業 者 の 概 況 当 市 場 に 入 場 している 卸 売 業 者 2 社 について その 概 況 を 見 てみる 4-1. 株 式 会 社 郡 山 水 産 (1) 会 社 の 沿 革 同 社 の 沿 革 を 同 社 HP を 参 考 に 年 表 で 示 すと 以 下 のとおりである 1973 年 : 郡 山 市 地 方 卸 売 市 場 ( 旧 冨 久 山 市 場 ) 内 の 卸 売 業 者 5 社 <( 株 ) 郡 山 魚 市 場 ( 有 ) 郡 山 丸 魚 島 魚 市 場 ( 株 ) ( 有 ) 吉 萬 魚 市 場 ( 有 ) 吉 安 魚 市 場 >が 合 併 して 当 社 を 設 立 1978 年 : 売 上 高 114 億 円 を 達 成 1980 年 : 社 内 の 荷 役 配 送 事 業 部 門 を 分 離 独 立 させ ( 株 ) 郡 山 市 市 場 配 送 センターを 設 立 1984 年 :コンビニエンスストア 等 への 本 格 的 対 応 のために 社 内 に 販 売 促 進 部 を 設 置 した 1992 年 : 売 上 高 210 億 円 を 達 成 1995 年 : 市 からの 要 請 により 二 本 松 支 店 を 開 設 した この 支 店 は 2008 年 に 閉 鎖 された 1996 年 : 丸 公 食 品 ( 株 )( 福 島 市 中 央 卸 売 市 場 の 卸 売 業 者 である( 株 ) 福 島 丸 公 の 子 会 社 )と 共 同 出 資 により ( 株 )エフ エフを 設 立 した この 会 社 は 主 に 量 販 店 対 応 の 市 販 用 冷 凍 食 品 販 売 部 門 を 分 離 独 立 させたものである 1997 年 : 丸 水 白 河 魚 市 場 ( 株 )と 資 本 業 務 提 携 を 結 ぶ 福 島 市 中 央 卸 売 市 場 の 卸 売 業 者 である 福 島 魚 市 場 ( 株 )と 業 務 提 携 を 結 ぶ 1998 年 : 東 北 水 産 流 通 システム 事 業 協 同 組 合 ( 通 称 東 北 8 社 会 )の 設 立 に 参 加 する 2002 年 : 食 品 部 門 強 化 を 目 的 として ( 有 ) 水 産 フーズを 設 立 する 2003 年 : 福 島 市 中 央 卸 売 市 場 の 福 島 魚 市 場 ( 株 )から 営 業 権 譲 渡 を 受 け 福 島 魚 類 ( 株 )を 設 立 福 島 魚 類 ( 株 )は 2005 年 10 月 に 廃 業 している 以 上 のように 同 社 は 市 場 内 流 通 における 業 務 の 一 層 の 効 率 化 と 勢 力 を 拡 大 する 量 販 店 コンビニエンスストア 等 への 対 応 を 強 化 するために 事 業 部 門 の 一 部 を 分 離 独 立 させて それ らの 部 門 の 事 業 活 動 の 活 性 化 を 図 ってきた (2) 会 社 概 要 会 社 概 要 は 同 社 HP によれば 以 下 のとおりである 資 本 金 は 8,400 万 円 年 商 は 180 億 円 ( 平 成 21 年 3 月 期 ) 役 員 は 10 名 ( 監 査 役 2 名 を 含 む) 従 業 員 は 82 名 ( 平 成 21 年 3 月 現 在 )である 事 業 内 容 は 1 生 鮮 魚 介 類 並 びに 加 工 水 産 物 及 び その 他 の 食 料 品 の 卸 売 業 2 損 害 保 険 代 理 業 3 生 命 保 険 代 理 業 4コンピューターのソフト 開 発 と 販 売 並 びに 情 報 計 算 処 理 の 受 託 業 務 及 びコンピューター 機 器 類 の 販 売 賃 貸 仲 介 である 関 連 会 社 として ( 株 ) 郡 山 市 場 配 送 センター 冨 久 山 市 場 土 地 ( 株 ) ( 株 )エフ エフ 郡 山 市 総 合 地 方 卸 売 市 場 精 算 ( 株 ) ( 有 ) 水 産 フーズ ( 有 ) 市 場 食 堂 が 挙 げられている 主 要 な 販 売 先 としては 仲 卸 5 社 市 場 買 受 人 ヨークベニマル ライフフーズ リオンドール イトーヨーカドー イオン 柴 田 鮮 魚 が 挙 げられている 80

(3) 事 業 の 概 況 同 社 の 事 業 概 況 について 主 に 聞 き 取 り 調 査 結 果 に 基 づき 記 述 する 郡 山 市 総 合 地 方 卸 売 市 場 全 体 としての 水 産 物 取 扱 高 は 約 200 億 円 であるが そのうち( 株 ) 郡 山 水 産 の 取 扱 高 シェアは 80~85% 程 度 と 言 われる 当 市 場 に 入 場 する 2 社 の 卸 売 業 者 のうちの 一 方 の( 株 ) 丸 中 は 元 来 会 津 に 本 拠 を 置 く 会 社 であり 旧 冨 久 山 市 場 時 代 においても 郡 山 水 産 : 丸 中 のシェアは 70:30 程 度 と 郡 山 水 産 のシェアが 大 きい 点 では 変 化 はない 取 扱 品 目 同 社 の 品 目 別 取 扱 ( 金 額 ) 構 成 は およそ 生 鮮 : 冷 凍 : 加 工 =40:30:30 となっている(2008 年 ) 前 述 の 市 場 全 体 の 品 目 別 取 扱 高 構 成 と 数 値 が 異 なるのは 品 目 分 類 の 違 いであり 同 社 の 分 類 では 塩 干 品 も 冷 凍 品 に 含 まれているとのことである 地 方 に 立 地 する 市 場 故 に 取 扱 品 目 の 幅 が 広 く 取 扱 加 工 品 には 油 や 砂 糖 なども 含 まれている 同 社 あるいは 当 市 場 全 体 の 傾 向 ともいえるが 取 扱 われる 鮮 魚 の 種 類 に 顕 著 な 特 徴 が 見 ら れる 市 場 で 扱 われる 鮮 魚 の 中 では 生 カツオの 割 合 がきわめて 高 く( 約 30%) これに 次 ぐのが 生 マグロ( 約 20%)であり 生 カツオと 生 マグロを 合 わせて 鮮 魚 全 体 の 50~60%を 占 めると 言 わ れる 特 に 生 カツオに 対 する 需 要 は 極 めて 高 く 春 先 から 秋 までほぼ 周 年 にわたって 需 要 が あるとされる 生 カツオの 中 でもまき 網 物 が 好 まれる 一 方 生 マグロは 空 輸 メバチが 中 心 で あり グアム フィリピン インドネシア 沖 縄 等 からの 輸 入 物 移 入 物 が 多 く 扱 われている 最 近 では 輸 入 物 に 加 えて 銚 子 に 水 揚 げされる 近 海 物 も 意 識 的 に 集 荷 するようになってきた という 同 じ 福 島 県 内 でも 郡 山 ではメバチの 人 気 が 高 いのに 対 し 福 島 市 ではメバチよりも キハダが 好 まれるという 地 域 特 性 がある カツオ マグロ 以 外 の 鮮 魚 では 養 殖 物 の 扱 いが 多 い また 煮 付 商 材 (ナメタガレイ アサバガレイ ギンダラ キガレイ など)への 需 要 が 高 く 全 体 として 安 価 でボリューム 感 のある 商 材 が 好 まれる 傾 向 がある この 点 は 福 島 や 仙 台 とも 異 なり 両 地 域 では 惣 菜 としての 魚 には 一 尾 付 けを 好 むために 小 さなカレイ 類 でも 値 が 出 や すいのに 対 し 郡 山 では 小 さなカレイ 類 は 売 れにくいという 集 荷 販 売 集 荷 形 態 はほとんど 買 付 であり 委 託 はごく 少 量 に 限 られる 販 売 先 としては 仲 卸 : 量 販 店 他 小 売 店 : 総 菜 店 =30:65:5 の 比 率 である 卸 から 仲 卸 を 介 さずに 量 販 店 に 直 接 販 売 する 割 合 は 同 社 の 売 り 上 げのおよそ 45%に 達 し 仲 卸 経 由 の 販 売 を 含 めると 量 販 店 への 販 売 は 60% 近 い 仲 卸 経 由 での 量 販 店 への 販 売 は 減 少 傾 向 にあり 代 わって 卸 から 量 販 店 への 直 接 販 売 が 拡 大 傾 向 にある この 傾 向 は 多 くの 市 場 に 共 通 する 傾 向 である ただ 最 近 では 量 販 店 への 販 売 も 鮮 魚 に 関 しては 小 口 化 する 傾 向 にあり 分 荷 業 務 という 点 では 卸 よりも 小 回 りの 利 く 仲 卸 に 優 位 性 があることから 鮮 魚 に 関 しては 仲 卸 経 由 で の 販 売 を 進 めようとしている 他 方 取 扱 量 の 多 い 養 殖 物 冷 凍 加 工 品 に 関 しては 量 販 店 へ の 直 接 販 売 を 拡 大 する 意 向 である 市 場 内 での 取 引 に 関 しては せり 売 りは 取 扱 額 の 10% 以 下 に 過 ぎない しかし 市 場 として の 集 客 力 強 化 を 考 えると せり 売 りを 増 やす 必 要 があると 考 えている せり 売 りを 増 やすこと 81

で 品 定 め 産 地 比 較 などの 妙 味 に 魅 力 を 感 じてもらい 市 場 に 行 けば 何 か 面 白 い 物 があるの ではないかという 期 待 感 を 高 めることが 市 場 の 活 性 化 につながるとの 指 摘 である (4) 検 討 課 題 同 社 は 今 後 の 市 場 流 通 業 務 に 関 して 市 場 内 での 役 割 分 担 を 見 直 す 方 向 を 検 討 したいとし ている 具 体 的 には 仲 卸 業 者 の 全 般 的 な 弱 体 化 傾 向 が 進 む 中 で 販 売 に 関 わる 業 務 をできる 限 り 自 社 内 で 完 結 させるという 方 向 である 配 送 センターは 既 に 分 社 化 してあり さらに よ りきめ 細 かな 分 荷 作 業 やパック 作 業 にも 同 社 内 で 対 応 するという 方 向 である また 塩 干 加 工 品 に 関 しては 既 に 社 内 に 製 造 部 を 設 けており 将 来 的 にはこれを 拡 大 する 方 向 も 検 討 対 象 に 含 まれる これらの 方 向 性 はいずれも 取 扱 いが 拡 大 傾 向 にある 量 販 店 へのリテールサポートの 拡 充 を 目 指 すものと 言 える 4-2. 株 式 会 社 丸 中 (1) 会 社 の 沿 革 同 社 HP に 基 づいて 会 社 の 沿 革 を 記 す 1925( 大 正 14) 年 : 主 に 塩 干 品 を 中 心 として 取 り 扱 う 竹 俣 商 店 を 創 業 1948 年 : 水 産 物 荷 受 機 関 として( 株 ) 会 津 中 央 市 場 を 設 立 1954 年 : 郡 山 支 社 を 開 設 1961 年 :( 株 ) 会 津 丸 中 に 商 号 を 変 更 1968 年 :いわき 支 店 開 設 1973 年 : 郡 山 地 方 公 設 卸 売 市 場 に 卸 売 業 者 として 入 場 1975 年 : 会 津 若 松 市 公 設 卸 売 市 場 に 卸 売 業 者 として 入 場 1991 年 : 商 号 を 現 在 の( 株 ) 丸 中 に 変 更 し 卸 売 業 者 としての 支 社 支 店 を 郡 山 丸 中 会 津 丸 中 いわき 丸 中 に 名 称 変 更 2002 年 : 郡 山 市 総 合 地 方 卸 売 市 場 に 入 場 以 上 のように 同 社 は 会 津 を 本 拠 地 として その 後 郡 山 市 いわき 市 の 各 卸 売 市 場 の 卸 売 業 者 として 入 場 し 卸 売 業 者 としての 業 務 を 拡 張 してきた (2) 会 社 概 要 同 社 の 概 要 を 同 社 HP を 参 考 に 記 す 事 業 の 操 業 は 前 述 の 年 表 に 示 してあるとおり 大 正 14 年 であるが 現 在 の 会 社 の 直 接 の 前 身 に 当 たる 会 社 (( 株 ) 会 津 中 央 市 場 )の 設 立 は 1948 年 ( 昭 和 23 年 )である 資 本 金 は 8,000 万 円 従 業 員 数 は 117 名 年 商 は 110 億 円 と HP には 紹 介 されている HP 上 はこれらの 情 報 は 2002 年 8 月 時 点 のものと 読 み 取 れる 実 際 の 聞 き 取 り 調 査 では 現 在 の 従 業 員 数 は 約 70 名 で あり 郡 山 と 会 津 でほぼ 半 々とのことである 市 場 での 取 扱 額 も 会 津 と 郡 山 でほぼ 半 々である 事 業 内 容 としては 1 水 産 物 ならびにその 加 工 品 冷 凍 食 品 農 畜 産 加 工 品 食 油 及 び 醤 油 類 瓶 缶 類 調 味 料 漬 物 佃 煮 その 他 食 料 品 全 般 の 販 売 2 製 氷 販 売 3 冷 蔵 保 管 業 と なっている 82

(3) 事 業 の 概 況 同 社 の 事 業 概 況 について 主 に 聞 き 取 り 調 査 結 果 に 基 づき 記 述 する 取 扱 品 目 取 扱 鮮 魚 としては 生 カツオ 生 マグロが 大 きな 割 合 を 占 めている カツオは 一 本 釣 まき 網 物 のいずれも 扱 う 生 マグロはメバチが 中 心 で 空 輸 マグロ( 沖 縄 からの 空 輸 も 含 む)が 約 8 割 を 占 め 最 近 では 内 地 物 として 銚 子 水 揚 のマグロも 扱 う かつては 当 市 場 からいわき 市 場 へのマグロの 転 送 もあったが 今 日 ではほとんど 見 られない 郡 山 と 会 津 で 取 扱 品 目 を 比 較 すると 全 般 的 な 傾 向 として 鮮 魚 は 郡 山 で 多 く 塩 干 は 会 津 で 多 いという 傾 向 がみえる 集 荷 鮮 魚 については カツオ マグロが 委 託 で 他 はほとんど 買 付 集 荷 である 他 方 冷 凍 塩 干 品 は 買 付 集 荷 である 同 社 は 会 津 と 郡 山 の 両 市 場 に 卸 業 者 として 入 場 していることから 集 荷 品 の 中 でもカツオなどは 一 括 して 仕 入 れ これを 会 津 と 郡 山 の 両 市 場 に 分 けるという 対 応 をとることもある 販 売 予 約 相 対 取 引 が 多 く せりはごく 一 部 に 限 られる マグロは 当 初 はせりを 行 っていたが 今 日 では 相 対 商 品 となっている 冷 凍 塩 干 品 は かつては 大 手 量 販 店 が 帳 合 いで 入 っていた が 近 年 ではこの 帳 合 いも 次 第 になくなりつつある ローカルスーパーへの 販 売 は 仲 卸 が 分 荷 作 業 を 担 うという 形 式 での 仲 卸 経 由 が 多 い こ れに 対 して 全 国 チェーンの 大 手 量 販 店 に 対 する 販 売 は 卸 からの 直 接 販 売 が 多 い 卸 からの 直 接 販 売 では 多 くの 場 合 量 販 店 の 配 送 センター 納 めのかたちをとっている 量 販 店 の 配 送 セ ンターへの 納 めに 関 しては 量 販 店 に 対 してセンターフィーを 納 める 必 要 があるが その 代 わ り 決 済 は 早 い( 通 常 1 週 間 程 度 )と 言 われる これに 対 して ローカルスーパーへの 販 売 では 決 済 サイトは 通 常 1 ヶ 月 以 上 と 長 く 仲 卸 経 由 でローカルスーパに 販 売 される 場 合 仲 卸 側 に とっては 運 転 資 金 回 転 の 面 からは 負 担 が 大 きいことになる (4) 検 討 課 題 近 隣 に 仙 台 福 島 いわきなどの 市 場 があり これらの 市 場 との 関 係 を 考 えると 他 市 場 と の 連 携 は 今 後 の 検 討 課 題 として 重 要 になるだろうとの 認 識 がある 事 実 かつて 仙 台 市 場 の 卸 売 業 者 である 仙 台 水 産 との 連 携 を 検 討 した 経 緯 もあるという 郡 山 会 津 で 仙 台 水 産 ができな い 部 分 について これを 担 うという 役 割 分 担 が 検 討 課 題 となっていた 5. 郡 山 市 場 の 評 価 と 今 後 の 課 題 福 島 県 は 経 済 圏 あるいは 商 圏 としても 多 極 分 散 型 と 言 われ 県 内 の 水 産 物 流 通 の 中 核 的 存 在 となる 市 場 を どこか 一 つに 特 定 しがたい 条 件 にある その 結 果 福 島 市 いわき 市 郡 山 市 会 津 若 松 市 などにそれぞれの 地 域 の 核 となる 市 場 が 発 達 してきた そのような 中 でも 従 来 は 福 島 県 の 県 庁 所 在 地 であり かつ 大 都 市 である 仙 台 に 近 いという 地 理 的 条 件 も 加 わって 仙 台 83

市 場 との 関 係 を 強 く 保 ちながら 福 島 市 の 市 場 が 県 内 の 水 産 物 流 通 の 起 点 として 機 能 してきた しかし そもそも 文 化 もそれぞれ 異 なり 水 産 物 に 対 する 嗜 好 も 異 なることから 福 島 市 場 に 収 斂 することなく 県 内 の 各 市 場 は 独 自 の 展 開 を 見 せてきた このように 発 展 してきた 各 市 場 であるが 今 日 の 量 販 店 とくに 大 手 量 販 店 の 台 頭 に 対 しては 十 分 な 量 と 品 揃 えという 面 で は 不 十 分 であった その 結 果 大 手 量 販 店 はその 仕 入 れを 隣 県 の 仙 台 市 場 に 依 存 するという 状 況 にあった このような 状 況 に 対 して 郡 山 市 場 の 卸 売 業 者 は 仙 台 市 場 の 卸 売 業 者 と 連 携 をと りながら 仙 台 市 場 の 卸 売 業 者 との 役 割 分 担 の 下 に 量 販 店 への 販 売 を 強 化 するという 対 応 をと ってきた 多 くの 地 域 においてと 同 様 に 郡 山 においても 市 場 流 通 を 通 じた 量 販 店 への 水 産 物 販 売 に 関 しては ローカルスーパーに 対 しては 卸 売 業 者 から 仲 卸 業 者 を 経 由 しての 販 売 が 主 流 であり 他 方 大 手 量 販 店 に 対 しては 卸 売 業 者 から 直 接 量 販 店 への 販 売 が 中 心 となっている ローカルス ーパー 相 手 の 販 売 量 であれば その 分 荷 作 業 は 仲 卸 業 者 に 任 せた 方 が 作 業 効 率 が 高 い 一 方 大 手 量 販 店 相 手 では やはりその 物 量 からして 卸 売 業 者 が 直 接 納 品 までを 担 った 方 が 合 理 的 と して 量 販 店 の 配 送 センターへの 納 品 という 体 制 をとっている このような 動 きは 多 くの 卸 売 市 場 で 見 られる 傾 向 であるが とくに 近 隣 に 大 規 模 市 場 ( 郡 山 では 仙 台 市 場 )が 存 在 するよう な 地 域 では その 大 規 模 市 場 の 強 力 な 機 能 に 対 抗 して 地 方 の 卸 売 業 者 が 大 手 量 販 店 を 直 接 の 顧 客 として 確 保 することは 容 易 ではないであろう そこで 郡 山 でも 仙 台 市 場 の 卸 売 業 者 と 連 携 をとりながらの 対 応 となってきたものと 考 えられる とはいえ 量 販 店 店 舗 の 配 置 と 市 場 と の 地 理 的 関 係 によっては 仙 台 市 場 ではなく 郡 山 市 場 からの 仕 入 れが 有 効 な 場 合 も 多 く その 点 からは 郡 山 市 場 の 卸 売 業 者 にとっても 独 自 の 企 画 力 や 物 流 システムの 構 築 によるリテール サポートの 強 化 が 求 められており それに 向 けた 取 り 組 みが 事 実 行 われている このように 大 規 模 市 場 とその 周 辺 市 場 との 関 係 は 大 手 量 販 店 の 台 頭 に 伴 い 変 容 を 遂 げつ つあり 大 規 模 市 場 の 集 荷 力 と 市 場 内 の 業 者 のリテールサポート 力 の 強 化 の 下 で 周 辺 市 場 のあ り 方 が 大 きく 問 われることになってきた しかし それぞれに 異 なる 消 費 特 性 を 持 つ 地 域 に 密 着 した 販 売 力 という 面 では 必 ずしも 全 国 チェーンの 大 手 量 販 店 に 優 位 性 があるわけではなく むしろ 地 域 密 着 型 のローカルスーパーの 中 に 独 自 の 企 画 販 売 力 を 発 揮 している 例 が 見 られる 周 辺 市 場 の 卸 売 業 者 仲 卸 業 者 もこのような 小 売 業 者 との 関 係 を 強 化 しながら 相 互 の 事 業 の 発 展 を 目 指 すという 取 り 組 みが 求 められている ( 注 ) (1) 郡 山 市 HP( 農 林 部 総 合 地 方 卸 売 市 場 管 理 事 務 所 )より 84

Ⅶ. 水 戸 市 公 設 地 方 卸 売 市 場 の 現 状 と 課 題 独 立 行 政 法 人 水 産 大 学 校 講 師 甫 喜 本 憲 1. 水 戸 市 公 設 地 方 卸 売 市 場 の 概 要 < 歴 史 的 経 緯 > 水 戸 市 公 設 地 方 卸 売 市 場 は 人 口 26 万 4 千 人 を 抱 える 水 戸 市 の 台 所 である 1961 年 に 卸 売 市 場 の 策 定 計 画 方 針 が 採 択 されてから 1971 年 に 市 場 条 例 の 制 定 と 施 設 竣 工 がおこなわれ 翌 1972 年 から 青 果 と 水 産 物 の2 部 門 で 取 引 が 開 始 した その 後 1985 年 に 花 き 部 門 が 加 わり 現 在 3 部 門 体 制 で 市 場 は 運 営 されている 水 戸 市 における 水 産 物 流 通 の 特 徴 として 後 述 するように 市 場 の 卸 売 業 者 が それ 以 前 か ら 末 端 小 売 店 や 料 理 店 に 直 接 販 売 する 仲 卸 業 務 の 中 軸 を 担 ってきたという 歴 史 的 経 緯 がある そのため 1972 年 に 制 定 された 市 場 条 例 の 中 では 仲 卸 制 度 は 盛 り 込 まれなかった 地 元 で 小 規 模 な 仲 卸 業 を 営 む 業 者 は 市 場 での 売 買 参 加 権 を 取 得 してセリ 入 札 に 参 加 し 水 戸 食 品 問 屋 街 という 協 同 組 合 組 織 をつくって 卸 売 業 者 に 対 抗 していた 当 時 これらの 仲 卸 業 以 外 の 業 者 もふくめ 売 買 参 加 者 は 530 業 者 ほどあったと 言 われている その 後 1989 年 に 青 果 水 産 両 部 門 で 仲 卸 業 者 制 に 移 行 した これにより 水 戸 食 品 問 屋 街 として 市 場 敷 地 内 で 仲 卸 業 を 行 う 業 者 が 仲 卸 業 者 として 登 録 される しかし 同 時 に 買 参 権 取 得 のための 要 領 の 中 で 年 間 300 万 円 以 上 の 販 売 金 額 を 持 つ 業 者 および 年 間 買 出 日 数 が 30 日 以 上 の 業 者 が 取 得 できるようになったことから 地 元 の 小 規 模 な 小 売 業 料 理 店 量 販 店 もみな 買 参 権 を 取 得 し 独 自 の 調 達 ができるようになったのである < 入 場 業 者 と 市 場 業 務 の 概 要 > 2007 年 時 点 での 市 場 入 場 業 者 について 確 認 する 卸 売 業 者 は 茨 城 水 産 ( 株 ) 常 洋 水 産 ( 株 ) 岡 春 ( 株 )の 三 社 がある 資 本 金 は 茨 城 水 産 が 4800 万 円 常 洋 水 産 が 2 億 円 岡 春 が 5000 万 円 であるが 水 戸 市 場 での 卸 売 金 額 でみると 茨 城 水 産 が 190 億 円 常 洋 水 産 が 190 億 円 と 同 規 模 で 岡 春 が 約 半 分 の 90 億 円 である 3 社 とも 大 手 水 産 会 社 との 資 本 関 係 はない 茨 城 水 産 は 塩 干 もの 常 洋 水 産 は 生 鮮 もの 岡 春 商 店 はマグロの 取 扱 に 強 みがあると 言 われている 仲 卸 業 者 として 登 録 されるのは 先 述 した 水 産 食 品 問 屋 街 に 所 属 し 市 場 内 で 仲 卸 業 を 営 む 業 者 のことであり 鮮 魚 冷 凍 取 扱 が 13 社 塩 干 海 産 物 取 扱 が 8 社 ある 買 受 人 は 買 参 権 を 取 得 した 小 売 業 者 のことであり 水 産 部 門 では 284 社 が 登 録 されている うち 県 内 業 者 が 275 社 あり 県 外 では 千 葉 5 栃 木 3 福 島 1 となっている 大 手 量 販 店 と 結 びついた 買 受 業 者 もこの 中 に 含 まれる 登 録 は 3 年 に 一 度 更 新 されることになっているが 2008 年 4 月 から 12 月 までの 間 に 日 立 市 に 新 規 出 店 した 魚 専 門 店 や 静 岡 のショッヒ ンク センターなど 4 件 が 新 規 に 買 参 権 を 取 得 し 一 方 廃 業 により 承 認 を 取 消 した 業 者 が 10 件 ある その 他 仲 卸 業 者 や 関 連 事 業 者 から 購 入 する 地 元 の 小 売 店 旅 館 飲 食 店 等 が 買 出 人 と して 約 820 社 登 録 されている 開 場 日 数 は 年 間 273 日 であり 2005 年 から 毎 週 土 曜 日 に 市 民 感 謝 デー を 設 け 一 般 市 民 に 解 放 している 市 場 のセリ 開 始 時 間 は 午 前 6 時 であり 取 引 終 了 後 量 販 店 での 当 日 売 りにあ 85

わせ 発 送 される 市 場 での 取 引 形 態 は 鮮 魚 は 基 本 的 に 全 量 セリにかけられ 6 時 開 始 のセリに 間 に 合 わない 場 合 のみ 相 対 取 引 される 一 方 冷 凍 塩 干 加 工 品 は 全 量 相 対 で 取 引 される これを 地 元 では 水 戸 方 式 と 呼 んでいる 平 地 が 多 く 人 口 集 積 率 が 比 較 的 低 く 住 民 の 自 動 車 保 有 率 が 高 い 茨 城 県 では 郊 外 立 地 型 のSMが 出 店 しやすい 土 壌 があり 1980 年 代 から 地 元 外 の 大 手 スーパーの 進 出 が 見 られた そ の 後 地 元 小 売 との 競 合 から 淘 汰 と 合 併 吸 収 を 経 て 現 在 は 大 手 量 販 店 が 中 心 になった 小 売 業 の 構 造 になっている 水 戸 市 場 での 水 産 物 取 引 のうち 量 販 店 向 けは 全 体 の 75~80%を 占 める < 市 場 の 設 備 投 資 > 卸 売 業 者 の( 仲 卸 業 者 に 対 する) 力 の 強 さと 量 販 店 の 進 出 度 合 の 早 さから 水 戸 市 場 は 全 国 的 にも 早 い 時 期 から 量 販 店 に 対 応 した 市 場 設 備 の 拡 充 を 図 ってきた 1991 年 に 水 産 物 低 温 売 場 を 整 備 したのに 続 き 1999 年 から 2001 年 に 市 場 敷 地 内 に 水 産 低 温 買 荷 保 管 積 込 所 を 竣 工 した( 図 1) 面 積 2760m 2 ドックシェルター 方 式 による 搬 出 口 を 30 箇 所 設 け 低 温 管 理 され た 積 み 込 み 所 で 仕 分 けし 量 販 店 への 搬 出 を 容 易 にする 条 件 を 整 えた 総 事 業 費 は 約 7 億 円 で 補 助 事 業 を 導 入 しながら 開 設 者 ( 茨 城 市 )による 負 担 で 進 められた 施 設 利 用 者 に 対 しては 1 平 方 メートル 当 り 月 額 500 円 を 徴 収 している また 2008 年 には 卸 売 業 者 3 者 が 衛 生 管 理 の 充 実 にむけ マグロの 低 温 施 設 低 温 共 同 仕 分 所 ( 面 積 1666m 2 )の 設 立 を 共 同 で 行 っている 1 社 当 たり 4 千 ~5 千 万 円 程 度 を 負 担 し 建 設 したもので 総 費 用 1 億 5 千 万 円 になる 図 1 水 戸 市 場 での 水 産 低 温 買 荷 保 管 積 込 所 86

< 主 要 量 販 店 > 水 戸 市 場 で 水 産 物 を 調 達 する 大 手 量 販 店 について 主 要 なものを 確 認 すると 以 下 の 通 りで ある 1カスミ 茨 城 県 つくば 市 を 本 社 とし 茨 城 県 栃 木 県 群 馬 県 埼 玉 県 千 葉 県 に 店 舗 展 開 する 食 品 雑 貨 のスーパーマーケット 2003 年 にイオン 系 列 下 に 入 っており 2008 年 度 の 営 業 収 益 は 2080 億 円 最 近 水 戸 市 内 でのローカル スーパーであるセイブ ストアーを 子 会 社 化 した 2タイヨー 茨 城 県 神 栖 市 を 拠 点 に 県 内 25 店 舗 その 他 千 葉 県 を 主 体 に 出 店 している 生 鮮 ものに 力 を 入 れたSM CGC グループ 傘 下 で 2008 年 度 の 売 上 高 は 659 億 円 3エコス 東 京 の 昭 島 市 を 根 拠 に 関 東 一 円 ( 東 京 神 奈 川 埼 玉 栃 木 茨 城 千 葉 )と 福 島 に 計 67 店 舗 を 展 開 する 食 品 雑 貨 酒 類 を 扱 うSM 茨 城 県 は 一 番 多 い 37 店 舗 を 出 店 し 力 を 入 れている 4カドヤ 茨 城 県 内 のみで 16 店 舗 を 出 店 している 郊 外 立 地 型 SM 2007 年 ヨークベニマルに 吸 収 され セブン アンド アイグループの 系 列 下 にある その 他 ジャスコも 30 年 前 から 進 出 しており 大 型 量 販 店 の 系 列 による 代 理 競 争 の 様 相 を 呈 している 他 方 で 地 元 スーパーとして 大 きかったセイブ ストアーはカスミに 吸 収 された 後 市 場 での 購 入 金 額 も 減 少 し また 地 元 SMのマルカワは 10 年 以 上 前 に 破 綻 し ている < 水 産 物 取 扱 の 推 移 > 水 戸 市 場 での 水 産 物 取 扱 の 推 移 について 確 認 する( 図 2 図 3) 総 取 扱 量 は 1990 年 代 に は 7700~8100 万 トンの 前 後 で 推 移 していたが 2000 年 以 降 冷 凍 もの 塩 干 加 工 品 の 取 り 扱 いが 大 きく 増 加 し 2002 年 から 2003 年 にかけては 9000 万 トンの 大 台 を 超 えつつ その 後 微 減 しながら 現 在 に 至 っている(2007 年 度 で 8131 万 トン) 一 方 取 扱 金 額 面 でみるとその ような 2000 年 に 入 ってからの 変 化 も 影 響 は 小 幅 なもので 520~530 億 円 で 推 移 していたが 2003 年 以 降 は 500 億 円 台 を 切 り 2007 年 現 在 では 472 億 円 の 水 準 で 推 移 するようになった 入 荷 量 の 多 い 物 を 魚 種 別 に 見 ると 鮮 魚 ではカツオ サンマ イカ メバチ ブリ アジ ハマチ 等 が 多 く 冷 凍 品 ではイカ エビ サケ カレイ タイが 塩 干 加 工 品 では 塩 さけ 塩 ます ししゃも 丸 干 いわしが 数 量 的 に 大 きいものになっている 鮮 魚 冷 凍 物 は おしなべて 地 元 産 は 少 なく 全 体 の 一 割 程 度 である 塩 干 加 工 品 は 東 京 に 次 いで 全 体 の3 割 弱 を 占 めており 丸 干 いわし 開 干 のさんま あじ ししゃもなどが 取 扱 量 が 多 い 87

2. 卸 売 業 者 の 動 向 < 常 洋 水 産 > 常 洋 水 産 は 明 治 期 に 常 陸 太 田 で 海 産 物 問 屋 小 売 販 売 を 行 っていた 川 根 屋 商 店 が 出 自 であ り その 後 1948 年 に 法 人 化 現 在 は 食 品 工 業 ( 広 洋 食 品 )やSM ファミリー レストラン を 経 営 する( 株 )かわねやとともにグループ 会 社 の 一 角 として 総 合 食 品 卸 売 業 を 展 開 している ( 株 )かわねやは 現 在 も 地 元 中 心 に5つの 販 売 店 舗 と1つのレストランを 抱 えており 2005 年 の 年 間 売 上 高 は 96 億 円 である 常 洋 水 産 は 水 戸 市 場 以 外 に 1985 年 に 土 浦 市 の 卸 売 市 場 開 設 に 伴 い 土 浦 魚 類 株 式 会 社 を 設 立 したが 2008 年 には 吸 収 統 合 して 支 社 化 している 常 洋 水 産 の 卸 売 業 における 取 扱 金 額 の 内 訳 は グローサリー 部 門 ( 缶 詰 インスタント 食 品 酒 類 菓 子 類 )が 全 体 の 27%で 水 産 部 門 は 残 り 73%を 占 める 水 産 部 門 について 入 荷 先 はイワシ 等 一 部 を 除 き 95%が 県 外 産 で 占 められている 集 荷 方 法 は 鮮 魚 の 場 合 委 託 70% 買 付 30%で 買 い 付 けはハマチ タコが 殆 どである 鮮 魚 の 取 引 形 態 は 基 本 的 に 全 量 セリで 6 時 開 始 のセリに 間 に 合 わない 場 合 のみ 相 対 取 引 する 一 方 冷 凍 塩 干 物 については 100% 88

買 付 集 荷 し 相 対 で 取 引 される 販 売 先 は 量 販 店 向 けが 取 引 全 体 の7 割 を 占 めている カスミ(27~28%) タイヨー(15%) エコス(10%)などが 大 きいところで その 他 魚 専 門 店 のカネタカ ヨークベニマル セイ ブや 福 島 県 いわき 市 と 茨 城 県 を 中 心 に 展 開 しているマルト サンユーなどが 量 販 店 の 主 だっ たところである その 他 常 洋 水 産 は 先 述 したグループ 企 業 の( 株 )かわねやや 広 洋 食 品 東 日 本 冷 凍 ( 有 ) といった 部 門 への 販 売 が 中 心 である 特 に 最 近 の 課 題 として 那 珂 湊 で 水 揚 げされるシラス を 生 のままいかに 市 場 取 引 に 取 り 込 むかを 検 討 している 現 状 では 水 揚 げとセリ 開 始 時 間 との 関 係 から 翌 日 の 取 引 になってしまうため 産 地 仲 買 から SM に 直 接 販 売 されている 冷 凍 保 存 して 流 通 させる 技 術 および 流 通 経 路 の 開 発 について 検 討 されている < 茨 城 水 産 > 茨 城 水 産 は もともと 水 戸 市 内 にある 魚 問 屋 が 出 自 で 1944 年 の 茨 城 県 水 産 物 配 給 株 式 会 社 をへて 1949 年 に 現 在 の 会 社 が 発 足 した その 後 常 洋 水 産 同 様 取 扱 う 食 品 の 総 合 化 をすす めるとともに 那 珂 湊 に 水 産 加 工 工 場 を 建 設 し 加 工 品 販 売 も 行 っている 特 に ここで 生 産 される 高 級 スモークサーモンが 高 く 評 価 されており 現 在 は 国 内 消 費 量 の 20%を 占 めるに 至 っ ている 年 間 の 売 上 高 は 2007 年 現 在 水 戸 市 場 での 卸 売 業 務 で 190 億 円 それ 以 外 の 水 産 加 工 業 や 後 述 する 市 場 外 流 通 も 含 めた 全 体 で 291 億 円 である 職 員 は 会 社 全 体 で 250 人 うち 市 場 内 での 仕 分 け 作 業 や 伝 票 処 理 のため 70~90 人 のパートを 雇 っている 市 場 の 卸 売 業 務 については 全 体 の 65%から 75%が 量 販 店 への 販 売 で 占 められており カ スミ タイヨー エコス カドヤ ジャスコなどに 販 売 される 市 場 外 流 通 については 外 販 部 が 担 当 し 地 元 内 外 からニチレイ 極 洋 伊 藤 忠 商 事 三 菱 商 事 等 の 商 社 経 由 で 原 魚 を 調 達 直 接 需 要 者 への 販 売 を 行 う 地 元 で 取 扱 の 大 きいタコを 扱 う 第 1 課 と アジ イカ エビ ホッケ シシャモ アカウオ 等 それ 以 外 の 魚 種 を 扱 う 外 第 2 課 がある 第 1 課 のタコの 取 り 扱 いは 今 から 15 年 前 (1993 年 )の 50 億 円 から 現 在 は 20 億 円 外 販 第 2 課 の 取 り 扱 いも 45 億 円 から 15 億 円 までと いずれも 著 しく 縮 小 している タ コはかつて 大 洗 や 那 珂 湊 で 多 く 水 揚 げされ 発 展 した 地 元 加 工 業 への 原 料 供 給 を 外 販 部 が 行 っ ていたが 地 元 水 揚 げの 減 少 により 輸 入 原 料 にシフトし 現 在 では 8~9 割 をしめる しか し 近 年 のヨーロッパでの 健 康 ブームによるタコの 買 い 負 けや 県 内 加 工 業 者 の 縮 小 再 編 があっ て 取 り 扱 い 規 模 は 縮 小 している これらタコ 以 外 にシシャモやホッケなども 含 め 大 洗 那 珂 湊 の 加 工 業 者 への 販 売 が 35 億 円 ある 他 那 珂 湊 を 根 拠 地 とする 森 田 水 産 など 大 手 水 産 物 販 売 店 (7 社 )への 直 売 が 1 億 円 ほ どある それ 以 外 では 大 洗 結 城 下 妻 下 館 石 岡 行 方 の 水 揚 げ 地 にある 海 鮮 市 場 ( 直 売 市 )への 販 売 が1 千 万 円 ほど それに 量 販 店 の 集 荷 センターへの 日 配 品 の 販 売 などが 主 なも のである それ 以 外 の 約 60 億 近 くは 水 産 加 工 業 であげられており この 部 門 での 自 社 ブランド 化 にも 力 を 入 れていくという 89

3. 仲 卸 業 者 の 動 向 1980 年 代 には 仲 卸 業 者 全 体 で 100 億 円 ほどの 取 引 規 模 があった しかし 先 述 した 地 元 SM 魚 屋 料 理 店 雑 貨 屋 等 の 売 参 権 取 得 で 仲 卸 業 者 の 廃 業 もあり また 市 民 感 謝 デー の 開 催 による 影 響 もあって 現 在 20 社 トータルで 60 億 円 ほどの 取 扱 規 模 になっている 仲 卸 業 者 は 鮮 魚 冷 凍 業 者 塩 干 海 産 物 業 者 とも 規 模 は 均 衡 しており 一 社 あたり 3 億 円 ほどの 売 上 である 仲 卸 業 者 の 販 売 先 として 主 なものは 個 人 経 営 の 量 販 店 が 3 件 水 戸 市 内 の 魚 屋 ( 常 陸 屋 イスケなど)など 10~20 件 その 他 料 理 屋 コンビニ 雑 貨 店 弁 当 屋 ラーメン 屋 など である 従 来 から 卸 売 業 者 の 直 接 販 売 との 競 争 にさらされてきたが その 中 で 仲 卸 業 者 側 の 強 みとし て 以 下 の 点 を 挙 げている 一 点 目 は 市 場 での 朝 ゼリ 時 間 以 外 での 対 応 力 を 強 化 して 卸 売 業 者 の 対 応 できない 商 品 の 融 通 を 図 ることである 二 点 目 は 荷 受 業 者 で 対 応 できない 小 さな ロットへの 小 分 け 機 能 を 強 化 する 点 である しかし 仲 買 業 者 側 も 労 働 力 不 足 に 苦 しんでいて これも 強 力 な 対 抗 条 件 にならないのが 現 状 である 三 点 目 に 決 済 期 間 を 卸 売 業 者 より 長 くすることで 販 売 先 の 資 金 繰 りに 便 宜 を 図 るものであ る 卸 売 業 者 との 取 引 では 現 物 の 販 売 から 一 律 5 日 後 に 決 済 をすることになっているが 仲 卸 業 者 側 では 月 末 〆 翌 月 末 払 い と 猶 予 期 間 を 設 けている この 点 が 小 規 模 な 販 売 先 にア ピールしているのは 間 違 いないが 反 面 でリスクを 充 分 に 負 担 できるかという 疑 問 も 否 めない 状 況 である 4. 所 見 歴 史 的 に 卸 売 業 者 の 販 売 力 が 強 い 土 地 柄 で 1989 年 に 卸 売 市 場 条 例 で 幅 ひろい 売 買 参 加 者 の 登 録 を 認 めてきたことにより いっそう 卸 売 業 者 仲 買 業 者 間 の 力 関 係 は 拡 大 した 卸 売 業 者 はSMへの 対 応 を 強 めており 現 にカスミ グループは 市 場 取 り 扱 いの 40%を 占 め 市 場 運 営 上 なくてはならない 存 在 になっている また 卸 売 業 者 は 他 方 で 末 端 の 魚 屋 料 理 店 に も 販 売 を 行 っており 仲 買 業 者 は 卸 売 業 者 のすきまをみつけて 販 売 するだけの 苦 しい 営 業 を 迫 られている このような 卸 売 - 仲 卸 間 の 取 引 を 極 力 排 除 した 水 戸 方 式 は 日 本 の 卸 売 市 場 の 将 来 像 を 先 行 して 現 していると 地 元 では( 幾 分 皮 肉 も 込 めて) 考 えられている しかし 卸 売 業 者 としてみれば 量 販 店 や 地 元 魚 屋 料 理 店 等 に 対 する 運 送 サービス 面 での 費 用 負 担 など 決 してうまみのある 部 分 だけでなく 競 争 にさらされながら 苦 しい 状 況 でやっ ていることも 多 い 他 方 で 仲 買 業 者 の 間 では 時 代 から 取 り 残 され あとは 淘 汰 されるだけと いったあきらめムードが 漂 っている これら 現 場 での 拡 散 する 意 識 に 対 し どう 市 場 機 能 を 位 置 づけ また 業 者 毎 の 役 割 分 担 を 果 たすか 再 考 する 余 地 があるのではないか 90

第 2 章 地 域 ブランド 創 出 事 例 について 91

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Ⅰ. 宮 城 県 及 び 高 知 県 における 水 産 物 地 域 ブランド 創 出 の 取 り 組 み 事 例 北 海 道 大 学 大 学 院 准 教 授 宮 澤 晴 彦 1.はじめに 筆 者 が 担 当 した 調 査 対 象 は,1 宮 城 県 における 石 巻 魚 市 場 ( 株 )の 金 華 さば, 金 華 ぎん, 金 華 かつおといった 地 域 名 を 関 したブランド 化 の 取 り 組 みと,2 宮 城 県 漁 連 ( 現 在 は 宮 城 県 漁 協 ) が 主 体 となった 養 殖 銀 ザケのブランド 化 の 取 り 組 み( 伊 達 のぎん) 3 土 佐 清 水 漁 協 ( 現 高 知 県 漁 協 土 佐 清 水 支 店 )が 主 体 となった 立 て 縄 釣 りによるゴマサバのブランド 化 の 取 り 組 み( 清 水 サバ)の3 事 例 である これらは 意 識 的 に 地 域 ブランドを 打 ち 出 そうとするもの(1と3 特 に3) 商 標 登 録 を 既 に 行 っているもの(2と3) 養 殖 魚 の 差 別 化 を 意 図 するもの(1と 2)など 多 様 だが 鮮 度 品 質 を 訴 求 しようとしている 点 では 一 定 の 共 通 性 ももつ 以 下 では これらの 事 例 毎 に 取 り 組 みの 経 緯 意 図 内 容 効 果 等 について 産 地 におけ るヒアリング 結 果 に 基 づき 報 告 する 2. 金 華 さば 金 華 ぎん 金 華 かつお - 石 巻 魚 市 場 ( 株 )の 取 り 組 み- (1) 金 華 さば 周 知 のように 石 巻 魚 市 場 は 東 北 有 数 の 水 産 物 産 地 市 場 であり, 表 1に 示 したように 2006 年 の 総 取 扱 高 は 178,238 トン,203 億 4,717 万 円 に 上 る 魚 種 別 にはカツオ(43.0 億 円 ),サバ(34.4 億 円 ),イカ(20.7 億 円 ),タラ(20.0 億 円 ),ギンザケ(14.0 億 円 ) 等 の 取 扱 高 が 多 く, そのうちサバは 総 取 扱 高 の 約 17%を 占 めており, 当 市 場 における 重 要 な 取 扱 品 目 となってい る また, 表 2によって 漁 業 種 類 別 の 水 揚 げ 状 況 を 見 ると, 沖 合 底 びき 網 (35.6 億 円 ),カ ツオ マグロまき 網 (31.9 億 円 ),サバまき 網 (27.6 億 円 ), カツオ マグロ 海 外 まき 網 (20.6 億 円 ), 定 置 網 (16.2 億 円 ) 等 の 水 揚 げが 多 い 全 体 にまき 網 漁 業 を 中 心 とする 沖 合 遠 洋 漁 業 の 水 揚 げが 多 くな っているが,サバはまき 網 によ るものの 他, 定 置 網 や 一 本 釣 り 等, 沿 岸 漁 業 によって 漁 獲 され たものも 含 まれる ただし, 2006 年 におけるサバの 平 均 価 格 は 51.2 円 /Kg とかなり 低 い 値 であることから, 大 半 はサバ まき 網 漁 業 によって 水 揚 げさ れたものと 考 えられる 石 巻 魚 市 場 が 金 華 サバ と いうブランド 名 称 を 打 ち 出 し たのは 1998 年 のことである 表 1; 石 巻 魚 市 場 の 主 要 魚 種 別 取 扱 高 (2006 年 ) 93 取 扱 量 取 扱 額 金 額 割 合 平 均 価 格 (トン) ( 千 円 ) (%) ( 円 /Kg) マイワシ 5,483 776,429 3.8 141.6 カツオ 35,778 4,302,891 21.1 120.3 メジマグロ 696 405,481 2.0 582.6 メバチ 472 186,391 0.9 394.5 キハダ 981 401,270 2.0 409.0 タラ 6,798 1,795,631 8.8 264.1 スケトウダラ 893 80,162 0.4 89.8 その 他 タラ 19,978 1,085,654 5.3 54.3 サバ 67,167 3,438,514 16.9 51.2 サケマス 1,683 530,544 2.6 315.2 ギンザケ 3,003 1,400,983 6.9 466.5 メロウド( 小 女 子 ) 3,398 257,682 1.3 75.8 タコ 653 225,180 1.1 344.8 イカ 9,713 2,069,994 10.2 213.1 その 他 21,541 3,390,363 16.7 157.4 合 計 178,238 20,347,170 100.0 114.2 資 料 ; 石 巻 魚 市 場 資 料

もともとサバを 扱 っていた 地 元 の 仲 買 人 が 定 置 網 で 漁 獲 され 石 巻 魚 市 場 に 水 揚 げされたサ バを 金 華 さば と 称 して 売 っていたことから,それを 広 く 宠 伝 利 用 するよう 石 巻 魚 市 場 が 提 唱 したのである 石 巻 魚 市 場 が 公 表 している 金 華 サバ の 定 義 は, 南 三 陸 金 華 山 周 辺 海 域 で 定 置 網 一 本 釣 り まき 網 によって 漁 獲 された 高 鮮 度 で 脂 のり 抜 群 の 大 型 サバ というものである このよ うに, 当 市 場 では 漁 業 種 類 やサイズ 等 を 特 別 に 限 定 せず( 一 忚 大 型 サバとしているが, グ ラム 以 上 といった 厳 密 な 規 定 はない), 金 華 山 周 辺 で 獲 れたサバで 型 や 質 のよいものは 全 て 金 華 サバ と 呼 ぶことにしている このような 扱 いにしたのは,この 地 域 で 水 揚 げされるサバは 天 然 物 回 遊 魚 であり, 根 付 き のサバではないということが 関 係 している つまり, 定 置 網 や 一 本 釣 りで 獲 れたサバもまき 網 で 獲 れたサバも, 全 く 同 じサバであって, 漁 法 による 区 別 はしにくいというのである 通 常 定 置 網 の 漁 獲 物 はまき 網 の 漁 獲 物 よりも 評 価 が 高 まるはずであるが,サバについていえば,まき 網 のサバも 最 近 は 漁 獲 されたものの 一 部 ではあるが, 鮮 度 品 質 管 理 等, 取 扱 が 丁 寧 になされ るようになっており, 定 置 網 もの にさほど 务 らないのだとされている たとえば, 八 戸 の 新 鋭 まき 網 船 惣 宝 丸 は, 漁 獲 されたサバをすぐに 船 上 凍 結 し, 刺 身 用 冷 凍 サバを 水 揚 げして おり,これなどは 十 分 金 華 サバ と 名 乗 る 資 格 があるとされている しかし,このように 差 別 化 をほとんど 意 識 していない 取 り 組 みは,ブランド 化 の 取 り 組 みと いうにはかなり 距 離 があるものであって,その 点 は 魚 市 場 関 係 者 も 十 分 認 識 している つまり 金 華 サバ はブランド 名 称 とい うより 愛 称 のようなものであ り,まずは 呼 び 名 自 体 の 知 名 度 を 上 げていこうというのが,この 取 り 組 みの 趣 旨 だというわけであ る 厳 密 な 定 義 付 けや 選 別 化 (た とえば, 秋 口 からの 大 型 マサバ グラム 以 上 等 )を 行 うことに ついて, 魚 市 場 としては 地 域 的 な 連 携 を 図 りつつ,これから 検 討 し ていく 構 えである そのような 特 別 なサバを 打 ち 出 していく 場 合 には, プレミアム 金 華 さば? といった 新 しい 名 称 も 考 えねば ならないとしている ただ, 産 地 市 場 におけるそのよ うな 意 図 や 取 り 扱 いの 实 態 とは 別 に,インターネット 等 では 黄 表 2; 石 巻 魚 市 場 の 主 要 漁 業 種 別 取 扱 高 (2006 年 ) 金 に 輝 く 最 高 の 脂 幻 の 金 華 サバ 等 と 称 して,プレミアム 商 品 としての 金 華 サバ がかな り 高 値 で 売 られている どっちの 料 理 ショー で 紹 介 されたこともあって, 金 華 サバ に はプレミアム 性 を 主 張 する 動 きがつきまとっているが, 個 々の 商 品 によって 区 々であろうが, 必 ずしも 差 別 化 の 实 態 は 明 示 的 でないと 思 われる したがって, 今 後 は 地 域 全 体 としての 連 携 94 取 扱 量 取 扱 額 金 額 割 合 平 均 価 格 (トン) ( 千 円 ) (%) ( 円 /Kg) カツオ マク ロ 海 外 まき 網 17,942 2,063,833 10.1 115.0 カツオ マク ロまき 網 19,849 3,187,408 15.7 160.6 サバまき 網 55,280 2,764,606 13.6 50.0 沖 合 底 びき 網 29,248 3,563,249 17.5 121.8 近 海 底 びき 網 3,603 466,619 2.3 129.5 小 型 底 びき 網 5,707 1,175,700 5.8 206.0 定 置 網 21,137 1,619,669 8.0 76.6 すくい 網 (メロート ) 1,024 56,589 0.3 55.2 小 型 イカ 釣 り 1,061 431,533 2.1 406.6 カツオ マク ロ 一 本 釣 り 309 36,473 0.2 118.1 養 殖 魚 3,003 1,400,983 6.9 466.5 その 他 20,074 3,580,507 17.6 178.4 合 計 178,238 20,347,170 100.0 114.2 資 料 ; 石 巻 魚 市 場 資 料

を 図 り, 商 品 としての 金 華 サバ のあり 方 について,ある 程 度 統 一 的 な 基 準 を 明 示 していく ことが 求 められよう (2) 金 華 ぎん 表 1で 見 たように,ギンザケは 石 巻 魚 市 場 で 3,000 トン,14 億 円 の 取 り 扱 いがある(2006 年 ) 金 額 割 合 でみるとギンザケは 総 水 揚 げ 高 の 約 7%を 占 める 程 度 に 過 ぎないが, 沿 岸 漁 獲 物 の 中 では 定 置 物 に 次 いでウエイトが 高 く, 当 市 場 における 有 力 商 材 の1つといってよいだろう 石 巻 魚 市 場 がギンザケのブランド 名 称 として 金 華 ぎん を 使 用 し 始 めたのは 2004 年 から である その 際, 同 社 は 金 華 ぎん の 定 義 を, 金 華 山 周 辺 海 域 で 養 殖 されるギンザケで 石 巻 魚 市 場 に 水 揚 げされ 清 浄 殺 菌 海 水 及 び 同 海 水 氷 で 処 理 されたもの としている 要 するに, 清 浄 殺 菌 海 水 及 び 同 海 水 氷 で 処 理 されたものという 縛 りはあるが, 金 華 山 周 辺 海 域 で 育 成 収 穫 された 養 殖 ギンザケならば 金 華 ぎん の 対 象 となるわけで,これについても 金 華 サバと 同 様 に 差 別 化 の 程 度 は 緩 やかだといえる ただし, 次 項 の 伊 達 のぎん の 取 り 組 みに 関 連 して 後 にやや 詳 しく 述 べるが, 三 陸 のギン ザケ 養 殖 においては 近 年 品 質 改 善 の 取 り 組 みが 全 般 に 大 きく 進 展 しており, 養 殖 場 間 の 品 質 格 差 もほとんど 薄 まっているという 石 巻 魚 市 場 も 同 市 場 に 出 荷 してくる 養 殖 業 者 に 対 して, 石 巻 魚 市 場 の 管 理 のもと 卵 稚 魚 成 魚 と 各 段 階 にどのような 給 餌 をしたか 明 確 にすることと, 餌 料 は 安 全 法 を 守 り 厳 選 されたもののみを 使 用 することを 要 求 しており, 餌 (EP)につい ては 同 社 自 ら 大 協 物 産 丸 紅 と 組 んで 開 発 提 供 するに 至 っている そのため, 石 巻 魚 市 場 に 水 揚 げされる 養 殖 ギンザケについても, 宮 城 県 漁 連 主 導 のブランド 名 である 伊 達 のぎん を 使 用 させてもらいたいと 申 し 入 れたが, 宮 城 県 漁 連 ( 元 宮 城 県 漁 協 ) に 拒 否 されたため,そこで 別 名 称 の 金 華 ぎん を 用 いることにしたとされている 石 巻 魚 市 場 としては 伊 達 のぎん も 金 華 ぎん もほとんど 同 質 なのに,という 思 いがあるようだが, 宮 城 県 漁 連 としては 餌 の 開 発 メーカーも 異 なるし, 伊 達 のぎん のブランド 名 で 販 路 も 独 自 に 開 拓 してきたので 簡 単 には 忚 じられなかったようである ただし, 最 近 になって 宮 城 県 ではギンザケの 統 一 ブランドを 打 ち 出 す 取 り 組 みが 進 んでいる という この 点 について,2009 年 3 月 18 日 付 の 河 北 新 報 は 県 は 二 〇 〇 八 年 度 からギンザケ の 統 一 ブランドをつくり 全 国 に 売 り 込 む 戦 略 に 乗 りだしている 〇 九 年 度 以 降 は 消 費 者 や 食 品 業 界 に 向 けてギンザケのうまさをPRするなどし 共 通 したイメージ 戦 略 で 消 費 拡 大 につな げていく 考 えだ 期 間 は 一 〇 年 度 までの 三 カ 年 ブランド 名 は 宮 城 のギンザケという 方 向 になっている と 伝 えている この 報 道 を 見 る 限 りでは, 統 一 ブランドといっても, 幾 つ か 存 在 する 既 存 のブランド 名 称 を 一 本 化 するというのではなく(もちろん, 品 質 基 準 や 餌 の 統 一 化 等 も 射 程 外?),その 上 に 宮 城 のギンザケ といった 一 般 的 呼 称 を 冠 して, 県 全 体 で PR 活 動 を 行 うといった 程 度 であり, 本 格 的 な 統 一 ブランド 作 りの 取 り 組 みというにはかなり 距 離 があるものと 推 察 される なお, 金 華 ぎん の 品 質 についてはもちろん 刺 身 対 忚 の 優 良 なレベルとされているが, 魚 市 場 関 係 者 の 説 明 ではやや 脂 が 多 いので 炙 り 刺 身 (タタキ) を 提 唱 しているとのことであ った (3) 金 華 かつお;2006 年 ~ 95

カツオは 石 巻 魚 市 場 にとって 最 も 重 要 な 取 扱 品 目 である 2006 年 のカツオの 水 揚 げ 高 は 35,778 トン,43.0 億 円 であり, 金 額 割 合 で 全 体 の 21.1%を 占 めている そのほとんどはまき 網 によって 漁 獲 されたものだが,カツオ 一 本 釣 りの 水 揚 げも 尐 量 だが 含 まれる 当 市 場 に 水 揚 げされるカツオに 金 華 かつお の 名 称 を 用 いるようになったのは 2006 年 か らであり,これについては 以 下 の 定 義 に 示 すように, 一 定 の 品 質 に 関 わる 制 限 規 定 がある < 金 華 かつお の 定 義 > 水 揚 げ 地 石 巻 魚 市 場 漁 獲 水 域 北 部 太 平 洋 海 区 漁 法 まき 網 一 本 釣 り 品 質 新 物 として 水 揚 げ 販 売 されたもので かつ 買 受 業 者 が 上 級 品 と 判 断 したも の 魚 体 重 1.8Kg 以 上 4Kg 未 満 中 小 1.8~2.5Kg 中 2.5~3Kg 大 3~4Kg 仕 向 生 鮮 出 荷 に 限 る( 冷 凍 用 は 対 象 外 とする) 期 間 EX 平 成 19 年 6 月 11 日 からカツオ 終 漁 まで 解 禁 日 の 設 定 は 漁 模 様 や 水 揚 げ 状 況 等 を 勘 案 の 上 委 員 会 ( 金 華 かつおブ ランド 化 事 業 推 進 委 員 会 )の 協 議 に 基 づき 決 定 することとし 解 禁 当 日 は 金 華 かつお シ ーズン 到 来 を 内 外 に 宠 言 する 以 上 の 定 義 のように 金 華 かつお と 名 乗 れるものは 解 禁 日 以 降 買 受 業 者 が 上 級 品 と 判 断 したもの に 限 定 されるのだが 問 題 は 解 禁 日 をどのように 決 めるかということと 買 受 業 者 の 行 う 上 級 品 判 定 の 妥 当 性 をどのように 担 保 するかということの2 点 にあるといえる そ こで 石 巻 魚 市 場 ではまず 解 禁 日 の 決 定 に 関 して 水 揚 げされたカツオの 脂 肪 分 を 日 々 測 定 し 含 脂 率 の 高 まる 適 当 な 時 期 (つまり 脂 の 乗 りがよくなって 金 華 かつお を 名 乗 るのに 相 忚 しくなる 時 期 )を 設 定 している 日 々の 脂 肪 分 測 定 は 精 度 の 高 い 簡 易 測 定 器 が 開 発 されたこと によって 可 能 となり 商 品 特 性 のアピールにもこれが 役 立 っているという また 上 級 品 の 担 保 という 問 題 については 金 華 かつお を 銘 打 った 番 号 付 きのシー ルを 作 成 してこれを 買 受 業 者 に 無 償 提 供 し 彼 らにこれを 付 して 出 荷 することを 義 務 づけてい る そして 出 荷 先 や 消 費 者 からシール 付 きの 金 華 かつお に 対 してクレームがつき それ に 関 して 金 華 ブランド 委 員 会 ( 後 述 ) 宛 通 報 があった 場 合 は 当 該 買 受 業 者 (シールの 番 号 によって 特 定 される)にルール 違 反 があったものと 認 め さらに 同 一 業 者 に 対 するクレームが 漁 期 中 に2 度 発 生 した 時 はシールを 没 収 し 以 後 シールの 配 賦 を 行 わないこととしている つ まり 川 下 側 の 監 視 を 通 じて 高 品 質 を 担 保 するような 仕 組 みを 講 じているということである 加 えて 石 巻 魚 市 場 では 川 下 の 量 販 店 や 業 務 筋 に 試 供 品 を 広 く 提 供 しており それが 川 下 側 に 上 級 品 ( 金 華 かつお)とはどのようなものであるかを 認 識 させる 手 だてとなっている も ちろん 試 供 品 の 提 供 はブランドのPRにも 大 いに 役 立 っている ブランド 化 の 効 果 としては 注 文 がよく 付 くようになった という 点 と 生 産 者 の 品 質 管 理 意 識 が 向 上 した という2 点 が 指 摘 されていた ただ 金 華 さば や 金 華 ぎん は 差 別 化 要 素 の 打 ち 出 しが 弱 い 面 があり その 辺 の 強 化 が 求 められている 石 巻 魚 市 場 や 石 巻 市 は 2008 年 から 金 華 ブランド 委 員 会 を 石 巻 市 水 産 振 興 協 議 会 の 中 に 立 ち 上 げ この 委 員 会 が 96

1976 1977 1978 1979 1980 1981 1982 1983 1984 1985 1986 1987 1988 1989 1990 1991 1992 1993 1994 1995 1996 1997 1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 生 産 量 千 トン 平 均 価 格 円 /Kg 1976 1977 1978 1979 1980 1981 1982 1983 1984 1985 1986 1987 1988 1989 1990 1991 1992 1993 1994 1995 1996 1997 1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 経 営 体 数 生 産 量 千 トン 核 となって 徐 々にブランド 化 に 必 要 な ルール や 基 準 を 明 確 にしていく 意 向 だとされて いる 特 に 金 華 サバ についてはもう 尐 し 定 義 を 厳 密 にし 石 巻 金 華 さば といった 名 称 で 地 域 団 体 商 標 登 録 を 申 請 するつもりとのことであった 3. 伊 達 のぎん 次 に 宮 城 県 漁 連 ( 現 在 は 宮 城 県 漁 協 だが 以 下 では 一 々 断 らず ブランド 化 实 施 主 体 の 名 称 を 宮 城 県 漁 連 に 統 一 しておく)が 打 ち 出 した 養 殖 ギンザケのブランド 伊 達 のぎん につい て 取 り 上 げよう ただ し ここではブランド 化 の 取 り 組 み 内 容 に ついて 述 べる 前 に 予 め 宮 城 県 におけるギ ンザケ 養 殖 の 展 開 過 程 について 概 括 して おく 宮 城 県 でギンザケ の 養 殖 が 開 始 される のは 1976 年 のことで ある 以 後 1980 年 頃 までは 図 1に 示 すよ う に 養 殖 漁 家 の 参 入 増 加 が 先 行 し 生 産 量 は 伸 び 悩 むが 80 年 代 半 ば 頃 から 養 殖 漁 家 増 加 のテンポを 上 回 って 生 産 量 が 急 増 する その 結 果 1990 91 年 には 県 内 総 生 産 量 が 22,000 トン 強 に 達 し 宮 城 県 は 国 内 最 大 の 養 殖 ギン ザケ 産 地 としてその 地 位 を 確 かなものとする しかし 生 産 がピークに 達 したにもかかわらず 90 年 代 に 入 ると 早 くも 養 殖 漁 家 数 は 急 激 な 減 尐 に 転 じ 生 産 量 も 96 年 には 約 8,600 トンとピーク 時 の4 割 弱 にまで 減 尐 してしまう その 要 因 としては 周 知 のよう に 1980 年 代 以 後 サケマス の 輸 入 が 急 増 し その 影 響 もあって 図 2に 示 すように 宮 城 県 における 養 殖 ギンザ ケの 価 格 が 急 落 したことが 上 げられる また マイワ シの 漁 獲 減 尐 と 重 なり 餌 料 価 格 が 上 昇 したことも 経 営 悪 化 の 一 因 となった 養 殖 ギンザケの 価 格 動 向 をやや 仔 細 に 観 察 すると 350 300 250 200 150 100 50 0 資 料 ; 宮 城 県 漁 協 資 料 図 1 ; 宮 城 県 におけ る キ ンサ ケ 養 殖 の 経 営 体 数 と 生 産 量 25 20 15 10 5 0 資 料 ; 宮 城 県 漁 協 資 料 図 2 ; 宮 城 県 におけるキ ン サ ケ 養 殖 生 産 量 と 平 均 価 格 97 28 24 20 16 12 8 4 0 経 営 体 数 生 産 量 2,500 2,000 1,500 1,000 500 0 生 産 量 価 格

1976 1977 1978 1979 1980 1981 1982 1983 1984 1985 1986 1987 1988 1989 1990 1991 1992 1993 1994 1995 1996 1997 1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 1 経 営 体 当 たり 生 産 額 千 万 円 生 け 簀 1 台 当 たり 生 産 量 トン 1980 年 代 の 初 頭 に 1,000 円 /Kg 前 後 であったものが 91 年 には 500 円 /Kg を 割 り 込 む 水 準 にま で 下 落 してしまう ただ この 辺 までは 輸 入 の 増 加 だけでなく 国 内 生 産 も 急 増 していたから ある 程 度 の 価 格 低 下 はやむを 得 ない 流 れとして 受 けとめられていたし 図 示 していないが 生 産 額 の 方 は 生 産 量 の 増 加 が 大 きかったためむしろ 増 加 基 調 で 推 移 していた また1 経 営 体 当 たり 生 産 額 も 図 3に 見 られるように 80 年 代 はほぼ 増 加 基 調 で 推 移 していたといえる しかし 93 94 年 にな ると 生 産 量 が 減 尐 した にもかかわらず 価 格 はさ らに 低 下 し 95 年 には 321 円 /Kg というどん 底 の 価 格 水 準 に 落 ち 込 んで しまう その 結 果 もち ろん 生 産 額 は 激 減 し 90 年 に 過 去 最 高 の 139 億 円 であったものが 95 年 に は 45 億 円 96 年 には 38 億 円 にまで 落 ち 込 んでし まう ただ 96 年 以 後 は 生 産 量 がさらに 落 ち 込 んだ 図 3 ; 宮 城 県 に お け る キ ン サ ケ 養 殖 の1 経 営 体 当 た り 生 産 額 と 生 け 簀 1 台 当 た り 生 産 量 8 7 6 5 4 3 2 1 0 資 料 ; 宮 城 県 漁 協 資 料 ため 価 格 はやや 持 ち 直 す 気 配 を 見 せるのだが 2000 年 01 年 に 生 産 量 がやや 回 復 すると 再 び 下 落 し 01 年 には 過 去 最 低 の 310 円 /Kg という 最 悪 の 状 態 となってしまう これを 機 に 宮 城 県 漁 連 は 以 後 本 格 的 に 品 質 向 上 価 格 回 復 の 取 り 組 み(すなわち ブランド 化 の 取 り 組 み) を 開 始 するのであるが その 点 は 後 述 することとして 続 いてギンザケ 養 殖 の 養 殖 サイクルと 関 係 企 業 等 について 触 れておく ギンザケの 養 殖 は まず 11~12 月 に 発 眼 卵 を 導 入 し ふ 化 させるところから 始 まる この 発 眼 卵 はかつてアメリカのワシントン 州 から 購 入 空 輸 していたが 近 年 は 国 産 卵 で 全 て 賄 え るようになったという その 後 はふ 化 した 稚 魚 を 淡 水 池 で 飼 育 し それらは 翌 年 10 月 末 以 降 1 尾 200 ク ラム 程 度 に 成 長 する その 頃 になると 稚 魚 はスモルト 化 して 降 海 の 準 備 を 整 えてい くため 内 水 面 の 養 殖 業 者 から 海 の 養 殖 業 者 に 販 売 され 海 水 への 馴 致 が 図 られた 後 海 の 生 け 簀 で 育 てられる そして 約 8 ヶ 月 後 の 翌 年 4 月 以 降 になると 早 くも 1.5Kg 以 上 の 出 荷 サ イズとなり 型 のいいものから 順 次 販 売 出 荷 されていく なお ギンザケ 養 殖 に 対 する 餌 の 開 発 供 給 や 販 路 確 保 等 については 宮 城 県 漁 連 の 他 幾 つかの 企 業 が 関 わっており 各 企 業 の 傘 下 には 数 軒 ~20 軒 程 度 の 養 殖 漁 家 が 入 っているとい う( 前 項 で 見 たように 石 巻 魚 市 場 も 餌 の 開 発 供 給 には 関 与 している) ここでは そうし た 漁 家 と 企 業 の 関 係 について 踏 み 込 んで 検 討 する 余 裕 はないが 関 係 企 業 としては 宮 城 県 漁 連 以 外 にニチモウ 東 海 澱 粉 マルハ ニチロ H 日 本 水 産 の4 社 があり ニチモウは 雄 勝 そ の 他 は 女 川 に 傘 下 の 業 者 を 多 く 持 っているとのことであった さて 本 論 であるブランド 化 の 取 り 組 みに 関 する 検 討 に 入 ろう 宮 城 県 漁 連 が 自 らの 取 り 扱 う 養 殖 ギンザケに 伊 達 のぎん というブランド 名 を 使 用 するようになったのは 1996 年 の ことである 前 述 のように 95 年 には 養 殖 ギンザケの 価 格 が 大 きく 下 落 した そこで 何 とか 知 98 80 70 60 50 40 30 20 10 0 生 産 額 / 体 生 産 量 / 台

名 度 を 上 げ 需 要 を 喚 起 しようということで 当 時 放 映 されていた NHK の 大 河 ドラマ 伊 達 政 宗 に 便 乗 して 伊 達 のぎん という 名 前 を 付 けることにしたのだという その 際 商 標 登 録 も 合 わせて 行 い 宠 伝 も 強 化 したのだが 売 れ 行 きはともあれ 価 格 は 安 値 のまま 推 移 し 品 質 に 関 する 評 判 もよくないままだった そして 先 にみたように 01 年 には 310 円 /Kg という 極 端 な 低 価 格 に 見 舞 われたのである このような 事 態 に 直 面 した 県 漁 連 は 餌 の 改 良 等 による 養 殖 ギンザケの 品 質 改 善 に 本 格 的 に 取 り 組 み 価 格 の 回 復 を 図 ろうとする それまで 養 殖 ギンザケの 餌 は 生 餌 やモイストペレット が 主 体 であったが これをドライペレット(EP)に 全 面 的 に 切 り 替 えていくことにしたのであ る このような 品 質 改 善 の 取 り 組 みは 日 本 水 産 が 既 に 先 行 して 实 施 していたが( 生 産 されたギ ンザケのブランド 名 称 は ぎんぎん という) 宮 城 県 漁 連 はそれとは 別 に 日 本 農 産 工 業 と 組 んで ぎん 太 郎 という 名 称 の 餌 (EP)を 独 自 に 開 発 し それを 傘 下 の 養 殖 業 者 に 使 用 させ ていく そして これに 賛 同 合 意 して 県 漁 連 の 傘 下 に 入 った 養 殖 業 者 は 志 津 川 10 軒 女 川 2 軒 雄 勝 2 軒 網 地 島 4 軒 の 計 18 軒 に 上 った( 現 在 もこの 体 制 は 維 持 されている) 周 知 のようにドライペレットは 海 面 に 浮 くために 残 餌 による 漁 場 汚 染 が 生 じにくいほか 消 化 吸 収 が 良 好 であることから 病 気 が 発 生 しにくいという 特 徴 も 有 しており 県 漁 連 傘 下 の ギンザケ 養 殖 漁 家 においては 近 年 薬 品 を 使 用 することが 全 くなくなっているという つまり 魚 病 対 策 としてはワクチンの 使 用 のみ= 完 全 無 投 薬 としているのであり ぎん 太 郎 の 使 用 というだけでなく このことも 伊 達 のぎん を 名 乗 る 際 の 条 件 とされている また 餌 をド ライペレットに 全 面 的 に 切 り 替 えることによって 脂 肪 分 の 抑 制 や 身 質 の 改 良 品 質 の 均 質 化 等 が 図 られ 需 用 者 から 伊 達 のぎんは 脂 の 乗 りが 適 度 で 焼 いても 刺 身 にしてもよい とい った 高 評 価 が 得 られるようになったとされている さらに 高 品 質 の 確 保 保 証 という 点 で 県 漁 連 は 脂 肪 含 有 率 味 覚 鮮 度 生 菌 数 等 の 検 査 を 出 荷 前 に 必 ず 实 施 している この 検 査 結 果 (カルテ)や 生 産 履 歴 証 明 は 出 荷 の 際 全 ての 出 荷 先 に 対 して 必 ず 添 付 しているという また ブランドの 保 護 という 点 に 関 しては 伊 達 のぎん と 記 した 商 標 (ロゴマーク)の シールを 提 供 業 者 を 限 定 して 配 賦 するといった 方 式 がとられている 伊 達 のぎん の 販 路 については 県 漁 連 が 中 心 になって 開 拓 しているのであり その 中 で 信 用 のできる 固 定 的 な 業 者 ( 量 販 店 生 協 回 転 寿 司 等 )にシールを 提 供 しているのである シールは 末 端 の 店 頭 でも 使 用 添 付 されており 今 のところ 偽 造 シールが 出 回 ることもないとのことであった 以 上 のような 取 り 組 みの 結 果 伊 達 のぎん の 価 格 は 2002 年 以 降 回 復 していくが この ような 取 り 組 みは 全 地 域 的 に 行 われてきたことから 先 の 図 2に 見 られるように 県 内 養 殖 ギ ンザケの 平 均 価 格 も 徐 々に 回 復 し 近 年 では 450~500 円 /Kg 程 度 の 水 準 を 維 持 している ま た 先 の 図 3に 見 られるように 種 々の 技 術 改 善 に 伴 いこの 間 養 殖 生 け 簀 1 台 当 たり 生 産 量 が 大 きく 増 加 しており その 結 果 95 年 には 240 万 円 程 度 にまで 減 尐 してしまった1 経 営 体 当 たり 生 産 額 も 近 年 は 700 万 円 を 超 える 水 準 にまで 増 加 している これによって 近 年 は 養 殖 漁 家 の 経 営 状 態 もほぼ 安 定 しており 関 係 者 によれば 魚 価 が 380 円 /Kg 以 上 であれば 採 算 が 取 れるといった 体 制 がほぼ 確 立 した とされている ギンザケ 養 殖 がスタートしてから 30 年 余 りが 経 過 し その 間 経 営 体 の 淘 汰 が 進 んだが ここにきて 漸 く 均 衡 点 が 見 えてきたといえそう である ただし ブランド 化 の 取 り 組 みの 効 果 を 相 対 的 な 価 格 アドバンテージという 点 で 図 るとす 99

れば 伊 達 のぎん は 必 ずしもその 面 での 優 位 性 を 発 揮 しているとはいえない 県 下 の 他 企 業 が 扱 うギンザケと 比 べると 伊 達 のぎん の 価 格 水 準 は 他 とほとんど 変 わらない 場 合 が 多 いのである 宮 城 県 漁 連 によると 確 かに 価 格 アドバンテージはあまり 顕 著 でないが 最 近 行 った 食 味 試 験 ではトップの 評 価 だった とされるが やはり 伊 達 のぎん をプレミアム 的 価 値 を 持 つ 特 別 のギンザケとみなすことには 無 理 があるだろう しかし だからといってブ ランド 化 の 取 り 組 みの 効 果 や 意 義 を 否 定 するのも 行 き 過 ぎではないかと 思 う 厳 密 な 意 味 で 伊 達 のぎん のようなタイプのものをブランド 魚 と 呼 んでよいかについては 一 般 に 種 々 意 見 があるものと 思 われるが 価 格 上 昇 や 経 営 安 定 化 といった 点 を 見 るとこの 取 り 組 みの 成 果 は 顕 著 であり また 伊 達 のぎん が 出 荷 先 から 強 い 信 頼 を 得 ていることも 確 实 である 4. 清 水 サバ (1) サバ 立 縄 漁 業 の 概 要 と 地 域 漁 業 における 地 位 土 佐 清 水 市 漁 協 ( 現 高 知 県 漁 協 土 佐 清 水 支 所 以 下 では 呼 称 を 土 佐 清 水 市 漁 協 に 統 一 する) では 古 くからゴマサバを 狙 った 立 縄 漁 業 ( 立 縄 の 漁 具 については 図 4 参 照 なお 図 4 5, 6については 土 佐 清 水 市 HP より 引 用 させて 頂 いた )が 盛 んである この 立 縄 漁 業 によって 釣 獲 されるゴマサバは 鮮 度 がよければ 刺 身 で 食 され 地 元 及 び 高 知 市 や 四 国 地 方 では 土 佐 の 清 水 サバ としてよく 知 られている 清 水 サバは 図 5に 示 したような 足 摺 岬 南 西 沖 の 水 深 200m までの 岩 礁 地 帯 に 生 息 している 立 縄 の 漁 具 は 浮 標 ( 発 泡 スチロール) 道 糸 (ヤマロン 60 号 10 乃 至 20 ヒロ) 中 重 り( 鉛 ) 幹 糸 (ナイロン 20 号 ) 枝 糸 (ナイロン 16~18 号 1.5m 間 隔 4.5m 20 本 ) 釣 針 ( 各 枝 糸 に1 本 ムツ 針 14~16 号 ) 重 り( 針 金 4 番 線 1.8m) 等 から 構 成 される うち 道 糸 の 長 さや 重 りの 重 さは いうまでもなく 漁 場 の 水 深 や 主 対 象 魚 種 の 違 い(サバ ハガツオのよう な 上 物 狙 いかメダイ ムツ 等 の 底 物 狙 いか) 等 に 忚 じて 調 整 する 図 5;サバ 立 縄 漁 業 の 漁 場 サバ 立 縄 漁 業 に 使 用 される 漁 船 は 全 て 3~5 トン で 乗 組 員 数 は 1~2 名 ( 多 くは 1 名 )である ま た 使 用 可 能 な 漁 具 数 については 1 人 乗 りの 場 合 40 鉢 以 内 2 人 乗 りの 場 合 55 鉢 以 内 と 定 められて いる( 立 縄 組 合 による 自 主 規 制 ) 操 業 は 夜 半 に 出 港 日 出 1.5~2 時 間 前 までに 漁 場 に 到 着 し まず 魚 群 探 知 機 で 礁 や 魚 群 の 位 置 を 確 認 していく 適 当 と 思 われる 位 置 が 定 まったと ころで 順 次 漁 具 を 投 入 していき 規 定 の 漁 具 数 を 投 入 し 終 えたところで 最 初 に 投 入 した 漁 具 の 所 に 戻 り 今 度 は 投 入 した 漁 具 を 順 次 引 き 揚 げていく このような 操 業 ( 投 縄 揚 縄 )は1 日 1 回 図 4 : サ バ 立 縄 の 漁 具 100

で 帰 港 後 は 翌 日 に 備 えて 漁 具 の 補 修 や 餌 付 けが 行 われている 使 用 される 餌 はイカ サンマ サバ マイワシ メジカ(マルソウダ) 等 で 漁 獲 物 としてはゴマサバの 他 マサバ メダイ マダイ チカメキントキ ハガツオ ヨコワ 等 があるようだが いうまでもなく 主 要 漁 獲 物 は ゴマサバである なお 土 佐 清 水 市 には 布 窪 津 下 の 加 江 以 布 利 清 水 三 崎 下 川 口 貝 の 川 という8 つの 旧 漁 協 地 区 があるが このうち 下 の 加 江 以 下 の6 地 区 が 合 併 によって 2003 年 以 後 土 佐 清 水 市 漁 協 に 含 まれている その 土 佐 清 水 市 漁 協 地 区 の 05 06 年 における 総 水 揚 げ 高 は 11,413 トン 21 億 938 万 円 9,900 トン 21 億 5,649 万 円 である 同 年 におけるサバの 水 揚 げ 高 は 1,178 トン 3 億 4,496 万 円 (16.4%) 1,078 トン 3 億 20 万 円 (13.9%)であるから サバはこの 地 区 の 主 要 魚 種 であることが 見 て 取 れよう (2) 清 水 サバ ブランド 化 の 経 緯 当 地 区 において 清 水 サバ のブランド 化 に 取 り 組 むきっかけとなったのは 土 佐 清 水 市 漁 協 が 1991 年 に 漁 協 の 魚 を ゴマサバ と 決 定 し 3 月 8 日 をサバの 日 と 定 めたことにあ ったとされている この 頃 ゴマサバの 水 揚 げは 多 かったがその 魚 価 は 低 迷 かつ 乱 高 下 してお り そのため 漁 協 として 地 域 を 代 表 する 魚 種 であるゴマサバをもっとPRする 必 要 があると 考 えたことから このような 試 みが 实 施 されたのである そして 当 漁 協 がゴマサバの 活 魚 化 事 業 を 開 始 したのもこの 年 からであったという その 後 1993 年 になると こうした 取 り 組 みをさらに 強 化 するため 土 佐 清 水 市 漁 協 活 魚 対 策 推 進 委 員 会 ( 株 ) 高 知 県 商 品 計 画 機 構 高 知 県 海 洋 局 の3 者 が 協 力 し 清 水 サバ という 名 前 を 前 面 に 打 ち 出 したブランド 化 戦 略 を 展 開 することになる 具 体 的 には 立 縄 で 漁 獲 され た 大 型 サイズの 活 魚 を 清 水 サバ と 規 定 して その 鮮 度 品 質 管 理 に 関 する 技 術 向 上 や 安 定 的 販 路 の 開 拓 宠 伝 商 標 作 成 等 に 関 する 取 り 組 みを 推 し 進 めたのである 特 に 販 路 開 拓 につ いては 主 に( 株 ) 高 知 県 商 品 計 画 機 構 が 県 の 補 助 を 受 けて 積 極 的 に 取 り 組 んでおり 当 初 は 東 京 を 中 心 とする 関 東 方 面 にかなりアプローチしていたとされている また 土 佐 清 水 市 漁 協 としては 翌 1994 年 に 水 温 管 理 型 円 形 活 魚 水 槽 を 漁 港 内 に 設 置 し 鮮 度 品 質 管 理 及 び 歩 留 まり 向 上 を 図 るための 体 制 を 整 えていく 立 縄 の 漁 業 者 に 対 しても シークーラー の 導 入 (エアレーション 海 水 冷 却 装 置 を 備 えた 活 魚 漕 の 整 備 )を 促 し 国 図 6; 商 標 登 録 された 清 水 サバのロゴマーク からの 支 援 ( 無 利 子 融 資 )も 得 て 急 速 にその 普 及 が 図 られている さらに 1995 年 には 漁 協 職 員 2 名 を 活 魚 流 通 部 門 の 専 任 担 当 として 配 置 し 清 水 サバ の 販 売 出 荷 体 制 を 強 化 する そして 清 水 サバ の 知 名 度 が 高 まり 品 質 に 対 する 信 頼 も 高 まってきた 99 年 には 図 6に 示 したようなロゴマークで 商 標 登 録 を 申 請 翌 2000 年 にはそれが 承 認 されている このようにして 清 水 サバ の 取 り 組 みは 生 産 販 売 流 通 の 諸 側 面 で 技 術 的 にほぼ 確 立 し 近 年 では 安 定 的 販 売 实 績 を 確 保 するに 至 っているのである 101

04-8 05-1 05-6 06-1 06-6 07-1 07-6 08-1 08-6 08-10 価 格 円 /Kg (3) ブランド 化 の 内 容 と 実 績 清 水 サバ のキャッチコピーには 足 摺 生 まれの 足 摺 育 ち 瀬 付 きのゴマサバの 美 味 しさを 保 つ 等 とある ローカルブランドとしての ここにしかない 優 れた 特 性 を 強 調 す ると 同 時 に 高 品 質 を 保 持 している 点 のピーアールがこれに 含 まれる そして こうした 品 質 面 での 差 別 化 対 忚 は 以 下 のような 形 で 行 われている 第 1は 漁 法 とサイズの 限 定 であり これはいうまでもなく 清 水 サバ の 定 義 に 当 たる 部 分 である 具 体 的 には 立 縄 でとれるゴマサバで 1 尾 600 ク ラム 以 上 のもの さらに 活 魚 として 水 揚 げされたものに 対 象 を 限 定 している 第 2は 船 上 での 漁 獲 物 取 扱 方 法 に 関 する 厳 密 な 規 定 である もちろんこの 点 は 鮮 度 品 質 保 持 に 関 連 する 部 分 であり 具 体 的 には 1) 釣 獲 後 清 水 サバ の 対 象 となり 得 るものは 直 ちにシークーラーに 投 入 すること 2)その 際 魚 体 には 直 接 手 を 触 れないようにすること 3) 立 縄 の 上 位 3 本 に 掛 かったものを 活 魚 とし それ 以 外 のものは 除 外 すること 等 である 第 3は, 鮮 度 品 質 保 持 を 徹 底 するための 出 荷 体 制 の 整 備 である 現 在 は 出 荷 時 の 身 質 を 良 好 なものとするため,1~2 日 程 度 活 魚 水 槽 で 蓄 養 してから 活 け 〆 発 砲 詰 め ないし 活 魚 トラックで 出 荷 している また, 刺 身 対 忚 を 基 本 とするため,ユーザーの 手 元 には2 日 以 内 で 届 くような 配 送 体 制 がとられている (4) 販 売 管 理 体 制 と 販 売 実 績 清 水 サバ ( 活 魚 )の 生 産 出 荷 は 注 文 に 忚 じて 行 われているが その 際 の 販 売 価 格 ( 浜 値 )は 生 産 者 サイド( 漁 協 )が 定 めた 固 定 価 格 が 適 用 される そして その 価 格 水 準 は 以 下 のような2つの 目 安 に 基 づいて 定 められている 1つは 生 産 者 の 適 正 な 所 得 確 保 という 考 え 方 である 具 体 的 には 清 水 サバ の 生 産 に 当 たる 個 々の 漁 業 者 が 経 費 を 差 し 引 いて1 日 1 万 円 の 所 得 を 確 保 できるような 価 格 を 設 定 しよ うというのがその 目 安 とされている もう1つは 活 魚 ( 活 け 〆 出 荷 物 )の 価 格 を 鮮 魚 の2 倍 以 上 に 設 定 しようという 考 え 方 である いうまでもなく 活 魚 の 取 扱 には 鮮 魚 以 上 に 費 用 がかか る そのような 費 用 をきちんと 賄 える 価 格 設 定 というのがもう 一 つの 視 点 であったといえよ う このような 目 安 によって 定 められた 出 荷 価 格 は 当 初 よりごく 最 近 まで 630 円 / 尾 とされて いた しかし 燃 油 高 騰 に 対 忚 して 2008 年 10 月 1 日 以 後 は 735 円 / 尾 に 値 上 げしている こ の 値 上 げが 今 後 の 需 要 ( 注 文 )にどう 影 響 するかが 懸 念 されているが 清 水 サ バ は 秋 から 冬 にかけてが 需 要 期 ( 旪 )なので 今 の ところ(2009 年 春 先 までの 時 期 )は 順 調 に 売 れている とのことであった なお 図 7に 示 したように 鮮 魚 の 価 格 が 200~500 円 /Kg で 推 移 しているのに 対 して 清 図 7 ; 清 水 サ バ ( 活 魚 )と 鮮 魚 の 価 格 動 向 1,100 1,000 900 800 700 鮮 魚 600 500 活 魚 400 300 200 100 0 資 料 ; 高 知 県 漁 協 土 佐 清 水 支 店 資 料 102 年 月 ( 西 暦 )

水 サバ ( 活 魚 )の 価 格 は 1 尾 635 円 とすると ほぼ 900 円 /Kg であるから 鮮 魚 の2 倍 以 上 という 目 安 は 十 分 達 成 されている 清 水 サバ の 販 路 については 先 述 のように 当 初 ( 株 ) 高 知 県 商 品 計 画 機 構 が 中 心 となり 主 に 関 東 京 阪 神 方 面 を 開 拓 しようとしてきたのだが やはりゴマサバの 生 ( 刺 身 )での 消 費 に 馴 染 みがないこともあって 結 果 的 にはうまくいかなかった そして その 後 は 県 財 政 問 題 も 関 係 して 商 品 計 画 機 構 の 活 動 は 縮 小 し 清 水 サバ の 販 路 は 徐 々に 地 元 中 心 へ 変 化 してい く 図 8は 2006 07 年 における 清 水 サバ の 販 売 先 別 構 成 比 を 示 したものであるが これに 見 られるように 近 年 では 地 元 販 売 ( 地 元 仲 買 への 販 売 )と 県 内 四 国 内 向 けの 販 売 (ほとんどが 高 知 県 漁 連 取 扱 分 )がほぼ 半 々 となっている 四 国 以 外 に 向 け た 販 売 は 06 年 の 場 合 僅 か 1.5% に 過 ぎず 07 年 には 皆 無 となっ ている これら 以 外 に 個 人 向 け の 販 売 ( 宅 配 )もあるが その 量 は 僅 かで しかも 近 年 はやや 減 尐 傾 向 である このように 清 水 サバ は 地 元 ないし 高 知 県 内 ( 主 に 高 知 市 内 )の ローカル 需 要 に 対 忚 する いわばローカ ル ブランドになっているものといえる なお 注 文 に 忚 えた 生 産 出 荷 システム というのは 注 文 数 量 納 入 日 に 合 わせて 活 魚 を 水 揚 げする 船 数 を 操 業 日 毎 に 適 宜 設 定 するというものである 毎 日 全 船 が 活 魚 を 水 揚 げしても 注 文 数 量 を 超 えてしまう 場 合 がほとんどなので 注 文 数 量 に 見 合 った 隻 数 に 活 魚 対 忚 船 数 を 制 限 する 必 要 があ る 立 縄 漁 船 1 隻 が1 回 の 操 業 で 水 揚 げで きる 活 魚 の 数 量 は ある 程 度 経 験 的 に 把 握 されているので 漁 協 の 担 当 職 員 はそれに 基 づいて 必 要 隻 数 を 定 めるのである もち ろん 先 にみたように 活 魚 の 価 格 は 鮮 魚 の 2 倍 以 上 なので 活 魚 水 揚 げについてはほ ぼ 全 船 が 希 望 する したがって 活 魚 水 揚 げの 対 象 となる 漁 船 はローテーションで 割 り 振 る 方 式 がとられている 50.3% また ブランドの 保 護 については 既 述 103 図 8; 清 清 水 水 サバ( 活 活 魚 魚 )の )の 販 販 売 売 先 先 -2006 年 ; 出 荷 量 59.2トン 2007 年 ; 出 荷 量 53.5トン- 2006 年 1.5% 3.9% 44.3% 47.9% 2007 年 2.9% 地 元 販 売 個 人 宅 配 県 内 四 国 内 関 西 中 国 表 3; 土 佐 清 水 地 区 におけるサハ の 水 揚 げ 状 況 2005 2006 2007 漁 獲 量 鮮 魚 1,139 1,078 595 (トン) 活 魚 39 41 37 計 1,178 1,119 633 水 揚 額 鮮 魚 310,080 262,888 155,016 ( 千 円 ) 活 魚 34,876 37,310 33,706 計 344,956 300,198 188,722 価 格 鮮 魚 272.2 244.0 260.3 ( 円 /Kg) 活 魚 900.0 900.0 900.0 計 292.8 268.3 298.2 数 量 鮮 魚 96.7 96.3 94.1 構 成 比 活 魚 3.3 3.7 5.9 (%) 計 100.0 100.0 100.0 金 額 鮮 魚 89.9 87.6 82.1 構 成 比 活 魚 10.1 12.4 17.9 (%) 計 100.0 100.0 100.0 資 料 ; 高 知 県 漁 協 土 佐 清 水 支 所 資 料 49.2%

のような 商 標 を 用 いた 包 装 資 材 を 用 いることで 対 忚 している 具 体 的 には 活 〆 した 魚 1 尾 ず つ 尻 尾 にラベルを 巻 き ビニールの 袋 に 入 れる それを 発 泡 スチロール 箱 に 氷 とともに 入 れ て 箱 の 上 部 にシールを 貼 るというのが 基 本 的 な 荷 姿 となる もちろん ラベル ビニール 袋 シールには 商 標 (ロゴ)が 明 記 されている 清 水 サバ = 活 魚 の 生 産 实 績 は 表 3に 示 した 通 りである 2005 年 から 07 年 にかけての 活 魚 生 産 量 は 39 トン 41 トン 37 トンとほぼ 安 定 しており その 需 要 は 根 強 く 安 定 的 であることが わかる ただし 活 魚 の 数 量 構 成 比 は 僅 か 3~6% 程 度 である 金 額 構 成 比 では 10~18%とな っているが 漁 業 経 営 の 改 善 という 視 点 で 見 ればやはり 十 分 な 量 とはいえない (5) 課 題 以 上 みたように 清 水 サバ ブランド 化 の 取 り 組 みは 価 格 プレミアムを 恒 常 的 に 实 現 し 安 定 した 需 要 を 確 保 している 点 で 十 分 効 果 を 上 げているものと 評 価 できる また 地 域 資 源 と して 清 水 サバ を 観 光 等 地 域 活 性 化 に 役 立 てようという 取 り 組 みも 強 化 されてきた しかし そうした 成 果 が 立 縄 漁 業 の 経 営 改 善 や 後 継 者 確 保 等 につながったかというと 必 ず しもそうなってはいない むしろ 2007 年 は 漁 獲 量 が 例 年 よりも 大 きく 減 尐 し(にもかかわ らず 鮮 魚 価 格 はほとんど 上 昇 していない) 漁 業 経 営 はかなり 厳 しい 状 況 となった それ 故 清 水 サバ の 販 路 を 広 げ 漁 獲 量 に 占 める 活 魚 の 比 率 を 上 げて 漁 業 経 営 の 改 善 につなげること が 当 面 の 最 重 要 課 題 になっているといえるだろう もう 一 つの 問 題 は 末 端 で 他 地 区 定 置 網 のゴマサバが 類 似 の 刺 身 向 け 商 材 として 出 回 ってい る 点 である 今 のところ 清 水 サバ のニセ 物 として 出 回 っている 可 能 性 は 低 いようだが こ れが 競 合 関 係 にあることは 間 違 いない つまり 低 価 格 の 他 地 区 産 品 が 清 水 サバ の 足 を 引 っ 張 るという 可 能 性 もあり 得 るわけで それでもなお 清 水 サバ が 選 好 され 高 価 格 を 維 持 し 得 るか 否 かが 問 われているのである 清 水 サバ の 高 品 質 を 維 持 することはもちろんだが その 上 で 今 後 はさらに 川 下 へのアプローチを 強 め ブランド 価 値 の 訴 求 に 努 力 することが 求 め られているように 思 われる 104

生 産 量 (トン) Ⅱ.フグの 地 域 ブランド 化 の 取 り 組 み 独 立 行 政 法 人 水 産 大 学 校 准 教 授 三 木 奈 都 子 1.はじめに 本 稿 ではフグの 地 域 ブランドの 取 り 組 みについて 遠 州 灘 とらふぐ と 玄 海 とらふぐ 下 関 ふく を 中 心 に 取 り 上 げる 2.フグの 供 給 と 流 通 の 変 化 と 現 状 まず はじめにフグの 供 給 と 流 通 の 変 化 と 現 状 を 踏 まえておきたい (1)フグ 消 費 流 通 上 の 特 徴 フグの 消 費 と 流 通 の 特 徴 は 第 一 に 他 の 魚 と 異 なり 毒 を 持 つフグの 調 理 には 免 許 が 必 要 である 都 道 府 県 が 多 く それが 流 通 の 障 害 になっている 点 である フグの 取 り 扱 いについて は 都 道 府 県 の 条 例 や 要 綱 により 定 められている 第 二 にフグのなかでもトラフグは 養 殖 物 輸 入 物 といえども 単 価 の 高 い 魚 種 であるため 消 費 が 景 気 に 左 右 されやすいことであり 2008 年 秋 の 経 済 危 機 以 降 の 景 気 の 後 退 のなかで 苦 戦 を 強 いられている 第 三 にはフグはも ともと 関 西 で 消 費 が 多 かったが 1990 年 代 半 ば 以 降 徐 々に 関 東 に 消 費 が 広 がりつつある ことである (2)フグの 供 給 と 流 通 の 変 化 1フグ 類 の 生 産 量 図 1に 示 したように フグ 類 の 国 内 漁 業 生 産 量 は 近 年 では 2000 年 が 高 く 約 1 万 1000 ト ンを 示 したが その 後 は 6000 トン 前 後 に 減 尐 している この 統 計 はフグ 類 でひととくくり になっており フグの 種 類 別 の 生 産 量 を 把 握 することは 困 難 である 2 天 然 トラフグ 生 産 量 既 に 触 れたように フグ 類 のな かで 経 済 的 地 位 の 高 いトラフグ の 生 産 量 は 漁 業 養 殖 業 生 産 統 計 では 項 目 がないため 明 らかで ない そこで トラフグの 主 要 産 地 である 東 シナ 海 や 玄 海 灘 など の 外 海 地 区 と 内 海 地 区 の 漁 獲 量 の 合 計 を 把 握 しようと 試 みたの が 表 1である 外 海 地 区 の 漁 獲 量 については 南 風 泊 市 場 のデータ から 把 握 し 内 海 地 区 の 主 要 産 地 12,000 10,000 8,991 8,238 図 1 フグ 類 の 漁 業 生 産 量 資 料 : 漁 業 養 殖 業 生 産 統 計 年 報 である 愛 知 三 重 静 岡 の 東 海 地 区 の 漁 獲 量 については 各 県 データを 集 めた 8,000 6,000 4,000 2,000 0 1995 年 かつて 1970 年 代 には トラフグはともに 経 済 的 地 位 が 高 かったカラスフグと 合 わせて 約 4000 トンの 漁 獲 があったといわれているが 次 第 にカラスフグ 資 源 が 枯 渇 して 漁 獲 されな 1996 年 1997 年 7,103 1998 年 8,329 1999 年 9,647 10,989 2000 年 2001 年 7,820 7,869 2002 年 2003 年 6,340 6,704 6,266 5,693 2004 年 2005 年 2006 年 105

くなり トラフグも 1990 年 代 前 半 には 1000 トン 以 下 に 漁 獲 量 が 減 尐 した 外 海 地 区 と 東 海 地 区 を 分 けてみると 外 海 地 区 の 漁 獲 量 は 1990 年 代 前 半 は 500 トン 前 後 あったが その 後 漸 減 し 近 年 は 100 トン 前 後 となった 一 方 東 海 地 区 は 漁 獲 量 の 変 動 が 大 きく 70 トンから 540 トンの 間 を 推 移 している この 外 海 地 区 と 内 海 地 区 のトラフグの 漁 獲 量 を 合 計 すると 1990 年 代 以 降 おおよそ 200 トンから 700 トンの 間 で 推 移 している ことが 分 かる 表 1 天 然 トラフグの 漁 獲 量 の 概 算 単 位 :トン 区 分 1989 年 1990 1991 1992 1993 1994 1995 1996 1997 1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 外 海 + 東 海 3 県 概 算 922 609 668 606 679 400 445 234 198 228 228 509 345 641 340 212 197 269 外 海 ( 南 風 泊 市 場 取 扱 量 ) 577 315 485 471 392 234 279 164 114 95 107 90 86 100 74 85 103 118 東 海 計 345 294 183 135 287 166 166 70 85 132 121 419 259 540 267 127 94 151 静 岡 63 112 43 30 58 46 28 11 10 35 19 100 61 111 55 22 13 38 愛 知 76 131 110 89 148 97 108 50 61 61 87 235 158 257 154 79 62 73 三 重 205 51 30 16 81 23 30 9 14 36 15 84 40 172 58 26 19 40 資 料 : 南 風 泊 市 場 資 料 静 岡 県 ふぐ 漁 組 合 連 合 会 資 料 三 重 県 資 料 愛 知 県 資 料 全 国 漁 業 協 同 組 合 連 合 会 平 成 10 年 度 資 源 管 理 型 漁 業 総 合 普 及 啓 発 事 業 ( 静 岡 愛 知 関 連 産 業 社 意 識 調 査 ( 静 岡 県 愛 知 県 三 重 県 のトラフグ 漁 業 ) 報 告 書 より 作 成 注 ) 三 重 県 のデータは 三 重 県 水 産 研 究 所 調 べ 期 間 は10 月 ~ 翌 年 2 月, 漁 業 種 類 は 延 縄 漁 業 主 な 漁 獲 地 である 鳥 羽 磯 部 漁 協, 志 摩 の 国 漁 協 熊 野 灘 漁 協 長 島 町 漁 協, 海 山 漁 協, 尾 鷲 漁 協, 熊 野 漁 協, 紀 南 漁 協 のデータを 集 計 している 3 国 内 養 殖 生 産 量 と 輸 入 量 (1) 国 内 養 殖 生 産 量 と 輸 入 量 の 関 係 図 2は 国 内 養 殖 生 産 量 と 輸 入 のほとんどを 占 める 中 国 からの 輸 入 量 の 推 移 を 示 したもの である 天 然 トラフグの 漁 獲 量 が 減 尐 した 90 年 代 前 半 に 国 内 養 殖 物 が 増 加 していった 1990 年 代 半 ばに 阪 神 大 震 災 の 影 響 と 推 察 される 減 尐 期 があったものの その 後 も 養 殖 生 産 量 が 増 加 した 中 国 からの 養 殖 トラフグの 輸 入 量 も 90 年 代 後 半 以 降 低 価 格 チェーン 店 の 展 開 な どを 背 景 に 増 加 し 2001 年 には 国 内 養 殖 生 産 量 と 輸 入 量 を 合 わせて 約 9000 トンに まで 達 した しかしながら 2003 年 以 降 は 養 殖 フグの 寄 生 虫 除 去 対 策 として 行 われ ていたホルマリン 薬 浴 問 題 が 発 覚 したことから 国 産 養 殖 生 産 量 が 減 尐 し それを 補 完 するかたちで 輸 入 量 が 増 加 し 2004 年 には 国 内 養 殖 生 産 量 を 超 えた この 動 きは 長 くは 続 かず 2006 年 以 降 は 基 準 が 設 定 さ れていない 農 薬 等 が 一 定 以 上 含 まれる 食 品 の 流 通 を 原 則 禁 止 する ポジッティブリ スト 制 度 が 出 来 たこと 中 国 産 食 品 に 対 する 不 安 から 中 国 産 食 品 が 敬 遠 されたことから 中 国 からの 輸 入 量 が 減 尐 した 106

(2) 養 殖 主 要 県 の 順 位 の 変 化 1990 年 代 末 の 主 要 な 養 殖 県 は 長 崎 県 と 大 分 県 で 養 殖 生 産 量 がともに 1600~1700 トン 程 度 で 接 近 していたが ホルマリン 薬 浴 問 題 発 覚 後 以 降 は 長 崎 県 が 生 産 量 を 伸 ばしたのに 対 して 熊 本 県 は 急 速 に 減 尐 し 2006 年 の 養 殖 生 産 量 は 長 崎 県 が 2520 トンだったのに 対 して 熊 本 県 は 574 トンとなった (3)フグの 資 源 管 理 天 然 トラフグの 漁 獲 量 が 減 尐 するなかで 2001 年 から 計 画 が 策 定 され 始 めた 国 の 資 源 回 復 計 画 においても トラフグを 対 象 とした 計 画 が 開 始 された 2002 年 に 公 表 された 伊 勢 湾 三 河 湾 小 型 機 船 底 曳 き 網 漁 業 対 象 種 資 源 回 復 計 画 と 2005 年 からの 九 州 山 口 北 西 海 域 ト ラフグ 資 源 回 復 計 画 である このなかでは 休 漁 小 型 魚 の 再 放 流 保 護 区 の 設 定 などが 行 わ れている (4)フグの 流 通 拠 点 下 関 南 風 泊 市 場 の 変 化 かつて 東 シナ 海 や 玄 海 灘 などのトラフグの 外 海 の 漁 場 に 近 かった 下 関 にトラフグの 水 揚 げが 集 中 していたことから 1974 年 ( 昭 和 49 年 )にはフグの 取 り 扱 いに 特 化 した 南 風 泊 市 場 が 整 備 された それ 以 前 から 下 関 にはフグ 調 理 師 免 許 を 持 った 職 人 が 集 積 していたうえに 南 風 泊 市 場 の 整 備 により 全 国 の 天 然 フグが 集 まることとなり 全 国 的 に 下 関 の 印 象 とし て フグ が 定 着 するようになった しかしながら 90 年 代 前 半 以 降 第 一 にバブル 崩 壊 により 南 風 泊 市 場 の 価 格 が 低 落 したこ と 第 二 に 東 京 や 大 阪 に 近 い 東 海 地 区 のトラフグの 漁 獲 量 が 増 加 したこと 第 三 に 低 価 格 チ ェーン 店 の 出 現 等 が 影 響 して 関 東 でもフグ 需 要 が 拡 大 していったことなどにより 東 海 地 区 の 天 然 トラフグが 南 風 泊 市 場 に 集 まりにくくなった 天 然 トラフグの 減 尐 を 補 うだけでなくそれ 以 上 に 大 量 に 供 給 されるようになった 養 殖 ト ラフグ 輸 入 トラフグは 直 接 販 売 が 行 われると 同 時 に 大 量 に 身 欠 きにする 必 要 からフグを 捌 ける 者 の 数 が 多 い 南 風 泊 市 場 を 通 過 する 量 も 多 くなった 古 くから 全 国 的 にも 名 が 知 れた 下 関 のフグであるが 1990 年 代 以 降 供 給 構 造 は 天 然 物 中 心 から 国 内 養 殖 物 輸 入 物 中 心 へと 大 きく 変 化 した 3.フグの 地 域 ブランド 化 の 取 り 組 み 地 域 団 体 商 標 認 証 制 度 かつてはフグといえば 流 通 拠 点 である 下 関 の 地 名 が 有 名 であり 下 関 の 地 名 はある 意 味 フグの 流 通 ブランドであったが このような 供 給 構 造 の 変 化 に 伴 って フグにおいても 2000 年 頃 から 産 地 の 地 域 ブランド 化 等 の 動 きが 示 されてきた (1) 天 然 トラフグのブランド 化 の 取 り 組 み 天 然 トラフグの 産 地 のなかで 内 海 に 区 分 される 東 海 地 区 の 静 岡 県 三 重 県 愛 知 県 外 海 地 区 の 福 岡 県 鐘 崎 でそれぞれトラフグの 地 域 ブランド 化 の 取 り 組 みが 示 されている いず れも 地 元 で 漁 獲 されたものを 地 域 の 旅 館 や 飲 食 店 で 食 べさせる 地 産 地 消 ブランドとして 取 り 組 んでいるが 活 動 の 主 体 は 必 ずしも 生 産 者 ではなく 流 通 業 者 や 観 光 業 者 の 関 わりが 示 されている 107

東 海 地 区 の 三 重 県 安 乗 地 区 で 行 われている 安 乗 ふぐ は 1999 年 頃 から 開 始 され その 後 愛 知 県 の 日 間 賀 島 では 2000 年 頃 から そして 静 岡 県 浜 松 市 で 行 われている 遠 州 灘 と らふぐ は 2003 年 秋 から 開 始 された 外 海 地 区 の 福 岡 県 宗 像 市 鐘 崎 の 玄 海 とらふぐ は 2002 年 からである (2)トラフグ 以 外 の 天 然 フグのブランド 化 の 取 り 組 み トラフグ 以 外 では 山 口 県 萩 市 で 2006 年 から 開 始 された 萩 の 真 ふぐ の 取 り 組 みがあ る 養 殖 物 や 輸 入 物 の 割 合 が 高 いトラフグと 異 なり すべて 天 然 である 点 を 強 調 したもので ある (3) 養 殖 業 者 の 認 証 制 度 等 ホルマリン 薬 浴 問 題 以 降 の 2006 年 頃 にできたのが 長 崎 県 適 正 養 殖 業 者 認 証 制 度 熊 本 県 適 正 養 殖 業 者 認 証 制 度 などの 養 殖 業 者 の 認 証 制 度 である これはトラフグ 養 殖 業 者 に 限 定 したものではないが トラフグ 養 殖 のホルマリン 薬 浴 問 題 以 降 養 殖 トラフグの 安 心 安 全 を 担 保 するために 開 始 されたと 考 えられる 近 年 は 養 殖 JAS も 開 始 された 養 殖 JAS は 消 費 者 の 食 に 対 する 関 心 の 高 まりに 対 忚 して 消 費 者 の 信 頼 の 確 保 を 図 るため その 養 殖 魚 の 生 産 履 歴 に 関 する 情 報 を 生 産 者 や 流 通 業 者 などの 事 業 者 が 正 確 にかつ 自 主 的 に 消 費 者 に 伝 えていることを 第 三 者 機 関 が 認 定 するものである (4) 国 産 養 殖 トラフグのブランド 化 の 取 り 組 み 養 殖 ふぐでは 近 年 開 始 された 長 崎 県 で 養 殖 ふぐを 取 り 扱 う 産 地 荷 受 けである 西 日 本 魚 市 株 式 会 社 が 中 心 になった 長 崎 ふぐ がある 条 件 は 第 一 に 重 量 が 800gであること 第 二 に 出 荷 時 期 が 10 月 から 3 月 であること 第 三 にヒレの 欠 損 がないこと 第 四 に 生 産 履 歴 書 を 添 付 して 出 荷 すること 第 五 に 長 崎 県 生 産 者 認 定 漁 業 者 であることを 条 件 としている こ れは 主 に 低 価 格 のふぐ 料 理 チェーン 店 と 結 びついた 市 場 外 流 通 向 けのブランドである (5) 地 域 団 体 商 標 2008 年 には 山 口 県 下 関 市 で 下 関 唐 戸 魚 市 場 仲 卸 協 同 組 合 が 地 域 団 体 商 標 下 関 ふく を 取 得 した これは 身 欠 き 処 理 したフグ を 定 義 としており 加 工 ブランドであるといえ る 108

1993 1994 1995 1996 1997 1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 漁 獲 量 (トン) 単 価 ( 円 /kg) 4. 東 海 地 区 における 天 然 トラフグの 地 産 地 消 ブランド 遠 州 灘 とらふぐ の 取 り 組 み (1) 静 岡 県 におけるトラフグの 生 産 動 向 静 岡 県 では トラフグのほとんどが 延 縄 漁 業 によって 漁 獲 されている 延 縄 漁 業 によっ て 漁 獲 されるトラフグは 5 年 程 度 の 周 期 で 豊 漁 を 繰 り 返 している 近 年 では 1984 年 ( 昭 和 59 年 ) 1989 年 ( 平 成 元 年 ) 1993 年 ( 平 成 5 年 ) 2000 年 ( 平 成 12 年 ) 2002 年 ( 平 成 14 年 )が 豊 漁 年 であった 図 3は 1993 年 以 降 の 静 岡 県 におけるトラフグ 漁 獲 量 と 単 価 の 推 移 を 図 示 したものである 2000 年 と 2002 年 は 漁 獲 量 が 100 トンを 越 えた 漁 獲 金 額 は 最 高 時 で 約 5 億 600 万 円 (2002 年 ) 最 低 時 で 約 1 億 4280 円 (1997 年 )であっ 図 3 静 岡 県 におけるトラフグ 漁 獲 量 と 単 価 の 推 移 資 料 : 静 岡 県 ふぐ 漁 組 合 連 合 会 資 料 た 平 均 単 価 が 高 かったのは 漁 獲 量 が 尐 なかった 1996 年 の 約 16,200 円 /kg であり 平 均 単 価 が 低 かったのは 漁 獲 量 が 1993 年 以 降 で 最 高 であった 2002 年 の 4,100 円 /kg であった 静 岡 県 のトラフグの 漁 獲 量 の 変 動 およびそれに 伴 う 価 格 の 変 動 が 大 きい 120 100 80 60 40 20 0 年 度 漁 獲 量 単 価 18,000 16,000 14,000 12,000 10,000 8,000 6,000 4,000 2,000 0 (2) 地 区 別 のトラフグ 漁 獲 と 流 通 の 実 態 静 岡 県 のトラフグ 漁 業 者 が 多 いのは 県 西 部 の 舞 阪 地 区 と 福 田 地 区 である トラフグ 延 縄 漁 業 は 解 禁 されている 10 月 から 2 月 までの 冬 場 の 漁 業 であり 漁 業 者 は 夏 場 に 他 の 漁 業 と 組 み 合 わせ 冬 場 も 漁 模 様 を 見 ながらトラフグ 延 縄 漁 に 出 るか 他 の 漁 業 を 行 うかを 決 定 する トラフグ 延 縄 漁 業 を 行 うためには 静 岡 県 ふぐ 漁 組 合 連 合 会 に 加 入 し 会 費 を 納 める 必 要 が ある 上 記 のように 会 員 数 が 必 ずしも 实 際 にトラフグ 延 縄 漁 業 を 行 った 人 数 ではないが 2007 年 の 静 岡 県 ふぐ 漁 組 合 連 合 会 の 会 員 数 は 県 内 で 291 人 そのうち 舞 阪 地 区 が 63 人 福 田 地 区 が 72 人 であった 1 福 田 町 漁 協 地 区 福 田 町 漁 協 の 漁 船 隻 数 は 2004 年 時 点 で 約 160 隻 漁 協 組 合 員 数 は 約 400 人 であった 福 田 町 漁 協 の 漁 獲 はシラスを 主 体 としており 正 組 合 員 約 200 人 のうち 8 割 の 約 160 人 がシラ ス 船 曳 網 船 の 船 主 (28 ヵ 統 ) あるいは 乗 組 員 としてシラス 漁 業 に 従 事 している 残 りの 正 組 合 員 の 約 2 割 にあたる 約 40 人 が 冬 季 にトラフグ 延 縄 漁 業 を 行 い その 他 の 時 期 はシラス 以 外 の 漁 船 漁 業 に 従 事 している トラフグが 福 田 町 漁 協 の 漁 獲 金 額 のなかで 一 定 程 度 を 占 め るようになったのは 豊 漁 であった 1989 年 ( 平 成 元 年 ) 以 降 である 109

2 浜 名 漁 協 地 区 浜 名 漁 協 は 漁 協 正 組 合 員 数 が 1000 人 を 越 え る 静 岡 県 で 最 も 人 数 規 模 の 大 きい 漁 協 であり 浜 松 市 舞 阪 町 の 本 所 と 7 カ 所 の 支 所 から 構 成 されて いる 2006 年 には 正 組 合 員 が 1008 人 准 組 合 員 が 1784 人 であった 本 店 のある 舞 阪 地 区 では 浜 名 湖 湾 内 の 漁 業 と 外 海 の 漁 業 が 組 み 合 わせられ ている シラスを 対 象 とした 船 曳 き 網 延 縄 漁 業 刺 網 漁 業 一 本 釣 り 漁 業 アサリ 漁 業 ノリ 養 殖 カキ 養 殖 など 多 くの 漁 業 がある 2007 年 にトラフグ 延 縄 漁 業 に 従 事 していたの は 63 隻 であった トラフグ 延 縄 漁 業 外 の 時 期 は 刺 網 漁 業 カツオ 釣 り サワラ 釣 りなどを 行 って いる シラス 船 曳 網 漁 業 を 兼 業 する 船 も 約 25 隻 ある 表 2は 2006 年 の 浜 名 漁 協 の 魚 種 別 の 漁 獲 金 額 と 構 成 比 を 示 したものである 全 体 の 漁 獲 金 額 は 約 41.2 億 円 であり 魚 種 別 にみると1 位 のシラス (43.6%)と2 位 のアサリ(27.6%)で 71.2%を 占 めている それ 以 外 の 多 くの 魚 種 の 構 成 比 はそ れぞれ 数 %であり 分 散 している フグ 類 は 3.1% であり シラスを 除 いた 魚 類 のなかでは 金 額 が 高 いほうである 表 2 浜 名 漁 協 の 漁 獲 金 額 (2006 年 ) 魚 種 漁 獲 金 額 ( 千 円 ) 構 成 比 (%) 計 4,115,290 100.0 シラス 1,775,378 43.1 アサリ 1,118,368 27.2 ノリ 208,326 5.1 シラスウナギ 177,801 4.3 フグ 類 128,072 3.1 エビ 類 107,728 2.6 タイ 類 89,706 2.2 カキ 66,534 1.6 スズキ 55,169 1.3 タチウオ 45,997 1.1 ウナギ アナゴ 34,455 0.8 ヒラメ カレイ 32,940 0.8 カニ 類 31,342 0.8 アジ 類 23,492 0.6 サヨリ 19,124 0.5 カツオ 類 18,821 0.5 ハゼ 17,594 0.4 イカ 類 12,836 0.3 シラスアユ 12,694 0.3 コチ 7,444 0.2 コノシロ 6,573 0.2 サワラ 3,677 0.1 サバ 2,927 0.1 キス 2,727 0.1 ボラ 2,296 0.1 イサキ 2,021 0.0 その 他 の 魚 類 111,248 2.7 資 料 : 浜 名 漁 協 資 料 (3)トラフグの 地 元 消 費 促 進 活 動 の 経 緯 と 担 い 手 かつて 東 海 地 区 のトラフグの 漁 獲 量 は 多 くはなかったが 1989 年 度 (1989 年 10 月 ~1990 年 2 月 )の 豊 漁 以 降 外 海 地 区 の 漁 獲 量 が 減 尐 するなかで 変 動 はあるもののある 程 度 の 量 の 漁 獲 量 があることからトラフグ 産 地 として 重 要 視 されるようになった しかしながら 地 元 でトラフグを 食 べる 食 文 化 はなく ほとんどが 下 関 や 大 阪 東 京 など 地 域 外 に 出 荷 されて いた このようななかで 地 元 でのトラフグ 消 費 促 進 の 活 動 は 1990 年 代 後 半 から 企 画 され 2003 年 11 月 に 浜 松 市 内 の 観 光 地 である 舘 山 寺 町 とその 他 市 内 の 19 の 宿 泊 施 設 料 理 屋 の 合 計 24 施 設 が 集 まって 遠 州 灘 ふぐ 調 理 加 工 組 合 が 組 織 されたことによって 具 体 的 な 活 動 が 開 始 した 組 織 にふぐ 調 理 の 免 許 を 有 する 者 がいれば 舘 山 寺 町 から 10~20km 程 度 離 れた 舞 阪 地 区 や 福 田 地 区 から 直 接 トラフグを 仕 入 れることにより 輸 送 費 や 仲 卸 のマージンを 節 約 でき トラフグを 安 く 消 費 者 に 提 供 できると 考 えたためである この 事 業 には 舘 山 寺 町 に2つのホテルを 所 有 する 地 元 鉄 道 会 社 系 のホテル 会 社 が 主 に 出 資 しており 上 記 組 合 の 結 成 に 際 し 2003 年 10 月 にこの 会 社 が 所 有 する 舘 山 寺 町 のホテルの 敷 地 内 にあった 総 菜 加 工 場 をトラフグの 身 欠 き 加 工 場 に 転 換 した これは 2003 年 3 月 に 交 代 したこのホテルの 社 長 が 地 産 地 消 の 方 針 を 打 ち 出 したことが 大 きく 関 係 しているという トラフグは 宿 泊 実 が 尐 なくなる 冬 季 の 集 実 対 策 として 位 置 づけられた このトラフグ 地 元 消 費 の 促 進 活 動 には 浜 名 湖 周 辺 観 光 を 企 画 運 営 する 浜 名 湖 えんため という 会 員 数 約 70 110

単 価 ( 円 /kg) 漁 獲 金 額 ( 億 円 ) 単 価 ( 円 /kg) の 任 意 団 体 も 後 援 している 遠 州 灘 ふぐ 調 理 加 工 組 合 は 2003 年 度 から 中 小 企 業 庁 の ジャパンブランド 育 成 事 業 か ら 助 成 金 を 受 け それを 利 用 した 商 品 作 りや 展 示 会 PR 事 業 マ-ケテイングを 行 った PR 事 業 として 東 京 や 名 古 屋 で 観 光 業 者 を 招 いてフグ 料 理 の 試 食 会 を 開 催 し 商 品 開 発 とし てフグ 皮 を 利 用 した 菓 子 のフグサブレを 商 品 化 した (4) 漁 協 漁 業 者 にとってのトラフグ 上 記 のように 観 光 業 者 飲 食 店 業 者 が 中 心 になっている 遠 州 灘 とらふぐ の 取 り 組 みで あるが 生 産 者 及 び 仲 買 業 者 のほうでも 課 題 があった 漁 業 者 や 漁 協 にとっては 第 一 に 漁 獲 量 が 静 岡 県 全 体 で 約 40 トン 以 上 になると 価 格 が 低 落 してしまい( 図 4) その 結 果 総 漁 獲 金 額 も 約 40 トンを 超 すと 4~5 億 円 で 頭 打 ちとなっ てしまうこと( 図 5) 第 二 に 10~2 月 の 漁 期 のなかでは 漁 獲 量 が 集 中 する 10 月 は 年 末 に 比 べるとトラフグ 需 要 が 小 さいため 価 格 が 低 いことがあげられる( 図 6) 全 体 的 な 需 要 を 拡 大 し 特 に 価 格 が 低 落 する 10 月 の 需 要 を 確 保 する 方 法 として 地 元 需 要 の 喚 起 が 考 えられるが 实 際 的 には 漁 協 な ど 生 産 者 は 遠 州 灘 とらふぐ の 活 動 に はほとんど 関 わっていない これは 第 一 に 浜 名 漁 協 の 組 合 員 数 が 多 数 で 漁 業 種 類 及 び 漁 獲 される 魚 種 も 多 数 である ため 漁 協 内 のバランスから 漁 協 が 特 定 の 漁 業 者 や 魚 種 だけを 支 援 し 難 いこと があげれた 第 二 にトラフグ 延 縄 に 従 事 する 漁 業 者 にとっても トラフグ 延 縄 漁 業 は 冬 季 だけの 季 節 的 な 漁 業 で かつ 冬 季 も 漁 模 様 によっては 他 の 魚 種 を 対 象 とした 漁 に 切 り 替 えるため 単 価 が 高 い 重 要 な 魚 種 ではあるものの 操 業 ペースから 考 える と 中 心 的 な 漁 業 ではない そのため トラフグのブランド 化 の 取 り 組 みに 対 して 特 にエネ ルギーを 注 ぐことにならないという 18,000 16,000 14,000 12,000 10,000 8,000 6,000 4,000 2,000 0 1996 1997 1999 2004 2005 1995 1994 1998 2006 2003 1993 2001 図 4 トラフク の 漁 獲 量 と 平 均 単 価 の 関 係 資 料 : 静 岡 県 ふぐ 漁 組 合 連 合 会 2000 2002 0 20 40 60 80 100 120 漁 獲 量 (トン) 20000 18000 16000 14000 12000 10000 8000 6000 4000 2000 0 2004 2003 2006 2005 10 月 11 月 12 月 1 月 2 月 図 5 月 別 の 単 価 の 変 化 資 料 : 静 岡 県 ふぐ 漁 組 合 連 合 会 資 料 111 6 5 4 3 2 1 0 1999 2004 1997 2005 1996 1995 1994 2003 2001 1998 2006 1993 図 6 トラフク の 漁 獲 量 と 漁 獲 金 額 の 関 係 資 料 : 静 岡 県 ふぐ 漁 組 合 連 合 会 2000 2002 0 20 40 60 80 100 120 漁 獲 量 (トン)

(5) 仲 買 業 者 のトラフグ 流 通 浜 名 漁 協 市 場 の 鮮 魚 を 扱 う 仲 買 業 者 数 は 約 30 業 者 あり うち 6 業 者 がトラフグを 扱 って いる トラフグが 豊 漁 であった 1989 年 ( 平 成 元 年 )にはトラフグを 扱 う 仲 買 業 者 の 数 が 増 加 したがその 後 は 減 尐 し 6 業 者 になった この 6 業 者 は 主 に 貝 類 を 扱 う1 業 者 を 除 いて 年 間 を 通 じて 鮮 魚 を 買 い 付 け 主 に 消 費 地 卸 売 市 場 への 出 荷 を 行 っている 10~2 月 にトラフグ 3~5 月 にスズキ クロダイ マダイ 6~9 月 にタチウオ アジ サバを 扱 っている トラ フグに 関 してはどの 業 者 も 他 所 から 養 殖 物 や 天 然 物 を 仕 入 れることはなく 当 地 で 漁 獲 され たトラフグだけを 出 荷 している 一 方 の 福 田 町 漁 協 の 卸 売 市 場 の 仲 買 業 者 には シラス 加 工 を 専 門 に 行 う 約 15 業 者 と 主 に カツオやタチウオなど 鮮 魚 を 扱 う 約 20 業 者 がおり 鮮 魚 を 扱 う 仲 買 業 者 のなかで 3 業 者 が トラフグを 扱 っている トラフグを 扱 う 業 者 はかつて 1989 年 度 の 豊 漁 後 には 5~6 業 者 いた が 減 尐 した この3 業 者 のうち 1 業 者 は 宿 泊 施 設 であり 実 に 提 供 する 魚 を 購 入 し 残 りの 2 業 者 は 自 営 小 売 店 を 経 営 し 自 営 用 の 魚 を 仕 入 れる 傍 ら 消 費 地 市 場 への 出 荷 も 行 っている トラフグを 扱 う 仲 買 業 者 は かつて 豊 漁 であった 1990 年 前 後 の 南 風 泊 市 場 のトラフグ 価 格 がよかった 時 代 には 南 風 泊 市 場 にも 活 魚 で 出 荷 していたが 価 格 が 低 下 してからは 輸 送 距 離 が 長 い 下 関 市 の 南 風 泊 市 場 へはほとんど 出 荷 していない それは 一 般 的 に 尐 量 の 場 合 水 槽 にエアレ-ションをしていくが 浜 名 漁 協 から 下 関 までは 乾 電 池 が 持 続 しないために 活 魚 車 を 利 用 せざるを 得 ない 活 魚 車 を 利 用 する 際 にはコストの 面 から 漁 獲 量 がまとまること が 条 件 となるが 漁 獲 量 が 安 定 していないためにその 条 件 を 満 たす 年 はあまりなく それゆ え 活 魚 車 を 所 有 する 業 者 も 尐 ない さらに 下 関 までの 輸 送 費 は 活 魚 車 1 台 あたり 大 型 車 で 約 40 万 円 小 型 車 で 約 25 万 円 かか るため 量 がまとまったとしても 活 魚 車 1 台 あたり 大 型 車 で 約 40 万 円 小 型 車 で 約 25 万 円 という 輸 送 経 費 を 負 担 しても 利 益 が 出 る 程 度 の 南 風 泊 市 場 の 価 格 でないと 下 関 に 送 るこ とにならないのである そのため 近 年 は 大 阪 方 面 や 東 京 方 面 への 出 荷 が 中 心 となっていた (6) 遠 州 灘 ふぐ 調 理 加 工 組 合 のトラフグの 原 料 仕 入 れ 遠 州 灘 ふぐ 調 理 加 工 組 合 の 身 欠 き 加 工 場 ではふぐ 調 理 の 免 許 を 有 する4 人 とその 他 の2 名 が 加 工 作 業 にあたり 身 欠 き 加 工 後 のトラフグは 冷 凍 保 存 されている トラフグの 仕 入 れ は 開 始 当 初 は 浜 松 市 舞 阪 町 にある 浜 名 漁 協 の 産 地 卸 売 市 場 の1 仲 買 業 者 だけから 仕 入 れて いたが その 後 安 定 的 な 仕 入 れを 目 指 して 福 田 漁 協 でフグを 仕 入 れる 福 田 町 と 相 良 町 の 2 仲 買 業 者 を 加 えた 3 業 者 から 仕 入 れるようになった このうち 浜 名 漁 協 の 産 地 卸 売 市 場 の 仲 買 業 者 は 遠 州 灘 ふぐ 調 理 加 工 組 合 関 係 者 と 懇 意 に していた 浜 名 漁 協 所 属 のトラフグ 漁 業 者 が 間 に 入 って 遠 州 灘 ふぐ 調 理 加 工 組 合 と 関 係 が 形 成 された その 結 果 この 業 者 は 従 来 域 別 の 出 荷 割 合 が 地 元 5 割 関 東 3 割 関 西 2 割 で あったものが ほぼ 全 量 を 地 元 の 遠 州 灘 ふぐ 調 理 加 工 組 合 に 出 荷 するようになった 福 田 漁 協 の 産 地 卸 売 市 場 の2 業 者 のうち 取 扱 量 が 多 い 福 田 町 内 の 仲 買 業 者 は 従 来 消 費 地 市 場 への 送 り 先 はすべて 東 京 であったが 遠 州 灘 ふぐ 調 理 加 工 組 合 に 出 荷 するようにな って 以 降 は 地 元 用 の 割 合 が 上 昇 した 相 良 町 の 仲 買 業 者 は 東 京 大 阪 の 消 費 地 市 場 への 送 り 中 心 でたまに 下 関 の 南 風 泊 市 場 にも 送 っていた 状 態 に 地 元 向 けが 加 えられた (7)トラフグの 地 元 消 費 の 現 状 112

宿 泊 とトラフグ 料 理 をセットにした 価 格 設 定 は トラフグ 料 理 店 のコ-スの 金 額 だけで 宿 泊 もできることを 宠 伝 文 句 として 1 人 1 泊 フグコース 夕 食 付 きを 約 2 万 円 にしている 遠 州 灘 ふぐ 調 理 加 工 組 合 の 当 初 の 目 標 実 数 は4 万 人 で 2003 年 度 が 4 万 人 ( 初 年 度 は 11 月 後 半 開 始 )と 出 だしは 好 調 であった( 表 3) 実 の 7~8 割 が 地 元 の 忘 年 会 実 残 りの 2~3 割 が 中 京 三 河 方 面 からの 実 であり ほとんどが 広 義 の 地 元 実 であった 翌 2004 年 度 には 予 約 状 況 は 順 調 であったが 漁 獲 量 が 尐 なく 仕 入 れ 量 の 尐 なさから 途 中 で 予 約 を 停 止 せざるを 得 ない 自 体 が 発 生 した 遠 州 灘 ふぐ 調 理 加 工 組 合 は 1 漁 期 の 舞 阪 地 区 の 漁 獲 量 が 15 トン 程 度 以 上 あることを 見 込 んで 身 欠 き 加 工 を 開 始 したものの 2004 年 度 の 舞 阪 地 区 の 漁 獲 量 は 尐 なく 仕 入 れ 価 格 が 高 騰 し 宿 泊 実 に 定 価 でトラフグを 提 供 すると 逆 ザヤ 状 態 に 陥 ってしまっ たのであった その 後 も 漁 獲 量 の 変 動 があり トラフグの 使 用 量 表 3 遠 州 灘 ふぐ 調 理 加 工 組 合 のフグ 使 用 実 績 と 漁 獲 量 年 度 食 数 使 用 量 漁 獲 量 (トン) 使 用 割 合 価 格 ( 万 人 ) (トン) 舞 阪 B 静 岡 県 (%) ( 円 /kg) 2003 4.0 5.0 31.4 55.3 15.9 7,679 2004 3.5 5.7 14.9 21.9 38.3 11,207 2005 2.0 3.3 9.0 13.2 36.7 11,316 2006 2.5 4.4 24.1 38.6 18.3 5,615 2007 3.5 4.7 43.9 67.8 10.7 注 )2004 年 度 は 途 中 で 予 約 を 打 ち 切 った は 2005 年 度 は 3 トン 台 と 尐 なかったものの それ 以 外 の 年 は 4~6 トンの 間 であった 舞 阪 地 区 の 漁 獲 量 に 占 める 遠 州 灘 ふぐ 調 理 加 工 組 合 の 使 用 割 合 は 漁 獲 量 が 多 い 年 には 1~2 割 尐 ない 年 には 3~4 割 に 上 昇 する 今 後 の 遠 州 灘 とらふぐ の 取 り 組 みを 通 した 地 元 消 費 の 展 開 にとっては トラフグの 供 給 量 の 安 定 と 価 格 の 安 定 が 極 めて 重 要 である そのため 遠 州 灘 ふぐ 調 理 加 工 組 合 では 遠 州 灘 産 トラフグを 広 義 にとらえて 遠 州 灘 産 ふぐ の 仕 入 れ を 静 岡 県 内 に 限 定 せず 広 く 東 海 三 県 を 集 荷 範 囲 としようとすることを 考 えている 5. 福 岡 県 宗 像 市 鐘 崎 漁 協 の 玄 海 とらふく (1) 漁 業 の 概 要 鐘 崎 漁 協 の 漁 協 組 合 員 数 は 2007 年 3 月 末 に 243 人 であった 全 国 的 には 漁 業 者 の 減 尐 が 激 しいが 当 地 では 漁 協 組 合 員 数 の 減 尐 度 合 いが 小 さく また 2003 年 時 点 で 44 歳 未 満 の 漁 業 就 業 者 が 全 体 の 半 数 を 上 回 っており 若 年 者 の 割 合 が 高 いことが 特 徴 である 船 主 と 乗 組 員 を 合 わせて 162 人 がフグ 延 縄 漁 業 に 従 事 している 5~19 トンの 30 隻 が 12 月 か ら 3 月 までの 間 フグ 延 縄 漁 業 を 行 って いる フグ 延 縄 漁 業 は 冬 季 の 季 節 操 業 で あり 他 の 時 期 にはまき 網 漁 業 あるいは 表 4 鐘 崎 漁 協 の 漁 業 種 類 別 の 漁 獲 金 額 (2006 年 ) 漁 業 種 類 漁 獲 金 額 ( 千 円 ) 構 成 比 (%) 計 2,492,051 100.0 中 型 まき 網 漁 業 1,079,719 43.3 フク 延 縄 漁 業 293,380 11.8 一 本 釣 漁 業 197,349 7.9 イカたる 流 し 漁 業 155,014 6.2 イカ 一 本 釣 漁 業 116,241 4.7 棒 受 網 漁 業 111,623 4.5 その 他 の 延 縄 漁 業 85,049 3.4 タイ 延 縄 漁 業 83,237 3.3 吾 智 網 漁 業 63,518 2.5 フク 籠 漁 業 62,869 2.5 アマダイ 延 縄 漁 業 55,402 2.2 その 他 188,650 7.6 資 料 : 鐘 崎 漁 協 第 58 年 度 業 務 報 告 書 吾 智 網 漁 業 などと 組 み 合 わせている 鐘 崎 漁 協 の 漁 獲 金 額 は ピークの 1991 年 には 約 45 億 円 あったが その 後 増 減 を 繰 り 返 し ここ 数 年 は 25 億 円 前 後 である 2006 年 の 24 億 9205 113

漁 獲 量 (トン) 漁 獲 金 額 ( 億 円 ) 漁 獲 量 (トン) 平 均 単 価 ( 円 /kg) 万 円 のうち フク 延 縄 漁 業 は 2 億 9338 万 円 で 11.8%を 占 めている( 表 4) 図 8に 示 したように 鐘 崎 漁 協 の 年 間 のトラフグ 漁 獲 量 と 漁 獲 金 額 は 1990 年 代 後 半 に 大 幅 に 減 尐 し 2000 年 代 の 漁 獲 金 額 は 2 億 5000 万 円 から 3 億 円 の 間 を 推 移 している 2006 年 度 は 56.7 トンで 2 億 5614 万 円 であった 漁 獲 されたトラフグのほとんどが 卸 売 市 場 に 出 荷 される 市 場 出 荷 の 6 割 強 は 下 関 の 南 風 泊 市 場 に 出 荷 され 残 りが 福 岡 市 場 と 北 九 州 市 場 向 けである 南 風 泊 市 場 にとっては 鐘 崎 漁 協 地 区 が 重 要 な 外 海 産 トラフグの 産 地 となっている( 図 9) 南 風 泊 市 場 の 外 海 産 トラフグの 取 り 扱 い 量 は 既 にみた 静 岡 県 の 漁 獲 量 と 比 べると 安 定 して おり 単 価 の 変 動 は 静 岡 県 のトラフグ 価 格 よりも 小 さい 産 地 市 場 である 地 元 の 玄 海 市 場 は 仲 買 人 数 が 尐 なく 価 格 が 低 いために 2006 年 に 閉 鎖 された そのため 現 在 では 漁 業 者 が 直 接 南 風 泊 市 場 をはじめとする 他 地 区 の 卸 売 市 場 に 販 売 している 主 要 な 卸 売 業 者 は 現 地 まで 集 荷 にきている 80.0 70.0 60.0 50.0 40.0 30.0 20.0 10.0 0.0 1994 1995 1996 1997 1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 図 8 鐘 崎 漁 協 のトラフグの 漁 獲 状 況 の 変 化 資 料 : 鐘 崎 漁 協 資 料 年 漁 獲 量 (トン) 漁 獲 金 額 ( 億 円 ) 8.0 7.0 6.0 5.0 4.0 3.0 2.0 1.0 0.0 140 120 100 80 60 40 20 0 1997 1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 年 鐘 崎 の 漁 獲 量 (トン) 南 風 泊 市 場 ( 天 然 外 海 )の 漁 獲 量 (トン) 鐘 崎 の 平 均 単 価 ( 円 /kg) 12000 10000 8000 6000 4000 2000 図 9 鐘 崎 漁 協 の 漁 獲 量 と 平 均 単 価 資 料 : 鐘 崎 漁 協 資 料 下 関 唐 戸 魚 市 場 株 式 会 社 魚 種 別 取 扱 高 表 0 (2) 玄 海 とらふく の 担 い 手 2002 年 に 玄 海 とらふく のプロジェクトが 鐘 崎 漁 協 とフグ 船 団 という 生 産 者 が 中 心 に なって 立 ち 上 げられ 2004 年 には 玄 海 観 光 協 会 玄 海 町 商 工 会 玄 海 ホテル 旅 館 組 合 福 岡 県 宗 像 市 がメンバーに 加 わって 玄 海 とらふくブランド 化 推 進 協 議 会 が 作 られた ブラン ド 化 の 取 り 組 みに 係 る 宠 伝 費 等 の 費 用 は 漁 協 が 負 担 している 鐘 崎 漁 協 による 玄 海 とらふぐ の 取 り 組 みは 1999 年 に 開 始 された 釣 りアジの 玄 ち ゃんアジ のブランド 化 の 取 り 組 みに 続 くものと 位 置 づけられる 玄 ちゃんアジ は 1998 年 の 魚 まつり において 鐘 崎 漁 協 青 壮 年 部 から 釣 りアジ をなんとかブランド 化 できな いかという 話 が 持 ち 上 がり それを 観 光 協 会 に 持 ち 掛 けたことから 開 始 され 鐘 崎 漁 協 が 2002 年 9 月 に 商 標 登 録 を 済 ませた (3) 玄 海 とらふく の 内 容 上 記 の 推 進 協 議 会 では 玄 海 とらふく は 観 光 実 に 地 域 に 来 て 消 費 してもらう 呼 び 寄 せ 114

価 格 ( 円 /kg) 取 扱 量 ( 養 殖 天 然 )(トン) 取 扱 量 ( 外 海 内 海 )(トン) 型 の 地 域 ブランドとして 位 置 づけ 鐘 崎 漁 協 が 玄 海 とらふく を 販 売 する 対 象 は 登 録 し た 市 内 12 の 旅 館 レストランだけで すべて 直 接 販 売 である これらの 旅 館 レストラン では 調 理 は 各 施 設 ごとに 行 い フグ 料 理 を 提 供 している 漁 協 はこれらの 旅 館 レストラ ンへのフグを 提 供 する 場 合 サイズは 1kg 以 上 に 限 定 し 価 格 は 10000 円 /kg の 定 価 とし ている 期 間 は 漁 獲 量 が 増 加 する 2 月 1 日 から 2 月 15 日 までの 半 月 である 鐘 崎 漁 協 は 福 岡 県 の 主 要 都 市 である 福 岡 市 と 北 九 州 市 の 間 にあり 観 光 実 を 集 めるのに 位 置 的 に 好 条 件 にあると 考 えられるが 福 岡 市 民 は 美 味 しい 水 産 物 を 食 べに 行 くとなると 佐 賀 県 の 唐 津 や 呼 子 など 西 のほうに 目 を 向 けがちであるため 鐘 崎 漁 協 では 尐 しでも 県 内 の 当 地 に 注 目 を 集 めようとしている 鐘 崎 漁 協 ではトラフグ 生 産 量 が 多 いため 市 場 出 荷 を 基 本 とせざるを 得 ないが 単 価 向 上 の 努 力 として 玄 海 とらふく の 取 り 組 みを 行 っている 現 時 点 では 地 産 地 消 に 限 定 して 玄 海 とらふく の 取 り 組 みが 行 われているが 2009 年 度 か らは 漁 協 でフグ 調 理 を 行 い 全 国 発 送 することも 予 定 している 6. 地 域 団 体 商 標 下 関 ふく (1) 下 関 市 南 風 泊 市 場 におけるフグの 取 り 扱 い 状 況 1フグ 供 給 の 変 化 下 関 市 にはフグの 流 通 拠 点 である 南 風 泊 市 場 が 存 在 することから 全 国 的 にも フグといえば 下 関 という 認 2,500 2,000 250 200 識 がある 程 度 定 着 していたものの 高 級 フグであるトラフグの 取 り 扱 いに おいては 1990 年 代 以 降 南 風 泊 市 1,500 1,000 150 100 場 で 扱 われる 国 産 養 殖 トラフグと 輸 入 トラフグが 増 大 し フグの 供 給 状 況 が 大 きく 変 化 した 2007 年 の 天 然 物 の 割 合 は 約 12%であった 天 然 物 のうち 外 海 産 はおおよそ 100 トン 前 後 を 推 移 しているのに 対 して 内 海 産 は 変 動 が 非 常 に 激 しい 2 価 格 形 成 の 変 化 価 格 の 上 下 が 尐 ない 養 殖 トラフグ と 比 べて 天 然 トラフグは 年 ごとの 漁 獲 量 変 動 に 対 忚 して 価 格 が 大 きく 上 下 している このような 違 いを 保 持 し つつ 両 者 ともに 2000 年 代 になって 全 体 的 に 価 格 が 低 下 した これは 近 年 になって 養 殖 トラフグが 低 価 格 チェ ーン 店 等 との 結 びつきを 強 くし かつ てより 定 価 的 な 扱 いを 受 けるように 500 0 図 10 南 風 泊 市 場 における 養 殖 天 然 別 産 地 別 のトラフグ 取 り 扱 い 量 資 料 : 下 関 唐 戸 魚 市 場 株 式 会 社 魚 種 別 取 扱 高 表 注 :ここで 示 した 養 殖 には 国 産 と 輸 入 と 両 方 が 含 まれている 18000 16000 14000 12000 10000 8000 6000 4000 2000 0 19971998199920002001200220032004200520062007 年 養 殖 天 然 計 内 海 外 海 1989 1991 1993 1995 1997 1999 2001 2003 2005 2007 内 海 活 外 海 活 養 殖 活 養 殖 〆 図 11 南 風 泊 市 場 における 養 殖 天 然 別 産 地 別 の 価 格 資 料 : 下 関 唐 戸 魚 市 場 株 式 会 社 魚 種 別 取 扱 高 表 50 0 年 115

取 り 扱 い 金 額 ( 百 万 円 ) 取 り 扱 い 全 体 に 占 める 割 合 (%) なっていることや 全 体 的 な 魚 価 の 低 迷 に 同 調 したものと 考 えられる 3 株 式 会 社 下 関 唐 戸 魚 市 場 の 取 り 扱 い 状 況 図 12 は 南 風 泊 市 場 の 卸 売 業 者 である 下 関 唐 戸 魚 市 場 株 式 会 社 の 取 り 扱 い 金 額 を 示 したも のである フグ 類 では 単 価 の 低 い 養 殖 物 特 に 輸 入 物 が 増 加 したことを 主 な 理 由 とし て 90 年 代 後 半 は 減 尐 傾 向 に あったが 2000 年 代 になっ て 南 風 泊 市 場 でのフグ 類 以 外 の 水 産 物 の 取 り 扱 いを 増 加 させるなどの 結 果 取 扱 金 額 が 増 えた しかしながら その 後 主 に 単 価 の 低 落 によ り 再 び 下 関 唐 戸 魚 市 場 株 式 14,000 12,000 10,000 8,000 6,000 4,000 2,000 0 1997 年 1998 年 1999 年 2000 年 2001 年 2002 年 2003 年 2004 年 2005 年 2006 年 取 り 扱 い 全 体 南 風 泊 市 場 フグ 類 南 風 泊 市 場 割 合 フグ 類 割 合 2007 年 70.0 60.0 50.0 40.0 30.0 20.0 10.0 0.0 会 社 の 取 り 扱 い 金 額 が 減 尐 すると 同 時 に フグ 類 の 取 り 扱 い 金 額 及 び 取 り 扱 い 金 額 全 体 に 占 める 割 合 の 低 下 が 示 された 2007 年 には 若 干 盛 り 返 した 図 12 下 関 唐 戸 魚 市 場 株 式 会 社 の 取 扱 状 況 資 料 : 下 関 唐 戸 魚 市 株 式 会 社 魚 種 別 取 扱 高 表 ) 4 国 産 養 殖 トラフグの 取 り 扱 い 2002 年 のホルマリン 薬 浴 問 題 の 発 覚 後 ホルマリンを 使 用 した 養 殖 トラフグの 取 り 扱 い については 卸 売 業 者 である 下 関 唐 戸 魚 市 場 は 安 全 性 が 確 保 されていることを 前 提 に 受 け 入 れる 考 えであったが 2003 年 9 月 に 下 関 唐 戸 魚 市 場 仲 卸 協 同 組 合 が 取 り 扱 い 拒 否 を 正 式 決 定 したため 市 場 への 上 場 ができなくなった その 後 南 風 泊 市 場 では 養 殖 トラフグの 安 心 安 全 を 示 すために 2004 年 2 月 に 下 関 南 風 泊 市 場 養 殖 トラフグトレーサビィティシステム 導 入 促 進 協 議 会 を 立 ち 上 げ 参 加 して いる 企 業 が 取 り 扱 った 養 殖 トラフグの 履 歴 を 消 費 者 に 開 示 するようになった 参 加 企 業 は トラフグ 養 殖 業 者 と 下 関 唐 戸 魚 市 場 下 関 唐 戸 魚 市 場 仲 卸 協 同 組 合 のメンバーのうち 比 較 的 規 模 が 大 きい7 業 者 である (2) 地 域 団 体 商 標 下 関 ふく の 内 容 と 取 得 の 経 緯 地 域 団 体 商 標 の 下 関 ふく の 出 願 団 体 は 下 関 市 地 方 卸 売 市 場 の 仲 卸 組 合 のひとつであ る 下 関 唐 戸 魚 市 場 仲 卸 協 同 組 合 で 出 願 日 が 2007 年 9 月 30 日 登 録 査 定 送 達 日 は 翌 年 2008 年 の 10 月 3 日 であった 現 時 点 での 下 関 ふく の 定 義 は 下 関 市 地 方 卸 売 市 場 南 風 泊 市 場 で 水 揚 げされて 下 関 唐 戸 魚 市 場 仲 卸 協 同 組 合 の 組 合 員 により 身 欠 き 処 理 され 取 り 扱 われるトラフグ である つまり 下 関 ふく は 産 地 ブランドではなく 流 通 業 者 によ って 身 欠 き 処 理 という 加 工 が 施 される 場 所 として 下 関 の 名 前 が 冠 されている 流 通 ( 加 工 ) ブランドであるといえる 下 関 唐 戸 魚 市 場 仲 卸 協 同 組 合 が 地 域 団 体 商 標 下 関 ふく を 出 願 しようとするに 至 ったの 116

は 他 の 地 域 に ふく の 本 場 をとられてしまう 危 機 感 からだったという 山 口 県 徳 山 市 の 流 通 業 者 がフグ 延 縄 発 祥 の 地 を 唱 えたり 既 に 示 したようなフグの 地 産 地 消 を 開 始 した 産 地 が 出 現 したりしたことなどによる 下 関 唐 戸 魚 市 場 仲 卸 協 同 組 合 は 2004 年 1 月 に 下 関 ふ く マークを 商 標 登 録 していたが 他 人 が 図 形 等 と 一 体 で 商 標 を 使 用 した 場 合 にしか 侵 害 と ならず 大 消 費 地 の 飲 食 店 や 量 販 店 が 下 関 を 経 由 していないフグに 対 して 下 関 の 地 名 を 使 用 するケースなどの 文 字 だけの 使 用 を 排 除 できなかったことも 関 わっている さらに 中 国 など 外 国 で 先 に 商 標 登 録 され 日 本 で 登 録 できない 事 態 に 陥 る 心 配 もあった 現 在 下 関 唐 戸 魚 市 場 仲 卸 協 同 組 合 の 組 合 員 が 扱 った 身 欠 きフグを 入 れた 発 泡 スチロール 箱 には マークと 通 し 番 号 出 荷 した 業 者 の 名 前 と 連 絡 先 を 明 記 した 下 関 ふく マークを 添 付 している 下 関 ふく 取 得 後 の 2008 年 12 月 以 降 のシールの 貼 付 意 外 の 活 動 としては シンボルマークの 一 般 公 募 にとどまっている 図 13 地 域 団 体 商 標 下 関 ふく のシンボルマーク( 左 )とシール( 右 ) 資 料 : 下 関 唐 戸 魚 市 場 仲 卸 協 同 組 合 ホ ー ム ペ ー ジ http://www.axis.or.jp/~karato-n/contents (3) 登 録 権 者 である 下 関 唐 戸 魚 市 場 仲 卸 協 同 組 合 下 関 唐 戸 魚 市 場 仲 卸 協 同 組 合 は もともとの 設 立 は 1951 年 ( 昭 和 26 年 )と 古 い 組 織 であ る 以 前 は 任 意 組 織 であったが 2001 年 からは 山 口 県 中 小 企 業 団 体 中 央 会 に 加 盟 する 協 同 組 合 となった 現 在 組 合 員 数 は 27 人 で 組 合 員 すべてが 唐 戸 市 場 及 び 南 風 泊 市 場 の 仲 買 人 である 下 関 唐 戸 魚 市 場 仲 卸 協 同 組 合 が 下 関 ふく の 申 請 をする 際 にまず 特 許 庁 が 指 摘 したの は フグの 街 である 下 関 ではフグに 関 わり 申 請 において 下 関 唐 戸 魚 市 場 仲 卸 協 同 組 合 と 競 合 する 可 能 性 がある 複 数 の 組 織 下 関 唐 戸 魚 市 株 式 会 社 下 関 ふく 連 盟 ふぐ 輸 出 組 合 ふ ぐ 輸 入 組 合 などとの 調 整 の 必 要 であった ひとつめの 下 関 唐 戸 魚 市 場 株 式 会 社 は 下 関 地 方 卸 売 市 場 の 卸 売 業 者 であり 仲 買 業 者 とは 緊 密 な 関 係 にある ふたつめの 下 関 ふく 連 盟 は 1961 年 ( 昭 和 36 年 )に 主 に 下 関 唐 戸 魚 市 場 株 式 会 社 と 下 関 唐 戸 魚 市 場 仲 卸 協 同 組 合 が 中 心 となり 飲 食 店 や 旅 館 業 者 も 入 って 設 立 さ れたフグ 業 者 の 組 織 で ふく 連 盟 の 全 国 組 織 もある 3 つめのふぐ 輸 出 組 合 は 1987 年 ( 昭 和 62 年 ) 頃 にアメリカ ニューヨークの 料 理 店 からフグ 輸 出 の 要 請 があったことから 作 ら れた 組 織 であり 下 関 唐 戸 魚 市 場 仲 卸 協 同 組 合 の 組 合 員 がメンバーである 4つめのふぐ 輸 入 組 合 は 安 心 安 全 なトラフグを 輸 入 することを 目 的 に 下 関 唐 戸 魚 市 場 と 下 関 唐 戸 魚 市 場 仲 卸 協 同 組 合 とで 2005 年 に 設 立 した 組 合 である 中 国 産 養 殖 トラフグの 残 留 薬 品 などの 117

検 査 体 制 を 整 え 合 格 すれば 安 全 シールを 貼 り クレームに 対 忚 する 体 制 も 整 備 した その 他 にも 下 関 唐 戸 魚 市 場 と 下 関 唐 戸 魚 市 場 仲 卸 協 同 組 合 で 出 資 して 設 立 した 唐 戸 カモンワー フと 南 風 泊 でふぐ 関 連 商 品 を 販 売 するアンテナショップを 運 営 する 株 式 会 社 ふくの 里 という 会 社 がある このようにふぐが 関 わる 組 織 がいずれも 下 関 唐 戸 魚 市 場 仲 卸 協 同 組 合 の 組 合 員 が 構 成 メ ンバーに 入 っているか 深 い 関 係 を 持 つ 組 織 であり 申 請 にあたっての 競 合 関 係 にないこと を 下 関 唐 戸 魚 市 場 仲 卸 協 同 組 合 は 特 許 庁 に 連 絡 して 申 請 にこぎ 着 けた (4) 流 通 ( 加 工 )ブランドとしての 下 関 ふく フグは 一 次 処 理 として 身 欠 き 作 業 が 行 われる それは 商 品 の 善 し 悪 し 以 前 に 食 品 安 全 に 関 わるふぐ 毒 の 除 去 が 必 要 であるためである 下 関 唐 戸 魚 市 場 仲 卸 協 同 組 合 の 組 合 員 は 自 分 たちが 持 つ 高 いフグの 除 毒 技 術 により 下 関 からふぐ 食 を 普 及 させたと 自 負 している 下 関 唐 戸 魚 市 場 仲 卸 協 同 組 合 の 組 合 員 はほとんどが 組 合 創 設 時 期 から 加 入 し 2 代 3 代 と 続 いてい る 業 者 であり 安 全 への 信 頼 を 大 事 にしてきている さらに 養 殖 トラフグの 取 扱 量 が 増 加 し てからは 養 殖 トラフグの 水 槽 での 管 理 や 処 理 技 術 もフグ 仲 買 業 者 の 技 術 としての 評 価 に 含 まれるようになったという 組 合 員 が 5 万 匹 ものフグを 収 容 できる 約 400 の 水 槽 設 備 を 所 有 し 取 り 扱 い 可 能 量 が 多 いことも 下 関 唐 戸 魚 市 場 仲 卸 協 同 組 合 の 特 徴 である 身 欠 き 作 業 及 び 養 殖 トラフグの 水 槽 での 管 理 のノウハウは 地 域 団 体 商 標 下 関 ふく を 取 得 した 下 関 唐 戸 魚 市 場 仲 卸 協 同 組 合 の 業 者 それぞれに 形 成 継 承 されてきており 統 一 は されていない かつては 身 欠 き 技 術 を 他 所 の 業 者 などに 公 開 していた 時 期 があったが 下 関 で 修 業 をした 者 が 他 のふぐ 産 地 でふぐの 身 欠 き 作 業 を 行 ってトラフグの 地 産 地 消 の 活 動 を 開 始 するなど 下 関 唐 戸 魚 市 場 仲 卸 協 同 組 合 の 組 合 員 の 首 を 絞 めることになりかねない 事 態 になっており 現 在 では 各 業 者 内 部 で 伝 えるものとなっているという 下 関 唐 戸 魚 市 場 仲 卸 協 同 組 合 の 組 合 員 のなかには 一 部 身 欠 き 作 業 以 外 の 加 工 を 行 う 業 者 もいるが 二 次 加 工 を 中 心 にする 者 は 組 合 員 にはおらず 大 きくは1 仲 卸 業 のみを 行 う 2 唐 戸 市 場 で 小 売 も 行 う 3 加 工 も 行 うという 3 つに 区 分 される 業 者 としての 規 模 も 夫 婦 だ けの 小 規 模 から 従 業 員 30 人 の 中 規 模 まで 幅 がある 下 関 唐 戸 魚 市 場 仲 卸 協 同 組 合 の 組 合 員 がフグを 販 売 する 加 工 業 者 からは 下 関 ふく シ ールの 使 用 を 要 望 されるがそれは 認 めておらず あくまで 下 関 唐 戸 魚 市 場 仲 卸 協 同 組 合 の 組 合 員 の 使 用 にとどめているし それも 身 欠 き 品 に 限 定 している また 輸 入 フグについても 輸 入 組 合 のシールを 貼 るため 下 関 ふく のシールを 添 付 することはない 下 関 ふく の シール 添 付 の 対 象 は 主 に 国 産 養 殖 フグである 仲 卸 業 者 の 出 荷 は 消 費 地 市 場 に 出 荷 するほか 料 理 屋 への 販 売 店 舗 での 小 売 があった が 近 年 インターネット 等 を 使 用 した 通 信 販 売 が 伸 びており 下 関 ふく のシールが 直 接 消 費 者 の 目 に 触 れるシーンも 尐 なくない 今 後 加 工 品 を 下 関 ふく の 範 囲 に 入 れる のか 身 欠 き までの 加 工 方 法 を 標 準 化 するのか 組 合 員 間 で 議 論 することとしている (3) 小 括 下 関 ふぐ は 第 一 に 従 来 あった 下 関 =フグ のイメージを 保 持 しようとする 守 りの ブランドであると 考 えられる 取 り 組 みの 範 囲 は 旧 来 からあったフグ 関 係 組 織 から 変 わるこ 118

とはなく 新 たな 地 域 内 外 での 連 携 展 開 等 は 特 に 示 されていない 第 二 に 流 通 ( 加 工 )ブランドである 下 関 ふく では 身 欠 き 技 術 の 高 さが 特 徴 として 強 調 されているが 他 所 では 一 定 水 準 以 上 の 技 術 を 身 につけていれば 技 術 の 高 低 はさほど 問 われ ないともいわれている 90 年 代 以 降 に 天 然 物 中 心 から 国 産 養 殖 トラフグや 輸 入 トラフグが 増 加 して 南 風 泊 市 場 のフグの 供 給 構 造 が 変 化 してからは フグ 調 理 の 免 許 を 有 した 者 及 び 加 工 業 者 が 集 積 し 養 殖 トラフグを 中 心 とした 大 量 のフグを 処 理 できることが 南 風 泊 市 場 の 機 能 としてより 重 要 になってきたと 考 えられる 7. 考 察 (1) 産 地 のフグのブランド 化 の 動 きとフグの 流 通 拠 点 下 関 かつて 下 関 市 の 南 風 泊 市 場 には 多 くの 天 然 フグが 集 まるフグの 集 積 地 で それゆえフグ 毒 を 除 去 できるフグ 調 理 の 免 許 を 有 した 者 が 集 積 し 下 関 =フグ のイメージが 定 着 した し かし 第 一 にその 後 天 然 トラフグの 産 地 では 南 風 泊 市 場 の 価 格 が 低 迷 したことや 漁 獲 量 が 減 尐 し 単 位 量 あたりの 輸 送 コストが 増 大 したことにより 出 荷 を 南 風 泊 市 場 から 他 の 市 場 に 振 り 替 えたり 観 光 業 と 結 びついた 地 元 消 費 型 のブランド 化 の 取 り 組 みが 2000 年 頃 から 進 められたりした 第 二 に 2003 年 の 養 殖 トラフグのホルマリン 薬 浴 問 題 発 覚 後 に トラフグ 養 殖 県 では 養 殖 業 者 の 認 証 制 度 を 導 入 し また 2006 年 頃 から 示 された 消 費 者 の 中 国 産 の 輸 入 トラフグに 対 する 不 安 感 に 対 しては 南 風 泊 市 場 で 輸 入 フグをチェックする 制 度 を 整 えていった これ らはフグ 毒 以 外 の 安 全 対 策 であった 当 初 は 上 記 のような 安 全 の 確 保 対 策 にとどまったが 近 年 は 養 殖 トラフグ 産 地 のブランド 化 の 取 り 組 みも 示 されている 従 来 低 価 格 ゆえに 低 価 格 フグチェーン 店 に 原 料 として 直 接 販 売 され 産 地 を 特 筆 することがなかった 国 産 養 殖 トラ フグであるが より 安 価 な 輸 入 トラフグを 原 料 とする 他 の 低 価 格 チェーン 店 との 差 別 化 を 図 りたいフグチェーン 店 と 連 携 した 養 殖 トラフグ 産 地 が 産 地 名 を 消 費 者 に 訴 える 取 り 組 みを 開 始 した これは 量 的 に 国 産 養 殖 フグを 主 対 象 とする 下 関 ふく と 競 合 的 な 関 係 にある といえる 第 三 に 多 くが 南 風 泊 市 場 を 経 由 してきたマフグも 天 然 ゆえ 養 殖 トラフグや 輸 入 トラフグ よりも 安 全 で かつ 低 価 格 であることが 強 調 されて 産 地 のブランド 化 の 取 り 組 みが 行 わ れている 以 上 のような 天 然 トラフグや 国 産 養 殖 トラフグ マフグの 産 地 がブランド 化 の 取 り 組 みを 開 始 したことにおり 危 機 感 を 持 った 下 関 があらためて 地 域 団 体 商 標 下 関 ふく を 登 録 し た 下 関 =フグの 街 に 変 化 はないものの その 内 容 は 南 風 泊 市 場 におけるフグの 供 給 構 造 の 変 化 によって かつての 高 級 魚 である 天 然 トラフグの 流 通 拠 点 下 関 から フグを 大 量 に 捌 ける 街 下 関 に 変 容 していると 考 えられる (2) 天 然 トラフグ 産 地 のブランド 化 の 取 り 組 みにおける 担 い 手 の 違 い 天 然 トラフグ 産 地 のブランド 化 の 取 り 組 みである 遠 州 灘 とらふぐ 玄 海 とらふぐ は ともに 観 光 業 者 が 関 わった 消 費 者 呼 び 寄 せタイプのブランドである しかし 玄 海 とら ふぐ が 漁 業 者 と 漁 協 が 中 心 の 取 り 組 みであるのに 対 して 遠 州 灘 とらふぐ では 漁 協 の 関 与 がなく 観 光 業 者 主 体 のものとなっている それはトラフグ 延 縄 漁 業 者 が 種 々の 漁 業 を 組 119

み 合 わせ 特 にトラフグに 大 きく 依 存 しているわけでなく 同 様 に 漁 協 にとっても 地 域 に 多 様 な 漁 業 種 類 魚 種 があるなかで 漁 業 者 間 のバランスからトラフグだけに 肩 入 れしにくい という 状 況 があるためである 120

Ⅲ. 漁 協 合 併 と 地 域 ブランドのその 後 について 大 分 県 の 事 例 財 団 法 人 魚 価 安 定 基 金 業 務 部 長 佃 朊 紀 はじめに 関 ブランドについては 既 に 多 数 の 人 々によってその 評 価 がなされているように 水 産 関 係 ブランドとしては 成 功 事 例 の 一 つとして 位 置 づけられていることは 周 知 のとおりである ところが この 関 ブランドを 確 立 後 佐 賀 関 町 漁 協 における 環 境 は 二 つの 大 きな 変 化 に 見 舞 われた 一 つは 漁 協 の 合 併 である 平 成 14 年 4 月 に 大 分 県 内 の 27 漁 協 が 合 併 して1 県 1 漁 協 となったことにより 組 織 及 びその 事 業 の 内 容 も 大 きく 変 わった そして もう 一 つ の 変 化 は 佐 賀 関 町 漁 協 を 行 政 面 で 支 えてきた 佐 賀 関 町 が 平 成 17 年 1 月 1 日 に 野 津 原 町 と ともに 大 分 市 に 編 入 されたことである 構 造 的 に 支 えてきた 二 つの 組 織 が 合 併 という 形 で 大 きく 変 貌 したのである こうした 環 境 の 変 化 は 当 然 ながら 全 国 のトップブランドとして 位 置 づけられてきた 関 ブランド も その 様 相 を 大 きく 変 えてきたことはあまり 知 られていないように 思 われる そこで 今 回 は 全 国 のトップブランドである 関 ブランド を 中 心 にした 大 分 県 内 にお ける 地 域 ブランドが 漁 協 の 合 併 市 町 村 の 合 併 とともにどのように 変 化 が 起 きてきたか 調 査 を 行 うこととした 1. 地 域 ブランドに 関 するこれまでの 県 漁 協 の 動 き 下 記 の 大 分 県 漁 協 のホームページの 概 要 に 見 られるように 漁 協 合 併 は 平 成 14 年 4 月 に 全 国 でも 初 めての 県 域 での 初 めての 合 併 が 行 われ 誕 生 したものである この 中 には 信 用 共 済 指 導 購 買 販 売 事 業 の 質 の 高 い 総 合 的 なサービス 提 供 がうたわれている 特 に 販 売 事 業 については 他 業 態 との 競 争 激 化 に 対 忚 できるよう 系 統 組 織 の 抜 本 的 改 革 等 が 語 られているところである 大 分 県 漁 業 協 同 組 合 (JFおおいた)は 全 国 に 先 駆 け 県 内 の27 漁 協 が 合 併 し 平 成 14 年 4 月 に 日 本 一 の 大 型 漁 業 協 同 組 合 として 誕 生 しました 漁 業 協 同 組 合 は 経 済 的 に 弱 い 立 場 にある 漁 業 者 がその 経 営 と 生 活 を 守 り 向 上 させるために 組 織 し 利 用 し 運 営 する 運 動 組 織 体 であり 経 済 経 営 体 であります 漁 協 の 事 業 は 組 合 員 が 自 らの 営 漁 と 生 活 上 の 必 要 を 満 たすために 協 同 活 動 を 行 っています その 協 同 活 動 のうち 販 売 購 買 信 用 共 済 指 導 事 業 など 質 の 高 い 総 合 的 なサービスが 行 え るよう 日 々 取 り 組 むとともに 枯 渇 する 漁 業 資 源 に 対 しては 資 源 管 理 体 制 の 強 化 等 により 高 い 生 産 性 を 目 指 した 地 域 漁 業 振 興 の 確 立 を 役 職 員 一 丸 となって 目 指 します 特 に 販 売 事 業 については 他 業 態 との 競 争 激 化 に 対 応 できるよう 系 統 組 織 を 抜 本 的 に 改 革 すると ともに 経 営 環 境 の 変 化 に 柔 軟 に 対 応 できる 機 構 と 物 流 体 制 を 確 立 し 消 費 者 の 皆 様 には 安 心 安 全 な 魚 介 類 の 提 供 に 努 めます 大 分 県 漁 協 HPより さて こうした 中 で 当 然 ながら 従 来 登 録 していた 商 標 に ついても 登 録 者 の 変 更 等 が 行 われている これまでの 商 標 登 録 の 動 きを 振 り 返 ってみると 関 ブランド に 関 して 最 初 の 登 録 は 平 成 4 年 に 登 録 が 申 請 された 関 と 121

いう 文 字 であり それは 魚 に 似 せて 作 られたものである その 商 標 登 録 の 際 に 指 定 役 務 としたのは 生 きているも のを 除 くあじ さば たい いさき ぶり 丸 あじ たち うお 丸 干 し 又 は 塩 干 しのあじ さば たい いさき ぶ り 丸 あじ たちうお 生 きているあじ さば たい い さき ぶり 丸 あじ たちうおであった この 登 録 が 認 可 されたのが 平 成 8 年 10 月 であり ここに 初 めて 佐 賀 関 という 名 前 に 由 来 した 関 が 商 標 登 録 上 出 現 したことになる 続 いて 平 成 9 年 には 注 文 のあった 関 あじ 関 さばについてタグを 作 成 し 尻 尾 に 付 けて 販 売 されるようになり 初 めて 関 あじ 関 さばという 名 前 が 市 場 の 中 に 出 現 するようになっ た なお その 当 時 は タグ 自 体 が 商 標 ではなく 関 のマークが 商 標 登 録 されていたのであ る その 後 漁 協 が 合 併 した 後 の 平 成 14 年 8 月 には これまで 使 っていた 関 あじ と 関 さば のタグについて( 写 真 2) 商 標 が 出 願 され 平 成 15 年 8 月 に 登 録 されることとなっ たのである 指 定 役 務 としては 生 きているもの 生 きていないもの 加 工 品 とされている 漁 協 の 合 併 した 平 成 14 年 におけるタグの 商 標 登 録 に 見 られるように この 漁 協 の 合 併 時 点 で 関 のブランドは 当 初 のブランド 化 の 思 惑 と 異 なり いさき たい ぶり 丸 あじ たちうおが 忘 れ 去 れることとなったのである ただ このことは 漁 協 合 併 ということが 契 機 になったのではなく むしろ 当 事 者 である 佐 賀 関 支 店 の 関 係 者 のモチベーションと あじ さば 以 外 の 魚 種 について 関 というブランドが 思 ったほど 普 及 しなかったために 实 態 に 合 わせた 対 忚 がとられたとみるべきだろう なお 漁 協 合 併 直 後 に こうした 関 あじ 関 さばの 商 標 を 申 請 したのは 支 店 における 販 売 事 業 の 強 化 の 一 つとして 位 置 づけられ 登 録 がなされたからとみられる また 大 分 県 漁 協 として 合 併 後 に 商 標 登 録 の 申 請 がなされたものには 他 に 津 あじ さば ( 平 成 18 年 5 月 申 請 平 成 19 年 登 録 ) くにさきの 銀 たち( 平 成 18 年 5 月 申 請 平 成 19 年 登 録 )がある 一 方 平 成 17 年 に 商 標 法 が 改 正 をされ 平 成 18 年 4 月 施 行 され 地 域 団 体 商 標 の 登 録 が 可 能 となったことから これに 伴 う 新 たな 動 きも 生 じている 当 然 ながら 関 あじ 関 さ ば については 地 域 団 体 商 標 の 登 録 申 請 がなされ 平 成 18 年 11 月 の 最 初 の 地 域 団 体 商 標 の 登 録 となった また ほぼ 同 時 に 提 出 された 豊 後 別 府 湾 /ちりめん については 平 成 19 年 7 月 に 登 録 された さて こうした 商 標 出 願 の 状 況 を 顧 みるとわかるように ほとんどが 大 分 県 漁 協 が 主 体 的 に 行 ったものではなく 支 店 における 申 請 を 本 所 が 替 わって 行 っただけにすぎない 主 体 的 に 行 ったとみられるのは 唯 一 豊 後 別 府 湾 /ちりめん である 一 方 で 後 述 するように 大 分 県 主 導 型 による The おおいた ブランド 化 がすすめられ 当 然 のように 既 に 地 域 団 体 商 標 等 に 登 録 されているものについては このブランドの 傘 の 中 に 組 み 込 まれることとな った 122

一 方 で 県 漁 協 として は The おおいた ブランドという 中 で 県 全 体 の 水 産 物 との 新 た な 関 係 性 の 構 築 が 求 め られることとなった 2.ブランドにかかわる 行 政 の 動 き (1) 大 分 県 の 動 き 大 分 県 においては 周 知 のように 一 村 一 品 運 動 の 展 開 そして 豊 の 魚 一 村 一 魚 という 形 で 平 成 12 年 より 大 分 産 の 魚 についてブラン ド 化 等 の 取 り 組 みを 行 ったところで 知 られて いる こうした 結 果 豊 の 魚 については 41 市 町 村 76 品 目 となっている こうした 1 品 の 中 には 当 然 のことながら 地 域 ブランドとして 登 録 された 魚 もみられる このように 大 分 においては 一 村 一 品 運 動 が 行 われ これを 第 一 期 の 運 動 とするならば これを 受 け 継 いだ 第 二 期 の 運 動 が 豊 の 魚 一 村 一 魚 である そして 一 連 の 一 村 一 品 運 動 そして 一 村 一 魚 の 運 動 が 行 政 的 には 一 忚 終 結 したわけである そして 平 成 17 年 7 月 には 大 分 県 新 長 期 総 合 計 画 ( 案 )- 修 正 案 -が 出 され その 中 に 新 たに 農 林 産 物 を 含 めた The おおいたブランド 確 立 戦 略 が 打 ち 出 されたのである その 中 に The 大 分 ブランドの 確 立 が 図 られることとなった この 戦 略 の 中 で 平 成 18 年 度 から 始 められたのが 地 域 ブランド 育 成 事 業 として The おおいた ブランド 水 産 物 育 成 事 業 やチャレンジ 日 本 一 ヒラメ 販 売 強 化 事 業 そして 関 あ じ 関 さばブランド 活 用 事 業 である 関 あじ 関 さばブランド 活 用 事 業 においては 地 域 団 体 商 標 ウォッチャーという 仕 組 みを 構 築 するもので いわゆる 偽 ブランドの 監 視 を 行 うものである この 地 域 団 体 商 標 ウォッチ ャー 制 度 が 生 まれた 背 景 には 地 域 団 体 商 標 として 関 あじ 関 さばが 認 められたこと そし て 偽 物 の 横 行 が 原 因 であったことがあり ブランドを 守 るための 事 業 として 予 算 化 されたの である 豊 の 国 一 村 一 魚 一 覧 表 豊 前 海 地 域 中 津 市 ハモ 宇 佐 市 はまぐり 豊 幸 がに くるまえび 豊 後 高 田 市 のり 真 玉 町 赤 貝 香 々 地 町 岬 がざみ 豊 後 灘 地 域 国 見 町 くるまえび 豊 後 くにみカレイ 姫 島 村 姫 島 かれい 姫 島 車 えび 国 東 町 くにさき 銀 たち 武 蔵 町 むさし 揚 げ むさし 干 魚 沿 安 岐 町 コウイカ マアジ カレイ タチウオ 岸 別 府 湾 地 域 杵 築 市 豊 後 別 府 湾 ちりめん 地 日 出 町 城 下 カレイ 豊 後 別 府 湾 ちりめん 城 下 かれい 味 噌 城 下 かれい 味 噌 梅 肉 入 域 別 府 市 別 府 クルマエビ 大 分 市 アメタ 豊 後 水 道 北 部 佐 賀 関 町 関 あじ 関 さば 関 のたい ぶり 地 域 臼 杵 市 臼 杵 ふぐ 臼 杵 たちうお 一 口 あわび 津 久 見 市 津 あじ 津 さば 保 戸 島 マグロ そうりんひらめ 豊 後 水 道 南 部 上 浦 町 たくたく 料 理 活 きサザエ アワビ 地 域 佐 伯 市 佐 伯 イリコ チリメン 白 魚 クルマエビ ハモ 鶴 見 町 豊 の 活 ぶり 活 魚 米 水 津 村 丸 干 し 豊 の 活 ぶり 蒲 江 町 緋 扇 貝 豊 の 活 ぶり ひらめ 真 珠 干 魚 大 分 郡 野 津 原 町 鮎 挾 間 町 ツガニ 庄 内 町 エノハ 湯 布 院 町 スッポン 南 海 部 郡 弥 生 町 焼 きアユ 本 匠 村 鮎 大 野 郡 犬 飼 町 どんこ 鮎 竹 田 市 竹 田 市 名 水 どじょう 内 直 入 郡 直 入 町 ワカサギ 陸 玖 珠 郡 九 重 町 ヤマメ 地 日 田 市 日 田 市 鮎 域 日 田 郡 中 津 江 村 アカンチョ 上 津 江 村 森 のひらめ やまめ 森 のひらめ 定 食 天 瀬 町 鮎 下 毛 郡 本 耶 馬 溪 町 こい 鮎 耶 馬 溪 町 すっぽん 山 国 町 えのは 宇 佐 郡 院 内 町 ふな はえ 安 心 院 町 スッポン スッポン 加 工 品 もともと 関 あじ 関 さばに 関 しては 前 掲 のように 尻 尾 にラベルが 取 り 付 けられ 区 別 がつくようにされていたわけだが それだけでは 偽 物 を 排 除 するには 至 らず やむなく 大 都 市 に 監 視 員 を 置 き 偽 物 についての 監 視 をすることとなったわけである それだけに 川 下 流 通 への 不 信 があらわになったということである ただ このウォッチャー 制 度 は 農 林 水 産 123

省 における 産 地 偽 装 の 摘 発 とは 異 なり 県 としてもこの 制 度 によって 偽 装 を 発 見 したとして も 摘 発 するものではなく その 対 忚 は 県 漁 協 に 一 任 される 方 法 が 採 られているのである 効 果 等 については 不 明 であるが いずれにしても 偽 物 の 排 除 に 向 けた 取 り 組 みという 形 で 関 あじ 関 さばのブランドを 守 ろうとしているのである (2) 大 分 市 における 動 き 前 述 したように 関 あじ 関 さばについては 旧 佐 賀 関 町 役 場 も 支 援 した 取 り 組 みとして 行 われており その 裏 方 に 徹 した 機 能 は 現 在 のブランドの 確 立 にとっては 重 要 な 役 割 を 果 たしていると 思 われる そもそも 関 ブランドの 確 立 は 旧 佐 賀 関 漁 協 参 事 が 進 められた 動 きであるが 大 分 県 の 漁 協 合 併 という 動 きに 翻 弄 された 形 で 支 店 長 も 代 わるなかで 関 ブランドの 維 持 の 運 動 が 沈 滞 していったとみられる ただ この 間 に 関 ブランドがかろうじて 守 られてきたのは 旧 佐 賀 関 町 の 担 当 者 が 一 貫 してサポートしてきたからにほかならないように 思 われる それは 現 在 の 大 分 県 漁 協 の 佐 賀 関 支 店 の 支 店 長 に 代 わったことをきっかけにして 関 あじ 関 さば のブランドが 新 たなステージに 向 かった 動 きが 生 まれてきたことからも 分 かる いずれにしても H 氏 以 降 旧 佐 賀 関 町 漁 協 の 事 務 方 の 責 任 者 が 何 代 か 変 わる 中 で 関 あ じ 関 さばの 漁 獲 量 の 不 安 定 サイズの 小 型 化 など 関 ブランドを 取 り 巻 く 環 境 が 大 きく 変 わってきたのである 特 に 関 さばについては 資 源 量 の 減 尐 により 漁 獲 時 期 が 12~3 月 8 月 以 外 は 全 く 漁 獲 されない 状 況 となり 周 年 供 給 そのものがおぼつかなくなってきたので ある 関 ブランドそのものの 根 幹 が 揺 らぐこととなったのである 一 方 で 佐 賀 関 町 が 大 分 市 への 合 併 によって また 新 たな 一 つの 動 きが 生 まれることとな ったのである それは いわゆる 市 長 の 鶴 の 一 声 によって 揺 らぐ 関 ブランドに 対 する 新 た な 補 助 事 業 が 計 画 されることとなったからである この 事 業 の 計 画 の 中 で 現 漁 協 の 佐 賀 関 支 店 における 問 題 意 識 つまりあじの 小 型 化 により 市 場 での 価 格 が 暴 落 し 一 時 期 数 ヶ 月 間 で 何 千 万 の 赤 字 を 出 すことが 直 接 的 な 引 き 金 となり なんとか 現 状 を 打 開 したいという 意 識 が 生 まれたこともあり 市 長 の 指 示 のタイミングと 機 をいつにして 大 分 市 の 担 当 者 がその 対 策 を 新 たな 事 業 に 取 り 込 むことになったのである それが 関 あじの 加 工 ということ だったのである この 点 は 漁 協 の 佐 賀 関 支 店 の 項 で 詳 述 する さて 一 方 では どうしても 現 在 の 佐 賀 関 支 店 の 施 設 についても 大 きな 問 題 を 有 してい ることも 事 实 である ブランド 化 が 先 行 したといえども それに 対 忚 しうる 施 設 が 残 念 なが ら 不 備 ということである 特 に 殺 菌 海 水 装 置 や 活 〆 後 の 処 理 をするための 冷 海 水 の 施 設 が なく 他 地 域 における 魚 の 扱 い 方 法 の 進 歩 と 比 較 すると 今 や 関 あじ 関 さばの 鮮 度 管 理 は 時 代 遅 れの 様 相 を 呈 してしまったのである この 問 題 においても 市 が 施 設 整 備 を 計 画 し 徐 々 に 進 められることとなっており 今 後 他 のブランド 並 みの 鮮 度 を 保 持 することも 可 能 な 状 況 となってきた ただ 平 成 21 年 の 4 月 から 佐 賀 関 にあった 大 分 県 の 水 産 振 興 审 が 商 工 観 光 課 に 合 併 され ることとなり 佐 賀 関 支 店 を 支 えてきた 市 の 拠 点 が 大 分 市 内 に 移 ることとなったのである この 組 織 改 編 によって 従 来 のようなきめ 細 かな 佐 賀 関 支 店 に 対 するメンテナンスは 難 しく なり 今 後 は 関 ブランドにかかわる 動 きも 尐 なからず 変 わってくるものと 推 測 される 組 織 改 編 を 前 向 きに 考 えるとすると 大 分 市 という 広 いエリア 内 で 商 工 観 光 課 との 連 携 124

が 図 ることができるわけで 従 来 のような 旧 佐 賀 関 町 エリアでの 関 ブランドの 取 り 組 みから 大 分 市 という 形 での 取 り 組 みに 変 えることも 可 能 となるということである 関 ブランドが 大 分 市 の 観 光 資 源 となるのである 一 方 で 水 産 振 興 审 が 廃 止 され 大 分 市 に 移 ることによって 後 ろ 向 きの 動 きが 懸 念 され るわけで これまでのようにきめ 細 かな 行 政 サポートは 望 みにくくなるのも 事 实 である 3. 関 ブランドをめぐる 新 たな 動 き 関 ブランドにおける 新 たな 動 きとしては これまで 2 つの 動 きを 取 り 上 げてきた 一 つは The おおいた ブランドというものである そして もうひとつは 漁 協 の 佐 賀 関 支 店 における 関 あじ 関 さばの 加 工 をめぐる 動 きである それぞれについて 触 れてみよう (1) The おおいた ブランド The おおいた ブランドについて 考 えてみよう 県 が 進 めているこのブランド 化 は これまでの 個 別 の 動 き( 一 村 一 品 運 動 )を 総 括 するものであると 推 測 される それは 行 政 支 援 としての 流 れとしては 当 然 のことであろう これまで 進 めてきた 一 村 一 品 運 動 は 水 産 分 野 で 言 えば 関 ブランドのように 成 功 事 例 と して 位 置 づけられるものもあれば めぼしい 効 果 も 得 られていないものまで 様 々な 事 例 が 見 られてきた ところが 県 のサイドからみると ブランドを 生 み 出 すことから 生 み 出 され てきたブランドを 一 定 のレベルまでの 引 き 上 げというものが 次 の 政 策 目 標 として 求 められ るようになったということであり その 結 果 として The おおいた ブランドが 掲 げられ たとみられる このことは 従 来 のブランドにさらに 上 位 概 念 のブランドを 作 り 上 げることになり 例 え ば 関 ブランドの 場 合 においては The おおいたブランド 関 あじ ということになるわけ である しかし 評 価 そのものを 考 えると The おおいた ブランドに 対 するものと 関 ブランドに 対 するものとでは その 認 知 度 は 全 く 異 なるものとなる 当 然 ながら 自 明 のこ とであろう しかし 一 方 で The おおいた ブランドの ブランド( 知 れ 渡 って いないもの)ということになると 当 然 ながら The おおいた ブランドの 傘 の 中 に 組 み 込 まれることとなり その 効 果 を 享 受 できるようになる おそらく The おおいた ブランドは 後 者 の 効 果 を 狙 ったものであろうと 想 像 される が 实 は 農 林 水 という 異 業 種 の 分 野 での 総 括 的 なブランドとなるもので その 選 定 水 準 が 業 種 により 異 ならざるを 得 ないものとなるはずである 一 次 産 業 として 共 通 した 水 準 が 構 築 できるか 楽 しみではあるが したがって ばらばらな 選 定 基 準 の 中 で はたして 当 初 の 目 的 としての The おおいた ブランドの 確 立 が 可 能 なのだろうか 現 在 この The おおいた The おおいた ブランド 登 録 品 目 ( 水 産 物 ) おもな 産 地 種 類 ブランドとして 登 録 されてい 佐 伯 市 津 久 見 市 養 殖 ヒラメ る 水 産 物 は 次 の 表 とされてい 国 東 市 臼 杵 市 姫 島 村 くにさき 銀 たち 大 分 市 ( 佐 賀 関 ) 関 あじ 関 さば る この 中 に 当 然 ながら 既 に 佐 伯 市 など まだい 地 域 団 体 商 標 として 登 録 され 佐 伯 市 津 久 見 市 臼 杵 市 豊 の 活 ぶり 姫 島 村 佐 伯 市 宇 佐 市 杵 築 市 車 えび ているものとして 3 種 類 (く 宇 佐 市 豊 後 高 田 市 中 津 市 ガザミ にさき 銀 たち 関 あじ 関 さば 別 府 市 日 出 市 杵 築 市 豊 後 別 府 湾 ちりめん The おおいたブランド HPより 125

豊 後 別 府 湾 ちりめん)がみられている なお こうしたブランド 品 については The おお いたブランド の HP には さまざまな 情 報 が 掲 載 されている (2) 関 あじ 関 さば 等 の 新 たな 動 き 次 に 大 分 のブランドといえば 関 あじ 関 さばのブランドの 動 向 が 気 にかかるところであ る 前 述 のように 関 ブランドに 関 しては 一 時 期 停 滞 する 時 期 があったが それは 関 ブラ ンドに 酔 いしれていた 時 期 があったからである 全 国 のトップブランドとして その 地 位 を 築 くにはそれほどの 時 間 はかからなかったものの その 後 のブランドに 時 に 関 しては 多 くの 紆 余 曲 折 を 経 ているように 思 われる その 一 つが 漁 協 合 併 にあったことは 推 測 されるとこ ろである 大 分 県 漁 協 に 合 併 して 以 後 地 域 団 体 商 標 として 関 あじ 関 さば くにさき 銀 たち 豊 後 別 府 湾 ちりめんがあり 商 標 としては 津 あじ さば があることは 前 述 のとおりである 尐 なからず それぞれの 支 店 においてはブランド 化 に 向 けた 取 り 組 みが 行 われていたことを 示 している ただ 多 くの 場 合 支 店 を 所 管 する 市 町 村 がブランド 化 の 主 要 な 機 能 を 果 たし てきているように 思 われる ただ 唯 一 豊 後 別 府 湾 ちりめんについては 大 分 県 漁 協 の 主 体 的 な 動 きが 垣 間 見 られるものとなっている 品 質 面 でのチェックも 大 分 県 漁 協 が 役 割 分 担 をしており 品 質 管 理 に 向 けた 講 習 会 なども 行 っているという さて こうした 中 で 関 あじ 関 さばについては 特 に 特 徴 的 な 動 きをし 始 めている そ れは 佐 賀 関 支 店 を 中 心 にして 大 分 市 水 産 流 通 加 工 協 議 会 というものが 立 ちあげられたこと である 前 述 のように 大 分 市 が 合 併 したことに 伴 い 市 長 のトップダウンの 事 業 として 位 置 づけられるもので 平 成 19 年 に 加 工 品 について 取 り 組 むことを 目 的 に 事 業 化 がなされた それは 前 述 のように 関 あじ 関 さばの 水 揚 げの 不 安 定 性 小 型 化 という 中 で 他 産 地 に おける 関 あじ 関 さばに 追 いつけ 追 い 越 せ という 動 きとも 相 まって 相 対 的 に 関 ブラ ンドが 凋 落 してきたことによる 危 機 意 識 があったからである 具 体 的 な 危 機 意 識 とは 一 つ 目 はあじの 小 型 化 により 大 型 のものまでも 価 格 が 低 迷 する ことになってしまったということである だから 小 型 化 したあじをどうしも 市 場 から 隔 離 する 必 要 が 生 じてきたのである とはいえ これまでのような 大 型 の 関 あじについては 究 極 と 言 ってもよいほどの 価 格 を 实 現 してきたわけで さらなる 大 型 の 関 あじの 高 付 加 価 値 化 は 至 難 であるとの 認 識 が 存 在 している 事 实 そうであろう かといって 数 多 く 漁 獲 され る 小 型 の 関 あじを 大 型 のものと 同 様 の 戦 略 をとって 出 荷 したのでは 他 産 地 との 差 別 化 も 難 しく 結 果 的 に 従 来 の 関 あじのブランドイメージを 傷 づけることになる そこで 現 在 の 佐 賀 関 支 店 が 採 った 戦 略 というのが 加 工 品 の 製 造 ということである 彼 らが 考 えたことというのは 従 来 の 販 売 は 組 合 員 からの 買 取 価 格 は 築 地 市 場 と 福 岡 市 場 の 市 場 価 格 に 連 動 させて 決 めている このため 例 えば 市 場 で 100 円 /kgで 販 売 され ていたものは 漁 協 の 手 数 料 等 の 必 要 経 費 を 引 くと 50 円 /kgになってしまう しかし 漁 協 が 組 合 員 のものを 内 部 移 動 するだけなので 100 円 /kgで 組 合 員 から 仕 入 れることができ る コストは 不 要 となるわけである 今 までは 50 円 /kgで 売 っていたものが 100 円 /kg で 売 れることになるわけだ このことによって 生 産 者 の 手 取 りがアップすることになると いうものだ 当 然 ながら 漁 協 としても 加 工 原 料 の 仕 入 れ 販 売 の 計 画 を 立 てながらでき ることになる 126

なお 加 工 協 議 会 のメンバーを 選 定 するに 際 しては 方 向 性 が 決 まった 段 階 で 重 要 な 機 能 は 加 工 機 能 でありそのメンバーに 参 加 してもらったことが 特 徴 である 地 元 には 加 工 業 者 が 不 在 であるために 佐 伯 市 の 加 工 業 者 の 協 力 を 得 ることとしたのである 平 成 20 年 度 の 結 果 としては 6 万 パック 一 袋 で 650 円 ~700 円 とし 3500 万 円 の 实 績 があった 21 年 は 4000 万 円 としており 徐 々に 拡 大 を 狙 っているところである ところで 佐 賀 関 支 店 における 取 組 に 際 しては 漁 協 合 併 後 の 固 有 の 課 題 を 抱 えているこ とも 事 实 である つまり 支 店 ごとの 独 立 採 算 制 がとられているものの 支 店 長 における 決 済 権 限 が 限 られており たとえ 補 助 事 業 であるにせよ 本 店 の 決 裁 が 必 要 になるのである 当 然 ながら 漁 協 合 併 前 とは 手 続 きが 異 なってくるのである しかも もうひとつの 課 題 と して どの 程 度 支 店 が 所 管 する 地 域 の 施 策 を 責 任 を 持 って 進 められるかということである 旧 漁 協 であれば 組 合 員 から 選 ばれた 組 合 長 が 最 終 的 な 決 済 権 限 を 有 するわけであるが 今 や 地 域 から 選 出 されるのは 海 区 別 の 運 営 委 員 であり それぞれの 所 属 する 海 区 にある 支 店 での 決 済 権 限 を 有 していない このため 職 員 である 支 店 長 が 支 店 の 責 任 者 であり また 支 店 長 に 許 されている 決 済 権 限 は 極 めて 狭 まれていることを 考 えると どうしても 新 たな 事 業 展 開 が 難 しいという 問 題 を 抱 えていることも 事 实 である このことは 合 併 漁 協 が 抱 える 構 造 的 な 問 題 となっており 合 併 漁 協 の 組 織 の 維 持 という 問 題 と 組 合 員 が 欲 する 事 業 の 实 施 との 間 で 大 きな 狭 間 が 生 じているようである さまざまな 事 例 を 見 る 限 り 特 に 漁 協 の 経 済 事 業 の 展 開 ということに 関 しては マイナスの 効 果 しか 見 られないようにも 思 われる 佐 賀 関 支 店 においても こうした 問 題 に 直 面 しており 本 店 における 裁 可 を 仰 ぐために 水 産 加 工 に 向 けた 事 業 計 画 の 説 明 が 求 められたというが 幸 い 了 解 が 得 られたことから 事 業 を 進 めているという 佐 賀 関 支 店 においては ブランドという 動 きの 中 で 新 たな 動 きが 始 まっていることを 今 回 の 調 査 で 認 識 させられた ブランド 化 には 尐 なくともブランドの 確 立 という 第 1ステージ と 確 立 したブランドの 維 持 発 展 という 第 2ステージ そして 本 来 のブランドの 確 立 とい う 最 終 ステージに 分 けられるとすれば これまでの 関 ブランドは 第 1ステージをクリアーし ただけにすぎない 状 況 であった そして 漁 協 合 併 後 に ブランドの 停 滞 期 むしろ 相 対 的 な 衰 退 という 時 期 を 迎 えたわけである それは 末 端 での 関 あじ 関 さばに 対 する 評 価 の 低 下 そして 価 格 の 低 下 へとつながることとなったのである このため 大 きなブランドであ る 関 ブランドをどのように 立 て 直 すのかが 現 在 の 佐 賀 関 支 店 に 求 められてきている こう したことを 考 えると 最 近 の 佐 賀 関 支 店 は 新 たな 第 2ステージへと 踏 み 出 し 始 めたようであ る つまり 大 型 の 関 あじ 関 さばというのは 市 場 での 評 価 は 確 立 したが 一 方 で 小 型 の 関 あじ 関 さばをどのように 付 加 価 値 化 するかがないがしろにされていた そればかりか 既 存 の 大 型 の 関 あじ 関 さばといえども 鮮 度 管 理 等 に 対 する 相 対 的 な 立 ち 遅 れが 目 立 ち 始 め てきたのである まさに 凋 落 の 傾 向 が 見 え 始 めたのである しかし ここにきて 新 たな 動 きとして 既 存 の 関 あじ 関 さばの 高 品 質 化 高 鮮 度 化 を 目 指 すことはもちろんのこと 小 型 サイズをどのように 付 加 価 値 化 するのか しかもそれは 大 型 の 魚 と 異 なる 価 値 ( 低 くなる) の 中 で 取 組 になるわけである その 中 で もっとも 心 に 響 くのは 生 産 者 視 点 に 戻 ったこと で 収 入 の 向 上 を 目 指 してきたことである これは 本 来 的 な 関 ブランドの 方 向 にようやく 127

立 ち 戻 ったことを 示 す 例 えば 夕 張 メロンは 本 体 そのもののブランド 化 はもちろんのこと 夕 張 メロンとして 作 られたものの 傷 が 生 じたような 端 物 についてはジュースなどに 加 工 しながら 付 加 価 値 化 をしているわけである 関 ブランドもようやくそのレベルになったように 思 われてならない 4. 最 後 に 地 域 ブランド 化 の 動 きを 運 動 論 的 に 生 産 活 動 の 活 性 化 を 目 指 す 一 つの 旗 印 として 位 置 づ けるならば 漁 協 合 併 や 市 町 村 の 合 併 は 地 域 ブランド 化 に 関 しても 多 くの 影 響 を 与 えるこ ととなる 特 に 漁 協 合 併 が 広 域 化 し 市 町 村 が 複 数 に 及 び 始 めたことによって 従 来 のよ うに 市 町 村 との 結 びつきは 薄 らいできていることも 確 かである ただ 市 町 村 の 合 併 は 担 当 者 の 不 足 住 民 サービスの 品 質 低 下 につながることも 多 い 一 方 で 広 範 な 地 域 では 地 域 の 資 源 を 活 用 したより 広 範 囲 な 戦 略 戦 術 の 展 開 も 可 能 となっている しかし 漁 協 合 併 により 職 員 の 合 理 化 が 進 み 様 々な 経 済 事 業 も 尐 人 数 の 中 での 实 施 とな ることから 实 質 負 担 増 となり キャパシティが 制 限 される 中 では 仕 事 の 量 的 質 的 な 拡 大 は 難 しくなり 結 果 として 職 員 のモチベーションの 低 下 につながるきらいがある こうした 中 で 地 域 ブランド 化 の 实 施 というものは 高 付 加 価 値 化 ということのほかに 組 合 員 及 び 職 員 のモチベーションの 高 揚 につながる 可 能 性 があることも 事 实 である ただ 職 員 の 絶 対 数 の 不 足 から 考 えると 尐 なくとも 現 状 の 漁 協 合 併 という 状 況 の 中 ではなかなか 対 忚 のしにくいものではある その 際 に 地 域 という 取 組 として 考 えるならば 市 町 村 の 担 当 職 員 がどれだけ 地 域 ブランドという 取 組 に 対 して 参 加 し 協 力 可 能 であるかということが 地 域 ブランド 化 に 向 けての 成 功 か 失 敗 かを 決 めることにもなりかねない そうした 状 況 で 最 近 は 地 域 というキーワードで 国 なども 予 算 化 されており その 活 性 化 を 図 る 行 政 支 援 も 多 くみられるようになった これからは この 地 域 の 活 性 化 を 含 めた 事 業 を 県 漁 協 として 行 うのか 支 店 レベルでやるのかという 問 題 が 生 じてきている ある 県 では 県 漁 協 の 支 援 という 中 で 生 産 者 が 中 心 とした 組 織 の 確 立 实 施 という 新 たな 模 索 もされ 始 めてきているが いずれにしても 地 域 を 中 心 にした 動 きがさらに 活 発 化 するわけで 生 産 者 が 中 心 となったものや 地 域 のそれぞれの 機 能 が 連 携 した 新 たな 地 域 ブランドが 形 成 されてくるものと 思 われる 128

Ⅳ. 馬 路 村 の 地 域 おこしの 事 例 財 団 法 人 魚 価 安 定 基 金 向 井 義 宠 1.はじめに 水 産 物 流 通 構 造 改 革 事 業 地 域 ブランド 創 出 事 例 調 査 事 業 については 平 成 19 年 度 において 間 人 ガ ニ 下 関 ウニ 鵡 川 シシャモ 佐 賀 海 苔 など 水 産 物 ブランドを 中 心 にとりまとめを 行 ってきた これらを 踏 まえ 平 成 20 年 度 においては 引 き 続 き 水 産 物 の 事 例 調 査 を 行 うとともに 水 産 物 の 比 較 とし て 農 産 物 の 事 例 を 取 り 上 げとりまとめることとした 本 報 告 は 農 産 物 の 成 功 事 例 として 地 域 が 一 体 とな ってゆずの 販 売 に 取 り 組 んでいる 馬 路 村 の 取 組 について 委 員 とともにヒアリングを 行 いその 内 容 をと りまとめたので 報 告 するものである 2. 地 域 ブランドの 取 組 1ブランド 化 に 至 った 背 景 高 知 県 は 表 1 のとおりゆずの 収 穫 量 で 全 国 トップであり 平 成 18 年 では 全 国 の 収 穫 量 の 47%を 占 めている 2 位 は 徳 島 となっているがその 2 倍 程 度 の 収 穫 量 である 自 家 消 費 等 を 除 いた 出 荷 量 のうち 加 工 場 または 加 工 を 目 的 とする 業 者 に 出 荷 した 加 工 向 けの 量 は 5,333.7tと 全 出 荷 量 の 74%であり 高 知 県 で 収 穫 されるゆずのほとんどが 加 工 向 けに 仕 向 けられていることがわかる 馬 路 村 は 高 知 県 の 東 部 徳 島 県 に 隣 接 した 山 間 にある 村 である 総 面 積 は 166k m2でその 96%が 山 林 であり 平 成 16 年 10 月 1 日 現 在 の 人 口 は 1,108 人 である 高 知 竜 馬 空 港 から 車 で 約 1 時 間 30 分 空 表 1 ゆずの 主 な 都 道 府 県 別 収 穫 量 ( 平 成 18 年 ) 順 位 都 道 府 県 名 収 穫 量 単 位 :t 出 荷 量 主 要 産 地 名 ( 市 町 村 名 ) うち 加 工 向 け 1 位 高 知 7,290.5 7,239.9 5,333.7 安 芸 市 香 美 市 北 川 村 2 位 徳 島 2,962.5 2,636.5 1,698.5 那 賀 町 つるぎ 町 東 みよし 町 3 位 愛 媛 1,258.6 1,187.1 962.5 西 予 市 鬼 北 町 松 野 町 4 位 大 分 873.0 785.0 668.0 宇 佐 市 日 田 市 5 位 宮 崎 849.9 818.5 631.0 西 都 市 小 林 市 西 米 良 村 6 位 鹿 児 島 475.4 464.3 459.0 曽 於 市 霧 島 市 大 口 市 7 位 和 歌 山 266.3 263.8 157.3 古 座 川 町 紀 美 野 町 有 田 川 町 8 位 山 梨 212.5 71.5 14.0 増 穂 町 身 延 町 鰍 沢 町 9 位 熊 本 178.0 148.0 山 都 町 熊 本 市 八 代 市 10 位 福 岡 168.8 129.2 69.5 黒 木 町 川 崎 町 香 春 町 - その 他 1,059.9 835.9 476.4 計 15,595.4 14,579.7 10,469.9 資 料 : 特 産 果 樹 生 産 動 態 等 調 査 農 林 水 産 省 港 からは 国 道 を 走 り 県 道 に 入 ると 緑 に 囲 まれた 山 道 を 登 っていき 小 さな 村 に 到 着 する この 小 さな 村 がゆずの 加 工 品 で 全 国 的 に 名 前 を 知 られている 馬 路 村 である この 馬 路 村 を 有 名 にさせた 人 物 の 中 でも もっとも 重 要 な 人 が 現 在 の 馬 路 村 農 協 の 組 合 長 である T 組 合 長 である この T 組 合 長 に 話 を 伺 った T 組 合 長 にまず 加 工 場 に 案 内 された この 加 工 場 の 入 り 口 まで 約 50 メートルほどを 歩 くことになる 組 合 長 はこの 加 工 場 を 作 るにあたってわざとこの 道 をつくり 馬 路 村 の 自 然 を 实 感 してもらうようにした という 馬 路 村 全 体 をブランド 化 しようという 気 遣 いにまず 触 れることになる さて 馬 路 村 のゆずは 高 知 県 の 統 計 と 同 様 におもに 加 工 用 原 料 として 利 用 されることが 多 い 特 に 高 知 県 内 は 生 産 量 も 多 く 県 内 での 需 要 はすでに 飽 和 状 態 にあり 県 外 への 販 促 が 求 められていた 昭 和 58 年 当 時 馬 路 村 農 協 の 販 売 課 長 であった T 組 合 長 は まずは 神 戸 の 百 貨 店 にてゆずのしぼり 汁 を 中 心 129

に 販 促 を 始 めたのである これをきっかけに 各 地 の 催 事 場 に 自 ら 出 かけ 販 売 することになるが 1 日 20 万 円 の 目 標 にはとどかず 高 速 代 やガソ リン 代 宿 泊 費 等 のかかるコストを 計 算 すると 赤 字 であった また ゆずのしぼり 汁 は 一 升 瓶 に 入 っており 買 ってくれた 人 が 催 事 場 から 自 宅 まで 持 って 帰 るには 重 くて 大 変 なので 宅 配 を 始 めた この 宅 配 を 始 めたことからその 名 簿 により 顧 実 リストを 作 成 し ダイレクトメール により 注 文 をうけ 宅 配 にて 販 売 することとし た 一 方 商 品 開 発 について 農 協 ではゆずのしぼり 汁 を 作 る 際 に 出 るゆずの 皮 を 利 用 した 加 工 を 手 掛 け ることとしたが 当 時 農 協 の 経 営 は 厳 しく 設 備 投 資 するほどの 資 金 もなかったので できるだけ 設 備 投 資 せずにできる 商 品 開 発 を 求 めていた そのような 中 昭 和 62 年 のゆずの 大 豊 作 により 価 格 が 下 落 し ますます 新 商 品 の 開 発 が 求 められることになっ た そこで ゆずを 手 軽 に 飲 んでもらう 商 品 と して 100 円 で 飲 めるゆずドリンク を 開 発 し ようと 思 いつき 農 家 で 働 く 女 性 たちの 協 力 を 得 ながら 昭 和 63 年 ついに 子 供 から 大 人 まで おいしく 飲 めるゆずドリンクを 開 発 した 早 速 保 健 所 への 製 造 許 可 の 申 請 等 を 行 い まずは 一 本 ずつ 手 作 業 で 作 ることとしたのである さら に ビンに 貼 るラベルについては 高 知 市 内 のデ ザイン 会 社 に 頼 み 写 真 のようなラベルを 開 発 し た このラベルの 雰 囲 気 がのちに 定 期 的 に 発 行 されるチラシなど 馬 路 村 をイメージするイラストの 土 台 となった さらに このデザイン 会 社 との 取 組 をきっかけとして 村 を 売 る というコンセプトを 考 えるように なり 突 出 した 地 域 イメージが 必 要 であると T 組 合 長 が 意 識 するようになるのである すなわち 村 の 良 さを 口 コミで 広 げることでゆずの 販 売 を 拡 大 し さらには 観 光 を 誘 致 することで 地 域 全 体 の 活 性 化 を 図 ろうと 決 めたのである こうした 考 え 方 がのちに 展 開 される 地 域 おこしにつながり 前 述 したとおり 加 工 場 の 入 り 口 や 馬 路 村 農 協 の 事 務 所 もビルだったものが 平 屋 になるなど 景 観 を 大 切 にした 町 づくりが 行 われることになる のである この 一 連 の 考 え 方 は ゆずの 森 構 想 の 一 環 として 行 われている 2 馬 路 村 の 取 組 馬 路 村 は 平 成 元 年 旧 馬 路 村 と 魚 梁 瀬 村 が 合 併 した 村 であり 総 面 積 の 96%が 山 林 で 魚 梁 瀬 杉 (や なせすぎ)に 代 表 される 良 質 の 杉 の 産 地 であり 古 くより 林 業 で 栄 えてきたところである しかし 時 代 の 移 り 変 わりとともに 馬 路 村 に 5 つあった 製 材 所 も 残 り 1 業 者 となるなど 衰 退 してしまった 130

馬 路 村 の 平 成 17 年 10 月 現 在 の 人 口 は 1,081 名 であり その 年 代 別 に 人 口 構 成 を 示 したものが 図 1 である もっとも 多 い 世 代 が 70~74 歳 で 60 歳 代 以 上 の 割 合 が 41%と 高 齢 化 しており 20 歳 代 の 割 合 が 極 端 に 低 くなっている 馬 路 村 には 高 校 大 学 がな く 中 学 を 卒 業 すると 馬 路 村 を 離 れることとなり 卒 業 しても 村 外 に 就 職 して いるようである さらに 馬 路 村 で 農 家 を 行 っている 人 は 273 名 お り その 年 代 別 に 人 口 構 成 をみたものが 図 2 である これをみても 明 らかなよ うに 若 い 人 の 農 家 はほと んどなく 60 歳 代 以 上 の 方 で 村 の 農 業 を 支 えている ことがうかがえる 林 業 の 衰 退 農 家 の 高 齢 化 が 進 む 中 で 生 産 の 安 定 していたゆずについて 農 協 が 中 心 となって 加 工 品 の 製 造 販 売 を 行 うこととしたのである 昭 和 63 年 に 開 発 したゆずドリンク ごっくん 馬 路 村 は ヒット 商 品 となり 平 成 18 年 3 月 には 総 工 費 25 億 円 で 新 加 工 場 が 建 設 された 人 口 わずか 1,108 名 の 小 さな 村 でこのよう な 大 規 模 な 工 事 ができたことに 驚 かされ る 写 真 は 加 工 場 内 部 を 写 したものである 見 学 者 用 の 通 路 が 整 備 されており そこか ら 内 部 の 状 況 をうかがうことができる 工 場 内 部 にはゆずドリンクの 製 造 ラインが 整 然 と 配 置 されており 衛 生 管 理 対 忚 にも 131