60 批 判 的 談 話 分 析 からみた 通 念 の 定 冠 詞 2 批 判 的 談 話 分 析 と 言 語 の 隠 蔽 機 能 2.1 批 判 的 談 話 分 析 批 判 的 談 話 分 析 (Critical Discourse Analysis/ Kritische Diskursanaly

Similar documents
Microsoft PowerPoint - 報告書(概要).ppt

為 が 行 われるおそれがある 場 合 に 都 道 府 県 公 安 委 員 会 がその 指 定 暴 力 団 等 を 特 定 抗 争 指 定 暴 力 団 等 として 指 定 し その 所 属 する 指 定 暴 力 団 員 が 警 戒 区 域 内 において 暴 力 団 の 事 務 所 を 新 たに 設

2 役 員 の 報 酬 等 の 支 給 状 況 平 成 27 年 度 年 間 報 酬 等 の 総 額 就 任 退 任 の 状 況 役 名 報 酬 ( 給 与 ) 賞 与 その 他 ( 内 容 ) 就 任 退 任 2,142 ( 地 域 手 当 ) 17,205 11,580 3,311 4 月 1

平成25年度 独立行政法人日本学生支援機構の役職員の報酬・給与等について

4 教 科 に 関 する 調 査 結 果 の 概 況 校 種 学 年 小 学 校 2 年 生 3 年 生 4 年 生 5 年 生 6 年 生 教 科 平 均 到 達 度 目 標 値 差 達 成 率 国 語 77.8% 68.9% 8.9% 79.3% 算 数 92.0% 76.7% 15.3% 94

<6D313588EF8FE991E58A778D9191E5834B C8EAE DC58F4992F18F6F816A F990B32E786C73>

Ⅰ 調 査 の 概 要 1 目 的 義 務 教 育 の 機 会 均 等 その 水 準 の 維 持 向 上 の 観 点 から 的 な 児 童 生 徒 の 学 力 や 学 習 状 況 を 把 握 分 析 し 教 育 施 策 の 成 果 課 題 を 検 証 し その 改 善 を 図 るもに 学 校 におけ

2 役 員 の 報 酬 等 の 支 給 状 況 役 名 法 人 の 長 理 事 理 事 ( 非 常 勤 ) 平 成 25 年 度 年 間 報 酬 等 の 総 額 就 任 退 任 の 状 況 報 酬 ( 給 与 ) 賞 与 その 他 ( 内 容 ) 就 任 退 任 16,936 10,654 4,36

6 構 造 等 コンクリートブロック 造 平 屋 建 て4 戸 長 屋 16 棟 64 戸 建 築 年 1 戸 当 床 面 積 棟 数 住 戸 改 善 後 床 面 積 昭 和 42 年 36.00m m2 昭 和 43 年 36.50m m2 昭 和 44 年 36.

国立研究開発法人土木研究所の役職員の報酬・給与等について

18 国立高等専門学校機構

<4D F736F F D E598BC68A8897CD82CC8DC490B68B7982D18E598BC68A8893AE82CC8A C98AD682B782E993C195CA915B C98AEE82C382AD936F985E96C68B9690C582CC93C197E1915B927582CC898492B75F8E96914F955D89BF8F915F2E646F6

第4回税制調査会 総4-1

しかし 主 に 欧 州 の 一 部 の 回 答 者 は 受 託 責 任 について 資 源 配 分 の 意 思 決 定 の 有 用 性 とは 独 立 の 財 務 報 告 の 目 的 とすべきであると 回 答 した 本 ED に 対 する ASBJ のコメント レターにおける 意 見 経 営 者 の 受

中 間 利 払 日 とし 預 入 日 または 前 回 の 中 間 利 払 日 からその 中 間 利 払 日 の 前 日 までの 日 数 および 通 帳 または 証 書 記 載 の 中 間 利 払 利 率 によって 計 算 した 中 間 利 払 額 ( 以 下 中 間 払 利 息 といいます )を 利

Speed突破!Premium問題集 基本書サンプル

(Microsoft Word - \221\346\202P\202U\201@\214i\212\317.doc)


預 金 を 確 保 しつつ 資 金 調 達 手 段 も 確 保 する 収 益 性 を 示 す 指 標 として 営 業 利 益 率 を 採 用 し 営 業 利 益 率 の 目 安 となる 数 値 を 公 表 する 株 主 の 皆 様 への 還 元 については 持 続 的 な 成 長 による 配 当 可

ていることから それに 先 行 する 形 で 下 請 業 者 についても 対 策 を 講 じることとしまし た 本 県 としましては それまでの 間 に 未 加 入 の 建 設 業 者 に 加 入 していただきますよう 28 年 4 月 から 実 施 することとしました 問 6 公 共 工 事 の


m07 北見工業大学 様式①

している 5. これに 対 して 親 会 社 の 持 分 変 動 による 差 額 を 資 本 剰 余 金 として 処 理 した 結 果 資 本 剰 余 金 残 高 が 負 の 値 となるような 場 合 の 取 扱 いの 明 確 化 を 求 めるコメントが 複 数 寄 せられた 6. コメントでは 親

公表表紙

[2] 控 除 限 度 額 繰 越 欠 損 金 を 有 する 法 人 において 欠 損 金 発 生 事 業 年 度 の 翌 事 業 年 度 以 後 の 欠 損 金 の 繰 越 控 除 にあ たっては 平 成 27 年 度 税 制 改 正 により 次 ページ 以 降 で 解 説 する の 特 例 (

公 共 公 益 的 施 設 用 地 の 負 担 がほとんど 生 じないと 認 められる 土 地 ( 例 ) 道 路 に 面 しており 間 口 が 広 く 奥 行 がそれほどではない 土 地 ( 道 路 が 二 方 三 方 四 方 にある 場 合 も 同 様 ) ⑶ マンション 適 地 の 判 定 評

(2)大学・学部・研究科等の理念・目的が、大学構成員(教職員および学生)に周知され、社会に公表されているか

いう )は 警 告 をしたときは 速 やかに その 内 容 及 び 日 時 を 当 該 警 告 を 求 める 旨 の 申 出 をした 者 に 通 知 しなければならないこととされ また 警 告 をし なかったときは 速 やかに その 旨 及 び 理 由 を 当 該 警 告 を 求 める 旨 の 申

(6) 事 務 局 職 場 積 立 NISAの 運 営 に 係 る 以 下 の 事 務 等 を 担 当 する 事 業 主 等 の 組 織 ( 当 該 事 務 を 代 行 する 組 織 を 含 む )をいう イ 利 用 者 からの 諸 届 出 受 付 事 務 ロ 利 用 者 への 諸 連 絡 事 務

Ⅰ 人 口 の 現 状 分 析 Ⅰ 人 口 の 現 状 分 析 1 人


Taro-データ公安委員会相互協力事

 

文化政策情報システムの運用等

2. ど の 様 な 経 緯 で 発 覚 し た の か ま た 遡 っ た の を 昨 年 4 月 ま で と し た の は 何 故 か 明 ら か に す る こ と 回 答 3 月 17 日 に 実 施 し た ダ イ ヤ 改 正 で 静 岡 車 両 区 の 構 内 運 転 が 静 岡 運

Microsoft Word - ★HP版平成27年度検査の結果

は 固 定 流 動 及 び 繰 延 に 区 分 することとし 減 価 償 却 を 行 うべき 固 定 の 取 得 又 は 改 良 に 充 てるための 補 助 金 等 の 交 付 を 受 けた 場 合 にお いては その 交 付 を 受 けた 金 額 に 相 当 する 額 を 長 期 前 受 金 とし

( 別 紙 ) 以 下 法 とあるのは 改 正 法 第 5 条 の 規 定 による 改 正 後 の 健 康 保 険 法 を 指 す ( 施 行 期 日 は 平 成 28 年 4 月 1 日 ) 1. 標 準 報 酬 月 額 の 等 級 区 分 の 追 加 について 問 1 法 改 正 により 追 加

平成22年度

Microsoft Word - 公表用答申422号.doc

注 記 事 項 (1) 当 四 半 期 連 結 累 計 期 間 における 重 要 な 子 会 社 の 異 動 : 無 (2) 四 半 期 連 結 財 務 諸 表 の 作 成 に 特 有 の 会 計 処 理 の 適 用 : 有 ( 注 ) 詳 細 は 添 付 資 料 4ページ 2.サマリー 情 報 (

検 討 検 討 の 進 め 方 検 討 状 況 簡 易 収 支 の 世 帯 からサンプリング 世 帯 名 作 成 事 務 の 廃 止 4 5 必 要 な 世 帯 数 の 確 保 が 可 能 か 簡 易 収 支 を 実 施 している 民 間 事 業 者 との 連 絡 等 に 伴 う 事 務 の 複 雑

の 購 入 費 又 は 賃 借 料 (2) 専 用 ポール 等 機 器 の 設 置 工 事 費 (3) ケーブル 設 置 工 事 費 (4) 防 犯 カメラの 設 置 を 示 す 看 板 等 の 設 置 費 (5) その 他 設 置 に 必 要 な 経 費 ( 補 助 金 の 額 ) 第 6 条 補

資 格 給 付 関 係 ( 問 1) 外 国 人 Aさん(76 歳 )は 在 留 期 間 が3ヶ 月 であることから 長 寿 医 療 の 被 保 険 者 ではない が 在 留 資 格 の 変 更 又 は 在 留 期 間 の 伸 長 により 長 寿 医 療 の 適 用 対 象 となる 場 合 には 国

退職手当とは

16 日本学生支援機構

Microsoft PowerPoint - 基金制度

1 総 合 設 計 一 定 規 模 以 上 の 敷 地 面 積 及 び 一 定 割 合 以 上 の 空 地 を 有 する 建 築 計 画 について 特 定 行 政 庁 の 許 可 により 容 積 率 斜 線 制 限 などの 制 限 を 緩 和 する 制 度 である 建 築 敷 地 の 共 同 化 や

<4D F736F F D D3188C091538AC7979D8B4B92F F292B98CF092CA81698A94816A2E646F63>

(1) 社 会 保 険 等 未 加 入 建 設 業 者 の 確 認 方 法 等 受 注 者 から 提 出 される 施 工 体 制 台 帳 及 び 添 付 書 類 により 確 認 を 行 います (2) 違 反 した 受 注 者 へのペナルティー 違 反 した 受 注 者 に 対 しては 下 記 のペ

その 他 事 業 推 進 体 制 平 成 20 年 3 月 26 日 に 石 垣 島 国 営 土 地 改 良 事 業 推 進 協 議 会 を 設 立 し 事 業 を 推 進 ( 構 成 : 石 垣 市 石 垣 市 議 会 石 垣 島 土 地 改 良 区 石 垣 市 農 業 委 員 会 沖 縄 県 農

4. その 他 (1) 期 中 における 重 要 な 子 会 社 の 異 動 ( 連 結 範 囲 の 変 更 を 伴 う 特 定 子 会 社 の 異 動 ) 無 (2) 簡 便 な 会 計 処 理 及 び 四 半 期 連 結 財 務 諸 表 の 作 成 に 特 有 の 会 計 処 理 の 適 用 有

4. その 他 (1) 期 中 における 重 要 な 子 会 社 の 異 動 ( 連 結 範 囲 の 変 更 を 伴 う 特 定 子 会 社 の 異 動 ) 無 (2) 簡 便 な 会 計 処 理 及 び 四 半 期 連 結 財 務 諸 表 の 作 成 に 特 有 の 会 計 処 理 の 適 用 有

する 婦 人 相 談 所 その 他 適 切 な 施 設 による 支 援 の 明 記 禁 止 命 令 等 をすることが できる 公 安 委 員 会 等 の 拡 大 等 の 措 置 が 講 じられたものである 第 2 改 正 法 の 概 要 1 電 子 メールを 送 信 する 行 為 の 規 制 ( 法

中国会社法の改正が外商投資企業に与える影響(2)

< F2D A C5817A C495B6817A>

Taro-別紙1 パブコメ質問意見とその回答

学校教育法等の一部を改正する法律の施行に伴う文部科学省関係省令の整備に関する省令等について(通知)

平 成 27 年 11 月 ~ 平 成 28 年 4 月 に 公 開 の 対 象 となった 専 門 協 議 等 における 各 専 門 委 員 等 の 寄 附 金 契 約 金 等 の 受 取 状 況 審 査 ( 別 紙 ) 専 門 協 議 等 の 件 数 専 門 委 員 数 500 万 円 超 の 受

<4D F736F F D A94BD837D836C B4B92F62E646F6378>

った 場 合 など 監 事 の 任 務 懈 怠 の 場 合 は その 程 度 に 応 じて 業 績 勘 案 率 を 減 算 する (8) 役 員 の 法 人 に 対 する 特 段 の 貢 献 が 認 められる 場 合 は その 程 度 に 応 じて 業 績 勘 案 率 を 加 算 することができる

03 平成28年度文部科学省税制改正要望事項

(2) 検 体 採 取 に 応 ずること (3) ドーピング 防 止 と 関 連 して 自 己 が 摂 取 し 使 用 するものに 責 任 をもつこと (4) 医 師 に 禁 止 物 質 及 び 禁 止 方 法 を 使 用 してはならないという 自 己 の 義 務 を 伝 え 自 己 に 施 される

定 性 的 情 報 財 務 諸 表 等 1. 連 結 経 営 成 績 に 関 する 定 性 的 情 報 当 第 3 四 半 期 連 結 累 計 期 間 の 業 績 は 売 上 高 につきましては 前 年 同 四 半 期 累 計 期 間 比 15.1% 減 少 の 454 億 27 百 万 円 となり

PowerPoint プレゼンテーション

公営住宅法施行令の一部を改正する政令―公営住宅法施行令例規整備*

Microsoft Word - 目次.doc

_ZEI-0329_特集(朝倉)_プ2.indd

<6D33335F976C8EAE CF6955C A2E786C73>

<4D F736F F D F4390B3208A948C E7189BB8CE F F8C668DDA97702E646F63>

土 購 入 土 借 用 土 所 有 権 移 転 登 記 確 約 書 農 転 用 許 可 書 ( 写 ) 農 転 用 届 出 受 理 書 ( 写 ) 土 不 動 産 価 格 評 価 書 土 見 積 書 ( 写 ) 又 は 売 買 確 約 書 ( 写 ) 土 売 主 印 鑑 登 録 証 明 書 売 主

< F2D8ED089EF95DB8CAF939996A289C193FC91CE8DF42E6A7464>

●幼児教育振興法案

入 札 参 加 者 は 入 札 の 執 行 完 了 に 至 るまではいつでも 入 札 を 辞 退 することができ これを 理 由 として 以 降 の 指 名 等 において 不 利 益 な 取 扱 いを 受 けることはない 12 入 札 保 証 金 免 除 13 契 約 保 証 金 免 除 14 入

Microsoft PowerPoint - 経営事項審査.ppt

景品の換金行為と「三店方式」について

Microsoft Word 役員選挙規程.doc

( 補 助 金 等 交 付 決 定 通 知 に 加 える 条 件 ) 第 7 条 市 長 は 交 付 規 則 第 11 条 に 規 定 するところにより 補 助 金 の 交 付 決 定 に 際 し 次 に 掲 げる 条 件 を 付 するものとする (1) 事 業 完 了 後 に 消 費 税 及 び

質 問 票 ( 様 式 3) 質 問 番 号 62-1 質 問 内 容 鑑 定 評 価 依 頼 先 は 千 葉 県 などは 入 札 制 度 にしているが 神 奈 川 県 は 入 札 なのか?または 随 契 なのか?その 理 由 は? 地 価 調 査 業 務 は 単 にそれぞれの 地 点 の 鑑 定

第1章 総則

< 現 在 の 我 が 国 D&O 保 険 の 基 本 的 な 設 計 (イメージ)> < 一 般 的 な 補 償 の 範 囲 の 概 要 > 請 求 の 形 態 会 社 の 役 員 会 社 による 請 求 に 対 する 損 免 責 事 由 の 場 合 に 害 賠 償 請 求 は 補 償 されず(

<4D F736F F D2091DE90458F8A93BE82C991CE82B782E98F5A96AF90C582CC93C195CA92A58EFB82CC8EE888F882AB B315D2E312E A2E646F63>

第2回 制度設計専門会合 事務局提出資料

<4D F736F F D C8E9688D993AE82C994BA82A492F18F6F8F9197DE81698DC58F49816A2E646F6378>

続 に 基 づく 一 般 競 争 ( 指 名 競 争 ) 参 加 資 格 の 再 認 定 を 受 けていること ) c) 会 社 更 生 法 に 基 づき 更 生 手 続 開 始 の 申 立 てがなされている 者 又 は 民 事 再 生 法 に 基 づき 再 生 手 続 開 始 の 申 立 てがなさ

4 調 査 の 対 話 内 容 (1) 調 査 対 象 財 産 の 土 地 建 物 等 を 活 用 して 展 開 できる 事 業 のアイディアをお 聞 かせく ださい 事 業 アイディアには, 次 の 可 能 性 も 含 めて 提 案 をお 願 いします ア 地 域 の 活 性 化 と 様 々な 世

慶應義塾利益相反対処規程

市 の 人 口 密 度 は 5,000 人 を 超 え 図 4 人 口 密 度 ( 単 位 : 人 /k m2) に 次 いで 高 くなっている 0 5,000 10,000 15,000 首 都 圏 に 立 地 する 政 令 指 定 都 市 では 都 内 に 通 勤 通 学 する 人 口 が 多

厚 生 年 金 は 退 職 後 の 所 得 保 障 を 行 う 制 度 であり 制 度 発 足 時 は 在 職 中 は 年 金 を 支 給 しないこととされていた しかしながら 高 齢 者 は 低 賃 金 の 場 合 が 多 いと いう 実 態 に 鑑 み 在 職 者 にも 支 給 される 特 別

リング 不 能 な 将 来 減 算 一 時 差 異 に 係 る 繰 延 税 金 資 産 について 回 収 可 能 性 がないも のとする 原 則 的 な 取 扱 いに 対 して スケジューリング 不 能 な 将 来 減 算 一 時 差 異 を 回 収 できることを 反 証 できる 場 合 に 原 則

01.活性化計画(上大久保)

KINGSOFT Office 2016 動 作 環 境 対 応 日 本 語 版 版 共 通 利 用 上 記 動 作 以 上 以 上 空 容 量 以 上 他 接 続 環 境 推 奨 必 要 2

Microsoft Word - 佐野市生活排水処理構想(案).doc

Ⅰ 元 請 負 人 を 社 会 保 険 等 加 入 建 設 業 者 に 限 定 平 成 28 年 10 月 1 日 以 降 に 入 札 公 告 指 名 通 知 随 意 契 約 のための 見 積 依 頼 を 行 う 工 事 から 以 下 に 定 める 届 出 の 義 務 ( 以 下 届 出 義 務 と

<4D F736F F F696E74202D208E9197BF332E8EA98CC8955D89BF82CC95FB C982C282A282C BD90AC F944E93788EC08E7B95AA814191E C5816A2E707074>

平成16年年金制度改正 ~年金の昔・今・未来を考える~

<4D F736F F D F8D828D5A939982CC8EF68BC697BF96B38F9E89BB82CC8A6791E52E646F63>

セルフメディケーション推進のための一般用医薬品等に関する所得控除制度の創設(個別要望事項:HP掲載用)

7 種 郵 便 可 告 創 太 洋 限 挙 署 ぞ 秀 授 与 ざ 選 専 違 超 普 遍 値 準 簡 単 明 判 断 始 調 課 把 握 析 確 状 況 洞 察 案 課 起 難 時 勇 気 覚 悟 胆 策 ね 特 独 創 高 評 法 ふ 代 振 種 止 義 釈 筆 新 我 止 係 二 付 驚 与

図 1 抱 合 株 式 がない 場 合 の 非 適 格 合 併 により 増 加 する 資 本 金 等 の 額 の 計 算 合 併 法 人 株 式 の 価 額 - 移 転 純 資 産 価 額 (2) 合 併 法 人 株 式 等 のみなし 株 式 割 当 等 会 社 法 上 抱 合 株 式 には 合 併

Transcription:

批 判 的 談 話 分 析 からみた 通 念 の 定 冠 詞 言 語 の 隠 蔽 機 能 に 注 目 して 柳 田 亮 吾 Parler de la langue, sans autre précision, comme font les linguistes, c est accepter tacitment la définition officielle de la langue officielle d une unité politique... (Bourdieu 1982 S. 28 強 調 ママ 1 ) 1 はじめに かつてフランスの 社 会 学 者 Pierre Bourdieu は, 研 究 対 象 である 言 語 の 歴 史 社 会 的 構 築 過 程 に 目 を 向 けることのない Ferdinand de Saussure や Noam Chomsky といった 言 語 学 者 を 批 判 し, 社 会 学 の 眼 差 しから 言 語 と いう 対 象 を 捉 えなおそうとした 冒 頭 の 引 用 は,Bourdieu のこの 批 判 的 態 度 を 端 的 に 表 現 している つまり, 言 語 学 者 達 は la langue の 名 の 下 に 公 用 語 = 国 語 を 暗 黙 の 内 に 所 与 の 研 究 対 象 とすることで,その 公 用 語 = 国 語 が 正 統 言 語 としていかに 社 会 的 に 構 築 されたかを 不 問 に 付 してしまっている 言 い 換 える ならば,la langue に 冠 された 定 冠 詞 には,langue に 関 する 社 会 学 的 な 問 いを 黙 殺 する 機 能 があるといえるかもしれない この Bourdieu の 指 摘 を 手 がかりにして, 本 稿 ではドイツ 語 の 冠 詞 を 言 語 の 隠 蔽 機 能 という 観 点 から 考 察 してみたい まずは, 批 判 的 言 語 学, 批 判 的 談 話 分 析 の 知 見 を 参 照 しながら, 言 語 の 隠 蔽 機 能 ( 山 下 2001)について 確 認 す る 次 に, 関 口 存 男 の 冠 詞 論 (1960, 1961)を 読 み 解 きながら, 通 念 の 定 冠 詞 に 焦 点 をあて,その 隠 蔽 機 能 について 考 察 する 1 断 り 書 きなく, 言 語 一 般 なるものを, 定 冠 詞 つきで 口 にするのが 言 語 学 者 の 常 であ るが,これは,ある 政 治 的 統 一 体 = 単 位 が 公 式 に 定 義 する 公 用 言 語 の 定 義 を 暗 黙 のうち に 受 け 入 れることである ( 稲 賀 繁 美 訳 1993 S. 37 強 調 ママ, 訳 者 補 足 略 )

60 批 判 的 談 話 分 析 からみた 通 念 の 定 冠 詞 2 批 判 的 談 話 分 析 と 言 語 の 隠 蔽 機 能 2.1 批 判 的 談 話 分 析 批 判 的 談 話 分 析 (Critical Discourse Analysis/ Kritische Diskursanalyse) は, 談 話 を 社 会 的 実 践 と 捉 え,それによっていかなる 社 会 的 不 平 等 が( 再 ) 生 産 されているかを 批 判 的 に 分 析 する 学 術 的 政 治 的 営 為 である(Fairclough and Wodak 1997, Wodak and Meyer 2009) 男 女 差 別, 人 種 差 別, 外 国 人 差 別, 反 ユダヤ 主 義 といった 談 話 を 対 象 とし, 談 話 において 自 明 視 されている あ たりまえ の 詳 細 な 言 語 分 析 を 通 してそこに 潜 在 するイデオロギー 性 を 明 らか にしていく 批 判 的 談 話 分 析 は, 個 々の 論 者 が 様 々な 社 会 文 化 言 語 理 論 を 基 に 発 展 さ せてきた 学 際 的 な 研 究 プログラムであるが 2, 本 稿 では M. A. K. Halliday の 選 択 体 系 機 能 文 法 (systemic functional grammar)に 影 響 をうけたイギリスに おける 研 究 を 取 り 上 げる 言 語 は 人 間 の 必 要 性 を 満 たすよう 進 化 してきた そして 言 語 はその 必 要 性 に 応 じて 組 織 化 されているという 点 で 機 能 的 であり, 恣 意 的 ではない (Halliday 1985/1994 S.ⅩⅢ 筆 者 訳 )という 認 識 をもとに 社 会 的 なコンテク ストにおいて 言 語 を 捉 えるHallidayの 研 究 は, 批 判 的 談 話 分 析 の 研 究 者 が 個 々 の 具 体 的 なテキストを 分 析 するにあたって 有 用 な 道 具 を 提 供 してきた 例 えば, Fairclough(2003)は Halliday の 提 唱 する 言 語 の 三 つの 機 能, 観 念 構 成 的 (ideational), 対 人 関 係 的 (interpersonal), テキスト 形 成 的 (textual) 機 能 を 援 用 し, 三 つそれぞれの 観 点 から 社 会 構 造 と 個 々の 具 体 的 なテキストを 媒 介 する 談 話 実 践 を 分 析 している 本 稿 ではその 内 の 一 つ, 経 験 を 加 工 言 語 化 し, 世 界 を 表 象 する 観 念 構 成 的 機 能 に 焦 点 を 当 て, 言 語 による 隠 蔽 につ いて 考 察 する 2.2 言 語 の 隠 蔽 機 能 社 会 的 な 出 来 事 を 表 象 するにあたっては,その 出 来 事 を 構 成 する 諸 要 素 をい 2 ドイツ 語 圏 の 研 究 者 としては,Michel Foucalut の 研 究 を 援 用 した Siegfried Jäger, Jürgen Habermas の 批 判 理 論 を 組 み 込 んだ Ruth Wodak などがその 代 表 である

柳 田 亮 吾 61 かに 取 捨 選 択,つまり 包 摂 / 排 除 もしくは 卓 越 させるか 否 か,そしてそれをど のように 配 置 するかが,テキストのイデオロギー 的 形 成 に 大 きな 意 味 を 持 つ 批 判 的 言 語 学 (Critical Linguistics)の 創 始 者 の 一 人 である Tony Trew の 古 典 的 研 究 (1979)は,それを 見 事 に 示 している 図 1 は 1975 年 にジンバブエの ハラレで 起 きた 警 官 による 市 民 への 発 砲 殺 害 事 件 について 報 じた 英 新 聞 の 記 事 の 見 出 しを 節 の 三 つの 要 素 ( 参 与 者 (participant), 過 程 (process), 状 況 (Circumstance) Halliday 1985/1994)から 分 析 したものである(Trew S.104) この 節 においては,police と 11 Africans が 参 与 者 であり, 前 者 が shot dead という 過 程 における 動 作 主 (agent)であり, 後 者 がその 対 象 者 (affected) であることが 表 象 されている この 図 1 の 節 における 特 定 の 要 素 は 時 系 列 と 共 に 排 除 され, 以 下 のように 変 形 されていく( 例 文 1.~6.) AGENT PROCESS AFFECTED CIRCMUSTANCES Police shot dead 11 Africans in riots. 図 1 1. Police shot dead 11 Africans in riots. 2. 11 Africans were shot dead by police in riots. 3. 11 Africans were shot dead when police opened fire on a rioting crowd. 4. 11 Africans were killed in riots. 5. 11 Africans lost their lives in riots. 6. The rioting and sad loss of life are warning that (---). (Trew 1979 S.104 をもとに 筆 者 作 成 ) 2.では 1.の 能 動 文 が 受 動 文 になり 文 の 主 題 (theme)が police から 11 Africans へと 入 れ 替 わり,3.ではさらに when police opened fire on a rioting crowd と いう 節 によって,shot dead という 過 程 における 動 作 主 が 不 明 瞭 になる そし て 4.の 受 動 文 では 動 作 主 が 完 全 に 削 除 されている 次 の 5.では 11 Africans lost their lives in riots.と 過 程 そのものが 入 れ 替 わり,さらに 6.では sad loss of life と 名 詞 化 されることで, 過 程 における 参 与 者 時 制 なども 消 失 している この 一 連 の 操 作 によって 達 成 されているのは, 出 来 事 の 因 果 関 係 を 曖 昧 にし,

62 批 判 的 談 話 分 析 からみた 通 念 の 定 冠 詞 11 人 のアフリカ 人 を 殺 害 した 警 察 の 責 任 を 不 明 瞭 にすることである つまり 1.~6.は, 既 存 社 会 の 支 配 的 イデオロギー( 権 威 を 付 与 された 警 察 が 市 民 を 守 る)が,その 正 統 性 を 脅 かしうる 出 来 事 ( 警 察 が 市 民 を 射 殺 した)を 変 形 させ た イデオロギー 的 過 程 (ideological process) ( 同 上 S.95)である そして それを 可 能 にする 言 語 的 装 置 こそが, 動 作 主 なき 受 動 文 と 名 詞 化 である 3 この Trew の 研 究 は,ある 社 会 的 出 来 事 を 表 象 するにあたって 特 定 の 行 為 者 を 排 除 することのイデオロギー 的 な 意 味 を 指 摘 しているが, 行 為 者 をどのよう に 表 象 するかもまた 重 要 な 含 意 をもつ 例 えば,1.では 動 作 主 は police という 集 合 名 詞 によって 表 象 され,その 社 会 的 属 性 に 焦 点 が 当 てられている これに 対 して, 性 別, 年 齢, 宗 教 などといった 動 作 主 の 他 の 属 性 や, 具 体 的 にどの 警 官 ( 達 )が 射 殺 したのかは 重 要 視 されておらず,このニュースというテキスト では 排 除 されている つまり, 社 会 的 な 行 為 者 の 表 象 するにあたっては,ある 属 性 を 際 立 たせることでステレオタイプ 的 なテキストを 作 り 上 げることもで きれば, 行 為 者 を 抽 象 的 に 表 象 することでその 具 体 性 をぼやかすこともできる 後 者 の 一 例 としては, 非 個 人 化 (impersonalisation) が 挙 げられる(Machin and Mayr 2012 S. 79-80) 以 下 の 7.では 参 与 者 を 非 個 人 化 された unser Volk と 表 象 することにより, 具 体 的 には 誰 が Raum を 必 要 としているのかを 隠 し ている 7. Unser Volk braucht Raum! つまり 個 人 的 な 要 求 や 願 望 をあたかもより 広 範 な 団 体 や 社 会 全 体 によるもの であるかのように 語 ることで, 話 し 手 はその 要 求 を 正 当 化 すると 同 時 に, 責 任 の 所 在 を 不 明 瞭 にすることが 可 能 である ここまで 節 における 過 程 と 参 与 者 に 焦 点 をあてながら, 主 に 表 象 における 排 除 について 概 観 してきた 本 稿 では 山 下 (2011)にならい,そうした 言 語 や 3 この Trew の 研 究 は,Fairclough( 例 えば 1992, 1989/2001)に 継 承 され,また, 多 く の 入 門 書 においても 紹 介 されており( 例 えば Machin and Mayr 2012), 批 判 的 談 話 分 析 の 実 践 において 有 用 な 道 具 として 定 着 している

柳 田 亮 吾 63 言 語 使 用 が 社 会 的 現 実 をそのまま 反 映 するのではなく, 社 会 的 現 実 の 一 部 を 見 えなくさせるような 働 き のことを 言 語 の 隠 蔽 機 能 と 捉 えることにする 4 (S.144) ただ, 次 の 二 点 には 留 意 が 必 要 である 第 一 に,ある 特 定 の 言 語 表 現 を 隠 蔽 という 機 能 にのみ 還 元 することはできない 例 えば,7.は 世 界 の 表 象 でもあれば, 提 案 や 要 求 といった 言 語 行 為 ともなりうる それはつまり, 非 個 人 化 は 隠 蔽 機 能 を 有 すると 同 時 に, 聞 き 手 への 要 求 を 間 接 的 に 伝 え, 相 手 への 負 担 を 緩 和 することで 対 人 関 係 的 にも 機 能 することを 意 味 している Halliday(1985/1994)が 指 摘 するように, 節 は 多 機 能 的 に 分 析 可 能 である 第 二 に, 隠 蔽 は 話 し 手 書 き 手 の 意 図 とは 必 ずしも 関 係 ない 社 会 的 な 出 来 事 の 表 象 において 特 定 の 要 素 が 排 除 されている 場 合,それが 隠 蔽 を 意 図 した 話 し 手 書 き 手 の 言 語 戦 略 であることも 確 かにあり 得 るが, 冗 長 さを 避 けるた めの 単 なる 省 略 であることもあろう 問 題 としているのは, 話 し 手 の 真 の 意 図 なのではなく, 選 択 可 能 な 言 語 表 現 間 ( 例 えば 能 動 文 と 受 動 文 もしくは 定 冠 詞 と 不 定 冠 詞 )にどのよう 差 異 があり,それが 隠 蔽 という 観 点 から 見 たとき どのような 役 割 を 果 たしているかである 以 上 を 踏 まえ, 次 章 ではドイツ 語 の 冠 詞 を 隠 蔽 機 能 という 観 点 から 考 察 して いく 3 冠 詞 と 隠 蔽 機 能 3.1 定 冠 詞 と 不 定 冠 詞 Fairclough(2003)は, 英 語 の 冠 詞 の 有 無 ( 例 えば doctors/ the doctors) が 社 会 的 行 為 者 を 特 定 的 に(specifically)/ 一 般 的 に(generically) 表 象 する のに 寄 与 するとしている(S. 146) しかし,この 単 純 な 二 分 法 ではとても 冠 詞 の 意 味 形 態 を 十 分 に 掴 んでいるとは 言 い 難 く,またそのままドイツ 語 の 冠 詞 の 分 析 に 援 用 することもできない そこでまずは 関 口 存 男 の 冠 詞 第 一 巻 定 冠 詞 篇 (1960), 冠 詞 第 二 巻 不 定 冠 詞 篇 (1961)をもとに, 定 冠 詞 と 不 4 山 下 (2011)は Ulrich Amon のドイツ 語 の 呼 称 表 現 (du/sie)の 研 究 を 皮 切 りに, 日 本 における 障 害 / 障 碍 者 の 表 記 や 方 言 コンプレックスといった 幅 広 い 問 題 を 取 り 上 げている 因 みに 批 判 的 談 話 分 析 では 隠 蔽 に 相 当 する 語 としてocclude(Fairclough 2003 S.137)や conceal(machin and Mayr 2012 S.80)などが 用 いられている

64 批 判 的 談 話 分 析 からみた 通 念 の 定 冠 詞 定 冠 詞 の 基 本 的 な 特 徴 について 確 認 しておこう 定 冠 詞 は どの? という 問 いに 答 える 具 体 化 規 定 であり,その 機 能 は, その 次 に 置 かれた 名 詞 の 表 示 する 概 念 が, 何 等 かの 意 味 において 既 知 と 前 提 されてよろしいということを 暗 示 することにある ( 関 口 1960 S.1) これに 対 して 不 定 冠 詞 は, 具 体 化 規 定 をせずに, どんな? という 特 殊 化 規 定 を するための 冠 詞 である そして, 次 に 置 かれる 名 詞 の 表 示 する 概 念 が 未 知 と 前 提 されることを 暗 示 する 従 って, 医 者 が 私 にそれを 禁 じた,という 社 会 的 な 出 来 事 を 表 象 にする 場 合 には 次 のような 選 択 肢 が 考 えられる 8. Der Arzt (, der aus Japan kommt,) hat es mir verboten. 9. Ein Arzt hat es mir verboten. 10. Es ist mir (von einem/dem Arzt) verboten worden. 日 本 語 とは 異 なり 冠 詞 を 有 するドイツ 語 においては, 医 者 という 行 為 者 を 表 象 するにあたって 定 冠 詞 / 不 定 冠 詞 の 有 無 が 問 題 となる 医 者 を 指 示 力 なき 指 示 詞 としての 定 冠 詞 を 用 いて 表 示 すると,それによって 具 体 性 を 持 った どの 医 者 かが 明 示 され, 話 し 手 と 聞 き 手 双 方 が 以 前 から 知 っている その 医 者 か,もしくは, 関 係 文 などで 直 接 に 規 定 され ( 日 本 から 来 た)その 医 者 と いうことになる( 例 文 8.) これに 対 し, 具 体 化 規 定 をしない 不 定 冠 詞 を 用 い ると, 具 体 的 にはどの 医 者 なのか という 問 いをはぐらかすことになる( 例 文 9.:ある 医 者 がそれはいけないと 言 った) 5 従 って, 同 一 の 社 会 的 出 来 事 を 表 象 するにあたって, 行 為 者 を 医 者 という 社 会 的 属 性 をもって 表 象 する 場 合, 定 冠 詞 つきの der Arzt との 比 較 において, 不 定 冠 詞 つきの ein Arzt は 医 者 の 具 体 性 を 曖 昧 化 し, 隠 すことになる ただし, 不 定 冠 詞 は 新 情 報 と してのニュース 価 値 を 持 ち 常 に 達 意 眼 目 の 主 局 に 立 つため,その 不 定 性 の 含 み が 前 面 に 押 し 出 され( 紹 介 導 入 の 不 定 冠 詞 ),ある 種 の 鋭 さを 有 している 6 5 例 文 9.においては 特 殊 化 規 定 も 同 様 にされていないが, 不 定 冠 詞 は 質 の 含 み によ って どんな? という 特 殊 化 の 余 地 を 残 す Sie machte dabei ein Gesicht!( 彼 女 は 実 に 何 とも 云 えない 妙 ちきりんな 顔 をしたよ)はその 好 例 である( 関 口 1961 S.8) 6 定 冠 詞 は 対 照 的 に, 穏 やかに 達 意 眼 目 の 主 局 に 立 つか,もしくは, 形 式 的 定 冠 詞 ( 示

柳 田 亮 吾 65 従 って,その 隠 蔽 は 極 めて 明 示 的 である また, 前 章 で 見 たような 動 作 主 なき 受 動 文 ( 例 文 10.)や 名 詞 化 ( 例 えば das Verbot)による 行 為 者 の 排 除 は,ド イツ 語 においてもそのまま 援 用 することができる この 場 合, 動 作 主 を 排 除 し ているという 点 で, 節 において ein Arzt を 包 摂 し,そこに 達 意 眼 目 の 焦 点 があ たっている 例 文 8.とはレベルの 異 なる 隠 蔽 となる 以 上 に 加 えて, 医 者 の 表 象 にあたっては, 具 体 的 な 指 示 対 象 を 受 けない der Arzt を 用 いることもできる(Der Arzt hat es mir verboten.) この der が 関 口 のいう 通 念 の 定 冠 詞 であり, その 次 に 置 かれた 名 詞 の 表 示 する 概 念 が, 何 等 かの 意 味 において 既 知 と 前 提 されてよろしいということを 暗 示 するこ とにある という 定 義 が 活 きてくることになる 3.2 通 念 の 定 冠 詞 前 節 8.の 指 示 力 なき 指 示 詞 としての 定 冠 詞 は, 後 置 される 名 詞 が 何 らかの 規 定 詞 規 定 句 規 定 文 あるいはコンテクストによって 具 体 的 に 規 定 されている ため,その 名 詞 が どの? という 見 地 からは 既 知 ということを 暗 示 する これに 対 して 通 念 の 定 冠 詞 は, 後 置 される 名 詞 が 何 の 規 定 をもたなくと も 一 概 に 明 瞭 であるという 意 味 において, 話 者 にも 聴 者 にも 既 知 ということを 暗 示 する つまり, 当 該 の 名 詞 を 一 概 に 通 念 として 取 り 扱 ったのだとい う 意 思 表 示 が 即 ち 通 念 の 定 冠 詞 である( 関 口 1960 S. 393) この 関 口 の 通 念 という 用 語 はやや 分 かりにくいが, 概 念 という 語 が 意 味 内 容 や 適 用 範 囲 などについて 分 析 的 に 思 考 されたものというコノテーションを 持 つため,そ れとの 区 別 をするために 設 けられたものである 通 念 というのは,その 名 詞 の 意 味 するところのものが 未 だ 概 念 としての 形 を 取 るに 至 らない 一 歩 手 前 に 存 する 意 味 形 態 である 概 念 というのは, 通 念 の 上 に 多 少 の 論 理 操 作, 思 惟 的 処 理 の 加 わったものである ( 関 口 1960 S. 394) 格 定 冠 詞 温 存 定 冠 詞 )のように 達 意 眼 目 の 傍 局 に 立 つのみである

66 批 判 的 談 話 分 析 からみた 通 念 の 定 冠 詞 つまり 医 者 といえども 色 々な 概 念 があり, 定 冠 詞 つきの der Arzt, 不 定 冠 詞 つ きの ein Arzt, 無 冠 詞 の Arzt,さらには 複 数 形 の die Ärzte と Ärzte があるが, そうした 個 別 の 概 念 はそれぞれに 共 通 する 根 本 的 な 通 念 に 何 らかの 規 定 がされたものである どの 医 者 でもなければ,どんな 医 者 でもなく,ただ 一 概 に 医 者 という 場 合 の 医 者 が 医 者 の 通 念 であり,その 本 質 はその 一 概 性 に ある 8 この 通 念 を 言 語 の 隠 蔽 機 能 という 観 点 から 見 ると,その 特 徴 として 以 下 の 二 点 が 挙 げられる 第 一 に, 通 念 の 定 冠 詞 は 後 置 される 名 詞 の 個 別 性 を 隠 蔽 する 8.の 指 示 力 なき 指 示 詞 としての 定 冠 詞 を 冠 した der Arzt は 個 々の 具 体 概 念 で ある 医 者 を 指 し 示 し,9.の ein Arzt の 医 者 は 医 者 でも 色 々な 医 者 がいるという 個 別 差 の 含 み を 持 っている これに 対 して 通 念 の 定 冠 詞 が 冠 せられた der Arzt は, 医 者 のそうした 個 別 差 を 認 めずに, 医 者 といえばまるで 世 に 一 人 しか 医 者 がいないかのように 取 り 扱 う( 遍 在 通 念 ) 第 二 に, 通 念 の 定 冠 詞 は,そ の 通 念 という 語 の 通 り 広 く 世 に 流 布 した あたりまえ に 依 拠 した 概 念 で あり,それによりその あたりまえ がどのような 歴 史 文 化 社 会 的 な 力 学 の 中 において 形 成 されてきたのかという 問 いを 隠 してしまう 現 代 の 日 本 では, 大 学 の 医 学 部 で 勉 学 に 励 み, 実 習 を 積 み, 国 家 資 格 を 取 得 したのが 医 者 で あり,それが 通 念 化 されている つまり, 通 念 としての 医 者 は 質 の 含 み を 利 かした Er ist ein Arzt( 彼 は 道 楽 でやっているある 種 の 医 者 だ)における ein Arzt とは 根 本 的 に 異 なる つまり, 通 念 の 定 冠 詞 は, どんな 医 者 かと いう 特 殊 化 規 定 の 問 いを 不 問 に 付 す 以 上 関 口 の 冠 詞 論 を 読 み 解 きながら, 定 冠 詞 と 不 定 冠 詞 の 区 別 を 経 て, 通 念 の 定 冠 詞 を 隠 蔽 機 能 の 観 点 から 考 察 した 以 下 でその 具 体 例 をみていく 前 に, 冒 頭 の Bourdieu の 指 摘 に 立 ち 戻 っておこう すると,その 批 判 は, 研 究 対 象 としてしての 言 語 の 個 別 性 を 捨 象 し, 通 念 を 無 批 判 に 受 け 入 れる 言 語 学 者 の 態 度 に 向 けられている,と 読 み 替 えることができるであろう 日 本 語 なり ドイツ 語 という 言 葉 を 日 常 会 話 において 口 にする 時, 我 々 8 通 念 には 広 義 と 狭 義 の 通 念 があり, 前 者 は 素 朴 全 称 概 念, 純 粋 理 念, 後 者 は 特 殊 通 念, 俚 俗 通 念 など, 様 々な 観 点 から 考 察 することが 可 能 であるが,その 本 質 は 一 概 性 にある

柳 田 亮 吾 67 はそれがどの 日 本 語 なりドイツ 語 なのか,そしてそれがどんな 日 本 語 なりドイ ツ 語 なのかということを 改 めて 意 識 をすることはない しかし 当 然 ながら, 日 本 語 といえどもそこには 標 準 語 や 方 言 といった 多 様 な 言 語 変 種 の 個 別 差 があ り 一 概 に 扱 えるものでもない また,そもそも 日 本 語 という 通 念 自 体 も 所 与 で はなく, 国 民 国 家 の 成 立 に 伴 う 標 準 語 となりうる 言 語 変 種 の 選 定, 文 法 家 によ る 辞 書 の 編 纂, 正 書 法 の 確 立, 教 育 による 国 民 への 教 え 込 みなどといった 複 雑 な 歴 史 文 化 的 な 過 程 を 経 て あたりまえ にまで 昇 華 されたのである ハイ ンリッヒ(2011)の 言 葉 を 借 りるならば, 言 語 学 が 対 象 とする 言 語 や Sprache は 言 語 学 者 が 確 信 するような 普 遍 妥 当 性 を 持 つイーティックな (etic) 概 念 ではなく, 歴 史 文 化 的 な 認 識 に 依 拠 したイーミックな(emic) 概 念 である(S.94) このイーミックな 概 念 こそが 関 口 のいうところの 通 念 に 相 当 し,それを 無 批 判 に 受 け 入 れることは, 社 会 学 的 に 解 明 されるべき 過 程 を 暗 黙 の 内 に 排 除 することにつながる,といえよう 最 後 に, 通 念 の 定 冠 詞 を 類 型 単 数 という 角 度 から 眺 め, 個 別 差 の 隠 蔽 の 例 に ついてみてみる 上 述 のとおり 医 者 にもder Arzt,ein Arzt,Arztと 色 々な 概 念 があるが, 通 念 を 通 念 として 素 朴 に 表 現 する 形 式 は 定 冠 詞 と 単 数 である そしてそれは, 一 つには, 普 遍 妥 当 命 題 の 主 題 目 に 据 えられ, 素 朴 全 称 概 念 と いう 形 をとる( 例 文 11.) 定 冠 詞 と 単 数 は 同 様 に 具 体 描 写 文 や 事 実 確 認 文 にも 用 いられ,その 名 詞 によって 示 される 類 (Gattung/Typ)の 特 性 を 強 調 す る 類 型 単 数 の 形 をとることもある( 例 文 12.) 9 11. Der Mensch ist ein Säugetier. 12. Der Abendländer hat auch nicht die pflanzhafte Trägheit des Inders, auch nicht die beharrende Art des Chinesen, der sich seit 9 この 類 型 単 数 は, 英 語 においても 同 様 に 見 られる 米 人 もこの 揮 球 面 上 を 殆 んど 我 家 のごとくに 考 え, 日 々 世 界 中 のありとあらゆる 国 民 に 接 し, 或 種 の 自 負 心 を 以 て アメ リカ 人 という 国 民 意 識 を 高 揚 し 来 たった 結 果 として,ちょうど 曽 ての Hitler 治 下 の 独 人 が Der deutsche Mensch という 類 型 単 数 をあらゆる 機 会 に 口 走 ったのと 同 じように, 或 種 emphasis をもって 近 来 しきりに The American worker とか The American woman とか 云 った 類 型 単 数 を 新 聞 記 事 や 雑 誌 記 事 で 振 りまわす ( 関 口 1960 S. 467)

68 批 判 的 談 話 分 析 からみた 通 念 の 定 冠 詞 Jahrtausenden gleichsam nur auf der Stelle bewegt, keinen Fortschritt kennt. (R. Müller-Freienfels: Die Psychologie des deutschen Menschen u. seiner Kultur: 関 口 1960 S. 463) 12.では der Abendländer などの 類 型 単 数 によって,いわゆる 国 民 性 が 論 じら れている 言 うまでもなく,ヨーロッパはもちろんインドにせよ 中 国 にせよそ れぞれの 社 会 には 複 数 の 民 族 が 居 住 し, 同 様 に 複 数 の 文 化 言 語 が 存 在 し,さ らにその 社 会 も 階 層 や 地 域 などによって 分 化 しているということに 鑑 みれば, そうした 多 様 性 を 一 概 に 取 り 扱 うことはおそらく 不 可 能 であろう しかし, 通 念 の 定 冠 詞 が 冠 されることで,ヨーロッパ 人,インド 人, 中 国 人 の 内 実 は 問 わ れることなく,その 一 概 性 が 暗 黙 の 前 提 とされてしまう そしてそれにより, インド 人 中 国 人 のステレオタイプ 的 な 評 価 が 下 されると 共 に,ヨーロッパ 人 の 優 位 性 が 仄 めかされる つまり 類 型 単 数 は, 我 々の 属 する 内 集 団 と 彼 らの 属 する 外 集 団 を 形 成 し,それによって 前 者 を 肯 定 的 に, 後 者 を 否 定 的 に 描 写 する ための 言 語 的 装 置 となりうる 次 に 示 すのは Adolf Hitler の Mein Kampf か らの 引 用 である 13. Siegt der Jude mit Hilfe seines marxistischen Glaubensbekenntnisses über die Völker dieser Welt, dann wird seine Krone der Totentanz der Menschheit sein, dann wird dieser Planet wieder wie einst vor Jahrmillionen menschenleer durch den Äther ziehen. (Hitler 1939 S.69-70) 14. In diesem Brennpunkt der verschiedensten Nationalitäten zeigte sich sofort am klarsten, daß eben nur der deutsche Pazifist die Belange der eigenen Nation immer objektiv zu betrachten versucht, aber niemals der Jude etwa die des jüdischen Volkes; daß nur der deutsche Sozialist international in einem Sinne ist, der ihm dann verbietet, seinem eigenen Volke Gerechtigkeit anders als durch Winseln und Flennen bei den internationalen Genossen zu erbetteln, niemals aber

柳 田 亮 吾 69 auch der Tscheche oder Pole usw... ( 同 上 S.123) ここでも 基 本 的 な 構 造 は 類 型 単 数 による 肯 定 的 な 自 己 呈 示 と 否 定 的 な 他 者 呈 示 の 対 照 である こうしたレトリックは, 現 代 の 政 治 談 話 においても 見 出 すこ とができる オーストリアの 極 右 政 党 党 首 であった Jörg Haider の 談 話 を 分 析 した Wodak(2002)は,その 談 話 の 特 徴 を 端 的 に Us and Them : The Simple Division of the World into Good and Bad Guys と 述 べ,グロバ ール 化 が 進 み 不 安 と 不 確 実 性 の 増 大 する 現 代 においてもそのレトリックの 有 効 性 を 指 摘 している(S. 35) つまり 通 念 の 定 冠 詞 類 型 単 数 は, 本 来 は 複 雑 であるはずの 世 界 のその 複 雑 性 を 隠 蔽 し 単 純 化 することで, 大 衆 迎 合 的 な 政 治 談 話 を 作 り 上 げることに 寄 与 するといえるだろう 4 おわりに 本 稿 では, 言 語 の 隠 蔽 機 能 という 観 点 からドイツ 語 の 冠 詞, 特 に 通 念 の 定 冠 詞 に 焦 点 を 当 てて 考 察 を 行 った 批 判 的 談 話 分 析 と 言 語 の 隠 蔽 機 能 という 考 えを 援 用 するならば, 冠 詞 は 後 置 される 名 詞 を 特 定 の 意 味 形 態 にはめ 込 むこ とによって 社 会 的 現 実 を 隠 蔽 することができるといえるであろう 本 稿 では 定 冠 詞 の 中 でも 通 念 の 定 冠 詞 のみを 取 り 扱 ったが, 定 冠 詞 不 定 冠 詞 無 冠 詞 を 論 じた 関 口 の 大 著 を 批 判 的 談 話 分 析 に 体 系 的 に 援 用 することができれば, 冠 詞 の 隠 蔽 機 能 についてより 詳 細 に 論 じることができるであろう これについ ては 今 後 の 課 題 としたい 参 考 文 献 Bourdieu, P. (1982) Ce que parler veut dire: l économie des échanges linguistiques. Paris: Fayard. ( 稲 賀 繁 美 訳 1993 話 すということ 言 語 的 交 換 のエコノミー 藤 原 書 店 ) Fairclough, N. (1992) Discourse and Social Change. Cambridge: Polity Press. Fairclough, N. (1989/2001) (2 nd edition) Language and Power. London:

70 批 判 的 談 話 分 析 からみた 通 念 の 定 冠 詞 Longman. Fairclough, N. (2003) Analysing Discourse: Textual Analysis for Social Research. London : Routledge. Fairclough, N. and Wodak, R. (1997) Critical Discourse Analysis, in T. A. Van Dijk (ed.), Discourse as Social Interaction. London: Sage, S. 258-285. Halliday, M. A. K. (1985/1994) (2 nd edition) Introduction to Functional Grammar. London: Edward Arnold. ハインリッヒ パトリック (2011) 言 語 学 と 言 語 意 識 山 下 仁 渡 辺 学 高 田 博 行 ( 編 著 ) 言 語 意 識 と 社 会 -ドイツの 視 点 日 本 の 視 点 三 元 社 S. 91-111. Hitler, A. (1939) Mein Kampf. Zwei Bände in einem Band. München: Franz Eher Nachfolger GmbH. Machin, D. and Mayr, A. (2012) How To Do Critical Discourse Analysis: A Multimodal Introduction. London: Sage. 関 口 存 男 (1960) 冠 詞 第 一 巻 定 冠 詞 篇 三 修 社 関 口 存 男 (1961) 冠 詞 第 二 巻 不 定 冠 詞 篇 三 修 社 Trew, T. (1979) Theory and ideology at work, in R. Fowler, R. Hodge, G. Kress and T. Trew Language and Control. London: Routledge. S. 94-116. Wodak, R. and Meyer, M. (2001/2009) (2 nd edition) Critical Discourse analysis: history, agenda, theory, in R. Wodak and M. Meyer (eds.) Methods of Critical Discourse Analysis. London: Sage, S.1-33. Wodak, R. (2002) Discourse and Politics: The Rhetoric of Exclusion in R. Wodak and A. Pelinka (eds.) The Haider Phenomenon in Austria. New Brunswick and London: Transaction Publishers, S. 33-60. 山 下 仁 (2011) 言 語 の 隠 蔽 機 能 言 語 意 識 と 批 判 的 談 話 分 析 について 山 下 仁 渡 辺 学 高 田 博 行 ( 編 著 ) 言 語 意 識 と 社 会 -ドイツの 視 点 日 本 の 視 点 三 元 社 S. 139-166.